「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 夢幻泡影-75

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Retsuya

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だれでも歓迎! 編集
―――――ま、だ………








―――――まだ………くたばれねぇ………








―――――やることはまだ……沢山残ってんだ……







―――――こんなとこで……終わる訳には………!!








『いつまで寝てるのかね、マスター?』




その声で、裂邪はようやく目覚めた
目の前の光景は、彼には僅かながらに信じがたい光景
黒煙が獅子の形を成したような怪物が、紫炎に拒絶されて悔し気に呻いている
ふわふわと浮遊する「ティルヴィング」が、彼等を守るようにしてそこに存在していた

「……っは、2番目くらいに見たくなかった明晰夢だな」
『そんな冗談を言えるくらい元気そうで何よりだよ』
「ま、余り体力は、残っちゃいないみたいだけど」

力の入り辛い足に活を入れ、よろめきながらも立ち上がる
黒い獅子―――マヤ神話にて、最初に誕生した人間を喰らい尽くした魔神「コッツバラム」は、
腹を空かせたのか、口から湧水の如く溢れ出る涎を際限なく垂らし続けていた

「一応、礼は言わせてもらうぞ……有難う。守ってくれたみたいだな」
『勘違いしないで欲しいね。君が死ねば僕も消えるかも知れないからね…あくまで自己防衛さ』
「そういう事にしておこう…あと、一つ気になった事がある」
『何だね?』
「さっきローゼちゃんと戦った時、お前が呟いた………“アル”って誰だ?」

ナユタは厳密に言えば「ティルヴィング」を纏う「憑依霊」であり、表情と呼べるものがない
しかしこの時、剣を覆う霊体が、激しく揺らめいたのが視認出来た
何か理由があるんだな―――裂邪は確信した

「……話せない事なら良い。聞かなかった事にしてやる」
『僕の初恋の人だよ』
「ッ……!?」
『君が“融合”と呼んでいる状態が解除される直前に、人間だった頃の記憶を思い出したんだ
 何処で暮らしたのか。誰と過ごしたのか。――――――何故、人間を棄てたのか』

「コッツバラム」は空腹の余り、洞窟の壁に八つ当たりを始める
がらがら、と天井の一部が音を立てて崩れた

『思えば人斬りなんて馬鹿馬鹿しい事をしたよ。後悔してもどうにもならないのは分かってる
 そもそも僕が存在してはならない存在である事も、ね』

ギハハハ、とナユタは笑った
霊体の波打つ様、その声色から、泣いているようにも聞こえた

『……マスター』
「何だ」
『もし今日でこの世が滅ばなければ……
 君や君の弟、君のお友達が、この世界を救う事が出来た時は……僕を殺してくれないか?』
「あぁ、分かった………ただし」

一歩、ようやく裂邪は歩みを始めた
疲労しているというのに、その一歩は怒りが込められた為か、とても力強かった

「残酷な死刑宣告をしてやろう
 その時が来たと判断したら、望み通りお前を殺してやる
 それまでは生き続けろ」
『なっ……!?』
「お前の言う通り、お前は沢山の罪も無い人々を殺した
 事実、俺もお前に殺されかけた
 だから殺して下さいだと? 甘えてんじゃねぇよ
 確かに後悔したって何にもなんねぇよ。でもお前が死んだって何にもなんねぇだろ
 罪から逃げたって誰も救われねぇだろ!?
 せめて、殺してきた人達の分も生き続けろ!
 一生皆に謝り続けて、一生消えない罪を背負い続けろ!
 それが、お前に与えられた罰だ!!」
『…………』
「都市伝説になる前、好きな人がいたんだろ?
 それを思い出せたなら、もうお前は同じ過ちを犯す事は無いだろう
 人が誰かに愛されて生きてるって事を、お前も知ってるってことだから」

