【電磁人の韻律詩64~怒りと骨とニューフォルム~】
「そう言うわけであんたの相手はやっぱり俺だぜ。」
「……確かにお前を避けて通ることは出来ないらしいな。」
「あんたが進むためには俺を倒すしかない。」
「お前がお前であるためには俺を邪魔するしかない。」
「道は一本。」
「行く先は逆。」
「譲る気なんて」
「毛頭無い。」
「……確かにお前を避けて通ることは出来ないらしいな。」
「あんたが進むためには俺を倒すしかない。」
「お前がお前であるためには俺を邪魔するしかない。」
「道は一本。」
「行く先は逆。」
「譲る気なんて」
「毛頭無い。」
明日真のバイクが彼に寄り添うが如く走り寄ってくる。
彼は再びそれにまたがるとイザークに向けてアクセルをふかした。
彼は再びそれにまたがるとイザークに向けてアクセルをふかした。
「歩行者優先じゃないのか?」
「戦う交通安全は車の人たちに任せますよ。」
「戦う交通安全は車の人たちに任せますよ。」
再びクワガタのような牙を生やしたバイクで明日はイザークに突貫する。
防御、回避されることは織り込み済みである。
彼はぎりぎりまでイザークに近づくと全ての装甲をパージしてバイクのみでイザークに攻撃をしかける。
目的は二つ。
一つは重たい装甲を脱ぎ捨てることに寄る一時的な加速。
もう一つは骨で出来た巨人をイザークの背後に呼び出し……
防御、回避されることは織り込み済みである。
彼はぎりぎりまでイザークに近づくと全ての装甲をパージしてバイクのみでイザークに攻撃をしかける。
目的は二つ。
一つは重たい装甲を脱ぎ捨てることに寄る一時的な加速。
もう一つは骨で出来た巨人をイザークの背後に呼び出し……
「狂骨機人形態(モードザボーガー)!」
前後からの挟撃を行うことだ。
それに気がついたイザークは漆黒の翼を羽ばたかせて空高く舞い上がる。
誰も乗ってないバイクと骸骨の巨人の拳が先ほどまで彼のいた場所を襲う。
それに気がついたイザークは漆黒の翼を羽ばたかせて空高く舞い上がる。
誰も乗ってないバイクと骸骨の巨人の拳が先ほどまで彼のいた場所を襲う。
「もう一発!」
誰も乗っていないバイク。
その不自然さにはイザークだって気がついていた。
明日真はいつの間にかもう一体居た骸骨の巨人に打ち上げられて空高く跳躍していたのだが
それに気づいていたイザークは周囲の状況を冷静に判断できた。
その不自然さにはイザークだって気がついていた。
明日真はいつの間にかもう一体居た骸骨の巨人に打ち上げられて空高く跳躍していたのだが
それに気づいていたイザークは周囲の状況を冷静に判断できた。
「うおりゃああああああああああ!」
明日真はすでに狂骨の装甲を纏っていなかった。
彼は骸骨の巨人の形成に全ての狂骨を使用してしまっていたのだ。
そしてその状態で彼はイザークに向かって拳を振り上げて弾丸が如く飛んできている。
で、あれば彼自身はフェイク。
何か別に本命の攻撃があるとイザークは踏んだ。
そして、それはバイクからの攻撃と踏んで彼はバイクに向けて剣を投げつけた。
意外なことにバイクは簡単に破壊されてしまった。
あのバイクは実のところ数百万では効かない品なのだがまあそれはまた別の話である。
彼は骸骨の巨人の形成に全ての狂骨を使用してしまっていたのだ。
そしてその状態で彼はイザークに向かって拳を振り上げて弾丸が如く飛んできている。
で、あれば彼自身はフェイク。
何か別に本命の攻撃があるとイザークは踏んだ。
そして、それはバイクからの攻撃と踏んで彼はバイクに向けて剣を投げつけた。
意外なことにバイクは簡単に破壊されてしまった。
あのバイクは実のところ数百万では効かない品なのだがまあそれはまた別の話である。
「隙あり!」
電話をかけるような仕草で繰り出される拳。
それはイザークの顔面に迷うことなく吸い込まれていく。
何か都市伝説による補助が有ったわけではないし、
圧倒的な才能と努力に支えられた技術の結晶なんかでもない。
とにかく不器用で真っ直ぐな只の一撃の拳。
都市伝説を扱う者の間での戦いならば何ら決め手にはならない筈の一撃。
それが直撃した奇跡的な状況にイザークは唯々驚いていた。
それはイザークの顔面に迷うことなく吸い込まれていく。
何か都市伝説による補助が有ったわけではないし、
圧倒的な才能と努力に支えられた技術の結晶なんかでもない。
とにかく不器用で真っ直ぐな只の一撃の拳。
都市伝説を扱う者の間での戦いならば何ら決め手にはならない筈の一撃。
それが直撃した奇跡的な状況にイザークは唯々驚いていた。
「……何が、したかったんだ?」
「解らない。解らないけど無性に腹が立って……。」
「解らない。解らないけど無性に腹が立って……。」
再び装甲が彼の身体を包み込んでいく。
「ただ一発、一発は素手で殴らないと許せないと思ったんだ。
仕方ない事情があるのかも知れない。
何かやむを得ない理由があるのかも知れない。
それでも、それでも誰かを犠牲にするなんて手段をとっているあんたに腹が立ったんだ。
だから一発、戦いとは何の関係もなく殴りたかった。」
「戦闘中に、か。」
「関係無い。そんなの関係ない。
悪い奴が悪いことしてるなら普通にぶん殴って戦って止めてお終いだよ。
でもイザークさんみたいな人が、あんたみたいないい人がなんでこんなことを!
