「組織」本部、一般黒服や「組織」所属の契約者達が行き交うエリア
そこを、C-No.893……長曾我部 千依は、やや不機嫌に歩いていた
彼女の隣には、彼女が担当している契約者である、禰門 悠里の姿がある
……本日の千依の不機嫌の原因は、八割方、この悠里の責任だ
まぁ、いつもの事なのだが
そこを、C-No.893……長曾我部 千依は、やや不機嫌に歩いていた
彼女の隣には、彼女が担当している契約者である、禰門 悠里の姿がある
……本日の千依の不機嫌の原因は、八割方、この悠里の責任だ
まぁ、いつもの事なのだが
「まったくもう……どうすんのよ!あの人食いタコの契約者、逃がしちゃって!!」
「今は、「組織」全体が「教会」絡みの件で忙しいだろう?仕事を増やすのも悪いと思って」
「今は、「組織」全体が「教会」絡みの件で忙しいだろう?仕事を増やすのも悪いと思って」
千依の言葉に、悠里はへらりと笑って答える
その悠里の態度に、千依はますます不機嫌になる
…これも、いつもの事だ
その悠里の態度に、千依はますます不機嫌になる
…これも、いつもの事だ
「あーのーねー、あいつは、都市伝説を悪用して女性を襲ってた連中の仲間なのよっ!?」
「ぱぱっと話聞いてみたところ、基本は見張りをやらされてたみたいだな。後は、後始末。悪い事だとはわかっていたけど、他につるめる仲間がいなかったから従っていたみたいだな」
「ぱぱっと話聞いてみたところ、基本は見張りをやらされてたみたいだな。後は、後始末。悪い事だとはわかっていたけど、他につるめる仲間がいなかったから従っていたみたいだな」
………いつの間に、話を聞いていたのか
知らされていなかった事実に、千依はさらに苛立つ
それでも、悠里は笑みを浮かべているだけだ
知らされていなかった事実に、千依はさらに苛立つ
それでも、悠里は笑みを浮かべているだけだ
「なんていうか、周りの環境次第では、更生できるんじゃないか?」
「…だからって、見逃す訳?」
「見逃す訳じゃないさ。「教会」の件が片付いた後にでも、俺が報告しておくよ。それまでは、こっちで見張っておくから」
「…だからって、見逃す訳?」
「見逃す訳じゃないさ。「教会」の件が片付いた後にでも、俺が報告しておくよ。それまでは、こっちで見張っておくから」
……「教会」の件が片付いた後?
何を言っているのか、こいつは
その件が片付くまで、どれだけかかるかわからないと言うのに
何を言っているのか、こいつは
その件が片付くまで、どれだけかかるかわからないと言うのに
己の担当契約者ののんきさに、千依は苛立ち続ける
それなりに長い付き合いなのだが、悠里のこの性格は昔からずっと変わらない
子供の頃から、ずっとずっと……
それなりに長い付き合いなのだが、悠里のこの性格は昔からずっと変わらない
子供の頃から、ずっとずっと……
(…………あれ?)
……子供の頃?
いや、まぁ、確かに、悠里が「組織」入りしたのは、小学生になった頃だ
子供と言えば、子供の頃
確かに、自分はその頃から彼を担当していた
いや、まぁ、確かに、悠里が「組織」入りしたのは、小学生になった頃だ
子供と言えば、子供の頃
確かに、自分はその頃から彼を担当していた
…だが
一瞬、千依の脳裏に浮かんだのは
悠里が、明らかに幼稚園児くらいの、姿で
一瞬、千依の脳裏に浮かんだのは
悠里が、明らかに幼稚園児くらいの、姿で
自分が
そんなに幼い悠里を、知っているはずがないのに
そんなに幼い悠里を、知っているはずがないのに
「…ちーちゃん?どうかした?」
声をかけられ、正気に戻る
何でもないわよ、と不機嫌に答えた
そう?と首をかしげる悠里
あぁ、どこまで、こちらの神経を逆なでする
何でもないわよ、と不機嫌に答えた
そう?と首をかしげる悠里
あぁ、どこまで、こちらの神経を逆なでする
「とにかく、さ。あいつの事は、いったん、俺に任せてくれよ。その後には……K-Noの、さ。人材教育だか、そっちの方に任せれば多分大丈夫さ」
「ったく…………仕方ないわね……」
「ったく…………仕方ないわね……」
…「組織」全体が「教会」関連の件で忙しく、他の件に中々手が回らないのは、事実
