スレ内に投稿されたSSまとめ(81~90スレ目)
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麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 81スレ目
≫54 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 09:38:46
たいした酒じゃねぇなといいつつ、マルゼンがいなくなったとたん飲み干してそう
≫56 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 10:08:24
>>54
個人的にはそう言いながらもマルゼンさんの前でしっかり飲み干して欲しいかなぁ。
マルゼン「そう言いながらも、いつも全部飲んでくれるじゃない。
ニューゲートくんのそういうとこ、お姉さん好きよ?」
白ひげ「よせやい…あんたにそんな事言われても、嬉しくもなんともねぇぜ」
マルゼン「あら、つれないわね?」
白ひげ「そんな事言うくれぇなら、もっと良い酒持ってこいってんだ」
マルゼン「療治の水にはこれくらいがちょうどいいわよ。
そうでなくてもニューゲートくんは飲み過ぎなんだから」
白ひげ「グラララ…おれは飲みてぇもん飲んでるだけだ。
あんただって、いい加減隠居しろって言われて素直にはしねぇだろ」
マルゼン「フフ…まぁね~」
そんな軽口叩きながら笑い合う関係だと好み。
≫62 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 11:33:54
マルゼンスキーさん家族が海軍入ったときに直接お話してそう。
≫67 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 12:01:57
>>62
十数年前。
センゴクちゃん海軍の第○支部に入ったサクラチヨノオーちゃん私の娘だから。
贔屓といびりもしちゃやーよ。
数年前
センゴクちゃんこの間本部にはいったチケゾーちゃん。
あっ本名はウイニングチケットちゃんね。
私の孫娘だからよろしくね。
ゼファーちゃんには挨拶すませたから。
≫63 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 11:48:58
プロレス……つまりエルはカイドウの……
≫64 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 11:54:16
>>63
バギーの色々思考も目的もバラバラなみせかけサブミッションには
かなわないふりするけど、カイドウに組み伏せられたら、冷たい目をして
「死にたがりなレスラーのパワーではエルの魂は消せないデース!」
と体勢入れ替え極め返すエル
≫65 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 11:56:46
「ケーッ、エルの渾身の一撃が跳ね返されマシタ」
「娘であるお前の空中殺法なら、俺から3カウント取ってくれると期待していた」
いやプロレス的ブックっぽさが凄いな
≫68 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 12:06:46
ライス「(ローくんとおでかけするライス……)」
ライス「(道端で猫さんを見つけたりして、ローくんは興味なさそうなふりをしてチラチラ見てるの……)」
ライス「(途中でベポさん達と合流して、みんなでおいしいご飯を食べるライス……)」
ライス「(…………えへへ)」
≫71 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 12:27:56
フクキタル「今日の吉報は北北東!いきますよー!」
言った先で白髭海賊団にはちあわせるフクキタル
白髭「麦わらんとこの鉄砲玉か、なんか言い残すことはあるか?」
フク「ほんぎゃああああ!!!いつのまにこんなところにぃ!?」
白髭「うちの・・・アレの誘いことわったんだってな?それがどういうことかわかってんだよな?」
フク「な・・・なんのことでしょうか?あれ?あれ?あれれれ・・・・これもしかして私の行動、
麦わら一味の未来にかかわりません?」
白髭「・・・・」
≫72 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 12:28:05
フク「シラオキ様シラオキ様、私に力を・・・?えーっと、今日は、卵焼きにはいった殻を食べてしまう?」
フク「ぎゃぼぉ・・・お告げが役にたちません・・・どどどどうすれば?」
白髭「・・・おい、酒はねぇのか?」
フク「さ、酒ですか?それならお神酒が少々・・・」
白髭「出せ」
フク「はいいいいいいい!!!」
白髭「すくねぇな・・・どれ・・・・・・」
フク「(ルフィ船長申し訳ありませんマチカネフクキタルこれにて退場の模様・・・)」
白髭「・・・今までに飲んだことのない酒だな、あるだけおいてけ」
その後なぜか無事に帰されたフクキタルだが、ルフィ以外の面々にめちゃくちゃ怒られた。
≫173 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 18:00:01
ライスがハートの海賊団入りしたら丁度ミンク族のベポがいるし、
ベポ「ライスって可愛いよね。おれ、ミンク族だからかなぁ。なんか親近感感じるんだよね」
シャチ・ペンギン「「いや、お前はクマだろ」」
ベポ「ごめんなさい…」
シャチ・ペンギン「「打たれ弱っ!!」」
みたいなやり取りがあるのかもしれない
≫186 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 18:43:34
