秋祭り 2日目より
「あ"~くそ、見つかんねぇな! ≪夢の国≫」
「本命以外ならそこかしこにいるがな」
まったく、その本命とやらは探して見つかるものなんだろうか。そもそも隠れるのがやたら上手いからこんな差し迫った状況になるまで≪夢の国≫は放置せざるを得なかったんじゃなかったか?
南区ウォーターアミューズメントパーク敷地外周、≪夢の国≫の契約者を≪夢の国≫と繋がりのある黒服さんの感覚を頼りに探しつつ(ぜんぜん見つからない)住人を潰して回っているうちに、
「あ、あれは」
変態と赤い靴の嬢ちゃんを発見した。
二人揃ってパレードに囲まれていてこれまた二人揃って住人をちぎっては投げちぎっては投げしているが多勢に無勢っぽい。
徐々に、徐々に囲まれていっている。
見た感じあれは、
「やばくね?」
そう言って傍らのTさんに声をかけようとすると、
「あれ?」
Tさんは既に二人に向かって走り出していた。
「本命以外ならそこかしこにいるがな」
まったく、その本命とやらは探して見つかるものなんだろうか。そもそも隠れるのがやたら上手いからこんな差し迫った状況になるまで≪夢の国≫は放置せざるを得なかったんじゃなかったか?
南区ウォーターアミューズメントパーク敷地外周、≪夢の国≫の契約者を≪夢の国≫と繋がりのある黒服さんの感覚を頼りに探しつつ(ぜんぜん見つからない)住人を潰して回っているうちに、
「あ、あれは」
変態と赤い靴の嬢ちゃんを発見した。
二人揃ってパレードに囲まれていてこれまた二人揃って住人をちぎっては投げちぎっては投げしているが多勢に無勢っぽい。
徐々に、徐々に囲まれていっている。
見た感じあれは、
「やばくね?」
そう言って傍らのTさんに声をかけようとすると、
「あれ?」
Tさんは既に二人に向かって走り出していた。
●
「くそ、赤い靴め、何故パレードが出たのに退かない」
彼は走る。目の前では夏場の盛況ぶりがすっかりなりを潜めてしまい人気の全くないウォーターアミューズメントパークのウォータースライダーが見え、その敷地のすぐ外では赤い靴と彼の契約者が夢の国の住人に追い込まれつつあるのがよく見えた。
契約者も赤い靴もどうやら大した膂力の持ち主のようだ、住民相手に2人で善戦している。しかし、
「多勢に無勢だ。それに≪赤い靴≫はたしか能力の本質が複数相手に戦闘するのには相性が悪い」
以前共闘したときのことを思い出す。赤い靴はその嗜好に多大な問題があるものの契約者を守ろうとする意思はしっかりしていたはずだ。そして彼の力は異人さんとして相手を異空間に引きずり込むこと。それは異界に逃走するという強力な逃亡手段ともなり得る力だ。
なぜそれをここで使わない!
「いや、そんなことはどうでもいいか」
この祭りに来てしまったのはおそらく自分があの子の父親を利用したからだ。そうでもなければあの子は庶民の祭りなどには参加することはなかったかもしれない。
契約者の方が住民に手を掴まれた。振り払おうとするが次次と子供らの手が彼女を掴む。
「離せ!」
赤い靴が契約者を庇おうとしているがそちらにも手が伸びている。
「こらこら、そこでその二人に倒れられたら俺がひどく気にするじゃないか」
走りながら力を振るう準備をする。
「あの二人を避けるように力が奔れば俺は幸せだ」
祈る、己の身の内に溶けたケサランパサランへと。瞬時に身の内に力が漲るのを感じる。そして、漲る力を咆哮と共に解き放つ。
「破ぁ!!」
横一線に手を振るう。
手を横に薙ぐ動きに合わせて白い光弾がいくつか飛び出しパレードを襲う。
着弾。
パレードの住人が粉々に吹き飛び消滅した。
「大丈夫か?」
二人のもとに駆け寄りながら彼は声をかける。
「ああ、一応な」
「ゲッホ、ケホ、……っ、来るならもっと早く来なさいよ!」
