そろそろ夕方にでもなろうかという時間、俺たちはいつものあの黒服さんとは違う黒服と出会った。
その手には朝から張って回っていた張り紙が一枚握られており、
「これを張って回ってたのはお前達だな」
黒服はそう、なんかそこはかとなくデジャブを感じることを言って、俺たちを一通り見まわし、――俺と夢子ちゃんに視線を固定した。
その手には朝から張って回っていた張り紙が一枚握られており、
「これを張って回ってたのはお前達だな」
黒服はそう、なんかそこはかとなくデジャブを感じることを言って、俺たちを一通り見まわし、――俺と夢子ちゃんに視線を固定した。
●
祭りは素晴らしい。そう彼は――黒服Hは常々思っている。
なぜならば浴衣が見放題なのだ。やはり日本人足るもの和装をしなければなるまい。いや、別に外人が和装してても何ら構わない、むしろウェルカムなのだが。
それはそうとして彼は今目の前にいる女性二人に視線を固定させている。それ以外は何も見えない聞こえない。
まずは頭に綿が詰まっていそうな人形を乗せている少女だ。
紺の地に色とりどりの朝顔をあしらった浴衣、それに黄色の帯、そして結わえず流しっぱなしの髪、彼女のアクティブさを感じさせながらもそこはかとなく落着きを感じさせる紺の地がなかなかクるものを感じさせる。
一方もう一人、こちらは、そう。≪夢の国≫の契約者として≪組織≫のブラックリストにも載っていた少女だ。
今日の彼女は報告にあったような簡素な病院着のような貫頭衣などではなく――いや、脱がしやすさやその他いろいろな面から見て貫頭衣に不満はないのだが――白い地にトンボと、ススキ、だろうか? その影があしらわれた見事な浴衣だった。帯はこれまた白なのだが少し色がついている。象牙色とでも言うのだろうか。こちらは祭りに浮かれ過ぎない染まらぬ白とでも言おうか、意思の強さを感じさせる見事な着付けだ。
そして彼の視線はそこだけにとどまることなく、聴覚すら使い彼女らをたっぷりじっとりねっとりと観察する。
彼が声をかけるまで彼女らが歩いている時に立てていた下駄の音を脳内でリピートさせる。そうしつつ彼女らの下駄も凝視する。
人形を乗せた少女の下駄の鼻緒の色は紺。これはやはり彼女のアクティブさを抑えるための演出であろう。
しかし彼は先程の少女の歩く足音を、姿を、脳内で再生する。
全体的におしとやかさを演出しようとするその服装に反して元気に動き回る少女のはためく袖、裾、髪。
そしてカラコロと音を立てる下駄の響き。
しかし服装と行動がミスマッチにならないように厳選された、浴衣の印象を決めると言っても過言ではない帯の明るい色合いや、浴衣にあしらわれた花々の彩によって演出される少女の行動性……なんとそそることであろうか!
≪夢の国≫の契約者の下駄の鼻緒の色は赤だ。何ものにも染まらぬと白を基調とする装いをしながらもその下駄の鼻緒だけは赤という色に染まっている。
しかしそれは決して彼女が染められてしまうことを表しているわけではない。
その赤はいわば少女の秘める苛烈で強い意志の表れだ。少女の白基調の装いによる染まらぬ、という意思の中にも見え隠れする帯やトンボやススキによって表現される一種の寂寥や翳り、それをだがしかし、寂寥には支配されないという意思を表現するかのように浴衣の裾からチラチラとのぞくその鼻緒の赤、そのなんと汚しがいのあることかっ!
彼女らは当然下着など身に着けてはいないだろう。
いや、許すわけがないのだ! 彼女らにこのような見事な着付けをした人物がそのようなところで挫折などしようはずがない!
