【電磁人の韻律詩65~戦い終わって~】
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ありとあらゆる骨が骨が骨がイザークの元に殺到する。
普段なら回避できる攻撃だった。
しかしその時の彼はジョルディを気にかけて一瞬隙が生まれていたのだ。
結果としてそれを躱し損ねたイザークはあっと言う間に骨と化石の山の中に埋もれてしまった。
普段なら回避できる攻撃だった。
しかしその時の彼はジョルディを気にかけて一瞬隙が生まれていたのだ。
結果としてそれを躱し損ねたイザークはあっと言う間に骨と化石の山の中に埋もれてしまった。
「はぁっ……。はぁっ……。」
大規模な能力の行使で彼に体力は残っていない。
巨大な心の器と優秀な都市伝説契約適正、それに比例するかのような非人間性を持つ明日家の人間の中で、
彼一人のみが心優しくその才能に恵まれていなかった。
彼の姉などであれば呼吸一つ乱さない能力の行使で明日真は既に限界を迎えていた。
巨大な心の器と優秀な都市伝説契約適正、それに比例するかのような非人間性を持つ明日家の人間の中で、
彼一人のみが心優しくその才能に恵まれていなかった。
彼の姉などであれば呼吸一つ乱さない能力の行使で明日真は既に限界を迎えていた。
「これで、こっちの話を聞いてくれるといいんですが…」
「…あぁ…………まぁ、その為にも」
「…あぁ…………まぁ、その為にも」
近づいてきたエーテルが突如彼の後ろの方に視線を送る。
「あの二人を監視しているのであろう存在を、何とかしないとな」
「えっ?」
「えっ?」
明日真は猫レンジとの契約が切れてからというもの探知能力が激減していた。
「あら?気づかれていたのかしら?」
その声の主にも、聞こえていたのだろう
ふわり、それは姿を現した
ふわり、それは姿を現した
「さすがかしら。さすがは、「組織」上層部かしら」
現れたのは、少女
まるで、道化のような装束を身にまとった少女だった
目深にかぶった帽子のせいで表情ははっきりとわからないが、口元を見る限りだと笑っているようだ
なかなか、流ちょうな日本語だ………若干、語尾がおかしいが
まるで、道化のような装束を身にまとった少女だった
目深にかぶった帽子のせいで表情ははっきりとわからないが、口元を見る限りだと笑っているようだ
なかなか、流ちょうな日本語だ………若干、語尾がおかしいが
「ぁ……」
「「十三使徒」ともあろうものが、無様かしら。でもまぁ、仕方ないかしら」
「「十三使徒」ともあろうものが、無様かしら。でもまぁ、仕方ないかしら」
くすくす、少女は笑っている
嘲笑っているようなその様子に、真は警戒態勢を取る
嘲笑っているようなその様子に、真は警戒態勢を取る
「…お前が、あの二人を無理矢理戦わせていたのか!?」
「違うかしら。私は、ただあの二人を監視していただけかしら」
「違うかしら。私は、ただあの二人を監視していただけかしら」
真の問いかけに、少女はあっさりと答える
向けられる敵意におびえた様子もなく、くすくすと笑い続けている少女に、エーテルは問いかける
向けられる敵意におびえた様子もなく、くすくすと笑い続けている少女に、エーテルは問いかける
「監視…だけでは、ないだろう?」
「その通りかしら。二人が敗北したり、エイブラハム様を裏切る様子があったら、報告するよう言われていたかしら」
「………っ」
「その通りかしら。二人が敗北したり、エイブラハム様を裏切る様子があったら、報告するよう言われていたかしら」
「………っ」
少女の答えに、ジョルディがますます怯える
気絶しているイザークの体を護ろうとするように、抱え込んで
気絶しているイザークの体を護ろうとするように、抱え込んで
……くすくすと
少女は、笑う
少女は、笑う
「…でも。私が信じているのは、エイブラハムじゃなくて、メルセデス様かしら」
「………?」
「ジョルディ・ムダーラ。メルセデス様の命令かしら、あなた達を見逃してあげるかしら!」
「………?」
「ジョルディ・ムダーラ。メルセデス様の命令かしら、あなた達を見逃してあげるかしら!」
明日真は思案する。
教会内部も一枚岩ではないのだろう。
それは今回のイザークとジョルディの行動を見ても明らかだ。
ならば彼ら以外にも無理矢理動かされている人が居るのかも知れない。
