スレ内に投稿されたSSまとめ(51~60スレ目)
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麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 51スレ目
≫104 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:40:15
では失礼して……
Novel LAWの内容を踏まえた怪文書なのでNovel LAWのネタバレ有。ビコーペガサスとか出てきます
※ローライス恋愛概念につき、ローがライスに対して明確に恋愛感情を抱いている表現を含みます。苦手な場合はスルーでお願いします
――どうしても助けたい女がいる。
ローがベポ達にその少女の話をしたのは、船出を一週間後に決めた日の夜だった。
今まで珀鉛病のことやドンキホーテ海賊団にいたことは話してきたが、そこで共に育ったウマムスメ族の少女……ライスシャワーの話をするのはこれが初めてだった。
今まで彼女のことを話さなかったのは単純に気恥ずかしさもあった。ベポ達と出会ったばかりの頃はまだまだガキだったし、からかわれるのが嫌だった。
そしてそれ以上に、あの優しい少女をドフラミンゴの元に置いてきてしまった罪悪感があった。
時間が経って平和な生活に慣れてきた頃にあの一面記事を見て、全身の血液が沸騰するような感覚を覚えたのはつい最近のことだ。
ドレスローザにドフラミンゴが新たな王として君臨したことを知らせる大ニュース。それは恩人のコラソンが救おうとしていた国がドフラミンゴに乗っ取られたことを示していた。
そしてそこに掲載された写真。そのほんの片隅に、小さいけれど確かに見覚えのある姿。
間違いなくライスシャワーだと、ローは確信した。特徴的なクセのある黒髪。華奢な身体。ウマムスメ族特有の耳と尻尾。見間違えるはずがなかった。
彼女はまだドンキホーテファミリーにいる。未だドフラミンゴに囚われたままだ。
≫105 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:40:49
『ローくん!』
鈴を転がすような声を、今も鮮明に思い出せる。
ことあるごとにローにつきまとい、珀鉛病のことを知って尚変わらずに接し続けた。驚いて泣きそうな顔になるくせに、睨みつけても突き飛ばしてもローについてくるのだけはやめなかった。
とうとう根負けして「勝手にしろ」と吐き捨てた頃には、振り向くとすぐそこにあの少女がいる状況をそこまで悪く思っていない自分がいた。
一度だけ、なんでついてくるんだと問いかけたことがあった。
するとライスシャワーは一瞬言葉に迷ってから、どこか憂いを帯びた表情でこう返してきた。
『だって、ひとりでいたら寂しいから……』
その時のローにはライスシャワーの言葉の意味がわからなかった。
ドンキホーテ海賊団の規模はそこそこで、大人だけでなくロー達と歳の近い子供だっていた。これだけの人数がいたら一人になる方が稀だ。そう思っていた。
……ライスシャワーの言葉の真意を知ったのは、この数年の間だ。
ローに無償の愛を与えてくれたコラソンとの半年の旅。見ず知らずの子供でしかなかったローを助けてくれたヴォルフ。様々な事件を経て友達となったベポ、シャチ、ペンギン。
ドフラミンゴに支配された偽りのファミリーとは違う。心から思いあえる人々と出会ったローは、この数年、決して孤独ではなかった。
ライスシャワーもまた、ローを孤独にしない為に無償の愛を与え続けてくれていたのだ。
≫107 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:41:27
半年間の病院を巡る旅の途中、コラソンがライスシャワーと出会った経緯を話してくれたことがあった。
ライスシャワーは海難事故によって両親を亡くし、ある日突然ひとりぼっちになったという。
元々ウマムスメ族というのは魚人族に近い差別を受けており、今でこそ海軍将校を排出するなど地位は向上しているが、それでも差別意識が根強く残る場所は多い。
ライスシャワーは不運にも、酷い差別に晒され続けた。
コラソンはあまり詳細には話してくれなかったが、危うく売り飛ばされそうになったこともあったらしい。
そんなひとりぼっちの生活の中、空腹に耐えかねて口にしたのがローが食べたオペオペの実のような悪魔の実。幼くサバイバル経験もないライスシャワーが危険から逃げ続けられたのはその能力のお陰だったようだ。
そんな生活が続いて身も心もボロボロになったライスシャワーを偶然見つけたコラソンは彼女を保護した。悪魔の実を食べていた為に一般の施設に預けるわけにもいかず、ドンキホーテ海賊団に連れ帰ったという。
……あの時は話していなかったが、本当なら海軍にでも預けたかったところだろうと今は思う。ドンキホーテ海賊団に潜入している立場のコラソンは、無闇矢鱈と海軍と接触するわけにもいかなかったのだろう。
≫108 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:41:56
『最初はおれのことお父さまみたいだって言ってたんだ。まったく、まだそんな歳じゃねェってのに……』
そうボヤくコラソンの表情は台詞の割にだらしなく緩んでいて。コラソンを「お兄さま」と呼び、無邪気に慕っていたライスシャワーを彼もまた愛していたのだ。
本当に良い子なんだと、慈しむように溢していた。
『どれだけ酷ェ目にあっても、あの子は決して誰も恨まなかった。全部自分のせいだって言うんだ。自分のせいで周りを不幸にしちまうって。そんなわけねェのに……』
「ライスのせいだ」「ライスが皆を不幸にしちゃう」……それはライスシャワーの口癖のようなものだった。
コラソンがドジですっ転んだり、煙草の火が服に引火したりすれば自分が近くにいたせいだとぴーぴー泣いて、航行中に嵐がくれば自分が乗ってるせいだとしくしく泣いた。正直に言うと、ロー自身、これがうっとおしいと思ったのは一度や二度ではない。
『あんなに優しい子が悲しい顔して周囲の悪意に押し潰されそうになってたんだ。とても放っておけなかった』
だがそれは裏を返せば決して他者を憎まない優しさの表れでもあった。
故郷を焼かれ、家族を殺され、何もかもぶっ壊したいと望んだロー。
ひとりぼっちになり、差別と理不尽に晒されながらも、世界を憎まなかったライスシャワー。
ローとライスシャワーの想いはどこまでも対照的で……だからこそ惹かれたのかもしれなかった。
『それにな、女の子ってのは……特にライスみたいな子はな、笑ってる顔が一番かわいいんだ。わかるだろ?』
『……知るかよ、そんなの』
『……そういえばロー。お前、よくライスと一緒にいたよな? もしかして……』
『なっ……!? そ、そんなわけねェだろ! 誰があんな泣き虫なんか……!』
『ははっ、照れるな照れるな!』
『照れてねェ!!』
嘘だ。照れてた。
あと少ししか生きられないかもしれないのになんでこんな思いをしなければならないんだと叫びだしたくなるくらいに、本当は、あの子が――
≫109 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:42:59
「……ローさんは本当にその女の子が好きなんだね」
ライスシャワーのことを話し終えて一息ついてから、真っ先にベポがそう言った。
一瞬からかってるつもりなのかと思ったが、そうではなかった。このお人好しの白熊にそんな意地の悪さはない。
「そのライスシャワーって女の子がローさんにとってどれだけ大切な存在なのか、話を聞いてるだけですごく伝わってきたよ」
そう。大切な存在だ。あの子までドフラミンゴに奪われるわけにはいかない。
言葉にすることで改めて決意する。コラソンが救った命、コラソンが助け出そうとした女の子。そしてローにとっては……愛(ハート)をくれた、もうひとつの心臓。
先日戦ったあの海賊に苦戦している程度では、きっとまだまだ届かない。
それでも必ず――取り戻してみせる。
頼りになる仲間もいるのだから。
……とりあえず、先程からずっとニヤニヤしているシャチとペンギンは後でひっぱたくことにした。
≫110 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:43:38
〜数年後〜
小柄なウマムスメ族の少女――ビコーペガサスは悔しそうに唇を噛んだ。
ここは海辺の洞窟。最近、子供や老人を攫っては奴隷として売りさばく海賊の拠点だ。その中の空間の一つに被害者を閉じ込め、バリケードで蓋をしていた。
ビコーペガサスもまた、海賊に囚われた被害者の一人だった。
偉大なる航路のトレセン諸島で生まれた彼女は数年前に人攫いの被害に遭い、どうにか自力で逃げ出すもどうすればトレセン諸島に帰れるかも分からず、闇雲に密航を繰り返している内にこの北の海までやってきてしまった。
運良く親切な夫婦に助けてもらったビコーペガサスだったが、そこで彼女は近頃この北の海で人攫いが横行していることを聞いた。――聞いてしまった。
正義感が強く、所謂"ヒーロー"に強い憧れを抱く彼女はそれを聞いて黙ってはいられなかった。彼女を助けてくれた夫婦の子供が攫われたと分かったら尚更だ。
海賊の拠点を突き止め、意気揚々と突っ込んだ。
トレセン諸島に伝わる伝統的武術・ウマムスメ武術の心得はあったし、普通の人間よりもウマムスメ族の身体能力が優れているのは知っていた。自分ならきっと助けられると――ヒーローになれると、そう信じていた。
だが現実には圧倒的な人数の前にスタミナを削られ、最後には攫われた子供達や老人達を人質に取られて降伏せざるを得なかった。
この海賊達は頭が回るようで、拠点を頻繁に移動するのだ。海軍は助けに来てくれない。というか、海軍が解決できるのなら、あの子供たちや老人たちはとっくに自分の家に戻れているはずだ。……ビコーペガサスが手を出すまでもなく。
悔しくて仕方がなかった。自身の浅慮さと、力の無さ。お前はヒーローなどではないと……ヒーローなどいないのだと、突きつけられたようで。
そして、恐ろしくて仕方がなかった。奴隷として売られていったウマムスメ族の歴史は、嫌というほど教えられてきたのだから。
けれど、下を向いて泣いているわけにはいかない。ビコーペガサスよりもずっと小さな子供達が寂しさと恐怖で啜り泣いている。
何もできないのだから、せめてこの子達の不安に寄り添ってあげなければ。
目尻に滲んだ涙を袖で乱暴に拭った、そのとき。
≫111 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:44:13
(……?何か、聞こえてくる……)
ウマムスメ族の優れた聴力が何やら喧騒を捉える。
海賊達が宴会でも始めたのだろうか。真昼間から酒をかっ食らうような連中なので、別におかしなことでもないが。
しかし、聞こえてきたのは夜になる度に聞いた下卑た笑い声ではなかった。
怒声、罵声。打撃音と、金属がぶつかり合う音。明らかに様子がおかしい。
ビコーペガサスは聞き耳を立て、子供達や老人達を守るように前に立った。
そして。
バキャアッ!!
激しい音と共にバリケードがぶち破られ、いつも見張りに立っていた数人の海賊が転がり込んできた。
子供達は驚き、悲鳴を上げる。
立ち込める土煙の中から悠々と現れたのは、見たことのない人物だった。
背の高い帽子の男、他にも男が数人。二足歩行する白熊もいる。
海賊達が怒声を上げて、帽子の男達に襲いかかる。帽子の男達は一歩も引かずに果敢に立ち向かった。
寧ろ、帽子の男達のほうが実力は圧倒的に上だ。海賊達はあっという間に追い詰められていく。
すると海賊達の内の一人が、囚えられた被害者達――ビコーペガサスを視界に捉えた。
≫112 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:44:51
「来い!」
「うわっ!」
片手にカトラスを持った海賊はビコーペガサスの腕を乱暴に掴み、引き寄せる。
「う、動くな!このウマムスメの命が惜しけりゃ――」
「――シャンブルズ」
帽子の男が何かを呟いた瞬間。ビコーペガサスを捕まえていた海賊が魔法のように消えてしまった。
代わりにいたのは、さっきまで向かいにいた筈の帽子の男の方だ。
「ベポ!」
「アイアーイ!」
ビコーペガサスと同じく呆気にとられていた海賊の腹部に、白熊の放った鋭い蹴りが突き刺さる。
ポカンとしていたビコーペガサスだったが、ふと帽子の男の方を見て……息を呑んだ。
男の胸元に大きく掘られた刺青。ハートを模したドクロのマーク。それは……海賊の証だ。
帽子の男は駆け出し海賊に斬りかかる。その形相はまるで、鬼のようだった。
暫くして、海賊達は全員地に伏していた。
正確には"ビコーペガサス達を囚えていた"海賊達だ。奴らを軽くのしたこの帽子の男達もまた、海賊だった。
他に声が聞こえてこない。どうやら、帽子の男達によって他のメンバーも倒されたようだった。
彼らのリーダー格らしい帽子の男がゆっくりと近づいてくる。
ビコーペガサスよりもずっと大きな背丈。ガッシリとした体つき。険しい表情。片手には長柄の刀。
――怖い。
一瞬、助かったと思った。けれど彼らもまた海賊であるなら、奴らから獲物を横取りにきただけかもしれないのだ。
女の子が――ビコーペガサスを助けてくれた夫婦の娘が、啜り泣いている。
ビコーペガサスは潤んだ目をキッと引き締め、立ち塞がるように帽子の男の前に立った。
≫113 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:45:28
「く、くるな!くるならアタシが相手になるぞっ!!」
勝てるわけがない。相手はビコーペガサスが倒せなかった海賊を簡単に倒してしまったのに。
「アタシは……っ!アタシは、海賊なんかに負けない!これ以上みんなを傷つけさせるもんか!!」
帽子の男は止まらない。
帽子のつばが影を作ったせいか。視界が急にボヤけてきたせいか。表情が分からない。
「だって、アタシは――!!」
――ヒーローに、なりたかったから。
男の手が伸ばされる。ビコーペガサスは殆ど反射的に目を瞑った。
しかし。予想に反して覚悟していたような痛みや衝撃はなかった。
大きな手が、頭の上にそっと乗せられる。
「……頑張ったな」
「……!!」
ビコーペガサスは涙でいっぱいの目を見開いた。
それは、ウマムスメ族の聴力でなければ捉えられないほど小さな声だった。
≫114 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:46:16
ハートの海賊団。
そう名乗った男達は直に海軍がやってくることを告げると、洞窟を後にした。
外につけられた黄色の潜水艦に、船員達が次々と乗り込んでいく。
ビコーペガサスは少し迷って、けれど意を決してその大きな背中に話しかけた。
「あ、あのっ!!」
リーダー格の帽子の男は首を少しだけ動かしてビコーペガサスを見た。その表情は相変わらず険しい。
「さ、さっきはあんなこと言ってごめんな……。助けに来てくれたのに……」
「別に。ただの気まぐれだ」
――本当にそうだろうか。
それにしては、あの時ビコーペガサスの頭に乗せられた手は、かけられた小さな声は、あまりにも優しかったような……。
「そ、それでも……!あんたはアタシ達のことを助けてくれたんだ!」
ビコーペガサスは懸命に男を見上げる。
「アタシ……正直、もう駄目だって思ってた。もう一生トレセン諸島に帰れない。それだけじゃなくて、奴隷にされちゃうんだって。でも、あんた達が来てくれたから……!」
鼻の奥がツーンとして、再び視界が滲んできた。
男の表情は変わらない。
≫115 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:46:53
「っ、だから……!あ゛りがとう!!」
垂れそうになった鼻を啜った。
「ほんとに……ほんとに、あ゛りがどう゛!あんた達はヒーローだ!ア゛タシの……アダジの、ヒーローだッ!!!」
しゃくりあげるビコーペガサスに、男は何も返さなかった。
白熊が帽子の男に声をかける。そろそろ出航するらしい。男は少しだけビコーペガサスを一瞥すると、潜水艦に乗り込んで去っていった。
それから少しも経たないうちに、入れ替わりのように海軍の船がやってきた。
あの夫婦の娘も、ビコーペガサスも。無事故郷に戻れることになったのだった。
――ヒーローは、いた。
絶望的な状況に光を灯す。虐げられる人々に救いの手を差し伸べる。そんなヒーローは確かにいた。
掲げていたのは海賊旗だったけれど。それでも……。
(アタシもいつかあんなヒーローになりたい……ううん、なるんだ!絶対に!)
今はまだヒーローは遠いけど。それでも必ず――!
トレセン諸島行きの海軍の船に揺られながら、ビコーペガサスは小さな希望を心(ハート)に灯していた。
≫116 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:47:27
〜新世界 ドレスローザ〜
「どうした?もっと楽にしていいぞ」
「ひゃいっ!?ご、ごめんなさい……」
「フッフッフ……謝ることはない。おれは、おれが不在の間に立派に役目を果たした部下を労っているんだ」
シンプルながらも精巧な装飾が施されたティーテーブルを挟んで向かい合う2つの影。
片方は大柄な男。ドレスローザの現国王であり、王下七武海の一人。ドレスローザの救世主と名高いドンキホーテ・ドフラミンゴ。
もう片方は小柄な少女。"ドレスローザのバラ"と謳われ、救国の英雄(ヒロイン)として国民に慕われるウマムスメ族……ライスシャワー。
王下七武海に所属するドフラミンゴは所要で国を出ることも多い。その間このドレスローザを、国民達を守るのがライスシャワーの役目だ。
帰還したドフラミンゴはよくこうしてライスシャワーを自室に招き、お茶をしながら話を聞いていた。
≫117 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:48:16
「立派……なのかな。上手にできてたかは分からない、けど……でも、精一杯やったよ」
「ああ、それでいい。十分だ」
「あ、あのね!それから……輸入品の価格をもう少し値上げしたいって申請があったの。勝手に決めたらだめだから、保留にしておいてあるんだけど……」
「ああ。目を通しておく」
「え、えっと、それから……」
「仕事の話はいい。それよりも……お前の話を聞かせてくれ、ライスシャワー」
ライスシャワーはきょとんとしてから、ええっと、と目を泳がせた。
「で、でも、ライスの話なんかつまらないよ……」
「そんなことはない。おれはお前が何を見て、何を感じ、誰と何を話したのか……そういう些細なことが聞きたいんだ。おれにとってお前は、歳の離れた妹のようなものだからな」
「ドフラミンゴさん……」
ライスシャワーは少し照れくさそうに頬を染め、俯いた。
「え、えっと、じゃあ……!この前、行きつけのパン屋のおじさまがね――」
鈴を転がすような少女の声と時折相槌を打つ低い声が聞こえる。
それはあまりにも平和で、あまりにも不穏なひとときだった。
≫118 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:48:55
〜偉大なる航路 ポーラータング号内部〜
偉大なる航路に入ってから数ヶ月が経過した。今までとは全く違う海の様子に最初こそ戸惑っていたベポも、今ではすっかり慣れた様子だ。
ローは自室でぼんやりと天井を眺めていた。
あの出航の日からもうどれだけ経っただろう。あの子は――ライスシャワーは一体どうしているだろう。
起き上がり、徐に引き出しの一番上を開ける。
そこにはライスシャワーの姿が小さく写った例の新聞の切り抜きと、青いバラの髪飾りが仕舞われていた。
このバラの髪飾りはライスシャワーのものだ。
コラソンによって病院巡りの旅に連れて行かれたあの日。ローは偶然、ライスシャワーがいつもつけていた青いバラの髪飾りが落ちているのを見つけた。
後でライスシャワーと合流すると案の定髪飾りを失くしたとベソをかいていて、一緒にいたベビー5がめんどくさそうに宥めていたのを覚えている。
返してやろうと思ったらベビー5とバッファローが本名を教えろと騒いできて、その後コラソンに連れて行かれて……結局返すタイミングが無くそのまま持ってきてしまった。
旅の途中でポケットから出てきたのをコラソンに見つかって、これがコラソンからライスシャワーへと贈られたものだったということを知った。
盗んだと勘違いされるのも嫌だったから、落ちてたのを拾ったと正直に言った。タイミングがなくて返し損ねてしまったとも。
≫119 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:49:34
『それじゃあ、病気を治してからちゃんと返してやらなきゃな』
――まるで何かの口実ができたとばかりに嬉しそうにしていたっけ。
「…………ライス」
その名を小さく呟く。
青いバラ。その花言葉は"奇跡"。
どんな理不尽を受けても決して世界を憎むことがなかった彼女はきっと――コラソンにとって"奇跡"だったのだ。
物思いに耽っていると、コンコンとノック音と一緒にベポの声が聞こえてくる。航路の相談だろうか。
ローは引き出しを戻すと、今行く、と短く返事をした。
(必ずお前を迎えに行く)
(そして――今度こそ返すよ。コラさんからの大事な髪飾りを……)
≫120 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 19:49:55
以上です
3000字くらいで終わるかなって思ったら倍以上になっててウケる
Novel LAWでハートの海賊団が人攫いやってた海賊を潰した記述が出てきたので上手いこと絡ませられないかな?と思った次第です
ビコーはまだ詳細な設定ができてなかった気がするので被害者役で出しちゃった。この後トレセン諸島に帰って真面目に修行を積み、あの時助けてくれたヒーローのようになる為に正義の海賊(?)になったとかならなかったとか……
ローの手配書を見て目をキラキラさせながら「あの時のヒーローだ!」ってはしゃぐビコー可愛い……可愛くない?