ならば当然の帰結として彼女らのあの装いの下は、
なぜならば浴衣が見放題なのだ。やはり日本人足るもの和装をしなければなるまい。いや、別に外人が和装してても何ら構わない、むしろウェルカムなのだが。
それはそうとして彼は今目の前にいる女性二人に視線を固定させている。それ以外は何も見えない聞こえない。
まずは頭に綿が詰まっていそうな人形を乗せている少女だ。
紺の地に色とりどりの朝顔をあしらった浴衣、それに黄色の帯、そして結わえず流しっぱなしの髪、彼女のアクティブさを感じさせながらもそこはかとなく落着きを感じさせる紺の地がなかなかクるものを感じさせる。
一方もう一人、こちらは、そう。≪夢の国≫の契約者として≪組織≫のブラックリストにも載っていた少女だ。
今日の彼女は報告にあったような簡素な病院着のような貫頭衣などではなく――いや、脱がしやすさやその他いろいろな面から見て貫頭衣に不満はないのだが――白い地にトンボと、ススキ、だろうか? その影があしらわれた見事な浴衣だった。帯はこれまた白なのだが少し色がついている。象牙色とでも言うのだろうか。こちらは祭りに浮かれ過ぎない染まらぬ白とでも言おうか、意思の強さを感じさせる見事な着付けだ。
そして彼の視線はそこだけにとどまることなく、聴覚すら使い彼女らをたっぷりじっとりねっとりと観察する。
彼が声をかけるまで彼女らが歩いている時に立てていた下駄の音を脳内でリピートさせる。そうしつつ彼女らの下駄も凝視する。
人形を乗せた少女の下駄の鼻緒の色は紺。これはやはり彼女のアクティブさを抑えるための演出であろう。
しかし彼は先程の少女の歩く足音を、姿を、脳内で再生する。
全体的におしとやかさを演出しようとするその服装に反して元気に動き回る少女のはためく袖、裾、髪。
そしてカラコロと音を立てる下駄の響き。
しかし服装と行動がミスマッチにならないように厳選された、浴衣の印象を決めると言っても過言ではない帯の明るい色合いや、浴衣にあしらわれた花々の彩によって演出される少女の行動性……なんとそそることであろうか!
≪夢の国≫の契約者の下駄の鼻緒の色は赤だ。何ものにも染まらぬと白を基調とする装いをしながらもその下駄の鼻緒だけは赤という色に染まっている。
しかしそれは決して彼女が染められてしまうことを表しているわけではない。
その赤はいわば少女の秘める苛烈で強い意志の表れだ。少女の白基調の装いによる染まらぬ、という意思の中にも見え隠れする帯やトンボやススキによって表現される一種の寂寥や翳り、それをだがしかし、寂寥には支配されないという意思を表現するかのように浴衣の裾からチラチラとのぞくその鼻緒の赤、そのなんと汚しがいのあることかっ!
彼女らは当然下着など身に着けてはいないだろう。
いや、許すわけがないのだ! 彼女らにこのような見事な着付けをした人物がそのようなところで挫折などしようはずがない!
ならば当然の帰結として彼女らのあの装いの下は、
全裸
そう、あの薄布の下には彼女らの柔肌が隠されているのだ。ああ、なんということだ! あんな薄布で封印される見事なる裸体。これはぜひとも剥いてくださいと言っているようなものではないか!!
特に人形を乗せた少女! 彼女の激しい動きによって揺れる浴衣からチラリとのぞくその肌を見ただけでもうたまらんものがあるだろう常考!
そう、元々浴衣とは湯上りに着て肌の水分を吸い取らせる目的で着用されたものである。
つまり透けることも上気して火照った体を眼前に晒すことも、いや、それこそが浴衣の本分と言っても過言ではあるまい!
つまり何が言いたいのかというとコトの前にシャワーを浴びた後に浴衣を纏って現れる二人、上気した頬を、うなじを、生乾きで湿った髪から滴るしずくがツー、と流れていく、そして膝でにじり寄られて迫られるというシーンをちょこっと妄想しただけでご飯三杯はイケる!!
特に人形を乗せた少女! 彼女の激しい動きによって揺れる浴衣からチラリとのぞくその肌を見ただけでもうたまらんものがあるだろう常考!
