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連載 - 電子レンジで猫をチン!-55

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匿名ユーザー

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【電磁人の韻律詩55~正義の味方~】

「さぁ、芸術を始めよう。」
「――――――――変身!」

先手必勝、俺はまっすぐに目の前の男に殴りかかる。
男は取り出した鎌で俺の拳を防ぐと俺の腹に回し蹴りをたたき込む。
だがその程度で俺はダメージを受けな……い?
おかしい。
それほど勢いの付いてないスローな蹴りの筈だ。
なのにまるで狂骨の鎧なんて無かったかのように俺の腹には鈍い痛みが走っている。

「おいおい、お前は何をしに来たんだ?
 思ったよりずっと弱いじゃないか。」

そう言って男は俺に向けて鎌を振り下ろす。

「危ないアスマ!」

その叫び声と共に男の仮面の隙間から血液が迸った。
一瞬怯んだ隙に俺は男と距離を取る。

「……おっと、忘れていたぞ電子レンジの契約者。
 人の顔の焼き方を思い出したらしいなあ?」

その言葉に恋路の動きが止まる。
急いで恋路を守らなくてはいけない、俺は男と恋路の間に立つ。






だが、俺の背後で恋路は何者かに蹴り飛ばされた。
目の前に居る男はまだ動いていない。
ならば誰が?

「紹介が遅れたね。
 私の最高傑作、感覚機能強化型フランケンシュタイン試作品十号改、題名“雪風”
 君たちは雪絵と呼んでいたね。
 この雪風の素晴らしい点は学習機能の高さだよ。
 本来の性能の高さに加えて、今まで見た相手の動きをそのまま覚えてラーニングできる。
 無論、美術品としてのレベルはまったく落としてない。
 私の目指した死と生の調和を高いレベルで実現しているよ。
 なんせ傷一つ付いてない死体なんて君は見たこと無いだろう?
 そもそも死とは生をより良く保存するための行いな訳だよ。
 死んで、肉体を劣化させてしまうのはやはり褒められた行為ではない訳だから。
 そもそもフランケンシュタインには様々なタイプが有るがその素材には……」

そこから先の男の台詞は覚えていない。
俺の視線は雪絵に釘付けになっていた。
恋路は素早く起き上がって雪絵と相対する。

「丁度良いよアスマ、そっち任せた。
 どうせ君じゃあ雪絵ちゃんと戦えないだろう?」

まったくもってその通りだ。

「……任せた!」

恋路なら何とかしてくれるはずだ。信じて任せよう。







俺は楽しそうに長々と口上を語り続けている男の顔面に拳をたたき込む。
男は勢いよく吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。
俺の追撃を躱しながら男は長々と語り続ける。

「じゃあとりあえず君にも説明しておこうか。
 私は人の死に対してどうしようもなく興奮しちゃう性癖を持ってるんですけどね。
 ここにおける人の死っていうのは死ぬ過程も死んだ後の死体も両方を含めています。
 あれはひどく人の心を揺さぶる物だ。どんな文学作品よりも強く深く……ね。
 ところで君はブンガクしてるかな?俺としては君くらいの青年にはヘルマン・ヘッセの車輪の下を勧めたい。
 ああいうのは一遍呼んでおいて損は無いよ。私は中学生くらいの時にカラマーゾフの兄弟を呼んだよ。
 ネタバレはしたくないからあれだけど登場人物と死神との掛け合いが素晴らしくてね、あれの為だけにでも読むべきだ。
 君の学校の国語の先生はこういう話しないのかな?まあ今時のスッカラカーンな高校生の何割が文学を理解出来るかは解らないけどさ。
 そういえば文学も殺人も命を削って作り出す物特有の美しさが有ると私は思う訳ですよ。私の殺人は芸術であって只の快楽をむさぼる行為とは一線を画していることだけは皆に解って欲しい。
 あーそれで思い出した。前からすっごく気になっていたのですけど最近の子供って命の尊さを理解しているんでしょうかね。
 家や学校でちゃんと教育しないと駄目だと思うんでスヨそう言うの。
 ジョン=ロックって思想家が言っていたんですけど人間という生き物はその根本は白紙であるそうだよ?
 教えなければ人間は何も知らないんだ。だからってどこぞのジグソウよろしく命の価値を教育するゲームをやる気なんてサラサラないからね?
 あれはエンターティメントとして見習うべき物は有るが……。
 あの趣向自体がそもそも死を冒涜しているように見えてしょうがない。例え命の価値を知らない人間でも命の価値は等しいんだよ。
 まあ創作の中のこととはいえどもそこらへんがやはり気に入らないね。まったく気に入らないよ。
 ところで私のそういう趣味の目覚めって言うのは丁度小学生の時でしたね。
 心臓麻痺だかで親戚のお姉さんが死んだんですよ。今も思い出す、美しい人だった…………。
 ああ、耳を塞ごうとしないでくださいよ。丁度親族一同が田舎に集まっている時だった物ですからね。
 私も見ましたよ、美(ツメ)たくなった彼女の完璧な肉体。あれ程人間の身体とは調和がとれたものなのかと感動しましたね。
 それで両親の居ない間に私はこっそりと彼女に口づけをしました。
 そう、始めてを彼女に捧げたんですよ。冷たくて、乾いていて、弾力を失っている筈の唇は……
 私にそれまでもそれからも無かったような恍惚と感動をもたらしていました。
 これは男同士だから正直に言ってしまうのですけどパンツを一つ台無しにしてしまったんですよね、ああ恥ずかしい。」






