「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 夢幻泡影-86

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Retsuya

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だれでも歓迎! 編集
「友達?家族?…………くだらない。機械にそんなものは必要ないよ」

その声が聞こえたのは、未だに白煙の晴れない壁に空いた穴からだった
声の主は瞭然……裂邪達は咄嗟に身構えた

「β-No.0! まだ生きて――――――ッ!?」

彼は己の目を疑った
と同時に、その光景に思わずミナワを抱き寄せ、彼女の目を反らさせた
煙のカーテンから現れたのは、上半身の右半分が消失し、
中から輝く体液を零す、β-No.0の凄惨な姿だった
だが、抉れた部分は切れた配線が露出し、火花が飛び散っていた
“肉体”ではなかったのだ
にやっ、とβ-No.0は不気味に微笑んだ

「フフフフ……まだ言ってなかったね
 この身体は「アンドロイド」……型式番号β02-Android-Land&Sky-1886
 さしずめβ-No.2と言ったところかな」
「ハァ!? 身体が別のNo.ってどういうこった!?」
《β-No.0ハ元々身体ヲ持タナイ……「生命エネルギー」ソノモノ,デアリマス
 故ニ,地球上デノ行動ヲ容易ナモノニスルベク,“器”ガ必要不可欠ダッタ……》
『…驚いたね、僕達を虐げていたのは出来損ないのエイリアンだったということか?』
「それは言い得て妙だね、ディシリオン・ダークナイト……僕はそもそもこの地球で生まれた訳じゃない
 信じられないかも知れないけど、宇宙からこの星に漂着したんだよ」
「……もう信じられない光景は何度も見てきた…それくらいどうってことはない」
「物分かりが良い子だ。話が早くて助かるよ」

β-No.0は己の胸の装甲を剥ぎ取ると、
丁度人間でいう心臓の位置にあるリモコンのようなものを掴み、
1・3・1・1の4桁のパスワードを打ち込んだ
がくん、と「氷山空母」が大きく揺れた

「きゃっ!?」
「なっ、地震ですかい!?」
「楽しかったよ、遊んでくれてどうも有難う
 でも遊戯はここまでだ
 申し訳ないけど、君達にはこの冷たい海で眠って貰う事にするよ
 冥土の土産に“良い物”を見せてあげよう」
「おい!お前何をした!?」

その瞬間、ぼんっ!!と鈍い音を立てて「アンドロイド」が爆発四散した
飛び散る破片からミナワを守りながら、裂邪は爆破の後を見た
輝くアメーバのような流動体が、凄まじいスピードで壁の穴の向こうへと飛行していった

「逃げられたか…! ミナワ、怪我はないか?」
「わ、私は、大丈夫です!それよりご主人様は!?」
「良かった、俺も大した怪我はない……ウィル! β-No.0を追えるか!?」
「そ、それが……面目ねぇ、気配を見失いやして……」
《反応皆無……自分モ駄目,デアリマス》
「私モ気ヲ感ジナイ……マルデ消エテシマッタカノヨウニナ」
「消えただと…一体何処へ」
「主!! 皆もこっちに来い!!」

聞こえたのは煙の向こう
何時の間にやら壁の穴をくぐって隣の部屋に行っていた理夢の呼びかけだった
声に誘われ、裂邪達は煙のカーテンを抜けると、
もう一部屋へと繋がる穴の向こうに、光の漏れた大穴の傍に佇む理夢の姿があった
大穴の元に駆け寄り、理夢が促すままに穴の外を覗き込んだ

「なっ……!?」

見えたのは雲、そして海に浮かぶ小さくなった白銀の大陸
「氷山空母」は飛翔していたのだ
先程の揺れは離陸の時のショックらしかった
だが、彼等が驚いていたものはそんなことではない
空中に浮かぶ、凡そ20m程の人型ロボットだった
青いラインの入った純白のボディにそぐわない、巨大な漆黒の翼を持ち、
その背部には、巨大な遠距離武器らしきものが背負われていた
何より特筆すべきは、頭部に飾られたV字の角だ
その姿を見るや否や、裂邪は呟いた

