生首連れたキャリアウーマンっぽい姉ちゃんが用意してくれた寝床で一晩過ごしたわけだが。
「メチャクチャよく寝たな……」
危機感とか無いのはよくないんじゃないかと思うが、
「まあいいか」
立ちあがり布団を畳む。首塚用意の服も脱いで畳み、着替え、そして――
「Tさん」
隣の部屋に通じる襖をスパンと開け放つ。
布団を畳み、血まみれの服を放りだしてそこら辺から適当に拝借した服を着たTさんが伸びをしていた。
Tさんはんむ、と言い、
「復活」
爽やかな笑顔だった。
「あんだけ血流しといて一晩で復活かよ」
呆れて言うと、
「都市伝説だからな」
納得できるのかどうか微妙な理由を述べた。
まあともかく、元気そうで何よりだ。うむ、では――
遠慮なく野郎を蹴倒す。
「病明けの人間に何をする」
床に蹴倒されたままTさんが言う。俺はそのまま踏みつけにしつつ、
「人に秘密で無茶なことやりやがった罰だ。なんで奴さんの戦闘のお誘いに乗るかなー? Tさんがやられたら俺たちも危ないだろうが」
「将門公は少なくともあの場では誰も殺す気はなかったさ」
俺の足を除けて胡坐を組むTさん。俺も差し向かいにその場にドカリと座る。
「だからこそ無茶も安心してできた。俺が倒れても契約者たちの安全は保障されてるようなものだからな」
そうTさんは言うが、
「キャリアウーマンな姉ちゃんもそんなこと言ってたけど俺にはそうは見えなかったね」
「アレが本気なら俺たちは初手で生首な将門公の祟り殺しを見る羽目になってる。それがなかったし、アレは敵対するモノとしか戦えない存在のはずだからな。あんなわざわざ見せつけるように夢子ちゃんを狙ってきたのも俺に敵意を向かせて戦うためだろう」
「それにしたって刀ぶっ刺してたじゃねえか」
「あれは急所を巧妙に避けてた」
人間業じゃないな、あれは。と言うTさん。てめえも大概だよ。
「そこら辺の手加減に思えなくもない手加減を感じたからこそ、俺も刀を口じゃなく体に刺したんだ」
本気なら口にぶち込んでた。≪将門の首塚≫の本体は首だからな。
と、そこで、
ガチャン、と音が聞こえた。
見ると、食器をコンテナで運んでキャリアウーマンな姉ちゃんが来ていた。
「お食事ぃ、持ってきたわよぉ」
話を聞かれたかな? いや、ぜってー聞かれた。そして誤解されたか?
「今の話だけどな? 別に将門さんを倒そうとかそんな相談じゃなくてな?」
「分かってるわよぉ」
昨日の闘いの考察でしょぉ? と姉ちゃん。誤解は……されてない?
「それで、」
食器を整えつつキャリアウーマンな姉ちゃんが興味深そうに訊いてくる。
「口にあなたのを突っ込んであの白いのを出した場合、将門様は討ちとれていたのかしらぁ?」
「おそらくは無理だろう。下手するとすべて飲みこまれてノーダメージとかされかねない」
まあいい感じにダメージは入ると思うが。とTさん。
「全部飲みこんでしまうの!? あの白いのを!?」
なにやらテンションが上がってるっぽいキャリアウーマンの姉ちゃん。朝から元気だ。そして思ってたのと別の、誤解……というか、電波が姉ちゃんに行っている気がする。
あれか、チャラい兄ちゃんと言い、この姉ちゃんといい、≪首塚≫って特殊な人が多いのか?
