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連載 - 我が願いに踊れ贄共・万能の魔法使い-07a

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 医者が、死亡したはずの患者の元に駆け付けた、その時
 その病室のベッドは、もぬけの殻だった



「…何か、変な感じだな」
「何がだ?少年よ」
「いや、自分の体が歩いてる様子を見る、って言うのは」

 ふらふらと、町中を歩く少年の姿
 ……桐島 優雨
 確かに死亡したはずのその少年が、ふらふらと町中を歩いていた

 死霊術を得意とする悪魔、ブネの能力で死体を操っているのだ
 優雨の願いを聞き届ける事にしたアモン達
 その前に、と、優雨の死体を操りだしたのだ

「どこに向かっているんだ?」
「お前の、弟の元だ」
「………小春の?」

 何故、とでも言いたげな優雨
 質問されるよりも前に、アモンは答える

「お前の弟が、寂しい思いをしないよう。しばし姿を消す事実を、伝えるべきだろう」
「だが、俺は死んで…」
「なぁに、ブネがうまく死体を操って、死んだ事を気づかせないようにする。言葉自体は、お前が喋れば伝わるようにしておこう」

 そして、さて、と
 アモンは何やら思案するように、蛇の尾をゆらゆらと揺らす

「……時に、少年よ。少年の双子の弟は、臆病か?」
「え?…まぁ、どちらかと言うと」
「ふむ、ならば、この姿では行かんな」

 呟き、直後、アモンの姿が変わる
 …それは、犬の姿…
 ……ではなく、オオカミの姿
 小柄な姿からして、子供の狼の姿か

「これならば、問題ないか?」
「大丈夫、だと思う」
「うむ、わかった」

 ぱたぱた
 尻尾を振りながら、優雨の死体の隣を歩くアモン
 ………何だろう、威厳とかが総崩れな感じがするのだが

「少年よ、先に、説明しておく」

 く、とアモンが優雨の魂を見上げてくる
 ……あぁ、つぶらな瞳
 威厳がガラガラと音を立てて崩れていく

「少年の弟には、今、ビフロンスが呼び出しに行っている、とある悪魔を護衛につけよう。お前の弟が、兎とやらに害されないように。少年の弟には、少年がいない間寂しい思いをしないように、と言う理由をつければよかろうて。お前の口から話してくれるか?」
「……わかった」
「そして。少年の死体を持ち出したのには、意味がある。少年が人外の存在になりかけていることは伝えたな?」

 あぁ、と頷く優雨
 く、とアモンが顎をしゃくると………ブネが優雨の死体を動かし、く、と彼自身の髪を、軽くかき分けさせた

 ………優雨は、息をのむ
 己の肉体の、頭に………小さな小さな、角が生え始めている様子
 それを、見てしまったのだから

「少年の死体は、少年の魂とは別に、人外の存在へとなりかけている。このままでは、少年の意思に反して動きかねない」
「っなら、どうすれば…」
「落ち着け、少年が弟にしばしの別れを告げた後、少年の魂を我らの集いの場所へと連れて行く。その場所にて、我の可愛い可愛い弟子が、お前の魂を肉体に戻そう」

 肉体に、魂を戻す
 それは、つまり

「…俺は、また生きられる、って事か?」
「その通り。もっとも、その身が、魂が、人の理から外れかけている状態には変わりはないが」

 それでも
 生きられる
 存在していられる
 ……意思を保ったまま、小春の傍にいられるのなら、それでいい
 優雨は、そう考えた

「……何から何まで、すまない」
「何、気にするな。我ら悪魔は、神や天使などより心広く慈悲深い存在なのだからな」

 ぱたぱた、ぴょこぴょこ
 尻尾をふりふり、耳をぴくぴくさせながら答えてくるアモン
 ……あぁ……子供の狼の姿のせいで、セリフの威厳もすべて台無しだ

 ………と、そうしている内に……優雨達は、家の前にたどり着いた
 小春がいるはずの、家の前に

「さて、少年よ、心の準備は良いか?」
「…あぁ」
「承知。少年の弟の目に映るは、少年の死体と、我の姿のみ。少年の死体は、ブネが生きているかのように操作する。言葉は、少年が伝えるのだ」
「……わかった」

 さぁ、扉を開こう
 復讐の、始まりの前に
 大切な弟に、しばしの別れを

(………待ってろよ)

 必ず
 必ず、お前の元に戻ってきて
 お前を、護ってやるから
 助けてやるから

 そして
 あの小さき白き兎に、復讐を

「…うむ、少年の弟以外に気配なし。ブネよ」
「承知、承知。アモン卿のご命令のままに」

 ブネが、優雨の死体を操る
 がちゃり、玄関を開けた

「……小春」

 優雨は、家の中に声をかけた
 大切な弟に、呼び掛ける
 やがて、ぱたぱたと、足音が聞こえて

「…え………お兄、ちゃん?」

 病院にいるはずの兄が、そこにいる
 まだ、優雨の死を知らされていないのだろう
 驚いたような表情をしていて

 さぁ、伝えよう
 自分の意思を、お前に、決してさみしい思いはさせないという誓いを

 優雨は、意を決して…………口を、開いた





「ただいま~、契約者サマ~!」

 ぴょこり、ぴょこぴょこ
 優雨を殺した後、ちょっぴり人に不幸をプレゼント帰ってきた因幡の白兎こと、シロ

「あ、お帰り、シロ」

 そのシロを、何も知らない小春は笑顔で浮かべた
 ……その、小春の膝の上に

「…あれ?あれれ?契約者サマ、それ、何?」

 ちまん、と

「あ、この子?グラだよ」

 小さくて、ふわふわで、真っ白な
 愛らしい、マルチーズが乗っていた
 小春に撫でられ、ちょん、とその膝の上に座っている

「グラ?」
「うん。本当は、グラシャ……なんだかって、もっと長い名前みたいなんだけど。覚えきれないって言ったら、「グラ」でいいって」

 笑顔を浮かべている小春
 優しく、グラをなでる

 じ、と
 グラが顔を上げて、シロを見つめてきた
 まっすぐに、まっすぐに


 刹那
 シロは、ゾクリと悪寒を感じたような気がして


 しかし、それはすぐに消え失せてしまう
 グラと呼ばれたそのマルチーズは、ぽふん、と小春の膝の上に顎を置く

「仲良くしてあげてね、すっごくいい子だから」

 にこにこと微笑んでいる小春

 小春の膝の上でのんびりとしているグラ
 その首元には、首輪がはめられていて

 その、銀色に輝く首輪には
 「Giasyaiaboias」、と、そんな文字が彫られていたのだった





to be … ?





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