ローはちっちゃいのにめちゃ頑張ってるビコーを見てライスの姿が脳裏を過ぎったりとか、そういう複雑な心境だったんだと思います
≫161 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 21:19:17
カームベルトには風がなく、その上に海王類が多く生息している。だからこそ、エンジン付きの船で高速で通り抜けるか、海楼石を敷き詰めて海に偽装してやり過ごすしか道はない。
しかし、これは船だったらの話だ。
1人のウマ娘が海面を疾走している。個人の実力によるが、ウマ娘は海面を走ることが出来るのだ。
彼女の名はヒシアマゾン。
彼女は今、カームベルトに存在する島、女ヶ島に向かっていた。そして女ヶ島に上陸し、適当に挨拶を済ませてこの島の女王のところに向かう。
彼女の故郷であるトレセン諸島と女ヶ島は古くから交流があり、かつては人攫いの影響で国交は断絶していたものの、先代女帝の代でそれらの問題は解決し、現在は細々ながらも交流が復活していっていた。
「ニョン婆!あの子達が帰ってきたってのは本当かい!?」
「ヒシアマゾンか。数年前のことじゃが、その話は本当じゃ…しかし…」
「何かあったのかい?」
「行ってみるのが正解じゃろう…」
十数年前に唐突に行方不明となった、自身も世話役を務めた今代の女帝ボア・ハンコック、彼女の妹であるローズマリーとサンダーソニアが帰ってきたと聞いて、国交が復活してから直ぐにやってきたのだが、何やら様子がおかしい。
そしてその空気に、ヒシアマゾンは覚えがあった。
コツコツと足音を立てながら、彼女は女帝の部屋へと向かう。
≫162 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 21:19:35
扉をノックすれば、しばらく置いて返事が返ってきた。
「入れ」
「失礼するよ」
部屋には三姉妹全員が揃っていた。
女帝であるハンコックは厳格にヒシアマゾンを見つめる。
「ヒシアマゾン、久しぶりじゃな」
「ああ、久しぶりだね。帰ってきたのは数年前だったみたいだけど、こっちも中々忙しくてね、心配したんだよ。で、大丈夫だったのかい?」
「心配はいらぬ。ゴルゴンの呪いを受けてしまったがな」
「ゴルゴンの呪い?」
しかし察しのいいヒシアマゾンはすぐに気づいた。
それは天竜人の紋様…つまり、奴隷だった過去を隠すための方便だと。
彼女の表情が一瞬曇るが、いつものように快活に笑ってみせる。
「今回は国交の復興のために来たんだ。さぁて、仕事は山積みだよ!」
「そなた、余り事務仕事は得意ではなかったであろう?」
「気にしてること言うなよ!」
ヒシアマゾンはハンコックと共に執務室へと向かっていった。
そしてハンコックは、背中の焼印のことを察しながらも口にしないでくれたヒシアマゾンに小さく感謝の念を抱いた。
時系列はハンコックが女帝になってすぐの頃
ちょっと彼女らしくないところがあるかもしれませんが、それはウマ娘が人攫いに狙われ続けた過去を知っているからです
≫175 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 21:55:37
「ワンピース(☓ウマ娘)薄い本三銃士を連れてきたぞ」
「ワンピース(☓ウマ娘)薄い本三銃士を連れてきたぞ?」
「基本ゾロ時々ルフィのマチカネフクキタル」
「今日は厄日です」
「純愛からNTRまで何でもイケるライスシャワー」
「ファッキュー」
「ウマ娘になれるからどっちもイケるチョウ・キョーシ」
「人間の悪意を見た」
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 52スレ目
≫58 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 23:09:50
新世界のとある島。
その島は、巨大な怪物によって滅亡の危機に瀕していた。
突然変異によって誕生した10メートル以上の巨大な猪は、その大きな口で農作物を食い荒らし、鋭い角で家や人々を蹂躙している。
島民の誰もが最期を悟ったその時だった。
「いっくよ〜!」
巨大な猪にも負けないほどに大きな正義を背負ったウマ娘、ヒシアケボノだった。
「みんなを危険に晒す悪い猪は、私が許さないぞー!」
彼女は突進してくる猪を真っ正面から受け止め、そのままバックドロップで一撃で沈めてしまった。
島民全員が呆気に取られていると、彼女は猪を人気のない所に運び、腰からナイフを取り出して猪を捌き始めた。
突然のことに思わず島民は問いかける。
「な、何をしているんですか?」
「これからみんなで猪鍋にするよー!だからちょっとだけ待っててねー!」
そう言ってみるみる捌かれていく猪。
島民達はあんな大きなものを食べれるわけないじゃないかと思っていたが、いつのまにかヒシアケボノと猪の姿が見えなくなっていた。
どこに行ってしまったのかと首を傾げていると、何処からか美味しそうなにおいが漂ってくる。
それに釣られて向かってみると、180センチほどの大きさになっている彼女と、確かに大きくはあるが理解できる大きさの猪が解体されて大きな鍋の中に入っていた。
ヒシアケボノは島民に笑顔で言った。
「もうすぐできるから待っててね!」
しばらくして完成した猪鍋に舌鼓を打った島民にはあの時の絶望感などかけらもなかった。
海軍本部少将兼料理人
「大きな料理人」ヒシアケボノ
能力
自身や触れたものの大きさを変更する能力
≫75 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 23:26:19
じゃあユキノビジン×パンクハザード妄想ss(とも呼べないプロット)を
元々トレセン諸島とは別の冬島で生まれ育ち、トレセン諸島に行こうとするが、事故で遭難してパンクハザードに流れ着く
↓
それを看病して助け、その恩とユキノの優しさに漬け込み、ここは難病人の隔離施設だけど人手不足で手伝って欲しいと攫ってきた子供達の世話をさせられていた
↓
(以下本編)
少し子供部屋を後にしていた間にフランキーが壁を壊してフクキタルを含む収容メンバーの逃走中に遭遇、子供を助けようと追いかけながら成り行きで行動を共にする
↓
途中でローの能力を見て驚いたりしながら子供達が覚醒剤入りのキャンディーを食べさせられていたことを知り、自分が何も知らずに加担していたことに愕然とする
↓
その後は麦わらの一味の見方としてモネとの戦いで雪そのものであるモネ攻略に力を貸したりする
↓
最終的に、本部から来たゴールドシチー(2年間で階級が大佐になる)と遭遇、騙されていたとはいえ悪事に加担した自分を逮捕する様に懇願、軍艦に乗せられていくが軍艦内で手錠を外され、自分の元で海軍として働く気はないかと誘われて、シチー自身も少し甘いと思いながら部下から聞いた戦闘センスを磨き、その力で人を助ける形で罪を償っていけば良いと進言、最終的にユキノ自身の意思で選ばせる形にしつつも、ユキノはそれを承諾。
かつて自分を海軍として戦えるように鍛えてくれたものの、頂上戦争で命を落としたとある大佐のように、今度はゴールドシチー自身が人を鍛える立場になるところで出番は終了。
≫83 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 23:33:36
スペちゃんとフクキタルを両立したかったサイレンススズカ
23年前
<サイレンススズカ13歳、スペシャルウィーク他4名12歳>
"雲の果て"直下
後に海賊王の二つ名を得るゴール・D・ロジャーの船
後部甲板にはウマ娘の少女たち"6人"の姿があった
「ガン・フォールさん、いい人でしたね」
「ハイ。エルもあんなヒーローみたいになりたいです」
「いやいや、セイちゃんら今海賊ですよ」
船室の上で椅子に座り話す彼女らに
一人、一段下で外を見るスペシャルウィークが声をかけた。
「わぁスズカさん、見てください。すごい景色ですよ」
「あんまり身を乗り出すと危ないわよ、スぺちゃん」
巨大なタコにつられた空の旅、360度の景色はおそらく二度と見られない絶景。
小粒な海王類の姿が海面が近づくにつれて巨大さを現していく。
「ほらほらもうすぐ着水しますわよ、船におつかまりなさい」
一人だけ談笑もせずにいたキングヘイローが号令をかける。
ほどなくして訪れるド派手な着水、大きく上がる水しぶき。
その中に混じって『ぶちり』と嫌な予感をさせる音をサイレンススズカは捉えた。
神のいたづらか気づく。落下にあたりマストの下に固定されていた巨大な玉子のロープが切れていることを。
そして傾く先には外の手すりにつかまっていたせいで水をたっぷり浴びたスペシャルウィークの姿がある。
「スぺちゃんあぶない!」
「えっ!」
一息に飛びかかり、下敷きになるのを救い出すサイレンススズカだが。
≫84 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 23:33:49
~医務室~
「粉砕骨折だな」
いかつい顔をゆがめ、クロッカスは重苦しく診断結果を告げた。
室内からうるさい少女たちは追い出され、スズカとレイリーそして雑用に残されたバギーが居た。
扉の外では数える気にもならないくらい聞き耳を立ててる気配があるがクロッカス以外の声はない。
沈黙の中、スズカは絞り出すような声を出した。
「いつ、走れるようになりますか」
「……ならねえ」
衝撃に言葉を失うスズカ。レイリーとバギーは息をのんだ。
「絶対に、無理なのか?」
可能性を追い求めてレイリーが尋ねた。
「今の技術じゃ無理だ。進歩するのを待つしかない」
「で、でもよクロッカスさん。技術が進んだらそのうち……」
クロッカスは力なく首を横に振った
「ウマ娘は若い時期は長いが、本格派と呼ばれる成長期の期間はそれに比べれば短い。この脚を治す方法が確立されるまで早くても10年はかかる。そっから鍛錬を積んだところで並みのウマ娘にもなれやせん」
軽く息を吸い、歯を食いしばって宣告した。
「お前の求める走りは、あきらめろ」
スズカの頭に置かれた手は、とても優しく、残酷だった。
「そんな言い方ねえだろうがクロッカスさん、こいつらが可哀想じゃねぇか」
「俺は医者だ、患者に正確な状況を言わなくてどうする」
外の誰かが辛抱たまらず、扉を勢いよく開けた。
そこにいたのは顔から落ちる水滴で床を濡らしながら頭を下げるスペシャルウィーク
「おねがいします! スズカさんを走れるようにしてあげてください! わた、私にできることならなんでもします。だから、おねがいします!」
クロッカスは怪我の元凶となってしまった少女になんと声を返すか少し考えたが、夢を与える言葉はどこにもなかった。
「甘ったれたことを言うなよスぺ! こいつは誰かが何かをしたら解決する問題じゃねぇんだ」
「おねがいします!」
沈黙
室内の誰もが、外からのぞき込む船長や赤髪、バカ殿、そしてウマ娘たちの全てが言葉を止めていた。
≫85 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 23:34:02
長い静寂の末、サイレンススズカが声を振り絞った。
「いいのよスぺちゃん。一生走れないってわけじゃないもの」
襟を涙で濡らしつつスペシャルウィークを見て、次いで痛々しく包帯を巻かれた自分の左足を見る
「どんな形でも走れるようになるなら私は」
しゃくりあげる声が、遅くなっていき
「……私は」
そして止まった。
ぱん!
両手を叩き、沈黙を切り裂く音
扉の外、皆の視線が集まった先には光月トキの姿があった
「時間でしたら私が解決してみせます」
「トキさん!」
医務室へ歩み入るトキはあらゆる雑念を切り捨てクロッカスに続けた。
「トキトキの実の力を使えば未来へ送ることだけはできます。何年ですか、どれだけの時間があればよいのですか」
「15、いや準備も含めりゃ20年だ。それだけありゃまず、……いや、確実に治る」
「だがよ、それって」
それが示す事実を皆が当然理解した中、バギーが空気を読まずに訊くが
「かまいません。また走れるようになるのなら私は、走りたい!」
スズカの力強い言葉にずっと外野だったの船長は大きく笑い船員に伝えた。
「目的地変更だ! ウォーターセブンの前にトレセン諸島へ行くぞ!」
≫86 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 23:34:21
トレセン諸島中央島、屋外新設保健室予定地
まだ工事が行われていない野原に体裁のためか床板だけが敷かれていた。
ロジャー、クロッカス、光月夫妻、トレセン諸島のウマ娘数名とロジャー海賊団のウマ娘たちが集まっている、
「検査だけ済ませといて20年後の今日、準備をすべて済ませたうえでスズカを迎え入れ治療を始める。そういう計画だ」
「ロジャーの用事が済んだら俺も顔を出す、頼んだぞアサマ(マックイーンの祖母)」
「お任せあれ、メジロの名に懸けて成し遂げてみせましょう」
メジロの当主は海賊の頼みにも関わらず、ウマ娘の未来のための計画を承諾した。
ウマ娘の少女たちはベッドに寝かされたサイレンススズカの周りに集まり別れを惜しむ
「本当に一人で行くんデスか?
「そうですよスズカさん、私も一緒に行きますよ」
だが、サイレンススズカはその申し出を断った。
「だめよスペちゃん。みんなにはとびっきりの冒険があるでしょ。これは私だけの願いだもの」
スズカは涙をこらえて、とびきりの笑顔を作った。
「スぺちゃん、みんな、さ……また会いましょう」
「はい、また会いましょうスズカさん。スズカさんが居ない間の冒険の話、いっぱい用意しておきますね」
「すぐに会えマース」
「悲劇じゃないもの、キングは涙をながさないわ」
「……またね~」
「また会いましょうね」
少女たちが一人ずつ声をかけたのを確認した後つらい別れを断ち切るため、光月トキは言葉を発することなく割り込んだ
光、そして
サイレンススズカの姿はどこにもなかった。
≫87 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 23:34:33
1年前
<サイレンススズカ15歳>
開運希望の少女、マチカネフクキタルは上機嫌に野原を歩いていた。
「ふんにゃかハッピー、ほんにゃかハッピーっと」
「今日も元気ね、フクキタル」
すでに何本か走ったところなのだろう、ジャージを着てタオルで汗をぬぐうスズカ
「おやスズカさん、今日もトレーニングですか。本当にお好きですねぇ、なむなむ」
「私にとって、走れるだけでも嬉しいもの」
「いやリハビリ明けを持ちネタにするのやめましょうよ。クラシックはパッとしなかったですけど、みんな噂してますよ」
長ズボンで見えないが、スズカの左足には今も手術の傷が残っている。
まともに走れるようになったのは本格化が始まって一年後のことだ。
「本当に速いのはハンデありであれだけ逃げれるスズカさんだって」
「あら、菊花賞を勝ったフクキタルに言ってもらえて嬉しいわ。走りましょうか」
「うぐっ、やはり話かけられた時点で逃げられない運命でしたか」
予想が当たったことに耳障りな声を上げたフクキタルに、サイレンススズカは笑って答える。
「逃げるのは私よ」
はあっ、とため息をつくフクキタル。入学以来の友人は、走ることに関して一切妥協しないのだ。
「仕方ありませんね、お姉ちゃんが待ってるので一本だけですよ。決めとかないといつまでも続くんですから」
制服を脱ぎ下に来ていた体操服姿をさらすフクキタル
「じゃあその一本で十本分おねがいね」
「いきますよ、よーい、ドン!」
フクキタルの合図から二人は走り出した。
≫86 二次元好きの匿名さん21/09/23(木) 23:34:57
2分後
「ま、負けました」
「いいレースだったわね」
1600mを完勝したサイレンススズカは、死にそうな顔をしながら肩で息を切るフクキタルに言った。
そこに、遠くからこの島の名物学級委員長の叫び声が届く。
「バクシンバクシーン、きんきゅうれんらくです! 海賊です。海賊がきましたよ~~!」
おびえるフクキタル、一方"近年の情勢(だいかいぞくじだい)"に疎いスズカはなんの反応もしない。
そこに遠くからまっすぐ、見知った見知らぬウマ娘が走ってくる。
変わらぬ姿に、思わず笑い声が出た。
「二年も遅刻よ、スぺちゃん」
「ごめんなさい! お詫びになんでもおごりますよスズカさん」
「もう、今じゃスぺちゃんのほうがずっと年上でしょう?」
「いえ、私にとってスズカさんはスズカさんですから」
大人の海賊と談笑するサイレンススズカに、マチカネフクキタルは顔を青ざめさせた。
「ススススススズカさん! 海賊の方と知り合いだったんですか!? しかもしかも、よく見ればその方は、総大将スペシャルウィークさんじゃありませんか!!!?」
事情がわからぬフクキタルを指し、スペシャルウィークは尋ねる。
「スズカさん、こちらの方は?」
「トレセン学園の同級生でマチカネフクキタルっていう子よ」
「なんで、どこで、どうやって知り合ったんですか!? しかも『さん』づけまでされる関係なんて」
「話せば長くなるし、きっと信じられないと思うわ」
海賊王の単語を出したところで、彼女は信じないだろう。自分だってあのおじさんが時代を変えた海賊王なんて冗談だと思っている。
口に手を当て、言葉を考える。
「スペちゃんと知り合いなのは、そうね……私が『異次元の逃亡者』だから、かしらね」
「い、い、いじげん!?」
「異次元の逃亡者! かっこいいですスズカさん!」
22年ぶりの再会は、決してドラマチックではなく
だけどウマ娘の夢が終わることはなかったのでした。
これにて閉幕
≫112 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 00:10:36
革命軍の本部にて、参謀を務めるセイウンスカイとサボは戦略ゲームに興じていた。
ただし、サボは百ある手駒を全て使っているのに対し、スカイは手駒を三十しか使っていない。
しかし、両者の実力は拮抗している。
それはつまり、スカイの戦術がサボを上回っているからだった。
「ほらほらサボく〜ん。この戦力差で拮抗って恥ずかしくないのかにゃ〜?」
「うるせぇ、だとしてもこれで俺の勝ちだ!」
ついにサボの手駒が王手をかける。
スカイの手駒一つに対して二つの割合で取られていたが、それでも王手は王手。勝ちは勝ちだ。
サボは立ち上がってスカイを指さした。
「さあ!約束通り…」
「ちょっと待って!」
なんでもいうことを聞くという命令権をかけて勝負していたのだが、その権利が果たされる前にスカイはサボの言葉を遮った。
「なんだ?負けは負けだぞ!」
サボは相当熱くなっている。冷静さを失っていた。
「ねぇサボくん。戦場ってさ、どこまであると思う?」
「どこまでって…そりゃあ」
「そう、戦ってる場所が戦場になる。だけどね、戦いのないところも戦場なのだよ」
「なにぃ?!」
スカイはそう言い切ると、突如としてスカイの手駒の残り七十が上から降ってきた。
彼女の能力で雲を生み出し、その上に駒を乗せて待機していたのだ。
「サボくんはさ、ずっと盤上を見てたでしょ?実はゲームが始まってすぐに仕掛けてたんだよね〜。参謀はさ、常に冷静で、周りを見ていないといけないの。誰も死なせちゃいけない。それが生命を背負う役職に就くってことだよ。…まぁ、その考えだと私も失格だね、三十も手駒を失った」
スカイは討ち取ったサボのキングを弄ぶ。
「だからこれは理想論。どれだけの損失をなくし、どうやってそれ以上の利益を獲得するか。それを常に考えて、ありとあらゆる手段で実行する…それが重要なんだよ」
「……」
サボは静かにスカイを見つめる。
「これを守ること。それが私の命令かな?」
彼女は生み出した雲の中に駒や盤をしまい、サボに背中を見られながら、すたすたとその場を離れていった。
{≫176 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 03:08:09
黄金世代+サイレンススズカによるコント 完全に悪ノリ
頂上戦争が終わり、それぞれ時間をとれるようになった黄金世代は、
トレセン諸島にある『バー不思議時空』に集まっていた。
「スズカさんとの再会を祝って、乾杯!」
「「「「「かんぱーい」」」」」
20年ぶりの再会を喜び、笑い、空白の時間を埋め合わせ、変わらぬ友情を感じそして、スズカのツッコミが始まった。
「まずスカイ、あなたに言うことがあるわ」
「おっとセイちゃんにどんな話でしょ。いい話ですよね」
「悪い話よ。なんであなた革命なんて始めたの?」
「うぐっ、それですか。いやセイちゃんも世界に思うところがあったというか、天竜人の暴走に嫌気がさしたというか」
「世界をどうこうしようと思わないランキングならナンバー2に入るであろうあなたが?」
「いやいや、真面目モードのセイちゃんならそうでもないですよ。それにまだ描かれてないだけできっとこの世界特有の回想がありますから」
「そこまでにしなさいスカイさん、メタネタは歯止めが利かなくなるわ」
「ちなみにナンバー1はだれなんデス?」
「マーベラスサンデー」
「スズカさん絶対その娘と面識ないですよ」
「次、エル」
「ケッ? エルはキャプテンと仲良くやってるだけですよ」
「脱獄はダメよ」
「いえいえちょっと待ってくだサーイ。インペルダウンに捕まったら一生飼い殺しデスよ」
「捕まるような真似して捕まって、大量の犯罪者と逃げるのはギルティよ。ロジャー船長を見習いなさい」
「スズカさん、船長見習ったら処刑されちゃいますって」
「今のあなたはヒーローでもベイビィフェイスでもなく、ただのヒールよ」
「エルはヒールじゃありまセーン!」
「エ~ル~今あなたは言ってはいけないことを言いましたよ」
「ケッ」
「タイキックだねこりゃ」
デデーン エル タイキック
「ナンデ!?」
暖簾をくぐって入店し、タイキックをするブルー・ギリー
≫177 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 03:08:24
「ううひどい目にあいました」
「次、グラスちゃん」
「わたしですね。まあ、いろいろやりましたね」
ぎゅっ
「よく頑張ったわね、あなたは自慢の友人よ」
「あっひどい」
「贔屓デス」
「私もスズカさんにギュッとしてもらいたいです」
「黙りなさい。実の父親と再会し、弟分に道を譲り、その両方を失った彼女は贔屓されるべき存在よ」
「そ、それを言われるとなにもいえないなぁ」
「認めマース」
「あなたがフェアリーバースをこの海に落としたとしても、私は許すわ」
「いえ、そこまではしませんが」
「スズカさん月をフェアリーバースって呼ぶの気に入ったんですね」
「次、キングヘイロー」
「ええ、一流の海賊になった私にどんな言葉をかけるのかしら?」
「最後はスぺちゃんね」
「ちょっとどういうことよ」
「あなたはなんというか、アプリ版みたいな順当な成長でいうことがないのよ」
「アプリ版!?」
「ドレスローザ編が終わったらコメントするわ」
「ドレスローザってドフラミンゴの縄張りで一体なにが起こるの!?」
「知らないわ、ローライスは繁栄したけどトレキンはまだ全然だもの」
「スズカさん、ストップ。またメタネタが始まってます」
≫178 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 03:08:49
「最後にスぺちゃんね」
「ハイ! あの、やっぱり遅刻はまずかったでしょうか」
「それは不問にするわ、一人収監されてたエルがいるもの」
「うう、謝ります」
「それよりもシャンクスさんよ、なんでくっついてないの」
「えっくっつくって、そんな私は」
「そういうのいいから。20年後ならもしかしたらスぺちゃんの子供と走る未来があるかもと思った私の期待を返して」
「あの感動の別れの裏でそんなこと考えてたんですか!?」
「当然でしょう、何のために一人で時を超えたと思ってるの。5人いればだれかの子供と同年代になると思ったからよ。まさか全滅とは思わなかったわ」
外から扉を半開にして覗くブルー・ギリー
「ハウスよ」
扉が閉まる
「さっきから気になってたんだけど誰なのよ? あの足が長い人」
「通りすがりの格闘家よ。ドレスローザ編であなたと闘うと思うから待ってなさい」
「さっきからなんなのよドレスローザ編って」
「それじゃあ最後に一つだけ言わせて」
「誰一人欠けることなく生きていてくれてありがとう。それだけでも私は幸せよ」
一息ついて、壁に寄りかかったまま眠り始めるスズカ
「眠っちゃいましたねスズカさん」
「いやはや最後に良いこと言って閉めるとか卑怯ですねぇ」
「まさかスズカの酒癖がこんなに悪かったなんて驚きデス」
「え? スズカさんは未成年だから麦茶よ? エル」
「ちょっと、ということはずっと素面だったの!?」
強制シャットダウン
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 53スレ目
≫48 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 13:50:42
海軍の保有する特殊軍艦、通称「レンジャー」に複数の大型鳥類が着艦した。
その鳥は鷲の大型種トムキャット・イーグル。最大で5メートルほどの大きさに成長し、その大きな体に見合うパワーを持つ。そのパワーを生かし、大砲や機関銃を搭載して空からの攻撃を行っている。
レンジャーに着艦した複数のイーグルのうちの先頭にいた個体から、1人の少女が飛び降りた。
「マヤ〜ランディ〜ング!」
少女の名はマヤノトップガン。
レンジャーを旗艦とする航空による戦闘を担う海軍特殊部隊「トップガン」で航空部隊のリーダーを務めるウマ娘である。
「トレーナーちゃーん!」
そんな彼女は、イーグル達を見つめる1人の男に駆け寄り、勢いよく抱きついた。
「うわっと…お帰り、マヤ」
彼はマヤノトップガンが乗り込むイーグルを育て上げた教官で、マヤの意中の人だ。
しかし、マヤは立派なレディを目指す海軍本部特務大佐ではあるものの、まだまだ少女。大人として手を出すわけにもいかず、彼は大人な態度で彼女をあしらっていた。
「どうだったどうだった?!マヤの飛ぶ姿見てくれた?!」
「見てたよ。いい飛行だった。マヤの飛ぶ姿からはイーグル達と一緒に飛んでて楽しいって気持ちが現れてる」
「えっへへ〜」
トレーナーに褒められてマヤはふにゃふにゃになってしまっていた。
そんなトレーナーの肩を、後ろからこの船の艦長を務め、マヤノトップガンの父でもあるチャーリーが叩いた。
「相変わらず君の鍛えたイーグル達はいいモノだ。…ところでなんだが、君はうちの娘のことをどう思っているのかな?」
ギリギリと肩を掴む手に力を入れる。しかし、トレーナーとしてマヤにカッコ悪いです所を見せるわけにはいかない。
歯を食いしばって耐えながら答える。
「す、素敵なお嬢さんですよ…!」
「きゃー!!」
マヤは顔を赤くして飛び跳ね喜んでいた。
そんな団欒が見られるこの部隊だが、任務における海賊の拿捕率は9割を超えるという。
≫116 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 20:18:27
いい感じにヒミツシリーズが出てる中、流れをぶった切ってしまうのだけれど、
上のマムとマルゼンの話について少し考えたので、投げさせて頂きます。
マムとマルゼンさんの条約の話、結構難しい案件だけど面白い設定だと思うから何とかできないかと考えて、
「マムは巨人族がいないのにエルバフに攻め入ったり、奴隷の巨人を連れて来たりしない」という点から、
マム的には「自分達のやらかし(ローラの結婚式当日出奔)による不義理が有る場合は、強硬策にでないのでは?」
と考え付いた(マムはマムなりに仁義を通すタイプみたいだし)。
