「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 神隠しのご先祖様-01

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―出会い―


―97年前・学校町―

 勝手口から、母が大きな声で言う

「神社には行っちゃ駄目よー!」
「分かってるって!行ってきまーす!」
「夕飯までには帰るのよー!」
「分かってるって!」

 走り出しながら、少年も大きな声で返す。

 夏のある日。まだ太陽は西の高い位置に上っている。少年は走る。まだ10才と言ったところか。
 目的は友達と禁止されている神社に行くこと。
 神社では今年になって子供が行方不明になる事件が立て続けに2件起きており、近づくことも禁じられている。
 当然、好奇心旺盛な子供達の興味を引かないわけはない。
 噂は噂を呼び、今となっては神社に行き生還すれば英雄のような賞賛を受ける。

 少年は友達2人と待ち合わせ、3人で山の麓の神社へと向かう。
 立入禁止と書かれ、幾重にも張られた縄を潜り、蝉の大合唱を聞きながら、少年達は神社へと向かう。

「何だよ。何も無いじゃん」
「秘密の基地があるんじゃなかったのかよ」
「宝が眠ってるんじゃないの?」

 木々に周りを囲まれた小さな神社。今となっては人の気配は無い。
 神社は何度も大人達が調べた。何度も何度も。しかし、消えた子供達の形跡はおろか、不審者の一人も浮かび上がらなかった。
 山へ捜索隊も出した。手がかりらしい手がかりは無かった。老人達は、山の神様が怒っている。と嘆くばかり。
 時刻は夕暮れ。夕立があったせいで、西の空には虹が掛かっている。
 少年達は神社を一通り物色し、最後に神社を一周し帰る事にした。

「なぁ。神社にはでっかい怪物がいたことにしようぜ!」
「えー。すぐバレるよそんなの。俺達以外にもけっこう来てるし」
「じゃあ、でっかい幽霊!」
「幽霊でっかくする意味あるの?」
「なんだよー。じゃあ、でっかい何ならいいんだよ」
「何でもでっかくすりゃいいってもんじゃないだろ。なあ、宗太?」

 返事は無い。振り返る。一番後ろに居たはずの影は無い。あれほどうるさかった蝉の声が遠のく。

 まさか。

「…宗太?…。宗太ー!」

 急いで神社を逆周りに走る。元居た場所まで帰ってきてしまった。

「3人目だ…。」

 一陣の風が通り抜ける。木々がまるで嘲笑うかのように、ざわめいた。


 ――その日、少年は忽然と姿を消した。

*



「あっちいなぁ・・・」

 季節は夏。直射日光は最早、凶器に近く、じりじりとアスファルトを焼いている。
 西区にある工業高校の制服をだらしなく着た少年は、忌々しいという顔で空を仰ぐと紫煙を吐き出した。
 南西の空には入道雲が立ち上がっている。

「…。一雨来るかね…。」

 そう言いながら二本目に火をつけ、のろのろと歩き出した。
 髪の色は黒。伸ばした髪で隠れているが左耳にはピアスがいくつか。身長は少し低い。165cmといったところか。
 彼がいるのは北区。何故、西区の学校からここまで来たかは自分でも分からない。
 友達とも都合がつかず、暇なので歩いていたらこんな所まで来てしまった。このまま歩けば山の麓だ。

 何故、歩いているのか。考えようとするも茹だる様な暑さが思考を奪う。もうすぐ山の麓に着いてしまう。

 その時、ポツポツ、と地面が濡れる。いつの間にか、太陽は分厚い雲に隠れていた。

「マジかよ…。」

 言うやいなや強烈な夕立に襲われた。


「はぁ…!はぁ…!」

 ずぶ濡れで麓の神社に辿り着いた不良少年。

「クソッ…!」

 悪態をつきながら境内を駆け抜け、本殿に転がり込む。シャツが肌に張り付いて気持ち悪い。
 肩で息をして、本殿の縁側に腰掛ける。ここなら雨宿りが出来るだろう。山の近くのせいか蝉がうるさいが仕方ない。
 祭りは近いが、今のところ境内に人の気配は無い。時刻は午後3時48分。まぁ、夕立なら30分もすれば上がるだろう。
 夜までには帰れそうだ。すると少年は濡れた髪を握って絞り、鞄の中身の無事を確認し始めた。

