「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 仲介者と追撃者と堕天使と-32

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 そもそも、彼女らの母親を死に追いやった自分が、生き続ける事を許されるはずなどなく
 つまるところ、このゴミクズ同然の命ですんだのだから、安い取引であったと考えるべきだろう



「余計な事、しなくて良かったのに」
「……むぅ?」

 目の前に座って紅茶を飲んでいる少女、新島 友美の言葉に、直希は小さく首をかしげた
 はて、何か、自分は間違った事をしてしまっただろうか
 それを、考える

「何か、問題でもあったかね?」
「大問題だよ」

 直希の言葉に友美はため息をつき、クッキーに手を伸ばした
 ぽん、と口に放り込む
 直希が老舗メーカーから買ってきた程よく上品な甘さで、紅茶にあって美味しい
 ……友也がいたら、一瞬で食べ尽くされているところである
 友也の留守中に尋ねてきてくれた事、その点に関しては、友美は直希に感謝する

「カラミティ・ルーンとの取引なんて。そんな危険なこと、しなくて良かったのに」
「むぅ。君だって、昨年のあの件では、彼に協力を仰いだだろう?」

 同じ事さ、と直希は小さく笑う
 その顔には、迷いなど、一切ない
 むしろ、どこかほっとしているようにすら、見えた

「何、たいしたものを要求されなかったのだ。問題ないさ」
「……要求されたものは、たいしたものじゃない。そう言いたい訳?」
「その通りだが、何か?」

 再び、首を傾げてきた直希に
 …友美は、直希を鋭く射抜き、訪ねる

「…自分の寿命の、残り半分。それが、たいしたものじゃない、って言うの?」

 友美の、その言葉にも……直希は、小さく笑うだけだ
 何か問題があるのか、と
 そうとでも、言いたげな表情

 ……やつれたな、と友美は思う
 彼女とて、母を失って以来、様々な心労が重なり、やつれている
 だが、それと比べても……直希は、酷くやつれた
 そのように見えた
 元々、健康的な姿だった訳ではない
 白く、細く、病弱さを感じさせていた姿、それが……以前より、さらに痩せている
 顔色とて、以前より悪くなっている
 友美が、あの件以来、色々と無茶をして、心労が重なっているように………直希もまた、己を極限まで追い込むかの如く、心身共に疲労を重ね続けているのだ
 周囲の支えのお陰でどうにかなっているものの……この状態が続けば、どうなるかわからない

 聞いた話によれば、直希は元々、20歳まで生きられないだろうと言われていたほどに病弱だったらしい
 それを、「光輝の書」との契約により、何とか今の22歳まで生きられた状態
 …正直、残り寿命が如何程か、それを考えた場合……あまり、良い答えは見つからないだろう

 だと、言うのに

「君の命の安全がある程度保障されるなら、安いものだと思うが?」

 直希は、あっさりと
 その残り少ない可能性の高い寿命を、「友美を殺さない」と言う約束をカラミティに取り付けさせるために、渡してしまったらしいのだ
 らしい、と言うのは、カラミティが要求したそれを、本当に奪う気があるかどうかわからない、と言う事だ
 そもそも、人の残り寿命を知る手段など、そうそうある訳でもない
 さらに、それを本当に奪ったかどうか知る手段など、さらに少ない
 もっと言えば、カラミティは一応、それを要求してきたが、それが嘘か真かもわからない
 相手の覚悟を測る為の言葉であったかもしれないし、本当に残り寿命を奪おうとしただけかもしれない
 どちらなのか、わからない

 ……真実はわからない
 だが、危険な取引に、代わりはない

「まぁ、君の件がなくとも、カラミティ・ルーンとは、いつか何かしらの取引をしたいと思っていたからな。これで、縁ができたのはありがたいさ」
「…取引相手としての信頼度は、微妙だと思うけど?
「そうでもないさ。彼は、その名にかけた約束は破らない。何せ、魔法使いだからね。実力は確かだし、何分、彼の魔法は万能だ。様々な局面において、彼は頼れるよ」
「…その代わり、要求されるものがあれだけどね。ハイリクス・ハイリターン、ってとこ?」
「そう言う事さ」