姉ちゃんが連れてる生首がおろおろしているが……かわいいな、同じ生首でも将門のおっちゃんとは大違いだ。なごむ。
「あれだけの霊格となると最悪将門公の気で中和されかねん」
Tさんと姉ちゃんの考察は続いている。そのうちに夢子ちゃんもリカちゃんも起きだしてきた。
両方隣の部屋で着替えさせて、その間生首を撫でていると朝飯の用意は終了したらしい。姉ちゃんは生首と二人連れ立って部屋を出て行った。
「さあ、飯食うぞ」
Tさんが言う。
無茶したことに対する俺の文句は終わっちゃいないんだが……まあ、終わったことを蒸し返してもしょうがないか。
「あいよ」
っにしてもなんか旅館の食事みたいだな。豪華だ。目の前の和食を見てなんとはなしに思った。
「メチャクチャよく寝たな……」
危機感とか無いのはよくないんじゃないかと思うが、
「まあいいか」
立ちあがり布団を畳む。首塚用意の服も脱いで畳み、着替え、そして――
「Tさん」
隣の部屋に通じる襖をスパンと開け放つ。
布団を畳み、血まみれの服を放りだしてそこら辺から適当に拝借した服を着たTさんが伸びをしていた。
Tさんはんむ、と言い、
「復活」
爽やかな笑顔だった。
「あんだけ血流しといて一晩で復活かよ」
呆れて言うと、
「都市伝説だからな」
納得できるのかどうか微妙な理由を述べた。
まあともかく、元気そうで何よりだ。うむ、では――
遠慮なく野郎を蹴倒す。
「病明けの人間に何をする」
床に蹴倒されたままTさんが言う。俺はそのまま踏みつけにしつつ、
「人に秘密で無茶なことやりやがった罰だ。なんで奴さんの戦闘のお誘いに乗るかなー? Tさんがやられたら俺たちも危ないだろうが」
「将門公は少なくともあの場では誰も殺す気はなかったさ」
俺の足を除けて胡坐を組むTさん。俺も差し向かいにその場にドカリと座る。
「だからこそ無茶も安心してできた。俺が倒れても契約者たちの安全は保障されてるようなものだからな」
そうTさんは言うが、
「キャリアウーマンな姉ちゃんもそんなこと言ってたけど俺にはそうは見えなかったね」
「アレが本気なら俺たちは初手で生首な将門公の祟り殺しを見る羽目になってる。それがなかったし、アレは敵対するモノとしか戦えない存在のはずだからな。あんなわざわざ見せつけるように夢子ちゃんを狙ってきたのも俺に敵意を向かせて戦うためだろう」
「それにしたって刀ぶっ刺してたじゃねえか」
「あれは急所を巧妙に避けてた」
人間業じゃないな、あれは。と言うTさん。てめえも大概だよ。
「そこら辺の手加減に思えなくもない手加減を感じたからこそ、俺も刀を口じゃなく体に刺したんだ」
本気なら口にぶち込んでた。≪将門の首塚≫の本体は首だからな。
と、そこで、
ガチャン、と音が聞こえた。
見ると、食器をコンテナで運んでキャリアウーマンな姉ちゃんが来ていた。
「お食事ぃ、持ってきたわよぉ」
話を聞かれたかな? いや、ぜってー聞かれた。そして誤解されたか?
「今の話だけどな? 別に将門さんを倒そうとかそんな相談じゃなくてな?」
「分かってるわよぉ」
昨日の闘いの考察でしょぉ? と姉ちゃん。誤解は……されてない?
「それで、」
食器を整えつつキャリアウーマンな姉ちゃんが興味深そうに訊いてくる。
「口にあなたのを突っ込んであの白いのを出した場合、将門様は討ちとれていたのかしらぁ?」
「おそらくは無理だろう。下手するとすべて飲みこまれてノーダメージとかされかねない」
まあいい感じにダメージは入ると思うが。とTさん。
「全部飲みこんでしまうの!? あの白いのを!?」
なにやらテンションが上がってるっぽいキャリアウーマンの姉ちゃん。朝から元気だ。そして思ってたのと別の、誤解……というか、電波が姉ちゃんに行っている気がする。
あれか、チャラい兄ちゃんと言い、この姉ちゃんといい、≪首塚≫って特殊な人が多いのか?