「……ガン………ダム……!?」
《ハハハハハハハ! そうとも! この機体こそ、人類を……いや、宇宙を導くガンダムだ!!》
「そんな、どうしてガンダムなんて!?」
《…β-No.0ハ……「ガンダム計画」ヲ用イテ新兵器ノ製造ヲ計画シテイタ…デアリマス,ガ……》
《そこのガラクタの言う通り。人間とは実に愚かで、且つ面白い事を考えてくれる生き物だよ
 まだ未完成で開発コードを用意してないけど、さしずめ『βガンダムMk-ⅩⅠ』といったところかな
 どうしてもこの技術を用いなければならない事情があってね》

その時、地上からざぱぁん!という激しい音が響いた
海でクジラの群れが泳いでいた

《丁度良い、見せてあげるよ》

背部の遠距離武器を掴み、構えて展開させると、
β-No.0はその銃口を、遥か地上のクジラの群れに向けた

「っおい! 一体何を――――――」
《ターゲット、ロックオン……“M.I.S.A.”、発射》

銃口から一気に放出される光条は、あ、という間に地上に届き、
罪無き生命に無慈悲にも襲い掛かった
声も出なかった裂邪達だったが、ここで違和感を抱いた
光条が消え、また静かな海が広がった
静か過ぎるのだ
今の攻撃がビーム攻撃によるものならば、海水が蒸発するなどしてもおかしくない
それはまるで、クジラの群れだけが忽然と消えたかのような感覚だった

「……都市伝説ノ力、カ……?」
《御明答。この兵器には「ミサウィルス」を使用していてね》

「ミサウィルス」
コンピュータウィルスの一種であり、これに感染すると女性の笑い声が大音量で響き渡り、
この声を聞いたユーザーは魂が抜かれ、永遠に電脳世界に閉じ込められる―――という都市伝説

《この兵器を利用すれば、地球上のありとあらゆる生命体を電脳世界に閉じ込める事が出来る
 人間達は脱出不可能な世界でデータとして永久に彷徨い続け、
 それらが絶望に浸っている間にこの星は僕が機械の惑星に作り変えてあげるんだ
 尤も、この機体には「ダイソン・スフィア」を使って迅速なエネルギー供給を予定していたんだけど、
 それは君達を消す分には必要無いからね》
「ふざけんな! さっきから意味不明な御託を並べやがって!
 人間をネットに幽閉する? 地球を機械に改造する?
 そんなことをして何の意味がある!? お前の真の目的は何なんだ!?」
《意味だの目標だのと、そんなことを追い求めて生きるのが人間の悪い癖なんだ
 何の意味も無く君達(ニンゲン)に作られた僕達(トシデンセツ)が、何らかの目標を持っている訳が無いじゃないか》
「何だと――――――」
「違います!! 確かに、都市伝説として生まれてすぐの私には、生きる意味なんて分からなかったけど…
 ご主人様がそれを教えてくれたから、今の私がここにいるんです!
 私達は人によって創られて、人によって生かされてるんですよ!!」
「人間だけじゃありゃあせん! あっしには契約する前にも、たっくさんの仲間がいやした!
 おめぇさんが否定した仲間って奴が、あっしに生きる楽しさを教えてくれたんでい!!」
「おいテメェ! ベータだかベターだか何だか知らねぇが、俺様の存在全否定か、あ゙ぁ!?
 今まで何も考えずに夢喰ってただけの俺様に、色んな楽しさを教えてくれたのがこの馬鹿主だぞ!!」
「…お、お前等……」
『ギハハハハハハハハハ……β-No.0よ、恐らく君は僕を嘲るだろうが、逆に僕は君を嘲り哂うよ
 僕はマスターから学んだ…人間や都市伝説を強くするのは他でも無い、生きる意味や目標、希望だと!』
《Boss……否,β-No.0……自分ハ今ノBossト契約シ,存在ノ意味,理由,目的,僅カデモ,理解シタ……
 モシモ貴官ガ,Bossノ思想,願望ヲ破壊スルナラ……自分ハ貴官ヲ射殺スル,デアリマス》
「……聞コエテイルカ、β-No.0。最後ニ問ウゾ
 今スグコノ星カラ出テイクカ……我々ニ消サレルカ、好キナ未来(コタエ)ヲ選ベ」