男が何やらまた話し始めたのを悟って、俺は男の話を意図的に聞かないようにした。
その分の耳は恋路達の戦いに向ける。

「フランちゃん!落ち着いてくれ!眼を覚ますんだ!」
「…………。」
「くそっ、聞こえていないか。」

視界の端に恋路の姿が映る。
腰を深く落としてすり足で彼女の身体と密着し、体重の移動だけで雪絵を吹き飛ばす。
派手に転倒した雪絵は起き上がるとすぐに恋路がやった技とまったく同じことを彼女に対してして見せようとする。
するができない。
パッと見た感じでは恋路がやったそれとまったく同じ動きなのだ。
しかし恋路はその場で舞うように一回転するだけでその攻撃をいなし、雪絵を地面に叩き伏せる。
何をやっているのか全く解らない。
その瞬間、恋路が俺に目で合図を送る。
成る程、理解した。

「フランちゃん!私だよ!恋路だ!頼むから目を覚ましてくれ!」
「無駄だよ、そいつは既に私が記憶を再設定したからね。
 今はまっさらな赤ん坊のようなものさ。まだ俺の言うことを素直に聞く程度のことしかできない。」

目の前の男は恋路の方を見ることなく叫ぶ。
確かに、恋路の方を見ないことは普通に考えれば正しい選択だ。
普通に考えれば目の前の相手である俺の方が脅威なのだから。
雪絵に恋路の相手は任せればいい。
だが彼は今、その選択がこの場合においてのみ誤っている根拠まで叫んでしまった。
そう、少し考えれば解るのだが今の雪絵は恋路に絶対に勝てないのだ。



「そもそも格闘技とは、弱者が研鑽の末に強者に勝つべくして練り上げられた技術だ。
 私はそれを長い間やらされてきた訳だよ、忌々しいことにね。
 自分より遙かに力が強い相手、自分より遙かに素早い相手、そう言う相手を支配する為の技術をさ。」

その瞬間、恋路の身体が跳躍した。
先ほどまで恋路がいた場所に雪絵が体当たりを仕掛ける。
無論その狙いは外れて雪絵は意味のない突進を始めた。
雪絵の後ろを取った恋路は雪絵の身体を後ろから思い切り蹴飛ばした。
俺は目の前の男にがむしゃらにつかみかかる。
男はがら空きだとでも言わんばかりにカウンターを狙うがその背中に雪絵が直撃する。
そのまま雪絵を踏み台にして恋路が再度の跳躍。

「知っているか?」

恋路に向けて男は鎌を振ろうとする。
だがそれは俺がさせない。
俺は男の身体を掴んだまま、手の部分を覆っている骨のアーマーを射出する。
腹に散弾銃を突きつけたまま撃ったようなものだ。
痛みで狙いは雑になる。
そもそもカウンター自体が無駄なのだ。
前に恋路は言っていた。

