「……ここだな」
真夜中であるにも関わらず、電気系統が一切機能していない自動販売機に手を触れる裂邪
ここは東区のとある場所
青く光る街灯が数本立っている程度で、それ以外は何の変哲もない住宅街だ
ここは東区のとある場所
青く光る街灯が数本立っている程度で、それ以外は何の変哲もない住宅街だ
「覚えてらっしゃるかしら?……この場所のこと」
かつん、かつん、とヒールの音が閑静な住宅街に高く響く
赤い長髪を揺らしながら、少女は――ローゼは懐かしげにそう問うた
赤い長髪を揺らしながら、少女は――ローゼは懐かしげにそう問うた
「…かつて、俺はここで都市伝説に襲われた女の子を助けた…つもりだった
実はその子は都市伝説の契約者で、俺なんかより滅茶苦茶強かった
まさか、「組織」が誇るNo.0の一人だとは、夢にも思わなかったけど」
「あれから1年……時の流れは早いものですわね」
「1年も経ってるのに何でこの自販機は新しくならないんだろうな」
「本当は「組織」の方で対処するべきなのだけど、
ワタクシが壊してしまった上にワタクシがこんなところを歩いている事がバレてしまうと、
大量の始末書を書かされてしまうので……報告してませんの」
「酷ぇ理由だな;」
実はその子は都市伝説の契約者で、俺なんかより滅茶苦茶強かった
まさか、「組織」が誇るNo.0の一人だとは、夢にも思わなかったけど」
「あれから1年……時の流れは早いものですわね」
「1年も経ってるのに何でこの自販機は新しくならないんだろうな」
「本当は「組織」の方で対処するべきなのだけど、
ワタクシが壊してしまった上にワタクシがこんなところを歩いている事がバレてしまうと、
大量の始末書を書かされてしまうので……報告してませんの」
「酷ぇ理由だな;」
暫しの談笑を楽しみつつ、最初に切り出したのは裂邪だった
「……単刀直入に聞かせて貰うよ。話と言うのは?」
「こちらも、手短に申し上げますわ……「組織」に協力して頂けませんこと?」
「こちらも、手短に申し上げますわ……「組織」に協力して頂けませんこと?」
あまりに唐突な勧誘
しかし裂邪は、この誘いに微動だにしなかった
しかし裂邪は、この誘いに微動だにしなかった
「…つまり、「組織」の指揮下で働いてくれ……ということだな?」
「えぇ」
「そういうシステムがあるのはシェイド達から聞いていた……が、
勧誘はNo.0が直々にやることなのか?」
「んー、最終的な決定はワタクシのようなNo.0かも知れませんけど、
お誘いするのは主に下位ナンバーと呼ばれる方達ですわ♪」
「だろうな、ローゼちゃんらしいや」
「えぇ」
「そういうシステムがあるのはシェイド達から聞いていた……が、
勧誘はNo.0が直々にやることなのか?」
「んー、最終的な決定はワタクシのようなNo.0かも知れませんけど、
お誘いするのは主に下位ナンバーと呼ばれる方達ですわ♪」
「だろうな、ローゼちゃんらしいや」
ヒヒヒ、と軽く笑う裂邪だったが、その笑みはすぐに消え失せた
「…いつかはこういう日が来るだろうと考えていたし
俺もいつかはR-No.の下で働こうと決めていた」
「そ、それでは――――」
「でも……ごめん。今の俺には、ローゼちゃんの誘いに乗る資格なんてない」
「そんなっ、どうして!?」
「俺は!……ローゼちゃんの純粋な気持ちを踏み躙ったんだ……裏切ったんだよ!!
そんな奴が……ローゼちゃんの下で働いて良い訳……ないだろ……?」
俺もいつかはR-No.の下で働こうと決めていた」
「そ、それでは――――」
「でも……ごめん。今の俺には、ローゼちゃんの誘いに乗る資格なんてない」
「そんなっ、どうして!?」
「俺は!……ローゼちゃんの純粋な気持ちを踏み躙ったんだ……裏切ったんだよ!!
