スレ内に投稿されたSSまとめ(71~80スレ目)
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麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 71スレ目
≫141 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 12:50:36
ルフィとローが同盟組んだ記事読んだウオッカ、「同盟」って書いてあるにも関わらず「王下七武海のトラファルガーすら舎弟にしちまうなんて流石ルフィパイセンだぜ!!」と勝手に感激してそう
≫145 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 13:28:22
ドレスローザ編で「お前がルフィセンパイの舎弟のトラファルガーだな!?」って言ってワンピ特有のツッコミ顔で「誰が舎弟だ!!」って返されるの極めて鮮明に再生される
≫149 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 13:40:57
都合の良いときだけ「母上…♡」と呼ぶハンコック概念
「しょ……しょうがないね!今回だけだよ!」と許しちゃうヒシアマ姐さん(数百回目)
≫152 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 13:56:11
8レスくらいありますが、キョーシ過去編投下します。
今回、今までに出てきたキョーシの設定を見る中で個人的に抱いた、
「ここってどうなのかな?」って疑問点を解消するためのものです。
- バッシュとはどうやって知り合ったのか?
- キョーシはウマ娘に混じっても、ちゃんと潜入捜査ができるのか?
- 潜入捜査ができるとしたら、ウマ娘の習性を熟知しているのではないか?
- ドーピングとウマ娘の身体能力とはいえ、ルフィとフクキタルに良い勝負ができるのか?
- 正直、この二人と闘うのであれば、ストーリー背景がキッチリと欲しいなあ・・・
- そのストーリーは、ウマ娘への差別や蔑視を描いたものでありたいなあ・・・
今回、オリジナルウマ娘?が登場する為、その詳細を下に書きます。
【トゥエルブ・A】
本名不明。トレセン諸島では“13”を意味する忌み名を名乗る、海賊船船長。
元ネタはサンタアニタパーク競馬場の控え馬房の部屋番号。13を嫌って、12と14の間を「12a」としている。
≫153 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 13:56:30
偉大なる航路の島々の一つ、草の一本も生えない荒れ地の島。
遮る木々もない平野に横並びとなった、首輪を嵌められた十六人の男達。
大柄な魚人の担いだ神輿に乗ったウマ娘の巨躯は、優に大人五人分の上背を誇り、
十六人の“出走者”を眺め、下卑た笑い声を上げながら、手にした大筒を天へと掲げた。
「ブルルルルルルル、生き残りたければ、走れェ!」
大筒から轟音が鳴り響き、十六人は一斉にスタートを切った。
爆弾付きの首輪を嵌められた男達は必死の形相となって先頭を目指し、
一人の男が加速を付けようと地面を踏み蹴った時、その蹴り足は血霧となって爆発した。
「い、ぎゃあああああ!!!!!」
「地雷だ! あの女、レース場に地雷を埋めてやがる!」
出走者達の走りが鈍るも、留まった者達には容赦のない銃撃が襲い掛かる。
“トゥエルブ・A”と名乗るウマ娘の海賊頭領には、捕縛した海賊船から拉致した船員に、
爆弾付きの首輪を嵌め、地雷原のレース場を走らせる“悪癖”が存在していた。
当の本人は出走者を追うように神輿を担がせ、苦しむ奴隷達の姿を愉しげに観戦している。
「どうした!? 残った一人だけを生かしてやる、勝利とは命だ!」
絶叫が響き、絶望が支配するレースを勝利したのは、一人の若者だった。
海賊船の斥候だった彼の健脚は、踏み抜いた地雷が爆発するよりも速く、前方へと駆け、
爆風による火傷を負いながらも、振り絞った死力が生んだ体力が、微かに他の者よりも勝った。
「よくやったね。最も速く、最も強く、最も運のいいウマだけが、このレースに勝てる。
おい、……二着以下に用はねぇ。全員殺して、ブタのエサにしな」
肉を潰す怪音、頭蓋を撃ち抜く銃撃音がファンファーレとなり、一着の男を称賛する。
“トゥエルブ・A”は大柄な身体を揺すりながら、眼下の男へと問い掛けた。
≫154 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 13:57:32
「お前、アタシが飼ってやるよ。――――名前はなんだ?」
屈辱と絶望、何よりも生還への安堵が浮かんだ涙を流しながら、男は跪いた。
「キョーシです。……貴方のペットは、チョウ・キョーシです……」
“トゥエルブ・A”が海賊船を襲う度に例外なく、地獄のレースは開催され、キョーシは生き残り続けた。
自慢の健脚もさることながら、地雷の埋まった地面の癖を見抜く、天性の勝負勘が幸いした。
自身より速度で勝る者に後方からプレッシャーを掛け、地雷原へと誘導する狡猾さも兼ねながら、
飼い主の不興を買うのを恐れ、敢えて地雷を踏んで辛勝する小細工さえ弄していた。
「キョォォーシィィ、今日も一着かい。アンタは本当に、退屈なウマだねぇ……」
「ほら、ご褒美だよ。たんとお食べ、――――またレースを催してやるからね」
言葉とは裏腹に満足気な“トゥエルブ・A”は、山姥のような顔を歪めて笑っていた。
キョーシはご褒美のニンジンを貪り食っていた。対抗バの爆ぜた足の爪が、頬に張り付いていた。
「どうした、嬉しいだろう? ……笑えよ」
「ハ、ハハハ、ハハ……」 「つまらないねぇ、もっと楽しそうに笑いなよ」
「ハ、フヒ、キョ、フッ! キョーッキョッキョッキョッ……」
「いいねぇ、アンタは本当にバカで、可愛いウマ男だよ」
キョーシにとって幸いだったのは、“トゥエルブ・A”は彼を単なる奴隷ではなく、
競走馬として扱ったことだ。定期的に開催される地獄のレースを除けば、
首輪と監視の目に縛られながらも、レースに向けての走り込みや十分な食事が保証されていた。
“トゥエルブ・A”が率いる屈強な船員達も、奴隷となったキョーシを小馬鹿にするも、
殴る蹴るの暴力が振るわれないのは同情ではなく、“トゥエルブ・A”を恐れてに違いなかった。
「キョーシ、もっと丹念に足を揉むんだよ。舌で舐めながら、たっぷりと指の力を入れなぁ。
おい、前のウマ男は、アンタよりも丁寧な仕事だったよ。――――オラァ、クソガキ!」
≫155 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 13:57:55
「あぶっ! ぁぅ、ぅ、もうじわげ、ありまぜん……」
だが、その待遇も“トゥエルブ・A”の気分に左右されるのが常だった。
マッサージの際に力んで爪を立ててしまい、キョーシの十指の爪は全て剥がされ、
その晩、キョーシは血に濡れた指の痛みを唾液で和らげるため、代わる代わる口に含み、
身を襲った激痛と恐怖を反芻しながら、“トゥエルブ・A”の機嫌取りに頭を悩ませた。
「アタシもね、かつては長距離レースじゃあ名を馳せた名バだったんだよ。
……生まれ持った血が疼く。だからアンタをアタシの代わりにレースへ出してやってるのさ。
感謝しなよ。最速を競って名を馳せるなんて、“ウマ男”の誉れだろうよ」
「キョ、キョキョキョ、勿論です。今日の勝利も、貴方の為に捧げます……」
老いたウマ娘に同調する面従腹背だ。脱出の機会を伺う為の演技に過ぎなかった。
だが、“トゥエルブ・A”の海賊船や根城の要塞は難攻不落だ。助けは見込めない。
100人を超える船員の中には魚人や能力者も存在し、盗み聞きした懸賞金額は5000万ベリーを超えている。
何よりも“トゥエルブ・A”自身の戦闘力は異常であり、船員の誰も彼女に逆らったのを見たことがなかった。
かつて、迷い込んだ“凪の海”では海王類を殴り殺し、その肉を貪っては愉快げに笑っていたのだ。
「もっと速く走りたいだって? いい心掛けじゃあないか。
だがね、身の程を弁えなよ。 “ウマ男”じゃあ種族の限界があるのさ」
策はあった。だが、“それ”が手に入る可能性はおろか、見つかる可能性も極僅かだった。
“それ”を“トゥエルブ・A”が入手するまで、キョーシは人間の尊厳を捨て、奴隷を演じ続けた。
「お前、今日のレースも圧勝だったね。……今度はグレードを上げてやるよ」
追い上げた出走者に背中をズダズダに斬り割かれ、キョーシは血みどろになりながらも一着を取った。
その死闘に感激したのか、“トゥエルブ・A”の猫なで声はいつにも増して粘り気を帯びていた。
≫156 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 13:58:50
「今度からお前の挑戦者は“魚人”や“ミンク族”だ。
だから、コイツはお前への“勝負服”になる。……手に入れるのは苦労したよ、喜びな」
“トゥエルブ・A”が摘まんだのは、ウマ耳にも似たヘタを付けた奇妙な果実だった。
礼の言葉を言うよりも早く、キョーシはそれを掴み、果汁のないパサついた果肉を貪った。
「おいおい、一口喰えばいいんだ。みっともないねぇ、そんなに腹ァ減ってたのか?」
“ヒトヒトの実”、そのモデルは“ウマ娘”。無論、待って手に入る果報ではない。
だが、“トゥエルブ・A”がレースを好む上、同種が故かウマ娘を拉致しては来ないこと、
そして、人をウマにする嗜虐性が“ウマ娘の実”を欲する可能性に賭け、この日を待っていた。
「あ、あり、あああ、ありがどう、ごぜぇ、まず……」
キョーシは礼を述べた。欲する実を引き寄せた引力とでも呼ぶ偶然に、感謝を捧げた。
悪魔の実を与えた偶然は勿論、この悪魔の実そのものが存在したという事実に対し、
キョーシは心から神を信じた。“ウマ娘の実”の存在を信じる時だけは、人間でいられたのだ。
その日は嵐の夜だった。吹き付ける豪風、足首が沈むほどの重バ場では、地雷の作動さえ怪しかった。
三千万を超える賞金首、元・海軍大佐、半魚人、ミンク族、豪華な出走者の面々が、スタートを切った。
キョーシは駆けた。地雷の爆音も脱落者の悲鳴も遠い彼方に感じられる。何もかも置き去りにした。
“トゥエルブ・A”の乗る神輿を担いだ魚人さえも、ウマ娘となったキョーシには追い付けない。
「大した逃げ切りだよ、キョーシ! お前はもう、この国一番の“ウマ男”だねぇ」
嵐の中であっても“トゥエルブ・A”の叫び声は嫌というほど聞き届けられる。
その濁声を振り切るように、ゴールラインを抜けたキョーシは、一段とギアを変え、
踵を返した先、荒れ狂う海原へと身を投じた。
≫157 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 13:59:26
「おい、何をしている! キョーシが逃げた、ボタンを押せ!」
“トゥエルブ・A”の命に従い、配下の一人が首輪の爆破スイッチを押した。
キョーシは首輪の内側に指を入れた。ウマ娘となり、身体が縮んだ今となっては、
首輪の内側にある留め金にも指が届く。首輪を海に投げ捨て、キョーシは叫んだ。
「おれは、おれは……人間だ! ウマの奴隷なんかじゃねぇ!!!」
あの日、海王類を殺す為に海原へ飛び込んだ“トゥエルブ・A”は、
海面を足場にして海上を駆け、浮上する海王類を一撃で殴り殺していた。
その目が吸い寄せられた。生きる為に走り続けたキョーシだけが気付ける、走法のコツ。
だが、人の足では敵わない。“トゥエルブ・A”と同じく、ウマの脚力がなければ習得できない。
「おれは、自由になる!!!」
重バ場にも沈まなかった両足が海原を蹴った。二歩、三歩、まるで氷上を走るようだ。
背後から怒号と共に銃撃が鳴り響く。嵐の中、魚人達も泳いでの追跡は敵わない。
“トゥエルブ・A”は……追って来ない。脚へのマッサージ、レースへの未練、魚人に担がせる神輿。
きっと、“トゥエルブ・A”は長くは走れない。そう信じて踏み出した、その一歩は実ったのだ。
「アンタにどれだけ目を掛けてやったと思ってるんだい!
“ウマ男”、七つの海の何処にいたって、アンタを見つけてブタのエサにするよ!」
打ち付ける雨が叫び声をかき消した。足を止めれば溺れ死ぬ。だが、自由の身で死ぬなら本望だった。
やがて、小さな船が見えたのが最後の光景だった。安堵したキョーシの身体から力が抜け、
――――気付いた時には、キョーシはまた檻の中、檻の外では葉巻を咥えた太っちょの男に睨まれていた。
≫158 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 13:59:48
「――――お前、売ったらいくらになるかな?」
「だーかーら、おれは人間なんだよ! これは悪魔の実の能力だ!」
「それを加味して、売ったらいくらになるかな?」
「結局売るんかい!」
バッシュと名乗る男の奴隷船に捕縛されたキョーシは、周囲の光景に驚いた。
両目の光を失ったウマ娘達が首輪を繋がれ、規律正しく檻の中に閉じ込められている。
キョーシは震えた。ウマ娘に支配され続けた彼にとって、信じ難い光景だった。
彼もまた悪魔の実の能力者であるのは、この異様な状況からも明らかだった。
「まあ、こういう商売をしてるもんでな。目にしたモノは必ず値踏みするのさ。
……で、事情は訊かねぇが、お前はおれにどれだけ儲けさせてくれる?」
話にならなければ売り飛ばす、バッシュの物腰を見れば否応にも伝わってくる。
考えあぐねいている時、キョーシの脳裏を過ぎったのは“トゥエルブ・A”の昔話だ。
「なぁ、バッシュって言ったな? お前、ウマ娘の集落があるって知ってるか?」
「当たり前だろ。諸島の潮流が険しく、足を踏み入れたことはないがな」
「――――なあ、おれを見ろよ。このウマ耳に尻尾、そしてカワイイ笑顔!」
檻に囚われ、今にも売り飛ばされる寸前だが、キョーシは目の前の男に嫌悪は感じなかった。
力ある者が弱き者を虐げる。それはキョーシの身に刻まれた常識であり、
だからこそ、人の姿で人と共に生きるウマ娘は、遠い国の巨人よりも恐ろしかった。
「おれが諸島に行けばどうだ!? ウマ娘は油断し、島の内情だって簡単に解るぞ!
おれが潜入すれば、アンタの力でウマ娘共は一網打尽だ! いくらだって儲かる!」
バッシュは値踏みするようにキョーシを眺め、やがて試すような質問を投げ掛けた。
≫159 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 14:00:45
「ウマ娘と人間だ。違いは耳と尻尾だけじゃあないだろ。
お前、本当に潜入なんぞ出来るのか?」
バッシュの問い掛けにキョーシは笑った。心の底から高笑いを放った。
隷属によって染み付いた卑屈な笑い声は、高らかに響き渡っていた。
「キョーキョッキョッキョ、おれを誰だと思っているんだ!?
十年間ずっと、ウマ娘と共に暮らしていたんだよ!
連中の趣味嗜好、手に取るように解るってんだ!」
そして、島外で奴隷として売られていた、という成り行きがバッシュより伝えられ、
ウマ娘となったキョーシはトレセン諸島に潜伏し、畑仕事やレースの運営に携わった。
キョーシの過去は迫真であり、醸し出す卑屈な空気からも、奴隷の経歴を疑うウマ娘はいなかった。
同情と共に近づくウマ娘もいたが、キョーシは曖昧な笑みで答えた。恐ろしくて仕方なかった。
化け物と共に暮らす恐怖に耐えながら、キョーシは誠実な仕事ぶりで周囲の信頼を勝ち取っていった。
「――――バッシュ。潮流の法則が読めそうだ。タイキシャトルとバクシンオーは心配いらない。
腕は立つがおれの口でいくらでも騙せる。アンタのチョーカーを使う必要もねぇ」
隠し持った電電虫での定時報告と情報交換。商人のバッシュにとって、島外の流行を知るのは容易い。
バッシュの持ち込む島外の情報や文化、華々しい装飾品の数々は、いずれもウマ娘達の心を奪った。
無論、それを細やかに褒めては、島外の生活に憧れを覚えさせるのはキョーシの役割だ。
「シャボンディ諸島は町中にシャボン玉が浮かんでいて、それは本当にキレイだったの!
楽しい乗り物ばかりの遊園地! ショッピングモールなんて、島の商店街とは比べ物にならないくらい!
勿論、トレセン諸島だって素晴らしいところだけど、一度くらい他の島を見るのもいいと思うわ」
しなを作った声色で島外の文化を喧伝し、ウマ娘達の関心を惹くのはキョーシの特技だった。
島外に興味を持ったウマ娘達と交換日記を交わし、その筆跡を真似るために寝る間を惜しんだ。
彼女達の筆跡で置手紙を残せば、不意の失踪も単なる家出だと周囲を納得させられる。
≫160 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 14:01:51
何もかもが上手くいくはずだった。サイレンススズカの骨折、看護の役割に滑り込み、彼女を拉致する。
麦わら帽子を被った髑髏を掲げた海賊船が、潮流を無視して来航する、その日までは――――
「ゴムゴムのぉー、ムチっ!」
麦わら帽子を被った少年、ルフィの蹴り脚がゴムのように伸び、キョーシの胴体に迫る。
キョーシは容易く避け、伸び切ったリーチを一気に縮めんと、蹴り脚を加速させていく。
「“驀進”! “惹流・回輪(ジャック・ル・マロワ)”ぁ!」
懐に飛び込んでの縦回転蹴り。靴底に仕込んだ刃付き蹄鉄がルフィの肩口を抉る。
タイキシャトルとバクシンオーの組手から盗み見た、二人の必殺技の模倣に過ぎない。
しかし、ウマ娘の脚力とキョーシの観察眼を以てすれば、付け焼刃では済まない練度を誇る。
「仲間の友達を、おめぇなんかにさらわれてたまるか!」
「バカが。化け物を仲間だと、それはお前が、化け物より強いってだけだろうが!