「中国拳法において上空からの攻撃にカウンターは不可能だと言われている。
 4000年の歴史を持っているんだぜ?そういう技が有ったって良いと思わないか?
 でも無いんだ。上空からの攻撃は防ぐしかない。」

恋路の踵が男の顔面にめり込む。





「アスマ!」
「承知した!」

俺は狂骨の力で宙に大量の髑髏を浮遊させる。
それを足場に恋路は再び宙を駆ける。
進路を指示する必要も指示される必要も皆無。
俺には恋路の次に動きたい場所が解る。
恋路は俺がつぎに足場を作る場所が解る。
俺のリズムと彼女のリズムが狂うことなく完全に一致する。

「戦闘中に笑うのか。君という人間に対する認識を改めるべきかな。」

恋路の上空からの攻撃に反応しかねている男は俺を見て不機嫌そうに呟く。
違う、何も解ってない。
俺は自分が好きなように曲を流してそれに乗っかって他人が騒いでいれば良い人間なのだ。
そんな瞬間に俺は果てしない満足と一体感を感じる人間なのだ。
今、俺と恋路のリズムが一つになっている。
それは本当に満足なことで、幸せなことだった。
戦う最中でなければもっと幸せだったけれどもそれは良い。

「ん?ああそういうことか。音楽家だったとは知らなかったよ。」

雪絵が恋路に飛びかかろうとしている。
距離はギリギリ、今ならまだ間に合う。
俺はすかさず彼女に飛びかかって彼女を抱きしめた。
でも俺はロリコンじゃない、それだけは解って欲しい。



「任せたよアスマ!」
「任されたぜ恋路!」

なんかすごい勢いで俺に構うな先に行けを皆にさせている気がする。
が、今はそんなこと気にしている余裕もない。
俺は骨の鎧を巨大化させてドームに変化、雪絵を巻き込み捕まえる。

「さーて、説得の為の時間稼ぎといきますか!」
「忘れたのかな?さっきの戦いで君は私にボロボロに負けていた筈だ。」

雪絵が明らかな敵意を持って俺にゆっくりと近づいてくる。

「なあ雪絵、俺たちと一緒に家に帰ろうぜ?」
「……家?」

終始無言だった彼女が突然反応する。

「そうだよ、家、家族だよ。
 お前の妹も居る。」
「妹……、花音?」

家族か。さっきまで殆ど無表情だったのに家族に関してだけは強く反応している。

「俺も居る、恋路も居る、帰ったら皆で平和に暮らそうぜ?
 そうだ、今度遊園地に行こう。こんな暗いところじゃない。
 楽しい所だぜ、遊園地ってさ。」
「遊園地……、皆……。」




雪絵の動きは完全に止まった。

「キャッ!」
「くくく、次は何処を頂こうかな?」

外の様子が不味いことになっている。
そろそろ恋路を助けに行かなければいけないようだ。

「アスマ!今出てくるなよ!」
「え?」
「丁度、【くまなく血をかけた】所なんだ。
 電力最大、マイクロ波分散型放射、――――焼け落ちろ。」

男の絶叫が聞こえる。

「お前、……また人殺しになる気か?」
「恋路!無茶するな!そこまでしなくて良い!」
「……アスマ、今は出てきてくれるなよ?」

俺は当たり前の如く狂骨の能力を解除して外に出た。
恋路はすぐに能力の発動を止めた。
彼女の片腕に脚を引っかけて俺は転びそうになる。





「待て恋路!そいつを殺しちゃ駄目だ!どんな奴でも殺しちゃ駄目だよ!」
「くっは……。肉焦がし骨焼くマイクロ波の嵐……。
 明日君が使うよりもすさまじい威力じゃないか。
 むしろこれが本来の姿なのか?」

男は血まみれになり、身体から蒸気を出しながらもしゃべり続ける。
最後に俺が男を無力化させようと思った時、俺の周りに赤い風が吹いた。
俺に一撃、恋路に一撃、おまけのように攻撃を加えていく。
恋路は急所だけは防いだが両腕を持って行かれる。
俺はといえば狂骨の高い防御力のおかげで割と無事だった。
赤い風は男を素早く抱きかかえるとすばやく俺たちから距離を取る。