そんな時だった
教会内部も一枚岩ではないのだろう。
それは今回のイザークとジョルディの行動を見ても明らかだ。
ならば彼ら以外にも無理矢理動かされている人が居るのかも知れない。
そんな時だった
「それじゃ、告げるべき事は告げたかしら。私はここでおさらばかしら」
「っ、待て!?」
「っ、待て!?」
エーテルの言葉に、真が少女を捕まえようと動いた
が…………っふ、と
少女の姿が、掻き消える
が…………っふ、と
少女の姿が、掻き消える
「っ幻!?」
『ローズは幻と情報のエキスパート「ニバス」の契約者かしら!つかまったりなんてしないかしら!』
『ローズは幻と情報のエキスパート「ニバス」の契約者かしら!つかまったりなんてしないかしら!』
っふ、と
少女が姿を現したのは……ジョルディとイザークの、目前
怯えた様子を見せて……しかし、イザークを護ろうとする体勢のままのジョルディに、少女は笑って
少女は何かを二人に告げている
だが明日真にはそれが聞こえなかった
まずは二人の様子を確かめるために明日は彼らの傍に近づく
少女が姿を現したのは……ジョルディとイザークの、目前
怯えた様子を見せて……しかし、イザークを護ろうとする体勢のままのジョルディに、少女は笑って
少女は何かを二人に告げている
だが明日真にはそれが聞こえなかった
まずは二人の様子を確かめるために明日は彼らの傍に近づく
「……おい」
「っ!?」
「っ!?」
ジョルディは怯えた様子だった。
「ジョルディさん、大丈夫。俺達は、貴方達に戦う意思がないなら、これ以上戦いません」
「………」
「………」
明日真の意志は既に固まっていた。
彼らを不幸にした悪い奴が居る。
悪い奴が居るならば倒す。
明日真、この男の行く道には正義か死しかないのだ。
彼らを不幸にした悪い奴が居る。
悪い奴が居るならば倒す。
明日真、この男の行く道には正義か死しかないのだ。
「……駄目、それじゃ、駄目なんだ…」
「ジョルディさん?」
「…戦わなきゃ……ボクが、戦わなきゃ……」
「もう、戦わなくともいい。あのローズマリーとか言う奴は、お前達を見逃すと言っていただろう?…メルセデスの命令で、と言うのは気にかかるが…」
「----っでも!」
「……でも!ボクが戦わないと!!ボクが負けたり、エイブラハム様を裏切ったら…………っ」
「……っイザークが、また……………屍に、戻ってしまう………」
「-----!?」
「ジョルディさん?」
「…戦わなきゃ……ボクが、戦わなきゃ……」
「もう、戦わなくともいい。あのローズマリーとか言う奴は、お前達を見逃すと言っていただろう?…メルセデスの命令で、と言うのは気にかかるが…」
「----っでも!」
「……でも!ボクが戦わないと!!ボクが負けたり、エイブラハム様を裏切ったら…………っ」
「……っイザークが、また……………屍に、戻ってしまう………」
「-----!?」
そんなことになっていたとは明日真はまるで知らなかった。
まあ知っていたからと言って彼の行動が変わったかと言えば否なのだが
まあ知っていたからと言って彼の行動が変わったかと言えば否なのだが
「どういうことだ?」
「…イザークは、一度、死んでいるんです……ボクのせいで。ボクが、イザークに助けを求めたから……」
「でも……そのイザークを、エイブラハム様は、蘇らせてくれて………ボク達が、エイブラハム様の言うことを聞いていれば………イザークを、このまま生かしてくれる、って…」
「…イザークは、一度、死んでいるんです……ボクのせいで。ボクが、イザークに助けを求めたから……」
「でも……そのイザークを、エイブラハム様は、蘇らせてくれて………ボク達が、エイブラハム様の言うことを聞いていれば………イザークを、このまま生かしてくれる、って…」
だからか
だからだったのか
だからだったのか
「……っだから。ボク達が、負けたら…戦うのを、諦めたら、裏切ったら。イザークは、屍に戻されてしまう。ボクは………そんなの、嫌だ。絶対に!」
「そんな……」
「そんな……」
それならばなおのこと許せない
明日真の心の器に再び力が注ぎ込まれる
悪への怒りを力に変えて明日真の動力炉が再び脈を打つ
身体は限界であっても
心は軋んでいても
その信念に一切の揺らぎ無し
明日真の心の器に再び力が注ぎ込まれる