ライス「ベビーちゃん。よかったら、一緒にお買い物に行かない?新しいお洋服が見たくて…」
ベビー5「えっ…いいわよ♡(私…必要とされてる…!)」
ベビー5「それで、ライスはどの服が欲しいの?好きなの買ってあげるわ」
ライス「えっ?ら、ライス、自分のお洋服は自分で買うよ…?っていうかベビーちゃん、この前また借金増えたって…」
ベビー5「ええ。また借りてくるわ」
ライス「……!!あ、あの、ベビーちゃん!きょ、今日はライスがベビーちゃんにランチご馳走してあげたいな……!い、いいかな?」
ベビー5「えっ、でも…」
ライス「ライス、どうしてもベビーちゃんにご馳走したいの…!お願い!」
ベビー5「そ、それなら…♡(私…必要とされてる!)」
ライス「ほっ……」
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 82スレ目
≫28 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 20:08:48
コラソン「いいか、ライス。今から面白い話を聞かせてやろう」
ライス「面白いおはなし?」
コラソン「ライスのようなウマムスメ族はレースをするそうだが……大切なのはスパッとスパートをかけること、だそうだ」
ライス「……?う、うん。それで?」
コラソン「いや、だからな。"スパッと"、"スパート"を……」
ライス「……?」
コラソン「(妙だな……ルドルフ中将の面白いダジャレの中でも群を抜いて面白いのを選んだつもりだったが……)」
コラソン「(この手の言葉遊びはライスにはまだ難しかったか……?)」
※数年後、ローに全く同じダジャレを披露し「つまんねェよ!」と一蹴された
≫41 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 20:43:15
分からない…おれは雰囲気でこのスレを楽しんでいる……
例の事件後にドレスローザに訪れたルドルフが「君がトラファルガー・ローだね。話は聞いている。政府から見捨てられた君が皇帝を肯定するのは難しいと思うが…」とか言ったせいで「(コラさんが時々言ってた全く面白くねェギャグの出処はこいつか――!!)」「(お兄さまの言ってたダジャレってまさか……)」となるローライス概念くらいしかお出しできない……
≫58 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 21:51:30
流れを切りますが、新しいマンハッタンカフェのSSを書いたので投下します
マンハッタンカフェとブルックの初遭遇妄想
ルフィが海に出るより5年前、霧の海域を永い間彷徨い続けたブルックは、崩れた壁を乗り越え木々の間を進んでいた。
「いったいなんなんでしょうねぇこの島は」
海の中に突如現れた島、閉ざされた海門。
恐ろしくもあり、久方ぶりの大地は懐かしくもあった。
するとカチャリっと森には不似合いな音がし、反射的にそちらに目をやる。
テーブルにポット、そして椅子。それに腰掛ける、何者か。
闇に紛れるような黒、全身を黒い衣装で着飾ったウマ娘の女性がそこにいた。
女性、ウマ娘、人!!
「あ、あ、あ、、、すいません、パンツ見せて貰ってもよろしいですか?」
「えっ……お断り、します」
当然接近に気づいていたマンハッタンカフェだったが、予想だにしていない挨拶に戸惑いを隠せなかった。
「ヨホホホホ、それにしても驚きです! 再び人に逢えるなんて!!!」
「見ればわかりますが、苦労してそうですね、コーヒーいかがですか?」
「砂糖なしのミルク多めでお願いします! 骨に良いので!!」
カフェに勧められるまま椅子に座るブルック。
"最初から数人余分に用意されていた"カップから一つ取り、コーヒーが注がれた。
「なるほど、ルンバー海賊団の全滅にヨミヨミ。興味深い話でした」
「お楽しみいただけてなによりです。ところでお嬢さんはどうしてここに?」
「この船に侵入者がやってきましたので、生け捕りに来ました」
「船? この島って船なんですか!?」
「あなたは知らないでしょうね。スリラーバークといって西の海で造られた世界最大の船ですよ。まあ、島でもいいです」
「ほ~う、なんとも凄まじいものですね。こんな大きなもので航海してるとは……」
≫59 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 21:51:42
「………」
「…………侵入者って、もしかして私のことですか?」
「……こと、でしょうね。流し樽開けたりしましたか?」
「開けましたよ!」
椅子が後方に傾き、飛び跳ねたブルックはステッキに両手をかける。
肉がそぎ落とされた身体は自覚しているよりも素早かった。
そして眼前、緩やかに立ち上がったウマ娘は右手で奇怪な装飾の刀を下に向けながらもう一方の手でスカートをつまみ名乗る。
「マンハッタンカフェ、ここでバリスタをしています」
ちらりとやや上目遣いに見られたのを受け、ブルックは背筋を伸ばしステッキを掲げた。
騎士団時代の経験が千載一遇の好機が過ぎ去ったのを伝えてくる。
「ルンバ―海賊団、船長代理ブルックでございます」
敗北が音の速さで近づくのを感じる。"怪物"ほどではないだろうがウマ娘は速く、重く、強い。
奇襲を得意とする自分の剣技では真っ向勝負は不利。
だが、それでもブルックは。
(不覚、ですが私は)
テーブルの横に歩き、間合いを取るカフェ。
ブルックは再びステッキに両手をやるが、刃の仕込みは当然バレているだろう。
闘いに移行しようとする脳裏に、先ほどの喋り倒す自分の会話に耳を傾ける女性の姿が浮かぶ。
(歓待してくれた淑女を、二度と得られないと思っていた時間を与えてくれた者を)
カフェが刀を脇に構え、前足に体を乗せる。
(作法に応じず斬り捨てるなど、出来るものか! 正対必敗。ですが勝つ!!)