島から逃げたウマ娘が、強いヤツにビクビク震えてくっついてるって話じゃねぇのか!?」
ドーピングを施した己を前にしても尚、互角を誇るルフィに対し、キョーシは吠えた。
追撃の蹴りをルフィに向けた時、鋭い蹄鉄に身に突き刺しながら、ルフィが蹴り脚を掴む。
キョーシの額に叩き込まれたのは、ルフィの強烈な頭突きだった。
血に染まる視界に映る少年は怒りに歪み、血走った丸い目がキョーシを刺した。
「フクは、弱ぇけど強ぇんだ」
「ウマオカマぁ!!! お前が、おれの仲間をバカにするんじゃねぇ!!!」
何を言っているか解らない。それは衝撃による脳の混濁だけではない。キョーシにとっての非常識。
一つだけ、解りたくもないのに理解できたのは、この少年はウマ娘を本気で仲間だと思っていることだ。
奥歯を噛んだ。ステロイド剤が全身を駆け巡る。絶対に、何がなんでも、この少年に負けたくなかった。
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 72スレ目
≫27 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 16:57:45
では失礼して、何か無駄に長くなったロジャー海賊団時代のキングのお話
/
──眼前の敵をただひたすらに斬り捨てる。
目指したものは朧気な、しかし鮮烈な幼き日の記憶。
踊るように舞うように、その剛剣を持って天をも断ち斬るとさえ謳われた躍動する勇士。
その怜悧冷徹な凶刃で立ち塞がる一切悉くを斬り伏せ、相対する生命に別離を訃げてきた狂気の光輪。
忘れられるはずのない、遥か彼方にある彼女の理想。未だ遠い己が憧れ。
右手に持った剣を強引に振り回す。無茶な体勢から繰り出されたそれは、しかし使い手の見た目にそぐわぬ膂力により致命の一撃へと昇華されている。
左手に持つ打刀を直上より斬り下ろす。型も技も関係ない、ただ単純に力を込めただけのそれが既に必殺の域にある。
その姿はまるで、荒々しく暴れ狂う不安定な独楽のよう。
あまりに無様。あまりに無惨。剣理術理その悉くを否定し、己が憧憬を穢すあまりに醜く非効率的な暴力の形。
こんなものは、ただ武器の性能と自身の肉体強度によるごり押しに過ぎないと、他ならぬ彼女自身が一番よく理解している。
過去の幻影が語りかける。
──諦めなさい。向いていないものを無理に目指すことはない。
「…………っ!!」
≫28 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 16:58:38
また一人。己の剣の一撃で体勢が崩れた敵を、返しの一刀で袈裟に斬り捨てる。
しかし、浅い。
剣の重さと勢いに体を振り回され、まともな体重移動も覚束ない中で放つ一撃など、それはもはや斬撃ではない。剣術ではない。
並外れた膂力を持ったところで、棒振り芸で人を斬り殺すことはできない。
勢い余って踏鞴を踏んだところに、手傷を負わされ頭に血が上った敵がお返しとばかりに斬りかかる。
「ウマ娘武術~『射削脚』!」
それを、横合いから飛び込んできた彼女の仲間が蹴り抜いた。
「いやー危なかったね。珍しいというか、らしくないじゃん?もしかして~……結構お疲れだったり?」
吹き飛ばされ気を失った敵の姿を確認し、彼女の仲間──ウマ娘であるセイウンスカイは、同族へ軽い口調で語りかけた。
全身に汗を浮かべ、荒い呼吸を繰り返し膝をつくウマ娘──キングヘイローは、その言葉に一瞬だけ表情を強張らせ、奥歯を噛み締め黙り込んだ。
普段ならば即座に噛み付いてくる友人の常とは違う様子を訝しげに思いつつ、セイウンスカイは他の仲間へのフォローへ向かう。
その後ろ姿を見送って、キングヘイローはしばし呼吸を整えることに集中した。
──既に大勢は決している。
このまま何事も無ければ、自分達の勝利は揺るがないだろう。
今もまた、彼女の仲間が次々と敵を倒している。
≫29 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:00:08
その光景を直視することも、目を逸らすこともできず、彼女は一人唇を噛んだ。
/
──キングヘイロー。
父は“躍動する勇士”と謳われた大海賊。母も稀代の剣豪として名高い女海賊という、稀に見る良血のウマ娘。
本人も悪名高いロジャー海賊団の一員であり、剣と刀を手にウマ娘の身体能力を生かし戦う。
その実力は若くしてロジャー海賊団の一員に相応しく、仲間からの信頼もそれなりに厚い。
そんな彼女は、皆が寝静まり人気の無い夜更けの甲板で、独り黙々と剣と刀を持ち替え振るう。
「ふっ!」
彼女にとっては大き過ぎるその剣は、銘を「リファール」──彼女の父が生涯を通じ愛用した両刃の片手半剣(バスターソード)。
かつて父はこの剣を自在に操り、美しく舞い踊るように戦い数多の強敵を打ち破ってきた。
刀は大業物に数えられる太刀であり、銘を「光輪」──彼女の母が片時も肌身離さず、常に身に帯びていたため遂には黒刀へと至った妖刀。
かつて母はこの刀を振るい、卓越した剣技でもって立ち塞がるあらゆる障害を斬り捨ててきた。
己の原点にして、誇り。
憧れにして、目標。
いずれ至るべき未来にして──遥か遠い、越えられぬ過去。
≪30 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:00:48
──彼女の両親は、以前からゴール・D・ロジャーやその仲間達と親交があった。
加えて本人達も歴史に名を刻む実力者であったこともあり、ある時ついにそれを危険視した敵対する複数の海賊団が結託し、奇襲を受けた。
事態を知ったロジャー海賊団が救援に駆けつけた時には、既に両軍共に壊滅状態。
燃え盛る母船から脱出してきた僅かな護衛と、2人の幼い娘であるキングヘイローだけが生き残った。
その後、ロジャー達は亡くなった2人とその船員達を弔い、遺された者達を自分達の船へと受け入れた。
「悪ぃな、嬢ちゃん。来るのが遅過ぎた」
何とか見つけ出した2人の遺品である剣と刀を手渡し、ロジャーは俯くキングヘイローに語りかけた。
「それで、どうする嬢ちゃん。どこか安全な場所……トレセン諸島にでも送ってやろうか?どうせ過ごすなら、同族のいる所の方がいいだろ?」
ロジャーの言葉に、キングヘイローは僅かに息を飲むと、意を決したように顔を上げた。
「ロジャーのおじ様──いいえ、ゴール・D・ロジャー船長。私をこの船に置いてください」
その言葉に、今度はロジャーが息を飲んだ。まだ十にもならない幼子が、まるで彼女の両親を思わせる強い意思を宿した瞳で、此方を見つめている。
並々ならぬ覚悟を感じ取ったロジャーは一瞬だけ目を閉じ、心の中で彼女の両親に詫びると、今一度真っ直ぐとキングヘイローを見た。
「分かった。これからお前は、このロジャー海賊団の見習いだ。特別扱いはしねぇし、泣き言言ったら海に放り投げるから覚悟しとけ!──お前達も分かったな!!」
オウ!という周囲の声に続いて、彼女に皆が口々に歓迎の言葉をかけた。
──それがもう、何年も前の話。
≫31 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:01:50
いつしか彼女も一端の船員となり、同世代のウマ娘の仲間も増えた。
世間では彼女を含む才能あるウマ娘の仲間達を「黄金世代」と呼び囃し立てているという。
即ち“スペシャルウィーク”、“エルコンドルパサー”、“グラスワンダー”、“セイウンスカイ”──そして、“キングヘイロー”。
彼女は、己がこの中で最も格下であると自覚している。
力が弱いわけではない。速さで劣るわけではない。努力は誰よりも積み重ねてきた。ただ、残酷なまでに実力が足りていない。
誰にも打ち明けられずにいる──それこそ、ロジャー船長にすら──母との最期の会話を思い出す。
──逃げなさい。とにかくここを離れて、ロジャーを頼るのです。
──お母さま!私、離れたくない!
──キング、聞き分けて頂戴。ロジャーに会ったら、どこか安全な場所に……トレセン諸島に送ってもらって、それからは海賊とは関わらずに生きていきなさい。
──そんな!私はいつかお父さまやお母さまのような、一流の海賊に!
──諦めなさい。向いていないものを無理に目指すことはない。……さあ、早くこの娘を連れて行って。
──待って、お母さま!お父さま!
そうして護衛に抱えられ、脱出した先でロジャー船長に救われ今に至る。
何のことはない。自分が海賊に向いていないことも、才能が無いことも、母はよく分かっていたのだ。
手に持つ剣と刀が、酷く冷たく重い。
≫32 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:02:48
父ならば、この重く堅い剛剣を羽根のように軽々と玩びながら、戦場を縦横無尽に舞い踊ることだろう。
母ならば、この冷たい障気を放つ妖刀をも隷属させ、一切の無駄なく敵の機先を制し斬り伏せることだろう。
剣を振るう──父の勇壮に舞い踊る姿には程遠い。
刀を振るう──母の怜悧冷徹な太刀筋とは比ぶべくもない。
「っ……私は、キングヘイロー。一流の海賊になる者よ……!」
湧き出す不安と首をもたげる諦念を振り払い、立ち止まり思考する時間すら惜しいとばかりに、ひたすらに己を磨き、鍛える。
──焦燥に満ちた彼女の横顔は、苦悶に歪んでいた。
/
キングヘイローが連日連夜、人目を避けて鍛練を行っている。
このことはロジャー海賊団にとって周知の事実となっていたが、誰一人として彼女を止める者はいなかった。
それは船長であるロジャーや、副船長のレイリーを初めとした幹部達が黙認していたこともあるが、何より彼女にどう声をかけるべきか、彼女の取り巻きや友人達ですら判断がつかなかったからである。
ついには普段は十回顔を合わせれば十二回は喧嘩になる、とまで言われる犬猿の仲のバギーですら「なあエル、あいつ大丈夫か?」と、自分に懐いている妹分に対して思わずこぼしてしまう程だった。
流石にマズイのではないか?日に日に憔悴していく仲間の姿に、黄金世代の4人とキングの取り巻きである2人を加えた計6人のウマ娘達は、おそらくこの件で最も頼りになるであろう人物を訪ねることに決めた。
その人物とは、キングヘイローを幼い頃からよく知る数少ない一人。
かつてキングヘイローの両親の船で航海士を務め、後に護衛として彼女を守り脱出した男。
≫33 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:03:37
今はロジャー海賊団で航海士補佐として働いている男の休憩中を狙い、彼女達はズタ袋を持って突撃し──見事にレイリーから大目玉を食らった。
「普通に言ってくれたら話くらい聞いたのに……」
連帯責任で揃って頭にたん瘤を作り涙目で正座する6人のウマ娘達を見下ろしながら、先程拉致されそうになった男は溜め息をついた。
「まあ言いたいことは分かるよ──キングのことだね」
「そうなんです!キングちゃん落ち込んでるみたいで!」「今のキングはなーんか張り合い無いんだよねー」「何やら焦っている様子……時間が解決してくれるのでは、と淡い期待をしていたのですが」「赤鼻のお兄さんとのやり取りにもキレがありまセーン!重症デース!」
口々に声を上げる黄金世代とは異なり、それぞれネコ目とボブヘアが特徴的な取り巻き2人は不安気に男を見つめている。
男はもう一度溜め息をつくと、腰を下ろし目線を彼女達に合わせた。
「キングは良い友人に恵まれたね。本人の問題だし、あんまり大人がでしゃばるもんじゃないと思っていたけど……分かった。今夜にでも話をしてみよう」
男の言葉に、俄に6人の表情が明るくなる。
さあ、戻った戻った。という男の言葉に、彼女達は礼を言いつつ痺れる足を引きずりながら立ち去って行く。
「あの!」
最後尾にいた取り巻き2人が振り返り、男に深々と頭を下げた。
「キングのこと、よろしくお願いします!アタシ達じゃ、キングの力になれないから……」
「アタシ達、キングにはいっぱい助けてもらってるのに……だから!」
お願いします!もう一度深々と頭を下げ、2人は足早に去って行く。
≫34 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:04:47
その後ろ姿を見て、男は懐から取り出した物に視線を落とす。
「いい加減、決断する時が来たってことなのかな……」
──『永久指針(エターナルポース)』は、あの日から変わらぬ進路を示し続けている。
/
──思い描いた動きとは程遠い。憧れた地平は未だ視界にすら入らない。
荒い呼吸でひたすらに刃を振るう姿は、あまりに無様で、無惨で、不恰好で、不器用そのもの。
こんなものは努力とは呼ばない。無駄の一言で切り捨てられる非効率。
それでも、動かずにはいられなかった。足を止めるわけにはいかなかった。
一度でも己の意思で立ち止まってしまったら、自分が自分で無くなる気がして、それが何よりも怖かった。
「はぁっ!」
裂帛の気合と共に振り抜かれた剛剣が風を切る。
それに割り込むように、鈴を鳴らすような柔らかな金属音が辺りに響いた。
振るわれる剛剣の軌道上に細身のサーベルの切っ先が僅かに触れ、その勢いは一切殺がず剣線が狂わされる。
未熟とはいえ、ウマ娘の膂力に対しこのようなことができる相手は限られる。
「──何よ、急に。稽古でもつけに来たのかしら?」
≫35 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:05:57
突然の闖入者に、キングは僅かに眉をひそめた。
闖入者──かつてキングを連れロジャー海賊団へと合流した護衛の男は、何も語らず刃を構えた。
その瞳の奥に彼の本気を感じ取ったキングは息を飲み、構える。
しばしの沈黙の後、キングが動く。
剛剣「リファール」を両手に持ち替え、ウマ娘の脚力を生かした踏み込みからの超高速の刺突。
甲板の床が軋むほどの勢いで繰り出されたそれは、当然の如く男のサーベルで軌道を逸らされ、勢いそのままにキングはあらぬ方向へと投げ出された。
「──疲れが取れていない」
男の言葉に、一気に頭に血が上ったキングは、今度こそは下段からの振り上げを狙う。
しかし、キングの剣は生き物のように動くサーベルに絡め取られ、当たり前とばかりに転がされた。
「体力が落ちている」
地に落ちた父の剣を拾うことなく、キングは腰に佩いていた母の刀である「光輪」を抜き正眼に構えた。
荒い息を整えながら思考する。
目の前の男は、かつてキングの両親の海賊団で航海士を務めていた。
そして、キングの両親には及ばないものの本人もそれなりに剣士として名を知られており、高額の懸賞金もかけられている。
幼い頃によく稽古をせがみ困らせたことを、彼女は今もはっきりと覚えていた。
≫36 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:06:38
かつての情景を振り払うように、キングが疾走る。
先程の剣より鋭く袈裟に斬らんと振るわれた刀は、やはり男のサーベルに絡め取られ、キングはあっさりと体勢を崩される──と同時に、無理やり体を捻り男に向かって蹴りを放った。
ろくに体重は乗せられていないが、それでもウマ娘の脚力で放たれれば無視できない威力を伴う一撃。
完全に虚を突いた不意打ちを、男軽く首を傾けて回避した。
「脚癖が悪いな」
「相変わらずよく避ける……!」
キングは内心で舌打ちしつつ、転がりながら距離を取った。
そして再び構え直し、もう一度男へ向かって斬りかかった。
/
どれほどの時間が経っただろう。
斬りかかる。避けられる。斬りかかる。転がされる。斬りかかる。投げ飛ばされる。斬りかかる。武器を弾き飛ばされる。斬りかかる──
本気で斬りかかってはあしらわれ、ついにキングは疲労からその場に座り込んだ。
汗だくで疲労困憊といった様子のキングに、男は構えを解いてタオルと水筒を差し出した。
「それで?一体どういう風の吹き回しなのかしら?」
タオルで汗を拭い、水を飲みながらキングは尋ねた。
≫37 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:07:49
少なくともロジャー海賊団に保護されてから、男がキングに稽古をつける機会はめっきり減っていた。特に最近は全くと言っていいほど無かったはずだ。
「個人的に思うところがあったのと……あとは、お願いされちゃったからね」
良い友人達を持ったね。という男の言葉に、キングは小さく鼻を鳴らし胸を張った。
「このキングと共に歩む仲間で、ライバルなのよ?そんなの当然じゃない」
やや陰りはあるが、いつもの調子に戻りつつあるようだ。
余計なことを考える余裕が無くなるほど追い込んだ甲斐があったな。などと内心で思いながら、男は居住まいを正し改めてキングに向き直った。
「キング、いや……“お嬢様”、大切なお話があります」
男の雰囲気が変わる。かつての口調と呼び名で呼ばれたキングは、噛み締めるように一度瞼を閉じてから、改めて男を見た。
「ええ、何事かしら」
「──奥様からお預りしていた物があります」
そう言うと、男は懐から『永久指針(エターナルポース)』を取り出し、キングへ見せた。
「これは脱出する際、奥様から渡されていた物です。示す先は──トレセン諸島」
男の言葉に対して、キングは無言で続きを促す。
「この世界において、おそらくウマ娘にとって最も安全な地への道標。もしもロジャー船長達に合流できなかった際には、これを用いる手筈となっておりました。
航海士の俺が護衛に選ばれたのは、貴女と親しかったこと以上に、こういった事情があったためです」
「……ええ、予想はしていたわ。お母さまは、どうしても私を海賊にしたくなかったみたいね」
≫38 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:08:35
いずれ両親を超える海賊になるという夢を、彼女の母は頑として認めようとはしなかった。
それに反発し目の前の男を初めとした船員達に稽古をせがみ困らせたことや、木の棒で素振りするのを微笑まし気に眺める父とその隣で渋面を作る母の姿を、昨日のことのように覚えている。
「奥様は貴女のことを心配していたのです。我が子の不幸を望む母はいません。愛しているから、安全な場所で安心して暮らして欲しかったのでしょう」
「海賊船の上で育てておいて?何だか矛盾していないかしら?」
呆れたように肩すくめるキングに対し、男は続ける。
「そのことも悔いておられました。自分は海賊としてしか生きられない、と。そして──離れたくない一心で、我が子を危険に晒したと」
「──……ええ、そうね。あの人はそういう人よね」
意地っ張りで。不器用で。こちらのやること為すことに一々否定的で。どうしようもないくらい分かり難かったけれど──それでも確かに、キングヘイローは愛されていた。
「私からは以上です。……これはお渡ししておきます」
僅かに躊躇いつつも、男は『永久指針』をキングの手に握らせた。
そしてキングに背を向けて、ふと思い出したように付け加えた。
「悔いの無いよう、君の心に従うといい。何をどう選んでも、俺は君の味方だよ」
今度こそ立ち去った男の背を見送り、キングは海の方を見た。
静かな波間が月と星々に照らされるその光景を、キングはただじっと見つめ続けた。
≫39 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:09:32
/
──大事な話があるので、船員を甲板に集めて欲しい。
早朝にキングヘイローからそう告げられたロジャーとレイリーは、その場では何も聞かず船員に召集をかけた。
甲板に並ぶ船員達の中で、キングと年齢が近く仲の良い者達は落ち着かない様子で身を寄せていた。
「船、降りるつもりなのかもしれねーな」
ボソッと呟かれたバギーの言葉に、周囲の者達がギョッとする。
「おいバギー、滅多なこと言うもんじゃねーぞ」
「でもよシャンクス、最近のあいつの様子を見てただろ?きっと、もう嫌になっちまったんだよ。もがくのに疲れちまったんだろうな」
直ぐに兄弟分のシャンクスが嗜めるが、バギーはいつになく真剣な表情で告げる。
「かなり辛そうだったしな。ようやく決心がついたんだろ。だとしたら、無理に引き留めるのは酷だろうな」
バギーの言葉は効果覿面であった。
黄金世代の一人であるスペシャルウィークもエルコンドルパサーは泣きそうな顔になり、セイウンスカイは表情を曇らせ、グラスワンダーは唇を噛んだ。
「い、いや、何も一生会えなくなるわけじゃねーさ!それより送り出す側が暗い顔してちゃ、あいつも安心して船を降りられねーだろ?最期は笑って見送ってやろうぜ!」
一気に暗くなった空気の中、慌てるバギーを尻目にキングの取り巻きのネコ目とボブヘアの2人は、静かにその時を待った。
しばらくして、皆の前にキングヘイローが姿を現した。
≫40 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:10:37
薄い化粧で誤魔化しているが、寝不足なのか表情には疲労が見て取れる。
キングは船員達の前に置かれた樽の上に上がると、深層の令嬢を思わせる優雅な一礼をして見せた。
「皆、こんな朝早くに集まってくれてありがとう。実は今から、聞いて欲しいことがあるの」
静かに語り出すキングの姿に、一同は息を飲んだ。
「私の──」
「キングちゃん!船を降りるなんて言わないで!」
キングが次の言葉を告げる前に、スペシャルウィークの涙ながら絶叫が響いた。
「本当はダメだけど、私やっぱりまだキングちゃんと一緒にいたいです!」
そこから堰を切ったように、他の黄金世代も続く。
「逃げるのはキングの脚質に合ってないと思うな~」
「仲間がこれほどまでに深く悩んでいたことに気づけぬとは……痛恨の極みです。このケジメはいずれ……!」
「グラス?その小刀は何デス?何に使うつもりデース?」
それに周りの船員達も当てられたのか、口々にキングに対し考え直すよう声をかけた。
「いや、え?何のことかしら?」
それに対し、キングヘイローは何とも間の抜けた声を上げた。
≫41 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:11:41
え?と、思っていた反応と違うキングの様子に、黄金世代含む船員達は首を傾げた。
「何を勘違いしているのか知らないけど……今日は、この私の決意を聞いてもらいたいの」
おかしな空気を振り払うように一つ咳払いをし、キングは改めて船員達へ向き直った。
そこにいたのは憔悴した様子や陰りのある雰囲気を微塵も感じさせない、自信と活力に満ち溢れる堂々とした姿。