「恋路ッ!」
「大丈夫大丈夫、出血だけなら能力で止められる……。」
「お互い痛み分けと言ったところですね。
 此処は一旦退かせて貰いますよ。」
「あっ、待て!」
「じゃあお言葉に甘えて。」

口裂け女は再び高速移動を開始する。
不味い、今こいつに攻撃されると為す術もなく俺たちはやられる……!
両腕を失った恋路と高速戦闘に対応出来ない俺では打つ手がない。

「そうはさせないのですよ。」

雪のように白い肌と烏の濡れ羽色をした髪が冬の風に揺れる。
月明かりが窓から彼女を照らす。
口裂け女を食い止めるかのように雪絵が俺たちの前に立っていた。





「いやー、じっさい生まれ変わった気分です。私死んでますけど。」

口裂け女が目にも止まらないスピードで雪絵に襲いかかる。
だが感覚機能特化と言っていた彼女自身が言っていたのだ。
雪絵にはその動きの全てが把握できている。
更に言えば先ほど恋路に文字通りたたき込まれた格闘技の技術で自分より動きの速い相手への対処も可能になっている筈。
骨の折れる軽い音がして、口裂け女は地面に激突する。

「どうしますか口裂け女さん?
 ここがお互い退き所じゃないでしょうか。
 そこの男の人死んでしまいますよ?」
「……くっ。」

口裂け女は男を抱えてあっという間に居なくなってしまった。
俺と雪絵はほっとため息を吐く。

「あのさー、ところで二人とも?
 私そろそろ腕付けて欲しいんだけどなー。さっき心配するなって確かに言ったけどさー。」
「ああそうだ!急いで病院に運ばないと!」
「それよりも110番なのですよ!恋路さんが死んでしまいます!」
「その心配はありませんよ。」

突然、耽美的なと形容するしかない甘やかで華やかな声が部屋に響く。
……またこいつか。
F-No.0、サンジェルマン伯爵。
確かに医者としては最高の腕前だろう。





「レモンさんに頼まれましてね。
 私としては縁もゆかりもない事件でしたが……。
 貴方の師を殺してしまった以上、貴方にはまだ借りがあります。
 その一部を今此処で返済させて頂くとしましょう。」

サンジェルマンは恋路の腕を切断面に合わせた後、器用に縫合を始める。
そして縫合が終わると彼女の傷口に手を添えていくらかの呪文を呟いた後にこう締めくくる。

「【癒えろ】」

その言葉には不思議な重みと優しさがあった。
青白い燐光が漂ったかと思うと恋路の腕は何事も無かったかのように完全に修復されていた。

「あんた、医者じゃなかったのかよ。」
「優れた科学とは魔法と同義、私は科学も魔法も完璧に使いこなします。
 まあ攻撃魔法とかは専門外ですけどね。近代兵器使った方が早いし。」
「ふぅん……。」
「それと、ですけどね。このことは組織には内緒でお願いします。
 お互いのためにもそれが一番でしょう?
 貴方の今回の行動は正義のためとはいえ独断専決には違いないですし。
 監視を誤魔化すのにも苦労しましたよ?」
「そうなのか、まあとりあえずありがとう。」
「いえいえ、礼には及びません。結局は彼女の生きる力を引き出したまでですから。」

先ほどの光に当たったせいか俺の傷も治っている。
魔法って便利だなあ……。




「真ー!助けに来たぜ!」

遠くから夜行さんの声が聞こえてくる。

「おっと、それでは私はここらへんで退散させて頂きます。」

それでは、と微笑みながらサンジェルマンは姿を消した。
まあ確かに夜行さんを見られると都合が悪い。
姉さんも組織とは仲が悪かったし、まあ丁度良いだろう。

「じゃ、行きますか。」

俺は髑髏の仮面を外してポケットに仕舞う。
そして恋路を背中に背負って雪絵の手を引き歩き始めた。

「これにて無事一件落着。」
「あーあ、今回はアスマに助けられちゃったなー。」
「ふふ、やっと助けることが出来たぜ。」
「ありがとう、私の正義の味方さん。」
「一番助けられたのは私なのですよ!明日さんって強いんですね!」
「いやあ……多分皆のおかげじゃないかな。二人を助けられたのは。」

そして世はこともなし。
今回の事件はこれにて一件落着、かな?
【電磁人の韻律詩55~正義の味方~fin】




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