「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 僕は小説が書けない-03

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匿名ユーザー

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 弟が家に来た翌朝のことである。

「おい悲喜、起きろ」

 時刻は朝六時、リビングのソファで寝ていた僕は生まれて初めて美少女に起こされるという経験をしていた。
 特に何が良いって若干つり目気味のツインテ黒髪美少女にやや乱暴に起こされているというシチュが良い。
 まず吊り目っていうのが良い。
 世間の皆様は吊り目というときついイメージを思い浮かべるかもしれないが、世の中というのはうまくできていてそういう娘に限ってデレると甘々なのだ。
 そのギャップにより生まれる萌えの小宇宙は普段ノンキしている僕ですら我を忘れてしまうほどのものである。
 さらに僕にしかデレないというプレミアム感が小市民たる俺の卑小な自尊心を高めさせる。
 しかもレモンちゃんは見た目は中学生くらいなので更にプレミア倍率ドンである。
 世間一般の中学生のガキというものは概ね僕のようなダメ人間には冷たいだけなのだがレモンちゃんは僕にこれだけいじめられても健気に朝起こしに来てくれる。
 こんなに俺に構ってくる女性はおかーちゃんくらいのものである。
 中学生のプレミア感とおかーちゃんの鬱陶しさをかけることで全てが好転するのだ。
 あとやや乱暴に起こされているってのもまた良い。
 乱暴にしちゃうがそれでも起こしに来ちゃうってところに既にツァンディレの萌芽を感じさせるではないか。
 男っぽい口調も萌えである。
 一人称こそ“私”だが彼女は意識して男性っぽくしゃべっている気配が有る。
 それは逆を言えば自分の女性である部分をどうしようもなく意識しているということであり、それはすなわち彼女に自分が女性であると意識させるようなことをしたくなりますねデュフフフフフフということなのだ。
 でも実際彼女をこうして家まで連れ込んできたものの僕は何もできないチキン野郎なのである。
 彼女は確かにあの女を殺していたが、それで萎えたわけではない。
 ナマの女の子にあれこれして好意を向けてもらうというのが僕にとってファンタジーなのである。
 僕は画面の向こうの女の子になら何度でも好きと言われたことはある。
 だが彼女らが見ているのは僕がかぶっているプロデューサーやクラスメイトといった皮なのであり僕自身ではない。
 それが僕に安心を与えてたわけだが今回はそうもいかない。
 そもそもレモンちゃんは僕のことをウザいとか言ってたのだ。
 あの時はとっさにナイフを投げて助けてくれたけどそれだってあくまでお互いの生存の為であって……
 とまあ考えていても仕方ないのでとりあえず返事することにした。

「やあレモンちゃん、どうしたんだい?」

「そのレモンちゃんというのをやめろ」

 睨まれた。
 やだ可愛い。

「だって名前無いんだろ? ならどう呼んだって僕の勝手じゃないか」

「くっ……とにかくやめろと言ったらやめろ!」

「……じゃあ良いよ、なんて呼べば良い?」

 彼女は明らかに「しまった」という表情を浮かべて僕から目をそらす。
 まだ考えてなかったのか。

「……ジャック?」

 安直である。

「解ったよジャックね、ジャックちゃんジャックちゃん」

「ふっふっふ、分かれば良いんだ」

 若干満足そうな顔をしているが哀れである。

「ジャックちゃん、昨日の俺と路樹の話聞いてた?」

「……悪いが、カレーを食べた後から記憶が」

「そうか、じゃあ仕方ないから話してやろう」

 僕は昨日弟から幽霊屋敷の探索を頼まれたことを彼女に話した。
 彼女は何故だか興味深そうにそれを聞いていて、全部聞き終わると僕が聞く前に

「私も行くぞ! 絶対行くからな!」

 と言い出した。

「なんでそんなやる気満々なのさ
 まあ僕も今日の内に急いで行こうとは思ってたけど」

「私のような都市伝説はそういう場所が好きなんだよ
 あんた達が温泉でのんびりするのと一緒だ」

 浴衣姿ではしゃぐジャックちゃんを妄想する。
 良いね……すごく良い。

「なんか変なこと考えてるだろ」

 この以心伝心っぷりに運命を感じちゃうのは僕だけでしょうか。

「本当にウザいしキモいし救いようがないな……」

 ジャックちゃん笑顔がひきつってらっしゃる。
 蔑まれてる! 今黒髪美少女に蔑まれてる!
 でもネットで煽られただけで二週間くらい根に持つ僕は少し傷ついてしまう。
 興奮するんだけど少し嫌な気分にもなるのだ。
 面倒くさい!