一歩、また一歩と歩み寄り、彼はナユタを左手に取った
いよいよ怒り狂いだした「コッツバラム」が、待ちかねたとばかりに戦闘態勢をとった

『ギハハハ…分からないね、君はまだ僕を手元に置こうと言うのかね?
 僕は君を切り刻んだ者だとつい先程君が言ったところだろう?』
「あぁ。俺はお前を許した訳じゃない
 ただ……お前の罪を一緒に背負うのも契約者としての、
 いや、“家族”としての俺の責務だと、俺は考えている」
『……全く、君には呆れて物も言えないね…人斬りである僕を“家族”と呼ぶのか?』
「文句があるなら来なくて良い
 無いのなら………このデカブツをたたっ切ってやろうぜ、ナユタ!」
『…仰せの儘に…マスター』

ふっ、と裂邪の姿が忽然と消える
獲物を見失った「コッツバラム」はきょろきょろと辺りを見回すが、
彼はその視界に入らない真後ろにいた

「『トータラージーク』!!」

尚も倒れるシェイド達を守るべく燃え続ける紫炎の怪しげな光を刀身に受け、
「ティルヴィング」は「コッツバラム」に向けて一筋の閃光を放った
くるりと瞬時に振り返った「コッツバラム」は大口を開けてその一閃を呑みこんだ

【どどぎゅうううううううううううううううううん!!!】
「はぁっ!? 光を喰っただと!?」
『厄介な敵だね……少々危険だが肉弾戦しか無さそうだ』
「のようだな、サポートは頼んだぞ!」
『仰せの儘に』

再び「神出鬼没」で姿を消し、今度は「コッツバラム」の正面に現れる
未だに先程裂邪がいた方向に目を向ける黒獅子の喉をかっ切ろうと剣を振り上げた
だが、「コッツバラム」はすぐに反応し、鋭い牙で剣を抑えた

「っ!? 暗闇の中なのに反応が早過ぎる…!?」
『恐らく“匂い”だね……肉食獣のように嗅覚が発達してるんだ』
「ましてや血も出してるsおわっ!?」

右から振られた尻尾の一撃を回避できず、そのまま地面に叩きつけられる
げふっ、と血を吐きながら、尚も彼は立ち上がった

『くっ、すまない、反応が遅れた』
「……いや、今のは俺が悪かった………“右側が見えねぇ”んだよ」

右目から滴り続ける真っ紅な血
―――正義と戦った時についた怪我が、ここで響くとは思わなかったな
そう想いはしたが、不思議と彼は正義を恨む事は無かった
寧ろ、己の弱さを余計に悔いた
だがしかし、今はそんなことをしている場合ではない

「っ来る!!」

迫りくる牙を、「ティルヴィング」を構えて迎え撃とうとした
ところが、「コッツバラム」は検討違いな方向へ突き進んでいった
否、“突き飛ばされて”いったのだ

【どどぎゅうううううううううううううううううううううぅん!?!?】
『何?』
「この気配……まさか!?」

紫炎に僅かに映ったそれは、紫炎を反射する程に美しい灰色がかった装甲だった
70にも上るキャタピラのついた装甲車がムカデの如く一繋がりの車両を形成し、
その先頭車両には4基のドリルと、2つのランチャーパックが配備されている

「ビオ………ビオなのか!?」
『知り合いかね?』
《……Tasogare Retsuya,認証…………助立チ,デアリマス》
「恩返しってか……有難う、ビオ!」

倒れて動けなくなった「コッツバラム」の尾を切り落とした
バランスを失いつつも立ち上がる「コッツバラム」に向けて、
ビオは全車両の機関銃でありったけの弾丸を打ち込む
それを待っていたのだろうか、「コッツバラム」は大口を開けて弾丸を喰らいだした

「ちっ、ビオ! そいつに銃火器は無意味だ―――――――」

その直後、「コッツバラム」の口が突如閉まり、多量の弾丸をもろに受ける
思わず言葉を詰まらせた裂邪だったが、暗がりに僅かに見えた無数の黒い腕、
そしてその気配を感じ取り、理解した