「行きます」
「いいえ行くのは私です!」
カフェが地を蹴った瞬間、予備動作短く突進し、カフェの刃が振りぬかれるより早くその腕目掛けブルックが抜いた。
≫60 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 21:51:56
「鼻歌三丁―――"矢筈斬り"! これにておしまい!!」
停止し、刃を収めるブルック。そして利き腕を切り裂かれた淑女を介抱するため後ろを振り向こうとし
それより早く、脊髄を蹴り飛ばされた。
「惜しかったですね」
その手には柄飾りの装飾が真っ二つ斬られた刀
「刀!? 確かに手ごたえがあったのに!!?」
驚愕するブルックの顔面に蹴りを入れるカフェ、衝撃で前歯がぐらつく。
さらには存在しない脳が揺れ、意識が薄れる。
闘いにおいて遊ばないカフェは生かして帰す相手に手の内をさらすつもりは全くなかった。
ただの海賊ならまだしも歴戦の剣士。確かに"肉体"を切り裂いていたことに気づけば、次は負けるかもしれないのだ。
三度、蹴りを入れ動かなくなったブルックを運ぶため足を掴む。
「……ア、アフロ……は、かんべん」
「………なるほど」
カフェは思い直し、腕を握るとうつぶせにして引きづっていく。服が土に汚れていくが、当人の意思を尊重した。
ギリギリで刃を受け止めたゾンビ刀が、身をよじって何かを伝えようとしてる姿に次は口をつけてもらおうかと考える。
なんにせよ今日の仕事は終わりだ。元々休暇のために来ているのだから、彼のことは自堕落なここの主に任せようと決めた。
この後、ブルックが大立ち回りの末に侍ゾンビ・リューマに命乞いし逃げ出すことになるが、
その様をマンハッタンカフェは遠くから眺めていた。
本部に帰る途中でルンバー海賊団の名を忘れないように心の中で繰り返しながら。
≫61 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 21:52:08
補足
この戦いでのブルックの敗因ですが
1.骨の体になれていなかったこととブランク
2.リューマ敗戦後の修行前であるということ
3.ウマ娘を"怪物"がら割り引いて推測した見誤り
以上の三点としました。
剣だけに限れば六式やウマ娘武術と並行して鍛錬してるカフェの剣と
王国仕込みの純粋な剣ならブルックのほうが練度が上ですし
長期戦志向のカフェとなら一撃で決めようとしなくても即座に負けはしなかったでしょう。
カフェ側視点ではゾンビ刀の試しに行ったらいきなり船長格と遭遇したというアクシデント。
冷静に戦の流れを引き寄せていけば、年長者であるブルック有利だったと想定しています。
つまりブルックの"掛かり"です。
以上、3300万ベリーの賞金首とマンハッタンカフェ大尉の戦いでした。
≫64 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 22:36:54
良い感じに妄想が滾ったので、グラス頂上戦争SSをまた投下していく
ついに、ルフィさんがエースさんの救出に成功する
当初の目的が達成されたことで、もはやこのマリンフォードに用はない
撤退する白ひげ海賊団と傘下の海賊達
だが、それが容易に出来るほど海軍本部は甘くない
だからこそ――――
「おめぇらとおれはここで分かれる。全員必ず生きて新世界に帰還しろ!」
父は自らが殿を務め、ここで命を使い切ると決めたのだ
「お父さん…!!」
「親父ィ!!!」
戦場に散らばる仲間達からの悲痛な声
ここにいる誰もが、そんなことは望んでいない
父と一緒に帰ることを望んでいる
しかし、思いのほか冷静な私の頭は父の言うことを肯定している
海軍から逃げ切るにはそれが最善だ
父は元より病に侵され、この一連の戦闘で相当なダメージを負っている
ここを抜け出しても長くは長くはもたないだろう
父が残り海軍を足止めすれば多くの仲間が逃げ切れる
命の使いどころとしてはこれ以上ない場面だ
ああ、自分の思考に反吐が出る
理屈では理解できても、それに納得できるかは別の話だ
いつの間にか、足は父の元を目指していた
浅薄な行動だが、自分の中でケリをつけたかったのかもしれない
≫65 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 22:37:31
群がる海兵を吹き飛ばし、戦闘の渦中の父に向かい合った