誇り高く前を向いて進むと決めた、一人のウマ娘。
「よく聞いておきなさい。──貴女達、いつもの“アレ”お願いできるかしら?」
「「りょうか~いっ!!」」
その言葉に取り巻きのネコ目とボブヘアの2人は即座に返事をし、直ぐ様キングの両脇へと陣取った。
「ふふっ、相変わらずいい返事ね!それじゃ、いくわよ!」
2人の返事に満足気に頷くと、キングは高らかに声を上げた。
≫42 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:12:36
「私の名前は?」
「「キング!!」」
「誰よりも強い?」
「勝者!」
「その未来は?」
「輝かしく!誰もが憧れる大海賊~!」
「そう!一流の海賊といえば、この私!!」
「「「キングヘイロー!!」」」
「──私は一流の海賊になるわ。そしていずれ、ロジャー海賊団のキングではなく、キングヘイローというこの名を世界に轟かせる。
貴方達には、このキングの伝説を心に刻む権利をあげる!!お~っほっほっほ!!」
悪名高いロジャー海賊団。
その海賊船の甲板で、船長以下全ての船員を前に、キングヘイローはそう高らかに宣言した。
/
──皆が寝静まった夜。甲板から月と星に照らされた波間を眺める。
背負った剣も、腰に佩いた刀も抜かず、手にした『永久指針』を玩びながら、ただ人を待つ。
≫43 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:13:47
それから30分ほどして、元航海士兼護衛の男がサーベルを手に姿を現した。
「あら、ようやく来てくれたのね。待った甲斐があった、ということにしておきましょうか。このキングを待たせたことは、今回だけは見逃してあげるわ」
お~っほっほっほ。と、小声で高笑いするという無駄に高度で使い所を選ぶ技術を発揮しつつ、キングは男を出迎えた。
「決めたんだな?」
「当然」
目指したものは朧気な、しかし鮮烈な幼き日の記憶。
踊るように舞うように、その剛剣を持って天をも断ち斬るとさえ謳われた躍動する勇士。
その怜悧冷徹な凶刃で立ち塞がる一切悉くを斬り伏せ、相対する生命に別離を訃げてきた狂気の光輪。
忘れられるはずのない、遥か彼方にある彼女の理想。未だ遠い己が憧れ。
強く、美しく、誇り高い両親の姿に憧れ、目指してきた。
しかし──
「私はキングヘイローよ。お父さまやお母さまとは違う。2人の道をなぞる必要なんてないの。
──私は私の道を行くわ」
手に持っていた『永久指針』を床に置く。
それから数歩離れ、僅かな逡巡の後にキングは構えた。
≫44 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:15:44
妖刀「光輪」を鞘に納めたまま腰を落とし、視線の先のにある『永久指針』を寂しげに見つめ、一度瞼を閉じる。
『永久指針』──トレセン諸島を示す、母が娘の安全を願い進ませたかった道。
意地っ張りで。不器用で。こちらのやること為すことに一々否定的で。どうしようもないくらい分かり難かったけれど──それでも確かに、キングヘイローを愛していた母の形見。
「──だけど、私は“こっち(光輪)”を選ぶ!」
乾いた音と共に『永久指針』が両断され、その機能を完全に喪失する。
──斬擊の軌道はおろか、抜刀の瞬間すら見えない超神速の居合術。
彼女の両親とは異なる、彼女自身の進む道。その一端。
「よかったのか?」
「ええ。下手に持っていても、トレセン諸島に迷惑がかかるわ。使わないなら破棄するのは一番よ」
形見ならもうあるしね。と、刀の柄を優しく撫でた。
その表情に後悔は無く、自信と活力に満ちている。
「さあ、これから忙しくなるわよ。あんな啖呵を切った以上、私は今以上に一流にならないもいけないの!当然、貴方にも協力してもらうわ!」
強い意思を持った瞳に一瞬目を奪われて、男は思わず息を飲んだ。
──ああ、きっとこの娘は大丈夫だ。
「構えなさい!貴方にはこのキングの栄光をその眼に焼き付ける権利をあげる!」
≫45 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 17:16:22
「お手柔らかに頼むよ」
人気の無い夜の甲板に、鈴が鳴るような金属音が静かに響く。
かくして、かつてこの海を騒がせた大海賊の娘は己の道を見定め、その一歩を踏み出した。
そして彼女の宣言通り、その名はいずれ世界に轟くこととなる。
終
キング→迷走して剣と刀の二刀流とかやってた。それでもウマ娘パワーでそこそこ強かったが、本人的には不満。ロジャー海賊団解散後に一流海賊団を旗上げする。
キング父→躍動する勇士とか言われてたクソ強い剣士。娘には好きなことをして欲しい派。持病が悪化したタイミングで待ち伏せからの包囲を受けて死亡。ただ相手も壊滅させた。
キング母→剣豪として有名なウマ娘。不器用ながら娘を愛していた。娘を逃がす時間を稼ぐために敵陣で大暴れして、船員を斬りまくって船も沈めまくった後に死亡。母は強し。
元航海士兼護衛の男→キング父の部下で航海士をやっていた。キングのことは幼少期から知っており、年の離れた兄のような感じで懐かれていた。剣士としてそれなりに名が売れている。後にキングの率いる一流海賊団に旗上げから参加することになる。
黄金世代→同世代のウマ娘達。それぞれが違う形で名を上げることになるが、この時はまだロジャー海賊団の船員に過ぎない。筆者が扱いきれなかったので深掘りされていない。
取り巻きーズ→ネコ目が特徴的なウマ娘と、ボブヘアが特徴的なウマ娘の2人。キングの後輩にあたり、色々と世話を焼いてくるキングの優しさや内面に惹かれて取り巻きをやっている。後にキングの率いる一流海賊団に旗上げから参加することになる。
バギー→「赤鼻のお兄さん」とエルに懐かれている、後の七武海の一角。周囲を誤解させたとして、キングに鞘でブン殴られた。
シャンクス→後の四皇。ほぼ空気。正直扱い難い。
毎度長くて申し訳ないです。
取り敢えず妄想を文章化したので投げてみました。
描写不足や解釈違い、キャラの違和感等あると思いますが、広い心で笑っていただければ幸いです。
≫79 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 18:36:53
SS書いた者だけど、キングの両親の戦闘スタイルが
父→相手の攻撃を誘ってカウンターを食らわせる後の先。多数を相手に連続して行う姿が舞いを踊っているように見える
母→機先を制して相手に何もさせず斬り捨てる先の先。常に先手を取るので無駄が無い
みたいなイメージで書いてました
で、キングは父の舞うような動きを真似しようとして、更に母の戦い方にも引きずられて無茶苦茶になっていたと
最終的に父の本質である後の先と母の形見である刀による居合カウンターという自分の道を見つける感じ
その後、自分なりの剣と刀の二刀流を身に付けるのか、刀一本でいくかは各々の妄想次第ということでお願いします
以上、蛇足でした
≫63 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 18:00:18
ウマムスメ族補正で高くなるから多少盛られるのは分かる
なんでウララちゃんこんなに安いんですか……?
≫69 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 18:13:31
「えぇ、こんな子供に懸賞金をかけるのか。罪状見てもなんもやってないっぽいし。10ベリー、いやペットじゃないんだから。5000ベリー。いや世紀末海賊団の船員だぞ、それじゃあ低すぎる。100万、いやオペラオーと敵対する可能性もあるし300万……高いか? 東の海の船長と並べるほどには見えないよな。……ひゃくじゅう……に、まんでいこう」
≫67 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 18:12:19
「ドフラミンゴが手配書差し止めてた!?相当大切にされてたに違いない!何か吹き込まれてたに違いない!えっ?どう見ても子供なのに最高幹部?じゃあ隠し子かもしれない!懸賞金ドーン!!」
ライス「ええ……」(困惑)
≫88 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 19:22:34
【ここだけコラさんが生存した世界線】
ライス「ライス思ったんだけど、ローくんとライスが結婚したらローくんは実質お兄さまの義弟になるんじゃないかなぁ……?」
ロー「……!!」
≫89 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 19:25:16
>>88
さも当然のように自分をお兄様の『妹』として考えてる…!!
≫90 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 19:27:11
>>89
誰が一番困惑するかってったらマルゼンさん
≫92 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 19:37:53
>>90
むしろマルゼンさんなら面白半分にのってきたりして…
マルゼン「ライスちゃんのお兄さまって事は…つまり私の孫にもなるわけね!
この年になってこんな大きな孫ができちゃうなんて、おったまげーしょん!
ね、おばあちゃんって呼んでみて」
コラさん「!?」
≫109 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 19:56:38
〜トレセン諸島にて〜
カレン「お兄ちゃんっ」
ロー「悪いがウマムスメはうちの船には乗せないことにしてる」
ロー「(そうだ……ライスを取り戻すまでは……!)」
〜出港後〜
ベポ「キャプテン!さっきのウマムスメの子が密航してた!!」
カレン「えへへ、きちゃった」
ロー「」
こうですかね?
≫114 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 20:08:23
キッドバージョンだとこんな感じで妄想
頂上戦争後、新世界の入口で、”楽園”に帰ろうとする海賊たちを薙ぎ払い貼り付けにするキッドのシーン
「死ぬか、生きるか!!! そんな覚悟もねえ奴らが!!! この海にくるんじゃねェよ!!!」
後ろを振りかえる
「なあ小娘、ガキだからって容赦すると思ってるのか? わかったらとっとと家に帰りな」
カレンは横に首を振る
「ううん、カレンわかってるよ」
「……?」
「夢を追うっていうのは、命ぐらいかけて当然だもの。それ以上をかけてるお兄ちゃんが怒るのは当たり前だよね」
「それ以上、ね」
「……キッド」
「ハッ、だから俺はお兄ちゃんじゃねェ。ふざけた呼び方すんな」
背景では会話に不釣り合いな殺伐とした戦いがずっと続いている
≫118 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 20:15:46
キッド「トラファルガー。ドフラミンゴのとこのガキなんか連れて歩いてんのか?随分腑抜けたもんだなァ?」
ロー「ユースタス屋……!てめェ……!」
ライス「ろ、ローくん。ライスは大丈夫だから……」
キッド「そもそも戦場に女子供連れてくるなんざ……」
カレン「あっ、いたいた!お兄ちゃーん!」
キッド「……」
ライス「……あの子多分ライスより歳下の子……」
ロー「……おい、ユースタス屋……」
≫128 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 20:30:03
ローとキッドが睨み合う中、「うちのフクはあれだ。すげー面白い声で鳴くんだぞ」とルフィ
≫131 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 20:52:57
>>128
フク「ちょ、ちょっとルフィさん! そこは占いがすごーくよく当たるとか…」
ルフィ「フクの占いがよく当たるのは当たり前だろ? あいつらに勝つにはそれ以外にも良いトコほめねーと」
フク「んんんん! 嬉しいですけど、なんかちがーう!」
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 73スレ目
≫20 二次元好きの匿名さん21/10/03(日) 23:07:46
ワノ国編の雑記憶
ロー「お前ら!もし捕まっても侍達やミンク族の事を吐くなよ。何も喋らず殺されろ」
ウソップ「こわっ!ルフィはそんな事言わねェぞ!」
ロー「ウチはドライなんだ」
ライス「任せて、ローくん!ライス自白剤効かないし、確実な自決の方法もいくつか教わって……」
ロー「お前はおれが迎えに行くまで待ってろ」
ウソップ「おい!!!」
≫104 二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 07:06:20
海兵A「流石はマックイーン大佐。凄まじい鉄塊の練度だ」
海兵B「ああ、まるで鋼鉄でできた壁のようだな!」
マック(怒るに怒れませんわ……)
※階級は適当
≫148 二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 12:15:24
フクキタルと裁判官フラッシュの決着後に
「障害、公務執行妨害、エニエス・ロビーへの武装蜂起、世界政府への宣戦布告」
「どう見積もっても一味全員死刑です、が」
「この有様ではとても執行など出来そうもありません」
「いきなさいマチカネフクキタル」
という一連のシーンがあった気がする
≫156 二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 13:23:47
フク「ルフィさんは何度も困難を乗り越えてきた凄い方なんです!」
カレン「それならお兄ちゃんだって負けてないし、何よりすっごくカッコいいんだよ?」
ライス「ろ、ローくんはとっても優しい人なんだよ…!」
フク「えっ」
カレン「えっ」
ライス「えっ!?」
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 74スレ目
SSが存在しません
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 75スレ目
≫121 二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 21:44:57
クザンとチケゾーが食事してるところにマルゼンが鉢合わせして
「お婆ちゃんは歳の差がどうとか言う気はないから頑張ってね!」
「わかんないけどわかった!がんばる!」
「まてまて、なんかとんでもない勘違いしてるでしょ」
という概念はいかがか
{{≫169 二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 22:53:25
キッド&カレンSSの草案。何か意見やツッコミどころがあれば。
キッド&カレンSSの草案。何か意見やツッコミどころがあれば。
<南の海時代(カレンチャン5歳。キッド11歳と推定)>
- ドルヤナイカにカレーうどんの汁が掛かり、笑ったキッド&キラーがボコボコにされる。
この時、カレンチャンと遭遇。ドルヤカイナのワンピースに付いたカレー汁のシミ取りをし、
シミ残りに可愛いアップリケを付けると、すっかり機嫌が直る。
シミ残りに可愛いアップリケを付けると、すっかり機嫌が直る。
- これを切っ掛けにキッド&キラーとカレンチャンは顔見知りになる。
カレンはウマ耳と尻尾を隠して生活していたが、それが町の悪党共にバレて攫われるも、
キッドとキラーが救出し、悪党共には「未来の海賊王の友達に手を出すな」と啖呵を切り、
悪党共に大笑いされる。その時、悪党共をボコボコにし、これがかの逸話の切っ掛けとなる。
キッドとキラーが救出し、悪党共には「未来の海賊王の友達に手を出すな」と啖呵を切り、
悪党共に大笑いされる。その時、悪党共をボコボコにし、これがかの逸話の切っ掛けとなる。
- マルゼンスキーの手引きでカレンチャン一家はトレセン諸島へと移住する。
「世界中でカワイイって認められたい」というカレンチャンの夢をキッドは笑わず、
「おれも世界中に悪名を轟かす海賊王になる」と宣言し、二人は別れる。
「おれも世界中に悪名を轟かす海賊王になる」と宣言し、二人は別れる。
<本編(カレンチャン15歳、キッド21歳と推定)>
- キッドはシャボンディ諸島でカレンと出会うも、昔の話は覚えていないと白を切る。
奴隷オークションを鑑賞していると、何故かカレンがオークションに出品。
ノリノリで可愛い愛想を振り巻き、入札金額はうなぎ登りに駆け上がっていく。
キッドはやむを得ず2億ベリーで落札。ニコニコ笑顔でカレンは自ら首輪を外す。
(チャルロス聖は人魚ケイミーの落札の為、資金をチャージしていた)
ルフィの手により、オークションは崩壊。キッドはカレンを救出する。
ノリノリで可愛い愛想を振り巻き、入札金額はうなぎ登りに駆け上がっていく。
キッドはやむを得ず2億ベリーで落札。ニコニコ笑顔でカレンは自ら首輪を外す。
(チャルロス聖は人魚ケイミーの落札の為、資金をチャージしていた)
ルフィの手により、オークションは崩壊。キッドはカレンを救出する。
- 元々、金を払う気はなかったものの、「何の真似だ?」と問い詰めるキッドに対し、
「可愛さだけで2億ベリー! カレンの本気、これで解ってくれた?」と笑顔で返す。
その後、海軍にラブラブの実を行使し、洗脳能力と武器操作能力を披露。
飛び入りでオークションに参加できた理由、首輪を外せた理由が判明。
「世界一の悪名の隣でも、カレンが一番可愛いって世界中に広めるの」と仲間入りを懇願し、
その実力を認めた上で、「傍のお前が霞む程の海賊王になる」と改めて夢を語る。}
その後、海軍にラブラブの実を行使し、洗脳能力と武器操作能力を披露。
飛び入りでオークションに参加できた理由、首輪を外せた理由が判明。
「世界一の悪名の隣でも、カレンが一番可愛いって世界中に広めるの」と仲間入りを懇願し、
その実力を認めた上で、「傍のお前が霞む程の海賊王になる」と改めて夢を語る。}
≫174 二次元好きの匿名さん21/10/04(月) 22:57:59
四皇の懸賞金額が明かされたシーンで
「参考までに、かつて彼らと鎬を削った海賊にしてかつての王下七武海。”皇帝”シンボリルドルフの懸賞金額は──6億8482万ベリーだ」
「あれ、以外と少ないですね……」
「む、心外だな。私が現在まで海賊を続けていればそれこそリンリンやカイドウの小僧以上の懸賞金額になるぞ?」
「バカを言うな。同族を慮るアンタがそこまでの悪事をするわけ無いだろう。せいぜい、十数億がだとうなところだ」
ってセンゴクさんに窘められる引退したルドルフの姿があるはず。
キャラ再現が下手っぴなのは許して……
|麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 76スレ目
≫101 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 11:49:12
話をぶった切ってしまって申し訳ない。長めのSS書くの疲れたから休憩がてら筆安めのSSです
【ここだけコラさんが生存し尚且つライスの連れ出しに成功した世界線】
※ローとライスが10代後半〜20代前半?くらいの想定
○ライスシャワーはおそろいがしたい
(ある昼下り。自室で新聞を読むコラソン)
コラソン「へェ……新種のパンダなぁ……」
ダッダッダッダッ……
ガチャッ!!
ライス「お兄さま、聞いて!ローくんが酷いの!」
ロー「おれは当たり前のことしか言ってねェ!コラさん、相手にすんなよ」
コラソン「なんだなんだ、この船の船長と副船長が揃いも揃って」
ライス「だって、ローくんが意地悪だから……」
ロー「意地悪なんて言ってねェだろ。悪いコラさん、邪魔したな。ほら行くぞライス」
ライス「ローくんだけ行けばいいよ。ライス、お兄さまとお話するから…!」
ロー「んなことしたら都合の良い事しか言わねェだろ!コラさん聞くなよ、聞かなくていいならな」
コラソン「分かった分かった、お前らちょっと落ち着け。順番に話聞くから。……まずライス」
ライス「ぐすっ……ローくんが意地悪なこと言うの……」
ロー「だから意地悪じゃねェって……!」
コラソン「ロー、今はライスが話してるから少し待て。……で?どんなこと言われたんだ?」
≫102 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 11:49:25
ライス「ローくんが入れてるタトゥー、ライスもおそろいにしたいって言ったらだめだって……」
コラソン「…………あー」
ロー「当たり前だろそんなの!」
ライス「どうして!?ローくんも入れてるのに……!」
コラソン「ロー。その、もう少し言い方をだな……」
ロー「嫁入り前の身体にタトゥー入れるなんてダメに決まってんだろ!?なあコラさん!!」
コラソン「そりゃそうだ」
ライス「お兄さまっ!?」
コラソン「悪い、ライス。今回ばっかりは流石にローが正しい。タトゥーはダメだ」
ロー「ほら見ろ」
ライス「うう……でも……でも……おそろい、したかったのに……」
コラソン「……あのな、ライス。タトゥー入れるのって結構痛ェんだぞ?それに一回入れたら基本的には消せねェんだ。若気の至りでやったら絶対に後悔する」チラッ
ロー「(なんで今おれの方見たんだ?)」←何も言わずに勝手にタトゥー入れた人
コラソン「……分かってくれるな?」
ライス「……うん」
コラソン「そうだ。タトゥーじゃなくてペイントにするのはどうだ?少しばかり手間はかかるが、タトゥーと違って落とせるし描き直しも効くぞ」
ライス「あ……!そ、それなら……ライス、お兄さまのお顔とおそろいしたい!」
コラソン「えっ」
ロー「やめろっ!!」
おしまい
≫143 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 12:54:26
エース処刑が決まって内心ぐちゃぐちゃな時に、
ルドルフに「どうしたらいい?」と聞いたら、
「自分の思うままに、生きたいように生きれば良い。海は自由なんだから」
みたいに言われて、その後エースやルフィ達の姿を見て自分の憧れを思い出し、
離反をするとか?
