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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-64a

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だれでも歓迎! 編集
   過去の遺物は、未来への遺産を残すためにあるべきである






                         Ahuldea・Arkynayth




 学校街は、秋も終盤に入るとすっかり冷え込むようになる
 特に、日が落ちてからの冷え込みが顕著だ
 息を吐き出すと、とたんに白く染まり上がる
 猿宮 木光はタクシーに乗らなかった事を後悔しながら家路を急いでいた
 いつものバスを乗り逃してしまったとはいえ、タクシー代を渋るべきではなかったかもしれない
 風邪を引いてしまったら、どちらにせよ病院代がかかってしまう
 それに、だ

(このところ、行方不明事件が起きてるって噂聞くしな……)

 あくまでも「噂」でしかないのだが、ちらほらとそんな話を聞くのだ
 オカルト話がむちゃくちゃ苦手な同僚がその話を聞いてしまい、「一人で帰るの怖いから一緒に帰ってください」と職場仲間に土下座で頼んでいた事を思い出す
 こうやって夕日が半分以上沈んだ暗い中を一人で歩いている時に思い出す内容ではないとわかっちるのだが、一度意識しだすと気になって怖くなってきてしまう

(ダメだダメだ、別のことを考えろ。そう、俺は明日休みなんだ。その間に撮り溜めしておいた「気功の騎士」を視聴するんだ。続き楽しみだったし、その事を考えよう)

 自分に言い聞かせ、早足で歩いて行く
 今日は帰ったらもうさっさと寝る
 そして、明日の撮り溜めドラマ視聴フルコースに備えるのだ
 早足でずんずん、ずんずん歩いて行く彼を、静かに追う影があったのだが、それに気づくこともなく………




 その男を、愛百合は静かに追っていた
 このところ発生している行方不明事件。犯人候補が多すぎて「組織」としては胃痛と頭痛のタネの一つであるのだが、愛百合は早い段階から、それを「狐」の配下逹の仕業であるとあたりをつけていた
 「狐」の配下の中に人食いの鬼がいる事がわかっているのだ
 その鬼の「餌」として人間を確保しているのだろう、そう考えたのだ

(どうせなら、派手に人を襲ってくれた方が確保もしやすいのだけれど………仕方ないわね。あっちは、潜もうとしているのだし)

 派手に、一気に大量の人間を襲ったならば、即座に「組織」だけではなく他の都市伝説組織も退治に動いていて、片付けられた事だろう
 しかし、相手は静かに潜み、人を食うにしても周期を開けて見つからぬようにしている
 ……だが、その周期は確実に縮まってきていた

(嗅ぎつけられてきているのだと、向こうも気づいているでしょうけれど。「狐」が飼っている鬼は、どうやら人間を食べなければ存在していられないタイプのようね)

 恐らく、弱ってきているのだ
 人間を食べ続けなければ体が弱り、存在を維持できないのだろう
 人々の思い、噂等によって生まれ存在を維持し、契約によってその存在を強固にするのが都市伝説であるのだが………時折、いるのだ
 何か特定のものを食らっていなければ生きていけないような、己の存在を維持することが難しい都市伝説が

(半端者。そうしなければ存在できない軟弱者………と、なれば大した相手でもないわね。おびき出してまで始末する価値があるかどうかが微妙なのは残念だわ)

 そうやって、人々の思いや噂だけでは存在を維持できない都市伝説と言うのは、【通常であれば】存在が不安定で力も弱いものが多い
 つまり、「狐」配下の人食い鬼は大したことのない存在なのだろう、と愛百合は判断した
 それでも、「狐」配下を討伐なり捕縛なりできれば、少しは「組織」内で発言権を増すことができる
 今の「組織」における「強行派」の立場を少しは向上させることに繋がるだろう

(なんとか天地の目を盗んで、慶次だけじゃなくて郁君とかなえまで連れだしたんですもの。成果を残さなきゃね)