そんな奴が……ローゼちゃんの下で働いて良い訳……ないだろ……?」
ずっと、ローゼに背を向けていた裂邪だったが、ローゼには、彼が泣いているのがすぐに分かった
涙を拭いながらも、彼は言葉を紡いだ
涙を拭いながらも、彼は言葉を紡いだ
「……ごめん、ローゼちゃん……俺、誰かに好かれるなんて、考えた事もなかったから……
ミナワだけだと思ってた…俺みたいな奴を、心の底から愛してくれる人なんて……
こんなの、言い訳にもならないのは分かってる……誘ってくれたのは有難う。他に良い契約者がいたら――――」
「裂邪さん!!」
ミナワだけだと思ってた…俺みたいな奴を、心の底から愛してくれる人なんて……
こんなの、言い訳にもならないのは分かってる……誘ってくれたのは有難う。他に良い契約者がいたら――――」
「裂邪さん!!」
怒号と共に、彼は背中に温もりを感じた
背後からローゼが強く抱きしめていたからだ
背後からローゼが強く抱きしめていたからだ
「……どうしちゃったんですか…もういいって、さっき電話で申し上げたのに……貴方らしくありませんわ……
いつもの貴方は、楽天家で、能天気で、目立ちたがりで向こう見ずで、ちょっとえっちで……
でも……明るくて、優しくて……いつもワタクシを支えてくれる……ワタクシのヒーローで………」
「……」
「この1年間、貴方に支えられてばかりでした……もう、貴方なしじゃやっていけませんの………
お願いです………「組織」に……R-No.の『Ranger』に入って下さい……
今回だけ…ワタクシのワガママに付き合って……裂邪さん……!!」
いつもの貴方は、楽天家で、能天気で、目立ちたがりで向こう見ずで、ちょっとえっちで……
でも……明るくて、優しくて……いつもワタクシを支えてくれる……ワタクシのヒーローで………」
「……」
「この1年間、貴方に支えられてばかりでした……もう、貴方なしじゃやっていけませんの………
お願いです………「組織」に……R-No.の『Ranger』に入って下さい……
今回だけ…ワタクシのワガママに付き合って……裂邪さん……!!」
言葉が止まり、彼の背に泣き縋るローゼ
その様は何ゆえか何処となく背徳的なムードが流れているが
裂邪は思い切り涙を拭って、ようやく口を開いた
その様は何ゆえか何処となく背徳的なムードが流れているが
裂邪は思い切り涙を拭って、ようやく口を開いた
「……ッバカ、それじゃどう聞いても愛の告白だろ」
振り返り、彼女の涙を人差し指で拭う
ヒヒッと笑って、彼はローゼに目を合わせた
ヒヒッと笑って、彼はローゼに目を合わせた
「…分かった。ローゼちゃんを、R-No.を、俺の全身全霊をかけて支えるよ」
「え……そ、それって……」
「R-No.所属の契約者として……俺を雇って下さい、R-No.0」
「え……そ、それって……」
「R-No.所属の契約者として……俺を雇って下さい、R-No.0」
そっと微笑みかける裂邪
ローゼはその円らな瞳から一層涙を溢れさせ、彼に飛びついた
ローゼはその円らな瞳から一層涙を溢れさせ、彼に飛びついた
「裂邪さぁん!!」
「っちょ、おわっ!?」
「っちょ、おわっ!?」
あまりに突然のことで上手く支えられず、裂邪はそのままローゼに押し倒される形となった
ローゼは泣きじゃくりながら、ぺちぺちと彼の身体を叩いた
ローゼは泣きじゃくりながら、ぺちぺちと彼の身体を叩いた
「カッコつけてナンバーで呼ばなくても今までみたいに『ローゼちゃん』で宜しいですのよ!
改まって敬語なんて使わなくても今までみたいに普通に話して下さって宜しいですのよ!!」
「え、そんなので大丈夫なの?」
「ワタクシと貴方の仲ですの、誰も咎めはしませんわ!」
「…じゃ、分かったよ、ローゼちゃん」
改まって敬語なんて使わなくても今までみたいに普通に話して下さって宜しいですのよ!!」
「え、そんなので大丈夫なの?」
「ワタクシと貴方の仲ですの、誰も咎めはしませんわ!」
「…じゃ、分かったよ、ローゼちゃん」
ぽふぽふと、裂邪は優しくローゼの頭を撫でた
何回撫でただろうか、ほんの数回というところでぴたりと彼女は泣きやんだ
と思えば、不意に身体を起こして裂邪の顔に己の顔を近づけた
その顔は少し紅潮しており、思わず彼は生唾を飲んだ
何回撫でただろうか、ほんの数回というところでぴたりと彼女は泣きやんだ
と思えば、不意に身体を起こして裂邪の顔に己の顔を近づけた
その顔は少し紅潮しており、思わず彼は生唾を飲んだ
「………ど、どうかした、のか?」
「…裂邪さん、一生のお願い、なのだけれど……」
「…裂邪さん、一生のお願い、なのだけれど……」
ひそひそと、ローゼは裂邪に耳打ちする
「はぁ!?」と驚いたような甲高い声をあげて裂邪は僅かに上体を起こした
「はぁ!?」と驚いたような甲高い声をあげて裂邪は僅かに上体を起こした
「し、正気か?」
