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連載 - 人面犬と不良JK-04

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人面犬と不良JK 04


早朝。
俺は歩みを少し止め、
この清々しい、"西区"の朝の空気を吸い込んだ。
そして再びこの足で、通い慣れた道を行く。

時間帯が幸いしてか、人通りはない。
俺は朝のジョギングに励むじじいやばばあを、
路地の影で数人やり過ごすだけでよかった。

間もなく、俺の贔屓にしている喫茶店が見えてくる。
開店まではまだ時間があるというのに、
あのマスターはもう、
今日のおすすめを店の入り口のボードに貼り出していた。

まああいつは、この仕事をしながらあの仕事を……
ってのができねえやつだからな。
結果的に開店までの準備に要する時間が掛かってしまう。
不器用な野郎だ。
俺に言わせりゃあ、
あいつがグラスを磨きながら客と喋ることができるのが不思議なくらいだが……
などと下らないジョークを思いつき、
ひとりでくつくつと嗤う。
さて今日のおすすめは……なに?
「アイスハニーミルク」?

「やあ、いらっしゃい。久しぶりだね」

いつもの、あの落ち着き払った深みのある声に迎えられる。
俺は店の裏手、勝手口の前に座り込んだ。
もう何も言わなくても、
俺が来るだけでマスターは「今日のおすすめ」を出してくれる。
すぐに、浅い陶器の皿に注がれたアイスハニーミルクが出てきた。

「ああ、ここ最近、他の"都市伝説"共と連戦だったからな。
まったく、あのじゃじゃ馬の手綱も楽じゃねえぜ」

ま、どの戦いも、俺の知識と機転とハナで上手に切り抜けてやったがな。
そう得意げにハナを鳴らし、
俺はアイスハニーミルクとやらをぴちゃぴちゃと飲む。
げ、くそ甘ぇ。

「今度、その"竹刀を持った女子高生"とやらも店に連れて来ておくれよ」

「馬鹿。こんないい店、あんなゆとりに教えてやるか。
珈琲が不味くならあ」

しかし――

「ところでどうしたんだ、おめー。なんか最近、いいことあったのか?
――まさか」

「――そうだね。そのまさかさ」

マスターが目を閉じて、呟いた。
これまでの自らの過去を、反芻するかのように。

「そうか。――ケリ、ついたんだな。
身を包むにおいが、変わった」

「御陰様でね」
君のハナには毎度ながら感服するよ。
そういってマスターは苦笑した。
そして俺も苦笑する。

「莫迦野郎。全てのヒントは、お前の中にあった。
お前自身が、扉を開いて、変われたんだ。
それがガキの心に"信じる心"を呼び覚まさせた。
――それだけだ」

「……ありがとう」

とびきり甘いアイスハニーミルクの口直しに、
俺はマスターから、普段じゃ滅多に吸えない煙草を貰った。
そして別れ際に呟く。

「『泳げないと思って体に力が入ってしまうから、沈む。
 力を抜けば自然に浮かぶ、後は静かに手足で水を掻けば良い』か」

近頃は、これがわかってねえ人間が多すぎるな。
『できねえ』ってハナっからの決め付けが、てめーの心を腐らせ、殺すんだ。
……この摂理を、マスターは理解してやがる。天然でな。
そしてそれを克服して、てめーのものに出来たからこそ、奴は……

「おーい」

突然、俺の背中に向かって、その奴が叫んだ。

「また来てくれよ」

ハンバーグ、始めたんだ。

その声に応える代わりに、
俺は自慢の尻尾を振ってやった。

俺は人面犬。
人間を嗤い、嘲る者。
摂理と道理と、分相応を悟りし者だ。


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