 愛百合がとった作戦はこうだ
 「狐」配下が餌として選びそうな、犠牲者となりそうな人間……たとえば、夕方から夜へと変わっていく頃に一人で歩いている人間、数名程に目をつけ、行動を監視する
 愛百合の「隙間女」は、隙間にひそんでいる間は、複数の「隙間から見える光景」を見ることができる為、複数を同時に見張る事もできた。この能力については、愛百合の隠し玉のような能力……隙間から隙間への「転移」能力でもある為だ……なので、今現在その能力を伝えているのは信頼できる唯一唯一人だけだ。なので、慶次逹には「「狐」の配下が事件を起こしそうな場所を見張っている」と偽っている
 とにかく、そうして後をつけて……「狐」配下の者がその人間を襲ったところを、現場を押さえてそのまま討伐、もしくは確保する。そういう作戦だ。愛百合は、「組織」の通信機の電源を入れっぱなしにし、今現在別行動をとっている慶次や郁と常に会話が通じる状態にしている。位置情報も伝わっているから、合図さえだせば即座に動き出せるのだ
 すなわち、「明らかに一般人に犠牲者が出る」作戦である。甘い作戦しかたてられない「穏健派」が嫌がる作戦だ
 しかし、愛百合に言わせれば、この方が確実なのだ
 相手とて言い逃れの出来ない状況で追い詰めてしまうのが一番である。相手に逃げ道を与えるべきではないのだ。連中はそれをわかっていない
 実際、この作戦を口にしていたら、確実にかなえは参加を躊躇しただろうし………このところ、余計な知恵を与えられている慶次も難色を示したことだろう。全く、面倒ったらありゃしない。やはり、慶次はそろそろ切り捨てなければ

「…………!」

 と、そうして思考を巡らせていた時だった
 後をつけていたうちの一人の後を、何者かが気配を殺して尾行し始めたのだ
 姿を確認し、愛百合は笑う

(見つけた……!アダム・ホワイト。「ピエロ人形」の契約者!)

 ピエロの扮装をしていない状態だが、あの顔はアメリカでの指名手配書で確認済みだ。間違いない
 あの男の契約都市伝説の能力は「いつの間にか家に忍び込んでいても気づかれない」と言うものであるから、獲物を見定める尾行の最中等にはあの目立つ扮装はしない、と言うことなのだろう
 気配を押し殺し、獲物と見定めたのだろう男性の後をつけている
 恐らく、住居を特定し、忍び込んで気絶させ仲間の元まで連れ去るつもりか

(襲っているところを確保、もしくは討伐………の、つもりだったけれど。相手が「狐」の配下だとはっきりわかっている相手なら、今、捕らえてもいいかもねぇ)

 そう、アダム・ホワイトはすでに「狐」の配下になったのだと、はっきりと特定されている
 ならば、姿を見つけ次第、確保して問題ないはずだ
 一般人に犠牲を出すとうるさい連中も、それなら文句はないだろう

 アダム・ホワイトにできるだけ近づける隙間を探す
 背後から強襲できるような隙間がいい
 懐から、光線銃を取り出す
 「隙間女」の能力をいじくり回してできるようになった「手帳の隙間に他者を収納する」という能力を発動させるには、ある程度相手を痛めつける必要がある
 光線銃で適当に痛めつけたところを回収するとしよう

 隙間から、静かに愛百合は腕を出す
 光線銃を構え、アダム/ホワイトに狙いをつけて


 ガシリ


「え?」

 腕を、掴まれた
 そのまま、隙間から引きずり出される

「な、ぁ………っ!?」

 己を引きずり出した相手を、愛百合は見た
 それは、壁から腕を突き出していた
 まるで、壁から腕そのものが生えているかのように見えた
 ずるり、と、壁の中からそれが姿を現す
 大柄で、その癖痩せっぽちという矛盾したような体格で、角を生やした鬼
 鬼の頭の上には、布製の抱き人形が乗っていて。その人形はじぃ、と愛百合を見て、笑っていた
 ニカッ、と鬼はまるで無邪気な子供のような笑顔を浮かべて

「いただきます」

 がしり、と愛百合の頭を掴みながら、そう言って
 愛百合が悲鳴を上げるよりも早く


 ブチィッ


 と
 その頭は、胴体から引きちぎられた




「ーーーーーっ!」

 愛百合との通信が途絶えた
 それも、普通の途絶え方ではない
 「通信機が壊れた」事によって、途絶えたのだ

 ちらり、と慶次は郁の様子を確認する

「え、と。二人共、どうしたの……?」
『合図が出たのか?』

 慶次と郁の様子を見て、傍で待機していたかなえと「岩融」が反応した
 郁は、いつも通りの冷静な口調でかなえに告げる

「いや、どうにも様子がおかしくてね……もう少し、様子を」
「ーーーーっかなえ、今すぐ、ここから離れるぞ!」

 郁の言葉を遮り、慶次がかなえにそう告げた
 え、とかなえは驚いた様子で、慶次を見る

「け、慶次さん……?」
「慶次、向こうで何が起きたのか、はっきりしないんだ。今は様子を見たほうがY良い」

 郁が慶次を咎めるようにそういった
 が、慶次はやや強引にかなえの腕を掴み、郁を睨みつけた

「お前、「組織」の黒服の通信機が壊れる条件、知ってるだろう……!あの通信の切れ方は、通信機がぶっ壊れた切れ方だろうが」
「………!」
「しかも、直前までの通信機の位置は、こっから近い。「何か」あったのだとしたら、向こうだってこっちに気づく!」

 「組織」の黒服が使う通信機は、当然のことながら特殊なものだ
 複数の通信機や電話と同時につながる事ができ、ある一定の条件を満たさなければ、どれだけ過酷な環境で使おうとも壊れる事がない
 そして、その通信機が壊れる、唯一の条件は

(愛百合の通信機が「壊れた」んなら………っもう、愛百合は「死んでいる」って事になる!)

