「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 陛下と僕と獣の数字-06a

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陛下と僕と獣の数字 第6.5話】

「くっ……どちらも想像以上の能力だった」

 半身から血を流しながらも歩き続ける男。
 這い寄る混沌ナイアトラップ。
 彼はクラウディアによる拘束とトトに使役された九郎の斬撃で瀕死となっていた。
 しかしそれでもバラバラになった存在を繋ぎあわせて自らの肉体を再構成。
 この世に再び具現しようとしていた。

「だがしかし、詰めが……甘かったな
 我々の内に目覚めた自殺衝動、そして眠れるアンチ・クライスト
 良いさ、今はしばらく力を溜めて……再びこの街を悪意で染めてやる」

 そう言って、這うようにして路地裏の闇へと溶けていこうとする這いよる混沌。

「駄目だ」

 ガシリ、と男の頭をつかむ腕。
 死の舞踏、振り返った男はそんな題名の絵画を思い出した。

「お前に明日は来ない」

 厳かに呟く髑髏の仮面。
 驚くほど軽い音をさせながら這い寄る混沌の頭骨が砕けていく。

「や、やめてくれ!」

 “これ”は這いよる混沌の中でもとびきり弱い個体だ。
 そしてとびきり弱い個体であるがゆえにとびきり強い悪意を持っている。
 単純に純粋に、都市伝説の力さえ使わずに無力な人々を害することだけに特化した個体。
 だからこそ、こんな悲鳴もあげる。

「お前に」

 仮面の青年は厳かに繰り返す。

「明日は」

「やめろ!離せ!くそっ!なんで逃げられないんだ!少し身体をバラバラにすればそれだけで……!」

「来ない」

 仮面の青年は何本かの骨を地面から取り出すと這い寄る混沌を串刺しにして地面に貼り付ける。

「ほう、私がやられたか」

「しかしそやつは私の中でも最弱の存在」

「策を弄して数を殺すことしかできない」

「化身と呼ぶにもはばかられるような小物だ」

 それと同時に次々と現れる異形の怪物達。
 或るものは象のような鼻をした四腕の巨漢。
 或るものは幾つ物触手が絡まりあった異形。
 或るものは無数の目がついた蝙蝠。
 そして或るものは純白の美しい肉体に赤いマフラーだけを巻いている。
 まるでヒーローのように。
 見るだけでも正気を削られていくような狂気の一群。
 しかし仮面の青年は怯まない。

「死神の力を得ているな?」

「答える義理はない」

「ふん、我々を前に逃げる素振りすら見せぬとは……人間も愚かになったな」

「俺は悪を見過ごさない」

 言うが早いか仮面の青年はまず巨漢の顔面を殴り潰す。
 青年に掴みかかろうとした巨漢の腕をバク転で回避して空いた土手っ腹に前蹴りを叩きこむ。
 横から現れた触手の数々を手刀で切り裂くとその一品に骨を仕込ませて飛んでいた蝙蝠向けて投げつける。
 直撃、目を貫かれた蝙蝠はふらふらと落ちて行く。
 蝙蝠を踏みつけにして英雄の似姿とでもいうべき邪神の化身が青年に襲いかかる。
 蹴りと蹴り、拳と拳、同時に幾つもぶつかる。

「猛れ狂骨!」

 後ろから跳びかかった巨漢を肋骨のような形をした刃が八つ裂きにする。

「その姿ではどちらが正義か解からんな?」

 “英雄(エロイカ・パロディア)”とでも呼びたくなるその化身は笑う。
 しかし哀れなものでも見るかのように青年はそれを見下して仮面の下から嘆息する。

「正義とは誰かに認めてもらうことではない。自らに恥じぬことだ」

「は?」

 その刹那、仮面の青年――明日真――の拳が邪神を貫いた。
 ただの拳であれば死ぬことはなかっただろう。
 しかしその拳は死神の鎌の具現。
 いくら程度の差があろうとも、いくら神の化身であろうとも、死は等しく訪れる。 

「その魂、旭日の光と散華しろ」

 彼らの戦場に朝日が差す。
 それと同時に歪な英雄の巨像は光の粒子になって消滅した。

「さて、次はこいつか」

 青年は仮面を外して写真を覗き込む。

「こいつが鍵になるっていうのが本当なら……」

 裏に蜜柑のマークがついたその写真には褐色の肌と白い髪の少女が写っていた。

【陛下と僕と獣の数字 第6.5話】

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