悪への怒りを力に変えて明日真の動力炉が再び脈を打つ
身体は限界であっても
心は軋んでいても
その信念に一切の揺らぎ無し
「……イザークは、その事実を知っているのか?」
「…イザークは、知りません……逆に、勘違いさせられています」
「勘違い?」
「……あの時死んだのは、ボクの方だ、って思ってる。自分が戦い続けないとボクが屍に戻されると、そう勘違いしてる…」
「…イザークは、知りません……逆に、勘違いさせられています」
「勘違い?」
「……あの時死んだのは、ボクの方だ、って思ってる。自分が戦い続けないとボクが屍に戻されると、そう勘違いしてる…」
「………ねぇ」
救いを求めるように
ジョルディは、真とエーテルを見つめた
ジョルディは、真とエーテルを見つめた
今は、監視者がいない
自分達は解放されている
自分達は解放されている
「ボク達は、どうすればいいの?」
春の光に雪が溶けていくように
「……どうすれば。イザークは、屍に戻らずにすむの?」
彼の押し込めていた感情が露出して
「………お願い、です」
-----止まらない
「………ッボク達を……………助けて…………!!」
「――――――――――――助ける!」
明日真は高らかに叫んだ。
「おい待て、そうは言っても君はもうボロボロじゃないか!?」
「折れた骨は能力で差し替えれば良い。黒服さん、止めないでください。」
「折れた骨は能力で差し替えれば良い。黒服さん、止めないでください。」
一歩、足を踏み出す
「君一人では無理だ。」
「じゃあ黒服さんもついてきてください。俺達以外にももう誰か戦っているかも知れない。」
「じゃあ黒服さんもついてきてください。俺達以外にももう誰か戦っているかも知れない。」
もう一歩、壊れたバイクをチラリとも見ない
「場所のアテは有るのか?」
「そこらへんに転がってる教会の契約者を片っ端から締め上げれば良い。」
「そこらへんに転がってる教会の契約者を片っ端から締め上げれば良い。」
明日真の瞳に灯る黒い耀が意志の強さを物語る。
彼は一度覚悟さえしてしまえばいくらでも残酷になれる。
エーテルは彼が来るまでに公園の近くで見た“殺されていないだけ”の契約者の姿を思い出した。
彼は一度覚悟さえしてしまえばいくらでも残酷になれる。
エーテルは彼が来るまでに公園の近くで見た“殺されていないだけ”の契約者の姿を思い出した。
「解った、じゃあはっきり言おう。」
「はい。」
「君では勝てない。被害を広げる結果になるから先に進むのをやめるんだ。」
「悪いですが…………。」
「はい。」
「君では勝てない。被害を広げる結果になるから先に進むのをやめるんだ。」
「悪いですが…………。」
遙か遠くから響く水冷4ストローク70°V型4気筒1,197ccのエンジン音。
バイクの音だ。
明日真は携帯電話を取りだしてボタンを何回か押す。
バイクの音だ。
明日真は携帯電話を取りだしてボタンを何回か押す。
「お断りです。」
「――――――まさか!?」
「――――――まさか!?」
そこに来てエーテルは初めて明日真の“厄介さ”を完全に理解した。
耳障りなブレーキ音と共に無人のバイクが明日真とエーテルの間に止まった。
純白のボディ、それにそぐわぬ力強いフォルム。
ヤマハの生み出した怪物「V-MAX」である。
この学校町に住むとある探偵の愛車と同じ、否、カスタムによってそれ以上の性能を持っている。
耳障りなブレーキ音と共に無人のバイクが明日真とエーテルの間に止まった。
純白のボディ、それにそぐわぬ力強いフォルム。
ヤマハの生み出した怪物「V-MAX」である。
この学校町に住むとある探偵の愛車と同じ、否、カスタムによってそれ以上の性能を持っている。
「予備の特注品です。」
明日家の両親はプロスポーツ選手である。
そして彼らは金だけ家に入れて明日真の世話をまったくしていなかった。
故に祖母が死んで以降、明日真の金の使い方を止める人間は居ない。
そして彼らは金だけ家に入れて明日真の世話をまったくしていなかった。
故に祖母が死んで以降、明日真の金の使い方を止める人間は居ない。
「それじゃ!」
特撮もびっくりの展開に驚いてエーテルの動きが一瞬止まる。
それに乗じて明日真はアクセルをひねった。
それに乗じて明日真はアクセルをひねった。
―――――――バスン!