文句をつけている赤い靴の契約者の首を鷲掴みにしたまま腕から先以外が消滅した子供の手を赤い靴が払う。
立ちあがった赤い靴の契約者だが、
「しつこいわね」
疲れた声で言う。彼女の視線の先にはどこからか再びやってきた夢の国の住人の姿があった。
「キリがないか」
彼は赤い靴に振り向く。
「赤い靴、異空間へ早く逃げろ」
言われた赤い靴は肩をすくめる。
「そうしたいがそうもいかんのだよ」
「なに?」
「どうやら≪夢の国≫に何かやられたらしい。異界が形成できん」
赤い靴の言葉に彼は追いついてきた黒服たちを見る。
「黒服さん」
彼の言葉に黒服は頷く。
「ええ、どうやら≪夢の国はその事業を常に拡げている≫ことからくる結界、領域侵食能力でしょう」
「結界侵食ってーと、」
彼の契約者は首をひねりつつ何かを思い出そうとする。
そう、と思い至ったのか彼女は明るい顔になり、人差し指をピン、とあげつつ、
「ほら、怪奇同盟とかいうのの結界もやっぱりやばいのか?」
その言葉を受けた黒服はやはりええ、とうなずき、
「おそらく危険でしょうね」
簡潔に答える。
「だが街中を不用意に歩きまわるよりいくらかマシだろう」
彼はそう言って黒服に目くばせする。黒服は心得たようにうなずくと赤い靴とその契約者に声をかける。
「ではついてきてください。≪夢の国の地下トンネル≫に」
彼は走る。目の前では夏場の盛況ぶりがすっかりなりを潜めてしまい人気の全くないウォーターアミューズメントパークのウォータースライダーが見え、その敷地のすぐ外では赤い靴と彼の契約者が夢の国の住人に追い込まれつつあるのがよく見えた。
契約者も赤い靴もどうやら大した膂力の持ち主のようだ、住民相手に2人で善戦している。しかし、
「多勢に無勢だ。それに≪赤い靴≫はたしか能力の本質が複数相手に戦闘するのには相性が悪い」
以前共闘したときのことを思い出す。赤い靴はその嗜好に多大な問題があるものの契約者を守ろうとする意思はしっかりしていたはずだ。そして彼の力は異人さんとして相手を異空間に引きずり込むこと。それは異界に逃走するという強力な逃亡手段ともなり得る力だ。
なぜそれをここで使わない!
「いや、そんなことはどうでもいいか」
この祭りに来てしまったのはおそらく自分があの子の父親を利用したからだ。そうでもなければあの子は庶民の祭りなどには参加することはなかったかもしれない。
契約者の方が住民に手を掴まれた。振り払おうとするが次次と子供らの手が彼女を掴む。
「離せ!」
赤い靴が契約者を庇おうとしているがそちらにも手が伸びている。
「こらこら、そこでその二人に倒れられたら俺がひどく気にするじゃないか」
走りながら力を振るう準備をする。
「あの二人を避けるように力が奔れば俺は幸せだ」
祈る、己の身の内に溶けたケサランパサランへと。瞬時に身の内に力が漲るのを感じる。そして、漲る力を咆哮と共に解き放つ。
「破ぁ!!」
横一線に手を振るう。
手を横に薙ぐ動きに合わせて白い光弾がいくつか飛び出しパレードを襲う。
着弾。
パレードの住人が粉々に吹き飛び消滅した。
「大丈夫か?」
二人のもとに駆け寄りながら彼は声をかける。
「ああ、一応な」
「ゲッホ、ケホ、……っ、来るならもっと早く来なさいよ!」
文句をつけている赤い靴の契約者の首を鷲掴みにしたまま腕から先以外が消滅した子供の手を赤い靴が払う。
立ちあがった赤い靴の契約者だが、
「しつこいわね」
疲れた声で言う。彼女の視線の先にはどこからか再びやってきた夢の国の住人の姿があった。
「キリがないか」
彼は赤い靴に振り向く。
「赤い靴、異空間へ早く逃げろ」
言われた赤い靴は肩をすくめる。
「そうしたいがそうもいかんのだよ」
「なに?」
「どうやら≪夢の国≫に何かやられたらしい。異界が形成できん」
赤い靴の言葉に彼は追いついてきた黒服たちを見る。
「黒服さん」
