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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん、エピローグに至るまで-神智学協会-53

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 Tさん達が将門を連れてきた。徹心の異界でモニカの無事を確認して深く頷いた庇護者の姿に、モニカは半ば呆然とするしかなかった。
 今まではほとんど会う事の無かった雲の上のような存在がこうして求めに応じて動いてくれた事の驚くべき事だったし、なにより自分のような子共の事を将門が知っていた事も驚きだった。
 そんな雲の上の存在を舞や千勢が呼び捨てにしていたのには更に驚いたが、
 ……それがお姉ちゃんたちらしいのかな?
 疲れたので休むと言って休憩に入ったTさんに言われてもう一人の協力者に話をしに行った舞と、呪詛が抜けても将門と景気付けだと言って酒を飲んでいた千勢の事を思う。
 由実が最近、なにかすっきりしたような顔で舞や千勢の所業を眺めているのにつられてか、モニカもまたいつの間にか彼女たちの行いには慣れつつあった。
 それでも、
「将門様とおはなししちゃった」
 由実や徹心と共に、将門が乞うままにこの十数日の間の事をモニカは彼に話した。それだけでも、モニカにとっては印象的な体験だった。
「そんなに気を張らなくてもいいのよ?」
 由実はそう興奮冷めやらない様子のモニカに言うが、自分に居場所を与えてくれていた存在と話せた事はモニカにとっては大事件だ。
 ……なかなか舞お姉ちゃんたちみたいにはなれないなぁ……。
 由実に言ったならばそうなる必要など無いと力強く言ってきそうなことだが、モニカにとっては彼女達は憧れでもある。その外見だけでなく、内面においても。
 ……将門様も、Tさん達も、他に自分達が戦う理由があって、そのついでに私が助けられる結果になるだけだった言ってくれるけど、本当はそうじゃないよね……。
 確かに幾つも理由はあるのだろう。徹心達が話し合っていた事柄はモニカには理解できない部分も多かったし、千勢やTさんは争いの火種は多くあると言っていた。その中にはきっとモニカ個人よりも重大な火種があったはずだ。
 それでも周りの皆は全力でモニカを守ろうとしてくれている。その事をモニカは一度自棄になって逃げ出した時に痛い程理解していた。
 だからこそ感謝の念は忘れないようにしよう。自分を守ってくれ人達が感謝など要らないと言ってもその念を持ち続けよう。モニカはそう自分の心に誓う。
 ……もう、後ろ向きにはならないように、自分の憂いに飲みこまれないように。
「がんばるもん」
 傍らの由実が不審げな顔をする。それにモニカは笑みを浮かべて、
「私を助けてくれてありがとう。そして、がんばろうねフィラちゃん」
 緊張し、気を張った調子だったモニカが常の状態に戻ったのを感じたのか、由実も穏やかな表情で答えた。
「そうね、絶対に負けないようにしましょう」
「うん!」
 頷きながら、モニカは心に一つの決意を生む。
 ……皆に、もう一つわがままを言う……!
 密やかな決意は胸に秘められたまま、開戦の時を少女は待つ。