そう、元々浴衣とは湯上りに着て肌の水分を吸い取らせる目的で着用されたものである。
つまり透けることも上気して火照った体を眼前に晒すことも、いや、それこそが浴衣の本分と言っても過言ではあるまい!
つまり何が言いたいのかというとコトの前にシャワーを浴びた後に浴衣を纏って現れる二人、上気した頬を、うなじを、生乾きで湿った髪から滴るしずくがツー、と流れていく、そして膝でにじり寄られて迫られるというシーンをちょこっと妄想しただけでご飯三杯はイケる!!
――――ここまで五秒。
「あんた、≪組織≫の人間だな」
そんな声と共に、黒服Hの眼前に、背後に契約者や夢子を庇うように青年が立った。
「……、何の事だ?」
黒服Hは至福の時間を邪魔されたことに腹が立ち、しらを切ることにした。
「かみのけがすごいの」
そんな中、青年の契約者の頭上にある人形が言うように、彼の髪は割とすさまじい速さで伸びていた。
「……む」
それを自覚した黒服は自分の格好とこの身に起こっている異常から考えてしらを切っても寒いだけだと判断する。
「そうだ。≪組織≫の黒服さんだよ。本当なら過労死候補ナンバーワンな俺の同僚がここに来る予定だったんだがアイツついに≪組織≫からも休むように言われてな? だから俺が奴に頼まれてこんな所まで来たんだ」
「そうか」
ついに≪組織≫からも言われたか。とうなずく青年に黒服Hは言う。
「で、これはなんだ?」
「まんまだよ。≪夢の国≫は見た目、≪夢の国≫の王たる夢子ちゃんの姿こそ変わらないがその中身は悪夢ではなくなった。つまり、もう≪夢の国≫は危険ではないって言うことだな」
「なるほどねぇ」
彼ははいはいと首肯しつつ青年たちに指をさす。
「で? お前らはなに? そっちはその≪夢の国≫の夢子ちゃんっぽいけど」
「俺たちは、黒服さん――過労死候補の黒服さんの手伝いをした者だよ」
「ふ~ん」
ああ、あれの知り合いか。なるほどね。と彼は思う。過労死候補の彼の同僚は≪組織≫外にもいくらか知り合いの契約者がいたらしい。彼等もその一人なんだろう。きっと。
「あの黒服さんに頼もうと思ったけど、まあ彼は疲れているみたいだし、貴方に頼むか」
そう言って青年は黒服Hに≪夢の国≫の境遇を語った。
「はぁ、」
全てを聞いた黒服Hはなるほどと言い、
「で、俺に何をして欲しいんだ?」
「このことを上の連中に伝えてもう≪夢の国≫には手を出すなと釘を刺して欲しい」
「……はっ!」
青年の言葉に愉快そうに笑う。
「おいおいおいおい、≪黒服≫なんて下っ端も下っ端だぜ? なんでそんなことができるよ?」
しかし青年は黒服Hを見据えて言う。
「さて、それはどうだろうかな」
「なに?」
「薔薇十字団」
青年が発した単語。その一言で黒服Hの雰囲気が変わった。
「…………」
「…………」
にらみ合う二人、しかしそれも長くは続かなかった。
「いいだろう。上には伝えとくわ」
「よろしく頼む」
お互いににこやかに言って別れる。
黒服Hは去り際、
「あまり余計なことは――」
それに割って入るように青年が言葉を挟む。
「俺は何も知らないよ」
黒服Hはそれを聞くと本当に愉快そうに笑い、去って行く。
「おう、二人のお嬢ちゃん! 良い浴衣だな! こう、クるモノがあったぜ!!」
その髪をしゅるしゅると伸ばしながら。
そんな声と共に、黒服Hの眼前に、背後に契約者や夢子を庇うように青年が立った。
「……、何の事だ?」
黒服Hは至福の時間を邪魔されたことに腹が立ち、しらを切ることにした。
「かみのけがすごいの」
そんな中、青年の契約者の頭上にある人形が言うように、彼の髪は割とすさまじい速さで伸びていた。
「……む」