彼の言葉に黒服は頷く。
「ええ、どうやら≪夢の国はその事業を常に拡げている≫ことからくる結界、領域侵食能力でしょう」
「結界侵食ってーと、」
彼の契約者は首をひねりつつ何かを思い出そうとする。
そう、と思い至ったのか彼女は明るい顔になり、人差し指をピン、とあげつつ、
「ほら、怪奇同盟とかいうのの結界もやっぱりやばいのか?」
その言葉を受けた黒服はやはりええ、とうなずき、
「おそらく危険でしょうね」
簡潔に答える。
「だが街中を不用意に歩きまわるよりいくらかマシだろう」
彼はそう言って黒服に目くばせする。黒服は心得たようにうなずくと赤い靴とその契約者に声をかける。
「ではついてきてください。≪夢の国の地下トンネル≫に」
●
彼女は適当にパレードの状況を見て回っていた。
「契約者たちと戦っている子たちはともかく、黒服さんたちくらいになら負けないね」
状況は局所的にはそれぞれの戦場を受け持っている契約者相手には互角ないし劣勢。全体的には町を守る結界を削っているのと≪夢の国≫に対抗できる人間の全体数の少なさから見て、
「明日には町は≪夢の国≫だね」
そう言って彼女は嬉しそうに笑む。
そんな彼女を幾人かの黒服が取り囲んだ。
「あれ、見つかっちゃった」
彼女の言葉に黒服たちは無言で銃を構える。
「つまんないの。黒服ってみんなこんなのだよね。でも前あった黒服さんはもっと面白かったけどなぁ」
彼女はそう言いながら背後の路地に駆けて行く。
黒服たちは彼女を追い、先頭にいる三人の黒服が路地いっぱいに広がって銃を構える。そしてその暗がりに無言で発砲。
銃からは確かに弾や何らかの光線が放たれた。
しかし、彼女の声は聞こえた。
「知ってる? 王様はね?」
そしてその声は、
「契約者たちと戦っている子たちはともかく、黒服さんたちくらいになら負けないね」
状況は局所的にはそれぞれの戦場を受け持っている契約者相手には互角ないし劣勢。全体的には町を守る結界を削っているのと≪夢の国≫に対抗できる人間の全体数の少なさから見て、
「明日には町は≪夢の国≫だね」
そう言って彼女は嬉しそうに笑む。
そんな彼女を幾人かの黒服が取り囲んだ。
「あれ、見つかっちゃった」
彼女の言葉に黒服たちは無言で銃を構える。
「つまんないの。黒服ってみんなこんなのだよね。でも前あった黒服さんはもっと面白かったけどなぁ」
彼女はそう言いながら背後の路地に駆けて行く。
黒服たちは彼女を追い、先頭にいる三人の黒服が路地いっぱいに広がって銃を構える。そしてその暗がりに無言で発砲。
銃からは確かに弾や何らかの光線が放たれた。
しかし、彼女の声は聞こえた。
「知ってる? 王様はね?」
そしてその声は、
――王様は一人しか居ないけどね、世界中のどこにも居るんだよ――
黒服たちの背後から、聞こえた。
彼等が慌てた動きで振り向――
「えい」
さくり、と。
黒服のうちの一人の背中にナイフが突き刺さった。
そのまま彼女はもう片方の手に持った鉈を振りかぶり、首にたたき落とす。
次の黒服にも同じように鉈を振り下ろす。
切る、切る、切る、そして鉈の背で殴打。更に路地から黒服の残骸をパレードが飲みこむ。
「ごちそうさま」
一分と時間をかけることなく黒服は消滅した。
「次は……あ、お姫様たちの気配がするよ」
そう言って彼女は路地に消えた。
彼等が慌てた動きで振り向――
「えい」
さくり、と。
黒服のうちの一人の背中にナイフが突き刺さった。
そのまま彼女はもう片方の手に持った鉈を振りかぶり、首にたたき落とす。
次の黒服にも同じように鉈を振り下ろす。
切る、切る、切る、そして鉈の背で殴打。更に路地から黒服の残骸をパレードが飲みこむ。
「ごちそうさま」
一分と時間をかけることなく黒服は消滅した。
「次は……あ、お姫様たちの気配がするよ」
そう言って彼女は路地に消えた。