で、そこから膨らまし粉で膨らませてみて…
昔、マムとマルゼンさんは兄弟杯ならぬ姉妹杯(上下関係のない対等な関係で)
を交わすくらいの仲で、若い時の酒の席とかで、
マルゼン「(マムの夢を聞いて)素敵な夢だと思うわ、リンリンちゃん」
マム「ハ~ハハママママ…だろう?マルゼン」
マルゼン「…けど、そうね…ウマムスメちゃん達をお迎えするときは、無理強いはしないであげてね」
マム「あぁん? なんだいそりゃ?」
マルゼン「お願いよ。そうだわ! 約束してくれたら、
年に一回リンリンちゃんのとこに激ウマスイーツを持って行くってのはどう?」
マム「はんっ、やっすい条件だね」
マルゼン「お願いよ~、リンリンちゃんとあたしの仲でしょ?」
マム「…ま、考えといてやるよ」
みたいな会話が有って、その後マムとマルゼンさんは子供への方針を巡って大喧嘩して、最終的にけんか別れ。
そんな風に別れはしたけど、マムの中でもその約束はしっかり引っかかっていて、
いざ種族を集めるって時にも、ウマムスメ族は後回しにしようかとか考えていた。
≫118 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 20:20:06
>>116
…そんな時に、夫の一人がマムにさらに取り入ろうとして、ウマムスメ族を無理やり連れて来てしまう。
マム「てめぇ…いくらけんか別れしたからってな、杯わけた奴との約束を、
おれの方から反故するような事をするたぁ、どういうつもりだ!」
『約束』に反した夫は寿命を全部ぶっこ抜かれ(夫が子供産んだらぽーいされるようになる)、
身内が不義理を起こしたため、マムは仁義を通すため他にやるような「招待」をウマムスメ族にはしなくなった。
で、マルゼンもマルゼンで、けんか別れしたけど何だかんだと毎年お菓子をマムに送っているし、
マムがあの約束を気に掛けている事については嬉しく思っている。
ただ、お互い顔を見合わせたら殺し合いはする(それはそれ、これはこれの精神)
なんだかんだ、マムってカイドウとの様子みたりすると身内判定した相手には甘かったり、
けんかも一種のコミュニケーションみたいになってたりするし、でこういう関係もありかなーと思って。
≫119 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 20:21:43
ワノ国編にはローとはぐれてしまったのでサン五郎の十八番そばで看板娘やってるおコメちゃんがいたはずだしその後ローと合流したときに
ロー「おい黒足屋…お前まさかライスに妙な真似してないだろうな…?」
サンジ「誰がするかこんな小さい子に!」
ライス「サンジさん!ライス小さい子じゃないよ!」
サンジ「あ、ああ。そうだな、ライスちゃん。ごめんな」
ライス「ライス27歳だもん!」
サンジ「そうだよな27歳…………27歳!!?」
って流れで年齢バレしてたはずなんだ
≫120 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 20:27:22
≫119
個人的な好みで言わせてもらうが
具体的な数字をライスから言うより
「ライスのほうがお姉さんだよ、6つも」
「はは、そうだねライスちゃんはお姉さんだね。……6つ? てことは、27歳!?」
のほうが好み
≫132 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 21:26:37
ライスに「少しくらいレディ扱いしてくれてもいいと思うの。……サンジさんみたいに」って言われたときに
「……なんでそこで黒足屋が出てくるんだ」とやや嫉妬心を露にするローと
「? じゃあ黒足屋に頼んだらいいだろ」とクソボケムーブかますロー
どっちが好みですかローライス有識者の皆さん
≫134 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 21:52:27
ルフィ 「へぇ、スペ姉ちゃんの母ちゃんって母ちゃんじゃなくてばあちゃんだったのか」
マルゼン「うふっ、まだまだ若くみえるでしょ?」
ルフィ 「じゃあくれはのばーちゃんと同じくらいか」
マルゼン「違うわ(表情筋死んだマジトーンボイス)
≫139 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 22:08:13
「そうだぜ。その島は鳥ばかりで、人間と鳥がずっと争っていたんだ。
だが、そこにおれが一言! 『お互い、そろそろ仲良くしようぜー』」
「えー、ウソみたーい」 「ほんとー?」 「鼻ながーい!」
トレセン諸島のウマ娘達が円を作り、その中心ではウソップが朗々とホラ話をしていた。
話の真偽はともかく、島外の人間が珍しいためか、ウマ娘達は喜々と話に耳を傾けている。
「おいおい、おれは七つの海を巡る、勇敢なる海の戦士だぜ。
この島にだって、同じく勇を競い合うレースを見に来たんだ」
「じゃあざんねーん、レースは今やってないんだー」
一人のウマ娘が応えると、他のウマ娘達も眉を寄せて寂しそうに同調した。
行方不明事件の多発により、今はレースを中止していると聞くと、ウソップも眉を顰めた。
「そっかー。サイレンススズカも骨折してるし、何だか大変なんだな……」
「そーなの。でも、本当はみんな島から出たがってるのかも……」
「ファル子みたいに、島の外で活躍したい、って子もいるもんねー」
気持ちの沈んでしまったウマ娘達を前に、ウソップは重々しい咳払いを飛ばした。
それはトレセン諸島に訪れたウソップが、密かに抱いていた願望だった。
「おほん! 諸君、――――おれはアツいレースを見たい!」
「小さな島でたった二人、誰も知らない巨人同士の決闘がある!」
「おれは、それにも負けないレースが、みんなのレースが見てみたいんだ!」
今までの話と違い、真に迫った声を前にしたウマ娘達が顔を見合わせる。
そして、全員がウソップをじっと見ると、にっこりと笑って声を出した。
「だったら、レースが始まるまでは、この島にいてくださいね!」
「当たり前だ、最前列で応援してやるから、みんなで一着になれよな!」
≫140 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 22:08:35
地方島の中には様々な理由でウマ娘の移住後に遺棄された島があり、
キョーシ達が奴隷船を停泊していたネギシ島も、その一つだった。
ウマ娘達を“チョカチョカの実”によって囚えたバッシュ達は、
シャボンディ諸島から来島する大型奴隷船の到着を待っていた。
「ロビンが抑え込んでも時間がねぇ!」
「ウソップ、チョーカーのヤツはこの建物の中だ!」
獣形態となったチョッパーに騎乗したウソップは、チョーカーの匂いを頼りに、
競技場の中へと飛び込み、そこには十数人のウマ娘達が昏い目のまま立ち尽くしていた。
そして、その中心にはデップリと太った男が、旨そうに葉巻を燻らせている。
「喋るトナカイに長鼻族、おめぇら売ったらいくらになるかな?」
「黙れ! みんなを離せ!」 「そうだ! それとおれは人間だからな!」
チョッパーとウソップが吠えるが、バッシュは余裕を崩さない。
バッシュは握った右手を口元に掲げ、冷たい声色で告げる。
「ウマ娘、こいつらを捕らえろ。二人はおれを守れ」
瞬間、ウマ娘達は頷き、無言のままチョッパー達に殺到した。
思わず飛び退くチョッパー、ウソップは急な態勢返還にも動じず、
引き絞ったパチンコでバッシュに狙いを定め、指先を離した。
「必殺・火薬星、――――予めゴメンバージョン!」
だが、その一撃の前にウマ娘の一人が飛び込み、バッシュの身を庇った
顔を蒼褪めさせたウソップが、“卵”を被ったウマ娘に思わず謝罪を漏らした。
火薬星と偽っての卵星、ウマ娘のスピードを確かめる為のウソを交えた牽制だった。
≫141 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 22:08:57
「すまん! ……だがやっぱり、ウマ娘を何とかしないとダメだ」
「ウソップ、このままじゃあ追い付かれちゃうよ!」
ウソップを乗せたままではチョッパーの速度にも限界があり、悲鳴と共に伝える。
ウマ娘達は単純な動きながらも、数による包囲網はじりじりと迫りつつある。
ウソップはがま口バッグから次弾を取り出し、バッシュの足元へと狙いを定めた。
「必殺・煙星!」 「無駄なあがきを、商売のジャマをするな!」
室内に立ち込める煙幕を前にしても、バッシュは堂々としていた。
ボディーガードのウマ娘をピッタリと付け、滅多な動きを取らない。
やがて、大きな物音に気付いた時、バッシュは再び握った右手を口元に当てた。
「ウマ娘二匹、足元の男を捕まえろ!」 「ウソップハンマー!」
鉄槌が空を切る。ウソップの両腕を二人のウマ娘が捕らえる。
地面に押し倒されたウソップは身動きが取れず、それは背後のチョッパーも同じだった。
チョッパーが大振りの両角でウソップをバッシュの下へと飛ばす奇襲作戦だったが、
それは狙いに気付いたバッシュによって見切られ、かくして作戦は失敗に終わったのだ。
「クソッ、離せ! みんな操られてるんだぞ!」
「おれの命令は絶対だ。なあ、長鼻君。そっちこそ観念したらどうだ……?」
チョッパーは人型になってウマ娘達の拘束を解こうとするが、ウマ娘の腕力は魚人にも匹敵する。
ウソップは地面に張り付いたまま、バッシュの声に耳を傾けている。
「ウマ娘など、孤島に引き籠って身内だけのレースに興じるだけの下等種族。
海に出れば海軍の小間使いか、島々を荒らすならず者に堕ちるが精々だ。
その力を海を統べる強者が使い、おれ達人間が利益を得る……」
≫142 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 22:09:13
「いい商売じゃないか? 悪い芽を摘み、その世界に力を活かすんだ。
なあ、何の文句がある? おまえを売るなんて冗談だから、本気にするなよ」
バッシュの足首がウソップに掴まれる。その弱弱しい手を蹴り放ち、思い切り踏み付ける。
「おれは……孤島で闘い続ける二人の巨人を知っている」
「なんだそれは? 新しい儲け話か?」
「おれは、それを見て……心の底から震えた……」
操られているウマ娘達の中には、ウソップの話を聞いていた少女達もいた。
あの時に見せた瞳の輝きを失い、首輪によって人形のように従う者ばかり。
ウソップは激高した。戦士の戦いを邪魔する男を許せるはずがなかった。
「お前がバカにするレースだって、みんな必死でやってるんだよ!
それを汚い金儲けごときで、全部おじゃんにするんじゃねぇ!」
「おい、ウマ娘。そのバカの首をへし折れ」
二人のウマ娘が非情な命令に従い、ウソップの首に手を掛ける。
だが、そこから動かない。業を煮やしたバッシュが怒号を上げる。
「何をしている! さっさとそいつらを殺せ!「冗談だから、本気にするなよ」
バッシュは耳を疑った。自分の発した声が、何者かの声に上書きされる。
拘束を解かれたウソップが立ち上がる。鉄槌の頭を握り潰し、紙製の頭から貝を取り出した。
「空島で手に入れた音貝“トーンダイアル”だ。
お前がずっと口で命令してるから、このチャンスを待ってたんだ」
「なんだ、それは? 見たことも、聞いたこともない……」
≫143 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 22:09:40
「商売人の癖して、アンテナ狭いんじゃねぇのか?」
「ほざけ! コイツらを取り押さえろ!「冗談だから、本気にするなよ」
バッシュは腰の銃を抜こうとするが、突如として壁際まで吹っ飛ばされた。
拘束を解かれたチョッパーによる、猛烈な体当たりだ。
「今度はマジだ、――――“必殺・火薬星”!」
一人、壁際まで追い詰められたバッシュに、もう身を護る盾は存在しない。
強烈な爆発音が響き、黒焦げになった葉巻を口から落とし、バッシュは意識を失った。
「おれはウソつきだから、ウソの命令くらいお手の物だぜ」
そして事件が解決した後、宴の最中で急遽開催したレースでは、
ウソップの助けたウマ娘達が全員出走し、彼は最前列で応援旗を振り回していた。
走り終えたウマ娘達の下にウソップは走り寄り、感動からの号泣を露わにしていた。
「みんな、結果はともかく、宴のレースでも真剣にゴールを目指してた!
全員、これからもこの島とレースを守り抜き、懸命に走り続けてくれ!」
「はい、ウソップトレーナー!」
二年後、トレセン諸島は世界政府加盟国となり、海列車の開通によって来島者は格段に増加。
観光客が目当てとするレース場では、名うてのウマ娘達とも引けを取らないウマ娘達がいた。
“チーム長鼻”と称する彼女達のレース結果は、まだ誰にも解らない。
トレセン諸島バッシュvsウソップ&チョッパー想像。
尺の関係もあって、チョッパーがあまり活躍させられなかったけど、
キョーシが盛った毒の治療とかバッシュの位置特定には、チョッパー必須とここに書いとく。
≫187 二次元好きの匿名さん21/09/24(金) 23:54:02
「大切な女を取り戻したい」とベポシャチペンギンに話したらいつの間にかハートの海賊団内では「キャプテンはドフラミンゴから恋人を取り戻そうとしてる」ことになってていざゾウでライス連れて合流したら「キャプテ〜〜〜ン!!ドフラミンゴを倒せたんだねーーー!」「ということはあれがキャプテンの…」「ああ、恋人だ」「思ったよりちっこいな…」「まさかロリ……」「おいよせよ聞こえるだろ」とヒソヒソされるロー(全部聞こえてる)とか
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 54スレ目
≫17 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 00:22:53
【ウマムスメ曇らせステークス】
「美しい青空が広がるトレセン諸島レース場。ターフも絶好の良バ場となりました」
「名勝負になる舞台は整いましたね」
「3番人気はこの子。トウカイテイオー」
「一緒に育った兄弟分が海賊になった上に目の前で殺されました。何も骨折まで原作再現せんでも」
「この評価は少し不満か?2番人気はマチカネフクキタル」
「普段は明るい子が胸の内に重いものを抱えているのは私の性癖に合っていますよ」
「1番人気を紹介しましょう。ライスシャワー」
「曇らせとの親和性が高すぎる娘をドレスローザとかいう曇らせの聖地にぶち込んだ結果がこれだよ」
「客席のドフラミンゴとローの火花散らすデッドヒートに期待しましょう。それはそうとゲートが開いたッ!!」
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 55スレ目
≫13 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 02:26:00
パッと思いついたドレスローザのマックとゴルシが協定を結ぶシーン
「マックちゃんよお、いくらなんでも水臭いぜ」
「ゴールドシップさん!? どうして」
「ゴルシ様はマックちゃんのいるところならどこにでも現れるんだぜ!……海軍離れてでかいブツとりにいくんだろ。協力させてくれよ」
「……そこまで知られてるならいいでしょう、正直猫の手だろうと借りたいところです。行きますわよ!」
「メラm「ドフラミンゴの首を獲りに!」……ドフラミンゴの首を獲りに」
シーン
「ゴ・ル・シ・さ・ん?」
「おーし一蓮托生ってやつだ頑張ろうなマックイーン!」
「このおバカ!!」
≫40 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 06:38:15
朝の誰もいないうちにキタちゃんと黒髭とキタちゃんの因縁の始まりに繋がるにテイオーVS黒髭のSS置いておきます
キタちゃんとテイオーの決戦の後に黒髭がくる感じ
「強くなったね、キタちゃん。まさかもう追いつかれるなんて思ってなかった」
「まだまだです。強くなったつもりだったけど結局追い越せませんでした」
ボクたちはボロボロなまま地面に大の字で転がって笑いあっていた。
戦う前は随分と思い詰めた顔をしていたけどいつものキタちゃんに戻ってくれて良かった。キタちゃんを追い込んでしまったのはボクだけどやっぱりキタちゃんには笑顔でいて欲しい。
「キタちゃん、どうせならボクと一緒にくる?歓迎するよ」
「それは遠慮しておきます。今は最年少中将でルドルフさんの後釜として期待されてますから」
「う、わ~完全にボクの居場所取られてるじゃん」
冗談めかして笑い合うボク達。楽しい時間だがそろそろ離れないとキタちゃんの部下がくるかもしれない。折れた左足が未だに痛むが立ち上がる。うん、めっちゃ痛いしこれはまたみんなに怒られる。
そこでボクは背中に何かゾクりとするものを感じた。全てを飲み込まんとする闇のような意思。頂上戦争の時に感じた最悪な感覚。遠くでバキっと何かがひび割れる音がした。
気づいたらボクはキタちゃんに覆い被さっていた。
≫41 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 06:39:20
「テイオーさん!?」
突然のことにキタちゃんが声を上げた次の瞬間、ボク達はとてつもない衝撃の波に飲み込まれた。
島を、海を、世界そのものを揺らす衝撃。天地が何度もひっくり返って全身がぐちゃぐちゃに潰されるような感覚と痛み。それでもボクはキタちゃんを決して離さないように抱きしめた。
グラグラの実。かつて世界最強の男白髭が持っていた世界を滅ぼす力。それを今もっているのは──
「ゼハハハハハ!! 海賊が海兵を庇うとはな!! こいつは傑作だ!」
黒髭マーシャル・D・ティーチ。ボクの義兄エースを捕らえ、その死の遠因になった男。
「黒髭っ……どうしてここにっ!」
「がはっ!ゴホッゴホっ!」
「テイオーさん! そんな、私を庇って……」
良かった。キタちゃんはなんとか無事みたいだ。でも参ったな。今ので残ってた右足の方も折れちゃったみたいだ。この吐血量からして内臓も結構痛めてるかな。でも、弱音を言える状況じゃない。
≫42 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 06:40:50
「狙いはキタちゃんのブレブレの実……?」
「そうさ!グラグラの実と同じ世界を滅ぼす力、どうにしかして手に入れられねぇかとチャンスを待っちゃいたがここまでの美味しい機会が回ってくるとはなぁ!エースといいお前ら兄妹は俺にチャンスをくれるらしい!」
「……それをボクがさせると思う?」
「ゼハハ、やめとけ。力を使いきり自慢の足も折れた。それで何が出来るって?大人しくしてりゃお前は見逃してやってもいいんだぜ。黒渦!」
「あぅっ!」
「キタちゃん!」
黒髭が闇の引力でキタちゃんを吸い寄せその手で掴み捕まえる。
不味い。キタちゃんはもう体力を使いきってる。ヤミヤミの実で能力まで押さえ込まれたら逃げることは出来ない。
「離、せ」
「ゼハハ、今ならブレブレの実の力もヤミヤミの実で抑えきれる。逃れられねぇよ」
「その手を、離せ。エースだけじゃなくてキタちゃんまでお前なんかに奪われてたまるもんか」
折れた足を覇気で固定しろ。立ち上がれ。後でどうなって知るもんか。今戦わなきゃボクはまた大切な人を奪われる。もう絶対に奪わせない。
「やめとけよ、いくら言葉と信念を並べたところでこの海じゃあ──生き残った奴が絶対だぁ!」
黒髭が大きく腕を振りかぶる。グラグラの実。世界最強の力。満身創痍の身体でどうにか出来る相手じゃない。目前に迫る絶対の死。
でも、それがどうした
「ボクは、無敵のテイオーだぁ!」
≫43 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 06:41:52
全力の一撃で迎え撃つ。世界を揺らす圧倒的衝撃がボクを襲う。折れていた足の骨が粉々に砕けるのを感じる。肉がぐちゃぐちゃになって血管が破裂していく感覚。構うな。覇気で無理やり押し固めろ。心臓と肺が痛い。破けちゃっても知るもんか。
「ぁぁああああ!!」
ここでボクが負ければキタちゃんも殺される。当たり前の事実から目を背けるな!
「世界を滅ぼす白髭の力だぞ!それを蹴りで受け止めるなんざ、それじゃまるで皇帝の神威じゃねぇか!?」
黒髭が何か騒いでる。痛みでよく聞こえない。うるさい。そんなことより
「その、手を、離せぇぇぇぇっ!!」
「うぉぉっ!?」
黒髭の腕を蹴り飛ばしてキタちゃんを奪い返す。血が目に入ってよく見えないけど見聞色で無事なことは分かる。良かった、ボクは今度こそ大切な人を手に掴めた。
「テイオーさん……」
「キタちゃん……よかった無事で……ちょっと離れててボクがなんとかするから動けるようになったらすぐに逃げて」
キタちゃんをゆっくりと地面に下ろして。再び立ち上がる。
どうしてかあの時、ルフィを庇ったエースの姿を思い出した。
≫44 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 06:42:26
「キタちゃん、悪いけどさ。カイチョーにまだ何も伝えてられてないんだ。代わりに迷惑かけてばっかな娘でごめんなさいって。後、ボクはカイチョーがママで世界で一番幸せだったって伝えてくれるかな」
「やめてください……」
「それとコビーには最近どんどん出世してるから調子に乗らないように大将になって海賊王になったルフィを捕まえるなら急がないと間に合わないぞって言っておいて。ヘルメッポには頑張らないとどんどんコビーに追いつかれちゃうぞって」
「待って……」
「サトちゃんには、マックイーンはああ見えて誘惑に弱くてスイーツの食べ過ぎで太ったりするから気をつけて見張るようにってアドバイスしておいて」
「……いやです……」
「……それとマックイーンには……約束守れそうにないからごめんねって。君はボクの憧れだったからいつまでも強くて格好いいキミでいて欲しいって伝えてくれるかな?」
「──そんな今から死んじゃうみたいなこと言わないでください!」
眼が霞んでよく見えないけどキタちゃんの涙声が聞こえる。一杯泣かせちゃってるんだろうなぁ。
「また泣かせちゃったね。キタちゃんにはそんな顔して欲しくてなかったんだけど、こんな駄目な先輩でごめんね」
「そんなこと、ありません! わたし、テイオーさんに、憧れて、テイオーさんにみたいになりたくて……今でもテイオーさんは、わたしにとってっ……!」
「ありがとう。ボクもキタちゃんみたいな子に憧れて貰えて嬉しい。そんなキタちゃんだから──一つ、お願いを聞いて欲しいんだ」
エースを助けるために海軍に抜けて海賊になったことに後悔はない。でも思い残しがなかったわけじゃないんだ。だから
「ボクの夢──キタちゃんに託してもいいかな?」
「~~~~~~~~~~~っ!!!!」
≫45 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 06:43:55
キタちゃんが何度も力強く頷いてくれる気配。本当にボクには勿体ないくらい最高の後輩だよキタちゃん。
エースの死に顔がどうしてあんなに穏やかだったか、今ならなんとなく分かる気がする。
「ゼハハ、別れの挨拶は済んだか?」
黒髭は笑いながら待ち受けている。余裕たっぷりといった雰囲気だ。ボロボロなボク達なんてどうとでもなると思ってるのかそれともリスクを楽しんでるのかな
「わざわざ待ってくれるなんて気前がいいね」
「エース隊長の妹の最後なんだ、遺言を遺す時間はやるくらいの義理人情はあるさ。といってもそっちのやつを逃がすつもりはねぇがな。ブレブレの実は手に入れる。それは絶対だ」
ヤミヤミの実とグラグラの実の力を手に入れて白髭の縄張りを奪い取って四皇の一人になったっていうのにまだまだ力を求め続けるなんて、きっとこの男は富み、名声、力、この世全てを手に入れるまで止まらないんだろう。
「人の夢は終わらない……だっけ?」
「ん?麦わりにでも聞いたか?ああ、そうさ!白髭がいった通り一繋ぎの大秘宝は実在する!人の夢は終われねぇ!!そうだろ!!」
「……君の言うことでもそれだけは同意件だよ。そうだ、人の夢は終われない」
エースの遺志をルフィが継いだように。世紀末覇王の願いを海軍の勇者が叶えたように。ボクがカイチョーの背中を憧れてそれを目指して走ったように。そんなボクにキタちゃんが憧れてくれたように。
人の夢は、意思は、願いはどこまでも続いていく。
「──でもお前じゃないんだよ、黒髭」
「あん?」
「──『あの人』が待っていたのはお前なんかじゃない」
≫46 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 06:45:05
海賊王ゴール・D・ロジャー。一繋ぎの大秘宝を手に入れ大海賊時代を始めた男。多くのウマ娘が奴隷狩りに苦しむ原因を作った男。エースは大嫌いだったし、ボクも当然大嫌いだ。
でも、ロジャーの話をする時のカイチョーの顔はボクは大好きだった。
だからなんとなく分かる。あの人が待ち望んでいた人間は決して黒髭、お前なんかじゃない。
「だから、絶対にお前に一繋ぎの大秘宝は渡さない」
それはカイチョーの愛した人が未来へと託したものだ。
「絶対に、お前を海賊王にはさせない」
それはボクの大切な弟の夢だ。
「絶対に、もうお前には何も奪わせない」
一繋ぎの大秘宝も、海賊王も、ボクの大切な仲間達も、キタちゃん…ボクの夢も、絶対に。絶対に。
「かかってこい!────絶対は、ボクだっ!!」
≫49 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 10:11:45
フンギャローと鳴くフクキタルがお約束になりつつある
「フンギャロー!!フンギャロー!!」
「大変だ!フクが鳥になった!」
「なんだと?催眠術師か能力者でもいんのか」
「あの、私ここにいますけど」
「それはただのデカイ鳥だよ!」
みたいなやり取り珍獣島のチョッパー王国辺りでありそう
≫55 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 11:22:59
ゴア王国ルートの幼少期ネイチャさんを書きました!
お収めください!
船が揺れる。
小さな窓から漏れる光が顔を照らす。
聞こえるのは絶望に嘆く私達ウマ娘の泣き声だけ。
──ここは奴隷船。各地から攫われたウマ娘たちが載せられた船である。
あたしの名前はナイスネイチャ。トレセン諸島で日々平和に過ごし、悪人に騙されホイホイとこの船に載せられた……モブ手前のウマ娘だ。
首に着けられた爆発する首輪の重さもさることながら、これから自分が辿る運命というヤツを考えれば何から何まで陰鬱な気分になる。
そんなこんなで一ヶ月ほど経過。
私は東の海のゴア王国のとある貴族に買われた。
GLのトレセン諸島から東の海の世界政府加盟国に飼われることになるとは……ほんの一ヶ月前まで考えもしなかっただろう。
「さて……ウマムスメよ。君はあと三ヶ月ほど後に視察に来る天竜人への贈り物として買われたんだ。脱走なんて下らぬことを考えないでくれよ?」
「はいはい、分かってますって」
「……”はい”は一度だ!」
「きゃあ!」
軽い反抗心まじりに返答したら蹴られた。薄汚れた簡素なワンピースが更に痛む。もうこれしか一張羅がないってのに。
というかこれ、飼い主さんうちらウマ娘に前時代的な偏見をもっているやつですね。
「家畜風情が……人間の言葉を使うだけで薄気味悪いというのに、反抗心なんてモノを見せたらその時は鞭打ちの刑だ」
「……はい」
「そこの下男、コイツを厩舎にでも放り込め」
「かしこまりました。ついて来い、ウマ娘」
え、マジ?