姉ちゃんが連れてる生首がおろおろしているが……かわいいな、同じ生首でも将門のおっちゃんとは大違いだ。なごむ。
「あれだけの霊格となると最悪将門公の気で中和されかねん」
Tさんと姉ちゃんの考察は続いている。そのうちに夢子ちゃんもリカちゃんも起きだしてきた。
両方隣の部屋で着替えさせて、その間生首を撫でていると朝飯の用意は終了したらしい。姉ちゃんは生首と二人連れ立って部屋を出て行った。
「さあ、飯食うぞ」
Tさんが言う。
無茶したことに対する俺の文句は終わっちゃいないんだが……まあ、終わったことを蒸し返してもしょうがないか。
「あいよ」
っにしてもなんか旅館の食事みたいだな。豪華だ。目の前の和食を見てなんとはなしに思った。
●
そして朝食なのだ。が、
「ゆめのお姉ちゃ~ん?」
「…………」
夢子ちゃんが超ローテンションだ。
Tさんに半目を向ける。すると野郎あからさまに視線を逸らしやがった。
「…………」
そして無言でデザートをこっちに寄こしてくる……。
「……あ~、夢子ちゃん」
買収されてやることにした。
? とこちらを見る夢子ちゃん。
「どうせTさんがぶっ倒れたのは自分のせいだとでも思ってるんだろ?」
「! なんで分かるんです?」
いや、見りゃわかるって。
「あのな? Tさんは事前の連絡で何やらされるか大体分かってて来てたし、というかむしろ将門さんと戦いたがってたくらいだぞ?」
実際は知らん。仮に戦いたくなかったとしてもこの場合は嘘も方便だ。
「ほら、アレだ。夕陽をバックに野郎二人が殴り合うあれ、あんな感じ」
はぁ、と曖昧に頷く夢子ちゃん。
「そう、まさにそんな感じだ」
Tさんも乗っかってきた。
「だから気にしなくていいんだよ。野郎二人のバカの責任を夢子ちゃんが感じることなんてねぇ」
なー、頭の上のリカちゃんに言ってやる。ねーと返事がきて、
「まあそう言うことだ」
Tさんが言う。それに、
「王ならもっと胸を張っていればいい」
と言って味噌汁を啜る。
こいつ、誰のせいで夢子ちゃんがダウン入ってたのか棚に上げやがったな。
「はい、すみませ……いえ」
夢子ちゃんは健気にも笑って、
「ありがとうございます」
言った。
それはそれは、素晴らしい笑みだった。
しかぁし、
「おまえらちょっと落ち着け」
いつの間にか湧いて出た≪夢の国≫の住人が夢子ちゃんを中心に盛り上がっている。邪魔だ。
「ほら、みんな戻って」
パンパンと手をたたきながらの夢子ちゃんの一声で住人達は消えていく。
あれとの関係は良好なようだ。けっこうけっこう。
「王様するなら苦しゅうないとかそんな口調でもいいぜ!」
老婆心ながら言ってやる。
「やめておくように」
即Tさんに却下された……。
「そういやこれからどうすんの?」
魚の骨を処理しつつ訊く。
「学校行け、契約者」
「えー」
口から文句がついて出る。
「だって夢子ちゃん宴会終わったら旅に出ちゃうんだろ~?」
そう言って顔を夢子ちゃんに向ける。
「あ、はい」
茶碗を置いて答えてくれた。
「たびにでるの?」
おう、とリカちゃんに答える。なんでも、
『≪夢の国≫は世界中に夢を与えなくちゃいけないから』
らしい。
リカちゃんはうー、と数秒頭上で唸り、
「さみしくなるの」
悲しそうに言う。
「だよな~」
そう言って今度はTさんに目を向ける。
「だが学校には、」
「Tさ~ん、親友との別れを惜しむ時間くらいじっくりくれてもいいんじゃね?」
言うと無言が返ってきた。やがて溜め息を一つ吐き、
「……、分かった」
折れた。
っし!
ガッツポーズを(心の中で)取る。
チョロいぜ!