 君は聡いな、と直希は笑う
 完全なる子供扱いにやや憮然とする友美
 小さく、首を左右に振る

「…私のことなんて、気にしなくて良かったのに」
「そうはいかんよ。君の母親を死に追いやってしまったのは、僕なのだから。その僕に、君が死ぬ可能性を見過ごせ、とでも言うのかね?」
「あー、もう……なぜかカラミティにがっつり嫌われたのは、予想外だったよ…」

 あぅー、とうなだれる友美
 直希は彼女に紅茶のお代わりを淹れてやりつつ、小さく苦笑した

「君の才能が、裏目にでてしまったな。カラミティは君に、己の心を陵辱された、と感じてしまったらしい」
「私は何もしてないんだけどねぇ。都市伝説と契約してるわけでもなし。そんな精神攻撃なんて…」
「そうだね。君は都市伝説契約者ではない………だからこそ、余計に、カラミティは気味悪がって不気味がったんだろう。「何の力も持たないはずのただの人間の癖に」、とね」

 あくまで推測にすぎないが、と断りを入れてから
 直希は、説明を続ける

「君の、誰とでもすぐに仲良くなれるその才能……カラミティはその影響を受けて、自分の中で一番大切なものの居場所。そこに、君が土足で踏み込んだような錯覚を受けた。それが、酷く不快なのだろうね」
「そんな、潔癖な…」
「では、尋ねよう。君の心の中で、一番大切な存在を思い浮かべたまえ」

 …とりあえず、浮かべてみる
 友美の様子を見て、直希は更に続けた

「そこに…その大切な存在が占めている、その部分に。他の誰か、それも、ほぼ初対面に近い見知らぬ誰かが、土足で入り込み、それを追い出す光景でも想像したまえ」
「………流石に、不快だね」
「つまりは、そう言う事さ」

 カラミティはそれと同じか、それ以上の不快感を
 ……それに加えて、恐怖を感じたのだ、と
 直希は、そう言って見せた
 あくまで推測に過ぎないが、とさらに付け足して

「恐怖、ねぇ?怖い物知らずの万能の魔法使い様が?」
「彼は万能の魔法使いだ。だが、都市伝説的存在である事に代わりはない。問題はそこさ」
「……どう言う事?」
「都市伝説とは、噂によって生まれる存在だ。自我を持たずに生まれるものとて多い。噂に存在を、思考を、行動を左右される者が多いのも事実だ、そこはわかるね」

 頷く友美
 満足げに、直希は笑ってみせる

「つまりは、だ。彼らは皆…とは、言い切れないか。だが、その大半は、「自分の自我に自信を持てない」者が多いのだよ」
「…人の噂で、あっさりと変わってしまう可能性があるから?」
「その通り。都市伝説の自我は、不安定である事が多い。大門 大樹達のように、人間から都市伝説へと化した者でさえ、己の自我に関して不安を抱くことがあるそうだ」
「それと、カラミティが、私からの影響を受ける事を嫌がった事との繋がりは?」
「君ならば聡いから、察しているとは思うがね」

 買いかぶりすぎだよ、と友美は苦笑してみせる
 ややぬるくなった紅茶を口にした友美を前に、直希はゆっくり、続ける

「……カラミティ・ルーンには。絶対的に大切な存在が、その心にある。そして、そこを土足で踏み荒らされるという事は…カラミティ・ルーンと言う魔法使いにとって、彼の自我にすら影響する可能性がある。そう言う事さ」
「自分の存在を歪められるのを嫌がった。それであってる?」
「そうであると、僕は考えているがね………あくまで、全ては僕の推測さ。真実かどうかは、わからない。どちらにせよ、君がカラミティにわりと致命的なレベルで嫌われてしまった。その事実をどうにもできないのが現状さ」

 せめて、それをどうにかできれば良いのだがね、と
 直希が、小さくため息をついた
 友美としてもそう思うのだが、何せ、あそこまで他人に嫌われるという事態は、そう長くもない人生においてわりと初めてである
 どうすればいいのか、まったくわからないのだ

