「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 僕は小説が書けない-04

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匿名ユーザー

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 僕の住む夜刀浦市の中央を横断する霧川にかかる霧大橋をポルシェの黄色いボクスターで南区に向けて軽快に飛ばしていく。
 流麗なラインが特徴のこの車に乗っていると人の注目をあびることができて大変心地良い。
 これなら女性にもうちょっとモテテも良い筈なのだが何故かこの車のおかげで女性とフラグが立つことは無いのである。
 車目当てで寄ってくる綺麗な感性の女性なんてもう都市伝説なのかもしれない。
 ジャックちゃんは何故か若干アンニュイな表情で窓の外を流れる景色を眺めている。
 会話もなく、録音していたフランス語のラジオ講座だけが流れていく。

「一つ、面白い話をしてあげよう」

「なんた悲喜、お前の話は大抵つまらないって路樹さんが言ってたぞ」

「あの弟帰ったらぶっ殺す」

 というかいつの間にあいつと話していたのだ。

「やめておけ悲喜、お前が酔っ払って眠った後布団かけてくれたのあいつなんだから
 丁度その時私が起きてたんで少し話したんだけどあいつ良い奴だな」

 ああ、自力で寝床作ったと思ったらそんなことなかったんだね……。

「だろ? 自慢の弟だよ」

「あっち誘っておけば良かったかなあ?
 でもなんていうかああいう雰囲気の人って私と相性悪かったりするしなあ……」

 なにこのNTR感。
 まあでもあいつだったらジャックちゃん任せても良い気がする。
 あいつ主人公にしたら良い話が書けそうだし。

「やめてくれ、あいつを危険に巻き込みたくはない」

「解ってるよ。ていうかあんたくらいの人間じゃないと巻き込んでも死ぬし
 死んだら私の心が痛むんだ
 だからさっさと契約してよ、今してよ」

「断る、言っておくが僕は面白く無い限り契約はしないからな
 協力はする、お互いのためにな
 だが契約して君と命を預け合う仲になっていいかはまだわからない
 それに君だって今まで一人でやってこれたんだろう?
 ならば其処まで早急に契約相手を求める必要は無い筈だ
 君にだってもう少し俺の価値を見極める必要がある
 逆にここまで急かされると気になるんだけどさ
 何故君は契約を急ぐんだい?」

「…………」

 彼女はまた黙って外を向いてしまう。

「君はたった一人で戦ってきた
 僕も弟が居るとは言え何をするにもスタンドプレイばかりの厄介者
 一人と一人で敵を共有するだけで十分じゃないか?」

「……お前には解らない
 人間のお前には解りはしないんだ」

 一歩間違えれば聴き逃してしまいそうな声で彼女はそういった。

「人間か……どうだろうな
 僕は人間なのかな」

「何を言っているんだ?」

「なあ、君は何を以て人間を人間とするんだ?」

「……そりゃあ殺せるかどうかだ」

「都市伝説だって殺せるんじゃないのか?」

「都市伝説は死なない。私が死んだところで代わりの切り裂きジャックがいくらでも居る
 私は人々の伝承が集まって一時的に形を為している切り裂きジャックのアバターの一つに過ぎない
 命の存在しない私達に死んだり殺したりなんて感覚は存在しない
 人が、人だけが私達に命の感覚を教えてくれる
 いくら私以外のジャックが居ても私が奪った命だけは私のものだから」

 彼女の心が狂おしげに悶えているのが僕には分かる。
 まるで耳元にそっと囁かれているかのように伝わってくる。

「そうか、契約をすれば、直接人と繋がれば、人を殺す以上に何かを手に入れられると
 君はそう思ったのかい?」

「そんなところだ。何か悪いか?」

「悪いか? と尋ねること自体が君の罪の意識の現れだよ
 君は殺人を犯す罪悪感と悦楽によって意識を揺さぶることで自我を保っているんだ
 これは精神的な食事に等しい
 君は命を無駄に奪っては居ない
 言うなれば命を頂いて、自分を手に入れているんだ
 君は君の存在に疑問を持つことはない、僕はそう思うよ」

「そっか……」

 思うに。
 都市伝説と呼ばれる存在は自然発生的に生まれてくる。
 ならばその精神は生まれたての赤ん坊のように無垢なのではないだろうか。
 そんな存在による殺戮やその他の罪をどうして人間が裁けるのだろう。

「私は、なんなんだろう」

 悲壮さも、絶望も、悔恨もなく彼女は呟く。
 ああなんて哀れなのだろう。
 こんなにもしっかりと大地に立つ足を持っているのに、肝心要の心はこんなにも空っぽだなんて。
 でもそれ故に誰も足を踏み入れぬ雪原のような美しさが彼女にはあるのだ。
 僕が彼女を助けたあの時、彼女はただ月を眺めていた。
 彼女が僕と初めて会った時、彼女は僕と話してくれた。
 この少女は世界と触れ合いたいだけなのだ。
 それを思うと僕は彼女が愛おしくてしょうがなくなる。
 僕は知り合いの女性をこの娘に殺されている。
 だからこの美しい少女がどうしようもなく危険な化け物で、それ故に脆く儚く心惹かれる存在だと認識している。
 そんな危険過ぎる存在は本当ならばあの黒服達のように敵として排除すれば良いのだろう。
 それが人間として最低限の義理というものだ。
 でも僕にはできなかった。
 彼女を助けて、黒服の男を三人殺してしまった。
 面白いからというだけで平気でこんな選択をできる僕の方がよっぽどバケモノだ。
 いいや、面白ければいくらでも聖人になれるのだからもっと質が悪い。

「ジル、と呼ぼう」

「え?」

「僕は君をジルと呼ぶ。呼ばれて恥ずかしい名前ではないだろう
 拒否されるような名前じゃあないものを選んだんだ」

「ま、まあレモンよりはマシだけど」

「君に必要なのは名前だ
 自分が自分であると認められることだ
 僕はそう思う」

「……言ってることがよく解んないぞ?」

 ハッピーバスティ、ジル。

「時が教えてくれるよ」

 僕はそう言って微笑む。

「むー……あんまり生意気言ってると切るぞ」

 ジルは僕のほっぺをつまんでムスッとした表情を浮かべる。

「やめてくれ。それより前方注意だ。車に乗ってるんだからな」

 僕はそう言って急ブレーキを踏む。
 案の定ジルはシートベルトをしていなかった為に頭を窓ガラスにぶつける。

「うぅぅぅうぅ…………!」

 悲しそうな声で唸りながら涙目で睨むな。
 メスをチラつかせるな。脇腹突くな。

「さあ着いたぞ。あれが噂のゴーストハウス、猫股邸だ」

 しかし僕はそれら一切を無視して目の前の古びた邸宅を指さした。

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