ルドルフも薄々テイオーの憧れには気付いていて、
オペラオーとの決戦に行く前に、海軍中将でも、母ルドルフでもなく、
「皇帝」ルドルフとして、その言葉を伝えたとか。
かつて見た、偉大な海賊の背中を思い出しながら
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 77スレ目
≫95 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 20:28:18
テイオーが海軍から海賊になるまでの話で、ちょっと即興なんだけどこんな会話があったらどうかな、
というのを思いついたので投げます。例のごとくエミュが下手なのはご容赦を…
- 前提の部分。
出奔のタイミングは、頂上決戦が一番良い…というかあのゴタゴタで出てかないと、
「エース達を守る」なんて事して無事に済むわけがないから、そこは確定にしたいとして。
その後すぐには海軍の席が無くなる事は無いだろう…という考えの元、
カノープスのところにいるテイオーへマックイーンから連絡が入る感じです。
頂上決戦後、カノープスの元へと運び込まれたテイオー。
そんなテイオーの携帯電伝虫に、マックイーンから電話が入る。
テイオーが無事な事に安堵するマックイーン。
そしてマックイーンは、テイオーを迎えに行くからどこにいるのかと問うてきた。
しかし、その問いに対し、テイオーはしばし悩んだ後、
テイオ「…ごめんマックイーン、僕は海軍には戻らないよ」
マック「…理由を聞かせて頂いても?」
テイオ「エースが処刑されるっていう時、僕はエースを助けたいって思ったんだ。
…彼は海賊で、ロジャーの息子で、処刑される理由は十分あるにもかかわらず、さ」
マック「…平和のため、世界のため、彼はそうならなければならない存在でした」
テイオ「うん、『平和を守るため』なら、仕方ない事なんだと思う。だから、ルドルフ中将
…ううん、お母さんも反対しなかったと思うんだ」
けど、とテイオーは続ける。
テイオ「違うんだ…エースを助けようと必死なルフィや白ひげ達をみて、
僕が守りたかったのはそれじゃないって思ったんだ」
マック「……」
テイオ「僕はねマックイーン、『誰かを守るため』に戦いたかったんだ。
救いたいと思った人を、守りたいと思った人のために戦えるようになりたかったんだ」
マック「ならば海軍はまさしくそれではありませんか?」
テイオ「けど、守れなかった。──ううん、最初は守ろうとすることすら出来なかった」
≫96 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 20:28:46
マック「……」
テイオ「海軍が悪いっていうじゃないよ?
…けど、平和や世界っていうものを背負った時、切り捨てなければならない
『守りたいもの』の存在が絶対にでちゃうんだ。それが、僕には耐えられない」
マック「…それはワガママというものでしょうに」
テイオ「かもしれない。けど、僕はそうしたかったんだ、そうしたいって事に気づいたんだ。
昔見たお母さん…誰かのために戦い続けた『皇帝ルドルフ』みたいに」
マック「…海賊になるというのですか?」
テイオ「結果的にはそうなるね。けど、僕はそれでいいと思っているんだ。
かつての『皇帝ルドルフ』だって、同じような気持ちで旗を掲げたんだと思う」
マック「……」
テイオ「だからごめん、マックイーン。僕は行くよ」
マック「…はぁ…薄々そうは思っていましたけれど…血は争えませんわね」
テイオ「マックイーン…」
マック「…中将は、このことはご存じですの?」
テイオ「『自分の思うままに、生きたいように生きれば良い。海は自由なんだから』
そう言ってくれた」
マック「はぁ…あの人はまったく…そうなったら一番落ちこむのは自分でしょうに…
まぁ、それでも後押しするあたりはあの方らしいですわ」
そう言いつつも、どこか納得したような表情のマックイーン。
そして彼女は表情を引き締め、硬い声でテイオーへと告げる。
マック「…海軍本部少尉トウカイテイオー。海軍本部中将メジロマックーンの名において、
あなたをエース逃亡の手助けをした責で懲戒処分といたします。
…あなたが海賊を名乗ると言うのであれば…海の上では容赦は出来ませんわよ」
テイオ「うん」
マック「最後に…海軍中将ではなく、メジロ家のマックイーンとして…
あなたの友として一言いわせていただきますわ。
──幸運を、テイオー」
テイオ「──ありがとう、マックイーン」
二人は、同時に電伝虫の受話器をおろした。
≫97 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 20:31:16
以上になります。
『海賊』に憧れた…ではなく『皇帝シンボリルドルフ』に憧れたにもっと焦点を当てられないかなーって思って、
こういうやり取りがあったら、そういう方向で掘り下げられないだろうか、と考えてこんな感じになりました。
マックイーンが冷静なのは、前スレにあった感じで、薄々テイオーの迷いなんかに気が付いていた設定。
多分、海軍だとテイオーの一番近くにいたのはルドルフ除いたらマックイーンだろうなーっていう感じで。
≫98 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 20:45:11
なんかいい感じにしんみりしたSSの余韻をぶち壊すようなネタで申し訳ないけど、ふと湧いてきた一般海兵がテイオーの父親だったらという幻覚を投下
幼テイオー「ねえ、ガープお爺ちゃん。ボクの死んじゃったパパってどんな人だったの?ママは悲しそうな顔するから聞けないんだ」
ガープ「ああ?あいつは……そう、立派な海兵じゃった。何せあのルドルフを捕まえたんだからな」シミジミ
~ルナちゃん海賊時代~
ルナ「ルーナッナッナッナッナ!この世の全てはこのルナの物!ロジャー?白ひげ?なんぼのもんじゃい!!」
海兵「見つけたぞこのライオン女!今日という今日は逃がさん!」
ルナ「チィッ!またあのしつこい海兵か!覇王色!」
海兵「グェー」気絶
ルナ「よし、今のうちにずらかるぞ!」
海兵「ハッくそっ、やられた!おのれ次こそは…!」
~七武海ルドルフ~
ルドルフ「久しぶりだね、海兵くん。私に何か用かな?」
海兵「お前は今や七武海……もう逮捕はできない」
ルドルフ「ああ、そうだ。今やお互い政府という鎖に繋がれた身。……思い返せば、君と追いかけっこをしていたあの頃が、一番充実していたのかもしれないな」
海兵「……ルドルフ」抱き締め
ルドルフ「ん……どういうつもりか、聞いていいかい?」
海兵「お前を捕まえた。もう離さないぞ」
ルドルフ「……ああ、離さないでくれ」抱き返し
~今に戻る~
ガープ「あー、うむ。立派じゃった。お前も立派な海兵になるんだぞ?」
テイオー「分かったー!」
≫99 9321/10/05(火) 20:46:25
即興で考えた"海賊ルート"トーカイテイオー初登場シーン
インペルダウン正面入り口外
(なんだよもう、ルフィのやつ考えなしに突っ走って。テイオー様の完璧な計画が台無しじゃん)
無数の海兵に囲まれて、"帝王"トーカイテイオーは口を尖らせた。彼女は今、服装と装備を奪い海兵の姿にまぎれている。
平時であれば秒でばれただろうが、幸いにもエース移送で集められた軍艦は互いに顔の知らない海兵が多かった。
「獄内へ潜入し『海軍本部』の名にかけ必ず"麦わらのルフィ"を捕らえる」
ダイギン准将の号令にテイオーは口をほころばせた。
(中に入るチャンスだ。エースが出てくるのを待つって計画とは違っちゃうけどしょうがないよね)
「ん~~~、お待ちなさいっ!!!」
だが。インペルダウンの獄卒長はそれを阻んだ。
思わず舌打ちをしそうになり、止めた。周りは敵だらけである。
(どうする、ルフィを手助けしに中に入るか、ルフィが失敗するのを期待して外で待つか)
「これより唯一の出入り口であるこの跳ね橋を上げ、インペルダウンを、ん~~~完全に封鎖しちゃうわ!!!」
(考えるまでもないよね)
ゴゴゴゴゴ……
閉じ行く跳ね橋に向かい海兵の姿をした一人が、人間離れした跳躍で滑り込んだ。坂のように橋を滑り、内側の格子を蹴り飛ばし入る。
「なに!? 海兵は外を固めてって言ったの聞いてなかったのかしら」
「海兵? ちっちっちっ、違うんだなあ」
異様な雰囲気を察した獄卒獣のコアラが殴り掛かるが
その顔に海兵の服が叩きつけられ視界を奪われる。
「テイオーステップ!」
瞬きよりも速い速度で二人の間に突撃するテイオー
サディの鞭が、コアラの拳がすでにいないテイオー目掛け振るわれる。
「そしてテイオーキック!」
一度の回し蹴りで二人の頭を打ちぬき意識を刈り取った。サディには犯罪者を収監する者に敬意を込めた手加減蹴りである。
着地し、Vサインポーズを決める
「海兵じゃなくて僕はトーカイテイオー、無敵のテイオー様なのだ! じゃ、急いでるからまたね~」
その場を走り去るテイオー。朦朧とする頭でかろうじてなされたサディの報告は、風のような速度に対して間に合うことはなかった。
「インペルダウン……完全封鎖、……失敗、侵入者追加一名」
以上、以降頂上戦争に参加して助けられなかったり怪我したりはだいたい同じ流れ
≫135 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:08:53
頂上戦争後に沖トレに治療されるテイオーss
「エースっ…、ルフィ!」
僕の目の前で、ルフィを庇って背中を貫かれるエース。思はず飛び出した僕を押さえつけたのはマックイーンだった。
「何、するんだ!」
「それはこちらのセリフですわ!テイオー!」
「離せ!離してっ!」
「冷静になりなさいっ!!」
そう言葉が聞こえた後、僕の意識は途切れた。多分マックイーンに気絶させられたんだ。
─エース、ルフィ、…サボ、どうして、海賊なんかを、目指したの…?─
目を覚ましたら知らない天井だった。周囲を見渡すと明らかに木造で、質素な、でもしっかり掃除された部屋。海軍基地じゃない。僕はベットの上で、横にある机には、お香が焚かれてる。…何だっけ?知ってる匂いだ。
「…どこだろう、ここ。」
「おっ!目ぇ覚めたか!」
と、やけに元気の良い声が聞こえた。部屋の入り口を見ると、思ってもなかったやつがいた。
「!!君は確か、"不沈艦"のゴールドシップ…。」
「おっ?ゴルシちゃんのこと知ってんのか。」
億超えの賞金首だ。知らないわけがない。僕は戦闘態勢を取ろうとした。けど、出来なかった。
「うっ…足がっ…?!」
「おいおい無理すんなよ。お前怪我してんだぜ。」
体を動かそうとすると足に走る激痛。みると、自分の両足に包帯が巻かれていた。
「なんでこんな?…君の仕業か?」
僕は思わずゴールドシップを睨んだ。すると彼女は嫌そうな顔をして、
「んな訳ねぇーだろ。逆だ、逆。ゴルシちゃんはお前のこと、看病してやってんだ。」
なんて言い始めた。
「はぁ?なんで賞金首の君が海軍中将の僕を?面識だってなかったじゃないか。」
「そんな堅っ苦しいこというなって!ゴルシちゃんは自由気ままなんだぜ?」
「何言ってるのさ。わけわかんないよ。君を追ってたのは、マックイーン、で…。」
そう、こいつを追っていたのはマックイーンだ。いや、追われていたという方が正確なのかもしれないけど。ゴールドシップ(長いからゴルシって呼ぼう)はマックイーンが行く先々で現れては事件を起こしていた。「マックちゃんの反応が面白い」からだそうだ。なのにマックは毎度ゴルシを逃がしている。マックはゴルシのビブルカードまで持っているのに、だ。(何で持ってるのかは知らない。)
そのゴルシが僕を?
どういう状況なのかも疑問だが、でも、それよりも、マックイーンで思い出した。
≫136 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:09:40
「このお香、もしかして、メジロ家の?」
この部屋のこのお香。これは、メジロ家のお香だ。確かリラックスしたい時に使うんです、って、マックが使ってたのを嗅いだことがあった。
「いや、まさか、…君はマックイーンに頼まれたの?」
「…なんだ。話が早えな。暴れださねえのか?」
「…どういうこと?わけがわからない。話を、聞かせて。」
「いいぜ。お前が寝てる間に、何があったか聞かせてやる。」
≫137 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:09:59
「エースが…死んだ?そんな、嘘だ。嘘だっ!」
「嘘ついて何になるってんだよ。ついでに、弟のルフィだったか?あっちも生死不明だ。」
「なっ?…え。…そんな。」
「まだ死体は見つかってねぇがな。」
死体?なんの。だれの
言葉は入ってきてるはずなのに、何を言ってるのかわからない。でも、ゴルシは話を続けてる。
やめろ、やめろ、やめて。
「もう!!やめて!!喋るなぁあ!!」
僕はベットの上からゴルシに殴りかかろうとした。でも届かない。当然だ。足が動かないんだから。無様に床に倒れるだけだ。
「…子どもじゃねぇんだ。話を聞け!駄々こねてんじゃねぇぞ!!」
床に転がってる僕の服の襟を掴んで、一喝するゴルシ。
「まだ、あの後の「お前」の話があんだよ。」
僕の話?
「お前、その両足誰にやられたと思う?」
「え、え?あれは、戦争中だったから、海賊の。」
「ちげぇよ。赤犬だ。」
「え、なんで、大将が?」
「お前ほんとになんも覚えてねぇのか?エースが赤犬にやられた後にな、お前、マックちゃん吹っ飛ばして赤犬に殴りかかったんだぞ?」
…そんな。
「そん時に返り討ち食らって地面に叩きつけられたんだ。赤犬がルフィってやつを追わなかったら、そのままやられてたかもな。」
僕が、大将を攻撃?マックをふっ飛ばした?
