「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 人面犬と不良JK-02

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人面犬と不良JK 02


それは、子供達にとって最も身近な、そして最も信憑性のある恐怖。

『ある棟のある階段は、数えるたびに段数が変わる』
『廊下の壁に掛けられた鏡は、異世界へと通じている』

語られる話のバリエーションこそ多種多様であるが、
かつてはどこにでも存在した、所謂学校の怪談。
まことしやかに語られるこれらの奇怪な噂は、
その舞台がごく身近な学校という場所であるが故に、
当時の子供達にとって至極シリアスな話題であった。

時は流れ現代。
そういった怪奇や不思議は、
情報と科学の手により淘汰され、
ナンセンスなものとして表舞台から抹消された。
しかし今でも、"都市伝説"は日の当たらない場所で語り継がれている。

「死のエリーゼ?」

平日の真昼間から公園のベンチにどっかと腰を下ろし、
チュッパチャプスを咥えながら怪訝そうな声をあげるのは、
長く明るい茶髪をこれでもかと巻いて盛ったギャル系女子高生だった。

「ああ、そうだ。学校の怪談のな。ゆとり世代のおめーは知らねぇのか?」

女子高生を小馬鹿にするようにくつくつと嗤うのは、
野太い中年男性の声。
しかし、公園のどこを見渡しても、
そこにいるのはベンチに座る女子高生のみ。

「ほんと、あんたはいちいちつっかるね……
それで、そのエリーゼがどうしたっての?」

姿無き声に対し、女子高生が応える。
するとベンチの背後の茂みから、一匹の雑種の犬が飛び出した。

「ここまで言ったらわかんだろが低脳。"都市伝説"の契約の履行だ」

ぶっ倒せって言ってんだよ、さぼり野郎。

そう女子高生に言い放つその犬は、人間の顔をしていた。

「ここか……」

深夜の小学校。
人面犬の鼻と機転によって、
最近無駄に厳重になっているセキュリティをすり抜けた女子高生は、
"音楽室"と書かれた扉の前でそう呟く。

「おいおい、
ここまで辿り着けたのは俺のおかげだってえのに、
礼のひとつもナシかよ」

「敵の場所まで私を導くのも、契約のうちだと思ってますけど?」

「てめーこら、
さっき見回りの警備員に危うく見つかりそうになったときもこの俺が……」

足元で喚く人面犬を軽くスルーしながら、

「開けるからね」

少し汗ばむ右手にしっかりと竹刀を握り締め、
女子高生は、音楽室の引き戸を開けた。

広々とした教室。
奥には、合唱隊が歌うための壇が積み重ねられている。
ごくありふれた、音楽室の風景だ。
壁には、著名な音楽家たちの肖像画が並ぶ。
バッハ、モーツァルト、ヴィヴァルディ。
そして、

「まったく、自分の作品がこうも歪んで後世に伝えられちゃ、
こいつも浮かばれねえぜ」

ベートーヴェン。

「ま、人々からの理解を得られないのは、
天才たちの宿命ってやつさ。不憫だがな」

そのセリフとは裏腹に、
同情などまったく篭っていないような声とニヤニヤ嗤いで人面犬が言った。

「そろそろ0時だね……来る」

女子高生が、月明かり射す窓際に佇むグランドピアノに向き直った。

ポロン。
そこには演奏者はいない。
しかし鍵盤たちはひとりでに踊り出し、
音を生み出し、やがてひとつの名曲を紡ぎ出す。

エリーゼのために。

しかし、これはかたちを持って歪曲化された、恐怖の都市伝説。

「曲を全部聴き終えると、死ぬ……」

女子高生が、不気味に鳴り続けるピアノを見つめ、
歯を食いしばる。

「おおそうだ。精々気張れや」

人面犬が楽しそうに、くつくつと嗤った。

「たぁっ!」

制服のミニスカートをはためかせ、女子高生が跳ぶ。
たんっ、たんっと壇上へと駆け上がり、
そして思い切り落下速度を乗せて、竹刀を振り下ろした。
ばきっ!

