「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-04

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「あの店の親父はまだ居るんだろうか……。」
俺はいつも通りメルと都市伝説を広めに行く前に、
昔、休日になると家族でよく行っていた南町の商店街に来ていた。
昔から俺の親父の行きつけのナイフショップがそこにはあるのだ。
店主は元々家の庭師をやっていた男で引退してからの趣味としてその店を始めた。
俺も当然父親に連れて行かれてそこに並べられたナイフに目を輝かせた物である。
店主はかなりの年寄りなのでそろそろお迎えが来てるんじゃないかということが心配だ。

「マスター、何買いに来ているんですか?食料品も昨日買ったばかりです。」

メルはいかにも不思議であると言った面持ちで尋ねる。
「ナイフ、すごい良い奴。」
「私達は使わないと思いますけど……。」
「お前の能力は近寄られたりすると圧倒的に弱いし、瞬発的な攻撃力を生み出せないだろう。
 それにお前が幾ら丈夫だとしても俺は普通の人間なんだから出来る限り武装しないとな。」

「へぇ………。」
興味なさそうだ。
くそ、ナイフとは使って手入れすればするほど切れ味が増していく可愛い武器なんだ!
銃なんかとはちがう!そういう情緒の有る武器なんだ!
母さんも妹も……、そのあたりまったく解ってくれなかった。
父親と良くぼやいたのを思い出す。

「まあ良い、とにかく着いたぞ!」
その店は古い民家をそのまま商店にしたかのような佇まいをしている。
近代化していく町に、世界に、忘れられてしまったかのような気配の薄さ。
「えいんえるべ?」
「……まあ良い。」
看板がドイツ語なので発音……できないのかこいつ!?
確かハーメルンの笛吹きってドイツの話じゃなかったか?

そんな疑問を胸に秘めつつ店に入るとまるで魔法使いのような姿をした老人が待っていた。
この人が店主である、昔はよく遊んで貰ったものだ。
「おや、ぼっちゃん久しぶり。」
この人も俺を覚えていないのか……残念だな。

は?

何故俺を覚えているんだ?
契約者以外に俺の存在を覚えている人間は居ない筈。
店に誰もいない事を確認。
迷うことなく銃口を店主に向ける。
「爺さん、なんで俺を覚えている!!」
「いやですねえぼっちゃん、私がぼっちゃんを忘れるわけ無いでしょう?
 しかしまあびっくりですねえ、ぼっちゃんがハーメルンの笛吹きと契約なさるとは……。
 その様子だと契約なさったのでしょう?奴と。」
「おまえ……、メルのことまで!?」
「昔、契約主ごとたたきのめした筈なんですがねえ?」
「――――――!!」
メルは店の外に逃げ出してガタガタ震えていた。
呼吸も満足に出来ていない。
余程怖い思いをさせられたのか?
「爺さん、妙な真似はしてくれるな!俺はあんたにガキの頃から色々と恩を感じている!」
「坊ちゃん、安心なさい。あの時の契約主は私の子供を浚おうとしていたから倒しただけです。
 私はこの能力を使ってちょっと良い思いしながら生きていきたいだけの老いぼれ。
 そこのお嬢ちゃんにも何もする気はありません。坊ちゃんがそのこと何をしているのかは聞いていますが……。
 前の契約者に比べれば少なくとも私に迷惑のかかることじゃございません。
 むしろ家の刃物を悪用する悪ガキが減ってせいせいしています。」
「…………信用して良いのか?」
「はい。此処で嘘を吐けば旦那様に顔向けができなんだ。」
老人はそういってうなずく。

「済まなかった、じいさん。」
銃をポケットに入れて謝った。

「ちなみに儂の契約した都市伝説はくねくね、まだ儂が鼻を垂らしたガキの頃に契約したんじゃったのう。」
「ああ……、だからか。」
くねくね、は精神を破壊する都市伝説。
メルはずっと昔にその攻撃を受けてしまったのだろう。
落ち着いてきたがまだ店の隅で震えている。