人食いタコの契約者に逃亡の意思がないのならば、確かに、後回しでもいいだろう
人食いタコの契約者に逃亡の意思がないのならば、確かに、後回しでもいいだろう
「ただし!監視に関しては、あたしも加わるわよ。いいわね?」
「もちろん。俺としても、ちーちゃんと一緒に仕事をする方が楽しいから」
「もちろん。俺としても、ちーちゃんと一緒に仕事をする方が楽しいから」
笑って、そう言われて
……頬の温度が急上昇するのを、感じる
まったく、この、馬鹿は
……頬の温度が急上昇するのを、感じる
まったく、この、馬鹿は
「た、楽しいなんて、何馬鹿な事言ってんのよ。これは、仕事なのよ?しーごーと!!楽しむもんじゃないの!!」
「仕事なんて、楽しんでやれた方が幸せだよ。楽しくない仕事もあるけれど、楽しめる仕事は楽しまないと」
「仕事なんて、楽しんでやれた方が幸せだよ。楽しくない仕事もあるけれど、楽しめる仕事は楽しまないと」
あぁ、もう
やっぱり、こいつは馬鹿だ
自分がしっかりしないと……
やっぱり、こいつは馬鹿だ
自分がしっかりしないと……
千依が、小さくため息をつこうとした、その時
----ずぅんっ、と
小さく、振動を感じた
小さく、振動を感じた
「……?何?」
「…訓練室から、かな?」
「…訓練室から、かな?」
ちょうど、二人が歩いていたのは、訓練室のすぐそば
「組織」所属の契約者や黒服が、己の能力の調整や訓練の為に使う特別室のすぐ傍だ
「組織」所属の契約者や黒服が、己の能力の調整や訓練の為に使う特別室のすぐ傍だ
……ただ
その部屋は、よほどの事がない限り、衝撃が外に漏れださないはずだが……?
その部屋は、よほどの事がない限り、衝撃が外に漏れださないはずだが……?
踵を返し、訓練室に向かう
鍵は、かけられていなかった
扉を開けると、一人の人影
鍵は、かけられていなかった
扉を開けると、一人の人影
「………門条?」
「叩けば直る」と言う、後方支援専門能力であるが故、現場では後始末の仕事で赴くことが多い悠里
そんな彼が、よく仕事現場で顔を合わせる青年の姿が、そこにあった
いつも派手にやりすぎて壊しすぎて、悠里のような後処理係の世話になりやすい、「モンスの天使」の契約者………門条 天地の、姿が
そんな彼が、よく仕事現場で顔を合わせる青年の姿が、そこにあった
いつも派手にやりすぎて壊しすぎて、悠里のような後処理係の世話になりやすい、「モンスの天使」の契約者………門条 天地の、姿が
天地は、肩で大きく息をしているように見えた
…顔色も、若干、悪い
玉のような汗が浮かび上がり、今にも倒れそうだ
…顔色も、若干、悪い
玉のような汗が浮かび上がり、今にも倒れそうだ
悠里達が扉を開けた事に、気づいたのだろう
天地が、視線を向けてきた
……酷く暗い、どこか、追い詰められたかのような、表情
天地が、視線を向けてきた
……酷く暗い、どこか、追い詰められたかのような、表情
「…あ?………禰門かよ、何か用」
か、と
言おうとしたのだろうか
その体が、大きくふらついて……そのまま、倒れこんだ
言おうとしたのだろうか
その体が、大きくふらついて……そのまま、倒れこんだ
「門条!?」
「っちょ……どうしたのよ、あんた。何やってたの!?」
「っちょ……どうしたのよ、あんた。何やってたの!?」
急いで、駆けよる
…呼吸が荒い、顔色が、悪い
体力と精神力を、かなり消耗している
…呼吸が荒い、顔色が、悪い
体力と精神力を、かなり消耗している
「…ちーちゃん。門条の担当黒服呼んできて。門条は、俺が見てるから」
「わかったわ。C-No.572を呼んでくるから、ここにいなさい!」
「わかったわ。C-No.572を呼んでくるから、ここにいなさい!」
千依が携帯を片手に、訓練室を飛び出す
連絡を取りながら、連れてくるつもりか
連絡を取りながら、連れてくるつもりか
「……余計な、事……すんな」
「まぁまぁ。ほら、疲れてるみたいだから。休まないとな。なんなら、俺の能力で治してやってもいいけど」
「……………」
「まぁまぁ。ほら、疲れてるみたいだから。休まないとな。なんなら、俺の能力で治してやってもいいけど」
「……………」
…悠里の言葉に、天地は押し黙った