 通信機の持ち主の黒服が「死亡」する事。それが、「組織」の黒服が扱う通信機が壊れる、唯一の条件だ
 所持者が死亡した後、通信機から情報が流出しないようにするためにそうなっているのだ、と慶次は天地から聞いたことがあったのだ
 だからこそ、慶次にはわかる
 愛百合はすでに死んでおり、そして………愛百合を殺害した相手は、愛百合がこちらに救助を求める隙すら与えぬ間に殺せるだけの実力がある相手なのだ、と
 もしかしたら、向こうは一人ではなく複数人いる状況だったのかもしれない
 そうなると、自分達だけで対処できるかどうか、わからない

(とにかく、天地に報告するにしても、ここから離れて……)

 一刻も早く、この場を離れるべきだ
 慶次は焦るのだが、かなえの方はいまいち、状況を理解しきれていない
 ………ただ、「岩融」が、今、この状況の危険さを理解したようだ

『主、その男のいう通りだ。離れるぞ』
「う、うん、わかった……あの、郁さ」

 ん、と
 かなえは、郁にもこの場を離れるよう、促そうとしたのだろう
 その言葉は、届かない

「え………ぁ、れ」
『!!』

 郁の姿が、消えていた
 代わりに、そこには一つの樽が………人間一人分くらいが入りそうな大きさの樽が、転がっていた

 他者を樽に閉じ込める能力を持つ契約者が「狐」の配下になっている可能性は聞いていた
 本来は特定条件を満たした相手しか閉じ込められないはずなのだが、その条件を満たさない相手も閉じ込められるようになっている可能性がある、とも
 情報は、たしかに正確であったようだ……「こうなっているかもしれない」という、その可能性の段階のものすら

(っつか、今、その能力を使える契約者は「どこ」にいる……!?いくらなんでも、視界が通っていない先にいる相手を閉じ込めるのは無理だろ!?)

 ならば、向こうはこちらを「見ていた」はずだ
 一体、どこから見ているのか
 住宅街と繁華街の中間辺り、あちらこちらに人が隠れられそうな場所はある……ある、が。完全に身を隠しながら一方的にこちらの様子を確認するのは難しいはず
 あたりの建物の窓も見たが、こちらを確認している者の姿はない
 「岩融」も辺りの気配を探っているようで、それらしい気配が見つかっていないようだ
 敵が待ち構えている方向へと逃げるわけにもいかない。数秒、かなえと「岩融」があたりを探って

「…慶次さん、こっち!」

 かなえが指し示した方向へと、かなえと「岩融」と共に駆け出す
 ……駆け出す、つもりだった


 ドンッ、と、何かを貫いたような音がして


「…………っ」
「……ぇ」

 ごぽっ、と
 慶次の口から、赤が溢れ出す

 ぽっかりと
 慶次の腹部に、ぽっかりと……穴が、空いていた
 ちょうど、自販機で売っている缶の円周程度の大きさの、穴が
 かん、かん、かん………と乾いた音がして、血塗れの空き缶が地面をバウンドし、そのままコロコロと転がっていく
 あの空き缶で貫かれたのだ、と、そう理解した

「ーーーーーーっ!!」

 駆け寄ろうとしたかなえに、「逃げろ」と言おうとして
 しかし、その言葉は紡がれる事なく、代わりに再び大量の赤を………血を、その口から吐き出した





「慶次さん………っ慶次さん!?」

 倒れた慶次にかなえが駆け寄る
 じわじわと、地面に慶次が流す赤がにじみ出ていっていた

 かなえは、完全にパニック状態になってしまっていた
 己の担当黒服が樽に閉じ込められ、共に組んで行動することが多かった慶次がこのような状態になり……それらが、ほんの一瞬でなされた事に、思考がついていけていないのだ

 何が起きているのか
 どこから、誰が攻撃してきたのか
 攻撃手段が、あの転がっている空き缶である、と言うことまでは「岩融」にも理解は出来ている。しかし

(何だ?……一体、「何との契約者」だ……!?)

