『t.A.T.u. Paragate』 は2004年に公開が予定されていたアニメ映画。ロシアのポップデュオ 「t.A.T.u.」 のメンバーが主人公として登場する作品だった。
この企画は 2003 年に発表され、『キノの旅』や『犬夜叉』など、2000 年代の人気アニメの下請け作業で知られるアイムーヴ(訳注:2009年頃まで活動していたアニメーション会社。元請け作品としては本作が2作目になる予定だった)によってアニメ化されることになっていた。
この企画は 2003 年に発表され、『キノの旅』や『犬夜叉』など、2000 年代の人気アニメの下請け作業で知られるアイムーヴ(訳注:2009年頃まで活動していたアニメーション会社。元請け作品としては本作が2作目になる予定だった)によってアニメ化されることになっていた。
t.A.T.u.について
t.A.T.u.は1999年に結成されたロシアのポップデュオで、レーナ(リェーナ)・カーチナとジュリア(ユーリャ)・ボルコワの2人で構成されていた。彼女たちの最初のヒットシングルは2000年の『Ya Soshla S Uma(英語タイトル「All The Things She Said」)』だった。この曲は10代の少女が別の少女に恋をする苦しみを描いたもので、ミュージックビデオには制服姿のカーチナとボルコワが登場、2人のロマンチックな場面もある。t.A.T.u.のプロデューサーであるイワン・シャポヴァロフは、スウェーデン映画『ショー・ミー・ラヴ』を観て、少女同性愛をテーマにしたポップグループを作ろうと考えたとのこと[1]。実際のカーチナとボルコワは恋愛関係になかったが、デュオとしての設定上は恋人同士であり、アニメの設定でもカップルになる予定だった。
(訳注:t.A.T.u.は2003年頃に日本でもヒット。アルバム『t.A.T.u.』は200万枚を売り上げ、東京ドームコンサートも行われた。しかし番組出演のドタキャン等スキャンダラスな行動が目立ったため人気が急落。後述するシャポヴァロフとの契約破棄に繋がっている)
(訳注:t.A.T.u.は2003年頃に日本でもヒット。アルバム『t.A.T.u.』は200万枚を売り上げ、東京ドームコンサートも行われた。しかし番組出演のドタキャン等スキャンダラスな行動が目立ったため人気が急落。後述するシャポヴァロフとの契約破棄に繋がっている)
公開状況
公式に公開されたプロモーション画像は 4 枚のみ(訳注:スクリーンショット2枚、コンセプトアート1枚、ポスター画像1枚)。いずれもアニメスタイルかつサイバーパンク設定となったカーチナとボルコワに焦点を当てたものである。
2002年に「All The Things She Said」のリミックス版を収録した12インチビニールレコードがアニメ仕様のジャケットでリリースされたが、パッケージには『t.A.T.u. Paragate』に関する記載が見られない。本作の宣伝記事は雑誌「Newtype」 の2004年1月号(2003年12月発行)に掲載され、大まかな概要とスタッフリストが含まれていた。記事には「2004年11月、劇場公開予定」とも記載されていた。
2002年に「All The Things She Said」のリミックス版を収録した12インチビニールレコードがアニメ仕様のジャケットでリリースされたが、パッケージには『t.A.T.u. Paragate』に関する記載が見られない。本作の宣伝記事は雑誌「Newtype」 の2004年1月号(2003年12月発行)に掲載され、大まかな概要とスタッフリストが含まれていた。記事には「2004年11月、劇場公開予定」とも記載されていた。
しかし2004年初頭、t.A.T.u.のメンバーはイワン・シャポヴァロフとの契約を破棄した。彼女たちはシャポヴァロフが自分たちのスキャンダルを煽ることにこだわりすぎている上、彼のレズビアンフェティシズムにもうんざりしていると主張[2]。グループは新しい経営陣を迎え、直後にボルコワは産休に入った。
シャポヴァロフは『t.A.T.u. Paragate』の主要な制作メンバーであり、「t.A.T.u.」というグループ名の権利も所有していたため、この企画は間もなくひっそりと棚上げになった。公式ウェブサイト(後述)も2005年に閉鎖された。
公式情報が限られており、公開された画像もほとんどなく、アニメ映像も確認されていないことから、本作は脚本の段階を超えて制作されることはなかった可能性がある。