同じ考えなのか、エースさんも現れ周囲に炎の壁を作った
炎上網――――
しばしの間、ここは三人だけの空間になる
やはり父は満身創痍で、呼吸も乱れてきている
終わりの時が近づいているのを感じながら、私たちは無言で言葉を待つ
父はこちらを向き、ただ一つ問うた
「…おれが親父で…良かったか…?」
果たして今の言葉にどれだけの思いが込められていたか、察するに余りあるが
すでに答えは決まっている
「「勿論だ(です)…!!」」
答えを聞いた父は、嬉しそうな顔でいつもの様に笑った
「…いきましょう、エースさん」
「ああ…わかってるさ姐さん」
それを見届けた私達は踵を返して走り出す
これ以上の問答は必要ない
今はただ…父の覚悟を胸に、ただ生還するのみ
≫67 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 23:17:46
個人的にだが、エースが船を降りてティーチの追跡に乗り出した際、グラスとエースは決闘をするイメージが有る。
「あなたの船長は白ひげ……船長の言葉を無視するのですか!?」
「だからといっておれはティーチを許せねぇ……そこをどけ、姐さん──いや、グラスワンダー!!」
で、決闘開始。三日三晩に渡る激戦の末エースの勝利。
「──負けちゃい、ましたね」
「ああ、おれの勝ちだ。文句は言わせねぞ」
「……敗者が今更なにを言いますか。ですが、もしティーチにあったらこう言ってください」
「なんだ」
「──腹を切って詫びなさいって」
「ああ、わかった。じゃあな、行ってくる」
エース出立。白ひげ海賊団でも指折りの実力者である己を破ったエースであればティーチも倒せるとグラスは内心そんなことを思っていた。
が、エースは黒ひげに敗北。公開処刑が決定。
なんとか救出できたものの、結局エースは死んでしまう。
「ゼハハハハ!! なさけねぇなァ、グラス隊長! テメェがもっと強ければエースも……オヤジも死ななかったかもしれねぇのによォ!!」
「……なにが、不退転……本当に惨めだったのは、私じゃないですか……!?」
って落とし前戦争で黒ひげに罵られて放り捨てられて欲しい。
──まるで、お前ごときは殺す必要もないと告げるように。
≫72 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 23:46:13
深いこと考えず100%ネタとして見て欲しい小話
海賊時代のルナちゃんの一幕・対決編
ルドルフ「ルーナルナルナルナ!約束通り一人で来てやったぞ!弱い癖に一騎討ちをご所望とは血迷ったか?伏兵もいないようだが、お前のような海兵一人でこの私を倒せるとでも?」
海兵「何も暴力に訴えることだけが道ではない。それをライオン女に教えてやろうと思ってな」テーブルと椅子を用意する
ルドルフ「? 座ればいいのか?」
海兵「ああ。ルールは簡単だ!これから即効性の強力な睡眠薬の入った料理をお前に出してやる。食べるか食べないかはお前次第だが、ここから己の脚で歩いて帰れたらならお前の勝ち。もしも食べてお前が眠ればその場で逮捕だ。単純だろう?」
ルドルフ「何をするかと思えば……そんなもの、食べずにこのまま立ち去れば私の勝ちなんだろう?賭けにもならんぞ」
海兵「ふっ、これを見てもその余裕が続くかな?」テーブルの上に乗った皿の蓋を取る
ルドルフ「なっ、そっそれは……!」
海兵「ふっふっふ……食材選びから拘り抜き、海軍の料理長から直々に指導してもらったこの俺自らが作った“にんじんハンバーグ”だ!」
ルドルフ「この薫りは……最高級ランクの肉に、トレセンでも希少な極上にんじんだと!?」
海兵「くくく……更にソースは貴様好みの味付けに仕上がっている。長い船旅で新鮮な肉やにんじんに飢えている腹には、それはもう染み渡るだろうなぁ!」
ルドルフ「バカな……お前の安い給料でどうやって……!」
海兵「試作品含めなかなか痛い出費ではあったが、貴様を捕まえるためならこの程度なんのことはない!……俺はしばらくもやし生活になるが」
ルドルフ「なるほど、お前バカなんだな?」
≫73 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 23:47:00
海兵「何とでも言え。そして先ほど言った通り、この“にんじんハンバーグ”には睡眠薬が入っている……もし貴様が眠ればその場で逮捕だ。まあ食べずに立ち去るという手段もあるが、無理だよなあ」
