「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - Tさん-16a

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だれでも歓迎! 編集
      失ったモノを彼女は嘆く

      失わせたモノを彼女は憎む

      失ったモノを彼は受け容れる

      失わせたモノを彼は助ける


      さて、正しいのはいったい、どっち?


                   T


            ●




 もうおやつの時間過ぎだ。屋台を冷やかしつつ町中回って張り紙してるわけだが……
「またこんなわけのわからん張り紙を」
「分かる奴に分かれば良い」
「そうなんだけどさぁ」
「なんてかいてあるの?」
「ああ」


  ――≪夢の国≫の容姿は変わらず、されど案ずるなかれ、
          彼等は悪夢ではない――


「って書いてあるんだよ」
「むずかしいの」
 リカちゃんにだよなぁと答えつつ張り紙をまた一枚張る。流石に今日は黒服さんを頼るわけにはいかないだろう。朝顔を見たらなんかもうやばそうだったし。
「さて、これで最後か」
 どこかの学校前の電柱に張り紙を貼る。
「これで最後だぜ」
「おわったのー」
「ありがとうございます。私たちのために」
 かしこまったように言う夢子ちゃんに俺はやべぇ! 気を使わせた! と思うが、
「気にするな。どうせ暇なんだ」
 Tさんナイスフォロー。
「そうそう、これからは取りあえず祭りをもっかい見て回るくらいしかすることねえしな!」
 俺も便乗する。
「じゃあ行くか」
 と言ったTさん。おう、と言って俺が電柱から振り返るとなにやらこっちをみて硬直しているヒトが二人いた。
 真っ赤なマントを纏ったおっさんと真っ赤なはんてんを纏った嬢ちゃんだ。
 ひきつった顔をした二人、
 二人してなんなんだ?
 そう思うが、よく見ると二人の表情は微妙に、
 性質が違う?
 赤いマントのおっさんの方はなにか驚いたような顔、赤いはんてんの嬢ちゃんの方は、こっちを睨んでいる。
 いや、
「赤い、」
 俺じゃなくて、
「赤い、はんてん」

 夢子ちゃんを、睨んで……る?

「赤いはんてもがっ!?」
「まぁ、落ち着きたまえ」
 何か言おうとしていたらしい赤いはんてんの嬢ちゃんは赤いマントのおっさんに口と手を塞がれた。

 赤いマントのおっちゃんに口をふさがれ、じたばた暴れている赤いはんてんの嬢ちゃん。
 赤いマントのおっちゃんは片手で赤いはんてんの口を、もう一方の手で赤いはんてんの手を塞いでいる。
 その状態で赤いマントのおっちゃんは言う。
「ふむ、そこのお嬢さん、まだ赤いはんてんの力は発動していないようだが……大丈夫かね?」
「あ、は、はい」
 俺の横で頷く夢子ちゃん。
 赤いマントの男は何がなんだかよくわからない俺を置いてきぼりにして話を進める。
「……悪夢から、解放されたのだね?」
 あん?
「……おっさん、夢子ちゃんの事、知ってんの?」
「はっはっは、私はおっさんと言う歳では辛うじてないと思いたいがそれはさておき。まぁ……私よりも、彼女の方が、因縁があると言うべきか」
 そう言って赤いマントのおっさんは腕の中の嬢ちゃんを見る。
 赤いはんてんの嬢ちゃんはおっさんに塞がれてない方の手でむーむー言いながらおっさんの手をぺちぺち叩いている。
 それを無視して赤いマントのおっさんは夢子ちゃんを見て言う。
「……お嬢さん、この子を……赤いはんてんを、覚えているかね? 以前君と出会った時は、人のいい青年と一緒だったよ」
「………!!」
 隣で夢子ちゃんが息をのむ音が聞こえた。
 赤いマントのおっさんはそれを見て苦笑している。
「……なるほど、その少女の契約者が、≪夢の国≫と戦った事があるのか」
 Tさんが確認するかのようにおっさんに声をかけた。
 赤いマントのおっさんはああ、と頷き、
「もっと具体的に言うと、彼女の契約者の友人が、まず、≪夢の国≫と戦い、敗北し……都市伝説と、一体化してしまったらしい。記憶を、すっぽりと失ってね」
 そして、と赤いマントのおっさんは続ける。
「≪全身を金粉で覆われると死ぬ≫、≪さっちゃんの歌の四番目≫……そして、この赤いはんてんとの契約者…それらをあわせて、四人。我々の親しい友人たちが、≪夢の国≫に命を奪われているのだよ」
「…………」
 無言で夢子ちゃんは俯いている。小さく「ぁ、」という声が聞こえてくる。どうやら夢子ちゃんにも心あたりがあるようだ。
 気が付くと、赤いはんてんの嬢ちゃんが暴れるのをやめていた。
 ただ、憎悪をこめて、夢子ちゃんを睨みつけている。
 これは、まずい。
 なんとなくそう思い、
「で、でも、待ってくれよ。こっちの話も、ちょっと聞いてくれ」
 とりあえず話を聞いてもらおうと俺は声を上げる。
「うむ、聞かせてくれたまえ…できれば、赤いはんてんに、早く冷静になってほしいのでね」
 赤いマントのおっさんは苦笑し、でも話を聞いてくれる気はあるみたいだった。
「Tさん」
「ああ」
 俺がTさんに声をかけるとTさんは頷いてくれた。
 そして、全てを話す――――