≫56 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 11:24:11
モーモー、モーモー。牛の泣き声が鼓膜を揺らす。
「ここでいいか?」
「……馬小屋はないんですか?」
マジだった。しかも連れてこられたのは牛舎。うちらは牛じゃねぇっての。
「それもそうだな。君たちは家畜だとしても、同族のいる場所の方がいいか」
「……そっすね」
いや、いくら何でもここ前時代的過ぎね? なんかもう、文句を言うのも面倒に思えてくる。
そんなこんなで馬小屋に放り込まれた。なんでも先日、一頭馬が死んだそうでその分の馬房が空いていたそうな。だったら最初からこっち紹介しろよ。というかアタシに一軒家を寄越せ。
「餌は飼葉でいいか?」
「……うちらの食事は人間と大体同じですよ?」
「? 馬鹿なことを言うな、馬が肉を食うわけ無いだろう」
「…………まあ、馬が食べれるものはうちらも食べられますよ。食事量は馬並みなので、そこらへんよろしく」
「ああ、君が風邪を引いたりしたら困るのはこっちだ。引き渡す日まで健康でいてもらうぞ」
「そっすか……」
籠に盛られた飼葉を口に運ぶ。……食えることは食える。ただ、たまらなくおふくろの味ってヤツが恋しくなる。
もっしゃもっしゃと飼葉を口にアタシを見て安心したか、下男の彼は厩舎を出ていった。
もっしゃ、もっしゃ。
もっしゃ……もっしゃ。
……もっしゃ……もっしゃ……。
≫57 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 11:24:21
「……やっぱり会いたいよ、お母さん、オジさん……」
あー、ダメだ。どうしようもなくメンタルにクる。今まで必死に考えないように、思わないようにしてきたことが脳裏によぎってしまう。
頬を伝う水滴が飼葉を濡らす、今まで流さないようにしてきたモノがこぼれ落ちていく。
「ダメだよ……涙なんて、流さないでよ……流しちゃったら、もっとキツくなるじゃんか……!」
声を必死に押し堪えて啜り泣く。視界がぼやけて仕方がない、望郷の念が赤裸々に、アタシの心を傷つける。
「……へ?」
馬が一頭、アタシの側に寄り添う。大方抜け出してきたのだろう、ただ何も言わずに彼女はアタシに頬を擦り付けてきた。
「うん……うん、ありがと。しばらく、寄り添ってくれるとありがたいな……」
あたりを見渡せば、厩舎にいる馬全員がアタシのことを心配そうに眺めている。なんか、少し照れくさい。
アタシらウマ娘は人魚と同じように馬と心を通わすことができる。だから、ウマ娘にとって馬というのは掛け替えのない隣人のようなもの。そんな当たり前のことを今更ながら有り難いと思う。
泣いた、凄く泣いた。その間、ベアーブロッサムはずっと寄り添ってくれて、その大きな身体でアタシを暖めてくれた。
「あー、泣いた。ありがとうベアーブロッサム。また、寄り添ってくれると嬉しいな」
彼女、ベアーブロッサムはまたも何も言わずにアタシの馬房から出ていった。こんな時は案外寡黙なヒトが相手の方が心休まるというものか……。
「ま、なるようになる。天竜人に引き渡されるにしろ何にせよ、アタシは絶対故郷に帰ってやるんだ!」
決意を新たに固めて、寝藁に身を投げネイチャさんは眠りにつくことにしたのであった──
≫58 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 11:24:57
三週間経過、わかったことと言えば下男さんやこの国の人間は本気でアタシを馬と同列に視ていることというぐらいか。
なので、ええ、ピンからキリまで馬と同様の生活を送らされるネイチャさんです。羞恥心は最初の一週間で死んだよ……。
放牧地で寝っ転がりながら雲を眺める。先日鞭打ちされた所がヒリヒリと痛んで辛い。
これまでに鞭打ちされた回数は計三回、いずれも理由は反抗的だから。……いいじゃないですかシャワー個室を要求したって。あと尻尾ケア用のトリートメントはウマ娘にとって生活必需品ですよ?
それに一張羅はボロボロ。元々悪い肌触りも壊滅的だし、臭いし……変えが欲しいです。つーか新しい下着を寄越せ。
あーだめだ。飼うにしたってその動物の情報はきっちり集めるのは飼い主としての責務ですよ? 今頃仲間たちはどうしてんだろ、良い飼い主に買われていると良いのだが……故郷に帰っていたらもっと良いんだけど……それはそれとして少し恨む。
──ぐぅ~。……お腹が減る音がする。
放牧地に生える牧草は少し食べにくい。身体の構造が人間に近いアタシらは牧草を食べる際にいちいち手で千切ったりしないと食事しにくい。……白米が恋しい。
死んだ魚みたいな顔をしながら空腹なお腹をどうしようか考えていると、ベアーブロッサム何も言わずに近づいて来た。
「ん……ああ、ありがと。ごめんね、こんなアタシのために……」
ベアーブロッサムの張ったお乳に口を着ける。温かい……馬乳を飲む溢さないよう必死に飲み込む。ベアーブロッサムはちょっと前まで仔馬と一緒に過ごしていたようで、そのためおっぱいもお乳が出るようになっていたそうだ。……当の仔馬はアタシが来る前に病気で死んじゃったみたいだけど。もしかしたら、アタシが今住んでいる馬房がその仔馬の部屋だったのかもしれない。
≫59 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 11:25:44
「フム、やはりウマムスメ族というのは家畜同様卑しい生き物のようだな。視給え、あんなに必死になって乳を飲んでおる」
「…………ぷは、ありがと。ううん、気にしなくていいよ、あなたたちに助けられているのは本当だし、感謝の気持ちも持っているんだから」
あー、不愉快。何が不愉快って可愛い馬のみんなまでバカにされているのがたまらなく不愉快に思う。やっぱアイツ飼い主としてド三流でしょ。
アタシの現飼い主さんは時折こうしてアタシの様子を眺めに放牧地に顔を出す。……アタシを縛るこの首輪の鍵と一緒に。
護衛は五人、捕獲用のネットを射出する猟銃を抱えている。……隙を見せてくれたらワンチャンなんとかなりそうなんだけど……こんな感じじゃ例え鍵を奪えても直ぐに捕まっちゃうし、護衛を倒してもその間にドカンと爆発するだろう。なんでも、アタシはサプライズプレゼントらしくアタシの存在を天竜人は知らないみたい。だから、例え今この瞬間アタシが死んでも飼い主さんにとってはお金が無駄になる程度でそれ以上のダメージは存在しない。だから、アタシが脱走しようとしてやむを得ずこの首輪を爆破する可能性は十分にある。
んー、うちらのことを全然知らないくせに無駄に頭が廻るご様子。こまった、脱出する方法が思いつかない。ほんと、ちょっとで良いから隙を見せてくれないかな~……なんて。
そんな都合のいいことは起きず、飼い主さんが引き上げようとした瞬間──突然、地面をドタドタと急いで走る足音が聞こえた。
足音の持ち主はあの下男くん。焦った様子で報告に来たようで……。
「どうした急に!?」
「申し上げます! 下町にて貴方様の経営するレストランにあの悪童三人組による食い逃げ事件が発生しましたァ!!」
「ダニィ?! お前ら、今直ぐ捕獲に向かえ!」
「は!」
≫60 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 11:27:14
──今ッ!!
一息に柵を飛び越え飼い主さんの頭を思いっきり蹴っ飛ばす!
「がァッ?!」
「ッウマ娘貴様ァ!?」
動揺した護衛さんたちは銃を構えるけど、少し遅い!
「やァ!」
「グぅっ!?」
一人、二人、三人! 力任せな型もクソもない力技で強引に三人の意識を奪う。
「これ以上の狼藉は許さんぞ! 喰らえい!」
「しまっ──え……」
構えられた銃口、銃声が鼓膜を揺らすも捕獲用ネットは一向に着弾されず……ベアーブロッサムに当たる。
「っ~、やぁああああ!!」
「ぐはァ?!」
残りの二人を倒す、けど……ベアーブロッサムは……。
「…………」
「うん、そっか。今まで、ありがとう。私は……いくよ」
飼い主さんの懐から鍵束を取り出し、首輪の鍵を探す。一番目、二番目……三番目アタリ。
こんな所でも3に縁があるとは……少し複雑な気持ちになる。
「居たぞ~!」
「ウマ娘が脱走している~!」
「っ、嘘! もう来たの?!」
放牧地の下の方から衛兵たちの声が聞こえる。こんな直ぐに追手が来るとは思ってなかった……!
「そういえば下人くん居ないじゃん!」
今更になって失態に気づく。後悔先に立たず、ひとまずここは逃げ出さないと……!
ネイチャさんは全力で、自由を求めて……故郷に帰るために走り出したのであった……。
≫61 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 11:34:14
此度も性癖ゼンカイで書きました。不快でしたらごめんなさいね。
脱走したネイチャさんはこの後グレイターミナルでテイオーに出会ったりします。
コルボ山極悪4兄妹と友人になったり、一緒に冒険したりするといいな。
多分、ネイチャはテイオーの船(海軍)にのってトレセン諸島に帰ろうとするんだろうな。あと、ボロボロの衣服を見かねたダダンが自分のお古をネイチャに上げると思う。
……というか絶対ダダンはネイチャを気に入ると思う。2ポンド賭けてもいいよ。
それと、サボがブルージャムと父親に連れ去られようとした時、テイオーがウマ娘だとバレて脱走したネイチャの代わりにと連れ去られたときにネイチャが駆けつけて救出、エースとルフィが殿となった結果ウマ娘陣はコルボ山に逃げ込むことが出来たと想像。
グレイターミナル焼却時にはスラムの人達を助けようと悪戦苦闘、死にかけたときにドラゴンら革命軍の救出が間に合って、ドラゴンの船にネイチャさんは乗り込むと思う。
≫78 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 12:25:16
いいのかな?投下しちゃう
前に書いたNovel LAWを元にした話のその後です
――偉大なる航路 海上
ゆったりと海を進む船。掲げられるは海賊旗。
ボーノ☆ボーノ号の厨房で、身体の大きなそのウマムスメは今日も今日とて船員達の朝食を巨大な鍋でぐつぐつと煮込んでいた。
「どれどれ〜……よしっ!今日の朝ごはんもとってもボーノ!だね!」
出汁を小皿に少し取って味見をし、にっこりと笑顔を浮かべる。
彼女の名はヒシアケボノ。穏やかな気性と(色々とおっきくて)可愛らしい容姿とは裏腹に、懸賞金のかけられたれっきとした海賊であった。
火を止めてパン焼窯からパンを取り出したところで、ドドドドド……と慌ただしく走る音が聞こえてくる。
程なくして、バンッ!!と大きな音を立てて厨房の扉が開かれた。
「ボノボノボノーーー!!大変だーーー!!」
「あ、ビコーちゃん。朝ごはんもうすぐ準備できるから、あとちょっとだけ待っててね〜」
バタバタと駆け込んできた小柄なウマムスメ――ビコーペガサスに、ヒシアケボノはにこにこと笑って返した。
こうして見ると身長差もあってまるで姉妹のようだが、この二人、こう見えて幼馴染みで歳も殆ど変わらないのであった。
「そうじゃなくて!これ、見てくれ!!」
ビコーペガサスは持っていた朝刊をバッと広げた。
新聞に大きく掲載されていたのは海賊の手配書だ。この大航海時代、懸賞金のかけられた海賊はそう珍しくはない。
手配書の写真に写っていたのは帽子を被った男だった。しかも、懸賞金の額は億を越える高額ときた。
≫79 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 12:25:45
「ふわぁ〜、怖い顔だねぇ〜。この人がどうしたの?」
「ほら、話したことあるだろ?この人がアタシのヒーローなんだっ!!」
ビコーペガサスの言葉に、ヒシアケボノは目を丸くした。
……それは数年前のこと。人攫いの被害にあったビコーペガサスが、奇跡的にトレセン諸島に帰還した。
幼馴染みだったヒシアケボノは信じられない気持ちで港へ向かい、そこでビコーペガサスの姿を確認して驚愕したのを覚えている。たまらなくなって飛びつき、小さな身体を抱きしめてわんわん泣いたのを覚えている。
ウマムスメ族は昔から人攫いの被害に遭いやすい。特に中央ほど戦力が整っていない地方の島にいるウマムスメ族なら尚更だ。現にビコーペガサスは、地方のレースに出場する為に中央を離れたところを狙われた。
実家が代々料理店を営んでいるヒシアケボノは「ビコーちゃんの為においしいお料理作って待ってるね!」と彼女を送り出し……それから数年、再会が叶わなかった。
今ではウマムスメ族の海軍将校が増えてきた為、誘拐被害に遭ったウマムスメは発見次第トレセン諸島に送り返されることになっているが、それでも無事に帰ってくるウマムスメは雀の涙だった。
数年帰って来なかったビコーペガサスの帰還は絶望的だと誰もが考えていた。
けれど、帰ってきた。まさに奇跡だった。
「そっか……。この人がビコーちゃんを助けてくれた海賊さんなんだね〜」
両親や海軍のウマムスメからはあまり大っぴらに口にするなと釘を刺されていたが、幼馴染みで親友のヒシアケボノには全てを話していた。
北の海に流れつき、人攫いの海賊を倒そうとして逆に捕まってしまったこと。そして絶望的な状況下で助けてくれたのがハートの海賊団を名乗る海賊だったことを。
ヒシアケボノの言葉に、ビコーペガサスは大きく頷いた。
「そうなんだ!顔はおっかないし、背はでっかい!ボノよりでかいかもしれない!あと、顔が怖いし、すっげー強くて、顔が鬼みたいだった!」
ビコーペガサスは一気にまくし立ててから、でも、と続けた。
「アタシにとって、最高にカッコいいヒーローなんだッ!!」
≫80 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 12:26:16
――あの出来事が、ビコーペガサスが海賊を目指すきっかけとなった。
正義の御旗を掲げる海軍が全てを救えるわけではないことを知った。自分以外の誰かを助けてくれる海賊もいることを知った。
あのときのヒーローのように、海軍の手が届かない場所で泣いている誰かを救いたいと強く思うようになった。
だが、偉大なる航路どころか北の海でもまともに戦えなかったビコーペガサスがそのまま海に出たところで攫われたときの二の舞になるだけだ。
そこでビコーペガサスは、レースでの適性が近く、中央の実力者であるサクラバクシンオーに教えを請うた。
『お願いだ、バクシンオー先輩!アタシを弟子にしてくれ!強くなりたいんだ!』
『いいですよッ!なんたって学級委員長ですからッ!!』
爆速でOKを貰えた。
それからは修行、修行、修行の日々だ。
基礎トレーニングで身体を作り、ウマムスメ武術を実戦形式で学んだ。
後者に関してはサクラバクシンオーとビコーペガサスで脚質が違う為にやや難航しそうになったものの、見かねたたづながアシストに入ってくれたお陰で事なきを得た。
強くなる為の道は険しかったけれど、あのときのヒーローを思い出せば自然と脚が動いた。
暫くして、いつも差し入れを持ってきてくれていたヒシアケボノが修行に加わった。
『ビコーちゃん、海賊になりたいんだよね?あたしも一緒に連れてってくれないかな〜?』
あのおっとりしたヒシアケボノからそう告げられて驚いたものだ。
理由を聞いてみると、彼女はこう言った。
≫81 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 12:26:54
『あたし色々調べてみたんだけど、海賊の船には料理ができる人も要るんだって〜。だってそうだよね。どんな人だってごはんが食べられないと元気出ないもん。だからあたし、ビコーちゃんが毎日元気いっぱいボーノボーノになれるように、ビコーちゃんの海賊団のコックさんになろうかなって』
『で、でも……危ない目に遭うかもしれないんだぞ!?』
『うん。だからあたしも今日から修行つけてもらうんだ〜』
『ボノ……なんでそこまで……』
『……あのね、ビコーちゃん。あたしは実際に攫われたわけじゃないから、想像しかできないけど……ビコーちゃんはきっと、知らない場所で怖い人達に捕まってすっごく怖かったよね』
『……うん……。すっごく怖かった……』
『あたしもすっごく不安だったんだ〜。もう二度とビコーちゃんと会えなかったらどうしようって』
『ボノ……』
『……トレセン諸島には、あたしみたいに大切な誰かがいなくなって不安になるウマムスメがいっぱいいて、島の外にはビコーちゃんみたいに攫われて怖い思いをするウマムスメがいっぱいいる。あたしね、あたしやビコーちゃんみたいな思いをする子を少しでも助けたいの』
『……!!ボノ!アタシも、アタシも同じ気持ちだ!!』
『うん。だからね、あたし、ビコーちゃんと一緒に行きたい。ビコーちゃん。あたしをビコーちゃんの海賊団に入れてくれる?』
『もちろんだ!一緒に頑張ろうな!』
ビコーペガサスが差し出した手を、ヒシアケボノは両手で包んだ。そうしてふたり、笑い合った。
『あの、すみません!海賊ってなんのことでしょうかッ!?私、全く聞いてないのですが!!』
『『あっ』』
そう。サクラバクシンオーには海賊になりたい旨を伏せて修行をつけてもらっていたのだった。
とりあえず事情を説明し、『まあいいでしょうッ!!この委員長、一度引き受けたことは最後までやり遂げますともッ!!』とこのまま修行をつけてもらえることとなった。
……後日。どこから話を聞きつけたのかタイキシャトルが現れ、『海を無礼てはいけまセーン!!』と指南役に加わり、修行内容はよりいっそう厳しいものとなったのだが。
≫82 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 12:27:28
「――あ、見て。ビコーちゃん」
ヒシアケボノが手配書の名前の部分を指差した。
「この人、トラファルガー・ローっていうんだって〜」
「おおっ!ヒーローの"ロー"だな!さすがだ!」
「あたしもいつか会ってみたいな〜。ビコーちゃんを助けてくれてありがとうって伝えたいもん」
「アタシも!あんたが助けてくれたお陰でこんなに強くなれたぞーって言いたい!」
「そうだ!それならうちの海賊団とこの人の海賊団で一緒にごはんを食べようよ〜。きっととーってもボーノボーノだよ!」
「宴か!いいなー、それ!」
そうして笑い合っていると、ウマムスメがひとり、厨房の入り口からそっと顔を出した。
彼女はこの海賊団の船員で、以前人攫いから助け出したときにそのままついてきて仲間入りしたのだ。
「あのー、すみませんキャプテン。今日の"作戦"の話なんですけど……」
「おっ、そうだったな。よーし、ボノのごはん食べながら作戦会議だー!ボノ、アタシ配膳手伝うぞ!」
「ありがと、ビコーちゃん!今日のごはんもとーってもボーノだから、楽しみにしててね〜」
≫83 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 12:27:44
――偉大なる航路を主戦場とするとある海賊団がいた。
海賊旗を掲げながらも"正義"を謳い、弱きを助け悪しきを挫く。
罪なき人々を泣かせる者達の前に彼女らは現れ、声高々に叫ぶのだ。
「アタシ達は、熱い正義をハートに秘めた"ペガサス海賊団"だッ!!」
【ペガサス海賊団 船長 "小さなヒーロー"ビコーペガサス】
≫84 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 12:28:12
○ビコーペガサス
ペガサス海賊団・船長
かつて人攫いの被害に遭ったが、ハートの海賊団によって救出されたお陰で無事トレセン諸島に帰還した
そのときの出来事がきっかけで海賊を目指すようになり、サクラバクシンオーとタイキシャトルに死ぬほど鍛えてもらって今に至る
人攫いや町を占拠した海賊なんかを標的とし、略奪は決して行わない
が、海賊旗を掲げている為に海軍からは便宜上海賊として扱われ、申し訳程度に懸賞金もかけられている
……余談だが、彼女の自室には新聞から切り抜いた"憧れのヒーロー"の手配書が飾られている。
○ヒシアケボノ
ペガサス海賊団・副船長兼料理人
ビコーペガサスの幼馴染みで親友。実家は中央でかなり有名な料理店を経営している
ビコーペガサスが人攫いの被害に遭ったと知った日には大泣きし、数日間何も喉を通らなくなるくらい意気消沈した
海賊に助けられたビコーペガサスが自身もまた海賊を目指そうとしているのを察し、彼女についていく為に修行に参加した
大きな身体に見合った怪力の持ち主で、恵体から繰り出される一撃は"強烈"の一言に尽きる
人攫いの被害に遭った人々や、時には敵対していた海賊にすらおいしい料理を振る舞う。それがきっかけで心を入れ替えた海賊もいるとかいないとか……
○ペガサス海賊団
命名:ビコーペガサス
ビコーペガサスとヒシアケボノ、その他十数人の船員で構成された海賊団
救出した誘拐被害者がそのまま船員になったケースも少なくない為、構成員はウマムスメ族が多い
尚、ビコーペガサスは海賊団の名前を「キャロットマン海賊団」にするか「ペガサス海賊団」にするかで三日三晩悩んだ
○ボーノ☆ボーノ号
命名:ヒシアケボノ
ペガサス海賊団の船
ビコーペガサスは海賊団の名前を決めた為、船の命名権はヒシアケボノに譲った
こだわりはなんといっても厨房で、ヒシアケボノの両親協力の下ヒシアケボノが使いやすいようにカスタマイズされている
ちなみに、時々ビコーペガサスが手伝うので専用の台が置かれている
≫85 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 12:28:38
以上です
前のSS書き終わって投下した後くらいにたまたまアプリでボノ引いたので育成したところどうしてもボノとビコー絡ませたくなって、ならいっそ二人仲良く海賊団やってたらどうかな!?と思った次第です
尚このボノは色々おっきいだけの中央生まれの一般ウマムスメ
あのボノの性格ってアプリ版見てるとあのご両親のところで生まれ育ったからこそだろうなって感じたので、暗い過去は精々親友が誘拐されたくらいで十分かなって…
≫136 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 17:58:03
港町散策してたらたまたま輸入品のウマムスメ用尻尾トリートメントを発見し、少し値は張ったがまぁあいつが喜ぶなら……とちょっと洒落た包装とかしてもらっていざ帰ったらライスがニコニコしながら上機嫌で「さっきドフラミンゴさんが帰ってきて、お土産にって尻尾用のトリートメントをくれたの」と言ったので「へ、へぇ…よかったじゃねぇか」と引き攣った表情で自分が買ってきたのを渡すことなくそっと仕舞うベラミー概念
≫168 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 18:56:01
ワンピースのダジャレネーミング好きなんだよね
ウマ娘の本能から覚醒した技って位置付けだったけど、
その設定もアリだから、菊花掌に似てる、ってのは外しとくか
ライス「ドフラミンゴさん、今の技……どうですか……?」
ドフィ「フフフ、いい仕上がりだ。“カリカリの実”を使いこなしているな」
ライス「“血薔薇殲突(ブラッディ・ローズ)”って名前なんだけど……」
ドフィ「そうだな……。これからは“ハナ差狩り”と称するといい」
ライス「え……?」
ドフィ「不満か?」
ライス「う、ううん。ライス、もっと“ハナ差狩り”、練習するね……」
ドフィ「フッフッフッ、励めよライス……(ご満悦)」
≫176 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 19:05:40
回想シーンの現在よりちっこいライスがボロボロになって倒れてるのを見下ろして
「立て ライスシャワー」
「お前は良い子のはずだろ?」
と容赦なく言い放つドフィ怖すぎだし、そらライスも未だにドフィにビビるわ
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 56スレ目
≫35 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 20:19:18
「歳上の女の人と歳下の男の子の二人組を"おねしょた"って言うんだって。つまりライスとローくんは"おねしょた"だね…!」
「まずお前を歳上だと思ったことはないし、おれは男の子と呼ばれるような歳でもねェし。というかそのしょうもない知識は一体誰から仕入れた?」
≫45 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 20:40:04
スレの寛大な空気を感じたのでフクキタル劇場版妄想ss投下します。
食料がなくなりピンチに陥っていた麦わらの一味は、占いと水晶加工が盛んな島「URA島」にたどり着く。
途中島の住人であるというウマ娘の少女「センちゃん」と一悶着あったものの和解し、島に上陸するのだった。
腹ごしらえで入った店での麺占いを始め、他の店でもやたら占いを勧められる一同。
センは「この島は皆占いが出来るから、1人を除いて専門の占い師はいないの。」「この島で育った人間は何故か他人の思考、特に悪いことに感づきやすくなるんだ。それを利用して副業で占って、この島の水晶を加工した開運グッズや占い用品を売っているの」と答える。
そうしてセンの案内で物資の補給で市場を歩いていると、センがおばあさんに呼び止められる。その婆さんはこの島の唯一の専門の占い師でセンの育ての親でもあり、センに専門の占い師を継ぐよう言っているのだとか。
だがセンは、かつてこの島を救ったウマ娘のような海賊になりたいという。
ルフィ達が話を聞くと、「元々この島は昔海賊に襲われたが、ある海賊のウマ娘がこの島を救った」「島の住人はお礼に、そのウマ娘の名前を島の名前にしようとした。」「だがそのウマ娘が恥ずかしがって静止し、旧知の仲である「URA海賊団」の名前を付けさせた」ことに由来するのだそうだ。
そのウマ娘はこの島で仲間を二人加入させて旅立った為、センもまず仲間を二人入れて旅立とうと思っていたのだ(誰からも断られているそうだが)。
だが婆さんは「島の外など危険すぎる!」「この仕事は秘宝を守る大切な役職じゃ!」と言う。
一方センも、「あたしはウマ娘なのに他の皆とライブやレースもできない!」「この島で占い師として縛られるより、海賊なら外の世界を自由に回り、母さんを見つけられるかもしれない!」「憧れたこの島の英雄の様に、誰かを何かに縛られることなく助けられるようになりたいの!」と返す。
そのまま言い合いになるもオオババ様は意見を変えず、「母になんぞ会うべきではない!」と言い放つ。
それを聞いたセンは泣きそうな顔で走り去り、フクキタルが「私が行きます!」と追いかけた。
≫47 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 20:41:30
「海賊はともかくこの島から出るくらい許してあげれば?」ナミが尋ねると、婆さん曰く「センは元々幼い頃に誰かがこの島に置いていった子じゃ。」「傍にはあの子の名前と「ずっと彼女を愛している」という書置きが置いてあった。」「外の人間に彼女の親について聞いてきたが、見つかったという話もなく、死んでいる可能性が高い。」「センはウマ娘で狙われやすい。勘も体も強くてもまだ未熟。親の情報で釣られ、ひどい目にあうかもしれん。」「儂の幼馴染達も海賊として島を出たが、行方知れずになった。海賊なんてもってのほかじゃ。」とのこと。
「婆さんの心配ももっともってわけだ」と言うウソップ。それはそれとしてナミは、先程聞いた「秘宝」という言葉に目を輝かせる。詳しく話を聞くと、「URA島の伝説の秘宝〈ドクロ水晶〉は、真っ黒な水晶でできたドクロ」「島で最も優れた占い師のみが持つ事を許され、使えば遥か未来や死後の世界すら見通すことが可能である。」「ある使い手はロジャー健在の時から大海賊時代の到来を予知したという。」「だが使った者は全員狂気に陥った挙句命を落とした為、ドクロの怨念とされて島の社に封印された。」とのこと。
怨念と聞いて震えあがるウソップ、チョッパー。だがルフィやナミ、ロビンはそんな話を聞いても恐れるどころか俄然興味がわいたのか、震える2人が止めてもそれを見てみたいという。
ババ様は「お前達なら大丈夫じゃろ」と言い、一行は島の中央部の森の奥にある社に案内される。厳重に閉じられた鍵を解くと、その奥には黒く染まった水晶で出来たいかにも禍々しい様子のドクロが安置されていた。
「ドクロだから一層恐ろしいですね…。」「お前もドクロだろーが!」ブルックにツッコむウソップ。
≫48 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 20:42:36
流石にその禍々しさに手を出すのはやめようと思ったのか、物資を買った後フクキタルを呼びに行こうと市場に戻ってくる一同。「み、皆さん!」その時フクキタルが焦った様子で走って戻ってきた。その背にセンを背負っており、彼女はただならぬ様子で苦しんでいた。その様子に驚き、どうしたのかと聞く一同。センは震えながらこう言った。「センちゃんが、海賊にやられました。」
センを追いかけたフクキタルは、海岸で海を眺めながらセンの話を聞いていた。セン曰く「ババ様の心配もわかるけど、あたしはウマ娘。人生という道を思いっきり駆け抜けたいの。それに…」頭に思い浮かぶのは、もはや朧げにしか覚えていない母の顔。だが自分に優しく語り掛ける声ははっきりと覚えている。
フクキタルは彼女の気持ちもお婆さんの気持ちもわかる為、何も言えない。せめて彼女の気分を変えようと、ウマ娘空手やトレセン諸島でのレース・ライブについて話す。
それを聞いたセンはウマ娘空手をみたいと言う。そこで彼女に技を見せてあげると、これまで我流で蹴りを鍛えてきたという彼女は、その技の数々に目を輝かせた。
さらにレースをしてみたいという彼女に、砂浜で短距離のレースをする。結果は僅差でセンの勝ち。
「初めてレースが出来たわ!」喜ぶセンに嬉しくなったフクキタルは言う。「ウィニングライブをしましょう!」
センはフクキタルに一通り歌と振り付け教わった後、ぎこちないながらもフクキタルと一緒にライブを行う。二人だけのウィニングライブ。しかし二人は疲れながらも、溢れんばかりの笑顔をしていた。
突如、二人の背筋を何かが走り抜けた。フクキタルが震えだす。「何でしょう、すごく嫌な予感がします…!」
センはある一方向を見据え、フクキタルにここで待つように言った後、止めるのも聞かずその方向に向かって海の上を走りだした。すると1隻の海賊船が近くに来ていた為、甲板に降り立つ。そこには2人の老人と、何故か人間以上にでかいスズメがおにぎりを食っていた。
≫49 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 20:44:26
「あなた達、URA島に何の用?」船に降り立ち問いかけたセンを見て動揺し、だがすぐ落ち着いた様子の2人と1匹。「ウマ娘か。」座布団のような帽子とコートを着た大柄の老人が呟き、「何も悪いことはしねえ。」という。
「ああ、兄ちゃんの言う通りだ。」そう返したのは、浴衣の下に「天星」と書かれたシャツを着た小柄の老人。
「この島でちょいと手に入れてえ物があるんだ。それを取ったら危害は加えねえ。」
「それって、ドクロ水晶…!?」二人の心を読み取ったセンの言葉に、ピクリと大柄な男が反応する。
「知ってんのか。なら話が早え。この島には専門の占い師がいるだろ?そいつなら場所知ってるはずだ。そいつに持ってこさせろ。」だがセンは臨戦態勢を取る。「なんでかわかんないけど…。あんたらにあれを渡したらダメな気がする。あとあれは一応この島の秘宝なの。渡すわけないでしょ!」
その返事にため息をついた大柄な老人もまた構え始める。「おい兄ちゃん!ここは穏便に…!」一方小柄な方の老人__大柄な男の弟なようだ__は、兄を止めようとしている。
「向こうがやる気だから仕方ねえだろ。俺達は海賊だぜ?喧嘩売られたら買うんだよ。それに脅しつけた方が、島の連中に対しちゃ手っ取り早い。」だが兄は弟の言葉に耳を貸さず、戦う気のようだ。
(相手はたった二人のおじいさん…!ここは傷つけないように倒して帰ってもらう!)