「で、ぼっちゃん、刃物が入り用なんでしょう?
 都市伝説相手にも使える刃物。」
「ああ……、適当なの見繕ってくれ。」
「はい、じゃあ儂のとっておきをもってきましょうかね。」
そういうと店の奥から刃渡り20cm位のナイフを持ってきた。
「……ちょっとでかくね?」

「服の下に入れておけば案外解りませんよ。
 ゾーリンゲンのとある工房で作られた高級な物ですから大事に……、なんて言わなくても解りまさぁね。」
「勿論だよ。」
「研ぐ時のための油は買っていきますか?」
「いや、家にあるから良いよ。」
コートの中にナイフを入れ、店主に代金を払う。
「また来なさいよ、ぼっちゃん。」
店主は俺に向けて優しく微笑んでくれた。
変わらない人の温かさが今の俺には嬉しかった。

店を出てそのまま商店街をぶらつく。
しばらく待っていれば夜になるのだ。
偶にはこういうのも悪くはないだろう。

歩いているとこちらをチラリ、と見る女性が居た。
同じ大学だった人間だ。何度か構内ですれ違ったことがある。
同じサークルの奴らに紛れて楽しい振りしていた時に俺を見ていた奴。
あの時、まったく楽しんでいないということを彼女は知っていたのだろうか?
もしかして契約者か?なら今のうちに叩きつぶしても良いだろう。
刃物を突きつけて路地に引き込む?尾行して能力で急襲する?もしくは残り弾数の少ない銃を使う?

「アイタタタタタタタ!!!!」
メルが急に騒ぎ出した。
「蜘蛛!蜘蛛に噛まれました!!上田さん!私虫駄目なんです!」
「安心しろ!俺も駄目だ!」
と言いつつ蜘蛛をつぶす。
俺にとってキライ、ということは殺したいってことであり、
決して怖いとか見たらキャー!とか言っちゃうってことではない。
蜘蛛をつぶして辺りを見回すとさっきの女は居なかった。
運の良い奴だ。
だがその幸運さが益々怪しい。次にあったら何か手を打とう。

その後、俺たちはある廃ビルの屋上に陣取って夜を待っていた。
ネズミはすでにそれなりの数を集めている。
これで問題は無い。
月がポッカリと天蓋に風穴を空ける頃。
俺はハーメルンの笛吹きとしての仕事を始めていた。
いかにも楽しそうに笛を吹く。
いかにも残酷そうに笛を吹く。
だが俺はナニも思っていないのかもしれない。
この時間、この笛の効果範囲に居る人間達なんて概ねロクデナシだったから。
一度くらい、善良な子供が誤って入ってくることがあるかもしれないと思ってたんだが……。

そして本日の最初の一人がビルから落下しようとしていた。
落ちた死体はネズミに片付けさせる、効率的だ。
「つまらんなぁ……。」
そう呟いた瞬間だった。
視界が光に包まれる。

綺羅星のように目の前に現れては消えていく輝き。
冷静に注視するとそれは宝石やパワーストーンと呼ばれる類の石だった。
間違いなく敵だ。
しかし強敵ではない。
本当に強敵だったならまずは俺を狙いにかかるはずだったから。
奴は俺を仕留めるチャンスを失った!
子供達への操作は解けてしまったらしいがまあ良い。
こいつはここで

―――――――――――殺す!

「…はじめまして。ハーメルンの笛吹きさん」
男が一人立っていた。
間違いなく敵だ。
「……組織か」

挨拶代わりに軽く威圧する。
背後からの不意打ちに警戒させる為にメルを後ろに下がらせた。
そして俺が前に出る。
やはりメルは戦闘の前には震えてしまうようだ。

「…何故、こんな事をなさるので?」
「ふん…こんな連中。生きていても、将来、害悪にしかならないだろう?」

口先だけ、悪役ぶってみる。
正直言ってメルが有名になって力を取り戻しさえすれば良いのだ。
だから本当にどうでも良いこいつらを犠牲にすることにした。

俺だって未来を信じ、懸命に努力する人間を手にかけるのは少しばかり申し訳ない。
しかし刹那の快楽に身を任せ、あまつさえ人に迷惑をかける人間の一人や二人や沢山なんて、別に良いだろう?