 幸いにも、被害は大したものではなかった。教科書やノートといった勉強道具は元より学校に置きっ放しなので問題無い。

「ふぅ…。」

 鞄に忍ばせていた煙草を取り出す。少し湿っていたが吸えないことはない。一本咥えると、何かの視線を感じた。
 そのままの姿勢で目だけを動かし辺りを見回すが、相変わらず人の気配は無い。

「…。(…気のせい…)、か…?」

「ねぇ」
「うおぅうあ!!」

 突如、背後からの呼びかけに言葉にならない言葉で返す。驚いて咥えていた煙草は足元の水溜りに落ちてしまった。
 反射的に振り返ると、そこには小学生くらいの少年がいた。

「何してんの?」

 少年が問う。

「…はぁ? …あ、雨宿りだよ」
「ふーん」

 興味なさ気にそう返すと、突然現れた少年は同じ様に縁側に腰掛けた。
 無言の時間が流れる。

「(…え?…なにこれ。) …。お前。名前は?」

 沈黙に耐え切れず切り出す。少年は聞こえない振りでもしているのか足をブラブラとさせている。

「おい。お前なま…」
「宗太。」
「…。…宗太か。こんな所で何してんだよ」
「…友達と遊んでたらはぐれちゃったんだ」
「そっか…。友達ももう帰ったんじゃねぇの?この雨だし」
「…。」

「(なんか不味いこと言ったかな…?) お前、家は?ここの神社?」
「んーん。この近く」
「ってことは、北区か。(…この辺に家なんてあったっけ?)」

 会話が続かない。
 煙草を一本取り出し咥える。火をつけ煙を吐き出すと少し落ち着いた。
 それにしても、この少年どこから現れたというのか。この縁側に来た時点では誰もいなかったはず。
 坊主頭に白のランニングという格好がなんというか古臭い。最近の小学生ならTシャツくらい着るだろう。

「・・・お前。名字は? なに宗太っていうんだ?」
「近藤。近藤宗太。」
「マジで?。俺も近藤っていうんだよ。近藤京介。」
「そうなの?一緒だね」
「あぁ。一緒だな。」
「まじでってなに?」
「そんなことも知らねーのか。本当かって意味だよ」
「変な言葉だね」
「そうか?けっこう使うぜ?」
「へぇ。大人は色んな言葉を使うんだね」

 ハハハと笑うと、少年もへへへと笑った。
 少し、打ち解けたと思う。雨は上がり始めていた。

「雨、上がったな」
「そうだね」
「…。(近藤…、宗太…。うーん…。)」
「…。」
「お、虹だ」

 ふと見上げれば茜色の西の空には虹が掛かっている。
 暫らく、二人して虹をボーっと見ていた。

 ………。

「?。…。なんで西に虹が見えるんだ…?」

 それは、気づいてはイケナイこと。

「一緒だ…。」
「あ?何がだよ」
「…。」

 太陽を背に虹が見えている。有り得ない。見えるわけがない。
 少年は黙ってしまった。痺れを切らして京介が再度、問う。

「なぁ、どういう…うっ、く!」

 空気が凍りつく。息が吸えない。呼吸が出来ない。動けない。

「気づいたか…。京介。お前は俺に似て勘が良いな。これも遺伝か?」
「………。」

 宗太の手がゆっくりと京介に伸びる。

 刹那


 PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi!!!

 バイブレーションと共に、京介のズボンのポケットの携帯電話が鳴り響く。
 音の無かった境内に衝撃が走り、京介は硝子が砕けるような感覚を覚えると同時に弾けるように宗太から飛びのいた。

 PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi!!!  PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi!!!

 携帯電話は一定のリズムで着信音を鳴らす。
 京介と宗太は、3m程の距離でお互い目を合わせたまま動かない。

 PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi!!!  PiPiPiPi!!!  Pi。

 携帯電話の着信音が途切れると同時に京介は呼吸をし始めた。


「運も良いな」
「はぁ…!はぁ…!…お、お前。だれ…、誰、だよ…。」
「既に名乗ったぞ…?近藤宗太、とな」
「はぁ?意味分かんねーし!」

 京介は威嚇しようと声を荒げてみるが、目の前の少年は、臆する事も無くニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
 膝が震える。虚勢は張っているが、口調も纏う雰囲気も別人に変わった宗太に完全に気圧されている。

「ぉ、ぉぃ…。…おい!」
「なんだ。いちいち叫ぶな。うるさい」
「お前…。誰…?だよ…?」

 最後は蚊の鳴くような声になってしまった。頭が全く働かない。

「はぁ…。情けない。」

 宗太は嘆息すると、品定めするように京介を爪先から頭までじろじろと見た。

「な、…なんだよ!」
「宗一郎は…、もう死んだか。えー…と、聡介は元気か?」
「…は?」
「聡介は元気か?と聞いたんだ。聡介で合ってるよな?お前の父親の名は」
「…あぁ。元気…、だよ。」
「そうか」
「…。」
「……。」

