その傍を離れた事を後悔した
だから、離れるべきではないと、そう考えた
なるべく、傍に
なるべく、目を離さないように
だから、離れるべきではないと、そう考えた
なるべく、傍に
なるべく、目を離さないように
護らなければ
俺が、護るのだ
この世で唯一、たった一人の幼馴染
この世で唯一、たった一人の家族
俺が、護るのだ
この世で唯一、たった一人の幼馴染
この世で唯一、たった一人の家族
それを、護る為ならば
俺は、悪にだってなってやる
俺は、悪にだってなってやる
「…戻ったぞ」
「!!…お、お帰りなさい、イザーク」
「!!…お、お帰りなさい、イザーク」
小さく縮こまっていたジョルディが、顔を上げる
ぱさぱさと、赤い髪が揺れた
…ずいぶんと伸びてきた
そろそろ、切ってやらなければ
ぱさぱさと、赤い髪が揺れた
…ずいぶんと伸びてきた
そろそろ、切ってやらなければ
「ほら、食べろ」
「う、うん……イザークは、食べないの?」
「俺はいい。お前が食べろ」
「う、うん……イザークは、食べないの?」
「俺はいい。お前が食べろ」
一人分しか、食料は確保できなかった
だから、ジョルディに食べさせるべきだ
これくらいの空腹、俺ならば耐えられる
ジョルディは、俺が盗ってきたパンを、じっと見つめて
…半分に、ちぎった
だから、ジョルディに食べさせるべきだ
これくらいの空腹、俺ならば耐えられる
ジョルディは、俺が盗ってきたパンを、じっと見つめて
…半分に、ちぎった
「はい」
「…お前の分が少なくなるぞ」
「いいよ、イザークも、一緒に食べよう?」
「…お前の分が少なくなるぞ」
「いいよ、イザークも、一緒に食べよう?」
赤い瞳で見つめられて、俺はそれを受け取った
笑ったジョルディにつられ、小さく笑う
笑ったジョルディにつられ、小さく笑う
俺達は孤児だった
親の顔なんて、知らない
どんな存在だったのかすら、知らない
親の顔なんて、知らない
どんな存在だったのかすら、知らない
自分とジョルディが同じ境遇である事は、すぐにわかった
俺とジョルディでは、髪の色も、目の色も違いすぎたから、血のつながった存在ではないだろう、と思った
俺とジョルディでは、髪の色も、目の色も違いすぎたから、血のつながった存在ではないだろう、と思った
だが、家族だった
ジョルディしか、家族がいなかった
ジョルディがいなくなれば、自分は独りになるのだと、そう感じた
ジョルディしか、家族がいなかった
ジョルディがいなくなれば、自分は独りになるのだと、そう感じた
護らなければ、と思った
俺と違ってジョルディは怖がりだ
俺が、護ってやらなければ
金も、食料も、何もかも、俺が調達してくればいい
悪事と呼ばれるものに手を染めてでも、俺はこのたった一人の家族を護りたいと感じた
ジョルディは、そんな事はしなくていい
悪になるのは、俺一人で十分だ
こいつが笑っていられるならば、俺はいくらでも悪に染まってやる
俺と違ってジョルディは怖がりだ
俺が、護ってやらなければ
金も、食料も、何もかも、俺が調達してくればいい
悪事と呼ばれるものに手を染めてでも、俺はこのたった一人の家族を護りたいと感じた
ジョルディは、そんな事はしなくていい
悪になるのは、俺一人で十分だ
こいつが笑っていられるならば、俺はいくらでも悪に染まってやる
その日も、いつも通り、食料を確保しに住処を出た
「いいか?大人には見つからないようにな?見つかったら、すぐに逃げ出せよ?」
この辺りには、ロクな大人がいない
俺達のような子供など、見つかったら憂さ晴らしの道具にされるだけだ
俺達のような子供など、見つかったら憂さ晴らしの道具にされるだけだ
「う、うん………イザーク、早く、帰ってきてね…?」
「あぁ、なるべく、早く戻る」
「あぁ、なるべく、早く戻る」
だから、待っていろ
そう言って、俺はジョルディを置いて大通りに向かった
後にその行為を後悔する事に、その瞬間は気づくことなく
そう言って、俺はジョルディを置いて大通りに向かった
後にその行為を後悔する事に、その瞬間は気づくことなく
戻った時、聞こえてきたのは、ジョルディの悲鳴
急いで駆け付けた時、あいつは大人達に踏みつけにされていた
体が、赤で染まっている
急いで駆け付けた時、あいつは大人達に踏みつけにされていた
体が、赤で染まっている
「…イザー、ク……」
「ジョルディっ!!」
「ジョルディっ!!」
駆け寄ろうとしたが、大人達に蹴り飛ばされ、カベに叩きつけられる
ジョルディの手が、俺に向けられた
真っ赤な血で染まった、手が
ジョルディの手が、俺に向けられた
真っ赤な血で染まった、手が