「そのあとお前は、応急処置はされたけどな、まあ海賊庇って大将に攻撃したんだ。檻の中さ。」
「……。」
「なのにお前ときたら、飛び起きたかと思えば壁に頭をぶつけ続けて気を失ってを繰り返す。そんなことを一日中やったかと思ったら今度は叫び始める。あんまりにも気の毒に思ったマックちゃんがな、あたし入れて3人しかいねえこのトレセン諸島の孤島にお前を押し込んだんだ。「トウカイテイオー中将は精神が壊れたので、絶海の孤島で療養させます」ってわけだ。」
「え?…そんな。僕は。」
全く覚えてなかった。僕、僕は何をしてたんだ。
「まあ、今は一応安定してるみたいだしな。とりあえずここでゆっくり怪我治せ。」
そう言ってゴルシは、僕をベットの上に座らせて部屋から出ていった。
≫138 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:10:54
次に部屋に入ってきたのは変な髪型の男の人と杖をついてるスレンダーなウマ娘だった。
「おっ!!起きたか!」
「よかった…。」
「…誰?」
「ああ。まあ初対面だしな。俺はトレセンの中央でウマ娘専門のトレーナー兼医者をやってた者だ。こっちは担当してたサイレンススズカだ。」
「はじめまして。トウカイテイオーさん。」
「サイレンススズカって、あの、"逃亡者"?」
「知ってるんですか?」
「まあ、一応。今の中央のレースの花形でしょ?なんでここに?故障?」
「ええ、そうなの。ついこの間のレースで骨折してしまって、今はトレーナーさんと療養中です。」
「ふーん。…そうなんだ。」
「以外と落ち着いてるな…。あの後のことは知って」
「やめて!!」
思わず叫ぶ。二人はちょっと驚いたみたい。
「…おお。」
「ゴルシから聞いたよ。暴れたんでしょ。」
「そう、あいつが…。まあ知ってるならいいか。とりあえずこれからのことを話そう。」
「…これから?こんな怪我してるのに?治ってもどうせ檻の中で、走れないんだ。放っといてよ。」
僕は、…嫌なやつだな。卑屈になってる。
「いや、駄目だ。放ってはおかない。怪我は治すしまた走ってもらう。」
でもトレーナーは下がらなかった。
「は?なんでそんな。…僕が皇帝の子だから?取り入ろうとでも思って」
「違う。違うぞテイオー!」
と、近づいてくるトレーナー。その迫力にちょっとたじろぐ。
「いいか?トウカイテイオー。君は、すごい才能を持ってるんだ。俺は多くのウマ娘達を見てきたし、もちろんテイオーの走りだって見たことがある!軽やかで、飛ぶようだった。自由な走りだって思ったぞ。」
「…そんなこと初めて言われた。」
「今テイオーの足はボロボロだがな。決して治らないわけじゃない!治る!治して見せる!だからまた、走ってくれ。」
「なんで、そんなに…。」
「テイオー。いきなりだが俺の夢を聞いてくれ。」
「ほんとにいきなりだね。」
≫139 二次元好きの匿名さん21/10/05(火) 23:11:06
。」
「この世界にはな。素晴らしい足を持つウマ娘が沢山いる。俺は彼女たちの走りに魅せられた。美しい走りだ。…俺は、彼女達の走りが見たい。何の不安もなく、ただ速さを求めて走る、彼女達の姿がみたい。…ドリームレースだ。そこには、スズカがいる。海軍のマックもいる。賞金首のゴルシもいる。そして、テイオー、君もいる。」
「……。」
「君の走りは、君だけのものだ。…君らが何の不安もなく走るには、この世界はまだ不安定だけど、それでもそんな日を夢みて、俺は、君の怪我を治す。」
「壮大だね。…無理だよ。」
「かもな。俺は戦えないけど、でも、この体がある限りは、君達の怪我を治すし、サポートもする。できることは、たくさんあるんだ。」
「…でも、僕は、もし、怪我が治っても、何をしたらいいのか、わからない…。」
「今はそれでもいいさ。時間はあるんだ。テイオーはまだまだ、これから強くなるからな!」
そう言って笑うトレーナー。ずっと無言のスズカ。(ちょっと怖い。)
希望に満ちた彼らは、僕には輝いて見えた。
……エースはいないし、ルフィはどうなったかわからない。でも、今はとりあえず、生きてみよう。
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 78スレ目
≫14 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 09:45:42
ナミ「洋服買いに行くわよ。フク、サンジくん付き合いなさい」
フク「えー、私は今ある分で別に……」
サンジ「もちろんですナミすわぁん!!」
ウソップ「分かんねえけど普通リアクション逆なんじゃねえの?」
≫18 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 10:15:26
チケット「タイシンテストー!」ユッサユッサ
タイシン「ちょっと…!くだらないことやめてよ、部下も見てるのに」
チケット「えーっ」
通りすがったルドルフ「("怪物"の孫娘、ウイニングチケット中佐……侮れんな……)」
≫42 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 13:00:38
流れぶった切りですが
青キジ麾下設定を絡めたチケットのストーリーラインが浮かんだのでざっくり書き出してみた
【前提】
ウイニングチケット
- 階級は中佐→大佐
- 年齢は23→25
- 三大将・青キジ麾下
- 青キジの呼び方は「クザンさん」
- 青キジのことは純粋に尊敬している。よく一緒に出かける仲
- 海賊は基本生け捕りにしてる
青キジ
- チケットの呼び方は「チケゾーちゃん」
- チケゾーちゃんは見てて飽きねェなって思ってる
- チケットの明るさに救われている部分も
- その手の下ネタが通じないのもあって性的な目では見ていないが、それはそれとしてあの乳は目の保養になるとは思ってる
≫43 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 13:01:12
【本編開始前】
○新兵時代
- 同期のビワハヤヒデ、ナリタタイシンと共にゼファーの指導を受ける
○本編××年前
- 大将青キジ麾下となる
【本編】
○デービーバックファイト編
- 初登場。青キジと共に海上サイクリング
- ロングリングロングランドの大草原に興奮して走り回っていたところ、デービーバックファイトの現場を発見。立場も忘れて応援に
- ルフィ達と遭遇。「麦わらのルフィ」だとは全く気づかず意気投合
- フォクシー海賊団の卑怯さに憤るも、「部外者は黙ってろ!」と言われて引き下がる
チケット「そうだった!あたし、部外者だった!!」
ウソップ「素直かっ!!」
- サンジの蹴り技を絶賛したり例のアフロに「カッコいい〜!」と興奮したりルフィの「死んでもやらん!」に感涙したり感情のジェットコースター大忙し
- デービーバックファイト後、青キジと遭遇
青キジ「あらら、チケゾーちゃん。何してんのそんなとこで。そいつ、麦わらのルフィだけど」
チケット「えっ?…………ほ、ほんとだ〜〜〜っ!!」ガビーン
- トンジットを送り出した後、ロビンを殺そうとする青キジの普段とのギャップに驚く
- 凍らされたロビンを砕こうとした青キジを見て咄嗟にロビンを助けるような行動を取りそうになるも、ルフィがロビンを庇った為未遂に終わる
青キジ「チケゾーちゃん……今、何しようとした?」
チケット「だ、だって……!そんなことしたら、その人死んじゃう……!」
青キジ「あらら、海賊を庇うたァ……。本当なら厳重処分モノだが……まぁいいか。おれしか知らないし、チケゾーちゃんのことは結構好きだし……」
チケット「く、クザンさん……」
青キジ「だからチケゾーちゃん。"何もしなくていい"から"そこで見てな"」
チケット「……!!」
- この後なんやかんやで激マブがくる
- チケットがマルゼン孫なのが判明。ただし青キジは以前から知っていた様子
≫44 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 13:01:39
○マルゼンvs青キジ後
- 自転車の後ろでしょんぼりするチケットに、「……まァ、なんだ。なんも話さなかったのは悪かったよ」と青キジ
- ここで青キジ、「おれの私情に巻き込んだから」と"絶対に誰にも話さないこと"を約束させた上でオハラでの事件をチケットに明かす
- 生まれ育ちのせいで滅ぼされるものがあることを知ってしまう
- ついでにマルゼンの孫であることは他言しないようにと念を押される
○頂上決戦
- かつて青キジからオハラの件を聞いたのもあり、エースの処刑でモヤを抱えることに
- 「(確かに、あの人は海賊で悪い事をしたのかもしれない……。でも、こんな風に処刑されるのはロジャーの息子だから……。誰の血を引いてるとか、どこで生まれるとか、そんなの本人にはどうにもならないのに……)」
- そんなこともあってか頂上決戦では思うように動けず、早々に(多分離反したテイオー辺りに)破られる
○エピソードオブテイオー(仮)
- ビワハヤヒデ、ナリタタイシンと共にテイオー追跡任務を遂行するも、交戦の末ハヤヒデとタイシンの負傷により撤退を余儀なくされて任務失敗
- 自身は軽傷だったのにハヤヒデ、タイシン両名は復帰に時間がかかる重傷を負ったことに負い目を感じる
- 「(テイオーは、海軍だと守れないものを守りたいって言ってた……あたしは……)」
- 青キジが海軍を離れた事で大将麾下でなくなったせいか、追跡任務失敗の責任を負わされるような形でG-5に左遷される
- 左遷先でヴェルゴの言葉に力をもらい、悩みは晴れないながらも元気を取り戻していく
- ヴェルゴを「ヴェルゴさん」と呼び慕うように
≫45 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 13:01:59
○パンクハザード編
- スモーカー達と共にパンクハザードへ
- ローと交戦。たしぎがやられたのを見て「斬られるとまずいなら斬られない速度で動くだけっ!!」と向かっていくもシャンブルズで雪に埋められ軽くあしらわれる
- 何故かこのとき、ローからはこれ以上の攻撃を受けていない
- テイオー追跡任務の際にハヤヒデとタイシンだけが重傷を負ったのを思い出し、「あたし……また……」と曇る曇る
- ヴェルゴに騙されていたのを知って更に曇る
- 悩んだ末、ヴェルゴとの交戦を選ぶチケット
「あたしは……あたしは、テイオーみたいに強くないけど……!でも、これからもっと強くなる!海軍を変える為にまずあたしが変わる!間違ってることは間違ってるって、堂々と言えるあたしになる!!だから、あたしはここであんたを倒すんだッ!!ヴェルゴーーーーッ!!」
「――ヴェルゴ"さん"だ」
- 一発ぶちかますことには成功するものの、やはり届かない
- が、サンジが助けに入り事なきを得る
- なんやかんやでスモーカーに同行しドフラミンゴの襲撃を受ける。スモーカーを庇い、ドフラミンゴに向かって行ったところで青キジの助けが入る
「ク゛ザン゛さ゛ん゛……!!あ゛い゛た゛か゛っ゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「あらら…別嬪さんが台無しだ」
- 青キジと再会した喜びと感激で顔面ぐっちゃぐちゃになるチケット
- 再び青キジと別れる際、敬礼ではなくVサインを送る
「クザンさん!…あたし、海軍の中で頑張る!海軍だとできない事があるなら、海軍でしかできない事もあるはずだから!いつか海軍を変えるよ!全力で!…たまに、肩の力を抜きつつ!!」
「チケゾーちゃん……暫く見ないうちに、随分いい女になったじゃないの」
おしまい
この後リハビリ中のハヤヒデタイシンの元にチケットから手紙が届き、タイシンは「へぇ……元気そうじゃん」と微笑むのであった
≫90 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:13:13
【エピソード オブ ライスシャワー】
【第一章 月下の出会い】
≫91 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:14:24
1.
夜の帳がすっかり下りて、灯りもまばらとなった道をコラソンは歩く。
北の海のとある街、シャントッセ。ここを根城としている海賊を潰すのが今回"ドンキホーテ海賊団・最高幹部"としてのコラソンに与えられた任務だった。
懸賞金はトータルでやっと1000万に届くような海賊だ。コラソンだけでも十分に潰せると、船長であり実兄であるドフラミンゴは判断したのだろう。逆に言えば、これをコラソンが潰せなければ信用を失うことになる。潜入任務を行っている"ドンキホーテ・ロシナンテ中佐"としてはそれだけは避けたい。
ひとまず今日のところは情報収集も程々に、数日滞在する宿に戻るところだった。
「……ぐすっ……ぐす……ふぇぇん……」
コラソンは思わず立ち止まった。
聴こえてきたのは子供の泣き声だ。それも灯りがほとんどない路地裏の方から。
海賊が住み着いてるような街で、こんな夜中に子供が出歩いているなんて。とても放ってはおけない。コラソンは声のする方へと歩き出した。
雲が流れて月明かりが照らしだせば、壁に持たれるようにして子供が膝を抱えて座り込んでいるのが見えた。
しかし、ただの子供ではない。
頭頂部から生えた二つの黒くて長い耳。石畳の上には同じ色の毛束が広がっている。
――ウマムスメ族。その名の通り馬の耳と尻尾を持つ、女性のみの種族だ。高い身体能力を持ち、特に走ることに関しては右に出る種族はいないだろう。海の魚人族、陸のウマムスメ族、とはよく言ったものだ。
その端麗な容姿のせいか人攫いの被害に遭い、物好きに売買される事件は未だ無くなっていない。海軍にいた頃からその手の話は嫌というほど聞いてきた。
そんなウマムスメ族の、それも子供がどうしてこんなところに一人でいるのだろう。
誰かに見つかるのはまずい。"能力"を使い、見えない防音壁を張ってから、コラソンは少女に話しかけた。
「なあ、君。こんな夜遅くに何を……」
「ひッ……!?」
ウマムスメの少女はコラソンに気づくと、小さな身体をビクッと震わせて顔を上げた。
目尻に浮かんだ涙が月明かりに照らされて光る。ひどく怯えきった表情を浮かべた彼女は、よろよろと立ち上がって後退った。
「こ……こないで!」
少女はカタカタと震えながらも鋭く叫んだ。
≫92 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:15:02
「お願いだからこないで!ライスがいると不幸になっちゃうの!」
見ず知らずのコラソンに対して怯えているというよりは、もっと別の何かを恐れているように見える。いずれにせよ尋常ではない様子だ。益々放っておけない。
目の前の少女を刺激しないようゆっくり距離を詰めようとしたその時、コラソンの視界いっぱいに石畳が広がった。直後、衝撃と痛み。
薄暗くて分からなかったが、古くなって剥がれ落ちた手配書を見事に踏みつけて転んだらしい。
「きゃあああああっ!?」
したたかに打ち付けた額の痛みに呻いていると、少女は悲鳴を上げてコラソンに駆け寄ってきた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ライスのせいだ……!ライスのせいでごめんなさい!」
つぶらな瞳から大粒の涙をぼろぼろ零し、少女は謝罪の言葉を繰り返す。
コラソンは起き上がると、少女に手を伸ばす。すると少女はビクリと肩を跳ねさせてぎゅっと目を瞑った。
そのまま小さな頭の上にそっと手を乗せて優しく撫でた。少女は恐る恐る目を開けると、コラソンを見上げた。
「泣くな。お前のせいじゃない」
「で、でも……でも……!ライスのせいで転んで、血だってこんなに……!」
「これくらいどうってことはねェよ。それにおれは元からドジっ子なんだ。今転んだのだっておれが勝手にドジっただけだ」
「あ……うぅ……で、でも……」
「だから泣かないでくれ。お前はなんにも悪くないんだから」
そう告げた瞬間、少女は息を呑んだ。見開かれた目から再び涙が溢れ始める。
「ひっく……うぅ……ぐすっ……うわあああぁぁぁぁん!!」
堰が切ったように声を上げ、少女はわんわん泣き出した。
改めてよく見てみると、少女の身なりはボロボロで薄汚れている。どうやらただ事ではなさそうだ。
少女が落ち着くのを待ってから、とりあえず宿まで連れて行くことにした。
≫94 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:15:41
2.
少女の頭に布を被せて耳を隠し、宿の主人には追加の料金を渡した。軋む階段を登り、部屋へ向かう。
安宿だからだろうか。備え付けのシャワーからは待てども待てどもお湯が出ない。仕方がないので濡らしたタオルで身体を拭いてやれば、一応汚れはマシになった。
念の為周囲に音が洩れないよう能力を使い、コラソンは口を開いた。
「おれのことは……コラソンと呼んでくれ。君の名前は?」
「……ら、ライスシャワー、です……」
おどおどしながらも、少女はそう名乗った。
「どうしてあんなところで一人でいたんだ?ご両親は?」
「お父さまと、お母さまは……」
ライスシャワーは言葉に詰まり、目を潤ませて俯いた。コラソンにはそれだけで彼女に何があったのか察せられた。
「……ぐすっ……海で……嵐に、遭って……それで……」
「っ……!もういい、悪かった。つらいこと思い出させちまったな」
またぽろぽろと涙を溢し始めたライスシャワーの小さな背中を擦り、宥めた。
「……ずっと一人でいたのか?」
ライスシャワーは無言で頷いた。
「……どのくらいの間?」
「多分……一年、くらい……」
一年。一年もの間、誰にも守られることなく一人で生きてきたというのか。こんなにも幼い子供が。
≫95 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:16:17
「その刃物はどうしたんだ?」
少し気になっていたのが、ライスシャワーが大切そうに抱えた短剣だった。
鞘に入ってるのを抜いて確認したわけではないが、重さからして恐らく中身は本物の刃物だ。幾ら実を守る為とはいえ、この気の弱そうな彼女が持つには物騒な代物ではあった。
「……嵐になった時に、お父さまが持たせてくれたの……。これがライスを守ってくれるから、って……」
どうやらお守りであり、親の形見であったらしい。
確かに武器をお守りにする文化はある。この様子からして武器として使ったことはなさそうだ。
後は何を話すべきかと少し考える。数刻の沈黙。ややあって、静寂を破ったのはコラソンではなくライスシャワーだった。
「……ライスのせいなの……」
「何?」
「ライスがだめな子だから……。ライスが悪いから、みんな怒るの。みんなを不幸にしちゃうの……」
「どういうことだ?」
「ライスは"けだもの"で"きたない"から……だからビョーキになるって……」
「……!!」
「ぐすっ……ライスが、だめな子だから……だから、だから……きっとお母さまとお父さまも」
「バカなことを言うな!!」
「ひっ……!?」
思わず叫んでしまい、すぐ後悔した。大の大人に怒鳴られたライスシャワーは、青褪めた顔でコラソンを見上げている。
「……悪い。驚かせちまったな。怖がらせるつもりはなかったんだ。本当にごめんな」
できるだけライスシャワーに目線を合わせ、でもよ、と続ける。
≫96 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:17:01
「その先は絶対に言ったらダメだ。ご両親はな、ライスに生きててほしかったんだ。そのお守りを預けたのが何よりの証拠だろ?それなのに、生き残ったお前がそんなこと言っちまったら……ご両親はきっと、そっちの方がずっと悲しいはずだぜ」
ライスシャワーはぐすぐすとしゃくり上げ、小さな拳をきゅっと握った。
「……お母さま……お父さま……」
「……疲れただろ?今日はもう寝るといい。安眠は約束する」
ライスシャワーをベッドの上に運び、毛布を被せてやる。
不安そうな顔で見上げてくるので、「大丈夫だ」と頭を軽く撫でた。少しして寝息を立て始めたタイミングでライスシャワー自身に能力を使い、周囲の音が耳に入らないようにした。
頬に涙の痕が残る姿を見下ろし、改めて考える。
ウマムスメ族は今でこそ海軍将校を多く排出するなどしてその地位を向上させているが、差別意識が根強く残る場所も多いと聞いている。
あの怯えようや言動から察するに、きっと彼女は両親と生き別れてから酷い差別に晒されてきたのだろう。
にも関わらず、ライスシャワーは決して恨み言を吐かなかった。追い詰められても他者を憎まず、自分が悪いのだと泣いた。
なんて優しくて、なんて痛ましい。
父の姿が脳裏を過る。実の息子であるドフラミンゴに撃ち殺される直前になって尚、決して誰も憎まなかったあの善性が。
幼い寝顔を見つめながら、一筋の涙がコラソンの頬を伝った。
≫97 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:17:38
3.
翌日。
すうすうと寝息を立てるライスシャワーを見つめながら、これからどうするべきかを考える。
この街に来た目的自体は変わらない。問題はこの子をどうするかだ。事情を知った以上、見捨てることはとてもできない。しかし……。
「んん……」
目を覚ましたらしいライスシャワーがゆっくりと身体を起こす。眠たげな目を擦り、あくびを噛み殺しながらぐっと身体を伸ばした。
それからコラソンを見上げ、「ひえっ」と小さく悲鳴を上げた。驚いたように周囲をきょろきょろと見回す。それから漸く、昨晩の出来事を思い出したようだった。
「あ、あの……っ!お、お……おはようございまひゅ!」
思いっきり噛んだ。
昨晩のことを思うとなんだか微笑ましくて、つい笑みが溢れた。
「ああ、おはよう。よく眠れたか?」
「は、はいっ。こ、こんなにちゃんと眠れたの、本当に久しぶりで……」
どうやら、能力を使ったのは正解だったらしい。
ウマムスメ族は人間のそれよりも優れた聴力を持つ。孤独な生活で緊張状態にあったであろうことは容易に想像できた。微かな雑音すらも拾い上げてしまい、浅い眠りを繰り返していたのだろう。
「きっと、コラソンさんが傍にいてくれたから……ありがとう……」
昨晩よりもずっと穏やかな表情に安堵する。泣いているよりずっといい。
「言ったろ?安眠は約束するってな」
能力のことは話していない。同情はしているが、出会ったばかりの子供に必要以上に情報を渡すわけにはいかない。
それに、こちらの事情に彼女を巻き込むわけにもいかなかった。
≫98 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:18:10
ライスシャワーにはシーツを被って耳と尻尾を隠すこと、誰かがやってきても決して自分から扉を開けてはいけないこと、念の為コラソンの声がするまでは物陰に隠れていることを告げてから宿を出た。
向かったのは商店が立ち並ぶ通りだ。子供用の服をいくつか購入し、自身とライスシャワーの分の朝食を買ってからまた宿屋に戻った。
周囲を見回し、誰もいないことを確認。どうやら宿泊客はコラソンだけらしい。好都合だ。鍵を開けて部屋に入り、能力を使う。
「ライス。戻ったぞ」
「……!」
シーツをすっぽり被ったライスシャワーがベッドの陰から顔を出した。きちんとコラソンの言いつけを守っていたようだ。
「腹減ったろ?ほら、こっちきて飯にしよう」
這い出てきたライスシャワーの頭上からシーツが滑り落ち、細長い耳がぴょこんと飛び出した。
古びた小さいテーブルから埃を払って買ってきた食べ物を並べる。一つしかない椅子を引いて座るように促せば、ライスシャワーは不思議そうに椅子とコラソンを交互に見た。ほら、と椅子を数回軽く叩けば、やっと意図を理解してくれたらしい。どこか遠慮がちに腰掛けた。
「好きなだけ食っていいからな。あ、嫌いなもんとかあるか?」
「う……ううん。ら、ライス……なんでも、食べられるよ……」
「おっ、好き嫌いないのか。偉いぞ」
ライスシャワーは包み紙からおにぎりを一つ取り、躊躇いがちに口をつけた。小さな頬がもぐもぐ動いて、やがて嚥下する。
それから二口目、三口目と口にしていく。
「……んぐ……もぐ……ひっく……」
安心して自分も朝食にしようとしたところで、コラソンはぎょっとした。
半分ほどになったおにぎりを手にしたまま、ライスシャワーがぽろぽろと涙を溢れさせている。
「お、おい、どうした!?」
「ぁ……ち、違うの!ぐすっ……」
≫99 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:18:49
ライスシャワーは鼻を啜り、泣きながらぽつぽつと言葉をこぼした。
「コラソンさんが……ライスなんかの為に、こんなに優しくしてくれて……嬉しいの……すごく、すごく嬉しいの……!なのに、ぐすっ……嬉しいのに……涙が……止まらなくって……うえぇぇぇん……!」
「……ライス」
感極まって昨晩のように泣き出してしまったライスシャワーの肩をそっと叩いた。
次から次へと溢れて止まらない涙をそのままに、彼女は顔を上げる。
「ばあっ!」
「ひゃあっ!?」
ライスシャワーが見たものは、前のめりになって"に゛っこり"とどこか不器用な笑顔を浮かべるコラソンだった。
数秒の沈黙。そして。
≫100 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:19:32
「……くすっ……ふふっ……」
目尻に涙を浮かべたまま、ライスシャワーの口元が緩んだ。
笑いを堪えるように片手を口元に当てる。
「ふ……うふふっ……ご、ごめんなさい。笑ったらだめなのに……」
「いや、ダメじゃねェよ。笑ってほしかったんだ」
「えっ?」
コラソンはライスシャワーの涙を親指で拭った。
「こんなに可愛い顔して、泣いてばっかりなんて勿体ねェじゃねえか。笑ってる方がずっといい」
「コラソン、さん……」
ライスシャワーは袖で目を擦ると、コラソンの真似をするように笑顔を浮かべた。
「うん……ありがとう、コラソンさん……」
≫101 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:20:03
4.