シャポヴァロフは『t.A.T.u. Paragate』の主要な制作メンバーであり、「t.A.T.u.」というグループ名の権利も所有していたため、この企画は間もなくひっそりと棚上げになった。公式ウェブサイト(後述)も2005年に閉鎖された。
公式情報が限られており、公開された画像もほとんどなく、アニメ映像も確認されていないことから、本作は脚本の段階を超えて制作されることはなかった可能性がある。
ストーリー・スタッフ
前述した「Newtype」の記事によると、確認できるスタッフは以下の通り。
- プロット・音楽…イワン・シャポヴァロフ
- ディレクター…鹿島則夫・工藤進
- オープニング演出…渡辺信一郎
- アニメーション制作…アイム―ヴ
- 声優…未定
下記で説明されている通り、映画のあらすじは確認できない。
「日本でも何かと話題の、ロシアの女子高生デュオt.A.T.u.がアニメに。ストーリー以外にも、ジュリアとレーナを誰が演じるのかは気になるところ。まだ詳細は明らかになっていないが、アニメでも大騒動を起こしそう?」
―前出記事の「STORY」より
2003年のコミックマーケット65では企業ブースとして出店、限定グッズを販売していた。カーチナとボルコワが裸で抱き合っている小さなポスターイラスト(訳注:リンク先にある上から4枚目の画像)を除き、他の独自資料は確認できなかった[3]。
2003年12月8日、映画に関する情報を公開・宣伝するために『t.A.T.u. Paragate』の公式ウェブサイトが開設。ニュースやスタッフ情報は「Newtype」の記事に書かれた内容を繰り返しただけで、映画のあらすじや制作者の経歴を説明する項目は更新されなかった[4]。ウェブサイトは映画の公開日が過ぎた数ヶ月後に閉鎖された。
訳注:追加情報
サンケイスポーツの報道によると総制作費は5億円で、日本・ロシアを含む世界規模での公開が予定されていた。カーチナとボルコワが劇中に実写で登場することも検討していたという[5]。
「アニメージュ」2004年2月号には僅かながらストーリーの記述があり、壮大なファンタジー映画になる予定だったことが窺える。
「アニメージュ」2004年2月号には僅かながらストーリーの記述があり、壮大なファンタジー映画になる予定だったことが窺える。
奇妙な異世界で運命の再会を果たしたジュリアとレーナ。相手を信頼し共に戦うことを誓う二人の前に、次元を超える扉「パラゲート」が開き、世界の運命が大きく動き始める。
―「アニメージュ」2004年2月号「Animage News Navi」より
2020年、Twitterユーザーの「こーキち」氏が『t.A.T.u. Paragate』の宣伝チラシの画像を投稿した。上記の情報の他、「セルゲイ・レフノフ」なる人物をロシア側プロデューサーとして起用したと書かれている。また「パラゲート」と主人公との関係性について以下のような説明がされている。
彼女たちの持つミステリアスで奥底のなさを感じさせる力強いパワーと、ガラスのように繊細で砕けそうな感情。そして現実と非現実、日常と非日常、それらの曖昧さと葛藤が生み出す扉「パラゲート」に彼女たちは正面から向き合い、闘うことで今の自身からの離脱と新しい自身に出会う事に実体を見い出そうと立ち向かいます。
―『t.A.T.u. Paragate』宣伝チラシより[6]
メディアギャラリー




参考リンク
- T.A.T.u. Paragate (lost production material of unreleased anime film starring Russian music duo; 2004) 元記事
- [1] t.A.T.u.Media:Lena Katina’s Interview in “Story Caravan” カーチナへのインタビュー記事(英語)
- [2] Ananova:Tatu seeking new name and manager シャポヴァロフの解雇を伝える記事(英語)
- [3] TISA t.A.T.u.:「コミックマーケット徘徊記 '03」企業ブース編
- [4] 『t.A.T.u. Paragate』公式サイト
- [5] SANSPO.COM:タトゥー映画でアニメ化、実写での登場も検討
- [6] こーキち氏の投稿