そう判断してセンは加速。「〈サンシャイン〉!」そのまま我流の蹴りを見舞って気絶させようとして__
「速い、そして鋭い。だがあの人…船長には遠く及ばねえ。」「な…!」蹴りを腹に食らうもまるで堪えた様子がなく、センは一旦離れようとする。だがそれより早く老人が蹴り足をつかんだ。
「それと小娘。俺たちをジジイと思って油断したようだが」「ぐ…!離せない…!」もがいても脱出できず苦しむセン。するとセンの体に突如縄のような文様が浮かび出し、それを確認した男はセンを甲板に放り捨てる。
「!…ぐああああああっ!」するとセンは苦しみはじめ、まるで縛られたかのように動けなくなる。
「年長からの忠告だ。見かけで判断するな、ってな。」そう言い捨てると、男は弟に指示を出す。
≫50 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 20:45:28
「おいヌース、こいつを連れて島に飛んでって伝えろ。解放してほしけりゃ日暮れまでにドクロ水晶を俺たちの船まで持って来いってな。」「…了解。行くぞ、フォー。」「チュン!」
その言葉に弟「ヌース」はスズメに声をかけ、センを抱え上げる。
「…わりぃな」弟は兄に聞こえないようセンの耳元で囁くと、スズメに乗って島に飛び立った。
一方センと違い海を走れないフクキタルは、どうにかボートを作ってセンに追い付こうとしていた。
その時何かがどさりと落ちてくる。フクキタルはそれを見る。「!セ、センさん!?」それはセンだった。
フクキタルは悲鳴を上げてセンをゆすり起こす。
センは苦しみながらフクキタルに言う。「ごめん…、海賊にやられた…。」それを聞き、フクキタルはセンを背負って急いで一味を探しに行く。それを上空からスズメが追いかけた。
≫51 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 20:48:28
「な…!センちゃん!?」サンジとチョッパーが駆け寄ると、文様が浮かび上がったセンが苦しみもがいている。
「病気じゃねえ。多分この変な文様が原因だ…!」「それは俺の兄ちゃんの能力だ。だが驚きだな、島に話題のルーキー共がいるとは。」センの様子からチョッパーが判断すると、突如声が上空から聞こえ、一同が見上げる。
「な…!」そして見えた光景にルフィが驚く。「頭光ったじーさんがでかいスズメに乗ってる!?」「誰の頭が太陽だコラ!?」そう叫んだルフィにキレ気味に返したのは、先程センを抱え飛んで行った爺さんである。なお彼の禿げ頭は日光を受け、太陽のごとく光り輝いていた。
「んなことはどうでもいい!センちゃんに何しやがったハゲジジー!」「ハゲジジー言うな!オレはヌース!〈天星(テンボシ)のヌース〉っつう海賊だ!」サンジの罵声に老人が返す。ロビン、そして婆さんはその言葉に何か気づいたようであった。
「兄ちゃんからの伝言だ!「そのガキを直してほしけりゃ、日暮れまでにドクロ水晶をこの島近くに停泊する、馬が船首の海賊船に持って来い」ってな!」「な…!ドクロ水晶を…!?」婆さんの呟きに応えることなく、言うだけ言った彼は高速で島の外に飛んでいく。一味が捕まえようとするも、すぐに見えなくなってしまった。
こんな感じになりました…。続き書けたら書きたいです。
≫56 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 21:12:30
原作未所持ss書きとしては理解度が上がるからすごくありがたいんだけどな…。
てな訳で共通認識となりつつあるミョスガルドに最敬礼するフラッシュの怪文書でさぁ
cp0エイシンフラッシュは信じられないものを見る目で目の前の出来事を見つめていた。
人魚姫ことしらほし姫が天竜人のチャルロスによって奴隷として捕まえられそうになり、相手が相手ゆえに誰も手が出せなかったところで同じ天竜人のミョスガルドが彼を殴り倒し、しらほし姫を救ったのだ。
フラッシュは天竜人直属のcp0に所属している。しかし、ウマ娘という奴隷と隣り合わせの種族ゆえに思うところがあった。
ミョスガルドの行動はその考えを少しだけだが彼女の中から払拭していた。
そしてフラッシュは、新たな時代の幕開けを起こした『人間』である彼に思わず最敬礼をした。
そんな彼女に気づいたミョスガルドはそばに歩み寄って言う。
「頭を上げてくれフラッシュ。私は人として当然のことをしたまでだとも。これはお願いだ」
「っ…わかりました」
フラッシュは頭を上げ、ミョスガルドはそんな彼女に破顔した。
≫66 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:16:43
2年後フクキタルシャボンディ到着妄想投下します。
2年間の修行を経てシャボンディ諸島に到着したフクキタル。
ウマ娘とバレぬよう帽子や服装で耳と尻尾を隠し、さらにサングラスをかけた彼女はそこで奴隷の首輪を掛けられた傷だらけのウマ娘と出会う。
彼女は傷だらけで安く売りに出されていた所をある海賊に買われ、あるウマ娘の振りをしろと命じられたのだ。
安く買われたとはいえ他の奴隷に比べ高額だったせいか、事あるごとにこき使われ彼女は精神的にも肉体的にもズタボロになっていた。怒ったフクキタルはその海賊が誰なのか問い質して乗り込み、彼女を解放しようとする。
だが次の言葉にフクキタルは驚愕した。その海賊とは「麦わらのルフィ」であり、真似をしようと言われているのは「マチカネフクキタル」…つまり自分だというのだ。
自分の船長がそんなことをするわけがない、そう思った彼女は奴隷の少女を連れ「麦わらのルフィ」が仲間を募集しているという広場に乗り込むことにするのだった。
「あ…あれです!私を買った〈麦わらのルフィ〉は!」奴隷の少女がそう指さした先には麦わら帽子を被った海賊がいる。だがその姿はだらしなく太って顔は下劣さを表しており、フクの知る船長とはかけ離れていた。
「そんな、ルフィさん…!2年ですっかり変わってしまって…!」…彼女がそう判断したのは、彼女が抜けているからというだけではない。フクキタルは2年の修行の中で見聞色を大幅に鍛え、自分の知る人間なら広範囲でその位置を特定できるようになっている。彼女の見聞色ではここに「麦わらのルフィ」がいるのは確かであり、本人や周囲の人間がそう言っている以上そうなのかと考えてしまったのだ。(仮に偽物だとしても本人が名乗りを上げるはずと考えたのも理由の一つである。)
「ルフィさん…いえ、麦わらのルフィを止めて彼女を解放させます!船長の指針に口を出すのは占い師である自分の役目だから!」フクキタルは奴隷の少女を連れ「麦わらのルフィ」がいるステージに飛び込んだ。そこでは自分の船長が大荷物の男を処刑しようとしている。
≫67 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:17:23
だが次の瞬間、海軍とパシフィスタが来襲。この場に集まった海賊を襲撃する中、海軍の「戦桃丸」がルフィを一撃でのしてしまった。
「ええっ!?ルフィさん弱くなってません!?」だがその男は「デマロ・ブラック」というルフィを騙った偽物だったと判明した。
「え!?ニセモノ!?…いやー、私はわかってましたよ最初から!うん!」するとあるパシフィスタがステージを攻撃し、先程処刑されそうになっていた男が飛び出す。フクキタルは今度こそ間違えない。「お久しぶりです…!ルフィさん…!」なお一緒にいる奴隷のウマ娘の少女は状況の変化についていけず混乱している。
パシフィスタを一撃で倒したルフィがすごく強くなったと感じていると、背後から別のパシフィスタが彼女たちに攻撃する。瞬時に察知した彼女は奴隷の少女を抱え込むとレーザーをよけ掌底を叩き込み、パシフィスタを吹っ飛ばす。
その衝撃で彼女の帽子とサングラスが外れる。奴隷の少女の目に飛び込んできたのは、暴力を振るわれながら彼女が真似をしろと言われ続けてきた少女の顔だった。
ルフィがそれに気づき、声をかける。「おーい、フクキタル!久しぶりだな!」「はい!ずっとこの時を待ってました!」それにフクキタルも笑顔で声を上げ、いつの間にか合流したゾロとサンジもいるルフィの元に向かったのだった。
≫69 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:18:25
「フクキタルちゅわぁぁん♡ひさしぶりぃぃぃ♡二年でより一層かわいくなっちゃってぇぇぇ♡♡」
「え、えへへ、そうですか~♡」
サンジの誉め言葉に調子に乗り、ゾロにも声をかける。
「ほらほらゾロさーん、私キレイになったでしょ?ほめてくれてもいいんですよー?」
「…ああ、そうだな。」すると珍しく自分をほめたので、顔を近づけさらに言い募る。
「ほらほら、具体的にどこですかー!もっともっと褒めてくださいよー!?」
だがあまりに調子に乗った為か、ゾロにアイアンクローを食らってしまう。
「お前は2年で生意気さが増したようだな…!」「フンギャー!?この痛みも2年ぶりですー!?」「フクちゃんに何してんだクソマリモ!!」騒がしさを増す4人。するとそこに冥王レイリーが現れる。その登場に周囲が静まり返る中、ルフィはレイリーに宣言する。
「海賊王に!!!俺はなるっ!!!!」
その宣言を聞き、フクキタルは思う。ここから再び始まるのだ。私たち、麦わらの一味の海賊王への旅が!
すると海軍が再び攻撃を仕掛けてくるため、急いでここを離脱することにするが、フクキタルはふと連れてきた奴隷のウマ娘の少女をどうしようか悩む。
するとレイリーは「この場のことは任せなさい。後その少女は…」「お姉さんに任せなさ~い♪」
その場にいた人間たちが声の聞こえた方向を向くと、驚愕を露わにする。「ま、マルゼンスキーさん!?どうしてここに!?」フクキタルのその問いに「お気に入りの子達の船出を祝いにね~」と返し、奴隷の少女の首輪を取り外す。
見ると後ろには元奴隷であったであろう人々がおり、彼らの首輪も外されていた。
「じゃあ麦わらの皆?良い旅を。」その言葉を後目にルフィ達も駆けだしてゆく。向かうのは自分たちの船、サウザンドサニー号だ。
彼らの為数時間海兵を足止めした後、マルゼンスキーは海兵に言い放つ。
「さて、私達もそろそろ行くけど…海兵の坊や達、止めるなら相応の覚悟をしなさいね?」
その言葉に海兵達は息をのみ、元奴隷を引き連れて去っていく彼女をただ見送るしかなかった。
以上です、書いてて楽しかったです。
≫73 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:29:14
ニセキタルが本物の馬になってるパターン面白かったけどニセチョッパーと被るんだよなぁ
≫76 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 22:38:30
>>73
自分もそれ結構好き。
偽ゾロ「おい、こっちこいよフクキタル」
フクキタル「なっ、私のニセモノ…!?」
偽キタル(馬の頭に水晶玉を乗せただけ)モッシャモッシャ
フクキタル「……」
偽キタル「……」モッシャモッシャ…ゴクン
フクキタル「――フンギャロー!!」ベチコーン
偽キタル「!?」ビクッ(水晶玉を叩き落とされる)
偽ゾロ「なっ、こいつフクキタルの水晶玉を!?」
偽サンジ「てめぇフクキタルになにしやがる!! この水晶玉はなぁ、フクキタルの大切な…
大切な…あー…大切なもんなんだよ!」
フクキタル「物語性うっすい!?――じゃなくて、どこを! どうみたら! これが私なんですか!?」プンスコ
とかしょうもないノリを考えたりしてました。
≫102 二次元好きの匿名さん21/09/25(土) 23:31:29
たぶんW7から帰るところで、W7を振り返るエイシンフラッシュを見てブルーノあたりが、
ブルーノ「お前はちょっと生真面目すぎる…だからお前がこの任務に就くのは反対だったんだ」
みたいな事をいうんだよね(情が自分達よりも移りやすいタイプだから)。
フラッシュは「大丈夫です」って言うんだけど、周りから見るとそうは見えないから、
みんなちょっと肩をすくめるの。(やる事はやってるから、それ以上は言及しない、みたいな)
カク辺りは(長官も人が悪い…こやつがこの任務に就けばこうなる事もわかっていたじゃろうに)
とか思ってたりして。
≫158 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 08:06:43
マルゼン「あなた達、川は何処へ流れる?」
娘達「海!」
マルゼン「そう、川は海へと流れ、やがて天に昇って雲となる。雲は雨を降らせ、雨は川に降り注ぎ、また海へと流れ行く。
人の命もまた同じ。生まれては死に、死してまた生まれ来る。
私もあなた達もいずれ死にゆく。そしてまた生まれ来る。その繰り返しの中で、未来永劫、母は私、子はあなた達よ!」
アカン、これだとマルゼンさんが元世界政府の公儀介錯人だったけど、陰謀に巻き込まれ夫を亡くし、仇討ちのため幼い娘達を連れて冥府魔道の刺客(殺し屋)道を歩んでいた過去があることに…
≫160 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 08:58:44
誰もいない…怪文書を投下するなら今のうち……
ローの"能力"によって位置を入れ替えられ、自らの技でドレスローザを破壊することとなったドフラミンゴは舌打ちした。
即座に追いかけようとしたところで目に入ってきたのは、海上を駆ける"黒い影"。
思わず口角が釣り上がる。手塩にかけたかわいい"お人形"は、想像以上に有能に育ってくれたようだった。
「お……おい!何か近づいてくるぞ!」
海を指してチョッパーが叫んだ。
パシャパシャと水を叩くような音を立てながら、小さな黒い影がサウザンドサニー号目掛けてまっすぐ突っ込んでくる。
「ついてく、ついてく、ついてく、ついてく……!」
それは人の形をしていた。
頭から生えた耳を揺らし、下肢から伸びる尻尾を靡かせ、凄まじいスピードで海の上を走っている。
(ライス……!?)
ローは愕然としてその黒鹿毛のウマムスメを見つめた。
ライスシャワーはつい先程、"海軍の名優"メジロマックイーン中将と交戦していたはずだ。
海軍大将藤虎と共にこのドレスローザにやってきたメジロマックイーンだったが、どうやら彼女はドフラミンゴに対し何か個人的な恨みを抱いていたらしい。
ドフラミンゴは王下七武海を辞めていないと分かるや否や、海軍の立場を投げ捨て"メジロ家"の者としてドフラミンゴを討つことを宣言した。そこに割って入ったのがドフラミンゴの護衛としてやってきていたライスシャワーだった。
戦いながらグリーンビットの森の中へもつれ込んでいった為、二人がどうなったのかはまるで分からなかったが……。
(この短時間で海軍中将を下してきたのか!?)
とても信じられなかった。
グリーンビットで再会した際の冷たい目もそうだ。あの優しくて虫も殺せなかったような彼女は、まるで別人のように変わってしまっていた。
≫161 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 08:59:22
「あれは……!ライスちゃん!?なんでこんなとこにいるんだ!?」
「……!黒足屋、ライスを知ってるのか!?」
「港町で道案内してくれた子だ!お前こそなんで……」
「こ、こっちに来るぞー!」
サンジの言葉を遮る形でチョッパーが悲鳴じみた声を上げる。
刹那、海の上を駆けていたライスシャワーの姿が消えた。そして。
「――てく、ついてく……ついてく!!」
船体を垂直に駆け上がり、黒い刺客(ライスシャワー)がその姿を現した。
「うわああああ!きたあああああ!!」
甲板に着地したライスシャワーは一瞬にして姿を消した。
次の瞬間、ローの目の前に見えたのは黒いパンプスの靴底だった。
「ぐっ……!!」
咄嗟に鞘に入れたままの刀で鋭い飛び蹴りを受ける。
ウマムスメ族の脚はそれそのものが強力な武器だ。並の人間を遥かに上回る脚力から繰り出される渾身の蹴り。少しでも反応が遅れれば、骨の一本や二本は軽くへし折られていただろう。ビリビリとした衝撃を両腕に感じながら、ローは叫んだ。
「ライス!!話を聞いてくれ!!」
ライスシャワーは応えない。
刀を蹴って後方に飛び、今度は腰の短剣を抜いて向かってくる。
≫162 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 09:00:07
「いいざますよ"コラソン"!そのままローを片づけるざます!」
「な……!?」
ジョーラから放たれた言葉にローは目を見開いた。
("コラソン"だと……!?)
それはドンキホーテファミリーに置ける四つの最高幹部の内の一つ。ハートの席を与えられた者の名前だ。
同時にローにとっては――ライスシャワーにとっても――かけがえのない大切な恩人の名前でもある。
「おい、どういうことだ……!?ライス!!」
短剣の刺突を受け流しながら叫ぶ。
――本当なら聞くまでもない筈だ。彼女はドフラミンゴの護衛を任され、単独で海軍中将を倒している。
今まさにこの時も、繰り出される攻撃のひとつひとつが油断すれば致命傷になり得るものばかり。
「――ドンキホーテファミリー、最高幹部……コードネーム"コラソン"」
それまで無言だったライスシャワーが口を開いた。
「トラファルガー・ロー……あなたを粛清する……!」
「……ぐ……!」
それはこの13年もの歳月の間に、彼女がドンキホーテファミリーの最高幹部に登り詰めたことを示していた。
しかもよりによって――ハートの席の"コラソン"に。
≫163 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 09:00:47
「"ROOM"!」
低い音と共に球体状の"手術室"が展開される。ライスシャワーは構わず凄まじい速度で突っ込んできた。
「正狩――!」
「シャンブルズ!」
短剣の刃先が迫ったその瞬間、発動させた"能力"によってライスシャワーの姿が消え、代わりにサニー号の船室にあった椅子が現れる。
軽い音を立てて椅子が落下したのとほぼ同時。船室の方から激しい衝撃音が聞こえてきた。ローを貫く筈だった勢いをそのままにどこかに激突したのだろう。
気絶でもしてくれればと思ったが、彼女は丈夫な身体を持つウマムスメ族で……その上ファミリーの最高幹部だ。
数秒と経たない内にライスシャワーが船室から飛び出してきた。額から血を流し、鬼気迫る表情で。
ローはライスシャワーの悪魔の実の能力を知っている。故に、"シャンブルズ"で位置を入れ替えてどこに飛ばしたところで殆ど意味がないことくらい分かっている。彼女は"標的"をどこまでも追いかけてくるのだから。
「よせ、ライス!!おれ達が戦う意味はないはずだ!!」
≫164 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 09:01:31
一瞬、オペオペの能力で脚を斬り落とそうかとも思った。
ウマムスメにとって脚は"要"だ。加えてライスシャワーの能力は瞬間移動(ワープ)ではなく高速移動。脚さえ機能しなくなれば満足に戦えなくなる。
だが――
『――ひとりでいるのは寂しいから。だからライスは、ローくんについてく、ついてく!』
幼い日の記憶が――思い出の中で未だ生き続ける、花が咲いたようなあの笑顔が太刀筋を鈍らせる。
――おれはあの子を傷つける為にここにきたんじゃないのに!