「そうとは、言い切れないでしょう…未来ある子供だからこそ。いくらでも、やりなおせます」
それなら責任を持ってお前がやりなおさせると言えるのか?
言えないならそんなこと口にすべきじゃない。
こいつにはまだ可能性がある、そんなこと言って良いのは『こいつ』とやらを責任持って世話する人間だけだ。

「組織にも、随分と慈悲深い奴がいたんだな……だが」
こいつは慈悲深い。
だが、慈悲で人は救えない、救えたなら法は要らない。
銃弾を節約しようとして笛を構えてネズミを呼び出そうとする。
だがそれよりわずかに速く敵が銃撃をしかける。

「っ!!」

メル(その2)が俺をかばう。
かばってすぐに消滅。

「く…!?」

相手は子供を攻撃したことに戸惑っていたようだった。
敵ならば女子供でも容赦するな、と親に教えられなかったのだろうか?
普通子供にそんな教育施す親など居るわけないのは解っているのだが疑問である。
親でなくとも戦場に身を置いているなら誰かがそうやって教えてくれている筈だ。
まあ良い。
そして悪魔の旋律が廃ビル中に響き始める。

ちゅうちゅう、ちゅうちゅう、ちゅうちゅうちゅう
鼠たちが集まってくる
どこにでもネズミというのは居る物だ
ギラギラと瞳を輝かせ、鼠たちは、獲物である彼に襲い掛かる
彼は鼠たちに銃を向けるが…あんな銃だけで、これだけの大量の鼠を同時に防ぐなど、できるものか
俺は勝利を確信するように演奏を続けていた


 ……ぢゅぅううううううううううううううううう!?

鼠たちの悲鳴が、メロディに混じり不協和音となる
じゅううううううううううううううううううう
鼠たちが、焦げていく
灰色の毛並みを焦がし、一匹、二匹、三匹と
次々と、床に倒れ付していく
一斉に、同時に、と言う訳ではない
しかし、鼠たちの体は、一匹一匹順番に、次々と焼かれていく

それでも、鼠たちは減らず、彼に襲い掛かり

「駄目だよ、そんなんじゃあ」

楽しげな声
茶色の液体がどこからか飛んできて、鼠たちを包み込んだ

ごぽごぽごぽごぽ
どろ、ぐちゃり
茶色の液体は、鼠ごと床を溶かして、穴を空けていく

「…やりすぎですよ」
「御免ね。久しぶりだから、加減が効かなくって」

彼の背後に青年が二人、現れた
一人は、ニコニコ微笑み、コーラのペットボトルを手にしていて
もう一人は、金髪にチャラチャラとした格好で、随分と不機嫌そうな表情で、男を睨みつけていた

「だから言ったろ。容赦なくさっさと片付けた方がいい、って!」
「…せめて、ある程度は説得したかったのですが」

「っち。一人じゃなかったのか」
「流石に、そこまで無謀ではありませんよ」

当たり前と言えば当たり前だ。
援軍がいつ来たっておかしくはない。
だが、問題無い。
次の行動はあの二人の実力を計ってからだ。

「マ、マスター!」
「問題ない」

敵の数は問題ではない。
敵の質が問題なのだ。
あくまでまだ二対三。
あの二人が最初の男みたいな奴らであれば問題は無い。
悪魔の旋律を再開させ、相手を大量のネズミで圧殺することに決めた。
下手に攻撃を緩めればあの茶色い液体が俺たちを襲うだろう。
更にメルも使えば最初の男は封じられる。