「ただし、」
Tさんは箸の先端を俺に向け、
「ここにいる間は俺がみっちり勉強を教えるからな」
とのたまった。
「げ」
「またテストで赤点とか取りたくないだろう?」
…………………力なく頷くしかなかった。
「ゆめのお姉ちゃ~ん?」
「…………」
夢子ちゃんが超ローテンションだ。
Tさんに半目を向ける。すると野郎あからさまに視線を逸らしやがった。
「…………」
そして無言でデザートをこっちに寄こしてくる……。
「……あ~、夢子ちゃん」
買収されてやることにした。
? とこちらを見る夢子ちゃん。
「どうせTさんがぶっ倒れたのは自分のせいだとでも思ってるんだろ?」
「! なんで分かるんです?」
いや、見りゃわかるって。
「あのな? Tさんは事前の連絡で何やらされるか大体分かってて来てたし、というかむしろ将門さんと戦いたがってたくらいだぞ?」
実際は知らん。仮に戦いたくなかったとしてもこの場合は嘘も方便だ。
「ほら、アレだ。夕陽をバックに野郎二人が殴り合うあれ、あんな感じ」
はぁ、と曖昧に頷く夢子ちゃん。
「そう、まさにそんな感じだ」
Tさんも乗っかってきた。
「だから気にしなくていいんだよ。野郎二人のバカの責任を夢子ちゃんが感じることなんてねぇ」
なー、頭の上のリカちゃんに言ってやる。ねーと返事がきて、
「まあそう言うことだ」
Tさんが言う。それに、
「王ならもっと胸を張っていればいい」
と言って味噌汁を啜る。
こいつ、誰のせいで夢子ちゃんがダウン入ってたのか棚に上げやがったな。
「はい、すみませ……いえ」
夢子ちゃんは健気にも笑って、
「ありがとうございます」
言った。
それはそれは、素晴らしい笑みだった。
しかぁし、
「おまえらちょっと落ち着け」
いつの間にか湧いて出た≪夢の国≫の住人が夢子ちゃんを中心に盛り上がっている。邪魔だ。
「ほら、みんな戻って」
パンパンと手をたたきながらの夢子ちゃんの一声で住人達は消えていく。
あれとの関係は良好なようだ。けっこうけっこう。
「王様するなら苦しゅうないとかそんな口調でもいいぜ!」
老婆心ながら言ってやる。
「やめておくように」
即Tさんに却下された……。
「そういやこれからどうすんの?」
魚の骨を処理しつつ訊く。
「学校行け、契約者」
「えー」
口から文句がついて出る。
「だって夢子ちゃん宴会終わったら旅に出ちゃうんだろ~?」
そう言って顔を夢子ちゃんに向ける。
「あ、はい」
茶碗を置いて答えてくれた。
「たびにでるの?」
おう、とリカちゃんに答える。なんでも、
『≪夢の国≫は世界中に夢を与えなくちゃいけないから』
らしい。
リカちゃんはうー、と数秒頭上で唸り、
「さみしくなるの」
悲しそうに言う。
「だよな~」
そう言って今度はTさんに目を向ける。
「だが学校には、」
「Tさ~ん、親友との別れを惜しむ時間くらいじっくりくれてもいいんじゃね?」
言うと無言が返ってきた。やがて溜め息を一つ吐き、
「……、分かった」
折れた。
っし!
ガッツポーズを(心の中で)取る。
チョロいぜ!
「ただし、」
Tさんは箸の先端を俺に向け、
「ここにいる間は俺がみっちり勉強を教えるからな」
とのたまった。
「げ」
「またテストで赤点とか取りたくないだろう?」
…………………力なく頷くしかなかった。
●
飯も食い終わって、食器の片づけに人が来た。
「あれ? さっきのキャリアウーマンの姉ちゃんは?」
来たのは黒い長髪の≪フィラデルフィア計画≫の姉ちゃんだ。
「あの人は何か急用ができたとか言っていたわ」
はぁ、≪首塚≫さんも忙しいんだな。
≪フィラデルフィア計画≫の姉ちゃんは食器をコンテナに片づけていく。俺は(なぜか)Tさんが持っていた問題集とにらめっこしている。他の二人もTさん作の問題集『常識』を解いている。
なんなんだ? この夏休みのおばあちゃん家的雰囲気は。
そんなことを思いつつ数式とにらめっこしていると、
「ああ、≪フィラデルフィア計画≫の契約者の方、」
Tさんが姉ちゃんを呼ぶ。……言いづらそうだなぁ、