「意味がない……?本気で言ってるの……?」
「……何?」
低い声で呟いた直後、ライスシャワーはローを蹴飛ばして距離を取った。
そして。
「それなら……!!どうして……どうして"お兄さま"を裏切ったの!?」
「…………!?」
見たことのないような怒りの表情を浮かべ、つぶらな瞳から大粒の涙を零してライスシャワーは叫んだ。
「ライスは許さない!ファミリーを……お兄さまを裏切ったあなたを許さないッ!!」
≫165 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 09:01:48
いい感じのオチが浮かばなかったので中途半端ですがここまで。ライスの技名は前スレ55の156さんからお借りしましたが、その割には戦闘シーン全然書けなくて申し訳ない……
ライスは最初港町でルフィ達と顔を合わせてる想定で書いてます。なのでサンジからしたら親切で人畜無害そうだった子が海走ってトラ男を殺しに来たように見える
あと"お兄さま"が誰を指してるのか分かってるのがロー(と、ファミリーのジョーラ)くらいでナミ達からしたら「ドフラミンゴをお兄さまと慕っているやべーウマムスメ」が襲ってきたように見えるので、ゾウで再会した際に「ドフラミンゴの妹がなんでここに!?」「おぞましいことを言うな!!」みたいな一悶着があるんじゃないかな
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 57スレ目
≫2 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 11:30:55
あいもかわらず、グラスの頂上戦争SSを投下する
走る。走る。走る。
いま見据えるのは一点のみ
マリンフォードの中央広場にある処刑台、そこにエースさんがいる
だが、この場にいるのは各地から集められた屈強な海兵達
それらを倒しながら進むのには、それなりの時間がかかる
「処刑台が遠い…!」
眼前の海兵を薙刀で吹き飛ばし、更に前へ進もうとした瞬間
見聞色が、何者かの攻撃を感知する
その場所から飛びのくと、少し遅れて何かが着弾した
立ち上った煙の中から人影が現れる
「そこまでだな。四番隊隊長、グラスワンダー」
純白の正義のマントと、頭頂部の特徴的な耳
ウマ娘__それも海軍将官クラスの海兵となると、こちらも無傷ではいられない
「も~~ハヤヒデったら早いよ!」
「チケットは六式の精度上げた方が良いよ」
その背後から、新手が2人
その2人もまたウマ娘だ
研ぎ澄まされた覇気が、この3人が紛れもない強者であると判断している
≫3 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 11:32:19
「厄介ですね…」
薙刀を持つ手に力が入る
彼女らを相手に、小手調べの小技は無意味だ
“領域”限定封鎖『精神一到』___
出力を抑えながらも、領域を使い勝負を早めに付ける
「わぁ、あの人領域使いだよ!?どうする二人とも!?」
「四皇の幹部クラスなんだから当然でしょ」
「相手は格上。3人で行くぞ」
「「了解」」
来る__!
直後、3人の海兵は私を囲むように展開
波状攻撃が始まった
「嵐脚_バ蹴」
「ウマ娘武術_目黒鬼燃」
「ウマ娘武術_葉牡丹掌」
≫4 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 11:33:17
繰り返される攻撃は隙間というものがなく
「せぇい!!」
「鉄塊!」
「剃!」
こちらの攻撃も協力して受けきっている
侮っていたつもりはないが、この3人の連携の高さを見誤っていた
「獣厳_蹄!」
脚元の地面が攻撃により崩れ、一瞬バランスが崩れる体
それは、この殺し合いにおいては致命的な隙だ
やられる__!
この後ダメージを受けることを覚悟した時だった
「サンクルー大衝!」
何者かが戦いに乱入する
その赤いマントに見覚えがあった
「大丈夫ですカ?グラス?」
かつて、兄妹分の盃を交わした幼馴染
≫5 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 11:34:00
「エル?」
でも、エルは大監獄インペルダウンに収監されているとの情報があった
それがマリンフォードにいる意味が分からない
「ちょっと脱獄してきまシタ。赤鼻のお兄さんもいますヨ。」
私の心境を察しているかのように、理由を説明するエル
そういえば、先ほど海軍の軍艦が空から落ちてきていたのを思い出す
乗っていたのは、エースさんの弟_麦わらのルフィ、王下七武海のジンベエ・クロコダイル、革命軍のイワンコフに_
インペルダウンの囚人たち
どうやったかは知らないが、その中にいたと考えれば筋は通る
「2人揃ったか…黄金世代!」
「どうしようどうしよう?」
「やる事は変わらないでしょ」
一旦後退した海兵3人が再度戦闘態勢に入る
「手を貸してください、エル。この場を切り抜けます」
私は自然と協力の打診をしていた。それを聞いたエルはにへらと笑う
「了解デース」
そして敵に向き直る私達
最早、出し惜しみは不要だ
≫6 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 11:34:37
「“領域”『精神一到何事か成らざらん』!!」
「“領域”『プランチャガナドール』!!」
ゴウッ___
領域同士が互いに侵食し反発し、周囲に破壊の奔流をもたらす
だが、海兵3人もそれに対して怯むことはない
「チケット、タイシン…あの技で行くぞ」
「「了解」」
3人それぞれがウマ娘武術の予備動作に入る
皐月衝、刀境幽瞬、菊花掌__
本来別々の技だったものが、一つに纏まっていく
「あれは___」
「ハッ!相手にとって不足なしデース!!」
本来、三冠を制したものだけが習得できるグラシック級最終奥義__『三冠覇』
それを、三者の呼吸とタイミングを極限まで合わせて再現している
ならば、それを迎え撃つまで__!
≫7 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 11:34:48
「エル、行きます!」
「応!!」
覇気と領域を纏って前方へ飛び出す
その瞬間、頂上戦争始まって以来、最大級の爆発が起こった
≫20 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 12:09:19
ドレスローザでの戦いの翌日にまだダメージ残ってるだろうにライスの脚の診察を念入りにやるローいいよね…やっとドフラミンゴから取り戻せた大切な子だから多少心配性になるのは仕方ないし。領域使ってたから余計心配になるよなぁ
「ローくんお医者さんみたい」「みたいじゃない、医者だ」ってやり取りもほのぼのした
その後絶対安静って言われたのに「あ、キュロスさんライスも手伝います」って即立ち上がろうとして「話聞いてたのか!?」って怒られてたのは笑った
≫47 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 14:21:56
ゴア王国ルートの幼少期ネイチャさんを書き直しました!
お収めください!
船が揺れる。
小さな窓から漏れる光が頬を照らす。
聞こえるのは絶望に嘆く私達ウマ娘の泣き声だけ。
──ここは奴隷船。各地から攫われたウマ娘たちが載せられた船である。
アタシの名前はナイスネイチャ。トレセン諸島で日々平和に過ごし、悪人に騙されホイホイとこの船に載せられた……モブ手前のウマ娘だ。
首に着けられた爆発する首輪の重さもさることながら、これから自分が辿る運命というヤツを考えれば何から何まで陰鬱な気分になる。
そんなこんなで一ヶ月ほど経過。
私は東の海のゴア王国のとある貴族に買われた。
GLのトレセン諸島の一般ウマ娘から東の海の世界政府加盟国の貴族に飼われることになるとは……ほんの一ヶ月前まで考えもしなかっただろう。
「さて……ウマムスメよ。君はあと三ヶ月ほど後に視察に来る天竜人への贈り物として買われたんだ。脱走なんて下らぬことを考えないでくれよ?」
「はいはい、分かってますって」
「……”はい”は一度だ!」
「きゃあ!」
軽い反抗心まじりに返答したら蹴られた。薄汚れた簡素なワンピースが更に痛む。もうこれしか一張羅がないってのに。
というかこれ、飼い主さんうちらウマ娘に前時代的な偏見をもっているやつですね。
「家畜風情が……人間の言葉を使うだけで薄気味悪いというのに、反抗心なんてモノを見せたらその時は鞭打ちの刑だ」
「……はい」
「そこの下男、コイツを厩舎にでも放り込め」
「かしこまりました。ついて来い、ウマ娘」
え、マジ?
≫48 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 14:25:26
モーモー、モーモー。牛の泣き声が鼓膜を揺らす。
「ここでいいか?」
「……馬小屋はないんですか?」
マジだった。しかも連れてこられたのは牛舎。うちらは牛じゃねぇっての。
「それもそうだな。君たちは家畜だとしても、同族のいる場所の方がいいか」
「……そっすね」
いや、いくら何でもここ前時代的過ぎない? なんかもう、文句を言うのも面倒に思えてくる。
そんなこんなで馬小屋に放り込まれた。なんでも先日、一頭馬が死んだそうでその分の馬房が空いていたそうな。だったら最初からこっち紹介しろよ。というかアタシに一軒家を寄越せ。
「餌は飼葉でいいか?」
「……うちらの食事は人間と大体同じですよ?」
「? 馬鹿なことを言うな、馬が肉を食うわけ無いだろう」
「…………まあ、馬が食べれるものはうちらも食べられますよ。食事量は馬並みなので、そこらへんよろしく」
「ああ、君が風邪を引いたりしたら困るのはこっちだ。引き渡す日まで健康でいてもらうぞ」
「そっすか……」
籠に盛られた飼葉を口に運ぶ。……食えることは食える。ただ、たまらなくおふくろの味ってヤツが恋しくなる。
もっしゃもっしゃと飼葉を口にアタシを見て安心したか、下男の彼は厩舎を出ていった。
もっしゃ、もっしゃ。
もっしゃ……もっしゃ。
…………もっしゃ。
「……やっぱり会いたいよ、お母さん、オジさん……」
あー、ダメだ。どうしようもなくメンタルにクる。今まで必死に考えないように、思わないようにしてきたことが脳裏によぎってしまう。
故郷のお母さんに、我儘な悪童だったアタシを見放さずに面倒を見てくれた近所のオジさん。故郷のみんなを思い出を……あの温もりを恋しく想ってしまう。
頬を伝う水滴が飼葉を濡らす、今まで流さないようにしてきたモノがこぼれ落ちていく。
「ダメだよ……涙なんて、流さないでよ……流しちゃったら、もっとキツくなるじゃんか……!」
声を必死に押し堪えて啜り泣く。視界がぼやけて仕方がない、望郷の念が赤裸々に、アタシの心を傷つける。
≫49 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 14:26:22
「……へ?」
馬が一頭、アタシの側に寄り添う。大方抜け出してきたのだろう、ただ何も言わずに彼女はアタシに頬を擦り付けてきた。
「うん……うん、ありがと。しばらく、寄り添ってくれるとありがたいな……」
あたりを見渡せば、厩舎にいる馬全員がアタシのことを心配そうに眺めている。なんか、少し照れくさい。
アタシらウマ娘は人魚と同じように馬と心を通わすことができる。だから、ウマ娘にとって馬というのは掛け替えのない隣人のようなもの。そんな当たり前のことを今更ながら有り難いと思う。
泣いた、凄く泣いた。その間、彼女──ベアーブロッサムはずっと寄り添ってくれて、その大きな身体でアタシを暖めてくれた。
「あー、泣いた。ありがとうベアーブロッサム。また、寄り添ってくれると嬉しいな」
ベアーブロッサムはまたも何も言わずにアタシの馬房から出ていった。こんな時は案外寡黙なヒトが相手の方が心休まるというものか……。
「ま、なるようになるか。天竜人に引き渡されるにしろ何にせよ、アタシは絶対故郷に帰ってやるんだ!」
決意を新たに固めて、寝藁に身を投げネイチャさんは眠りにつくことにしたのであった──
≫50 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 14:27:09
三週間経過、わかったことと言えば下男さんやこの国の人間は本気でアタシを馬と同列に視ていることというぐらいか。
なので、ええ、ピンからキリまで馬と同様の生活を送らされるネイチャさんです。羞恥心は最初の一週間で死んだよ……。
放牧地で寝っ転がりながら雲を眺める。先日鞭打ちされた所がヒリヒリと痛んで辛い。
心配して近寄ってきたお馬さんの頭を撫でながらこの3週間を思い返す。
これまでに鞭打ちされた回数は計六回、いずれも理由は反抗的だから。……いいじゃないですかシャワー個室を要求したって。あと尻尾ケア用のトリートメントはウマ娘にとって生活必需品ですよ?
それに一張羅はボロボロ。元々悪い肌触りも壊滅的だし、臭いし……変えが欲しいです。つーか新しい下着を寄越せ。
あーだめだ。飼うにしたってその動物の情報はきっちり集めるのは飼い主としての責務ですよ? 今頃仲間たちはどうしてんだろ、良い飼い主に買われていると良いのだが……故郷に帰っていたらもっと良いんだけど……もしそうだったら、それはそれとして少し恨む。
とはいえ悪いことしかないって訳ではない。馬のみんなとの触れ合いは楽しい、鬣のブラッシングで気持ちよさそうに顔を緩めるみんなを見ると嬉しくなるし、みんなと牧草地を走るのも楽しい。もし、こんな状況じゃなかったらもっと楽しく居られたのに、なんて思ってしまう。
──ぐぅ~。……お腹が減る音がした。
放牧地に生える牧草は少し食べにくい。身体の構造が人間に近いアタシらは牧草を食べる際にいちいち手で千切ったりしないと食事しにくい。……白米が恋しい。
死んだ魚みたいな顔をしながら空腹なお腹をどうしようか考えていると、ベアーブロッサム何も言わずに近づいて来た。
「ん……ああ、ありがと。ごめんね、こんなアタシのために……」
ベアーブロッサムの張ったお乳に口を着ける。温かい……馬乳を飲む溢さないよう必死に飲み込む。ベアーブロッサムはちょっと前まで仔馬と一緒に過ごしていたようで、そのためおっぱいもお乳が出るようになっていたそうだ。……当の仔馬はアタシが来る前に病気で死んじゃったみたいだけど。もしかしたら、アタシが今住んでいる馬房がその仔馬の部屋だったのかもしれない。
≫51 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 14:27:50
「フム、やはりウマムスメ族というのは家畜同様卑しい生き物のようだな。視給え、あんなに必死になって乳を飲んでおる」
「…………ぷは、ありがと。ううん、気にしなくていいよ、あなたたちに助けられているのは本当だし、感謝の気持ちも持っているんだから」
あー、不愉快。何が不愉快って可愛い馬のみんなまでバカにされているのがたまらなく不愉快に思う。やっぱアイツ飼い主としてド三流でしょ。
アタシの現飼い主さんは時折こうしてアタシの様子を眺めに放牧地に顔を出す。……アタシを縛るこの首輪の鍵と一緒に。
護衛は五人、全員猟銃を抱えている。装填される弾倉は捕獲用のネット弾が3人、残りは殺処分用の散弾。気まぐれに飼い主さんが教えてくれたけど、どれが誰なのかまでは教えてくれなかった。……隙を見せてくれたらワンチャンなんとかなりそうなんだけど……こんな感じじゃ例え鍵を奪えても直ぐに捕まっちゃうか殺されちゃうし、護衛を倒してもその間にドカンと爆発するだろう。なんでも、アタシはサプライズプレゼントらしくアタシの存在を天竜人は知らないみたい。だから、例え今この瞬間アタシが死んでも飼い主さんにとってはお金が無駄になる程度でそれ以上のダメージは存在しない。だから、アタシが脱走しようとしてやむを得ずこの首輪を爆破する可能性は十分にある。
んー、うちらのことを全然知らないくせに無駄に頭が廻るご様子。こまった、脱出する方法が思いつかない。ほんと、ちょっとで良いから隙を見せてくれないかな~……なんて。
そんな都合のいいことは起きず、飼い主さんが引き上げようとした瞬間──突然、地面をドタドタと急いで走る足音が聞こえた。
足音の持ち主はあの下男くん。焦った様子で報告に来たようで……。
「どうした急に!?」
「申し上げます! 下町にて貴方様の経営するレストランにあの悪童三人組による食い逃げ事件が発生しましたァ!!」
「ダニィ?! お前ら、今直ぐ捕獲に向かえ!」
「は!」
≫52 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 14:29:25
──今ッ!!
一息に柵を飛び越え飼い主さんの頭を思いっきり蹴っ飛ばす!
「がァッ?!」
「ッウマ娘貴様ァ!?」
動揺した護衛さんたちは銃を構えるけど、少し遅い!
「やァ!」
「グぅっ!?」
一人、二人、三人! 力任せな型もクソもない力技で強引に三人の意識を奪う。
「これ以上の狼藉は許さんぞ! 喰らえい!」
「しまっ──」
構えられた銃口、直感で分かる。アレ、2つとも散弾が込められている。
──死、カタチのない現実が直ぐそこまでに迫り……思わず目を瞑る。
ナニかがばきりと壊される音、その刹那に銃声が2つ鳴り──ナニかが地面に倒れる音がした。
「……え?」
「クソ……余計な邪魔を入れおって……! 今度は外さないぞ!?」
……凶弾に倒れたのはアタシではなく、ベアーブロッサム。アタシの危機に感づいたのか、柵を壊してアタシの盾になってくれた。
──言葉に出来ない激情に理性が消し飛びそうになる。っ、だけど!!
「っ~、やぁああああ!!」
「ぐはァ?!」
残りの二人を一息に倒す。けど……ベアーブロッサムは……。
「…………」
「うん、そっか。今まで、ありがとう。私は……いくよ」
飼い主さんの懐から鍵束を取り出し、首輪の鍵を探す。一番目、二番目……三番目アタリ。
こんな所でも3に縁があるとは……少し複雑な気持ちになる。
≫53 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 14:29:52
「居たぞ~!」
「ウマ娘が脱走している~!」
「っ、嘘! もう来たの?!」
放牧地の下の方から衛兵たちの声が聞こえる。こんな直ぐに追手が来るとは思ってなかった……!
「そういえば下人くん居ないじゃん!」
今更になって失態に気づく。後悔先に立たず、ひとまずここは逃げ出さないと……!
「ぶるるる……ヒィヒイ~ン!!」
「え、みんな……」
気がつけば放牧地からみんなが抜け出して、アタシを庇うように整列していた。……みんなはアタシのことを”仲間”で……その旅立ちを守るために身を張って壁になると言っている。
たった3週間。それだけの関わりだけなのに、アタシのことを仲間と認めてくれたことをどうしようもなく嬉しく思えて、みんなが傷つくことにどうしようもなく胸中が掻きむしられる。だけど、それは覚悟の上での思いやり、アタシが口出しするのはお門違いというヤツだ。
……だから、ありがとう。みんなが側に居てくれたおかげでアタシは諦めなかった。
「──うん、お願い。みんなのこと絶対に忘れないから!」
涙を拭う。振り返らず、アタシはまっすぐに走る。
みんなの為にも、アタシは絶対に故郷に帰るのだから──
≫55 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 14:31:21
……そんなこんなで貴族の懐から逃げ出したネイチャさんは今──
「ゴミ山スラムで燻っていまーす……はぁ」
不確かな物の終着駅とも呼ばれる貧民街兼ゴミ捨て場、そんな場所にてネイチャさんは生活をしている。
確か、奴隷から脱走したウマ娘の多くはこうしたスラム街での生活を余儀なくされる。なんて、聞いたことがあったけどまさか自分自身がそうなるとは思ってもみなかった。
「ま、そりゃそうだよねー。東の海からGLに行く船なんて簡単に見つかるわけないし……密航してまったく別の所に出たら目も当てられないし……どうしたものかな~」
それに、アタシを買った貴族さんが脱走したアタシのことを捜索しているのもある。そのせいで検閲が強化され密航の難易度を大きく上げているし、そもそも港町に行くことも難しくなっている。結局、しばらくはここで生活しなくてはならないことだ。
「とりあえず、服がほしいなぁ。この服もそろそろ……というかとっくに限界だし」
まだ着れそうな服、それとこの耳と尻尾を隠せそうな帽子とスカートかズボンを探そう。適当なバンダナで誤魔化すのはそろそろ限界だと思うし、尻尾を結んで股下に隠すのもけっこうキツイ。
アタシだって女の子、ファッションに興味はあるのだッ! なんてこと思いながらゴミ山をひっくり返す作業に入る。こういう時、ウマ娘の常人離れしたフィジカルに感謝したくなる。
「んー、ここらへんにはなさそうだな……でも、布は見つかったからこうして、と……」
布の切れ端こそ見つかれど、服になりそうなのは見つからない。とりあえず足裏を保護するために足に巻きつけてみる。
ぴょんぴょん、ちょっとジャンプしてみる。うん、だいぶラクになった。
「やっぱ人気の少ない辺りはもう粗方掘り返された後だから良い物は見つかりにくいのかな……? けど新しいゴミ山の方に行くと人目につくからなぁ……もうちょいここら辺で探してみよっかな」
隣のゴミ山に向かってぴょいぴょいっと向かっていく。
……やっぱりなさそう、じゃあ次のゴミ山を探してみよう。
≫56 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 14:31:44
「ん?! これって……アタシにぴったりな洋服じゃん!!」
見つけた! ボロっちい洋服だけどアタシにジャストな洋服! 今着ている粗雑な服を脱ぎ捨て早速着込む。
クリスマスカラーのワンピース、故郷でよく着ていたお気に入りの洋服と似ていて少し気分が弾む。そうだ、脱ぎ捨てたぼろっちい洋服をちょっと加工すればいい感じの帽子になるんじゃ──
「ヒィ~っ! 馬の耳と尻尾を持った人間がいるゥ~! 気持ち悪りィ~~~!!!」
「っ、そんな?!」
振り返ると浮浪者の男が腰を抜かしてアタシを見ていた。
見られた! 2つの意味で見られた! 後であの男処す! いや、それよりもここから逃げないと、この話が憲兵たちにまで届けば今度こそアタシの逃げ場はない!
脱ぎ捨てたボロ布をひっつかんで急いで逃げ出す。ロクなモノを持っていなかったのが功を奏したか、直ぐに人目のつかない所まで逃げられた。けど、問題が一つある。
「お腹、すいたな……」
お腹がくぅくぅ鳴りました。なんて、可愛らしいモノではない。お腹がグゥグゥ喧しく鳴っている。
アタシたちウマ娘は文字通り馬並みにご飯を食べる。個人差こそあれどアタシは平均的なウマ娘と同じくらいには食べる。脱走してから3日ほど、その間マトモな食事は摂っていない。
限界、その二文字がチカチカとちらつく。
ひとまず、ボロ服を引き裂いて一枚の大きなボロ布にする。それを頭に巻きつけて両耳を隠す。尻尾の方はスカートの内側に入れて下から覗かない限りバレないようになっている。
衣服の問題はひとまず解決、次は食料探索をしなくては。
重たい身体を引きずって食べ物を探しに行く。
≫57 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 14:32:09
「──まじ? ……もう手回しされてるじゃん……」
町へと続く門には憲兵が常駐し、アタシの顔を写した写真片手に検閲をしている。ゴミを拾いに来た人は例外なく確認され、帽子やスカートをしている女性はその中身まで確認されている。
ここはダメだ、海の方で魚とか探した方が良さそうだ。確か、海賊がいるとかなんとか。少しくらい残飯もあるだろう。
「っ、こっちまで……?! そうまでしてアタシを捕まえたいの!?」
笑い声を上げながら、アタシの写真を片手に船の周りで屯する海賊たち。聞き耳を立てたところ、なんでもアタシを見つけて差し出せばとある貴族から莫大な報酬がもらえるとかなんとか。どう考えてもあの貴族ですありがとうございました。
こうなれば森の方に向かうしかないが、森の方には山賊が居ると聞いた。さらにはあの海賊相手に恐れず喧嘩を売る悪童4人組がブイブイ言わしているとか……ここで死ぬよりかはマシだろうか?
