「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 結界都市『東京』-50

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―第50章 秋の夜長に響く夢―
 正直言って、≪夢の国≫が来る事は分かっていた。だから俺は本拠地である南区のとある雑居ビルの貯水槽の上で黄昏ながら気長に待っていた。
 「そろそろ、かな…」
 もうすぐ日が沈む夕刻、そう言って俺はビルの上から飛び降りる。地面に―
 激突せず、何事も無かったかのように神社の方へ歩き出す。
 その途中で着ぐるみたちを見たが、あえて無視し、一直線に本丸を目指す。
 無視した着ぐるみたちが襲ってくるが、まずはジョーカーのカードで間抜け面の犬を軽く達磨にする。
 そして双子であろう栗鼠の着ぐるみ達は足を寸断させる。
 そして先を急ぐ。雑魚とやってもしょうがない。早く大将がお出ましになるといいのだが…
 山に近づきかけた時、意外にもその願いは早く叶ってしまった。
 「久しぶりだね、あと二人は何処に行ったの?」
 …大将のお出ましだ。こうあっさりと大将が出てきていいのだろうか。
 「…できれば、未来永劫会いたくは無かったけどな。あの2人ならあの中においてきた。人的被害を最小限に抑えるためにな。」
 「ふーん、あなた一人でどうにかするって事?」
 「いや、どうやら一人って訳じゃなさそうだ。居るんだろ、出て来いよ!」
 そう言うと、陰から一人の少年が姿を現した。

 「なんだ…気付いてたのか。何処からだ?」
 「何処ってそりゃ此処に来るちょっと手前でな。カラオケ大会では俺の次点でよく頑張ったな。」
 「次点とか言うなっ!」
 「無駄話はこれくらいにして…」「ああ、そうだな…」
 俺と少年は≪夢の国≫と相対するように見つめあった。
 「そっちの子は初めてだね?あなたも≪夢の国≫の住人になりに来たの?」
 「俺は≪夢の国≫に住民票を移す気は毛頭ない。残念だったな。」
 「なぁんだ、つまんないの。じゃああなたも一緒に≪夢の国≫の仲間にしてあげるね?」
 こちらが声をそろえて「ちょっと待て!」と突っ込みを入れようとしたその矢先―

 周りには多数の着ぐるみ達と奇形達が一斉に攻撃を仕掛ける所だった。
 「おっと!先に攻撃を仕掛けられちゃ結構不味いんだぜ!」そう言いながら奇形たちの攻撃をかわし、トランプ1箱をばら撒いた。
 瞬間、山が白い何かに囲まれた。どうやら完全に山との交信は寸断されたようだ。
 同じようにまたトランプをばら撒いた。今度は四方に散らばり―
 南・西・東各区の人口密集地が山と同じように囲われる。
 「「町の人を取り込むなら、まずは俺達を倒しな。」」
 すかさず攻撃態勢に入る。とりあえず上着に仕込んでおいたトランプを2箱取り出し、それをばら撒いた。
 ばら撒かれたカードは、まるで意思を持ったかのように奇形に、着ぐるみに襲い掛かる。
 「さてと、こっちもぼちぼち行きますか。おっとそこの兄ちゃん、まずは俺の番だ。ここでおとなしく見てろ。」
 そう言って俺は愚痴る少年のことをカードの結界で囲った。

『東京』side
 「天照、お前さんのほうの『結界』を学校町全体に頼むぜ?」
 「了解です!」
 瞬間、世界が反転する。
 こっちの『結界』は元来戦闘空間を形成するために使用されるもので、結界の外は時が止まる。でも実際にはゆっくりとだが時は流れ続けている。
 それに対してトランプの結界は『囲った場所の時の流れと空間を掌握する』ために『時空を切り取って隔離する』ものなのだ。つまり時の流れは任意に変えられるのだ。
 すなわち、このように使い分けをしなければ市街地広域戦闘は出来ないのだ。
 「…これがあなたの能力?」
 「これで驚いて貰っちゃあ困るぜ?まだまだあるんだからな!建速、「いつもの2倍」だ!」
 「ようやっと出番か!待ちくたびれたぜ!!!」
 そう言って俺は2本の刀を携えた。
 「あとこれもお見せしようか!」
 俺は重力と斥力、引力を弄って空を飛んで着ぐるみたちを沈黙させる!
 「すごーい!ピーt(大人の事情により削除されました)みたーい!!!」
 この子空飛ぶのに食い付いてるよ…
 空を飛んでいては着ぐるみたちも迂闊に手を出せまい!そう思った矢先―

 後ろから耳のデカイ象の乗り物がこっちに向かってきた!そういえば本物の「夢の国」にはそういうアトラクションがあったんだった!
 俺はそれをすんでのところで避け、引力と斥力のベクトルを≪夢の国≫の契約者に向け、重力・引力・斥力を通常の三倍かけた!
 超スピードで少女に向かう俺。その時―
 目の前の少女が姿を消した。そして後ろから殺気!俺はベクトルの向きを変えて方向を転換させて着地した。
 さっきまで俺がいた場所―すなわち空中―では少女が「あぁん!もう!逃げられたぁ…」とナイフを構え、落ちながら呟いていた。
 そして直ぐにいなくなる。俺は殺気がする方向とは逆方向に斥力と引力を弄った。すると―
 「残念でした♪」少女は俺が移動した先に現れたのだ!堪らず俺は空を飛ぶ。
 「また逃げた…もう一気に決めるよ?」
 少女はあの黒いパレードを繰り出してきた!
 「…しょうがない!"アレ"を使わせてもらおう!」
 そう言うと、手持ちのトランプの箱からすべてのトランプが出てきた!
 「このパレードを…"捕獲"する!"プラズマホールド"っ!」
 そう言うと、舞い上がったトランプは黒いパレードへと向かっていった!しかし―

 俺は絶句した…トランプではこのパレードは捕獲できない。取り込まれた人はもう戻らない!ここはせめて―
 「パレードを…防いでくれ!"プロテクトシェード"っ!」
 そう言いなおし、左手を構えると、左手の前に無数のトランプが壁のように厚く立ちはだかった。だが、トランプを操る俺は―
 「ガハッ!」血を吐いてしまう。気力が限界のため思うようにトランプを制御できない!クソッ!ここまでか…そして―
 すんでのところでパレードを避けたが、無数のトランプは花びらの様にひらひらと地面に向かって舞い落ち、そして初雪のように消えていった。
 更に、人口密集地を囲っていた白い空間も消え去った。
 そう、この瞬間、「時空掌握と自立稼働のトランプ」なんて都市伝説はもうその存在を失った。消え去ってしまったのだ。
 まあ、俺にとってみれば自らを縛っていた鎖が一つ外れたようなものなので気にしてはいないが。
 しかし、少々動き過ぎたようだ。体にガタが来てる。このままじゃ…
 「おいおい、何のために俺がいるんだよ?」
 ああ、そうだったな。今ここには俺とこいつがいたんだ。後はこいつに任せて俺は高みの見物とでも…
 「じゃあ後はまかせたぞ。…天照、『結界』を解除後速やかに『転移』してくれ。」
 「あの人置いてっていいの?」
 「何とかなるだろ…」
 そして、俺は戦略的な退却を行う。消え行くトランプの中で未だに消える事の無いトランプとは大きさの異なるカードが一枚上下を逆にして道路に刺さっていた。
 それは、タロットカード。そしてカードには「XIII The DEATH」と描かれていた…



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