「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 女装少年と愉快な都市伝説-03

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秋祭り2日目~夜1


「はあ、はあ…。なんとか、まいたか…?」

息を整えながら後ろを振り返って呟く。
ついさっきまで追跡してきていた、マッチョな変態はもういない。

「本っっっ当にあそこで黒服がでてきてくれて助かった…《夢の国》の契約者さんに会えたら全身全霊を込めてお礼を言おう…!」

あの筋肉ダルマの体力は恐ろしかった。どれだけ走っても、全然振り切れる気がしない。
飛び散る汗をきらめかせ、甲子園で優勝した高校球児もかくやという爽やかな笑顔を浮かべた全裸の筋肉マンが
少しずつ少しずつ迫ってくるあの恐怖は、到底言葉で言い表せるものではない。
間違いなくこれからしばらく夢に出るだろう―――当然、悪夢として。
そんな恐怖から救ってくれたのは、何を隠そう、《夢の国》の黒服さんたちだった。
マ神(マッチョな邪神の略)の手がこっちの肩に掛かりかけた正にその時。
ちょうど側にあった小さな路地から大量の黒服たちが文字通り湧いて出たのだ。
一瞬迷ったかのように動きが鈍ったハゲの隙を突き黒服に特攻、それによって能力を発動し、全速力で離脱した。
というわけで危機は去ったものの、時刻はもう夕暮れ。そして現在地はほぼ街の中心あたり。

「こりゃ、急がないとヤバいかな…?」

同居人達と一刻も早く合流するため、連絡をとることにする。
ピ、ポ、パ、ポと携帯を操作し、同居人1であるトバさんこと、何故か若返った《ジェットばあさん》に電話を掛ける。

Prrrrrrrr……………………

『はい、もしもし?』
「あ、もしもしトバさんか? 今どこにいる?」
『あぁ、少年ですか…今、街の外にいますよ?』

WHAT!?

「え、えーと…パードゥン?」
『ですから、街の外にいます。中は結構危ないことになっているみたいですから』

……そーですか。こちとら新しいトラウマまで作って探しに来たのに、悠々と脱出済みですか。

「…あー、確かに危ないなあ。なんか変なのいっぱいいるし。《夢の国》だっけ?」
『そうらしいですね。私は能力を使って逃げてきたので詳しくは判りませんが、学校町を取り込もうとしているらしい、あの《夢の国》です』

…ちょっと待て。今聞き捨てならない言葉を聞いたぞ。

「……なあトバさん。学校町を取り込もうとしているって、どういうこと?」
『言葉通りの意味ですよ…って、今の今まで知らなかったんですか!?』
「おう、今の今まで知りもしなかったさ! …で、確か《夢の国》って、子供の内臓売るんだよな?」
『…そう、言われてますね。都市伝説である以上、少なくともそれに類する能力は持っていると見て、ほぼ間違いはないでしょう』

前言撤回。やっぱ感謝なんかしてやらねえ。…いや、それよりも。

「そっ…か。やっぱりか」
『…どうしたんですか?』
「いや、ちょっとね」
『どうせ、“子供が犠牲になるかもしれないなら、いっちょ殺っちゃいましょうかね”とか、考えてたんじゃないですか?』

なぜバレたし。まあ、人生経験が天と地の差だからなあ。

「ま、ね。少なくとも、スルーは出来んよ」
『まあ、仕方ないですね。……死なないで下さいよ? 少年が死んだら、また私おばあちゃんになっちゃいますから』

理由それかよ。もうちょっとなんかあったりしないのか。

「…はぁ。とりあえず、ちょっちクイちゃんに替わってくださいな」
『わかりました。…クイちゃん、少年からですよ』

クイちゃんとは、こっちの同居人2である《地震発生装置》の“本体”の少女だ。

『…替わった。なに、おにいさん?』
「いや、ちょっとクイちゃんの声が聞きたくなってね。大丈夫? ケガしてない?」
『大丈夫。…おにいさん』
「ん?」
『…気をつけてね』
「…了解! クイちゃんもね」

ああ、心配してくれるなんて、なんて可愛らしいんだろう!? どこぞのおばあちゃんとはえらい違いだ!

『…カステラ』
「ん? なに?」
『おにいさんのカステラ、食べたいから』

…泣かないよ。男だもん。この程度じゃ泣かないよ。

『もしもーし、しょうねーん?』
「…なんすか、トバさん」
『? なんで半泣きなんですか?』
「泣いてねーよちくしょう! 断じて泣いてねーよ!」

そう、これは心の汗さ! …グス。

『そ、そうですか…。ところで、《夢の国》を倒すにしても、どうなさるおつもりで?』
「グス…とりあえず、そのへんのマスコット連中を片っ端から叩いてみるつもり。本体の方は動いてる人がいるだろうし、
マスコットなんて《夢の国》全体で見ればただの末端だろうけど、それでも多少は力を削ぐことにはなるさ」

そう、今更《夢の国》の攻略に入れはしないだろうこっちが少しでも役に立つには、相手の力をほんの少しでも削ぐしかないだろう。

『まあ、それくらいしかできることありませんしね』
「うん、その通り…ってうわっ!」
『どうしました!?』
「あー、どうやら来てくれたみたい。切るよ」
『…わかりました。私も外から出来るだけの支援はします』
「うん。でも無理はしないでよ。こっちに来てもらわないのも、クイちゃんを危ない目にあわせたくないからなんだし」
『わかってます、そんなこと。……少年』
「なに?」
『…気を付けてくださいね』
「…あいさー」

プッという音とともに通話が切れる。

「…さぁて、どうしますかね、この状況」

さっきまでは「なんとなく感じられるなー」くらいだった《夢の国》の楽しげな気配。
それが、今では比べ物にならないくらい濃密なものとなっていた。

「…はあ。さっきはやるっつったけど…いや、いきなりこれはないだろ…」

今、こっちの周囲を取り巻いているのは、文字通り数えきれないほどの黒服とトランプの兵士。
目の前に立ち塞がるは、五体ものマスコット。
ハートの女王、ティモン、プンバァ、ジェシーにブルズアイ。

対してこちらは一般ピーポーな高校生男子が一人。

いくら三つの都市伝説と契約しているとはいえ、多勢に無勢、分が悪すぎる。
普通ならば、いったん退く場面だろう。

しかし。

「…どうやら、逃げられんみたいやね」

一体どんな理屈なのか、逃げることは不可能なようだ。円状に壁のようなものがある。

「……はあ。不幸だなー…」

思わずぼやくが、マスコットたちは待ってくれない。途端に殺気が膨れ上がる。

「まあ、しゃあない…やりますか!!」

能力を全開で発動しつつ、雲霞のごとき《夢の国》のパレードに突っ込んでゆく。




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