なんでこんなことをしなきゃならないのかと思うと俺は!
自分に!あんた達に!あんた達の裏にいる奴に!」
仕方ない事情があるのかも知れない。
何かやむを得ない理由があるのかも知れない。
それでも、それでも誰かを犠牲にするなんて手段をとっているあんたに腹が立ったんだ。
だから一発、戦いとは何の関係もなく殴りたかった。」
「戦闘中に、か。」
「関係無い。そんなの関係ない。
悪い奴が悪いことしてるなら普通にぶん殴って戦って止めてお終いだよ。
でもイザークさんみたいな人が、あんたみたいないい人がなんでこんなことを!
なんでこんなことをしなきゃならないのかと思うと俺は!
自分に!あんた達に!あんた達の裏にいる奴に!」
怪異としての狂骨の持つ属性は大変ありふれている。
それは恨みであり怒りだ。
その感情は世間一般に於いてマイナスな感情とされているし、
だから妖怪である狂骨の属性としては中々どうしてマッチしていると言えた。
しかし、である。
明日真という人間から狂骨に流れ込む怒りは恨みは世間に溢れるそれとはまったく異質だった。
正義の怒り。
悪を憎み、理不尽を嘆き、不正に激昂する彼の春先の渓流にも似た清らかさを持つ怒りは狂骨に明らかな変化を与えていた。
それは恨みであり怒りだ。
その感情は世間一般に於いてマイナスな感情とされているし、
だから妖怪である狂骨の属性としては中々どうしてマッチしていると言えた。
しかし、である。
明日真という人間から狂骨に流れ込む怒りは恨みは世間に溢れるそれとはまったく異質だった。
正義の怒り。
悪を憎み、理不尽を嘆き、不正に激昂する彼の春先の渓流にも似た清らかさを持つ怒りは狂骨に明らかな変化を与えていた。
「だから俺はあんた達を止める!止めて!裏にいる奴も倒して!
それでできるだけ沢山の人が幸せになれるように頑張る!
綺麗事だろうが実現不可能な理想だろうが!
都市伝説ってのは心の力なんだろう?
かくあれかしと願った人々の力なんだろう?
だから俺は願うんだ。
皆が平和に楽しく暮らしていけるように、それを守る力が欲しいって!」
それでできるだけ沢山の人が幸せになれるように頑張る!
綺麗事だろうが実現不可能な理想だろうが!
都市伝説ってのは心の力なんだろう?
かくあれかしと願った人々の力なんだろう?
だから俺は願うんだ。
皆が平和に楽しく暮らしていけるように、それを守る力が欲しいって!」
狂骨の鎧が朱く染まっていく。
地面が低く唸りを上げている。
白く降り注ぐ雪に吸い込まれて耳を澄まさねば聞こえぬほどの唸りを。
骸骨の仮面の奥底にある明日真の眼が紅色に輝いていた。
地面が低く唸りを上げている。
白く降り注ぐ雪に吸い込まれて耳を澄まさねば聞こえぬほどの唸りを。
骸骨の仮面の奥底にある明日真の眼が紅色に輝いていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
大地を揺るがす明日真の咆哮。
そしてその声に呼応するかのようにより刺々しくより巨大に成長する骨の鎧。
それは雪に染まった学校町に一輪だけ咲く鮮やかな椿と言える美しさと生々しい“生”の息づかいを湛えていた。
そしてその声に呼応するかのようにより刺々しくより巨大に成長する骨の鎧。
それは雪に染まった学校町に一輪だけ咲く鮮やかな椿と言える美しさと生々しい“生”の息づかいを湛えていた。
「だりゃあああああああ!」
明日真の拳が地面に突き刺さったかと思うとそこから彼は動物の太い骨を引き抜いた。
何の動物かまったく解らないがとにかく巨大だ。
そしてその骨からも明日真から今現在発せられている怒気と同質の物が漂っている。
何の動物かまったく解らないがとにかく巨大だ。
そしてその骨からも明日真から今現在発せられている怒気と同質の物が漂っている。
「まさか……!?」
引き寄せているのか?