「…………」

「ど、どうしたなんか喋れよ」

「あー……うん」

 ジャックちゃんが明らかにうろたえ始める。

「わ、悪かった。言い過ぎた
 今日はお前にちょっと話が有ってきたんだけどそのなんていうか……私は口悪いからさ
 ここ、今回は本当にお前を傷つける気は無かったんだよ」

 声が震えている。
 どこか怯えた感じだ。
 もしかしたら都市伝説というのはメンタルが不安定なのかもしれない。
 情緒不安定で依存気味な殺人鬼少女…………

「きたあああああああああああああああああああああああああああ!」

 僕は思い切りベッドから飛び上がって彼女に飛びつく。
 若干膨らみかけの胸に顔をうずめていい匂いを胸いっぱい吸い込む。
 頬をスリスリしてそのまま床に押し倒す。

「ジャックちゃんかわいいよっひょおおおおおおおおおおおおおう!」

「いやああああああああああああ!? おいやめろ何してるんだ馬鹿ぁ!」

 派手に蹴り飛ばされた。
 ソファの上に逆戻りである。

「……愛が行き過ぎて悲しみを生むこともあるよね」

 天井を眺めてちょっとそれっぽい台詞を言ってみる。

「す、すこし優しくしたからって勘違いするな馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿!」

 ちょっと泣きそうになってるジャックちゃんかわいい。

「分かった。僕が悪かった。びっくりしただろう、ごめんな?」

 真面目な顔して謝ることもできないわけではないのだ。

「分かれば良い、分かれば……まったくもう」

「それで話って?」

「あ」

 この女、忘れていたらしい。

「忘れてたのか」

「うるさい、あんたのせいだあんたの」

 ちょっと怒ったような口調で言われるとまた押し倒したくなるのでやめてほしい。

「それで用事ってなんだ」

「私と契約しろ」

「嫌だ」

「えぇ……」

 これにはちゃんとした理由がある。

「お前さ、俺と契約したら人間の女性以外も殺せるようになっちゃうんだよね?」

「あ、ああ……
 契約には強化型の契約と限定解除型の契約が有り、私の場合は限定解除型なんだ
 限定解除型は心の力を注げば注ぐほど私の力の拡大解釈が容易くなるから戦闘においては便……」

「便利じゃ駄目なの!」

「はぁ!?」

 ジャックちゃんが戸惑ってらっしゃる。

「弱点の無い無敵の主人公とか今時流行らないでしょ!
 むしろ制限がある中でうまいこと戦っていくってのが格好良いとおもわないか?
 例えば君は初めて僕と会った時に僕を切り刻んでから川に浸して失血死させるって言ったじゃん
 能力の幅が広がればああいう創意工夫を忘れてしまって結果的に物語がつまらなくなるんだよ!
 パワーインフレもそれはそれで面白い
 それは僕だって認める
 だけどそんなんじゃあウダウダと引き伸ばしてぐだぐだと打ち切られる少年漫画みたいになるじゃないか!
 僕はそういう面白くないことは絶対に認めないぞ!」

 僕はテーブルを叩いて強硬に主張した。
 空の酒瓶も一緒にガタンと音を立てる。

「ばっかじゃないのか! あんたは本当に馬鹿だ!
 そんなこと言って殺されたりしたらどうするんだ!」

「面白ければ構わん!」

 所詮この世は一期の夢なのだから。

「くそっ……馬鹿だこいつ……」

「馬鹿で結構コケッコウ!」

 とまあそんな冗談はさておき本当に真面目なところを話すと、だ。
 契約すればこいつには俺が殺せるようになる。
 それはハッキリ言ってかなり怖い。
 確かに殺人鬼少女は萌えだ。
 黒髪ツインテール釣り目な美少女であれば尚更だ。
 だがそれだからといって彼女が我々人間と異なる理屈で動いていることには違いない。
 ならば出来る限りの警戒をしておくのが筋というものだ。
 幸いにもあの黒服たちから奪った光線銃はまだ手元に有る。
 今はまだ様子を見るべきだ。