「長ぇからフィラちゃんでよくね?」
言ってみると、
「おお」
Tさんはポン、と手を打ち、
「ではフィラちゃん」
「その呼び名はできればやめてもらいたいんだけど……」
弱弱しくフィラちゃんが言う。
「なんで?」
「響きが……卑猥っぽい」
最後の方がぼそぼそしていて聞こえなかった。
「? なにか他に案はあるのか?」
Tさんが訊くと、
「ない……けど」
ないらしい。
「じゃあフィラちゃんで」
「う」
もう、いい。と言って片づけを続行しだした。
「で、将門公にお会いしたいんだが」
「何か用でもあるの?」
Tさんはん、と頷き、
「宴への参加の意の表明と、それまでの間のここへの厄介のことと、あと参加にあたっての条件をな」
「条件?」
「俺たちが≪夢の国≫を討ったモノだということの隠匿。それに夢子ちゃんの正体の隠匿」
両方ともあまり知られてもよくないだろう。とTさん。
「あの、私も宴に出るんですか?」
「参加しようぜ、タダで食って飲めるんだから」
「ですが」
まあ、≪夢の国≫への戦勝祝いに出るのは気が引けるだろう。
「名目なんて気にするな。とりあえず飲んで食えると思えばいい。表で堂々と、と言うわけにはいかないだろうから裏でこっそりと楽しむことになるだろう」
それに、俺たちにとってはそれが夢子ちゃんの壮行会にもなる。
そう言ってTさんは立ち上がる。
「じゃあ案内を頼む、フィラちゃん」
「……ええ、もう、いいわ」
そう言って歩いて行くフィラちゃん。
「じゃあ俺たちも」
立ちあがろうとすると、
「お前たちは勉強しておけ」
言われた。
くそう、小うるさい奴め。
こうして宴会までの数日は≪首塚≫に厄介になることに相成った。
「あれ? さっきのキャリアウーマンの姉ちゃんは?」
来たのは黒い長髪の≪フィラデルフィア計画≫の姉ちゃんだ。
「あの人は何か急用ができたとか言っていたわ」
はぁ、≪首塚≫さんも忙しいんだな。
≪フィラデルフィア計画≫の姉ちゃんは食器をコンテナに片づけていく。俺は(なぜか)Tさんが持っていた問題集とにらめっこしている。他の二人もTさん作の問題集『常識』を解いている。
なんなんだ? この夏休みのおばあちゃん家的雰囲気は。
そんなことを思いつつ数式とにらめっこしていると、
「ああ、≪フィラデルフィア計画≫の契約者の方、」
Tさんが姉ちゃんを呼ぶ。……言いづらそうだなぁ、
「長ぇからフィラちゃんでよくね?」
言ってみると、
「おお」
Tさんはポン、と手を打ち、
「ではフィラちゃん」
「その呼び名はできればやめてもらいたいんだけど……」
弱弱しくフィラちゃんが言う。
「なんで?」
「響きが……卑猥っぽい」
最後の方がぼそぼそしていて聞こえなかった。
「? なにか他に案はあるのか?」
Tさんが訊くと、
「ない……けど」
ないらしい。
「じゃあフィラちゃんで」
「う」
もう、いい。と言って片づけを続行しだした。
「で、将門公にお会いしたいんだが」
「何か用でもあるの?」
Tさんはん、と頷き、
「宴への参加の意の表明と、それまでの間のここへの厄介のことと、あと参加にあたっての条件をな」
「条件?」
「俺たちが≪夢の国≫を討ったモノだということの隠匿。それに夢子ちゃんの正体の隠匿」
両方ともあまり知られてもよくないだろう。とTさん。
「あの、私も宴に出るんですか?」
「参加しようぜ、タダで食って飲めるんだから」
「ですが」
まあ、≪夢の国≫への戦勝祝いに出るのは気が引けるだろう。
「名目なんて気にするな。とりあえず飲んで食えると思えばいい。表で堂々と、と言うわけにはいかないだろうから裏でこっそりと楽しむことになるだろう」
それに、俺たちにとってはそれが夢子ちゃんの壮行会にもなる。
そう言ってTさんは立ち上がる。
「じゃあ案内を頼む、フィラちゃん」
「……ええ、もう、いいわ」
そう言って歩いて行くフィラちゃん。
「じゃあ俺たちも」
立ちあがろうとすると、
「お前たちは勉強しておけ」
言われた。
くそう、小うるさい奴め。
こうして宴会までの数日は≪首塚≫に厄介になることに相成った。