「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 陛下と僕と獣の数字-04

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陛下と僕と獣の数字 第四話】

「なるほど、そういうわけで君は僕の家に無断で、しかも土足であがった訳だ」

「あ、あははは……いやそのたまったまですね。そちらの不定形で名状しがたきスライムが……」

「スライムじゃない!彼女は僕の愛しい人だ!
 それ以上その耳障りな音を出してみろ!今すぐ僕は君を殺す!」

「…………」

 やあ、全国の視聴者の皆様こんにちわ。金子セージだ。
 今日僕は陛下と一緒にお買い物をしている最中に何か名状しがたきものを見つけてしまってちょっとついていったら拉致されちゃったんだよね。
 謎のお兄さんに縛り上げられて地下室に監禁中さ!
 あーあ、どうせ同じ目に遭うんだったら金髪でちょいと吊り目で背が低いんだけど出るところは出ている美人さんにやられたかったな。
 ああそうだ、陛下にやってもらおう。
 グルグル巻にしてもらって蹴ってもらおう。
 うひょおおおおおおおおおおたまんねえや!妄想しただけでこのつらい現実も忘れられるぜ!
 え?なんでわざわざ名状しがたきものを追いかけたかって?
 ほら、僕って寺生まれじゃん?
 だからなんていうかこういうのってほうっておけないでしょ?
 あ、僕が「日常がー」とか「平和がー」っていってばかりの一昔前の無気力系キャラだと思った?
 違うんだよ、寺生まれだからやっぱり地域の人々の為とか思って妙なものごとには余計な詮索をしちゃうんだなー
 しかも大抵ヒットなんだよこれがさあ……
 え?じゃあなんで陛下を連れてこないかって?
 それはほら、女の子を巻き込まないようにと思ってね。
 ちゃんと「用事を思い出したから先に帰ってて!」とか言ったから。
 おれのばあかああああああああああああああ!

「そうか、君もまた彼女の美しさが分からないのか」

 え?

「じゃあ簡単だ」

 眼の前のお兄さんがニヤニヤと笑っている。

「君も」

 お兄さんの右腕がドロリと溶ける。

「同じようにしてあげよう」

 はい腕を高く上げて!陛下!陛下!助けて陛下!
 早く来てええええええええええええええええ!

「そこまでだ!」

 壁をぶち抜く轟音。
 来た!クラウディア皇帝陛下いらっしゃった!
 これでかつる!

「なんだい君は?」

「我が名はクラウディア・リインカーネーション・オクタウィア!
 獣の数字の契約者にして!そこの男の仕えている皇帝である!」

「そう、それでは皇帝陛下」

 男は指を鳴らす。

「死ね」

 突如としてクラウディアの後ろから漆黒のスライムが投網のような形になって襲いかかる。

「ふん、他愛ない。皇帝に隠し事なぞ通用せん」

 クラウディアは右手から冷気を放ってスライムを凍らせる。
 獣の数字による“絶対命令権”で“借り上げていた”都市伝説の力だ。
 彼女は一時的に他の都市伝説の力を奪い取ることができるのだ。
 しかしどこで奪い取ってきたのだろう。

「馬鹿な……!?」

「これは誅伐だ。黙して頭を垂れよ
 我が庭を荒らし、我が家臣に無礼を働いた罪は大きいぞ」

 そう言ってクラウディアは拳を振り上げる。
 男は叫び声をあげて抵抗しようとするがその時間も与えずに彼女の拳は男の胸を貫いた。
 そして心臓を抜き取り……握りつぶした。

「フハハハハハハハハハハハハ!なんだ!
 なんだなんだなんだなんだ!
 てっきり貴様の血はそこの化物を同じく黒く染まっていると思っていたが……
 契約がまだ浅かったらしいな!人間ごときが皇帝に勝利できる道理は無い!」

 クラウディアはそう言って笑った後に僕のロープを解く。
 忘れそうになるが彼女は残酷だ。
 僕を含めた自分の所有物を守るためならばどこまでも。
 でもその姿は単に愉悦に酔っているようにも見える。
 僕は少しだけ怖くて、だけど狂おしいほどに愛らしくも感じられた。
 あの狂気が、凶気が、狂喜が。
 獣の数字を持つ暴君、貴方はあまりにも美しい。


「―――――私聞いたこと有るよ、皇帝を刺すのは何時だって奴隷だってね!」


 クラウディアが僕に肩を貸したまさにその瞬間。
 憎しみに彩られた少女“のような”声が響く。

「危ない!」

 凍りついていたスライムが再び動き始める。
 それは高速で陛下の心臓を狙う……が、僕がそれはさせない。
 何もできない僕だけど、男の子だから今目の前に居る女の子を守ることだけはできる。
 僕はクラウディアを突き飛ばした。
 胸が貫かれる。

「させんよ」

 だがそれはあのスライムによってではない。

「こいつは私の臣下で……大事な友だちだ」

 陛下が、僕の胸を貫いていた。

「獣の数字の名前において命ずる」

 赤い光がスライムに注ぎ込まれる。
 あんな膨大な心の力を注がれては並の都市伝説なら耐えられない。
 よしんば耐えたとしてもその頃には獣の数字が持つ魔力によって存在改変が行われている筈だ。
 同一存在でいることはできない。

「自害せよ」

 スライムは光の粒となって消滅した。
 陛下は僕の胸から腕を抜き取る。
 傷はない。
 痛みもない。

「これは……?」

「ふん、皇帝特権によってあの錬金術師から能力を借りてきたのだ」

「錬金術師……?」

「お前が先ほど会った男だよ、まあ良い。この辛気臭いところをさっさと出るぞ」

 陛下は僕の手を引っ張る。
 だが僕はそんな陛下の手を握って彼女をその場に引き止める。

「少し待っててくれないかな?」

 僕は手をあわせて簡単にお経を唱える。 
 声が空間に染みとおる。
 淀んだ空気が透き通っていく錯覚さえ覚える。
 クラウディアはきょとんとした表情で僕を見ていた。

「よし、おしまい」

「何をしていたのだ?」

「お経唱えてたの、今の人達を弔っていたのさ」

「今の奴らは敵ではないか」

「山川草木悉皆成仏、死ねば人すら仏だよ」

「つまり……セージはお前を殺そうとした奴らにすら情けをかけたのか」

「違うけど今はまあその理解で良いよ」

「なるほど……面白い、今のお経とやらを教えよ
 これは皇帝の命令である」

「え?」

「敵にすら慈悲を与えるとはいかにも王らしいではないか
 その考え方、気に入ったぞ」

「は、はあ……」

「そうと決まったらまずは帰宅だ!急ぐぞ!」

「はいはい、解ったから腕引っ張るな」

「それはそうと私の活躍がなければ貴様は死んでいたのだからそこらへんは感謝することを許可しよう
 あと私の華麗な戦いぶりについて言葉を尽くして賞賛することも特別に許可してやる
 詩人でない貴様には中々荷が重いとは思うが何緊張することはない
 私は寛大故言葉の拙さはいくらでも許して……」

「はいはい、そういえばアイス買い忘れてたから帰りに買っていこうか」

「わーい!」

 無邪気に喜ぶクラウディアを見つめながら僕はどうやって彼女に踏んでもらおうか真剣に考えていた。

【陛下と僕と獣の数字 第四話 おしまい】


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