シャントッセに来て三日目の朝を迎えた。
一昨日、昨日と比べるとかなり緊張の解けてきたライスシャワーは、起きるとコラソンに向かって「お、おはようございます」とお辞儀をした。元々はそれなりに育ちの良い子だったのかもしれない。
「なあ、ライス。もしライスさえ良ければだが……今日は一緒に外へ行ってみないか?」
「えっ……?」
昨日、ライスシャワーに服を数点買った際に帽子も買っておいた。耳を通す穴がない帽子も尻尾用の穴が空いていない服も窮屈だろうが、ウマムスメの特徴を隠すことができる。
この街の海賊を潰したらコラソンはここを出なければならない。ライスシャワーをずっとこの安宿に置いておくことはできないのだ。外は怖いかもしれないが、今のうちに少しでも慣れておいてほしかった。
「ええと、その、なんだ。面白そうな店を色々見つけてな?是非ライスにも見てほしいんだ。……そうだ!なんなら好きなもの買ってやるぞ」
世界は怖いものばかりではないのだと知ってほしかった。
楽しいことも知ってほしかった。
「……うん。わかった」
「……!本当か?大丈夫か?怖くないか?」
「ちょっと怖い、けど……でも、コラソンさんが一緒だから」
昨日よりずっと自然に、ライスシャワーは笑った。
≫102 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:20:42
帽子を被せたライスシャワーを片腕に抱いて宿を出る。
本当は手を繋いで歩ければよかったが、身長差がありすぎて難しい。ライスシャワーはコラソンの腕の中で物珍しそうに街を見回した。
最初に会った時は路地裏で縮こまっていた。こんな風に街をゆっくり眺める余裕なんてなかったのだろう。
老若男女様々な人々が行き交い、明るい呼び込みの声が舞う。海賊のことさえなければそれなりに栄えた、中々悪くない場所なのだと先日の情報収集の時に知った。
「よう、おニイさん。可愛い子だね。妹さんかい?」
「あ……ら、ライスは……」
青果店の軽薄そうな店員が声をかけてきた。
ライスが何か言う前にコラソンが頷き、木箱に入ったりんごを指差す。次に指を2本立てた。コラソンがずっと無言でいることから何かを察したらしい店員は、これ以上踏み込むことなく「へい毎度。200ベリーね」と事務的に返す。コラソンは財布から200ベリー支払って、りんごを一つライスシャワーに渡し、もう一つを自分で齧りながらまた歩き始めた。
ライスシャワーはりんごを齧り、不思議そうにコラソンを見上げていた。
それから色々な場所を回った。
串焼きの肉や魚、色んな果物が混ざったジュースに舌鼓を打ったり。花屋に並んだ色とりどりの花々を眺めたり。何やら怪しい占い師に捕まって「大凶。アンタ死ぬわよ、近い内にね」と告げられたり。それを聞いたライスシャワーが「ライスがいたせいだ……」と泣き出したのを必死に宥めたり。
日が暮れる頃にはすっかり疲れてしまったのか、ライスシャワーはコラソンの腕の中で船を漕いでいた。
宿の部屋に戻ってから、コラソンはライスシャワーに声をかける。
「……疲れたか?」
「ちょっとだけ……」
「眠いなら寝ててもいいぞ。飯の時間には起こしてやるから」
「ううん……へいき……」
とは言いつつも今にも寝落ちてしまいそうだったので、コラソンはライスシャワーをベッドの上に降ろした。
「……コラソン、さん」
「なんだ?」
「……今日はあんまり、おしゃべりしなかったね……」
≫103 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:21:16
図星を指され、ぎくりとした。
この街にいる間、コラソンはファミリーにいる時同様"口を利くことができない男"を演じてきた。何がきっかけでファミリーの方にバレるか分からない以上用心するに越したことはない。ライスシャワーと話す時だって、能力を使ってこちらの声が外に洩れないようにしている。
しかし、これまでずっとコラソンと普通に話してきたライスシャワーからすれば不自然に思うのは当然だ。コラソンは咄嗟に言い訳した。
「あ……ああ。その、実はだな……おれはこう見えて結構"緊張しい"なんだ。人がたくさんいると上手く話せなくなっちまう」
「そう……だったんだ……。なのにライスのこと、いろんなとこに連れてってくれたんだね……」
ライスシャワーはベッドの中で柔らかく微笑んだ。
「ありがとう……。コラソンさんは、やさしいね……お父さまみたい……」
その言葉に、コラソンは目を見開いた。
「お……おいおい、お父さまはないだろ?おれはまだ20代だぞ?そんな歳じゃない。せめてお兄さまとか……」
「うん……そう、だね……」
どうやら本格的に眠くなってきたらしく、ライスシャワーは今にも寝落ちる寸前だ。
「今日ね……すごく楽しかったの……。ライス、コラソンさんと会えて……ほんとに……良かっ…………」
台詞が言い切られることはなかった。間もなくすうすうと寝息を立てる音が聞こえてくる。
コラソンは小さく息を吐いた。楽しいことを知ってほしいというコラソンの願いは叶った。だが、それ以上に今のライスシャワーの言葉が深く突き刺さっていた。
『お父さまみたい……』
――出会ったばかりのコラソンをこんなにも信用してくれた女の子を、置いていかなければならないなんて。
コラソンはガシガシと頭を掻いた。少し頭を冷やす為に、一度外に出て一服することにした。
数分後、コラソンの肩は盛大に燃え上がった。
≫104 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:21:45
5.
――四日目。
情報収集はもう十分。仕掛けるのは今夜だ。あまり時間をかけると向こうにバレる危険性も高まる。
一番の問題はライスシャワーをどうするか。やはり孤児院のような施設に預けるしかないだろうか。
ここは最初に思ったよりいい街だったが、少しばかり治安に不安が残る。ウマムスメも見かけないし、ここに置いていけばライスシャワーは苦労することになるかもしれない。
「……コラソンさん?」
声をかけられて我に返った。
さっきまでサンドイッチにかじりついていたライスシャワーが、コラソンをじっと見上げている。
「ん……?あ、ああ。悪い。なんだ?」
「え、えっと……なんだか、困ってるみたいな顔してたから……」
≫105 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:22:18
思わず自分自身に対して悪態をつく。よりによって顔に出てたらしい。この子に気を遣わせてしまうなんて。
「も、もしかして……ライスのせい?」
「い、いや!それは違うぞ!ちょっと……考え事をしてただけだ」
不安そうに見つめるライスシャワーに、コラソンは慌ててそう取り繕った。
「コラソンさん、何か悩んでるの……?」
「ま、まあ……そんな大したことじゃねェんだ。ライスが気にすることじゃ……」
「ら、ライスにも、お手伝いできない……かな……?」
コラソンは息を呑んだ。
そんなコラソンの様子には気づかず、ライスシャワーは俯いてぽつぽつと話す。
「あ……あのね。コラソンさんは、ライスにいっぱいいっぱい優しくしてくれたから……だから、ライス、何かコラソンさんの役に立ちたいの」
――何も言えなかった。
ただ、どうしょうもなく胸が痛んだ。
コラソンが昨日までしてきたことはあくまでその場しのぎに過ぎない。
他者から傷つけられ続けながらも決して優しさを失っていないこの少女を、本当の意味で救うことなどできやしない。
「……あ……ご、ごめんなさい。やっぱり、迷惑だったよね……」
「そんなことはないさ」
しゅんと耳を垂れさせたライスシャワーの頭をくしゃりと撫でる。
「その気持ちだけで十分だ。ありがとう、ライス」
ほっとしたように微笑むライスシャワーの姿に、罪悪感が募った。
≫106 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:22:49
……すっかり日が暮れてしまった。
この日、コラソンは街中を駆け回っていた。どうにかライスシャワーを引き取ってくれるような場所を探さねばと必死だった。
やはりこの街にはウマムスメは住んでおらず、差別的という程でもないが住民からの印象はお世辞にもいいものとは言えない。
しかし、どうもこの街から少し南下したところにある村ではウマムスメが暮らしているという。
今からでは流石に間に合わないが、距離的にはそう遠くはないようだ。ここの海賊を潰した後にでもライスシャワーを連れていってどうにか預かってもらえないか交渉してみよう。
先日の言葉や今朝のやり取りを思うと彼女を置いていくのは気が引けるが、だからといってファミリーに連れて行くなんて以ての外だ。あの場所にこれ以上子供を増やすべきではない。それに、あんな虫も殺せないような子供がファミリーにやってくるとなれば、ドフラミンゴは決していい顔をしないだろう。
宿屋の部屋の前まで辿り着き、深呼吸を一つ。
話をするなら全てが終わってからがいいだろう。せめてそれまでは少しでも明るくいよう。いつか彼女の思い出になるのなら、笑顔の記憶で残っていたい。
扉を開けて能力を発動。ライス、と呼びかける。
しかし、返事はない。それどころか物音一つしない。
「…………ライス?」
コラソンは急速に血の気が引いていくのを感じた。
ベッドの陰を覗く。――誰もいない。
毛布をひっぺがす。――誰もいない。
立て付けの悪い浴室の扉を開ける。――誰もいない。
ライスシャワーはどこにもいなかった。
紙に乱暴に文字を殴り書いてから、階段を駆け下りる。途中で足を踏み外し、ゴロゴロと転がって盛大な音を立てて壁にぶつかった。宿屋の主人が驚いたように悲鳴を上げる。
コラソンは何事もなかったかのように起き上がり、持っていた紙を突きつけた。
≫107 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:23:24
《オンナのコは?》
「う、ウマムスメの子ならお客様がおられない時に一人で出ていきましたよ」
それを聞いたコラソンは慌てて宿を飛び出した。周辺を見回すも、ライスシャワーらしき影はない。
もうすぐ日が沈み切る。探しに行く時間はない。そもそもいつ出ていったかも定かでないし、居場所の見当もまるでつかない。
痛いほど拳を握りしめて項垂れた。
どうして待っていてくれなかったんだという身勝手な思いが、おれが自惚れていただけであの子に信頼されていたわけではなかったのだという諦めが混ざり合って渦を巻く。
叫びだしたくなるのを必死に堪えて踵を返した。とぼとぼと宿に戻り、階段を登ろうとしたところでまた転んだ。
仕方なかった。きっと仕方なかったのだ。どの道あの子とずっと一緒にいてやることなどできなかった。
あの子だって、こんな出会ったばかりの素性も分からないような男など信用できるはずがなかったのだ。だって、彼女はただでさえ狙われやすいウマムスメで…………。
「…………おい、ちょっと待て……」
コラソンは誰もいない部屋でひとり、呟いた。
≫108 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:24:04
つい先程項垂れて階段を登っていった大柄だがドジな男が凄まじい形相で迫ってくれば、誰だって悲鳴くらい上げるだろう。
大きな手が乱暴にカウンターを叩き、宿屋の主人は身を縮こまらせた。
《なぜ しっていた!?》
《あのこがウマムスメだと!》
コラソンがそう書かれた2枚の紙を叩きつけると、宿屋の主人はみるみる青褪めていった。
ライスシャワーをこの宿屋に連れてきたあの夜から、コラソンはずっと徹底して彼女の種族を隠していた。
差別に晒された経験を持つ彼女が奇異の目で見られるのは可哀想だと思った。万が一人攫いにでも狙われればまずいと思った。だから室内にいる間も耳と尻尾を隠すように言ったし、素直なライスシャワーは律儀にそれを守り続けていた。それに、部屋には必ず施錠するようにしていた。
コラソンが借りた部屋に入ってライスシャワーの正体を確認できるのは予備の鍵を持つ主人だけだ。
「ゆ、許してください!仕方なかったんです!!」
主人は観念し、白状し始めた。
この街は毎月海賊に献上金を差し出すことで街や住民に手を出さないという約束をしていた。それ自体はコラソンも情報収集の段階で知っていた。
ところが、今月分の支払日が近づいてきて突然献上金の値上げを要求されたという。不足分は一朝一夕ではとても用意できない額。断れば街に、住民に危害が及んでしまう。
そこで主人が目をつけたのが、余所者のコラソンが連れていたライスシャワーだ。
なんでも件の海賊は幼い少女を特に好んでいるという。余所者の子供なら角も立たないと踏んで誘拐を決行し、不足分の穴埋めをしようとした。その時に彼女がウマムスメ族だと知ったのだ。
幾ら力の強いウマムスメ族とはいえライスシャワーはまだ育ち切っていない子供で戦う術も知らない。大人の力で簡単に抑え込めてしまう。
コラソンは唇を噛み締め、再度拳でカウンターを殴った。宿屋の主人が腰を抜かしてへたり込む。
すぐに部屋に戻り、準備を整えてから宿屋を飛び出した。
既に日は落ちて、夜の帳が下りていた。
≫109 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:24:34
6.
――ナギナギの実。それがコラソンの持つ悪魔の実の能力。
あらゆる音を消す無音人間。直接的な攻撃力こそないものの、"知られない"ことに関しては最大限力を発揮する。
自身が出す音のみを消し、海賊の根城である屋敷に潜入。完全に油断しているのか、見張りすら立てていなかった。コラソンにとっては好都合だ。
暗い廊下を進んでいくと、大きな扉の隙間から光が漏れているのが見えた。そっと中の様子を伺う。
そこではやはり、件の海賊達が酒盛りをしながら下卑た笑いを浮かべていた。
部下の人数は5人ほどか。その一番奥に、船長と副船長らしき姿があった。
レード・ジル。この海賊団の船長である、髭を生やした人相の悪い男だ。よりによってドフラミンゴとの取引を反故にしその怒りを買った。こいつこそ、コラソンがこの街にやってきた目的だ。
大層な革張りの椅子にどっかりと座り込んだジルの隣には無骨な檻が置かれていた。その中に閉じ込められた小さな姿を見つける。
(ライス――!)
カッと頭に血が上るのを感じる。
落ち着け、落ち着けと自身に必死に言い聞かせた。ここで感情に身を任せて動いては彼女を助けられない。
檻の中でライスシャワーは啜り泣いていた。耳を力なく垂らし、狭い檻の隅で自分を抱きしめて縮こまっている。
「――しかし、ウマムスメか。どんなケダモノかと思えば、存外可愛らしいじゃねェか」
酒を貪っていたジルが赤ら顔を檻に近づける。ライスシャワーは怯え、逃げるように頭を抱えた。
それを見たジルは品のない笑い声を上げた。
「おいおい、そんなに怖がるな。これから長い付き合いになるんだ。可愛がってやるよ……少なくともガキの間はな」
ライスシャワーの目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「しっかし本当に愛らしい……こりゃ大人になっちまう前に殺して、剥製にしちまうのもいいかもなァ!ギャハハハハ!!」
≫110 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:25:09
……その時、コラソンは見た。
ライスシャワーの口が動いたのを。
この騒ぎだ。音は聞こえない。けれど、口の動きを読むくらいはできる。
――たすけて、コラソンさん
コラソンは――耐えられなかった。
ドアの隙間に銃口を差し入れて発砲。銃声を鳴らさずに放たれた無音の銃弾が天井のランプを正確に撃ち抜いた。
「なんだ!?」
「急に明かりが……!」
"ナギナギ"の能力によってコラソンの影響による音は全て消える。ランプが割れた音すらせず、海賊達は困惑するばかり。
コラソンはそこへ飛び込んでいった。目は既に闇に慣れている。不意を打たれた海賊など既に烏合の衆に過ぎない。混乱する海賊に音もなく近づき、その横っ面を思いっきりぶん殴った。
当然、殴打音も無い。コラソンはそのまま海賊達の顔面を殴り、顎を蹴り抜き、次々と気絶させていく。
後は、船長のジルと副船長だけ――!
「動くな!!」
「!?」
鋭い声が飛び、コラソンは目を見開く。
副船長がライスシャワーの頭に銃口を突きつけていた。
ジルがランタンに火を点け、僅かながらも明かりが戻り、コラソンの姿が照らし出される。
≫111 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:25:44
「へへ……図体のデカい男がこのウマムスメを取り戻そうとしてるって聞いてたんでな。こんな奇妙な手品を使えるとは予想外だが……」
「――!!」
あの宿屋の主人か――!
ギリ、と唇を噛む。おそらくコラソンが出ていった後、電伝虫を使ってジルに連絡を入れていたのだ。
「コラソンさん……っ!」
「おおっと、動くなよ。下手なマネしたらこのガキの頭撃ち抜くぞ。……ほら、銃を捨てな」
「おれとしては今すぐ剥製にしちまっても構わねェんだぜ?」
「……ッ!!」
コラソンは言われた通り、持っていた拳銃を床に投げ捨てた。
ジルは満足そうに笑うと、下卑た笑みを浮かべたままコラソンに近づく。
次の瞬間、ジルの拳がコラソンの頬を殴りつけた。
「いやあぁぁぁっ!!」
ライスシャワーの悲鳴が響く。
この程度の海賊の拳など、コラソンからすればどうということはない。ギロリと睨み返せば、それが気に入らなかったのだろう。二発、三発と続けて拳を打ち込んでくる。
「やめてぇぇぇーーっ!!コラソンさん!!コラソンさぁんっ!!」
檻に縋りつきながら、ライスシャワーは泣き叫ぶ。
≫112 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:26:27
(あァ……ライス……。お前はやっぱり、優しい子だ……)
無抵抗で殴打を受けながら、コラソンはぼんやり考えていた。
自分だって怖い目に遭っている筈なのに、自分のことよりもコラソンの身を案じている。この奇跡のような優しさを……守ってあげたかった。
(ごめんな、ライス。怖かったよな。辛かったよな。また泣かせちまったな……)
何十発もの殴打の末に、とうとうコラソンは膝をついた。
ジルは腰から提げていた拳銃を手にし、その銃口をコラソンに向ける。
……例えば。ライスシャワーを見捨てれば、この脅しに屈しなければ、コラソンはすぐにでもこの三流にも満たないような海賊を始末できる。
センゴクが託してくれた任務。実兄ドフラミンゴの暴走を止めるという目的。様々な事柄が浮かんではぐるぐると回る。
――それでも、できない。
泣いているあの子を見捨てるなんてできるはずがない。
「……くたばれ」
「……っ」
指が引き金にかけられた。
刹那。
「だめぇぇぇぇーーーーッ!!」
何故だろうか。ライスシャワーの叫び声がやけに近く聞こえた。
≫113 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:27:13
「ぐおっ!?」
突然ジルが声を上げ、拳銃を取り落とした。
――信じられない光景がそこにはあった。
先程まで檻に閉じ込められていた筈のライスシャワーが何故か檻の外に出ていて、ジルの足に体当たりを食らわせていた。
一瞬呆気に取られたコラソンだったが、この好機を逃す手はない。ジルが拳銃を拾い上げる前に素早く立ち上がり、散々殴ってくれた仕返しとばかりに勢いよく顎を蹴り砕いた。
泡を吹いて倒れるジル。
副船長の方も何がなんだか分からず混乱しているようで、間抜けな顔で空になった檻とライスシャワーを交互に見つめている。
コラソンが駆け出したことに気づいたところでもう遅い。銃の照準を合わせる暇も与えず、握り締めた拳を顔面に叩きつけた。
勢いで壁にぶつかった副船長はずるずると座り込み、そのままピクリとも動かなくなった。
肩で息をしながら血の混ざった唾を吐く。唇を袖で拭っていると、背後から何かが倒れたような音がした。
「……!?ライス!!」
倒れ伏したライスシャワーに駆け寄って抱き起こす。息はあるが顔色が悪く、ぐったりとして動かない。
コラソンはその小さな身体をしっかりと抱き締めた。
≫114 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:27:41
7.