ルドルフ「くっ……卑劣な……!」
海兵「ウマ娘は薬物に耐性がある。故に、この睡眠薬にも耐えられる『かもしれない』。特にお前のように、強靭な肉体と強大な覇気を持つ者ならば尚更……皮肉だな、ルナ。お前はお前の能力の高さ故に、この勝負に乗らざるを得ない」
ルドルフ「うぐぐぐぐぐぐ……フォークとナイフを寄越せ!」
海兵「はーはっはっはっはっは!存分に味わうといい!敗北の味をなあ!!」
ルドルフ「くぅ、この肉汁がっ。あの、アレ、わー、って!あと肉がこう、ほわっとして、あー!にんじんが、その、実に絶妙な、そんな感じ!」
海兵「凄く残念」
~数分後~
ルドルフ「──ご馳走様でした」
海兵「ふっ、最後の晩餐を終えた気分はどうだ?」
ルドルフ「まだ昼だが……いや、本当に美味しかったぞ海兵。立場が違えば引き抜きたいほどに」ウトウト
海兵「それは良かった。……薬が効いてきたようだな。ルナ、今度こそお前との追いかけっこは終わりだ」
ルドルフ「──この私を無礼るなよ?」
海兵「なっ!?」
≫74 二次元好きの匿名さん21/10/08(金) 23:47:38
ルドルフ「既に睡眠薬は体内で分解した……私の勝ちだな」
海兵「バカ、な……」
~ルドルフの船にて~
手下A「船長ってば帰ってきて早々に寝るって言って部屋に籠っちゃったよ」
手下B「疲れてるのかねー」
ルドルフ「むにゃむにゃ……にんじんハンバーグ……」
~海軍本部にて~
海兵「おのれルナ~次こそは~」
同僚A「あいつどうしたん?」
同僚B「金欠で頭がおかしくなったんじゃね?」
終われ
≫76 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 00:29:11
頂上戦争SS投下します。対決カードはルフィVSオグリ。タマVSエル&○○○。
オグリキャップが革命軍だと、革命軍の詳細が解らずにSSがとん挫しそうだったので、
このSSではオグリの詳細は以下の通りになっています。
- 五年前に破竹の勢いでレースに勝ち続けたウマ娘。
かつての人攫い事件(姉キタル死亡の一件)によって、
カサマツ島などの地方島からは住民が引っ越し、今は畑になっている。
- フジマサマーチとは地方レースで鎬を削った仲であり、
その腕前を耳にした“バーソロミュー・くま”のスカウトによって、
オグリが故郷を離れると聞いた時は、マーチは(一方的な)大喧嘩になったが、
“オグリが戻るまでカサマツ島を守る”と約束をしている。
- くまが革命軍ではあるとは知らず、傍からはくまの傘下として扱われる。
口数の少ない二人の間にタマモクロスが入り、七武海の仕事を代行しており、
その代わりに七武海代行の肩書を利用し、トレセン諸島の縄張り化を宣言している。
- 海賊団はオグリキャップ、タマモクロスの他、およそ百人の船員がいる。
- 島を離れる間、サイレンススズカと他ウマ娘の誘拐未遂事件が発生するも、
麦わらの一味と自警団によって人攫いを撃退し、奴隷輸送用の本船をオグリが撃破。
ルフィとは宴での大食い勝負の後、互いの夢を語り合うほどに打ち解けた。
≫78 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 00:31:33
凍てついた大海は戦場となり、数多の海賊と海兵が白刃をぶつけ合う。
砲撃音と悲鳴が木霊し、それらを消し去る程の雄々しい怒号が響き渡る。
高々と首級を掲げる処刑台の下へと駆けるルフィの前に立ちはだかったのは、
静かなる瞳でかつての友人を見据える葦毛の怪物、オグリキャップだった。
「オグリ、退けぇ! おれは、エースを助けるんだ!」
「君が、ドラゴンの息子……。それに、あのエースの……」
「誰が親でも関係ねぇ! おれは、エースの弟だぁ!」
トレセン諸島で共闘し、人攫いを倒した後の宴で催された大食い対決。
両者引き分けで終わり、二人は腹をパンパンにして笑い合い、互いの健闘を称えた。
牧歌的な思い出は戦場には過ぎらない。片や七武海、片や海賊。戦場はマリンフォード。
互いの立場や思いが貫き合った今、二人の衝突は必然だった。
「オグリ、麦わら相手じゃあウチではどうにもならへん!」
「いいよ、タマ。――――私が、ルフィを倒す」
無論、タマモクロスにも打撃の利かない肉体を捉える術はあった。