 宗太は、京介の鞄から煙草を取り出すと慣れた手つきで咥えると火をつけた。

「…全く、ガキがこんなもん持ってるんじゃない」
「俺の…!お前に言われたくねーよ!」
「ふん」
「…。…なんで、親父の名前を知ってるんだ?じいちゃんの名前も…」
「まだ分からんのか?俺の聡明さ、までは受け継がなかったようだな」
「どういう…」
「俺の子供が宗一郎。その子供が聡介。その子供が京介、お前だよ」

 再度、空間が凍りついた。京介のみ。

「…はぁ?」
「馬鹿め」

 宗太が呆れた顔で吐き捨てる。

「いや、だっておかしいだろ。お前が俺の、えーと、曾じいちゃんだとしてだ。じゃあ、じいちゃんは誰から生まれたんだよ」
「…。…相変わらず、勘だけはいいな」
「そりゃ、どうも」
「お前みたいな奴は長生き出来ない」
「マジで…。」
「ふん。…いいだろう。三代目にしてようやくの契約者だ。教えてやる。俺の過去を。あの夏の日に何があったかを」

*



97年前・学校町

「…嘘でしょ?ねぇ!嘘って言ってよ!」
「事実だ…!明日にも捜索隊を出して、ここら一帯を探す」
「…宗太…。…宗太。…宗、太。。。」

 この世の終わりという顔で、泣き崩れうわ言のように自分の子供の名前を繰り返す母。
 この町で3人目の子供が消えた。
 これは最早、神様の怒りという不可思議な現象で片付ける訳にはいかない。
 何らかの事件と考えるほうが妥当だ。

 「学校町連続少年誘拐事件」

 警察はようやく重い腰を上げ、このような題目を立て本格的な捜査に乗り出した。
 宗太の母には伝えていないが、誘拐殺人・死体遺棄も視野に入れての捜索だそうだ。
 明日には、今までの2倍の200人規模での捜索にあたるとの事。
 町の人間も加え、300人体制という大規模な捜索になる。
 警察は、さらに他の町にも応援を呼びかけるらしい。

「…嫌な夜だ。祭りも近いってのに…」

――寝苦しい夜が過ぎていく。

*


  • 宗太以外の1週間

 ・捜索1日目
 宗太の捜索は日が昇ると同時に始められた。
 今日は、町を重点的に捜索する。
 町には今まで見たことも無い程の警察官で溢れている。一軒一軒聞き込みを行っている。

 ・捜索2日目
 昨日は手がかりらしい手がかりも無かった。
 今日は、町と同時に山へ捜索範囲を広げる。
 鬱蒼とした山へ男達が入っていく。捜索は日暮れまで続けられた。

 ・捜索3日目
 特に宗太の手がかりは掴めなかった。
 今日も、山への捜索が続けられる。山の裏側を含め全体を捜索する。
 靴の片方でも落ちていないか、くまなく調べる。

 ・捜索4日目
 山全体の捜索にも関らず、昨日も手がかりは無かった。
 今日から周辺の町や村でも捜索が開始される。全体では500人を越える大捜索隊となった。
 宗太の母が体調を崩して、病院へ担ぎ込まれた。心的な疲労だろう。

  • 捜索5日目
 警察は池や沼なども捜索の範囲に加えた。
 もう、生きている可能性は低いと判断したのか。
 この大捜索劇は県外にまで飛び火して、宗太捜索の旨は数多くの町や村にも知れ渡っている。

 ・捜索6日目
 手がかりが一切、掴めない。一帯何処へ行ってしまったのか。
 認めたくは無いが「神隠し」とでも言わざるを得ない。最悪の事態が頭を過ぎり始めた頃、一筋の光が差す。
 それは、この日も何も掴めないまま捜索が終わろうとしていた頃。一通の知らせが舞い込んだ。
 ここから120里以上離れた海沿いの町で、宗太に良く似た身元不明の少年が発見されたとの知らせだった。

 ・捜索7日目
 早速、宗太の父が宗太らしき少年が保護された町へと向かう。
 その日の夜。事実上、近藤宗太は発見された。皆は一様に胸を撫で下ろしたが不可解な点は多い。
 この1週間何をしていたのか。どうやって120里以上離れた町へ行ったのか。
 宗太の捜索は終了したが、以前に消えたままの2人の捜索は続けられるとのこと。