 空き缶を、弾丸のように飛ばした?
 そのようなことができる契約都市伝説があるのだろうか、「岩融」には判断しきれない
 ただ、彼に判断出来たのは一つ

(今すぐ、主と……ついでに、この男を連れて、この場を離脱しなければ)

 このような時、契約者から離れることができない己の身が恨めしくなる
 かつての己の使い手であったとされる武蔵坊弁慶のように、主を逃がすことができれば良いのだが、主と離れられない存在であるがために、それはかなわない
 よって、主を連れて逃げ出すことが、今、この場における最善なのだ

 躊躇なく、「岩融」は主たるかなえと、血を流し続けている慶次の二人を抱え上げた
 己の巨体で、二人を包み込むようにして持ち上げ、駆け出す

 ぴくり、と
 慶次が小さく身じろぎした事実に、気づかぬまま




 うまくいった、と
 アダムは、ほっと胸をなでおろした

(確かに、その通りだった。こうやって姿を現せば、「組織」のやつが罠に引っかかる、と)

 あの男の「作戦」は、見事に成功した
 こうして無事、皓夜の食料を確保できたことにほっとする

「九十九、ヴィットリオ。2人は先に戻っててくれ。後は、俺が皓夜とアナベル連れて戻るから」
「いいのか?」
「今夜は、さらに皓夜の食料を確保するんだろう?……そっちの方じゃ、俺は何も出来ない。2人は向こうでも出番があるんだ。休んでてくれ」

 アダムがそう言うと、九十九屋は異論があるような表情だったが

「九十九。お前、最近頭痛がするって言ってただろう。向こうは手強い契約者がいるようだし、お前が全力を出せないのはまずい」
「………わかった、油断するなよ、アダム」
「んじゃ、悪いけど任せたぜ」

 ひょこりっ、と、アナベルが「壁から」顔を出すと、がしり、九十九屋とヴィットリオの腕を掴んだ
 2人はアナベルに手を引かれ、壁の向こう側へと消えていく

 アナベルの能力を借りて、壁を透過しているのだ
 壁を抜けている間は呼吸ができないらしいのだが、そこまで分厚い壁を通り抜けるような事さえしなければ問題はない

 ヴィットリオの能力は壁をすり抜け透過して、ほんの少しだけ顔を出して行った
 相手に見つかったとしても、すぐに引っ込めばいいだけの事………一番警戒すべき「カブトムシと正面衝突」の契約者に気づかれることがなかったのは、幸いだった
 「隙間女」の能力を持っていたらしい女黒服をおびき寄せた後は、念の為適当な建物の中に避難していたアダムだったが、これなら隠れていなくともなんとかなったかもしれない

「アダムー、2人を向こうに出してきたわよ」
「あぁ、わかった。アナベル、俺を皓夜の傍まで連れて行ってくれるか?」
「ん、わかったわ、任せて!」

 元気に答えて、アナベルはこちらに飛びついてきた
 抱き人形であるその体を抱きかかえてやりながら、壁に向かって歩く
 アナベルと触れ合っている事により、アナベルの物質透過能力がこちらに分け与えられ、壁をすり抜けて外へと出る

 外では、皓夜がガツガツと女黒服を食らっているところだった
 飢えきっていたからだろうか、ものすごい勢いで食べており………もう、足の部分を食べ終えようとしているところだった」

「んー、まだたべたいー」
「皓夜、向こうに、まだ皓夜が食べられるお肉があるのよ、行きましょう!」

 ぴょんっ、とアナベルが皓夜に飛び移った
 アナベルの言葉に、皓夜はやったー、と口の周りを真っ赤に染めながら無邪気に笑う


 ーーーーズキ、ズキ、と、感じる頭痛を無理やり無視する


「逃げられる前に、行くか。油断するなよ」

 先程、九十九屋が「カブトムシと正面衝突」の契約者に致命傷を与えてはいるが、即死ではなかったのだ
 手痛い反撃が飛んでくる可能背は、十二分にある
 わかったー、と言って駆け出す皓夜の後を、アダムは追いかけていく

 位置は、近い
 角を曲がると、ちょうど、巨体の男……恐らく、少女の方の契約都市伝説だろう……が、ハイティーンの少女と、「カブトムシと正面衝突」の契約者を抱きかかえて、逃走しようとしているところだった

「にがさないー!」

 その背中へと、皓夜が飛びかかろうとする

 刹那、アダムは、見た
 巨体の男に抱えられた「カブトムシと正面衝突」の契約者が、口から血を流しながらも皓夜を鋭く睨みつけていた事に
 その傍らに、一匹のカブトムシが、やや薄れた状態ながらも姿を表そうとしていた事に

「っ皓夜、避けろ!」
「ふぇ?」

 皓夜が避ける事は、間に合わない
 ひゅんっ、と風を切るような音がして



 放たれたカブトムシが、貫いた





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