「まぁ、そう言う訳であるからして。君を致命的に嫌ったカラミティが、うっかり致死レベルのイタズラを君に仕掛けないよう、取引すると言うのは、君を護る上で重要なことなのだよ」
「私との接触を嫌ってるなら、そうそう仕掛けてこないと思うけど…」
「超遠距離から、隕石を落とす魔法でも使われたらアウトだろう?」
「そんなもん、使えるわけない……って言えないのが嫌な相手だよねぇ」

 万能の魔法使い
 昨年、クリスマスの「星を降らせる魔法」は、コンペイトウを降らせるだけの可愛らしい魔法だった
 ……だが、セシリアと言うもう一人の魔法使いや、彼の「星を降らせる」という発言を聞いたシェイドが、危惧したように
 カラミティが、本当に星を……流星郡や隕石を降らせた可能性とて、否定は仕切れない
 カラミティ・ルーンとは、そんな途方もないことすら可能で、そして、それをやらかしかねない存在なのだから

「ふむ。まぁ、取引云々とかその辺は、いつまで話し合っても平行線を辿るであろう事は目に見えている。この辺りで切り上げないか?」
「…賛成。本題についても、もうちょっと聞きたいしね」

 直希が、今回持ち込んだ資料
 それを前に、友美は頷いた

「「教会」の「13使徒」、ねぇ。もうちょっと情報があればいいんだけどね」
「「13使徒」は、「教会」強行派筆頭のエイブラハム・ヴィシャスの直属だ。彼もまた、学校町に来ているらしい……それの目的でも知れれば、話は早いのだがね」
「「13使徒」よりさらに下の、使い捨ての子飼いは前々から割と入り込んでるんだよね?そっちルートで…」
「使い捨ての駒が、重要な情報を知っているとは思えんがね」
「でっすよねー」

 まいったねぇ、と苦笑する

 直希が今回持ち込んだ、資料
 そこには、学校街にこの日、エイブラハム・ヴィシャスと、その部下の「13使徒」が全員、入り込んだのだという事実と
 それらが学校街で何かしでかした場合の、予測される被害が記されていた
 ……最も、実際に何かしでかされた場合………被害がこれで収まるとは、到底思えない

「「教会」は、ある意味で「組織」よりも秘密主義だ。なかなか情報が手に入らない。「13使徒」ともなればなおさらでね」
「で。これを私に知らせてどうしろと?」
「ぶっちゃければ、友也と一緒に逃げて欲しいのだが」
「お断りだね」
「うむ、その答えは予測済みだ。せめて、警戒はしてほしい。できれば、首を突っ込まないで欲しい。こちらもできる限りの事はするので、君は無茶をしないでくれ」
「無茶言ってくれるねぇ、こっちの性格わかってて」
「あぁ、僕自身、無理を頼んでいるとわかっているよ」

 困ったように、笑いあう
 ……あぁ、どっちも、お互い様だ

「第一さ、直希。こいつらが来るとなると……」
「…まぁ、僕も目をつけられる可能性はなきにしもあらずだがね。何とかなるさ。こちらは、ね」

 だから、気にするな、と
 やはり、直希は笑うのだ

「今の姉さんは、わりと洒落にならん都市伝説と契約しているゆえ、以前のように襲われはしないだろう。と、なると、狙われるのは僕だ。それがわかっていれば、どうにかなるさ」
「…無理しないでよ?死なれたら目覚めが悪いし」
「むぅ、安心したまえ。僕が死んでも、君達姉弟に生活費その他が支払われ続くよう、準備はしてある」
「そう言う問題じゃないよ」

 ……どうにも、自分は大変と厄介な人物に、保護対象に見られてしまっている
 その事実に、友美は軽く頭痛を覚えながらも
 せめて、友也が帰ってくる前にクッキーを食べ尽くしてしまおう、と
 また、それに手を伸ばしたのだった



 ………数日後
 友美が懸念した通り………玄宗 直希は、「教会」13使徒の一人に、襲撃される事となる








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