だが、白ひげ海賊団とインペルダウンの脱獄囚の連合軍は無視できる勢力ではない。
何より、オグリキャップから響き伝わる確かな鼓動。本気のオグリに横槍を入れられない。
「ギア、セカンド!」 「逃げられると思ったか」
ゴムの肉体全てを脈動させるギアセカンドによってルフィは加速するも、
氷陸を蹴ったオグリは瞬く間にルフィへ追い付き、その蹴り足を振るう。
「“豪脚・天馬鉄杭(ベガサス・ステークス)”!」
「“ゴムゴムのJET鞭(ウィップ)”!」
≫79 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 00:31:54
空中の回し飛び蹴り同士がぶつかり合い、余波は激震となって大気を唸らせる。
後方で様子見に徹していたバギーは、二人の激突に顎を落とさん勢いで驚愕する。
「な、なんじゃありゃあ!? アイツ、七武海といっても代行だろ!?」
「キャプテン・バギー! あの威力、オグリは並のウマ娘じゃありませーん!」
「お前と言えど“並のハナじゃねぇ”とは許さんぞ!」
バギーの傍にいるエルコンドルパサーもまた、同種であるが故の驚きを隠せない。
地に足を付けた二人の拳掌が飛び交い、低く身を屈めたオグリはルフィの拳を避けながら滑り込み、
氷陸を掴んだ両掌を起点に双脚を跳ね上げ、ルフィの顎目掛けて逆立ち蹴りを放つ。
「“豪脚・蛇喰噛舞(ジャパンカップ)”!」
天をも貫く蹴り足がルフィの胸部を打ち、上空へと吹っ飛ばされる。
周囲からどよめきが響くが、オグリは命中したはずの蹴りの感触に違和感を覚えていた。
「末恐ろしいヤツだガネ。あの一瞬、蹴撃を殺す為に空中へ逃げたガネ!」
「キャプテン・バギー、このまま黙って見てるつもりですか!?」
策を読んだギャルディーノの周囲では、不動のままのバギーへと一人の海賊が声を上げた。
バギーは両腕を組んだまま海賊達を睥睨すると、不敵な笑みを浮かべた。
「好きに潰し合わせろ。残った首は、このキャプテン・バギーが頂く!」
「なんて悪い人だ! 混戦を見越して漁夫の利を狙うだなんて!」
「これが“伝説を生きる男”の戦略眼か! この場で最もクールなのは、」
「あぎゃあああああああ!!!」
口々にバギーを賛美する海賊達の声は、飛び込んできた砲弾によって搔き消された。
エルコンドルパサーでも見切れなかった砲弾の速度は、火薬では有り得ない推進力だった。
射手はタマモクロス。倒れた大筒隊から奪った大砲を並べ、バギー一味に狙いを定める。
≫80 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 00:32:28
「あほんだら! ポッと出の脱獄囚共に、オグリをヤらせるわけないやろが!」
「キャプテン! あのウマ娘、エルがサクッとやっつけてきまーす!」
「行って来い! ド派手にかまして、新生バギー海賊団の初陣を見せやがれ!」
一人前の号令を放ったバギーを背に、エルコンドルパサーが宙を舞った。
まるで見えない足場でもあるかのように、ジグザグに宙を蹴る不規則な移動は、
超速の砲撃であっても狙いを定められず、その間に脱獄囚達は三々五々に散っていく。
「ええでぇ。どの道、遠くからチマチマ狙うのはウチの趣味やないんや!」
「“ターフを舞う怪鳥”、エルコンドルパサー! 行きまーす!」
滾る矮躯に火花が散る。“ビリビリの実”による全身放電が宙を駆けるエルを迎え撃つ。
地に降りた二人が衝突する時、中空で身を捩り続けたルフィが蹴り足を延ばし、
彼を追って宙へと舞い跳んだオグリキャップへ、全身に溜めた捩力を解放する。
宙に掲げる蹴り足が膨れ上がり、巨人と見紛う豪脚は真下のオグリへ振り下ろされた。
「ゴムゴムのぉぉぉ―――――」
「“弧閃・大振鎌(オールカマ―)”!!!」
「“巨人の斧(ギガントアックス)”!!!」
鼓動が響く。全身に漲る活力がオグリキャップの骨肉を滾らせる。
諸島で無敗だったわけではない。背中を見たくないライバルも存在した。
だが、あの宴での大喰いの競り合い、何よりも食後の団欒では清々しい瞳の中に、
大きな野心を煌めかせた少年は、七武海代行の己に臆することもなく、大きな夢を語ったのだ。
――――おれは、海賊王になる男だ。
――――だから、次に海で出会った時は、
――――おれ達は敵同士になるよな。ししし、負けねぇぞ!
