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連載 - 次世代の子供達-03

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匿名ユーザー

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 中央高校に転校してから自分は以前とは少し変わった………と、彼女はそう感じていた
 今まで、女友達と言うものを彼女は持った事がなかった
 なにせ、自分は今まで周囲に男性ばかりが集まってきていて、女性の友達を作って遊ぶ暇なんてなかったのだ
 そんな事をするよりも、男共を魅了し、嫉妬の視線を浴びる方が楽しかったし、快感だった
 悔しそうな表情を、恋人を取られた憎悪の眼差しを。受け取るのがなんともなんとも心地よかったのである

 しかし
 ……しかし、である
 この中央高校に転校してきて以来、どうにも、自分に心奪われる男性が少なくなってしまい、その手の眼差しを受ける事も少なくなり
 …そして
 今の彼女には、一人、友人ができていた

「うー……なーんか、手首痛い」
「あはは、慣れない動きだしねー」

 体育の授業中、少し休んでいた彼女に、その友人…ここではYとしておこう…が話しかけてきた
 肩の辺りまで伸びた黒髪で、ややきつめの目つきをしている。体つきは、胸こそ大きくないもののすらっとしていてバランスがとれている
 新体操部をやっている、と聞いているが、なんとなく納得してしまう体格だ。レオタードとか着たら、映えるんじゃないだろうか
 …そういえば、本日の体育の授業は新体操のフープを使った授業で。大半の生徒が、初めて使うフープに悪戦苦闘している中、Yだけは軽々とフープを操って見せていた
 なるほど、納得である

「変に捻った、とかではないんだよね?」
「えぇ、多分大丈夫……だと思う」
「んー、ほら、ちょっと見せて」

 Yに言われて、なんとなく痛む右手首を見せる
 どれどれ……とYは彼女の手首を診察してくれた

「……撚ってはいないみたいだね」
「そう?……ちょっとほっとした。ありがと、優。流石、保健委員」
「あははっ。周りに生傷絶えないのが多いからさぁ。慣れてるんだよね、こういうの」

 怪我の具合見るのとか、と、Yは笑った
 Yの言う「周りの」、と言うのは……恐らく、あの仲良しグループなのだろう、と彼女はそう考えた
 Yは、彼女が日頃突っ込みを入れまくっている仲良しグループの、その一員でもあるのだ
 正直、Yと仲良くなったのもあのナチュラルホモ共へと突っ込みを入れまくっていたのがキッカケなのだ
 ……彼女としては、Yにもあの集団に突っ込みを入れてほしいところなのだが。残念ながら、Yはあんまり突っ込み入れてくれない。おかげで、彼女ばかりが突っ込み要員になってしまっている

 ひとまず、ふぅ、と息を吐きだして彼女は体育館の反対側を見た
 大体育館で体育の授業を行う場合、体育館を天井から下ろす編み幕で分けて男女別に分かれて授業を行う
 幕の向こうでは、男子達がバスケットボールの授業の真っ最中だった
 Hが、その高身長をいかしてダンクシュートを決めている様子等、他の女生徒達も見とれている
 うん、あれは見とれる
 ついでに、Rと見事なコンビネーション等見せていると、ますます見とれる
 あれはずるい、反則だ
 彼女が、そんな事を考えつつ男子の授業を見ていた……その時、だった

「………っあ」

 男子生徒の一人が、具合悪そうに座り込んだ様子が見えた
 顔色悪く座り込んでいる、その人は

「あ、晃。また貧血かな」
「双子の弟のことなのに呑気ねっ!?」

 思わず、Yに突っ込む彼女
 そう、座り込んでいるその男子生徒は、Yの双子の弟、Aだったのだ

 Aは、長い前髪のせいで目元がよく見えず、どことなく暗い印象を感じさせる少年だ
 ひょろっ、とした体型で、体があまり丈夫じゃないらしく、四月も後半となってきたこの時期の段階で、既に数回、保健室に運ばれている
 Yとは双子ではあり、似ていると言えば似ているが、似ていないと言えば似ていない………と言った感じである
 少なくとも、性格はあまり似ていない、と彼女は思っていた
 Yは割りと明るく社交的だが、Aは物静かで一人を好むような……正反対、とまではいかないものの、それに近い

 まぁ、とにかく。そのAが体育の授業中座り込んでいる、となると………やはり、貧血だろうか
 あ、先生も「大丈夫か?」と声をかけに行った
 これは、また保健室へ強制連行コースになるのかな………と、半ば他人事ながら眺めていた
 その時、だった

 周りの女子達が、黄色い悲鳴を上げた
 男子の方からも「おぉおお………!」みたいな声があがった
 うん、あれは思わず、そんな反応になるかもしれない
 彼女と同じようにぽかーん、と見ている者もいるが、声を上げたくなる気持ちもわかる
 何故ならば

「抱っこよ!お姫様抱っこだわっ!!」
「流石、遥!俺達に出来ない事を平然とやってのけるっ!!」
「そこに痺れる!憧れるぅ!!」

 …………

「何やってんの、あのナチュラルホモォオオオオオオオオオ!!!