「み、ミナワちゃんには、内緒で……その、貴方以外には、考えられなくて、その……ダメ、ですの?」
「み、ミナワちゃんには、内緒で……その、貴方以外には、考えられなくて、その……ダメ、ですの?」
うるっとした上目遣いで裂邪を見つめるローゼ
はぁ、と彼は今度は深く溜息を吐いた
はぁ、と彼は今度は深く溜息を吐いた
「……良いよ。俺で良いのなら」
そう言ってローゼの頭の後ろに手を持っていくと、
彼女を引き寄せて、裂邪は彼女の小さな唇を奪った
彼女を引き寄せて、裂邪は彼女の小さな唇を奪った
† † † † † † †
「……ローゼちゃん、大丈夫か?」
「う、うぅ……まだ、こ、腰が………こんなのを毎日してらっしゃるの?」
「毎日やってたら妊娠するわw 安全日くらいしかやってないよ
ま、まぁ、1日の回数はあれだが」
「…ミナワちゃんを尊敬するべきなのか……同情するべきなのか、分かりませんわね」
「待て、俺よりミナワの方が求めてくるんだからな?」
「俄かに信じがたいですの」
「う、うぅ……まだ、こ、腰が………こんなのを毎日してらっしゃるの?」
「毎日やってたら妊娠するわw 安全日くらいしかやってないよ
ま、まぁ、1日の回数はあれだが」
「…ミナワちゃんを尊敬するべきなのか……同情するべきなのか、分かりませんわね」
「待て、俺よりミナワの方が求めてくるんだからな?」
「俄かに信じがたいですの」
ワイシャツの袖に腕を通しながら、彼女はジト目で彼を見た
くすっ、と小さく笑ったのはどちらが先か、2人は声を揃えて笑った
くすっ、と小さく笑ったのはどちらが先か、2人は声を揃えて笑った
「…では、後程また御連絡下さる? お迎えに参りますの」
「あぁいや、迎えなら午後で大丈夫だ。連絡できないからな」
「ふえ?」
「ローゼちゃんと戦った時のショックか……スマホが壊れた」
「あらら……それで繋がりませんでしたのね;」
「そゆこと。んじゃ、シェイド――――――あ゙」
「あぁいや、迎えなら午後で大丈夫だ。連絡できないからな」
「ふえ?」
「ローゼちゃんと戦った時のショックか……スマホが壊れた」
「あらら……それで繋がりませんでしたのね;」
「そゆこと。んじゃ、シェイド――――――あ゙」
ピタッと裂邪の動きが止まった
かと思えば、声とは言えない声を漏らしながら、冷や汗を流してゆっくりとローゼの方に振り向いた
かと思えば、声とは言えない声を漏らしながら、冷や汗を流してゆっくりとローゼの方に振り向いた
「……ど、どうかなさって?」
「やべ………こんなのシェイドに見られてたらミナワに……」
「あ、御心配無く。ここ、異空間ですの」
「へ?」
「やべ………こんなのシェイドに見られてたらミナワに……」
「あ、御心配無く。ここ、異空間ですの」
「へ?」
裂邪は気を落ち着かせ、集中して気配を読み始めた
確かにシェイドの気配は感じられず、それどころかミナワはおろか、他の都市伝説、その契約者も感じられない
確かにシェイドの気配は感じられず、それどころかミナワはおろか、他の都市伝説、その契約者も感じられない
「異空間と言っても、次元が違うだけなのだけれど。ワタクシ達が生きてるのは3次元、ここは11次元ですの」
「……「フォトンベルト」に固有異空間生成能力は無かった筈……進化でもしたってのか?」
「おほほほ、女の子のワガママを舐めないで貰いたいですわ♪」
「そういう事にしておこう……って、何時から移動してたんだ?」
「ワタクシが貴方の姿を見た時ですわ」
「そんな時からこういう展開を考えt」
「っちょ、違っ!こここれは、その、成り行きで、というか……裂邪さんのいじわるぅ!!」
「……「フォトンベルト」に固有異空間生成能力は無かった筈……進化でもしたってのか?」
「おほほほ、女の子のワガママを舐めないで貰いたいですわ♪」
「そういう事にしておこう……って、何時から移動してたんだ?」
「ワタクシが貴方の姿を見た時ですわ」
「そんな時からこういう展開を考えt」
「っちょ、違っ!こここれは、その、成り行きで、というか……裂邪さんのいじわるぅ!!」
むー!と頬を膨らませるローゼに、ヒヒヒと裂邪は微笑みかけ、
「…それじゃ、また後で」
「ええ。これから、宜しくお願い致しますわ」
「ええ。これから、宜しくお願い致しますわ」
その瞬間、ローゼの姿が消え、
代わりに彼の目の前に黒いローブの人影が出現した
代わりに彼の目の前に黒いローブの人影が出現した
「裂邪!大丈夫カ!?」
「あぁ悪い、異空間でちょっと大事な話をな
もう良いよ、帰ろう」
「話ノ内容ハ?」
「後で皆の前で話そうかと思ったんだが……いっか」
「あぁ悪い、異空間でちょっと大事な話をな
もう良いよ、帰ろう」
「話ノ内容ハ?」
「後で皆の前で話そうかと思ったんだが……いっか」
ふぅ、と息を吐き、彼は真っ直ぐにシェイドを見て、口を開いた
「シェイド。俺、「組織」に入ったよ」
...To be Continued