≫81 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 00:33:11
「私の夢は、過ごした故郷を平和にすることだ。
本島に住むみんながカサマツ島に戻って、マーチだけじゃなくて、
みんなが安心して暮らせるようにするんだ……」
鎌と称したオグリの右腕が鋭曲を描いて振るわれ、斧と名乗った踵落としと鎬を削り合う。
拮抗する一撃同士。いや、宙で再び、オグリキャップが蹴り跳ねた。再加速が身のバネを生み出す。
「あれは、エルの“二段跳び”!?」
「やるやないか、オグリ。さあ、余所見してたらいてまうで!」
エルは驚愕した。海は広しと言えども、空中を蹴る技術を持つ者を自身の他に知らない。
密かに隠し持った技だったか。いや、エルコンドルパサーの予感が脳裏を過ぎる。
先程見せた“二段跳び”を、たった一度見ただけで、オグリキャップは真似たのか。
「天才なんや。うちは神なんて信じちゃあおらんがな、
……オグリを見たら、ちょっとは信じてしまうんや!」
タマモクロスの手刀がエルの首筋を掠め、その瞬間に強烈な電撃が全身を襲う。
砲撃によって舞い上がる氷片が溶けて海水となり、エルの身に付着している。
「このまま痺れて監獄に逆戻りや! 束の間のシャバは楽しめたんかぁ!?」
「キャプテンが空の下に連れ出してくれた! 絶対絶対、エルは戻りませーん!!!」
「“燦駆龍(サンクルー)”!!!」 「瞬重・天皇掌!!!」
エルコンドルパサーの胴回し蹴りとタマモクロスの諸手突きが衝突する。
タマモクロスが発光する。諸手突きに電撃を上乗せし、動きを留めての一撃を叩き込む。
タマモクロスの必勝策。――――だが、エルコンドルパサーの勢いは止まらない。
「なんでや!? 海水に濡れとるんやで、気合で耐えられる出力やない――――」
≫82 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 00:33:42
「どわっははは!!! これは戦争だぜ、一対一で済むと思うなぁ!!!」
ジャラリ、と金属音が響いた。タマモクロスの足元に鉄球付きの鎖枷が嵌められている。
無論、その程度の重りで動きが鈍るほど柔な膂力ではない。だが、
「感電防止のアース! お前の電気は鎖を伝って、全部氷に流れ込むのさぁ!」
「このちんどん屋、身体をバラバラにして、うちの足元に潜んどったのか!?」
「キャプテンが作ってくれたチャンス、エルは絶対ムダにしませぇーん!!!」
タマモクロスの足元に転がるバギーの首が、赤鼻を突き出して高笑いを響かせる。
逃げ惑う脱獄囚に混じり、空中を舞うエルに気を取られた隙を狙っての奇襲だった。
虚を突かれたタマモクロスの矮躯に振り落とされる、エルの胴回り蹴りの二回転目。
「「“必殺・バラバラトリックアーツ”!!!」」
タマモクロスの矮躯が吹っ飛び、一列に並べた大砲群へと激突する。
その瞬間、烏合の衆と化していた脱獄囚達は両目を輝かせ、全員が進路を一つにする。
「キャプテン・バギーとエルの姐さんに続けぇ!!!」
「あの方が語った通り、大混戦を利用して仕掛けやがったあ!!!」
「七武海代行の副将!!! 初陣の首級には丁度いいぜぇ!!!」
武器を手にして雪崩れ込む屈強な男達を前に、タマモクロスは冷や汗を流す。
だが、すぐに手元の大砲群へと電流を流し込み、一斉射撃によって脱獄囚達を迎え撃つ。
「おまけのおまけみたいな言い方しよって! アンタら全員、沈めたるわぁ!!!」
倒れるわけにはいかない。オグリキャップはまだ闘い続けている。
何も気負わない一対一の対決。戦乱の束の間が許す限りは、闘わせてやりたい。
≫83 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 00:34:29
――――タマ。……震えが止まらないんだ。
――――初めてなんだ。海は広くて、その中ではみんなが小さいはずなのに、
――――ルフィは大きな夢を見ていて、海と同じくらい、大きく見えるんだ。
「オグリぃぃ!!! エースを助ける、ジャマをするなぁぁぁ!!!」
「私だって、本当の七武海になって、――――故郷のみんなを守るんだぁ!!!」
振り落とされる“巨人の斧”が氷陸を割り砕き、破裂した水飛沫が舞い上がった。
舞い上がる海水はスコールの如く降り注ぎ、ルフィの姿を覆い隠す。
振り割いた“大振鎌”であっても“巨人の斧”の衝撃が逃がし切れず、
オグリキャップは吹き飛びながら、行方を眩ませたルフィを探すために両目を凝らした。
「いない。――――まさか、逃げたのか?」
敵前逃亡。違う。ルフィの目的は唯一つ、エースの救出だ。
オグリキャップは障壁に過ぎない。降り注ぐ雨に紛れて何処かへ消えたのか。
勝利は喜びを。敗北は悲しみを産む。だが、眼前の勝負を投げられたオグリが抱いたのは、
「――――腹が、立つ」
朴訥としたオグリキャップに生まれたのは、初めて心を震わせる感情。