*



 それから1週間後。
 宗太は警察で事象聴取を受けていた。

「宗太君。あの日神社で遊んでいた時から、あの町まで、どうしていたのか、…教えてくれるかな?」

 宗太の供述をまとめると、こうだ。

 あの日、神社で遊んでいると、ふと茂みの向こうから呼ばれた様な気がした。
 身体は逆らう事が出来ず、ふらふらと呼びかけに応じ森の中へと入っていった。
 どれくらい歩いたかは分からないが、ある所までいくと真っ黒な人がいた。
 その人に頭を撫でられると、手を繋ぎ歩き出した。ふと振り返ると後ろには自分と黒い人が居た。
 すると抱きかかえられ、その人は走り出した。
 そして、気がつくとあの町にいた。


 警察も両親も要領を得なかったが、嘘をついている様にも見えなかったので
 警察はその真っ黒な人の特徴を詳しく聞き(大きいということしか分からなかったが)、宗太は解放された。

 実は、宗太は一つだけ嘘をついていた。
 その真っ黒な人がなんなのか知っていたが話さなかった。口止めをされていた訳ではない。
 宗太自身の判断で話さなかった。話さないほうがいいと思ったのだ。
 宗太は知っていた。宗太は話さなかった。
 以前に消えた2人は、もうこちらへは戻って来られない所へ行ってしまった事を。

*



  • 宗太の一週間

 森の中を歩いている。草を踏む音だけが聞こえる。
 どこへ向かっているかは分からない。分からないけど、どこへ向かうかは分かっている。

 どれほど歩いただろうか。昼と夜はすごい速さで何回か過ぎた。歩き続けているのに全く疲れない。

 ふと、木々が開けている場所に出た。お地蔵様が円を描くように囲んでいる。不思議と全員外を向いていた。
 その中心に影をそのまま実体化した様な全身真っ黒の人がいる。
 この人に会いに来たんだ。宗太はそう直感した。その人に近づいていく。怖いとは思わなかった。
 目の前まで来ると、その人は宗太の頭の上に手を置いた。優しく被せる様に。
 その瞬間、宗太は目の前のモノがなんなのかを理解した。驚いた様にビクッと震え、飛びのく影。

 もう宗太には、ハッキリと見えていた。目の前の天狗の姿が。

 目の前の天狗は、山伏の格好に真っ赤な天狗の面という、いかにもな格好をしていた。
 大きい。身長は7尺程。まだ5尺にも満たない宗太など踏み潰してしまそうである。
 天狗は一切言葉を発しなかったが、「しまった」という雰囲気であった。
 仕方がない、という感じで宗太の手を取り外へと歩き出す。
 囲んでいるお地蔵様を通り過ぎる際に、ふと振り返った。

 そこには、自分と二人の宗太くらいの子供がいた。その後ろに数十体もの黒い影があった。

向こう側の宗太はとても寂しそうな悲しそうな顔をしていた。
 宗太はもう二度と会えないと思った。「さよなら」と言おうと思ったが天狗に手を引かれて言えなかった。
 お地蔵様を通り抜けて、もう一度振り返ると、もう、そこには何も無くただ鬱蒼とした森だけが広がっていた。

 何故か、涙が溢れて止まらなかった。

 背後を確認すると天狗は宗太を抱え、走り始めた。走るというよりは飛んでいるようだった。
 木は自ら天狗と宗太を避けるようにしなり、道を作った。
 とても速く、周りの景色は流れるように過ぎていった。
 宗太はいつの間にか眠ってしまったようで、気がつくと大きな切り株の上にいた。
 どれほど歩いたかは分からないが、森を抜けて少し歩くと潮の匂いがした。

 その後、宗太はふらふらと彷徨っている所を近隣住民に保護される。

*



「と、言うわけだ」
「……。」

 もう一本煙草を取り出し、吸い始める宗太。京介は必死に理解しようとしているのか呆けた顔のまま固まっている。
 空は、すっかり日も暮れて、東側から除々に黒に塗りつぶされてきている。

