「……ね、憐」
「んー?どしたっす?あきっち」
「んー?どしたっす?あきっち」
ひとまず、いつでも治療班に回れるように備えておきながらも、今は見学席にいた憐
晃に声をかけられ、首を傾げた
手にスマホを持ったまま、晃はぽそ、ぽそ、と問う
晃に声をかけられ、首を傾げた
手にスマホを持ったまま、晃はぽそ、ぽそ、と問う
「…「教会」、からは誰が来たの?……付き添いで来た、って、聞いた」
「あ、俺も気になってた。学校町に滞在している「教会」面子って数少ねぇだろ。こういうの出たがるような奴いたっけか?」
「あ、俺も気になってた。学校町に滞在している「教会」面子って数少ねぇだろ。こういうの出たがるような奴いたっけか?」
遥も、く、と憐に近づいて問う
ここに神子か咲夜がいればツッコミをいれそうな距離だが、残念ながら二人共いない
ついでに言うと、優も参加枠の方に入っているため、ここにいない。ツッコミが深刻に足りない
ここに神子か咲夜がいればツッコミをいれそうな距離だが、残念ながら二人共いない
ついでに言うと、優も参加枠の方に入っているため、ここにいない。ツッコミが深刻に足りない
「えっと、参加するのはー………あ、今から、試合始まるっすよ」
憐の言葉に、その場にいた皆の視線がモニターへと集まった
……そして、遥が「げっ」とでも言いたそうな表情を浮かべる
……そして、遥が「げっ」とでも言いたそうな表情を浮かべる
そのモニターに映し出された光景は、試合開始と同時に試合会場全体が、一気に凍りついていっている様子だった
逃げたい
その青年は、心からそう思った
あ、なんかのハリウッド映画でこんなシーンあった気がする。とも同時に思っている辺り、ちょっとは余裕がある
あくまで、ちょっとだ。ちょっとでしかない
その青年は、心からそう思った
あ、なんかのハリウッド映画でこんなシーンあった気がする。とも同時に思っている辺り、ちょっとは余裕がある
あくまで、ちょっとだ。ちょっとでしかない
全力疾走している彼が通った後の道が、左右の壁が、バキバキと凍りついていっている
恐らく、放置すればこの会場全体が凍りつくのではないだろうか
恐らく、放置すればこの会場全体が凍りつくのではないだろうか
「じょうっだんじゃねぇ!」
叫びつつも、走る、走る、走る
フリーランスの契約者である彼が合同戦技披露会に参加したのは、己の実力をアピールするためだった
そのつもりであったのだが、それが叶う予感は、あまりない
対戦相手がどうやって決まったのかは彼にはわからないのだが(案外、あみだくじとかなのかもしれない)、とにかく自分は運が悪いようだ
当たった相手が、悪い
フリーランスの契約者である彼が合同戦技披露会に参加したのは、己の実力をアピールするためだった
そのつもりであったのだが、それが叶う予感は、あまりない
対戦相手がどうやって決まったのかは彼にはわからないのだが(案外、あみだくじとかなのかもしれない)、とにかく自分は運が悪いようだ
当たった相手が、悪い
氷で出来た翼を羽ばたかせ浮かび上がっているその男は、司祭のような服装をしていた
その翼もあって天使を連想させるかもしれない。が、天使があんなサド顔浮かべるとは思いたくない
試合開始と同時にふわりと浮かび上がり、そしてあの司祭を中心点として、辺りが凍りつき始めたのだ
手加減も何も合ったものではない
その翼もあって天使を連想させるかもしれない。が、天使があんなサド顔浮かべるとは思いたくない
試合開始と同時にふわりと浮かび上がり、そしてあの司祭を中心点として、辺りが凍りつき始めたのだ
手加減も何も合ったものではない
「……せめて、一撃っ!」
だが、逃げてばかりでは参加した意味もない
ざわり、契約都市伝説の能力を発動させる
ざわり、契約都市伝説の能力を発動させる
体が、動物の毛で覆われていく。筋肉が肥大化し、爪が伸びていく
遠吠えのような声を上げると、彼は勢い良く地面を蹴って跳び上がった。直後、その地面もびしり、と音を立てながら凍りつく
壁を蹴り、どんどんと跳び上がり、空を飛ぶ司祭へと向かって、豪腕を振り下ろそうと……
遠吠えのような声を上げると、彼は勢い良く地面を蹴って跳び上がった。直後、その地面もびしり、と音を立てながら凍りつく
壁を蹴り、どんどんと跳び上がり、空を飛ぶ司祭へと向かって、豪腕を振り下ろそうと……
「なるほど、人狼か」
それは猫のような目を細めて、嘲笑った
「それじゃあ、届かねぇな」
振り下ろした爪先が、司祭に当たるその直前
ぴしり、とその爪が凍りつき出した時にはすでに遅く
「狼少年」の契約者であるその青年の意識は、氷の中に閉ざされた
ぴしり、とその爪が凍りつき出した時にはすでに遅く
「狼少年」の契約者であるその青年の意識は、氷の中に閉ざされた
「……なんで、よりによってあの氷野郎が来たんだ」
「カイザー司祭とジェルトヴァさんは、こういうの興味なくって。で、メルセデス司祭が「暇つぶしだ」っつって出る気満々だったんで。俺っちがお目付け役としてつかされたっす」
「カイザー司祭とジェルトヴァさんは、こういうの興味なくって。で、メルセデス司祭が「暇つぶしだ」っつって出る気満々だったんで。俺っちがお目付け役としてつかされたっす」
先に名前を出した二人は仕事で忙しく来られなかったのだから、仕方ない
……とは言え、憐があの男相手にブレーキになれるか、と言うとなれるはずもなく
……とは言え、憐があの男相手にブレーキになれるか、と言うとなれるはずもなく
「クローセル」という悪魔そのものである男、メルセデスは、試合会場を完全に凍りつかせながら楽しげに笑っていたのだった
続かない