――ゆめをみた。とってもとっても、こわい夢を。
おふねが大きく揺れて、外からはごうごうと風の音。
まるで怪物の鳴き声みたいで、こわくて、こわくて、震えて泣くことしかできなかった。
お母さまも泣いていた。ライスのことをぎゅっと抱きしめて、震えてた。
「お願いします、三女神様……!どうかこの子だけは、この子だけは……!!」
お父さまも泣いていた。つらそうな顔をして、子どもはさわったらいけないはずの刃物をライスに持たせた。
「ライス……これがきっとお前を守ってくれる……!だから……!」
――そして、お父さまとお母さまはライスの目の前からいなくなった。
「おねがいします!お父さまとお母さまを助けてください!きっと海でおぼれてるの!誰か……!」
ライスを見ると、みんながこわい顔をした。
「おい、なんだこいつ!?頭から何か生えてるぞ!」
「ウマムスメ族だ!あっちに行け、けだものめ!」
「ちょっと、触らないで!汚いわね!うちの子が病気になったらどうするつもり!?」
ライスがみんなを、不幸にした。
「クソっ、息子の熱が下がらない……!お前!一体何したんだ!?」
「あんたのせいで子供が転んで怪我したじゃない!」
「――何もかもお前のせいだ!!」
≫115 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:28:12
みんながライスのことを怒った。
ライスがだめな子だから。ライスがみんなを不幸にしちゃう悪い子だから。
ライスは誰ともいられない。だから、ひとりで。ずっとひとりで。まっくらでつめたい夜の中で…………。
………………
…………
……
…………ふと、つめたい身体があったかくなった。
おおきくてあったかいなにかが、ライスのことをすっぽりとつつみこんだ。
――だれ?
――お父さま?お母さま?それとも……
まっくらだったおそらに、いつのまにかお月さまが浮かんでいた。
きんいろの光がぬくもりの正体を映しだす。
ライスよりもずっとずっとおおきな身体。おおきな手。そして……不器用だけど、優しい笑顔。
『――ある日、しおれてしまった青いバラの前に、一人の青年が現れました』
『青年は穏やかな笑みを浮かべて言いました』
『「青いバラなんて、とっても素敵だね。きっと綺麗に咲くに違いない。どうか譲ってくれませんか?」』
≫116 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:28:42
8.
あの後"始末"をつけてから、ライスシャワーを抱いてシャントッセの街を出た。流石にもうあの街にはいられない。目的を果たした以上いる理由もない。
暫く歩いていると丁度洞窟を見つけたので、今夜はここで過ごすことにする。
薪を燃やし、少し離れたところに毛布(どさくさに紛れて宿屋からかっぱらってきた)をかけたライスシャワーを寝かせた。
少し顔色は悪かったが脈は正常だった。怪我もなく発熱もない。あんなことがあった後だから、気が抜けてしまったのかもしれない。
「ん……んん……」
赤々と燃える火と、照らし出されるライスシャワーの寝顔を見つめて数十分間。眠っていたライスシャワーが微かに身動ぎした。
瞼がゆっくりと持ち上がり、ぼんやりとした瞳がコラソンの姿を捉えた。
「……コラソン、さん……?」
「ライス!よかった……!どこか、身体に違和感とかは……」
「ッ、コラソンさん!!」
毛布をはねのけ、ライスシャワーは飛び上がるように跳ね起きた。
「ごめんなさい!ライスのせいでたくさん殴られて……怪我させて……ごめんなさい!!」
コラソンは虚を衝かれ、言葉を失くした。
ライスシャワーが浮かべていたのは、最初に出会ったあの夜のような痛々しい泣き顔だった。
「やっぱりライスはだめな子だ……!コラソンさんのことまで不幸にしちゃうなんて……!ごめんなさい、ごめんなさい……!!」
まただ。彼女は何も悪くないのに、周囲の悪意のせいで押し潰されそうになっている。
コラソンにはそれがどうしても許せなかった。
――だってあんまりじゃねェか、そんなの。
≫117 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:29:16
「……ライス。おれは今、ちっとも不幸なんかじゃねェ」
「え……?で、でも……」
「不幸なもんか。お前をこうして助けることができた。しかもお前は、怪我一つ負ってなくて無事そのものだ。不幸どころか……幸せだよ」
に゛こっと笑いかける。
ライスシャワーは目元にたっぷりの涙を蓄えた瞳をぱちぱちと瞬かせた。その、直後。
「ふぇ、うぅ……うええぇぇぇぇん……!!」
――結局泣かせてしまった。
コラソンはライスシャワーに近づいて膝をつき、戦慄く小さな身体を抱き締めた。
「ありがとう、ライス。助けてくれてありがとう……無事でいてくれてありがとう……」
「ひぐっ、ひっぐ……!コラソン、さん……ライスは、ライスは……ふええぇぇぇん!!」
「うん、うん。怖かったよなぁ。本当にがんばったなぁ……」
背中をぽんぽんと優しく叩いて、ライスシャワーが落ち着くまでそうしていた。
……ライスシャワーが落ち着いたところで、しなければならない話があった。
「ライス……少し聞きたいことがあるんだが、構わないか?」
ライスシャワーは鼻を啜ってこくりと頷く。
「お前、あの時一体どうやって檻から出たんだ?」
≫118 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:29:51
それは、ジルとの戦いで最も不可解な部分だった。
あの後屋敷から出る前にライスシャワーが入れられていた檻を確認したが、扉は鍵がついたままで、檻そのものが壊された形跡も見られなかった。
ならば……ライスシャワーはどうして檻から出ることができたのか。
なんとなく予想はついているが、できるならライスシャワー自身から確認したかった。
ライスシャワーは逡巡し、ややあって口を開いた。
「あ……あのね。ライス、時々……魔法が使えるの」
「魔法?」
コラソンが聞き返すと、ライスはこくりと頷いた。
「いつもよりずっとずっと速く走れるようになって、壁とか、物にぶつからなくなるの。使うととっても疲れちゃうから、たくさんは使えないけど……」
「いつから使えるようになったんだ?」
「……お父さまとお母さまが……いなくなった頃……」
「なあ、ライス。お前、その頃……見たことのない変わった果物を食べなかったか?」
コラソンの言葉に、ライスシャワーは目を丸くした。
「う、うん。どうしてもお腹が空いちゃって……どうして分かったの?」
「……やっぱり、か……」
ライスシャワーはコラソン同様、悪魔の実の能力者だ。
何の実を口にしたかは定かではないが、分かっている能力は現状二つ。"物体のすり抜け"と"高速移動"。おそらく体力消耗のデメリット付き。
思えば、それまで普通に両親と暮らしていたような子供が、いきなり両親を失って約一年もの間一人で生きてこれたのがまず不思議な話だった。
本当に危険な時には無意識の内に能力を使用し、危機を切り抜け、それを魔法だと思い込んできたのだろう。
≫119 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:30:27
「ライス……よく聞いてくれ。お前のその魔法のような力は、魔法とは少し違うんだ」
それからコラソンは、ライスに悪魔の実のことを教えた。
悪魔の実と呼ばれる不思議な果実の存在。一口食べることで能力を得ることができること。そして能力者になったら最後、海に嫌われ、一生泳げなくなってしまうことを。
全てを説明し終えてから、コラソンは告白した。
「そして、実はな……おれもお前と同じ能力者なんだ」
「コラソンさんが……?」
「見てな。……"凪(カーム)"」
呟き、自分の手で自分自身に触れる。
不思議そうに見つめるライスシャワーの前で、コラソンは手を叩いて見せた。確かに手のひらと手のひらが打ち合わされているのに、音が全く聞こえない。奇妙な状況にライスシャワーは目をパチクリさせる。
続いて取り出したるは陶器のティーカップ。ライスシャワーに破片が飛ばないよう十分距離を取ってから、思いっ切り叩き割った。当然、音はしない。
能力を解除し、得意げにしてみせる。
「どうだ?おれの影響で出る音は全て消えるの術だ!」
「す……すごい……!!」
純粋な尊敬の眼差しと、やや遠慮がちながらも拍手を贈られ、コラソンは益々得意げになった。
「……実はわけあって、"口をきけない"フリをする必要があってな。本当は別に緊張しいでもなんでもねェんだ。ごめんな、嘘ついてて」
「ううん。コラソンさんはそうしないといけなかったんだもん。ライス、大丈夫だよ」
「そうか、ありがとう。……さて、ここからが本題だが……」
≫120 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:31:07
そう。問題はこれからライスシャワーをどうするかだ。
悪魔の実の能力者である以上、孤児院や一般家庭に預けるのは危険だ。能力の使い方をきちんと把握できていない以上、いつ能力のことがバレてしまうかも分からない。
その上この能力。まだ詳細は分からないとはいえ、コラソンの予想が正しければ危険なものに化けうる能力だ。悪用されてしまう危険性を考えると、やはり放っておくことはできない。
一番良いのは海軍に預けることだが、現在コラソンはドンキホーテファミリーに潜入中の身。表立って堂々と海軍と接触するのは避けたい。
「……ライス。おれはお前を、最悪の場所に連れて行こうと考えてる」
「…………」
それならばいっそ――手の届く場所に置いておくべきか。
「おれと一緒に来るなら、お前はきっと怖い思いをすることになる。今日の出来事なんか比じゃないくらいに。だが、学ぶことはできる。身の護り方や能力の使い方を……」
本当にどうかしていると自分でも思う。こんなにも優しい女の子をわざわざファミリーに連れて行こうなんて。
だが、この子を一人捨て置いておくことなどできない。何も見なかったことにして忘れることなんてできない。
生前の両親のような善性を持つこの子を、見捨てたくなかった。
≫121 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:31:33
「……どうする?」
「……あの、ね」
ライスシャワーはおずおずとコラソンを見上げた。
「コラソンさんさえ迷惑じゃなければ……ライス、連れてってほしい」
「ライス……いいんだな?さっきも言ったが、怖い目に遭うぞ?」
「でも、コラソンさんが一緒だから」
「…………おれは、おれ自身のことを全然話してないんだぞ。それでも信じられるのか?」
ライスシャワーはまっすぐにコラソンを見つめ返し――こう言った。
「コラソンさんが誰でも……ライスを助けてくれた、とっても優しい人なのは変わらないよ」
コラソンは目を見張った。
泣いてばかりの気弱な少女の内側に確かな"芯"が見えた。
他者を信じる強さが、そこにはあった。
「……分かった。それじゃあ、一緒に行こう」
「……うん」
炎は赤々と燃える。口元を緩め、穏やかに見つめ合う二人を照らしていた。
≫122 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:32:02
――翌日。
スパイダーマイルズへ向かう航路の途中。小さな船の上で、コラソンは改めてライスシャワーと向き合っていた。
「いいか、ライス。昨日も言ったが、おれはわけあって口をきけないフリをしてる。その理由は今はお前にも話せねェ」
「うん。ライス、大丈夫だよ」
「ありがとう。そしてこれから先、おれが本当は口をきけることと、おれが悪魔の実の能力者であることは絶対に誰にも話さないでくれ。……守れるか?」
ライスシャワーは力強く頷いてみせた。
「ライス、約束守れるよ……!」
「よし……頼むぞ」
「うん!……あ、あのね……」
ライスシャワーは俯いて、躊躇いがちにこぼす。
「ライスからも、ひとつだけお願い、いいかな……?」
「ん?なんだ?」
「あの、ね……」
少し迷っていたようだが、やがて意を決したように口を開いた。
≫123 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:32:31
「コラソンさんのこと、"お兄さま"って呼んでもいい?」
あまりにも予想外の一言に、コラソンは丸くした目を瞬かせた。
「そりゃまた、どうしてだ?」
「えっとね……コラソンさんが、"青いバラのお兄さま"みたいだったから……」
「兄貴がいたのか?」
「ち、違うの。えっと、ライスの好きだった絵本のお話なんだけど……」
――【しあわせの青いバラ】
それはかつてライスシャワーの両親が存命だった頃、母親に何度も読み聞かせてもらった思い出の絵本だという。
物語はバラの庭園から始まる。そこでは色とりどりのバラが咲き、訪れる人々に幸せを与えていた。
ところがある日、庭園に誰も見たことのないような真っ青なバラがつぼみをつけた。
周囲のバラや庭園を訪れた人々は気味悪がり、『きっと不幸の花だ』と蔑むようになった。
やがて青いバラ自身も『自分はだめな花だ』と思い込むようになり、少しずつしおれていってしまった。
そこへ現れたのが"お兄さま"だった。
心の優しいその青年は青いバラを引き取り、毎日毎日声をかけて大切に育てた。
その甲斐あって青いバラは元気を取り戻していき、やがて立派な花を咲かせたのだ。
美しく咲いた青いバラは窓辺に飾られ、道行く人々を幸せにした――という話だ。
≫124 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:33:07
「おれがその"お兄さま"だって?」
「う、うん。とっても優しくて、素敵で、本当に絵本のお兄さまみたいって思ったの」
きっとライスシャワーにとって、絵本の中の優しい"お兄さま"は強い憧れの存在だったのだろう。
そんな"お兄さま"とコラソンを重ねているということは、それだけ彼女がコラソンを信頼してくれているという証。
「……だめ、かな……?」
つぶらな瞳が不安げに揺れる。
断る理由はなかった。
「……わかった。それなら今日から、おれはライスの"お兄さま"だ!」
「ほ、ほんとう?いいの?」
「ああ、二言はねえ!」
「……!ありがとう、コラソンさん!」
「おいおい、"お兄さま"じゃなくていいのか?」
「あ……そ、そう、だね……!」
それに、彼女がこうしてささやかな"願い"を口にしてくれたのが嬉しかった。
「――よろしくお願いします、お兄さま!」
きっと、絵本の本当の"お兄さま"からは程遠いかもしれないけれど。
この少女の笑顔を、優しさを、傍で守ってやりたいと――コラソンは願った。
≫125 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:33:40
9.
――北の海、スパイダーマイルズ
「う……嘘だすやん……!」
「コラさんが……コラさんが……!」
「「子供を連れてきた〜〜〜〜ッ!!?」」
実弟コラソンが連れてきた"土産"に、ドンキホーテ海賊団船長であるドフラミンゴは眉を顰めた。
「コラソン……なんだそのガキは?」
問いに答えるように、コラソンは予め用意しておいたらしい一枚の紙を取り出す。
《きにいった》
「…………」
コラソンが連れてきたのはウマムスメ族。その種族についてはよく知っている。
人間を上回る身体能力を持っていて、特に脚の速さが飛び抜けている。身体も丈夫で、人間ならば死んでしまう毒すらも耐えうるという。
確かに戦力になり得る種族ではある。問題は、コラソンが連れてきたウマムスメ族の目があまりにも弱々しい点だ。
コラソンに連れられて一歩部屋に入った瞬間からドフラミンゴに対して怯えきり、先程からずっと縋るようにコラソンの服の端っこを掴んでいる。
相手の強さを理解しているとか、そういうレベルではない。こんなのはただの被食者。一歩でも外に出れば食い千切られて終いだ。
「まさか、そいつをファミリーに入れろってんじゃねェだろうな?」
コラソンは無言で頷いた。
ドフラミンゴはわざとらしく溜息をついて見せた。
あのやたら子供を嫌っていたコラソンが連れてきたというからには興味がないわけではないが、こんな見るからに甘ったれた子供をファミリーに入れるのは正直気が進まない。
≫126 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:34:11
「……ガキ。名前は?」
「っ……!ら、ライスシャワー、です……」
「親はどうした?」
「い、一年くらい前に……海で、嵐に遭って……」
なるほど、親無しで行く宛はないらしい。
コラソンは無言で――そもそも口はきけないが――ドフラミンゴを見つめている。
……やがて根負けしたのはドフラミンゴの方だった。
「分かった、好きにしろ。面倒はお前が見ろよ」
コラソンは頷き、ライスシャワーを伴って踵を返す。
――我ながら身内に甘いな、おれは。
ドフラミンゴは内心そう呟いた。
TO BE
CONTINUED
≫127 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 18:34:33
以上になります。長々と失礼しました
【キャラクター解説とか】
○コラさん
ほぼ今回のメイン
原作でローを連れ出したのがきっかけがDとはいえ同情心が強かったので、ライスを一緒に連れてきた理由は「亡き両親の善性を思い出したから」「可哀想でほっとけなかったから」と私情強めに
ライスの前では煙草控えるイメージがある。吸おうとしてライスを足元に見つけてスッ…と煙草をしまう感じ
○ライス
いくら曇らせてもいい。嘘です
能力を得たタイミングは海難事故後。流れ着いた浜にたまたま悪魔の実が打ち上げられてて空腹に耐えられなくて食べちゃった
お母さま達がまだ溺れてるかもしれない!と近くの村に助けを求めたのが運の尽きだった
お父さまは実はワノ国出身の刀鍛冶とか、短剣は刀を打ち直したものとか、そういう裏設定があるかもしれないしないかもしれない
ちなみに一番書きたかったのはアプリ版参考にしたコラさんを「お兄さま」と呼ぶようになる下り
○ドフィ
これライスのこと弟が連れてきたペットか何かだと思ってる説あるわ
○レード・ジル
モブ海賊の名前が浮かばなかったのでジルドレを名前の元ネタとして使用。どっかで名前とかモチーフ被りとかあったら単に確認不足なので申し訳ない
二度と出てこないので覚えなくてもよい
次章【白い町の少年】(予定)
≫166 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 21:54:54
ライス「お兄さま!"ライスの影響で出る音はみんな消えちゃうの術"して!」
コラソン「よしきた!」
こうなってた世界線があったかもしれない
≫177 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 22:22:01
流れ切りますがビワハヤヒデの戦闘考えてみたss
海軍の船に部下を残し、一人で海賊船に飛び込んできたビワハヤヒデ中佐
周囲をサーベルやマスケット銃で武装した海賊に囲まれる中、眼鏡をクイっと上げて勧告する。
「さて諸君、私は無駄に手荒な真似は好まない。おとなしく投降すれば傷一つつけず連行することを約束しよう」
「「「はあ!?」」」
海賊たちの間に困惑が広がる。今まさに一方的な戦いが始まると思っていたところに、ギャングのごとき上から目線である。
2000万ベリーの賞金首の船長が訝しさと笑いを混ぜながら返す。
「どういう冗談だ? こっちは完全に囲んでる状態でそっちは銃も抜いてねえ、抜こうとしたらぶっころす。投降なんてするわけねえだろうが」
「すでに計算は完了している、勝負は終わっているのさ。それに君たちが気づいてないだけでね」
「ちっ、お高くとまりやがって。海兵ごときが俺の船に乗り込んできてデカい面すんじゃねえよ」
ピタリとビワハヤヒデは動きを止めた。やれ、と船長が号令をかけようとしたがそれより早く狂乱の祭りが始まる。
「がはっ、なんだ」
「うでが、腕が折れた!」
「おれは足が!」
「……く……くび」
海賊たちの四肢がねじ曲がり、骨が折れる音と悲鳴が甲板に響いた。
≫178 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 22:22:12
静かな怒りに体を震わせ、ビワハヤヒデの講義が始まる。
「……一つ、教えてやろう。私は生命帰還という技術を極めていてね、自分の髪を一本単位で操ることができるのさ」
「て、てめえらおちつ――もがっ」
見聞色の覇気や視力に優れたものならば気づいただろう。ビワハヤヒデの長く伸びた毛先が海賊一人につき三本ずつ結びつき、力を加えていることを。
武装色の覇気や警戒心に優れたものならば、三人分の力がかかろうと抵抗できたかもしれない。
もっとも、そのような優秀な海賊がいないと知っていたからこその単騎なのだが。
そして不幸なことに船長は屈強な体躯の持ち主であり、不用心にもおしゃべりをしていた。
"髪"という単語から口に詰め込まれているものに気づいたときにはもう手遅れである。
ビワハヤヒデの言ったように勝負はついていた。船長が口を開いたことに返答をした時に。
「それゆえにこうして、臨戦態勢になったときは髪が浮き上がる。つまり」
「もごご、もがごんが」(やめろ、ちかづくな)
「私の頭は、デカくない!!!」
おびえる男の足を払い、怒りを込めて(やたらと範囲の広い)禁句を言ってしまった口を踏み抜いた。
「……また、やってしまった。今度こそ説得で済ませたかったのに」
甲板で一人呟くビワハヤヒデの髪は、とてもひどい寝癖のようだった。
付け加えると櫛も通らないくせ毛なうえ海風にさらされてしまったので基地に帰るまでこのままである。
おしまい
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 79スレ目
≫16 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 23:27:28
バギーの宴にエースが混じってて
「やめろ、そいつに手を出すんじゃねぇ」
してたら
「そうよん、大変なことになっちゃうんだからね」
とビール飲んでて
(なんか増えた)
となるマルゼンスキー
≫19 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 23:28:23
>>16
めっちゃビビるバギー
気さくに話しかけいつの間にか仲良くなるエース
バブリーな話題が通じるアルビダ
≫22 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 23:34:52
白ひげが死んだ時はマルゼンさんも思う所あったんかね
≫23 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 23:38:24
>>22
「私たちの中であなたが一番優しかったから、一番最初に死ぬと思っていた」的なことを言って涙を一粒こぼしそう。
マルゼンさんも白髭も家族思いだから仲は良かった気がする。
≫25 二次元好きの匿名さん21/10/06(水) 23:42:45
>>22
「貴方は何が欲しいの?」「家族」「…いいわね、それ」
昔々の海賊ルーキー達の会話より抜粋
≫36 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 00:27:40
話の途中だが58スレ目の時に投下したマルゼンライスSSの続きだ!