「えー…と」

 ようやく、口を開く京介。

「つまり、…だ。あー…、曾じいちゃんは…、二人になったってことか…?」
「まぁ、端的に言えば、な。俺はあの時、結果として天狗に魂を二つに割られた。俺の勘の良さが災いしてな」
「…魂を?」
「あぁ。あの時、儀式が最後まで行われていたら、俺は完全に人ではなくなっていたが、途中で止まったんでな」
「半分は残ったってわけか」
「そうだ。半分の俺は向こう側へ。もう半分の俺はこちら側へ帰ってきた」
「なるほど…。戻ってきた曾じいちゃんが、俺のじいちゃんの親父になったわけか」
「そういうことだ。戻ってきた俺は魂を割られたせいで、長生きは出来なかったがな」
「あ、やっぱそうなんだ」
「当然だ。」
「あっちに行った曾じいちゃんは何してたんだ?っていうかなんで生きてんの?」
「俺はその後、天狗と共にいた。もう人ではないからな、寿命などという概念も無い。それでも、いつかは死ぬさ」
「そういうもんなのか。…へぇ、天狗、ねぇ…」
「ふん…。まだ、信じきれない、といった顔だな」
「いや、だってさ、いきなり天狗とか言われても」
「ならばその目で見てみるか?天狗の力を?」
「…え゛。いや…」

 京介が返事を返す前に、宗太は目の前から消えてしまった。煙のように。

「あ!おい!…。どこ行ったんだよ…」
「京介!」
「うおおい!…お、親父!?」
「なーにやってんだ。こんな所で」
「いや、なにって言うか…、なんていうか」
「ふむ。まだ分からんのか?」
「はぁ?どういう…。…まさかお前は」
「そうだ」

 そう言うと、聡介は霞のように消え、そこに宗太が現れた。

「…。」
「天狗は幻術を使う。勿論、これだけではないがな」
「…。」
「分かったか?愚かな玄孫よ」
「あぁ…」
「さて、日も暮れた。本題に入ろうか」
「え?うおぅ、マジだ。…本題?」
「そうだ。俺とて意味も無くお前の前に出てくるほど暇ではない」

 いつの間にか、空は完全に黒に潰され、星も出ていた。

「今、この町は良くない」
「良くない?どういう意味だ?」
「…。理由は分からんが、多くのモノが出てきている」
「多くのモノって…、おい、マジかよ」
「察しがいいな。その通りだ。お前には、俺と共に動いてもらう」
「はぁ?いやいや、無理だろ。俺は曾じいちゃんみたいに変な術とか使えないし」
「お前は俺とその他を繋ぐ役目だ。普段通りで構わん」
「繋ぐ、役目…?」
「あぁ。俺はお前と契約する事で、山とこの神社の外に出て動ける」
「契約って…、まさか」
「あぁ。最初に済ませてしまおうとも思ったがな。とんだ邪魔が入ってしまった。あの瞬間ならお前の意識ごと乗っ取れたのに」
「危ねー!マジ電話GJ!」
「今となっては、もう騙す事が出来ん。お前の協力が必要だ(…じいじぇい?)」
「…。…俺の意識は?」
「残る。その方がお前もいいだろう(じいじぇいって何だ?)」
「当たり前だ!…。え。マジで…。」
「…。(「じい」と「じぇい」。…爺とじぇい?。…爺がじぇい?。…じぇい?)」
「……。…あー!もう!しゃねーな!」
「ふ。…よし。頭を出せ(まぁ、いいか…)」
「こうか?」
「あぁ。…。」

 宗太は京介の頭の上に手を置いた。

「………。」
「なに…、してるんだ?」
「ちょっと黙ってろ。加減が難しいんだ。お前の精神を壊さないように俺の魂を注ぐのは」
「たま!…、…。」
「………。よし。いいぞ」
「なにしたんだよ…」
「契約だ。俺がいいと言うまで、お前は俺の操り人形だ」
「はぁ!?聞いてねーし!なんだよ!契約破棄だ!」
「無駄だな。最初からお前に拒否権など無い」
「お前…」
「そう嘆くな。別に俺がお前の身体を操れるわけではない」
「そうなのか」
「あぁ。(元が5割だとして、そこから1割。残り4割でどこまでいけるか…)」

 宗太が思案している間、京介は身体が自由に動くか確かめている。

「なぁ。これからどうするんだ?」
「今日は、もう遅い。お前の家に帰ろう」
「そうか…。(親父になんて言おう。親戚の子供?いやいや、その辺で拾った…。無理があるな…)」
「案ずるな。姿を消す事など天狗には朝飯前だ」
「そうなのか。…。…今!」
「勿論、心を読む事もな」

 そう言って、意地悪に笑う宗太。
 何はともあれ、宗太と京介の契約がここに完了した。



神隠しのご先祖様』―出会い―



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