「はっ!」

着地共に跳び退り、今度は
返す刀で突き、斬り付ける。
怪異との戦いの宿命を背負うという"契約"を結んでからというもの、
幾多の都市伝説を沈めてきた、彼女の必殺の剣だ。
しかし、尚も死の旋律は止まらない。

「わっはっは!全然効いちゃねぇな!
まぁ、おめーが契約によって、
多少は都市伝説に対抗する能力に目覚めたとは言え、
さすがに竹刀がピアノに太刀打ちできるわきゃねーわな、
常識的に考えて」

「くっ……」

曲はもう既にクライマックスに向かっている。
このままだと……

「おめー、曲に呪い殺されて御陀仏だぜ?」

人面犬がこんな楽しいことはないとばかりに、
ニヤニヤ笑っている。

くそ……
どうしろっていうの?

今のこのピアノは、ただのピアノではなく、都市伝説だ。
きっと窓から落とそうが燃やそうが、
演奏を止めることは決して無いのだろう。
何か、何か対抗策は……

「おい、無理すんじゃねえよ不良JK。
だから俺様がいるんだろ?
"都市伝説"の契約の履行、その2だ」

「あ、あんたみたいな変態犬に頼るなんて……」

「このまま死ぬのとどっちがいい?」

俺はどっちでもいいけどな!

そう言って嗤う人面犬。
バックには、もう終局に入った「エリーゼのために」が流れている。
――こいつ、いつか絶対ぎゃふんと言わせてやる!

「もう!わかった!契約の履行を!」

プライドを捨てて、女子高生は叫ぶ。
そうだ。まだだ。まだ死ねないから。
ここで死んだら、もう戦えない。
――二度と、あのワクワクとした緊張感を味わうことが出来ない。

都市伝説との契約。
"都市伝説は、都市伝説と戦う契約者に、
持てる力と知恵を惜しみなく与える"
人面犬が待ってましたとばかり、ニヤァと嗤った。

「……OK。じゃあまずはヒントだ。
どんな歌にも、どんな曲にも、
すべて一定したリズムってやつがある。
わかるか?」

「言ってることはわかるけどソレが何っ?!」

「じゃあわかるだろうが……"つられる"感覚がよ。
そして第二のヒントには、
どんな演奏者だろうと、どんな曲だろうと、
リズムには逆らえない。わかるな?」

まただ……
コイツはこういう大事なときに、
さらに私を悩ませるようなヒントを出す。
つられる?リズム?一体何を――

そのときだった。
彼女の脳裏に、閃きの電球が点ったのは。
死の旋律はもう最後の場面を展開している。

急がなきゃ!

女子高生は、音楽室の教卓の上にあるそれを手に取った。

「大正解だぜ、ゆとり。
それが、この都市伝説への最高の打撃だ」

かっち、かっち、かっち、ちーん。

彼女の腕の中で、
メトロノームが鳴り響く。
それも、
「エリーゼのために」とはずれたリズムで。

すると、音楽室内に響く旋律に異変が走った。
曲のテンポが、メトロノームと、本来のリズムの間で揺らいでいる!
BPMはがたがたになり、音符も休符も破綻した死の譜面に、
決定的な亀裂が入っていくのがわかった。
そしてついに、グランドピアノをとりまく気配が変わる。
「死のエリーゼ」の都市伝説は、
今、ピアノから完全に切り離され、消滅した。

「まったく、変な意地張ったばっかりに大ピンチだったな。
俺はお前がいないと、ただの戦闘ジャンキーでしかねえって、
少しは理解出来たか?」

人面犬が呆れたような声で、ニヤニヤ嗤いを湛えながら勝ち誇る。
でも今回ばかりは、彼女はこのパートナーに対して、
何も口答え出来ないのだった。

「……そうね。
都市伝説を甘く見てたかも。
こんなことアンタに言うのは不本意だけど……
助けてくれて……」

「おおっと、それ以上はいらねえよ。
おめーの面倒見るのも『契約のうち』だからなぁ?」

人面犬がくつくつと嗤う。
確かに、こいつの機転と知恵には、
今まで何度も助けられてきたんだ。
こいつ、ムカつく奴だけどやっぱり……

「それ以上はいらねぇから、パンツ寄越しな」

「やっぱり死ね!」

「うごぉぅ!」

fin


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