確かに、悠里が天地を思い切りぶん殴れば、この体力消耗も回復できる
が、殴られた衝撃は、そのまま感じる訳で……殴られるのは御免だ、と言うことか
確かに、悠里が天地を思い切りぶん殴れば、この体力消耗も回復できる
が、殴られた衝撃は、そのまま感じる訳で……殴られるのは御免だ、と言うことか
「それにしても」
顔を上げる悠里
視線の先には、訓練の時に使う、的があった
複雑な動きをランダムに繰り返す、敵に見立てて使う的
人型をした、その的には………大きな穴が、開いていた
ちょうど、心臓からお腹のあたりまでが、大きくえぐれている
天地が契約し、召喚する「モンスの天使」達の攻撃でできた痕には、見えなかった
そう、彼女達が使う重火器でできた痕には、見えない
視線の先には、訓練の時に使う、的があった
複雑な動きをランダムに繰り返す、敵に見立てて使う的
人型をした、その的には………大きな穴が、開いていた
ちょうど、心臓からお腹のあたりまでが、大きくえぐれている
天地が契約し、召喚する「モンスの天使」達の攻撃でできた痕には、見えなかった
そう、彼女達が使う重火器でできた痕には、見えない
「何か、新しい能力でも開発したのか」
「…………」
「…………」
悠里の問いかけに、天地は答えない
まぁ、いいか
さほど、興味もないし
まぁ、いいか
さほど、興味もないし
(……友人の為に、か。よくやるな)
このところ、「組織」所属ではない友人の事を酷く気にかけていた天地
…そちらの力になる為に、今までとは違う方向性に、都市伝説能力を開花させようとでもしたか
らしくもない事を
…そちらの力になる為に、今までとは違う方向性に、都市伝説能力を開花させようとでもしたか
らしくもない事を
以前は、「組織」の為にしか動かなかったくせに
昨年の一件以来、ずいぶんと変わったものだ
昨年の一件以来、ずいぶんと変わったものだ
それだけ、その友人に入れ込んでいるならば
その友人に、何かあったならば
この、妙なところでまっすぐなこいつは、どうなるのか?
その友人に、何かあったならば
この、妙なところでまっすぐなこいつは、どうなるのか?
「………こちら側にご案内、にならなければいいんだけどな」
「…は?」
「…は?」
悠里の呟きが、聞こえたのだろうか
体を起こすのもだるいのだろう、視線だけを向けてくる天地
何でもないさ、と悠里は笑って見せる
その様子に、天地は小さく舌打ちした
体を起こすのもだるいのだろう、視線だけを向けてくる天地
何でもないさ、と悠里は笑って見せる
その様子に、天地は小さく舌打ちした
「…いつもいつも、うさん臭いんだよ、お前は」
「そうか?……まぁ、無理はしないようにな。「教会」の連中の件では、お前も現場に出るかもしれないんだしな」
「そうか?……まぁ、無理はしないようにな。「教会」の連中の件では、お前も現場に出るかもしれないんだしな」
いや、出るに決まっている
天地の一番の友人は、その件に首を突っ込んでいるのだから
天地の一番の友人は、その件に首を突っ込んでいるのだから
明らかに
「組織」の一契約者が……それも、後処理専門であるはずの彼が知りえない情報までも、知り得た状態で
悠里は、ぼんやりとそう考えた
「組織」の一契約者が……それも、後処理専門であるはずの彼が知りえない情報までも、知り得た状態で
悠里は、ぼんやりとそう考えた
もう一度、的に視線を戻す
…どんな攻撃なのか、知らないが
かなりの威力なのだろう
そもそも、あの的はそう簡単に、あんな穴が開かないはずだから
…どんな攻撃なのか、知らないが
かなりの威力なのだろう
そもそも、あの的はそう簡単に、あんな穴が開かないはずだから
その攻撃を、戦場で放てたならば
切り札的な攻撃になるのかもしれない
切り札的な攻撃になるのかもしれない
(………さて)
…「終末の火」を相手に、こいつはどう動くだろうか?
ほんのわずか未来を知り得ているかのように、物事を考えながら
悠里は、疲労で動けぬ状態になっている天地を、静かに見下ろし続けていた
ほんのわずか未来を知り得ているかのように、物事を考えながら
悠里は、疲労で動けぬ状態になっている天地を、静かに見下ろし続けていた
to be … ?