 ぐったりとしているAを、軽々と横抱きにして運んでいっているHの、その姿に。彼女は思わず盛大に突っ込みの声を上げて
 そんな彼女の隣で、Yは「いつも通り」とでも言いたそうな表情で、からからと笑っていたのだった



「遥様は、昔から面倒見の良いお方ですからね」

 ほわんっ、と、Rはやんわりと笑いながら、そう口にした
 放課後、彼女はRと並んで帰路についていて、その最中に体育の授業中のあの件の事が話題になったのだ

「もうご存知かもしれませんが、晃さんは彼のお母様に似て、お体の弱い方でして。昔から、あぁして体調を崩されることが多いのですが。遥様は晃さんがそのような状態に陥っている様子を見ると、すぐにあぁして、対処してくださるのです」
「うん、まぁ、それはわかるのよ。彼、面倒見いいし。それはわかるんだけど、どうして横抱きになるのかって言う事よ」
「荷物のように運ぶのは、失礼だから、ではないでしょうか?担いで運ぶわけにはいかない、となると、あぁなるかと」

 半ば突っ込み混じりの彼女の疑問に、Rはさらりとそう答えた
 暗に、HはAくらい担いで運ぶくらいできる、とRは言っている訳だが、そこはあまり驚かない
 Aは小柄だし細いので、Hは体格もいいし力もあるので、Aくらいは軽々担げるんだろうなー、と思ってしまうからだ。なんとなく、納得してしまう説得力がある
 が、だからと言って、男が男を自然と横抱きで運んだ件については、納得してはいけない予感がしていた
 こう、納得したらなんか負けのような、そんな気分になってしまうのである

 これも、彼らがナチュラルホモのせいだ
 彼女としては、そう結論づけざるを得ない

(と、言うか………せっかく、龍哉君と一緒に帰ってる、って言うのに、こんな話題って言うのも……)

 我ながら失敗した、とは思うのだが。ついつい、「あれでいいのか」と問うてしまう気持ちを、恐らく自分以外もわかってくれるはずだ、と彼女はそう考えていた

 てくてくと、隣を歩くRは、背筋がしゃきっと伸びていて姿勢がいい
 なんとなく「あぁ、いい家の出身なんだなぁ」とそう感じる雰囲気が、歩いているだけで感じられる
 ……やっぱり、なんとか堕とせないかなぁ、とも思うのだが、どうにもその手段が思い当たらない、と言うのも困ったものである
 あぁ、こうしているうちに、家についてしまった

「っと、私、ここのマンションだから」
「おや、そうだったのですね。では、これで。さようなら。また、明日」

 ぺこりっ、と、Rは丁寧にお辞儀してきた
 その様子に、彼女もついつい、釣られてお辞儀する
 またね、とそう言って、彼女はマンションの中に入っていった。さっさとエレベーターで自分の部屋のある階層まであがり、自分の部屋に入る
 ん~、と伸びをして。さぁ、早く制服を脱いで着替えよう、と思って、制服に手をかけて

 ……その時。ふっと、窓の外を見た
 マンションの前の、つい先程まで、Rと一緒に歩いていたその道を、窓の外から見下ろして

「…………?」

 何か、居る
 多分、人間………だと、思うのだが。なにかおかしい
 それは、白かった。白くて、人間っぽく見えるのだが、人間とは違う………人間とはかけ離れた動きをしていた
 なんだか、こう………

(くねくね、しているような………)

 そう、一言で簡単に言うならば。それは「くねくね:していた
 くねくね、くねくねと。人間とはかけ離れた動きで、体をくねらせてるように見えた

 人間、だと思ったのだが、違うのかもしれない
 だって、人間が、あんな動きを出来るはずがない

 ………それじゃあ、あれは、何?

 見てはいけない
 あれが「何である」のか、理解してはいけない
 なぜだかわからないが、彼女はそんな予感を覚えた

 見てはいけない、知ってはいけない、理解してはいけない
 本能が、それを警告してくる
 だと言うのに………彼女は、その白くくねくねしたものから、視線をそらせなく鳴っていた

 くねくね、くねくね
 それを見てしまった瞬間から、気づいてしまった瞬間から、もう手遅れだったのだろうか
 くねくね、くねくね
 くねらせ動くそれが、「何」であるのか
 彼女がそれを、理解してしまいそうになった、その瞬間

 ひゅんっ、と
 くねくねしたそれに、何かが飛んできたように見えた
 飛んできたそれの動きは早く、彼女の目はそれを捕らえきることはできず

 …………ただ
 それが、通り過ぎていっただろう、その直尾

「……あ、れ」

 いない
 あの白く、くねくねしたものは、どこにもいなかった
 確かに、いたはずだったのだが、居ない
 最初から居なかったかのように、消え失せていた

「うぅん………?」

 この間の、与田惣だかなんだかの時といい、やはり、自分は疲れているのだろうか?
 きっちり寝ているつもりなのだが………なれない土地での生活は、思った以上にストレスを溜め込みやすいようだ

「早いとこ、慣れなくっちゃ、ね」

 そうして、男共を籠絡してやらなくては
 彼女は改めて、制服から私服へと着替え始めた


 窓の外、マンションの直ぐ側のその道で
 まだ帰っていなかったRが、慎重に、慎重に、辺りの気配を探っている様子に
 もはや、窓の外から意識を逸らした彼女が気づく事は、なかった





to be … ?





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