イザークは一つの可能性を思った。
彼の怒りに呼応して寄ってきた“今は亡き何者か”が彼に力を貸しているのではないだろうかと。
彼は素速く飛翔して明日真と距離をとるといくつかの剣を彼に向けて投げつける。
明日は手に持っていた骨で急所に当たりそうなものだけを最低限弾き返し、残りは鎧で受け止める。
イザークは一つの可能性を思った。
彼の怒りに呼応して寄ってきた“今は亡き何者か”が彼に力を貸しているのではないだろうかと。
彼は素速く飛翔して明日真と距離をとるといくつかの剣を彼に向けて投げつける。
明日は手に持っていた骨で急所に当たりそうなものだけを最低限弾き返し、残りは鎧で受け止める。
「なんだそれは……」
「ライディーン……ライディーン激昂態(仮)。」
「行くぞ!」
「来い!」
「ライディーン……ライディーン激昂態(仮)。」
「行くぞ!」
「来い!」
ちなみにイザークの思い当たった可能性はあながち間違いではない。
元々狂骨とは井戸に出る怪異。
井戸とはあの世とこの世を繋ぐ門としての役割を持っていた。
“既に消え去ってしまった物”の力を“今ここに居る物”に与える為の回路にも当然なりうる。
狂骨は自らの存在をより強く保つ為に契約者をその“門”そのものにする力があったのだ。
そして明日真の感情エネルギーがその門をこじ開けたのが今の状態である。
元々狂骨とは井戸に出る怪異。
井戸とはあの世とこの世を繋ぐ門としての役割を持っていた。
“既に消え去ってしまった物”の力を“今ここに居る物”に与える為の回路にも当然なりうる。
狂骨は自らの存在をより強く保つ為に契約者をその“門”そのものにする力があったのだ。
そして明日真の感情エネルギーがその門をこじ開けたのが今の状態である。
「なにやら進化したようだが……隙だらけだ!」
イザークの剣が明日真の装着する骸骨の鎧の隙間を狙って伸びる。
しかし肋骨を模したその部分は一瞬だけ動物の牙のような形に変化して逆に剣に向けて囓りつき始める。
しかし肋骨を模したその部分は一瞬だけ動物の牙のような形に変化して逆に剣に向けて囓りつき始める。
「ばかな!?」
「スカルパンチ!」
「スカルパンチ!」
先ほどまでは大量の骨を手に集めてドリル状にして殴りつけるだけの技だったそれ。
しかし今は集まった骨が髑髏の形になってイザークをかみ砕こうと牙を剥いている。
速さは変わらない。
だが重さも、攻撃性も段違いになっていた。
しかし今は集まった骨が髑髏の形になってイザークをかみ砕こうと牙を剥いている。
速さは変わらない。
だが重さも、攻撃性も段違いになっていた。
「くそっ!」
とはいえそもそもの実力差は覆しがたい。
のけぞりながらだがイザークはそれを何とかしていなす。
この時点で実のところ勝負は決していた。
突然の能力の成長からの奇襲で押し切れなかった明日真の敗北である。
あとはこのまま明日が体力を切らしてじり貧になって敗北するだけ。
それだけの筈だった。
のけぞりながらだがイザークはそれを何とかしていなす。
この時点で実のところ勝負は決していた。
突然の能力の成長からの奇襲で押し切れなかった明日真の敗北である。
あとはこのまま明日が体力を切らしてじり貧になって敗北するだけ。
それだけの筈だった。
「ジョルディ!?」
イザークの視界の中にエーテルとジョルディの姿が映る。
ジョルディが今まさにエーテルによって冷却レーザーを照射されている姿。
イザークは迷わず彼を助けに行こうと思った。
しかしそれが致命的な隙だった。
ジョルディが今まさにエーテルによって冷却レーザーを照射されている姿。
イザークは迷わず彼を助けに行こうと思った。
しかしそれが致命的な隙だった。
「殺しはしないが、骨の山に埋まって貰うぜ……。
スカル……否、フォッシルフラアアァッド!」
スカル……否、フォッシルフラアアァッド!」
骸骨の鎧の隙間から大量の骨や化石が出てきてイザークに襲いかかる。
普段の彼であれば素速く逃げることが出来たであろう。
しかし、彼の注意は明日真から一瞬逸れていた。
それがどんな結果をもたらすのか、そればかりは神にしか解らないことだった。
普段の彼であれば素速く逃げることが出来たであろう。
しかし、彼の注意は明日真から一瞬逸れていた。
それがどんな結果をもたらすのか、そればかりは神にしか解らないことだった。
【電磁人の韻律詩64~怒りと骨とニューフォルム~fin】