それを自覚した黒服は自分の格好とこの身に起こっている異常から考えてしらを切っても寒いだけだと判断する。
「そうだ。≪組織≫の黒服さんだよ。本当なら過労死候補ナンバーワンな俺の同僚がここに来る予定だったんだがアイツついに≪組織≫からも休むように言われてな? だから俺が奴に頼まれてこんな所まで来たんだ」
「そうか」
ついに≪組織≫からも言われたか。とうなずく青年に黒服Hは言う。
「で、これはなんだ?」
「まんまだよ。≪夢の国≫は見た目、≪夢の国≫の王たる夢子ちゃんの姿こそ変わらないがその中身は悪夢ではなくなった。つまり、もう≪夢の国≫は危険ではないって言うことだな」
「なるほどねぇ」
彼ははいはいと首肯しつつ青年たちに指をさす。
「で? お前らはなに? そっちはその≪夢の国≫の夢子ちゃんっぽいけど」
「俺たちは、黒服さん――過労死候補の黒服さんの手伝いをした者だよ」
「ふ~ん」
ああ、あれの知り合いか。なるほどね。と彼は思う。過労死候補の彼の同僚は≪組織≫外にもいくらか知り合いの契約者がいたらしい。彼等もその一人なんだろう。きっと。
「あの黒服さんに頼もうと思ったけど、まあ彼は疲れているみたいだし、貴方に頼むか」
そう言って青年は黒服Hに≪夢の国≫の境遇を語った。
「はぁ、」
全てを聞いた黒服Hはなるほどと言い、
「で、俺に何をして欲しいんだ?」
「このことを上の連中に伝えてもう≪夢の国≫には手を出すなと釘を刺して欲しい」
「……はっ!」
青年の言葉に愉快そうに笑う。
「おいおいおいおい、≪黒服≫なんて下っ端も下っ端だぜ? なんでそんなことができるよ?」
しかし青年は黒服Hを見据えて言う。
「さて、それはどうだろうかな」
「なに?」
「薔薇十字団」
青年が発した単語。その一言で黒服Hの雰囲気が変わった。
「…………」
「…………」
にらみ合う二人、しかしそれも長くは続かなかった。
「いいだろう。上には伝えとくわ」
「よろしく頼む」
お互いににこやかに言って別れる。
黒服Hは去り際、
「あまり余計なことは――」
それに割って入るように青年が言葉を挟む。
「俺は何も知らないよ」
黒服Hはそれを聞くと本当に愉快そうに笑い、去って行く。
「おう、二人のお嬢ちゃん! 良い浴衣だな! こう、クるモノがあったぜ!!」
その髪をしゅるしゅると伸ばしながら。
「Tさん、あの人も組織の人?」
「ああ」
「なにか、邪な感じを受けたんですが」
「まあ気にしてやるな」
「かみのけのびておもしろいひとだったのー」
「まあ確かにあれは笑えたな」
楽しそうに黒服Hの髪の毛について話している契約者たちを見て、なぜのびたのかは言わないでおこう。青年はそう思った。
気分を切り替えるために溜め息一つ。
――さて、
「次に行くか」
「次?」
不思議そうに行ってくる契約者に青年はああ、と頷き、
「今回の戦闘に参加した組織だった連中と≪夢の国≫に対する不可侵の話をつけなきゃならんからな。フリーにはとりあえず情報屋さんが情報を広めてくれるだろ。あとは組織だった連中に対する対処だな。組織だっているということは命令系統があるってことで、それはつまり上からの命令で一括に下の連中に命令が下るということだ。まあ無視する輩も少数いるわけだがそんなイレギュラーはこの際どうでもよろしい」
なんにせよ、
「今回の件では≪組織≫≪怪奇同盟≫≪首塚≫が俺の知っている範囲では関わっている。とりあえずここと話をつけるぞ」
と語る。
「あ、あの」
「ん?」
「なんでここまでしてくれるんですか? 私はあなたを殺して、あなたの契約者も殺そうとして、町を取り込もうとまでしたのに」
夢子がそう言うのを聞いて他三人は顔を見合わせる。
「そんなの決まってる」
