《口裂け女》
ぼくと彼女が知り合った頃、彼女はすでに都市伝説を知っていた。
広義的な意味での都市伝説ではなく、狭義的な意味で。
都市伝説とは何たるかを。
広義的な意味での都市伝説ではなく、狭義的な意味で。
都市伝説とは何たるかを。
彼女が姿を消したのはもう何年前になるだろう。
それなのに、ぼくは何も知らなかった。
電話で一方的に別れを告げられ、連絡が取れなくなったのは彼女にいい人が見つかったのだと自分を納得させていた。
本当は納得なんてできなかったけれど、半ば無理矢理に。
名前、姿、仕草、笑顔……どれひとつ取っても鮮明に思い出せるほど大切だったのに。
彼女のことを諦め、別の人と知り合ってもどこかに彼女の面影を見出そうとするほど忘れられないのに。
それなのに、ぼくは何も知らなかった。
電話で一方的に別れを告げられ、連絡が取れなくなったのは彼女にいい人が見つかったのだと自分を納得させていた。
本当は納得なんてできなかったけれど、半ば無理矢理に。
名前、姿、仕草、笑顔……どれひとつ取っても鮮明に思い出せるほど大切だったのに。
彼女のことを諦め、別の人と知り合ってもどこかに彼女の面影を見出そうとするほど忘れられないのに。
彼女がどうして姿を消したのかわかったのは今。――そう、たった今だ。
こうして『口裂け女』が目の前に立った瞬間、ぼくは全てを理解した。
ぼくがこうなることを彼女は恐れていた。
都市伝説と出会ってしまい、ぼくが何をするか彼女はわかってしまったからこそ恐れた。
だからこそ――ぼくの前からいなくなった。
ぼくがこの『口裂け女』に殺されたいと思うであろうことは、ぼくのことを良く知る彼女にとって簡単なことだったのだろう。
こうして『口裂け女』が目の前に立った瞬間、ぼくは全てを理解した。
ぼくがこうなることを彼女は恐れていた。
都市伝説と出会ってしまい、ぼくが何をするか彼女はわかってしまったからこそ恐れた。
だからこそ――ぼくの前からいなくなった。
ぼくがこの『口裂け女』に殺されたいと思うであろうことは、ぼくのことを良く知る彼女にとって簡単なことだったのだろう。
さあ、殺せよ、都市伝説。
殺してぼくを喰らえ。
ぼくを飲み込んでしまえ。
そうすればぼくと彼女はひとつになれる。
殺してぼくを喰らえ。
ぼくを飲み込んでしまえ。
そうすればぼくと彼女はひとつになれる。
たとえきみが『口裂け女』に成ってしまっても。
ぼくはきみを――愛しているよ。
ぼくはきみを――愛しているよ。