軽く、気の抜けた銃声、倒れる明日真。
「なっ!?」
「えっ?」
「えっ?」
その場にいた全員が驚いた。
明日真が狙撃されたのだ。
何時から彼らを狙っていたというのだろうか?
何故今まで撃たなかったのだろうか?
疑問は尽きない。
イザークが起きていれば先ほどの殺気の正体だと見破れたのだが今の彼は気絶している。
明日真が狙撃されたのだ。
何時から彼らを狙っていたというのだろうか?
何故今まで撃たなかったのだろうか?
疑問は尽きない。
イザークが起きていれば先ほどの殺気の正体だと見破れたのだが今の彼は気絶している。
「はにゃあ~ん?」
その場で気絶する明日真。
「なんだこれは!?」
エーテルが少し時間をかけて調べたところどうやら特殊な加工をしたゴム弾のようで、
人に当たると同時に収縮し、中に入っている麻酔薬が人体に注入される仕組みらしい。
人に当たると同時に収縮し、中に入っている麻酔薬が人体に注入される仕組みらしい。
「わざわざこんな物を用意できるなんて……どこの誰だ?」
エーテルは首をかしげる。
「組織の者です!謹慎中なのに抜け出した契約者を連れ戻しに来ました!」
「……誰だ?」
「あ、君は!」
「どうもこんにちわジョルディさん。真がご迷惑をおかけしました。
そしてお初にお目にかかります黒服さん、私は恋路、どこにでも居る只の契約者です。
明日君とはいつも一緒にお仕事をしています。」
「…………知っているのか?」
「……誰だ?」
「あ、君は!」
「どうもこんにちわジョルディさん。真がご迷惑をおかけしました。
そしてお初にお目にかかります黒服さん、私は恋路、どこにでも居る只の契約者です。
明日君とはいつも一緒にお仕事をしています。」
「…………知っているのか?」
エーテルの問いかけにジョルディは頷く。
「ならばこいつを任せたいと言いたいところだが……。
普段組んでいる相手を撃つ人間に任せて良い物か……。」
「それなら多分、きっと、大丈夫……です。
僕は二人が一緒に居るところを見ましたし……。」
「ならば大丈夫か。」
「これ以上彼が派手に動く前に回収しないと大目玉食らっちゃうんですよ。
だから黒服さん、お願いします!」
「……まあそういうことにしておこう。」
「むにゃむにゃ……恋路ぃ~助けて~、やっぱむり正直きついってこれ……。」
「……寝言も聞けたし。」
「夢の中でも戦ってる……。」
「夢の中だと弱音吐くみたいですね。」
普段組んでいる相手を撃つ人間に任せて良い物か……。」
「それなら多分、きっと、大丈夫……です。
僕は二人が一緒に居るところを見ましたし……。」
「ならば大丈夫か。」
「これ以上彼が派手に動く前に回収しないと大目玉食らっちゃうんですよ。
だから黒服さん、お願いします!」
「……まあそういうことにしておこう。」
「むにゃむにゃ……恋路ぃ~助けて~、やっぱむり正直きついってこれ……。」
「……寝言も聞けたし。」
「夢の中でも戦ってる……。」
「夢の中だと弱音吐くみたいですね。」
恋路は明日真を担いでV-MAXにまたがる。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫です、私も乗れない訳じゃないんで。」
「そうか……。」
「それよりもジョルディさんのことをお願いします。」
「…………解った。」
「それじゃあジョルディさん、また四人でダブルデートとでもしゃれ込みましょう。」
「えっ?」
「大丈夫です、私も乗れない訳じゃないんで。」
「そうか……。」
「それよりもジョルディさんのことをお願いします。」
「…………解った。」
「それじゃあジョルディさん、また四人でダブルデートとでもしゃれ込みましょう。」
「えっ?」
恋路は彼を担いだままバイクを操って学校町の風景の中に消えていった。
さらっとノーヘルだったのだがまあご愛敬である。
【電磁人の韻律詩65~戦い終わって~】
さらっとノーヘルだったのだがまあご愛敬である。
【電磁人の韻律詩65~戦い終わって~】