「う……!?」

金髪も止まった。
甘い、な。
そう思っていると先程のネズミを溶かした男は容赦なくメルを攻撃した。
よく見ると手に持っているのはコーラ。
甘い、な。
ってそっちの甘いじゃないから!!
まあとにかく敵は実質あの金髪だけということは把握できた。

「…なぁ。毎度思うけど、こんな鬼畜どS、さっさと見捨てね?」
「そう言う訳には行きませんよ。彼は、一応は私の担当なのですから」

なんか話しているのが聞こえる。
あの二人は一旦捨て置いても構うまい。
コーラの男に向けて9mmパラベラムを何発か撃ち込む。
あの男は鉄は溶かせるのだろうか?
コーラ男はしっかりと不意打ちの銃弾を凌いでみせる。
コーラの男も銃弾にはそれなりに対応出来るようだ。
でもメルとの二人がかりならば行けるか……?
とにかくわりとやることは解った、温い戦闘じゃないようだ。
一旦、退くことも考えるべきだろう。

そう考えていた時だった。
「俺の大事な奴に、何をしやがる!!」
いきなりの怒号。


この、瞬間
確かに、この場の空気が凍りつき
きっかり、30秒程の静寂が訪れた

腐ってやがる!
俺はそう思った。


ほんの30秒
しかし、それで充分だ ったらしい。
宝石男は、懐からその石を取り出して、少女に投げつけた

投げつけられた琥珀
ぱんっ!!とメルに触れてはじける

「く……戻れ、メル!」
「は、はいっ!?」

何の攻撃かが解らない。
ここは安全策をとるべきだ

子供達はちゃんとビルから突き落としてやりたかったが仕方がない。
放っておいた子供達を再び操り始める。
コーラ男単体ではなく、こいつらをグループとして考えれば子供に手は出せない。

「マ、マスター!やっぱり、子供を盾にするなんて、外道なような…っ」
「何を言う。社会のゴミだ。問題ない」
「………!」

…き!と
メルが俺を睨みつける。
良い根性だ、まだ殴られ足りないらしい。

「ッ駄目です!やっぱり、駄目です!」
「な……っ」

はし!と
俺の腕にしがみつくメル。
馬鹿野郎、ここで手を止めたら俺たちがやられるだろうがよ。
大学にいた連中を思い出す。
お前もあの大学で漫然とモラルを振り回してた奴らと同じなのか?

思い切り殴って気絶させる。
これで笛を壊されてしまうとアウトになるが仕方がない。

「逃がさないよ?」

勘違いも甚だしい。
逃げられないのは
――――――お前らだ!

笛が、鳴り響く
小動物を操るメロディ
このビルに残っていた最後の鼠たちだ
それが群れとなって一斉に襲い掛かってくる!

「面倒だなぁ」

ごぽりっ
三人の周囲を、コーラが覆う
攻撃ではない
それは防御行動
ドーム状のコーラに、次々と突進してくる鼠たち
ぢゅぅううううううう
次から次へと、溶けていく

鼠たちの悲鳴が、途絶えた時
男と少女の姿は、そこにはなかった
後には、気絶した子供たちだけが残される

とっくに廃ビルからの脱出に成功した俺たちは家へ帰る始発の電車に乗っていた。
計算通り、電車を追ってこれる能力者はそうそう居るわけがない。
あの金髪がそうである可能性もあるが多分これで逃げ切れた。
あの場に置き去りにした子供達をあいつらはどうするのだろう?
しばらくすれば正気を取り戻すと思うが……、まさかわざわざ家まで送るのだろうか?
だとしたら愉快だ。
愉快で愉快でしょうがない。
顔がばれてしまったのを補ってなお余りある愉快。
しかしまあそうやって俺と同じ気持ちを学んで貰うのも悪くはないだろう。
まあとりあえずこいつにも色々学んで貰う訳なのだが……。
そう思って俺は隣で寝ているパートナーの頬をつまんだ。

【上田明也の協奏曲Ⅳ~男達の挽歌~ fin】



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