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 将門への説明を終え、もう一人の協力者への説明を舞に任せた千勢と徹心は、コテージ内の書棚に詰め込まれていた≪組織≫関連の資料を破棄しながら言葉を交わしていた。
「彼女に、それに将門公まで本当に連れて来てくれるとはね……。おかげで随分と戦力関係は助かるよ」
「そのために、というわけでもないが今回売り払った≪組織≫の地位はどうだ? 少しは未練でもあるか?」
「うーん、とりあえず僕が面倒を見ていた人達は先の≪神智学協会≫の内戦への介入の時、それぞれに身の振り方を決めているから特に未練はないかな。僕は地位なんて重たいものは面倒でしかないと考える気質だし、この地位は≪神智学協会≫の長に収まっていたオルコットと立場の上で対等に立つために得た地位だから、今となっては無用の長物だ。≪組織≫は元より横のつながりが希薄な集団、余所に問題を残す事にもならないだろう」
 資料をためつすがめつしながら結論を零す。
「あんな地位一つで戦争の理由付けに説得力が付くのなら僕としては良い買い物をしたというところかな」
「本当にいい買い物をした。これで≪冬将軍≫の冬を警戒する必要がかなり減少したし、モニカ達の安全度も格段に跳ね上がる」
「迎撃の方法も随分と幅ができたね。上手く陣を敷いて構える事ができれば不利を覆すこともできそうだ」
「お前がざっと出した策を皆褒めそやしていたな。流石は天帝の禁軍、大した傑物だと私も褒めてやろう」
 からかう調子の千勢に徹心はため息を吐く。
「よしてくれ、昔取った杵柄なんて何の自慢にもなりはしないよ。あの布陣も、もっと詰めて考える必要がある」
「そうだな、あれでは奴ら全員と一気にかち合わなければならない流れになりそうだ。それは得策ではない。向こうは仮にも組織として共闘の経験も多い者達、対して私達は急造の即席チームでしかない。できるならば一対一に持ち込みたい」
 徹心は頷く。
「せめて個別に相手をせざるを得ない状況にまでもつれこませなければね」
「まあそれは皆が居る時に全員の智恵を合わせて考えるとするさ」
 ≪組織≫の酒蔵からの支払い請求書を笑顔で破り捨て、千勢は徹心を指さす。眉を立てた挑戦的な笑みで、
「しかし世界の理の書き換えとモニカ一人を天秤にかけてモニカの将来を重視するような選択をするんだ。これを剛毅な決断と取らずになんとする、英傑よ」
 千勢は子共を優先する判断を好む傾向がある。上機嫌に言葉を放ってくるのも周囲が皆モニカを優先して行動する意志を見せている為だろう。なんとしても子を守ろうとする意思は千勢にとっては心地よい流れのはずだ。そのためのこの好評価なのだろう。
 ……それでも英傑は、ねぇ……。
 柄では無い。そう思いながら徹心は口を開く。
「いじわるだね君は……もしかしたら僕はただの愚案を掲げている考え無しかもしれないよ?」
「≪神智学協会≫との戦闘で敗北した時の責任の取り方まで決めているんだ。そこまで定められる視野を持つ人間ならただの愚案を得意げに披露すまいよ」
「あれは負けた時の負け惜しみのようなものだよ」
「もし敗北したのならば、お前の異界を完全に外部から隔離した上でお前が自害する。異界の閉鎖をもって敗北を贖うのだろう?」
「ああ、それで外部には世界の書き換えは適用されなくなるはずだ。敵も味方も、巻き込まれる人達には悪いけどね」
「負けはしないさ。私だって馬鹿弟子だって、皆がそう思っている」
「そうだね。僕の〝もし負けた時〟の考えが最終的に笑い飛ばされればいい」
 そう皮肉気なオルコットに、千勢は呆れたように言う。
「あーあー暗い暗い」
「そうかな?」
 千勢は力強く頷いた。
「とても暗い。間違いなくな」
「そう力強く言わなくても……」
「自覚が無いのが悪い」と言いながら千勢はしかし、と言葉を繋げた。
「それでも、私と初めて会った時と比べたら随分とマシになったな」
「君が病症のケウを連れてやってきた時だね」
「あの時は≪ケウケゲン≫として瘴気をばらまく存在だったケウの治療を頼みにお前を探しだした筈だったというのに、いざ会ってみたら本人の方がケウより精神的に参っていたので大層驚いた」
「世界大戦を経る間に随分と道を別れてしまったオルコットと、彼が組織した≪神智学協会≫の目的を知ってしまった直後の事だからね。色々と思う所があったんだ。≪拝上帝会≫時代の仲間もあの頃に多く死んでしまったしね」
 ≪神智学協会≫と徹心が初めて矛を交えたのはその頃の事となる。ケウの治療が完了し、その義理で徹心に千勢が協力し始めたのはもう少し遅れてだ。
 千勢は指折り数えながらぼそりと言う。
「そんな事があってからもう100年近くになるのか……確かに長かったな、徹心よ」
「うん、そして、これで終わらせる」
「そうなるようにがんばるとしようか」
 紙をまとめて抱え、千勢が立ち上がった。
「さあ資料整理は終いだ。さっさと処分して休もう。私達もここ最近は動き詰めだ」
「そうだね」
 徹心も立ち上がって窓の外に目を向ける。
「長かったけど、やっと最後の戦いだ……」
 辛い戦いになるだろう。しかし、
 ……負けるわけにはいかない。
 この最後の戦いに至るまでにも多くの命が散っている。
 ……彼等に報いる為にも……そして――
「終わらせるためにだ。オルコット、君の長い長い宿願をね……」




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