月明かりが照らす廃墟で、マルゼンスキーとライスは並んで座っていた。ローは込み入った事情があると察して、一足先に寝床に戻っていった。
「とりあえず、あなたからの質問を答える形にしましょうか。……私から話そうとすると支離滅裂になっちゃうだろうし」
気まずそうな顔をしながら足元に置いてある鞄を突っついている。突然現れて親族を名乗ったことは、マルゼンスキー自身も予定をしていなかったように見える。
「じゃあ……えっと……本当にライスのおばあちゃんなの?」
「それは断言できるわ。お母さんの名前とあなたの名前が一致してるし、ライちゃんに瓜二つなの」
マルゼンスキーは鞄から一冊の分厚い本を取り出した。表紙には『Album』と書かれてあった。しばらくページをめくり、探していたページを見つけ、ライスに差し出した。
その写真に写されていたのは、ありきたりな結婚式のだった。小さな教会をバックに新郎新婦が写っている。その二人の顔をライスはよく知っていた。もう二度と見ることができないと思っていた、記憶の中で埋没していくはずだった大好きな顔だった。
「お母さん……お父さん……」
「ほんとそっくりよね……目元とか細かい部分は旦那君譲りよ」
目元が熱くなるのを感じつつ、アルバムのページをめくる。
マルゼンスキーと二人で撮ったもの。自分が育った家に引っ越した時に撮ったであろうもの。
そして、大きくなったお腹をさすっている母の写真があった。
「あの、これって……!」
「あなたがお腹にいたころに撮ったやつね。『女の子だったらライスシャワーって名前にする』って話してたわ」
「だからライスの名前を知ってたの?」
「ええ。……そして、あの子に会ったのはこの写真を撮った時で最後なの」
≫37 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 00:28:13
過去を思い出すように上を見上げる。後悔と悔恨に彩られた記憶は、いつまで経っても色褪せる様子がない。
写真を撮った直後、ライラックと口喧嘩をした。理由は、娘が独り立ちしてからふらふらし始めた母を咎めたことが切っ掛けだった。
いつもの軽い調子で返答をしたが、妊娠中で神経をとがらせているライラックには軽薄に見えてしまい口論に発展。結局は自分が逃げるように家から出て行った。
娘との喧嘩は少なくはなかったが、気性が穏やかだったライラックとはこれが最初で最後のものとなった。
自宅に戻ったあとは娘達から散々に攻められた。キャンペーンガールが産後に亡くなった件もあり、お互いに冷静になったらさっさと仲直りしろと言われたが、かえって意固地になって連絡を取らなくなってしまったのだ。
折しもシンボリルドルフの七武海加入のタイミングでもあった。島の警護の仕事をルドルフ本人に頼まれたこともあり、そちらにかかりきりになってしまった。
そしてあの日、ライラックのビブルカードが焦げ付き始めた。
イルカのタっちゃんを限界ギリギリまで酷使しても、乗り捨てて自分の体を顧みない走りをしても、焦げ付いたビブルカードが小さくなっていくのを止めることはできなかった。
――今でもたまに夢に出る。荒れる海。吹き荒れる雨風。漂う船の残骸と荷物。その中に引っかかっていた、息絶えた娘夫婦の遺体。
ふと気付くと、埋葬まで終わっていた。どうやら、真っ白になった頭でトレセン諸島まで遺体を運んだらしい。娘たちに『まるで人形のようだった』と言われてしまうくらい、死んだように動いていたらしい。
自分が腑抜けている間、海軍に所属しているサクラチヨノオーがいろいろ調べてくれていた。
ライラック夫婦は新居に引っ越しをするために船に乗っていたこと、家財道具もろもろ海に沈んだこと。そして孫にあたる【ライスシャワー】の遺体がまだ見つかっていないことも。
その情報を耳にした後、マルゼンスキーは事故周辺の島々を荒らしに荒らした。町を駆けずり回り、人身売買組織があれば壊滅させる。ウマムスメがいると聞けば文字通り跳んで行った。
そんな生活をしていれば当然体と心はガタついていく。無理を押して続けようとしたが、一人で責任を背負うなとチヨノオーとパワフルレディの二人に泣いて止められた。
≫39 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 00:28:38
マルゼンスキーは懺悔ともとれる話を終えると、大きく息を吐いた。多少はぼかして話そうと思っていたが、一度堰を切った気持ちを押しとどめることはできない。
「えーっと、……なんでライスがドレスローザにいるってわかったの?」
「それは……ほんと偶然だったの。近くの島にいたらドレスローザの放送が始まって、あなたが映っているのを見つけてね」
「あの放送に?」
鳥カゴが消えた後に行われた藤虎によるドレスローザでの会見。映り込んだつもりはなかったのだが、どうやらどこかで映ってしまっていたらしい。
「自分の娘にそっくりな子がいたらついそこに行っちゃうの。ここに来ていろいろ聞いたわ。”ドレスローザの青薔薇”、”ドンキホーテファミリー最高幹部コラソン”、”ヒーロー”のライスシャワーの話をね」
「そ、それは……」
「別にあなたを責める気はないわ。責められるべきは私なのよ」
マルゼンスキーは手を伸ばし、ライスシャワーの頭をゆっくりと撫でる。
「私はね、別にあなたに赦してもらおうなんて微塵も思ってないの。二度と顔を合わせるなって言うならそうするし、いくらだって殴られてもかまわない」
「え…」
「娘を……あなたのお母さんを助けられなかった上に、あなたを見つけてあげることもできなかった。さらに手を汚させることにもなってしまった。あの子はきっと私を恨んでるでしょうね……」
撫でる手は柔らかな感触だが、筋肉が強張って握りしめようとする手のひらを必死に押さえつけていた。
「私に、あなたに背負わせてしまった人生の責任を取らせてちょうだい」
≫40 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 00:29:19
ライスとて海賊をやっていた故、マルゼンスキーの伝説も聞き及んでいる。天衣無縫を体現したような話の数々は、ライスでさえ眉唾なものだと思うものがある。
しかし、今目の前にいる女性は、華々しい活躍をした人物とは思えないほどとても弱弱しく、自分の過去の罪に押しつぶされていた。
なんとなく、今撫でてる手が離れたら、この女性は二度と自分の目の前に現れないということをライスは感じ取っていた。
自然と手はマルゼンスキーの手を包むように動いた。
この人の心を少しでも救ってあげたいと、心の重荷を少しでも取り払ってあげたいと。
包んだ手に頬ずりをする。
「ラ、ライスシャワーちゃん?」
「あのね、ライスの人生の責任はライスが取るしかないの。誰かに背負わせちゃいけないの。それがたとえ……おばあちゃんであっても」
懐かしい、母の手に似た匂いと感触がした。それによって今まで蓋をして思い出さないようにしていた記憶を思い出す。
それは家を引っ越す前のこと。
慣れ親しんだ家を離れるのが寂しくて母に尋ねてみたのだ。なぜ引っ越さなければならないのかと。
一つは父の仕事の都合のためと答えた。でもそれは大きな理由ではないとも言った。
「あと勘違いしてることがあるの」
「な、何をかしら?」
「お母さんはおばあちゃんのこと恨んでなんかいないよ」
「そんなわけ……」
「ないの! だってお母さん言ってたもん。『引っ越す理由は、あなたのおばあちゃんと仲直りをするため』だって!」
「え…え…?」
思いもよらなかった言葉にマルゼンスキーは面を食らった。
≫41 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 00:29:55
「『新しい土地でちゃんと気持ちを切り替えればこっちもごめんなさいって言える』って。それを聞いてライスはお引越しが楽しみになったの。お母さんがよく話してくれた【あなたの素敵なおばあちゃん】に会えるんだって」
「あの子が、そんなことを……?」
マルゼンスキーはふらふらとへたり込んでしまった。
今まで、娘は自分を恨んで死んでいったのだとばかり思っていた。
しかし、孫が言うには関係の修復を望んでいた。
ここに至って逃げいていたのは自分だけだったと気づかされる。思えば、些細なことから始まった口喧嘩も自分から逃げ出していた。痛いところを突かれ、無意識のうちに見ないふりをしていたのだろう。
「嘘よ……嘘よ、そんなの……」
自分は過去に囚われていた結果、娘の意思まで見ることをやめていたのだ。
頭の中がいろいろな感情でぐちゃぐちゃになり、今にも目から溢れそうになる。
「嘘じゃない、嘘じゃないよ」
「あっ……」
ライスはマルゼンスキーの頭を優しく抱きしめて胸に抱えるようにする。
「おばあちゃん、今まで辛かったんだね」
「……」
「ライスはここにいるよ。お母さんもきっと許してくれてるよ」
小さな子供をあやすように語り掛ける。
「……ねぇライスちゃん」
「うん」
「…………今から、私の人生で一番みっともないところを見せるわ」
「うん」
「…………黙っておいてくれる?」
「うん」
「…………う、ううううううううう……!!!」
ライスの胸元で大粒の涙をこぼすマルゼンスキーは、まるで迷子の子供が親を見つけた時のようにしばらくそこから動かなかった。
≫125 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 17:34:49
フクライスカレンで三船長の話する時ってフクが「ルフィさんは凄いんですよ!」って褒めたらドフラ倒してもらった恩があるライスはそのまま「うん。ルフィさん、かっこいいよね。ヒーローみたいだった」って素直に褒めそうなイメージがある
≫126 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 17:39:29
>>125
あまり接点ないし悪い噂ばかりだし、フクキタルはキッドにはビビってそう
ビビり過ぎて何かのキッカケで占いをするときに
フクキタル「ふぎゃあああ!!! 生命線がゼロ、死んでますー!!!」
キッド「テメェ義手の方で手相観てんじゃねぇよ」
こういうベタなやり取りがありそう
≫127 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 17:39:46
>>125
そしてキッドが近くで聞き耳立ててるのを横目で確認してから
「そうだね、ルフィさんってカッコいいよね」
と乗っかりにいくカレンチャン
≫134 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 18:16:33
フク「(ゾロさんの危機をかっこよく救う私……)」ホワンホワンホワンフクフクー
フク「(「へェ、やるじゃねェか。見直したぞ」と褒められる私……!)」ニッコニッコ
≫136 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 18:19:15
>>134
その後に料理配膳中のアクシデントとかでウマ娘馬力でゾロを海に突き落として
引き上げられたゾロに
「ヘェ、やるじゃねえか。見直したぞ」とアイアンクローされるフクキタル
≫145 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 18:33:28
ライス「(ライスをきちんとレディ扱いするローくん……)」
ライス「(「お前、本当にいい女になったな」と褒めてくれるローくん……!)」
ライス「(……)」
ライス「(……あれっ?ちょっと気持ち悪いかも……)」
≫162 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 20:16:15
VSエネルにて
なにかを恐れるように飛び出したフクキタルは思いの外エネル相手に善戦をしていた。
何かを訝しみながらエネルはフクキタルに対し雷撃の弾幕を張り、フクキタルは事前に分かっているかのように僅かな隙間を掻い潜りエネルに接近する。
「(──見えました!)そこ……ッぎゃあ!?」
フクキタルの全霊の一撃、全身の力を込めた蹴りは容易く避けられ、逆にエネルの長棒に殴打され地面に転がる。
「そうかそうか、お前はいささか特殊な心綱を扱うのだな。大方、未来予知といったところか」
バランスを崩したフクキタルは地面に倒れ、エネルの足蹴にされる。
「──だが、未来が見えたとしても捉えられなければ意味がない。6000万ボルト……放電!!」
「ギャッ!!!!?」
「ふ、フクキタルー!!?」
そして、そのまま雷に変じたエネルの足に貫かれ……仲間の絶叫を聞きながらフクキタルは意識を失った。
結構雑だけど大方こんな感じの戦闘だったんじゃないかな?
≫167 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 20:59:15
俺はオグリ(というか、くま)の縄張りでもいいと思うな
オグリがいつも島近辺をウロウロしてるわけでもないからピンチも演出できるし、
逆にオグリが七武海になってトレセン諸島にノータッチというのも考えにくい
≫170 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 21:08:18
>>167
最終局面、ウソップにより意識を失ったはずのバッシュが謎のスイッチを押す。
「て、テメェ……一体何を!?」
「バーバッバッバッバ……これでテメェら全て終わりだァ……金で雇った海賊艦隊、総勢20隻!!トレセン諸島を守る潮の流れも全て伝えてある……これでテメェらは終わりだァ!!」
「な、なにィ!!?」
驚愕する一同、しかし同時にバッシュのアジト全体が大きく揺れる。
ベキベキ……ドガァン!!
轟音と共に天井が破られ、何者かが降り立つ。
「残念だが、君が待っている艦隊は来ないんだ。知らなかったのか?」
「ッ、馬鹿な! なぜ貴様がここに!? 貴様は当分この島には━━」
「みんなから連絡が来たんだ。だから、急いでここまで走ってきたんだ……覚悟は、できているな?」
「ひ、ヒィィィ!!!」(意識を失うバッシュ)
芦毛の髪の毛を揺らしながら振り返るウマ娘、その名前はーー
「オグリキャップさん!」
「ああ、待たせたな。みんな!」
王下七武海、“芦毛の怪物”オグリキャップ
どどん!
こんなかな?
≫178 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 21:33:14
「Oh! 勝ちたいレースも全部勝ちましたし、思う存分パクパクしても大丈夫デース!」
「What's!? 引退レースデスカ!? 多分ダイジョーブデース!!」
タイキ敗北、有終の美を飾れず……
「Oh……やっぱりだらけすぎるのは良くなかったデース……なので、防衛隊に入隊しまショウ! これで怠けた身体を鍛えなおしマース!!」
で、隊長にまで上り詰めたタイキ概念ってOKですか?
≫188 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 21:53:28
バクバクバクバクバクバクバク――――
タマ「ウソやろ……オグリと大食いで競り合うヤツがおるなんて……」
ゾロ「ルフィの胃袋より底なしなんて正気か……?」
ルフィ「お、おがわり! 肉、サンジ肉くれ!」
オグリ「タイキ、もっとだ! 身体の底から力が湧いてくる……」
サンジ「チョッパー、食糧庫からありったけ持って来い!
クソ、レディーを腹八分目で帰すなんて、コックの名折れになるぞ」
タイキ「Оh、オグリとイーブンのストマック、アンビリバボー!
Оkey、諸島のバーベキューはエンドレスな宴デース!」
オグリ「初めてだ……。大食い勝負で負けたくないなんて、もっともっと先へ行きたい!」
ルフィ「う、めぇぇぇ!!! こんなに肉喰ったの、はじめてだ!!!」
キョーシ「勝てるわけがなかったんだ、こんな化け物共を前に……」
バッシュ「こんな大喰らい共、天竜人でも養えるわけがねぇ。売らなくてよかった……」
カン カン カン カン ! ! !
フクキタル「な、なんとぉ! 両者、300皿と串200本で同点です!」
ルフィ「ぐ、喰ったぁ……。おめぇ、強ぇな……」
オグリ「君もだ……。本当に、海は広いんだな……」
こんな感じで両者引き分けかな。
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 80スレ目
≫7 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 22:24:56
優雅に紅茶とお菓子でティータイムなロビンとライス
ロビン「そうね。知りたい情報を聞き出すときはピーーをピーーすることもあると聞いたわ。耐えられるかしら?私は遠慮したいところだけれど。」
ライス「わぁ。すごいロビンさん、もの知りさんだね…!でもライス、ローくんの駄目なら耐えてみせるよ…!」
ロビン「ふふっ。頼もしいわね。」
女子会ってよくわからないけどこんな感じ?
≫60 二次元好きの匿名さん21/10/07(木) 23:37:52
朝昼は鍬を手にしてニンジン畑を耕し、夕方の僅かな時間をレースの練習に当てるフジマサマーチ。
ほとんどの住民が本島へと移ったカサマツ島で彼女が過ごす理由は、
七武海となってトレセン諸島を守る、かつてのライバルとの約束だった。
「お前が島を出るなら、私は一日でも永く走り続けるよ。
お前が海に出なくても済むくらい平和になったら、故郷に戻ってこい。
その時までずっと、カサマツ島は私が守ってやる」
だが、不幸にもカサマツ島はキョーシ達が目を付けた、シャボンディ諸島から本島への中継地点だった。
孤軍奮闘するマーチだが、キョーシ達には敵わず、カサマツ島は奴隷停泊の拠点とされてしまう。
拘束され為すすべもないまま大型奴隷船が近づく中、
スパークする閃光と共に放たれた一射が奴隷船を大破させる。
怪物オグリキャップと麦わらの一味によって、バッシュ達は壊滅する。
全てが解決した宴の時、マーチはオグリへとやるせなく呟く。
「大口を叩いても、この有様だ」
「マーチのニンジンは美味しいぞ」
何の屈託もなくニンジンを頬張るオグリを見ていると、
グチャグチャの感情を笑い飛ばしたくなる一方で、
ああ、彼女はもう私の届かない場所にいるんだな、と察してしまう。
それでもかつて肩を並べていた時の矜持を失わないために、
彼女との誓いを守り、一日でも永くカサマツ島に立ち続けるマーチはいいと思います。