「言っておくが契約すればあんたにもメリットが有る
 私に力を供給することであんたには私に対する命令権が手に入る
 私はあんたから力を受け取っている間は命令を断れない
 勿論無茶な命令をすればこっちから契約を切るけどね」

「面白い乗った!」

「やった!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねるジャックちゃん。
 可愛い。

「ただし代わりに条件がある」

「なに?」

「レモンちゃんって呼ばせろ!」

「やだ!」

「じゃあ契約しない!」

「ふぅ~!」

 猫のようにこちらを威嚇するジャックちゃん。
 この娘割りとポンコツなのかもしれない。

「しゃあー!」

 とりあえず対抗してみた。

「…………」

「…………」

 三秒くらいするとお互い恥ずかしくなってしまったりする。

「とりあえず、飯食おう」

「うん」

 すっかりこいつとも慣れ合ってしまっている気がする。


    ※    ※    ※


「いやー美味しかった! ごちそうさま!」

「お粗末さまでした」

 ジャックちゃんはお皿の前で手を合わせる。
 本日はチャーハンでした。
 部屋に鉄鍋が有るので作るのも楽ちんである。
 お互い落ち着いたところで先程の契約の話に戻る。
 ここらへんをハッキリさせないと契約するかどうかも決められない。
 結局面白さ最優先だけど。

「そういえばジャックちゃん、契約の時言ってた心の力ってなに?」

「うーん……なんていうか気合みたいな?
 ああやっぱ感情かな、強い感情ほど私たちの栄養になります
 私の場合は人を殺した時に出てくる感情エネルギーの爆発を吸収して生きている感じです」

「成程、契約はそれを人体から直接供給するパスを繋ぐ行為になるのかな?」

「うん、あんたみたいに頭オカシイやつほど心の力の量は多いし質も大抵良くなる
 更に強力な都市伝説と契約したり複数の都市伝説と契約する為のキャパシティもでかくなる」

「マジか」

「マジだって、私はあんたと違って嘘つかないから」

「ふむ……ところで僕は正直者だ」

「うるさいばか!バカバカバカ!」

「馬鹿とは心外だな、僕は理性は無いが知性は持っていると思ってたんだけど」

「知ったこっちゃないよ、只の人間のくせにさんざん私のこと馬鹿にするだろうが……!」

「分かった、それは悪かったよ。組織に喧嘩売っちゃった者同士仲良くしようや、な?」

「それには異存はないな
 だから戦力アップの為に契約しろ」

「うーん、ここまで引っ張っちゃったら何か面白い方法じゃないと嫌だなあ
 契約するって多分割りと重要なイベントだろう?
 ……ああ、そうだ。あの幽霊屋敷で契約しようぜ
 僕の知識だと君たちみたいなお化けって星の流れや場所を重要視するものだろう?」

「折衷案のつもりか?」

「僕は雰囲気が出て面白い
 君は契約してパワーアップ
 お互いに悪くない条件じゃあないかな?」

 ジャックちゃんは真剣な表情で考えこむ。
 僕はその間に手巻きタバコをベランダで吸っていた。
 五分ほどすると彼女は俺に声をかける。

「おい悲喜」

「なんだジャックちゃん」

「その提案に乗ってやる。本当にバカバカしくて付き合いきれないと思わなくも無いが……
 これから先お前の酔狂に延々付き合うことになるのだから、それに慣れておく」

 そこまで幽霊屋敷に興味津々なのか。

「良いだろう。そこまで君が乗ってくれるんならば文句はない
 これから僕のクルマで幽霊屋敷まで行く
 ついてこい」

 僕は棚から車のキーを取り出してマンションの部屋を出る。
 ジャックもどこか楽しげな様子で僕の後ろをピョコピョコ跳ねていた。
 かわいい。

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