「……痛い、よ……………助け、て、イザー………」
言葉は、最後まで続かずに
伸ばされた手は、大人に踏みつけにされて
その小さな体に、容赦なく刃が振り下ろされて
伸ばされた手は、大人に踏みつけにされて
その小さな体に、容赦なく刃が振り下ろされて
俺の、目の前で
その命は、刈り取られた
その命は、刈り取られた
飛び散る血飛沫に、大人達は笑っていた
酒の匂い、焦点の定まっていない目
こんな連中に、俺の家族は殺されたのか
こんな連中に、俺も殺されるのか
酒の匂い、焦点の定まっていない目
こんな連中に、俺の家族は殺されたのか
こんな連中に、俺も殺されるのか
振り下ろされる刃を避ける術はなく
そのまま、殺されるのだと思った
そのまま、殺されるのだと思った
刃は、途中で止まった
どこからか飛んできた氷の剣が、刃を持った手を切り落とす
絶叫が上がり、血飛沫が俺を濡らしてきた
どこからか飛んできた氷の剣が、刃を持った手を切り落とす
絶叫が上がり、血飛沫が俺を濡らしてきた
この小汚い路地裏に相応しくない、立派な装束をまとった司祭が、二人
一方は氷の刃を手に持ち、もう一方は、燃え盛る蛇を従えていた
あっという間に、大人達は駆逐される
一方は氷の刃を手に持ち、もう一方は、燃え盛る蛇を従えていた
あっという間に、大人達は駆逐される
「…まだ、息はありますね?」
燃え盛る蛇を従えた司祭が、俺に手を伸ばした
その手をはねのけ、俺はジョルディに駆け寄った
その手をはねのけ、俺はジョルディに駆け寄った
………完全に、事切れている
触れた体は、すでに冷たくなっていた
恐怖からだろうか、きれいだった赤い髪が、白い色へと変わってしまっていた
恐怖からだろうか、きれいだった赤い髪が、白い色へと変わってしまっていた
護れなかった
唯一の、家族を
たった一人の家族を、俺は助けられなかった
唯一の、家族を
たった一人の家族を、俺は助けられなかった
もっと早く戻ってきていれば
いや、その傍を離れなければ
こんな結果には、ならなかったのではないか?
いや、その傍を離れなければ
こんな結果には、ならなかったのではないか?
ジョルディの傍から離れようとしなかった俺の傍に……もう一人、さらに位が上らしい司祭が姿を現した
ジョルディの躯に、手を伸ばしてくる
その手を、跳ね除けようとして
ジョルディの躯に、手を伸ばしてくる
その手を、跳ね除けようとして
「……大丈夫、恐れる事など、ありませんよ」
壮年のその男が、笑う
ジョルディの体が、光に包まれた
瞳に、生気が戻ってくる
ジョルディの体が、光に包まれた
瞳に、生気が戻ってくる
「……あ、れ……?……イザーク……?」
「………っ!!」
「………っ!!」
その体に、暖かさが戻ってくる
痛々しい傷は消え、ただ、流した血で全身が汚れているだけとなる
痛々しい傷は消え、ただ、流した血で全身が汚れているだけとなる
「イザーク…?怪我、してるの……?」
俺の姿を見て、ジョルディは手を伸ばしてきて
その手は、俺に触れる前に、がくりと落ちた
慌てて、その体を抱き上げる
……暖かい、呼吸している
どうやら、意識を失ってしまったらしい
その手は、俺に触れる前に、がくりと落ちた
慌てて、その体を抱き上げる
……暖かい、呼吸している
どうやら、意識を失ってしまったらしい
「大丈夫、その子の命は、神の奇跡により、この世に呼び戻されました」
壮年の男が、笑う
…その背後で、燃え盛る蛇を従えた男が、どこか申し訳なさそうな表情をしているのが、見えた
…その背後で、燃え盛る蛇を従えた男が、どこか申し訳なさそうな表情をしているのが、見えた
「さぁ、こちらに来なさい。ここにいては、同じことが繰り返されるでしょう………大丈夫、私について来れば、その子の命は保障しますよ?」
伸ばされた手
ジョルディの体を抱きしめながら、俺はその手を見つめた
ジョルディの体を抱きしめながら、俺はその手を見つめた
「………本当、か?」
「もちろんですよ……あなたが、私についてくるならば、ね?」
「もちろんですよ……あなたが、私についてくるならば、ね?」
その笑顔に、得体のしれないものを感じ、背筋に悪寒が走った
だが
選択肢など、あるはずがない
ジョルディを、このたった一人の家族を、今度こそ守れると言うのならば
俺は、手段など選ばない
選択肢など、あるはずがない
ジョルディを、このたった一人の家族を、今度こそ守れると言うのならば
俺は、手段など選ばない
この唯一たった一人を護る為ならば
俺は、悪の手先にも、悪そのものにだって、なってやる
俺は、悪の手先にも、悪そのものにだって、なってやる
to be … ?