「──おい、あそこに誰かが居るぞ!!」
「っヤバ!! 逃げなくちゃ!」
急いで逃げる。もし捕まったらロクでもない目に会うし、それにみんなの犠牲が無意味になる。
ゴミ山を駆ける、駆けて、駆けて──ゴミに足を取られて転ぶ、擦り切れた腕が痛い、前に鞭打ちされた痕がヒリヒリと疼く。息が切れる、長距離も走れるアタシだが、もう限界が近い。
「きゃあ! うぅ……」
「ぐへへへ! こいつを突き渡すだけで2000万ベリーを貰えるだとよォ! まったく、ヌルい取引だよなァ!!」
「ウマ娘ってのは初めて見たが中々にカワイコちゃんじゃねぇか! 引き渡す前に少し楽しもうぜぇ!」
「っ、絶対に捕まったりなんかしないんだから……!」
ゴミ山に頭からずっこける。ボロ布で隠していた両耳が顕になる。……言い逃れはもう出来ない。
汚い笑い声を出しながら、アタシに躙り寄る海賊3人組。万全なら逃げ出せたかも知れないけど、限界を向かえたアタシではもう抵抗すら出来やしない。
≫58 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 14:32:31
とうとう両脇を抱えられ、前から薄気味悪い笑顔を浮かべながら近づいてくる海賊。
「さあその可愛いお顔を見せてみなァ!」
「う、うう……触らないでよ!」
「コカァーン??!!」
「なんてことしやがるウマ娘ェ!? 男シンボルに攻撃するなァ!?」
破れかぶれの蹴りを男の股間に蹴り込む悶絶する男。そしてそれを見て激昂する海賊たち。
「痛ってぇ……!? ──テメェ……少し解らせる必要があるなァ!?」
「ひっ……」
だめだ、今度こそ本当にダメだ。諦めたくなんてないのに……!
「──ウマ娘空手OP技、シクラメンステークス!!」
「「「ぎゃあァ~~~!!?」」」
「……え?」
ウマ娘空手の初級技、両腕のラッシュによって海賊どもは吹き飛ばされる。
「もう大丈夫だよ、だって──無敵のテイオー様が来たんだからね!」
「てい……オー?」
赤いマントを靡かせて、アタシを救ってくれたその少女は──
──どうしようもなくキラキラと輝いて見えた。
≫68 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 15:40:28
流れぶった切ってしまうけど前スレのドレスローザ編のライスを読んでて思い付いた展開を一つ
①ローの説得で和解したライスはギア4の反動で覇気を一時的に失ったルフィのためにルフィが覇気を取り戻すまでの10分間を稼ぐため一人でドフラミンゴに挑む。
②その様子が原作通りの流れで闘技場の解説者によってドレスローザ中に実況され、ライスを知らない人たちからは「誰だ?」と声が上がり、ライスがドフラミンゴの部下だと知る者たちからは「仲間割れか?」と困惑の声が広がる。
③一人で立ち向かってくるライスを見てドフラミンゴは「フッフッフッフッ……!今更お前もおれに逆らうのか?これまで散々おれの操り人形としてその手を血で染めてきたお前が?」「無駄だァ!お前が悪役(ヒール)であるのは変わりようがねぇ事実だ!!!」と豪語する。
④ドフラミンゴの猛攻でボロボロになるライスを見て、かつてオモチャの呪いをかけられていたときにライスから救いの手を差し伸べられたことがあった記憶がある住人たちがそのことを思い出しライスを応援し始める。
⑤「頑張れー!!」「ルーシー(ルフィ)が復活するまで持ちこたえてくれぇ!!」と様々な声援を受けて立ち上がるライスは毅然とした表情でドフラミンゴに良い放つ「ライスはヒールじゃない……ヒーローだ!!!」奇しくもその姿はかつて向けられていた罵詈雑言をコラさんがナギナギの実で庇ってもらっていた幼いライスの姿とは正反対で、それを見ていた満身創痍のローは涙を流す。
⑥その後ヴィオラやレベッカが現れてドフラミンゴに操られそうになったところを復活したルフィ(ルーシー)が助ける原作通りの流れに。
みたいな感じで長文失礼
≫75 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 16:56:00
短いですがチョッパーとフクキタルのSS書きました
「なあフク」
「どうしました?チョッパーさん」
「なんでフクは海賊になったんだ?」
トレセン諸島を出港し次の島を目指す最中、おれはフクキタルに尋ねた
『うるせェ!!!!イこう!!!!!』
『俺は面白い奴が好きだ!!!』
『う、う゛う゛、、、ル゛ブィ、、、ぜん゛ぢょ゛お゛お゛お゛、、、、』
「おれも同じようにルフィに連れ出してもらったから気になったんだ」
「ふふふっそういえばそうでしたね」
『うるせェ!!!いこう!!!!』
『…………お゛お゛!!!!』
「簡単に言えばなりゆきですね」
「な、なりゆき?海賊王になるとか勇敢な海の戦士になるとか何もないのか?」
びっくりした、海賊は楽しいけど大変なことも一杯あった
そんな海賊になりゆきで?ずっと憧れてたおれだって一大決心だったのに
「はい、なーんにもなかったんです。あの頃の私は空っぽでした」
「逃げるように故郷を飛び出して、あっちへふらふらこっちへふわふわ」
「ローグタウンに流れ着いて、半ば偶然メリー号に飛び込んで、あれよあれよと受け入れられて」
≫76 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 16:59:07
遠い目をしていたフクキタルがおれに笑いかける
「チョッパーさんは私の夢ご存知でしたっけ」
「もちろん『長生きしたい』だろ?いい夢だな」
「それだって最初は思いついたこと適当に言っただけだったんですよ」
「えっ?」
命知らずの仲間が多くて船医として心配が尽きない中、フクキタルの夢にはとてもほっとしてたんだけど……
「でも今は違います、長生きしてみんなで幸せになるんです」
「空っぽだった私にルフィさん達はいろんなものを詰めてもらった、なのにまだ何にも返せてません」
「私ヒーローじゃなくて海賊ですから、福を『分け与える』んじゃなくて、福を『もたらす』んです。そのためにはまず自分が長生きしないと」
そうやって笑うフクキタルにおれも笑った
「じゃあフクが長生きできるように、かかりつけ医のおれがどんな病気も怪我も治さないとな」
「はい、よろしくお願いいたしますね、先生」
以上です
チョッパーとフクキタルは繋がり多そうと思って書きました
ルフィの誘い文句同じだし、1スレ目にはもう合体技考案されてたし、空島編は基本的に一緒に行動しててゲダツは共同戦果という設定もありますし
≫100 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 18:15:15
フクキタルが鳴いたので、カマバッカ王国のサンジとオグリネタを張ります
カマバッカ王国にてサンジが「攻めの料理」習得を目指し
モモイロ島の新人類拳法師範と戦う日々を過ごしていたころ
ダイニングでサンジがこれまで奪い取ったレシピに目を通していると
地の底から響くような轟音が低く鳴り響く
「こいつは一体、何の音だ?」
ワイングラスを片手に革命軍のイナズマが答える
「王下七武海、オグリキャップがやってきたのだろう」
「七武海!」
脳裏をよぎるクロコダイル、モリア、くまの顔
カマバッカ王国の危機にサンジは部屋を飛び出していった
「・・・・・・女とあれば見境のない男というのは本当だったか」
オグリキャップが仲間と知っているイナズマは真剣な顔で飛び出したサンジを少し見損なった
廊下を走るサンジの耳に二人の会話が聞こえてくる。特にイワンコフの声は大きく、聞き取りやすかった。
「久しぶりねオグリキャップ、マリンフォードでは挨拶一つしに来なかったわね生意気!!」
「すまない、あの時はとても忙しかったんだ」
「そんなのヴァターシもわかっティブル!! お互い無事再会できてなにより」
サンジが駆け込んでくるが困惑した表情で足を止める
「なんで七武海と、和やかに話してんだ? カマキング」
「んん? ああぐるぐるボーイは知らないわよね、大きな声じゃ言えないけど彼女は革命軍の仲間なのよ。海軍へのスパイ!」
「かの……じょ?」
その言葉にサンジは七武海へと目を向け、頭の耳に気づき、そして顔を見た。
(ウマ娘! かわいい!)
久方ぶりの純然たる女性の姿に、砂漠で水を飲んだ時のように心が潤いを取り戻していくのを感じた
「初めましてレディ、わたくしサンジと申します。この奇跡の出会いに感謝を」
「ヴァターシとえらい違い、いや違いすぎでしょ」
「私はオグリキャップ、王下七武海をしている」
≫101 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 18:15:26
挨拶をしたところでオグリの腹が鳴り響き、カーテンを揺らす。
「そうだご飯を食べさせてもらおうと思ったんだ、頼めるかイワンコフ」
「でしたらわたくしめがご馳走しましょう、心行くまでお食べください」
「あ、おバカ」
「食べて、いいのか?」
「もちろん、お腹いっぱいになるまでお食べください」
「それは楽しみだ」
簡単オグリ顔でワクワクしながらダイニングに歩いていくオグリキャップ
調理場に向かおうとするサンジにイワンコフがキレる
「なにやってんのよバカ、あのオグリキャップに食べていいだなんて」
「レディにお腹いっぱい食べさせるのはコックとして当然だろ、普段満足まで食べられてないウマ娘ならなおさらだ」
トレセン諸島を思い返し自分の料理で幸せそうな顔になるウマ娘の姿が脳裏に浮かぶ
「ぐるぐるボーイはあいつがどれだけ食べるか知らないからそんなこと言えるのよ!!」
「?」
「瀕死の麦わらボーイの食べっぷりはまさしく底なしだった。だけどね、あの子はさらに倍は食べるわよ!」
「ルフィの、倍?」
それは一体どれくらいの量なのか、うまく想像できない
「と・に・か・く! 吐いた言葉は飲み込まさせないわよ!! 今習得してる「攻めの料理」と、ヴァナタのコック人生全てを使ってやりとげなさい」
一旦目を閉じ脳内のオグリキャップの期待にあふれた顔と野原に咲く花を重ね合わせ、気合を入れるサンジ
「どんな量だろうと、やり遂げてみせるさ!」
運ばれてくる料理を次々と飲み込み、頬を赤らめ笑みをつくるオグリ
調理場を駆け、九刀流"阿修羅"めいた残像を残した平行調理をするサンジ
しなをつくって声援を飛ばす毛深いオカマたち
食糧庫から大量の肉や野菜を持ち込むサンジ
ワイングラスを手にポーズをとるイナズマ
面白そうに見物するイワンコフ
≫102 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 18:15:47
一時間に及ぶ長いスプリント調理の末
空の食器で壁一面を埋めたオグリは満腹を告げた。
「ありがとうサンジ、おいしかった」
美女の純粋な笑顔に心奪われ、(料理人やってて良かった!)と思うサンジ
すると横から白く小柄な影
「なんや幸せそうやなオグリ」
「ああ。久しぶりにお腹いっぱいまで食べた。タマも一緒に食べればよかったのに」
「スコール突っ切ったんや、すぐ拭き取らんと錆びだらけになってまうわ」
追加で現れたウマ娘に、顔を青ざめさせるサンジ
「君も、食べるのかい?」
「うん? ああ、いやうちは小食なほうやで」
その言葉にごくり、と唾を飲み込む
「ど、どのくらいかな」
「あんた、麦わらんとこのコックらしいな。なら、あんたんとこのフクキタルよりも食わへんよ」
命拾いに安堵の表情をうかべるサンジ
「た、たすかったぁ!!」
心の底から出た叫びがカマバッカ王国に木霊した
≫166 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 20:59:59
田舎者属性でゾウでスーロンと混ざって戦うユキノビジン
包帯ぐるぐるのニコニコ笑顔で雷ぞうに食事を運ぶ
「拙者を探す追手が来ておるのだろう!」
「いんや、平和なもんですよ」
「嘘をつけ!」
とか
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 58スレ目
≫25 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 22:20:53
〜もしもマルゼン孫の立場がシャッフルされたら〜
ライス「あ、赤髪海賊団のライスシャワーですっ!よ、よろしくお願いします!……えっ?シャンクスさんのことは……その……」
スペ「海軍中佐のスペシャルウィークですっ!お母ちゃん、私、海軍一のウマムスメを目指します!夢は海軍総大将!!」
チケゾー「はいっ!ドンキホーテファミリーのウイニングチケットです!!…え〜〜〜っ!!?ドレスローザの人達っておもちゃにされてるの〜〜〜!!?がわ゛い゛ぞう゛だよ゛〜〜〜〜!!!」
≫47 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 22:46:32
話の途中で済まないがワイバーンだ!ドレスローザの夜会話みたいな妄想。
ドレスローザの夜、ローとライスシャワーは廃墟となった市街地を歩いていた。
ライスが一人で外に出ようとしているところをローが見咎め、多少のすったもんだを経て一緒で出掛けることで手を打ったのだ。ローとしてはごたごたが終わった直後に一人で行動させるのは危険だと判断したのだ。
「あそこのパン屋さんはね、飼ってる猫さんがよく撫でさせてくれたんだ」
「お前が遊ばれてたんじゃないのか?」
「そんなことないもん!!」
ドレスローザでの些細な思い出、昔あった他愛のない会話、ローが偉大なる航路で経験した出来事など、思いついたことをつらつらと喋りながら二人は歩みを続ける。
しばらくの間そうやって歩いていると、ふとライスシャワーが立ち止まった。
「どうかしたのか?」
「……さっきから誰かにつけられてる音がするの」
ローが周囲をうかがうも、特に目立った人影もなく、物音もしない。しかしライスシャワーのウマ娘としての聴力は何者かを捉えているようだった。
シャンブルズを使って謎の追跡者を引き出すか……と考え始めた時に少し後方の瓦礫が少し崩れた音がした。振り返ると、何者かが降参のポーズをとっているのがわかる。
黒い影ということしかわからない距離から、互いの顔を視認できる位置まで近づいた時にローは気付いた。
「あんたは……”怪物”のマルゼンスキー……!?」
「ご明察~。あなたに対しては自己紹介はいらなそうね。トラファルガー・ローくん?」
赤い改造水兵服に、腰まで届く長い髪。ウマ娘を示す尻尾と耳。
かけられた懸賞金は自分に劣るも、最初にその姿を確認された数十年前より姿形はほとんど変わらないウマムスメ。海賊はおろか海軍ですら『見つけても見なかったふりをしろ』という暗黙の了解がなされ、【この海で最も自由な存在】というあだ名の通り、偉大なる航路の様々な場所で目撃情報を耳にする生きた伝説、マルゼンスキーがそこにいた。
「一体何の用だ。あんたを怒らせるような真似はした記憶がねぇぞ」
「私はそんな当たり屋みたいなことはしないわよ」
≫50 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 22:47:10
失礼しちゃうわーと肩をすくめるマルゼンスキーを警戒しつつ、自分の後ろに隠したライスシャワーに意識を向ける。マルゼンスキーの名前は聞いたことがあるようだが、その本人が急に現れて混乱している様子が見て取れた。
ドフラミンゴ絡みで自分を捕まえに来たかと一瞬考えるも、二人に関係があるとは聞いたことがなかった。ゆえにローはマルゼンスキーが自分たちの後をつけてきた理由がわからない。
「えーっと、私が用があるのは、あなたじゃなくて、そのー、あなたの後ろにいる子なのよ」
「……こいつに?」
「あ、そのね、別に怖がらせるためじゃないの! ほんとよ? ただ、ちょーっとその子に訊きたいことがあって……ドフラミンゴのこととかじゃなくてね、その……プライベートな用事よ?」
やけにあたふたして歯切れの悪い言い方をするマルゼンスキーを不審に思いながらライスシャワーの方を窺うが、当の本人は、まだ首をひねり唸っていた。
ライスシャワーも唸ってては埒が明かないと結論をつけたようで、隠されていたローの背中からマルゼンスキーの目の前に立った。
マルゼンスキーも意を決したようにライスに目線を合わせるために膝を地面につけ……すぐに顔を逸らした。
「いや何してるんだあんた」
「ごめんなさいごめんなさい! ほんっっとうにごめんなさい!! もうちょっとだけ心の準備をさせて!!」
大きく深呼吸をし、気合を入れるためか自分の頬を何度か叩き、改めて向き直る。
「よっし。いくつか質問するけど、いいかしら?」
「は、ハイ……」
「あなたの名前は【ライスシャワー】で間違いないわよね?」
ライスがコクコクと頷く。
マルゼンスキーは一瞬大きく目を見開いたが、すぐに次の質問に移った。
≫51 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 22:48:17
「トレセン諸島の出身じゃないわね?」
「う、うん……小さい頃は港町にいたよ」
「…………じゃあ一番重要な質問をするわ」
マルゼンスキーは大きく息を吸い、それに反して息を絞るように問いかけた。
「あなたのお母さんの名前は………【ライラックポイント】………だったりしない?」
しばし無言の間が流れる。最初に口を開いたのはライスだった。
「……え、なんで。誰にも言ったことがないのに……」
ロー自身もライスの母の話は何度か聞いているが、その名前をライスが口に出した記憶はなかった。
「そう……そっか。そうなのね」
「あの……?」
「先に謝っておくわ。ごめんなさいね」
「え…ひぇ!?」
唐突に、マルゼンスキーはライスシャワーを抱き締め、顔を肩にうずめた。
傍で見守っていたローもさすがに面食らって制止しようと思ったが、マルゼンスキーの口からかすかに嗚咽が漏れていることに気付いた。耳元で『ごめんなさい』と『よかった』を何度も聞かされているライスはロー以上に困惑していた。
しばらく誰も口を挟めない状況が続き、奇妙な時間はマルゼンスキーがライスから離れたことによって終わった。目元が赤くなり鼻を鳴らしている姿は、さっきまで涙を流していたことを明確に示していた。
≫52 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 22:48:24
「……落ち着いたか?」
「……あーもー、ほんとカッコ悪いところを見せちゃったわ。おかげさまでね」
「だったら全部説明してやれ。こいつも俺も、何が何だかわかってないぞ」
「そういう流れになっちゃうわよねー…」
大きく一回ため息を吐くと、混乱で目を回しているライスに改めて目線を合わせた。その瞳にはさっきまであった迷いは消え、覚悟を決めた様子が見て取れる。
「えっとあの、お母さんのお友達……」
「違う」
ライスが混乱の中で出した回答を短く、鋭く否定する。
「友達なんかじゃないわ」
「なら……」
「ライラックポイント……”ライちゃん”わね、私の娘よ」
「え」
「……なんだと?」
「とどのつまり、私はあなたのおばあちゃんで、あなたは私の孫ってことになるの」
数呼吸置いた後、
「えええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
誰もいない廃墟にライスシャワーの声が響き渡った。
≫73 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 23:16:21
海軍シチーさん蛇足編
頂上戦争から2年後までの間にこんなことやってたんじゃね?という妄想が湧いてきたので投下します
/
──夢を見た。これまでで一番幸せだった頃の、忘れられない夢を見た。
早朝。いつも通り、朝に弱いアタシがボンヤリしながら部隊の詰所に入ると、上官に執務室に来るよう言われた。
今日の訓練のことかな?と思っていたら、開口一番「昇進おめでとう。本日付けで君は“大尉”だ」と告げられ、一瞬で眠気は消え失せた。
突然のことに驚くアタシに、上官──大佐はいつも通りに優しく微笑みながら、今夜の予定を聞いて来た。
昇進祝いに、ちょっとお高めのお店を予約しているらしい。え、マジ?
まさかの不意討ち気味のディナーのお誘いに、顔が熱くなるのを感じ「ああ、皆が大尉の昇進を祝いたいと言っていてね。勤務後に部隊の皆でお祝いだ」……うん、一瞬で頭が冷えた。
ハイハイ、そんなオチだと思っていましたよ。所詮は上司と部下だから?全然、残念とか思ってないし?子供じゃないんだから、特別扱いとか求めてないし?