ずらり、と並んだ強い意志
溢れ出る覇気を前に、彼は

《…フフフ、愚問だよ、それは》

銃口を向けて、静かに言い放った

《僕が君達如きに消される訳ないじゃないか》
「ナユタ!」
『仰せの儘に――――――――ッ!? い、移動できない!?』
「何っ!?」
「ご、ご主人様、私もダメです!」
「クッ、コノ艦ノ周辺ガ隔離サレテイルノカ!?」
《なかなか鋭いね。β01-ProjectHabbakuk-SolarRayCannon+DeanDrive-Missile-Sea&Sky-1943の展開するフィールドには、
 「時空の歪み」が発生するようにしてあるのさ》
「この空母自体がβ-No.1だったってのか!?」
《そしてお別れだ、棺桶となって沈んでくれたまえ》
《Yes,Boss……β-No.,万歳》
「仲間を殺す気か!?」
《僕に仲間なんていないし、壊したものはまた作り直せば良い
 本当は君達も電脳世界に招待しようと思っていたけど、滅茶苦茶にされると困るからね
 さようなら…黄昏裂邪!》

銃口から光が溢れ出し、「氷山空母」を貫いた
寒空に、爆炎と黒煙が広がった








     †     †     †     †     †     †     †







胸糞悪い笑い声が聞こえる

あの野郎が笑ってやがる

一体どれくらいの高さなんだろう

確実に、俺達は海に向かって落ちていた

周りにはシェイドも、ミナワも、理夢もウィルもナユタもビオも、皆いた

けど、気絶してるのか気配が弱い

「レイヴァテイン」は今俺の手にあるけど、身体が上手く動かない

“成す術無し”

とだけは考えたくなかった

「組織」に入って、初めての任務

そんなことはどうでもいい

皆と一緒に、無事に帰りたかった

折角、ビオも家族になったのに

まだ、俺は―――――――――――――――――――
















                             「「裂邪」」












……父さん…母さん……?









           「裂邪さん」
                                      「裂邪さん」

      「裂邪!」            「お兄ちゃん」

            「裂兄ぃ」                「裂兄ぃ!」


       「師匠!」        「黄昏クン」             「黄昏」



  「裂邪!」      「黄昏くん!」        「裂邪」            「裂邪!」


        「黄昏くん」        「裂邪くん!」          「裂邪様♪」









……聞こえる…………俺を呼ぶ、皆の声が………!








                  《Boss》



                           『マスター』




             「旦那ァ!」
                         「主!」



                  「ご主人様♪」




                   「裂邪!」










                  「お兄ちゃん!」


















その瞬間、時間が止まったような気がした


身体の奥底から、力が漲ってくるような


勝てる可能性が今、この手の中にあるような


――――皆で帰れるような気がした


――――皆で変えられるような気がした


――――皆で返せるような気がした



「……良いだろう! “人間”に戻れなかったとしても……この世界を守れるなら、それでいい!!
 シェイド! ミナワ! 理夢! ウィル! ナユタ! ビオ!
 お前等、俺と一緒に……“(アク)”を引き“裂”いてくれるか!?」


俺の手の「レイヴァテイン」が、金色の水に変わった


「当、然……了解シタ!!」


シェイドの身体が、黒い流動体になる


「勿論です…ご主人様!!」


ミナワの身体が、青くきめ細かい泡となる


「ッククク……OKィ、馬鹿主!!」


理夢の身体が、白い煙のようになる


「がってん承知でい、旦那ァ!!」


ウィルの身体が、赤々と燃え広がっていく


『仰せの、儘に……マスター!!』


ナユタの身体が、「ティルヴィング」さえも巻き込んで紫の濃いもやになる


《Yes………Boss…………!!》


ビオの身体が、バラバラになって灰色の液体に変わった


黒、青、白、赤、紫、灰、金


俺の身体は七つの色に取り込まれた




身体中が熱くなる




もう敗ける気はしない




7つの力が一つになった




俺に……“俺達”に裂けない邪はない





俺達の名は






【『黄  昏  裂  邪(ラグナロク・レンディーヴィル)』!!】



   ...To be Continued

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