青年はそう言うと穴があき、血に濡れた一枚の紙片を取り出し、
「夢子ちゃん、あんたがこれで助けを求めてきたし、あのまま見捨てるのも後味が悪いからだ。そして俺はアフターサービスも完備してるタイプの人間だ」
「俺もTさんに同意ー」
あっさりと言ってやる。
「そんなことで?」
不思議そうにしている夢子を見て青年の契約者は言う。
「そんなもんじゃね? 人間なんて」
「俺は都市伝説だがな」
「わたしも、わたしも!」
だよなー! とリカちゃんをあやす青年の契約者。
夢子は少し唖然としていた。
それを見て青年は苦笑する。
「長い間狂人の支配を受けてたんだ。少し違和感を感じるかもしれんがこれが、きっと一応普通ってやつなんだろ」
たぶん。と付け加えて青年は歩きだした。
「そろそろ着替えるぞー。このまま墓場行って最後はちと遠出するからな」
「あ、じゃあ≪夢の国の地下カジノ≫に行きますね」
「頼む」
青年の言葉に「はいっ」と頷いて夢子は路地裏に皆を集める。
「あの姫さんたちにまた変なの着せられないだろうな」
うんざり顔な青年の契約者の声と、はしゃいだ風な人形の声がする。
「楽しそうなの」
瞬間、彼等の姿が消えた。
「ああ」
「なにか、邪な感じを受けたんですが」
「まあ気にしてやるな」
「かみのけのびておもしろいひとだったのー」
「まあ確かにあれは笑えたな」
楽しそうに黒服Hの髪の毛について話している契約者たちを見て、なぜのびたのかは言わないでおこう。青年はそう思った。
気分を切り替えるために溜め息一つ。
――さて、
「次に行くか」
「次?」
不思議そうに行ってくる契約者に青年はああ、と頷き、
「今回の戦闘に参加した組織だった連中と≪夢の国≫に対する不可侵の話をつけなきゃならんからな。フリーにはとりあえず情報屋さんが情報を広めてくれるだろ。あとは組織だった連中に対する対処だな。組織だっているということは命令系統があるってことで、それはつまり上からの命令で一括に下の連中に命令が下るということだ。まあ無視する輩も少数いるわけだがそんなイレギュラーはこの際どうでもよろしい」
なんにせよ、
「今回の件では≪組織≫≪怪奇同盟≫≪首塚≫が俺の知っている範囲では関わっている。とりあえずここと話をつけるぞ」
と語る。
「あ、あの」
「ん?」
「なんでここまでしてくれるんですか? 私はあなたを殺して、あなたの契約者も殺そうとして、町を取り込もうとまでしたのに」
夢子がそう言うのを聞いて他三人は顔を見合わせる。
「そんなの決まってる」
青年はそう言うと穴があき、血に濡れた一枚の紙片を取り出し、
「夢子ちゃん、あんたがこれで助けを求めてきたし、あのまま見捨てるのも後味が悪いからだ。そして俺はアフターサービスも完備してるタイプの人間だ」
「俺もTさんに同意ー」
あっさりと言ってやる。
「そんなことで?」
不思議そうにしている夢子を見て青年の契約者は言う。
「そんなもんじゃね? 人間なんて」
「俺は都市伝説だがな」
「わたしも、わたしも!」
だよなー! とリカちゃんをあやす青年の契約者。
夢子は少し唖然としていた。
それを見て青年は苦笑する。
「長い間狂人の支配を受けてたんだ。少し違和感を感じるかもしれんがこれが、きっと一応普通ってやつなんだろ」
たぶん。と付け加えて青年は歩きだした。
「そろそろ着替えるぞー。このまま墓場行って最後はちと遠出するからな」
「あ、じゃあ≪夢の国の地下カジノ≫に行きますね」
「頼む」
青年の言葉に「はいっ」と頷いて夢子は路地裏に皆を集める。
「あの姫さんたちにまた変なの着せられないだろうな」
うんざり顔な青年の契約者の声と、はしゃいだ風な人形の声がする。
「楽しそうなの」
瞬間、彼等の姿が消えた。