アタシの内心に気付くことなく、大佐は微笑みながら少しだけ躊躇いつつ、金色の懐中時計を差し出しアタシの手に握らせた。
「これは私からの昇進祝いだ」と、渡されたそれに目を落とす。デザインはシンプルながら少々武骨で、見るからに頑丈そうな造りと、滑らかな優しい金色のコーティングか施されている。
その金色に見覚えがあって、もしやと思い「あ、ココ斑になってる」と鎌をかけると、面白いくらいに動揺した。相変わらず嘘吐けないね。
「嘘だよ。キレイに塗れてるじゃん」と伝えると、大佐は照れ臭そうに頭を掻いて「素人の仕事で申し訳ないけど、受け取って貰えると嬉しい」と白状した。
懐中時計をもう一度見る。明らかに実用性を第一に考えた代物で、普段ファンからアタシに贈られてくる高級品に比べたら、美的センスも値段も遥かに劣るだろう。
だけど、そのどれよりもこの懐中時計が一番輝いて見えて、何より嬉しかった。
≫74 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 23:17:31
油断すると頬は緩みそうで、耳と尻尾は今にも動き出しそうだったけど「ありがと、大佐。大事にするね」なんて、澄まし顔でお礼を言って。
我ながら凄く単純だ。さっきまでのちょっとした不満なんて消し飛んでて、心の中は信じられないくらい温かい気持ちで満たされていた。
しばらく互いに微笑いあって、そのまま本日の業務と訓練について打ち合わせを開始する。
ポケットに仕舞った金色の懐中時計の重さが嬉しくて、思わず笑みが溢れてしまう。いけない、いけない。ちゃんと真面目にやらないと。
まあ、その前に──
「ねぇ、大佐。こんなアタシだけど、これからもよろしくお願いします」
アタシの言葉に、大佐は子供みたいにキラキラした眼を細め「こちらこそ。これからもよろしく頼む」と微笑んだ。
──そんな大切な、悲しくなるくらい酷く優しい夢を見た。
/
その日、男は今日が己の人生で最良の日であると確信していた。
男の名は“鉄槌”のマンアーニ──所謂、“億超え”と呼ばれる賞金首にして、泣く子も黙るマンアーニ海賊団の船長である。
そんな彼は今、船長室にて目の前に置かれた宝箱の中身をうっとりした表情で見つめていた。
宝箱に収まる唐草模様の大ぶりな果実は、先日襲った商船に積まれていた食糧や金品の中でも特に価値の高い一品である。
──悪魔の実。
「海の悪魔の化身」とも呼ばれ、一口食べれば一生泳げなくなることと引き換えに、その実に宿る特殊な能力を手に入れることが出来るという不思議な果実。
≫75 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 23:18:26
その効力や希少性から、売れば1億ベリーは下らない値がつくとされる正しく「海の秘宝」。
自分で食べ更なる力を得るか、売り払って大金へ替えるべきか。この悩ましくも贅沢な命題を楽しみながら、マンアーニは実の表面を優しく撫でた。
「…ふむ。俺様自身が食うのもいいが、手下の誰かに褒美として食わせてやるというのも…無し、ではないな」
海賊というコミュニティにおいて、信賞必罰は非常に重要だ。
更なる己の強さや、1億ベリーの収入は惜しいが…手柄を挙げた手下に恵んでやるのも良くない、わけではない。
手下供はマンアーニの度量に深く感服し、より励むようになるだろう。船長としての立場で考えると、これは得難い機会だと言えなくもない。
正直、惜しくないわけがない。
だが、この海において泳げないというデメリットは小さくない。何より船長としての求心力は、こういうことの積み重ねだ。
──よし。これは次に手柄を立てたヤツにくれてやろう。
そう考え宝箱の蓋を閉じると同時に、船長室の扉が勢いよく開き──妙に小綺麗な格好をした手下の一人が、慌てた様子で入ってきた。
「馬鹿野郎!ドアが傷むからゆっくり開け閉めしろっていつも言ってなくはないだろうがっ!」
「スンマセンお頭!でも大変なんです!実は海軍が来たんです!」
かなり興奮しているのか、船長に一喝されて尚怯むことなく手下は海軍の襲来を告げる。
「何っ!?数は?接敵まではどれくらいだ!?」
「それは、ああもう間に合わない!じゃあ、伝えましたからね!」
≫76 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 23:19:27
相当切羽詰まっているのか、手下は大慌てで出て行ってしまった。
結局、何一つ分からない状況に舌打ちしつつ、宝箱にしっかり鍵を閉めマンアーニは甲板へ急いだ。
/
甲板へ出てすぐ、マンアーニは困惑した。
何故か手下全員が妙に小綺麗な格好をし、こちらに背を向けキレイに整列している。
周囲を見渡すと、遥か遠くに海軍の船らしき影が見えるが、動いている様子はなく手下供もまるで気にしていない。
どういうことかと訝しげに思いながら、手下供の視線のその先に目を向け──マンアーニは大きく目を見開いた。
「よし、と。サインこんな感じでいい?じゃあ次の人ー」
──女神がいた。
見事な金色の“尾花栗毛”に、絶世と呼んで尚賛美が足りないと思える美貌。頭の上でピコピコ動くウマ耳に、ゆらゆらと揺れる尻尾もまた黄金の如く輝いている。
曰く、百年に一人の美少女ウマ娘。
曰く、海軍に咲く黄金の花。
曰く、今世界で最も有名なモデル。
海軍本部所属、“金砂”のゴールドシチー大佐。
そんな超有名ウマ娘が、各々一張羅を着た手下供一人一人と丁寧に握手し、その服にサインを描いていた。
「い、一体なにが…」
≫77 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 23:20:34
鼻の下を伸ばし締まりの無い表情で握手をしてもらう者。サインを描いてもらった服を脱ぎ額縁に入れる者。握手した手やサインを愛しげに眺める者。
そんなあり得ない光景に、マンアーニは茫然と呟いた。
「あ、お頭。最後尾はこっちッス」
「──いや、アホか貴様らっ!!」
暢気に列の整理をする手下を殴り飛ばし、並ぶバカ供を掻き分け進む。
途中もみくちゃにされながらも何度か手下を怒鳴りつけ、何とか先頭へとたどり着く。
「おい海軍!一体どうやってここまで来やがった!?というか何だこの状況はっ!?」
近くで見たゴールドシチーの姿に、思わず握手とサインを頼みそうになった内心を誤魔化し問いを投げる。
問いの答えはあっさり返ってきた。
「どう、って。普通に船から走ってきただけだよ。あとはまあ、ファンサービス?」
肩を竦める姿すら画になる美貌に圧倒されながら、マンアーニは吠えた。
「テメーら!海軍相手に鼻の下伸ばしてんじゃねぇっ!!」
船長からの叱責に、浮かれていま手下達がハッとした表情で慌てだす。ようやく理解が及んだらしい。幹部含め、彼の手下にはバカしかいなかった。
しかし、幸い相手は一人。海軍の船も遥か遠くで停止している。
「コイツは完全に孤立してる。囲んで捕らえろ──そしたら、後でお前達にも“使わせてやる”」
≫78 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 23:21:19
“陸の人魚”とも称される見目麗しいウマ娘は、かの天竜人も求めて止まない希少品である。
そこいらの島の町娘や娼婦とは比べ物にならない、天性の美しさを持つ種族であり、ゴールドシチーはその中でも尚極上といえる存在だ。
本来であれば手が届くことなどあり得ない。だが現実として、あのウマ娘が──ゴールドシチーが目の前にいる。
一瞬で目の色を変えた手下供に、内心「現金なヤツらめ」と悪態を吐きながら、マンアーニはゆっくりと後方へ下がった。
──ウマ娘の身体能力が高いことは周知の事実である。
特にその脚力は他の追随を許さず、地上最速の種族とまで称される程だ。
そしてそんなウマ娘達の中でも、一部の際立った者は“海渡り”──所謂、海上を走ることができるという。
即ち、ゴールドシチーの言葉を信じるならば、彼女もまたその“一部の際立ったウマ娘”の一人ということになる。
芸術品ような見た目に騙されてはいけない。仮にも、海軍本部において大佐という肩書を持つ女だ。
まず手下供で囲んで疲弊させ弱らせてから、幹部達と自分で捕らえればいい。
ウマ娘、それもかの有名なゴールドシチーならばさぞ高く売れるだろう。そして、売る前に色々と役得があっても罰は当たるまい。
手下供も同じ考えなのか、先程まで握手やサインで無邪気に喜んでいたとは思えないほど卑下た笑みを浮かべ、哀れなウマ娘を取り囲んでいる。
≫79 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 23:22:36
「あー、うん。まあそうなるか。自主的に投降してくれたら、それが一番だったんだけどね」
残念。と軽口を叩くゴールドシチーに、近くにいた手下達が襲いかかり──彼女に触れられもせず、互いに縺れて頭をぶつけ気を失った。
それを見た周囲は、何できずに自滅した間抜けな役立たず供に罵声を浴びせ、次は自分だと飛び出し──今度は互いの拳が、蹴りが、互いの顔面にめり込み意識を飛ばす。
その後も、似た光景が繰り返された。
勢いよく飛びかかろうとし、転んで数人まとめて頭を打った者達。
縛って捕らえようと縄を持ち出し、味方を巻き込み身動きが取れなくなった者達。
多少の傷は仕方ないと剣や銃を抜き、見事に同士討ちをする者達。
その中を、ゴールドシチーは堂々と歩を進める。
まるでランウェイを行くように。肩で風を切り、どの角度からでも最高の自分を“魅せる”ように。
──海軍本部所属“金砂”のゴールドシチー大佐。
高度な見聞色の覇気の使い手にして、“視線誘導”の達人。
彼女が行っているのは、原理そのものは至極単純。
見聞色にて周囲の意識を読み取り、モデル業で培った“魅せる技術”を用いて、意図的に相手の行動を制限した上で誘発させる。
彼女の表情や所作の一つ一つに目を奪われれば、自覚の有無に関わらず反射的に誘導された動作を行ってしまう。
彼女の見聞色に囚われれば、例え周囲から一斉に斬りかかろうが、銃弾を見舞おうが意味を為さない。
≫80 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 23:23:24
制限された動作に移った時点で、既に彼女は回避を終えている。
指の隙間を通り抜ける細かな“砂金”のように、彼女を捉えるのは至難を極める。
この状況は、そんな彼女の技術のちょっとした応用によってもたらされた。
緻密な動作制限と細かな行動誘発を繰り返し、自らは手を出すことなく同士討ちを発生させ、周囲の海賊達の悉くを無力化する。
彼女には、一撃の下に艦隊を食い破る神威など無い。大地を砕き、天を裂く暴力は持ちえ無い。
それでも、彼女には彼女にしかない確かな才覚と、何より積み重ね磨いた武器がある。
「──ハイ、お疲れ」
左右からそれぞれ棍棒と斧で殴りかかって来た海賊の手下を同士討ちさせ、ゴールドシチーは最後の一人であるマンアーニに向き直る。
驚愕に言葉を失う海賊団の船長に、シチーは優しく語りかけた。
「今からでも投降する?まあ海賊は捕まったら打ち首確定だけどさ、監獄での扱いくらいなら便宜を量れるよ」
どうする?と軽い調子で尋ねるウマ娘の海兵に、マンアーニは無言で背負っていた鉄槌を叩き付けた。
今まで数多の敵対者を染みに変えてきた一撃は、しかし当然のようにシチーの真横に振り下ろされ船床に穴を空けるのみに終わる。
「──能力者、ではないよな?」
「どうかな」
そもそも海の上を走っているのだから能力者なわけはないが、何事にも例外は存在する。
≫82 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 23:24:17
能力者であれば、例え自然系であろうともこの海楼石製の“鉄槌”で仕留めてきたが、反応からしてどうやらこの海兵は違うらしい。
信じ難いことに、あの奇妙な技は悪魔の能力ではなく、全く別の技術のようだ。
警戒心を露に、マンアーニは再度“鉄槌”を振りかぶる。
ウマ娘は希少品で、特にこのゴールドシチーは想像もつかないほど貴重だが、仕方ない。
手足の一本でも潰して捕らえられるか、或いはこの船の染みが一つ増えるか。どうなるかは運次第だが、最早無理に“生かして捕らえよう”とは考えていなかった。
大上段に構えられた“鉄槌”が、唸りを上げて振り下ろされる。
それを見て、シチーは左手の掌を上にゆっくりと自身の頭上に掲げ──轟音。
──手応え有りっ!!
柄から伝わる感触に、マンアーニは狂暴な笑みを浮かべ──その表情が凍りつく。
「──“鉄塊”」
不動のまま、無傷でマンアーニの“鉄槌”による一撃を防ぎきったゴールドシチーの姿。
そして、無惨に砕け散る自身の分身とも言える“鉄槌”の姿。
唖然とするマンアーニに対して、シチーは僅かに腰を落とし、開手した両掌を相手に向けつつ上下に構えた。
「ちょっと痛いよ?ウマ娘武術、奥伝『第壱號級重衝──』」
背筋を走る悪寒に、マンアーニは何とか身を守ろうとするが、それはあまりに遅過ぎた。
≫83 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 23:25:18
「『──槃震燦災朱蹄駆崇』」
瞬間、マンアーニは周囲から無数の衝撃を受け、立ったまま意識を失った。
/
気絶した海賊達を手早く拘束し、持ってきていた発煙筒で遠く離れた海軍船へと合図を出す。
様子見するだけと言っておいて、一人で海賊を拿捕したため補佐官に怒られるだろうが、今回ばかりは仕方ない。
合図を見て、大慌てでこちらに向かってくる船を尻目に、海賊船内を物色する。
宝物庫──外れ。
食糧庫──外れ。
船長室──当たり。
宝箱に付けられた南京錠をネジ切って外し、中身を確認する。
目当ての品──悪魔の実。当たりだけど、外れ。この実じゃない。
「どこにあるんだろ──“シャラシャラの実”」
かつてのアタシの上官──大佐が食べた、その身を“砂金”へと変える自然系の悪魔の実。
海軍の資料室に残されていた写真で、見た目は分かっている。大佐がマリーフォード頂上戦争で死亡し、もう十分な時間が経っている以上、既にどこかにあるはずだ。
襲われた商船の積み荷の中に悪魔の実がある聞き、大佐権限全開で出動したわけだが、結果は空振り。
これで何回外れを引いたっけ?と指折り数え、お目当てを見つけたとしてアタシは一体どうしたいのか考える。
≫84 二次元好きの匿名さん21/09/26(日) 23:26:01
大佐と同じ悪魔の実を食べて強くなりたいのか?
大佐の遺品を手元に置いておきたいのか?
それとも、単純に誰かの──特に海賊の手に渡るのが嫌なだけなのか?
相変わらず答えは出ない。出ないが、この失せ物探しを止めるつもりも、今のところない。
──見聞色の範囲に、見知った気配を複数感知する。
どうやら船が着いたらしい。相当急いでいたようで、焦りの感情を色濃く感じる。
補佐官のお小言を予見しつつ、悪魔の実入りの宝箱を小脇に抱え部屋を出る。
まあ今回は残念だったけど、運が向くまで気長に探すと致しましょう。
終われ
長々と失礼しました。取り敢えずこんな感じで、恩師の遺品(?)である悪魔の実を探索中
どうしたいかはシチーさん自身分かってないし、そもそも見つかるかも不明
≫104 二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 00:09:04
早く戦闘シーンまで行きたいと思いつつ、フクキタル劇場版妄想ssの続きを投下。
前回までのあらすじ。
URA島で「セン」というウマ娘と出会ったルフィ一行。
島を救った海賊のウマ娘に憧れ海賊となろうとする彼女。だが育て親として反対した占い師の婆さんと喧嘩して走り去ってしまい、フクキタルは彼女を追いかける。
センは自身の母親を探す為にも海に出たいと考えていた。
そんな彼女の為、フクキタルはウマ娘空手を教えたり、二人だけのレースやライブをして楽しむ。
だがそんな最中、嫌な予感がした二人。センはフクキタルを置いて老人の海賊兄弟(とデカいスズメ)に挑むも、返り討ちにされ何らかの能力で拘束されてしまう。
フクキタルはセンをドクロ水晶の見学を終えた一味の元に連れ帰ると、スズメに乗った海賊兄弟の弟が襲来し、センを解放してほしければドクロ水晶を日暮れまでに自身の船に持ってくるよう要求したのであった。
≫105 二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 00:09:37
「何だったんだあの爺さん…。」「何でもいい、あのジジーの要求なんざ呑む必要ねえ!ぶっ飛ばしてセンちゃんを元に戻させりゃいい!」「…いえ。それは難しいんじゃないのかしら。」そう返したのはロビンだ。
「あのお爺さん「天星のヌース」って名乗ったわよね。それが本当で、彼のお兄さんがいるとすれば少々厄介よ。」
「「天星のヌース」…。ゴールド・ロジャーと同じ時代に活躍した海賊で、当時は2億5千万の懸賞金がかけられたというわ。さらに彼のお兄さん…「不可逆のナイン」は懸賞金3億、ルフィと互角の賞金首なのよ。」
「3億に2億5千万、それに海賊王と同世代!?」悲鳴を上げるナミと、驚愕の表情をするウソップ、チョッパー、フクキタル。
「…渡すしかあるまい。」そう言ったのは占い師の婆さんだ。「秘宝であろうとセンには代えられん。」
「な、何言ってんのよババ様…!あたし達の役目は秘宝を守ることだよ…!?あたしが馬鹿みたいに突っ込まなきゃこんなことにはならなかったんだ…!あたしのことなんか「バカ言うでないわ!」!?」
「お前は後継者以前に、娘みたいなもんじゃ!!娘を見捨てる母がいてたまるか!!」「ババ様…!」婆さんの剣幕に何も言えなくなるセン。
「ねえ!偽物を作るってことはできないの?」そう発言したのはナミだ。
「この島って水晶加工が有名なんでしょ?だったら偽物を作ってあいつらに渡して解いてもらうってのも「無理じゃ」何でよ!?」ナミの提案を途中で止める婆さん。
「このドクロ水晶は特別な水晶で出来ておってな、並みの水晶じゃごまかせんのじゃ。そうでなくともあの兄弟を騙すのは不可能じゃ。奴らはこのドクロを実際に見たことがあるからの。」
その言葉に一同は疑問を抱く。まるで婆さんがあの海賊のことをよく知っているかのようなのだ。
「なぜ知っているか?__といった顔をしておるな。あいつらはな、元々この島の住人じゃ。この島の「英雄」のウマ娘について行って海賊になった、バカな幼馴染達じゃよ。」
≫106 二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 00:12:16
___夢を見る。
それはまだワシが若く、この島で日々を過ごしていた時だ。
島の住人は占いに頼って降りかかる不幸を避ける事ばかり考え、それに立ち向かう者は殆どおらんかった。島に海賊が来ると占いで出た時にワシらが迎撃を訴えても、要求される物を用意して穏便に済ませようという意見が殆どだ。だが結局海賊が暴れはじめ、それを止めるためにワシら兄弟が戦うも絶体絶命となった時、「英雄」のウマ娘__後のワシらの船長に救われた。
故郷を救った船長は強く、美しく、優しいウマ娘だった。そんな船長に惚れこんだワシは、だからこそ弟と共に海賊団に勧誘された時は、跳び上がるほどに喜んだ。心配する幼馴染を説得して海に出たワシらは、船長と共に大冒険を繰り広げた。様々な抗争の中、船長はたった一人で敵陣に乗り込み、脅かされる弱き人々を救い感謝される様は、まさに二つ名の「英雄」に相応しかった。
ワシは彼女こそ海賊の中の王___「海賊王」と呼ばれるに相応しい人だと信じて疑わなかった。
___だがこの生活は唐突に終わりを告げた。
とある巨大な海賊団の内部抗争に巻き込まれた一般人を救う為に横やりした結果、その矛先がこちらを向いた。船長はワシ達を逃がすために殿を務め、そして____
「…兄ちゃん!約束の時間だが、奴ら来たみたいだぜ!」「…うん?」ナインはヌースの言葉で夢から醒める。
弟が向いた方向を見ると、ふざけたライオンの船首の海賊船が見えた。ヌースが話していた超新星のルーキーだろう。「オレが見抜いた通り、あの子を見捨てることはしなかったみたいだな。」
「どうだろうな。この島の連中相手なら脅しつけりゃ、面倒は避けようと差し出すと思っていた。だが海賊どもが関わっているなら、果たしてドクロが本物かどうか…。」
「…まあ偽物なら島に直接乗り込んで本物を差し出すよう脅しつけりゃいい。」「おいおい、あまり手荒なことはやめようぜ…。」兄の物騒な発言に辟易としつつも、ふとヌースはこれまで疑問に思いつつ言う機会がなかった疑問を口にした。「兄ちゃん、ドクロ水晶を使えば、本当に会えんのかな…船長に…。」
その瞬間、海賊船の方から声が響いた。「ドクロを持ってきた!約束通りセンを解放しろ!」
≫176 二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 12:36:15
ふと、パンクハザード編に参戦するチケゾー概念が浮かんだので
原作確認しないで走り書きしたので細かい矛盾あったらごめんね
頂上決戦後。無事大佐に昇進したものの、テイオーの離反やセンゴク、ルドルフの引退等で目まぐるしく変わる状況の中で「あたし、本当にこのままでいいのかな…」と悩みを抱えるようになるチケット
更に同期のタイシン、ハヤヒデが任務中に負傷し療養生活へ。ますます落ち込んでしまう
気晴らしに新聞を読むと「自分を変えるなら環境を変えるしかない!」という自己啓発めいた一文が目に入り「そっか!環境を変えればいいんだーっ!!」と勢いのまま思い立ち、勢いで新世界入りを決意する
少し世話になったことがあるスモーカーがG-5支部に自ら願い出て異動していたのを思い出し、とりあえず療養中のハヤヒデとタイシンに相談。タイシンからは呆れられ止められるも、ハヤヒデは意外にも「チケットがそう決めたなら行ってみるといい。私から話を通しておこう」とGOサイン
チケットが去った後の病室にて話すタイシンとハヤヒデ
タイシン「ちょっと、何考えてんの。G-5ってあの窓際部署でしょ。チケットをあんなとこにわざわざ送り込むなんて…」
ハヤヒデ「最近チケットが落ち込んでいるのも分かってたからな。環境を変えれば変化がある…というのは一理ある。それが良いか悪いかはチケット次第だ」
≫177 二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 12:36:27
ハヤヒデの協力もあってG-5異動となったチケット。またこのうるさいのの面倒を見ないといけないのか…と眉間を押さえるスモーカー。美女が増えたぞー!とはしゃぐ下っ端の皆さん。最初に「チケゾーって呼んでね!」と言ったので下っ端からは「チケゾーちゃん」と慕われることに
後輩のたしぎがあっという間に海軍大佐まで昇進したことに関しては素直に称賛するも、この2年でやっと大佐になることができた自身と比べて複雑な思いを抱いたり
そしてパンクハザード編へ
ローからは人格を入れ替えられるどころか手足を切り落とされることすらなくシャンブルズで軽くあしらわれる(多分この辺がライスの存在の伏線。ウマムスメに対して色々思う所があるらしいのを匂わせる)
尚この事をロー本人に問い詰めると「別に。能力も警戒せず突っ込んでくるようなバカは相手にするまでもないと思っただけだ」と返してくる
下っ端A「大丈夫かチケゾーちゃん!本当に何もされてないか!?ちゃんと指とか揃ってるか!?」
チケット「えっ、どうだろう。ちょっと数えてみるね」
下っ端B「ちゃんと6本あるか!?」
チケット「1、2、3、4、5…うわーっ!?5本しかない!!」
スモーカー「指は最初から5本だバカタレ」
そこから色々あって最後には自分が海軍になったのはトレセン諸島での誘拐被害者の家族の悲しげな顔だったのを思い出し、自分のやることはこれからも変わらない!泣いてる誰かを一人でも多く救う為に!と決意を新たにするところに着地してほしいな、というネタ
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 59スレ目
≫84 二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 20:01:29
ふと浮かんだ1レス怪文書
十数年越しに再会したライスシャワーは、可能であれば必ず毎朝牛乳を飲む。
牛乳は日持ちしねぇから毎日は無理だと伝えたらある時だけでいいからと懇願してまで飲む。
ある日、また飽きもせずに牛乳を飲むライスシャワーにローは問いかけた。なぜそこまでして牛乳を飲むのかと。
ライスシャワーは答えた。牛乳を毎日飲めば背が高くなるの、と。
ローは一瞬目眩がした。嘘だろお前と思わず呟いた。
牛乳を飲んだところで背は伸びねぇしそもそもお前のウマムスメとしての成長期はとっくに終わっていると懇切丁寧に伝えた。しかしまだ納得してないらしい。なんの根拠があってそんなこと言うの、なんてムキになっている。
ローは淡々と言い放った。
「おれは医者だ」
ライスシャワーは膝から崩れ落ちた。
≫92 二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 20:23:53
>>84
だってライスはお母様の娘なのに。
ライスが見ているのは家族の写真が入っているペンダント。
優しそうな父親に幼少のライス。
そしてライスを少し背を高くして色々と肉付きをよくしたような容姿の母親だ。
だが色々と計算してみるとこの写真のライスの母親は今のライスよりも2、3才若い時の写真だ。
即座にそうした計算をしたローの答えは沈黙だった。
≫95 二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 20:34:55
>>92
マルゼンおばあちゃんだって凄いスタイルいいでしょ?
ライスが希望に満ちた目で言った
なるほど、たしかにこのまま成長を続ければ
無意味な仮定を医者としての知識が否定した
ウマ娘の成長期は変わらない
怪物マルゼンスキーが年齢に際して若すぎるのは謎だが
結局27歳の時にはあの姿だったと結論づけられる
ローは機嫌を治してもらうためのパフェの選定を始めた
≫101 二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 20:57:20
コラさんがライスを海軍に保護してもらうのを望んでたから、ルドルフが「海軍に来ないか」って誘うんだよね。海賊が海軍になった例はあるからって
でもライスは首を横に振って、もうついてく人は決めましたからってローの方を見るんだよ
で、ローとライスが去ってから「振られてしまいました。あなたのいい話し相手ができると思ったのですが」って言うルドルフに「余計なお世話だ」と返すセンゴクは台詞こそそっけないけどちょっと笑ってるんだよね
≫110 二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 22:53:36
パンクハザードのチケゾー概念、テイオーを逃してしまったことやタイシンとハヤヒデが深めの傷を負ったのに自分だけ殆ど無事だった負い目とかで変わらなきゃって思いが先行してG-5まで来たはいいもののそう簡単に変われる筈もなく悩みを抱えることになるんだけど、そんな折にヴェルゴ中将に優しく声をかけてもらうんだ
「トウカイテイオーの離反、同期のナリタタイシン大佐及びビワハヤヒデ少将の負傷。思うところはあるだろう。だが焦ることはない。ここでゆっくり、己の為すべきことについて考えるといい。私は今は君の上司だ。悩み事があったら遠慮なく相談してくれ」
チケゾーは感涙してヴェルゴ中将を「ヴェルゴさん」と親しげに呼ぶようになるんだ。特に咎められることもないから更に懐くようになるんだ
で、パンクハザードで再会して「あたし、嬉しかったんだよ……?ヴェルゴさんが優しくしてくれて、ほんとにほんとに嬉しかった!皆からも慕われてて、カッコよくて……あたしもいつかこんな風になりたいって……なのに……なんで……」って崩れ落ちる
そんなチケゾーにヴェルゴは「ああ……ウイニングチケット大佐。君は噂通りのバカだったよ。スモーカーと違って扱いやすくて助かった」と追い打ちをかけるんだ
≫116 二次元好きの匿名さん21/09/27(月) 23:06:28
自分もルドルフ一人のイメージだなぁ…で、終戦後にデジたんが駆けつける感じ。
世紀末海賊団を前にして、ルドルフ一人が立ちふさがる。
オペラオー「君一人で僕たちを止められると思っているのかい?」
世紀末海賊団が攻め込もうとするが、ルドルフの覇気でモブは全滅する。
ルドルフ「――無礼るなよ」
鬼気迫る『皇帝』の姿に、覇気に倒れなかった者たちもたじろぐ。
そんな中、オペラオーだけがわかっていたと言わんばかりに不敵に笑い、
オペラオー「…やはり覇気は衰えていないようだね」
そういって、ルドルフへと向かい歩き出す。周りも慌てて戦闘態勢を取ろうとするが、
オペラオーはそれを制すと、
オペラオー「ここは僕にまかせてくれたまえ」
そう言って、オペラオーはルドルフの前に立った。
――かくして、もう一つの頂上決戦が始まる。
みたいな感じを考えてました。
オペラオーが「決闘」の形式を選んだのは、自らの誇りと、後の事を考えて。
勝利しても敗北しても、余力を残す必要があったため、メンバーを待機させた。
デジたんが後から来たのは、二人の勝負に水を差さないようにするためと、
マリージョアいう場所の都合、二人の決着がついた後、ウマ娘達が『行方不明』にならないよう、
勝者敗者関係なく確保するため。
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 60スレ目
≫143 二次元好きの匿名さん21/09/28(火) 09:45:00
ナカヤマフェスタはフクキタルとの戦闘後、大の字で寝転がって彼女のセリフを思い返していた。
「私たちの船長は負けません!!未来の海賊王ですから!!占い師の私がいうのですから間違いありません!!」
「占い師…ねぇ」
寝転がったまま顔を上げ、空中で激戦を繰り広げる金獅子のシキと、フクキタルが言っていた船長麦わらのルフィの両者を視界に入れる。
「どう考えてもウチの船長の方が強い。だが、麦わらには惹かれるものがある」
海賊王ことゴール・D・ロジャーのことはシキの話の中でしか知らないが、その話で聞いた雰囲気とルフィから感じるものが似ているような気がした。当然まだまだ実力は足りていないが、それを含めて面白いと感じてしまう自分がいる。
「ん…」
瞼が重くなってきた。
そこまで血は流していないが、なかなかに疲労が溜まっているらしい。
彼女は完全に意識を失う前に、自分を倒した占い師への敬意と、自身の船長が今度こそ天王山で勝てるよう期待を込めて小さく呟いた。
「麦わらに全ベットだ」