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連載 - 喫茶ルーモア・隻腕のカシマ-15a

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喫茶ルーモア・隻腕のカシマ


ジャックとボクと、時々、カシマ


いつもの如く、カシマによる稽古が終わると
サチが作ってくれた夕食を3人で食べる
幸せな日々

二人が帰ると、ボクは独りになる
決して広いとは言えない部屋が……どうしようもなく広く感じてしまう
気晴らしに、散歩にでも行こう
外へ出れば気分も変わるだろう

外へ出ると、外套を羽織った女がいた
漂う雰囲気は明らかに人外のソレだ
都市伝説
だが、なんの都市伝説?
いや、それ以前の問題として……敵か……そうでないのか
刀を部屋に置いてきたことが悔やまれる
次からは持ち歩こうと心に決めるが……果たして、次はあるのか?

女が口を開く
「……カシマの弟子だな?」
「!」
弟子?……まぁ確かに……弟子なのかもしれない
しかし、問題はそこではない
ボクがカシマさんに剣を習っていることを知っている
こちらの情報は相手には知られている
だが、ボクは相手の情報を何一つ……知らない

*



「あのだな……キミは……カシマの弱点とか……知らないか?」
「弱点?!そんなもの知らないよ……」
知っていても素直に教えるワケが無い
「では……そうだな……好物はあるか?」
「こうぶつ?」
「ああ、好きな食べ物だ」
そんなものを聞いてどうするつもりだ?
そうか……口裂け女のベッコウ飴の様なことか?
それとも……まさか、毒でも仕込むつもりなのか?!
でも、カシマさんの好物か……あるのかな……
「好物……サチの作るものは全部残さず食べてるよなぁ……」
「……また……サチ……ですか……」
「ぇ」
もの凄い殺気を感じる
「では……そう……胸はどうです?」
「むね?」
「つまり……その……おっ、おっぱいのことです」
「……?」
何を言っているんだ、この女は……理解できない
敵なのか、そうでないのか……判断できない
「大きい方と小さい方なら……どちらがカシマの好みなのでしょうか?」
「ん~~分からない……」
気迫に押され答えてしまう
そして、貧乳代表としてサチを思い浮かべてしまう……ごめん、サチ

改めて、目の前の女をよく観察する
暗色のスーツに黒い外套を羽織っている
髪は短めの金髪、瞳の色は綺麗な……翡翠の様な緑色
顔立ちは美しい
一言で言うなら、男装の麗人

さっきから、顔を赤らめてもじもじしたり
殺気立ったりと忙しい

ん?顔を赤らめてカシマさんのことを聞いてくる?
「……へぇ~」
「どうしたのですか?」
「いや、名前をまだ聞いていなかったからさ……ボクは輪、あなたは?」
「自己紹介がまだでしたね……すみませんでした……私はジャック・ザ・リッパー」
切り裂きジャック?
女性の切り裂きジャックなんているのか……
いや、そうか……確かジャックと同時代に生きた推理作家のコナン・ドイルの説でそんなものが……
「で、カシマさんとは何処で出逢ったの?」
何やら思い出して、死にそうな表情になっている
ちょっと可愛い
「いえ……その、通りすがりに……殺し合いに……」
「ぇ……殺し合い?」
「違うんです!違うんですよ!……その時はカシマが手を出さなかったので……」
「戦闘は避けられたんだね」
「ええ、そうなんですよ……今にして思えば恥ずかしい過去です……でも」
思い出すように、虚空へと視線を移すジャック
「でも?」
「思い出してみると……あの時のカシマも……素敵でしたねぇ……」
自分の世界に入ってしまった
「あの……ジャックさん?……ジャックさんッ!」
「……ぁ……はい!……何でしょうか?」
「カシマさんのこと好きなの?」
「な、なに言ってるんですかッ!この子はッ!」
バチーン
と、派手な音を立てる程の強さではたかれる
痛い
この感じ、嘘ではない様だ
「サチに嫉妬しているの?」
「……嫉妬などしていません」
むすっとして応えてくる
いや、それが嫉妬だよ
「大丈夫だよ、カシマさんはサチのことを女性として意識していないと思う」
「そうですかッ!」
さっきの暗い嫉妬の混じる表情が一転する
ガシッと手を掴まれて、ギュッと両手で握られる
キラキラとした乙女チックな表情

*



こうしてボクはジャックと知り合いになった

数日おきにだが、ジャックが尋ねてくる
サチとカシマさんが帰るのを見計らってだ
その日にあったカシマさんとの会話やジャックからリクエストされた情報などを話す

カシマさん曰(いわ)く

「弱点か……耳をふぅ~っとされるのは苦手ではあるな(苦笑交じりに)」
「料理は味も大事ではあるが、バランスが最も大切だと考えている」
「好物か……ソバは好きだな」
「女性に対する評価を胸や顔といった外見で測ったことはないからなぁ」
「趣味?……変わった生物を観察すること……だろうか」
「酒はたしなむ程度だよ……それほど強くは無い」
「好きな音楽か……ふむ……ジャズなどは好きだな」
「女性の髪型?……あまり気にしたことは無いが、似合っていれば良いのではないか?」
「服装は……やはり、きちんとしている方が好ましいな」

などなど

ボクが眠りにつくまでの間ずっと、ベットの横で話をしていく
これじゃあ……寂しさを、感じる暇なんて……ないよ

「今度、ジャックも一緒に4人で食事しようよ」
「……いや……それは……」
どうやらまだサチのことが気になっている様だ
いつか、皆で楽しく食事できたら良いのに……そう思う

*



そんな事が始まり、二ヶ月ほど過ぎた頃のことだったと思う

「色々と情報をありがとう、輪……キミにこれをあげましょう」
「えっと……これ……なに?」
革のベルト状のものに、金属製の何かが3本収められている
「見れば分かると思いますが、メスです……投擲用の」
「えぇ~と……メスに投擲用とかあるんだ?」
「あります」
ジャックにためらいは無い
「そっか……あるんだ」
仕方ない……そういうことにしておこう
「このメスは、目標に目掛けて真っ直ぐに飛ぶ様に私の力が込められています」
「へぇ~……凄いね」
「キミになら使えますよ……何故ならキミは、カシマの弟子なのですから」
「そ、そうかな……」
どんだけカシマさんを評価してるんだよ……このヒト
「いつか、キミの役に立つことがあるかもしれない……装備しておきなさい」
「そ、そうだね……装備しておくよ」
「もう一度言いますが、持っているだけではダメですよ?ちゃんと装備してくださいね」
「う、うん……分かったよ」

こんな風にしてボクは、何故かメスを装備する羽目になった

山々は色づき初めている
季節は夏から手を離し、秋の只中にいた



*


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