「あいつら…まだ元気だったのか」
「待タセタナ、命知ラズノ馬鹿契約者」

シェイドは更に無数の腕を影から伸ばし、「コッツバラム」の巨体を持ち上げた
そしてそれは暗闇に浮かぶ、無数のシャボン玉に囲まれていた

「『ブレイカブル』!!」

声と共にシャボン玉は爆裂し、黒獅子を爆破の嵐に巻き込んだ

「「『ミットライト』ォ!!」」

ウィルの炎を纏った理夢が勢いよく突撃し、その巨体は強く岩盤に叩きつけられる
洞窟内全体に響くように大きな雄叫びをあげる「コッツバラム」
だがその声は、確実に、先程よりも弱まっていた

「お前等……有難う、後は俺達に任せろ!!」

裂邪の声に応えるように、彼の周りを13の紫炎の玉がくるくると回り始めた
「ヴァルプルギスの夜」のようだが、今までの反応と少し違う

「………こ、これは………?」
『ほう、僕が契約した時には使えなかった能力だね
 「ヴァルプルギスの夜」は、魔女達が集まって黒魔術の儀式を行うという話がある
 この火の玉は魔女の魂だよ』

暫くして13の火の玉は円陣を組んで止まり、
裂邪を中心にして、足元に紫色に輝く五望星が出現した

「……そういうことか…分かった、力を貸して貰おう
 巨大化しろ、「ティルヴィング」!!」

彼がそう言うや否や、またも13の火の玉はぐるぐると回り始め、
紫の輝きが一層強まったかと思えば、
宣言した通りに、「ティルヴィング」が洞窟の天井に届く程に巨大になった
これを裂邪が容易に持つ事が出来るのは、ナユタが彼に憑依して補助しているお陰だろう

《………援護,開始………》

ビオの4つのドリルが激しく廻り始め、
倒れた「コッツバラム」のいる岩盤を抉り取り、そのまま投げ飛ばした

「はあああああああ!!『プシタータ・マトリョシカ』!!」

宙に浮いた状態の「コッツバラム」を、巨大な剣で文字通り一刀両断した
すぱんっ!!と斬られた黒獅子は断末魔を上げる事無く、ただ静かに、闇へと消えていった

「……よし、一旦、終わったか………」

巨大化した「ティルヴィング」が元に戻った瞬間に、裂邪はどさりと腰を落とした

「だ、大丈夫ですかご主人様!?」

すぐにミナワを筆頭に、仲間達が彼に駆け寄る
ヒヒッ、と彼は笑いながら、ミナワの頭をぽふ、と撫でた

「あぁ、平気だよ………お前等こそ、無事で良かった
 それと、わざわざ有難うな、ビオ―――――――――――――あれ?」

ふと洞窟内を見渡したが、その巨大なヘビ型兵器の姿は、何処にもなかった
恐らく、もう行ってしまった後なのだろう

「そういや、あの無駄にカッコいいロボット、何だったんだ?」
「ま、色々あってな…………それより、だ」

無理に立ち上がろうとする裂邪を、ミナワがあたふたしながら止めに入る

「あ、ご、ご主人様、今動いたら身体が持ちませんよ!?」
「何とか持たせるさ…………今日が終わる、その時までは」

ふらつきながらも、彼は立ち上がり、
右目の血を拭いながら、シェイドに視線を向けた

「シェイド、『シャドーダイブ』の準備だ。行先は分かるな?」
「……了解シタ……ダガ、策ハ在ルンダロウナ?」
「あぁ。麻夜を救う確実な方法が、たった一つだけ」

彼は腰に巻かれたベルトを握りしめながら、周囲の目を確認した
ミナワ、理夢、ウィル、そしてナユタも、向かう覚悟は出来たようだ

「…終わらせるぞ、全部!」



   ...To be Continued

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