「……そうか、原因は≪夢の国の創立者≫だったのか……」
 全てを話し終えると、赤いマントのおっさんは、やっぱり苦笑でそう言う。
「赤いはんてん、わかったかね? 落ち着いたかね?」
「……………」
 こくりと、
 赤いはんてんの嬢ちゃんはうなずいた。
 その言葉に一つうなずき、赤いマントのおっさんは赤いはんてんの嬢ちゃんから手を放す。
「……………………」
 ただ、無言で、赤いはんてんの嬢ちゃんは夢子ちゃんを睨みつけている。
 俺なんかには嬢ちゃんが何を考えているかなんてわからない。だけど、そこには行き場のない、なにか大きな感情が渦巻いているかのような、そんな気がした。
「……お前は、もう、歪んでないのですね?」
 ぼそり
 赤いはんてんの嬢ちゃんが呟いた。
 じっと、じっと。
 真正面から夢子ちゃんを睨みつけたまま……ゆっくりと、続ける。
「もう、誰も殺さないですか?取り込んだりしないですか?」
「……はい」
 夢子ちゃんも赤いはんてんの嬢ちゃんの目を見て、はっきりと、うなずいた。
「……それなら」
 赤いはんてんの嬢ちゃんが、俯き、しかし顔を上げて、叫ぶ。
「…それならっ!もう、二度と歪むな、なのです!もう、誰も殺すななのです!!
 あいつらみたいな死人を、二度と出すななのですよ!!
 そして、償えなのです!死ぬななのです!! 生きて生きて生きて生きて生きて生き続けて!! 一生償いやがれ!なのです!!」
 一息にまくしたてると赤いはんてんの嬢ちゃんは、
「……行くのですよ、赤マント。あの顔見てるとイライラしてくるのです、殴りたくなるのです」
「っと……」
 赤いマントのおっさんの手を握って引っ張って行く。
 赤いマントのおっさんはこっちに何か言おうとしたみたいだけど何か言う前にムッとした顔の嬢ちゃんが自身の身に纏ったはんてんを翻す。青いはんてんに。
「ほら、行くわよっ!」
「~~っ!? そ、その姿で力いっぱい手を握らないでくれたまえ!? 手が潰れるっ!? 原稿が書けなくなったらどうしてくれるかっ!?」
「あんなちっちゃなポエムコーナー、誰も読んでないから問題ないわよ」
 一瞬でちんまい嬢ちゃんからナイスバディグラマー美女(しかもはんてんの下は晒しとスパッツのみ)になった赤いはんてんの嬢ちゃんがずるずると連れて行ってしまった。
 赤いマントのおっさんは終ぞ苦笑を浮かべたまま頭を下げて、青いはんてんの姉ちゃんに路地裏に連れていかれた。

            ●


「…………」
 無言で沈んでいる夢子ちゃんに俺は何も言うことができないでいた。
 それでも無理やり言葉をかけようとしていると、Tさんが夢子ちゃんに言葉をかけ始めた。
「これが、≪夢の国≫がこれから直面しなければならない現実だ」
「……はい」
「今回は良かったが、もしかしたら命を狙って攻撃を仕掛けるモノもいるだろう」
「……はい」
「だがお前は生き続けなければならない」
「……はい」
 言ってることは正しいんだろうが夢子ちゃんに厳しいんじゃないか?
 そう思いつつTさんの説教を聞いていると、夢子ちゃんがハッキリと言った。
「償い続けます。私たちが消滅してしまうその時まで」
 その言葉と共にマスコットや住人達が突然現れた。
 彼等は夢子ちゃんの横を、背後を固め、Tさんに強い視線を向ける。
 それが≪夢の国≫の意向であり決定であることを示すように。
「あー、わかったわかった、出てくるな。まだこの町には≪夢の国≫は刺激が強すぎる」
 Tさんは周囲を気にしながらそう言うと、マスコットたちを収めさせた。
「まあ、情報屋さんが案外理性的だったからこの偶然の出会いには一応感謝するべきか」
 Tさんはそう言ってため息を吐くと、
 ぽん、と夢子ちゃんの頭に手を置いた。
 ぽん、と俺も逆サイドから頭に手を置く。
 ぽむ、とリカちゃんが夢子ちゃんの頭に乗っかった。
「さて、行くか」
 Tさんが面倒な話は終わりだとばかりに宣言すると歩き出す。
 すかさず俺も、
「俺たこ焼きな」
「なぜ食い物しか出てこんのだ」
「うるせー」
「……」
 夢子ちゃんはその場に止まってしまっている。頭の上でリカちゃんが飛び跳ねてる。
「うぉい、置いてくぞー」
 声をかける。ハッとしたように夢子ちゃんは顔を上げると
「は、はい」
 いい感じに返事を返してきた。
 その顔が涙で濡れていたのには、気がつかない振りをした。



            ●



      失わせてしまったモノを彼女は嘆く

         取り返そうと
          償おうと
         彼女は足掻く

        足掻き続けたその先に

      彼女の救いはあるのだろうか?


                 T




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