怒りだ。ルフィの目的を見間違えて生まれた、勝手な激情だと解っていながら、
オグリは爪が食い込む程に拳を握り締め、怒りのままに氷塊へと振り落とした。
「怯むんじゃねぇ!!! 砲弾が速かろうと、どの道当たったら死ぬんだろうが!!!」
「キャプテン・バギーの言う通りだ!!! インペルダウンの屈辱を思い出せ!!!」
タマモクロスに殺到する軍勢を盾にし、勢いに勝ったバギーの号令が士気を高める。
その軍勢が瞬く間に蹴散らされる。真横から飛び掛かったオグリキャップの拳速により、
ほんの数瞬で数十もの脱獄囚達は鎧袖一触で吹き飛ばされていく。
≫84 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 00:35:04
「タマ。――――闘いは終わったよ」
「ほんまに助かるわ! 葦毛のコンビネーションで、返り討ちにしたるで!!!」
「あらあら。随分と血気盛んでいらっしゃいますね」
振り払われる薙刀の刃身をオグリキャップは避け、飛び込んだ来訪者を見据える。
栗毛の少女は長柄を軽やかに旋回させ、その切っ先を葦毛の二人へと向ける。
「グラス、こっちも黄金コンビで対抗でーす!」
「エル、何年振りでしょうね。貴方に背を預けて闘うのは――――」
エルコンドルパサーとグラスワンダー、かつてゴール・D・ロジャーと共に、
偉大なる航路を制したと囁かれる黄金世代の二人。両者が肩を並べて葦毛を見据える。
「震えるじゃあねぇーか。後輩達の雄姿を、再び間近で見られるとはなぁ……」
「白ひげ海賊団の“怪物二世”!? まさかそれを“後輩”だなんて!?」
「キャプテン・バギー、アンタどんだけ持ってるんだよ!?」
湧き上がる脱獄囚達も手出しが出来ないと解れば、氷壁に身を隠して静観に落ち着く。
頂上戦争は続く。二人のならず者の死と、新たな傑物の咆哮によって、終末が告げられるまで。
≫85 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 00:36:03
あの戦争から半年が経過した。シンボリルドルフの引退、トウカイテイオーの船出、
テイエムオペラオーの失踪、――――ウマ娘達にとっても激動の半年間であった。
トレセン諸島を構成する島の一つである、カサマツ島の住民は一人しかいない。
七武海代行となってトレセン諸島を縄張りに宣言したオグリキャップとの誓いによって、
故郷を守る為に防人となったフジマサマーチは、夕暮れのニンジン畑に人影を認めた。
「オグリ! なんだ、戻ってたのか?」
クールな様相に朗らかな笑顔を浮かべ、マーチはオグリを出迎えた。
オグリは無言のままマーチに近づくと、そっと息を吐くように告げた。
「すまない、マーチ。……あの時、勝手にカサマツを出ると決めて」
「何を今更言ってるんだ。それより、正式な七武海になれるって本当か?」
五年前、諸島へ降り立った“バーソロミュー・くま”に誘われ、海賊になると話した時、
フジマサマーチはオグリを平手で叩き、激情を露わにして詰め寄った。
――――チュウオウのレースに出ても、故郷を大事にしてるって言っただろ!!!
――――私がいつまでも弱いから、愛想を尽かしたなら最初からそう言えよ!!!
「その、タマが言うには、時間の問題らしい」
バーソロミュー・くまがシャボンディ諸島に居座り、半年が経過している。
彼が諸島で何をしているのかオグリには解らなかったが、間違いなく言えるのは、
この半年間は七武海の任務全てをオグリキャップが代行しているということだ。
「そうか。……あの時、自分が弱いのを棚に上げて、
お前が島を出るって聞いて、置いてけぼりになった気がしていた」
「そう、だったんだな。それで、マーチはあんなに怒ってたのか。
私はてっきり、マーチに相談しなかったから、怒ってると思ったんだ」
≫86 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 00:36:33
腑に落ちた表情を浮かべるオグリに対し、マーチは複雑な表情を浮かべていた。
無論、彼女の天然気質には慣れたものであり、食い違いの一つで怒りを覚えることも今更で、
むしろ、彼女がその怒りに同調出来たと理解すると、マーチは驚いたように口を開けた。
「なんか、変だな?」
「私は、怒っているんだ。……八つ当たりだと解っているんだ、仕方ないはずなのに」
オグリキャップはポツポツと心境を語り始めた。
トレセン諸島での宴での約束、頂上戦争でのルフィとの激突、戦闘中の逃亡。胸中の怒り。
頂上戦争の趨勢は“世界経済新聞”で目にし、宴の一件は参加者であるマーチも覚えがある。
「その、やっぱり変か? ……マーチ、こんな気持ちは初めてなんだ」
「(それくらいのライバル心は、私にも持っていて欲しかったな)」
口下手なオグリが話し手になるのは珍しく、更には話の内容が怒りによるものと解れば、
話を聞き終えたマーチは得心したように息を吐き、オグリを取り成すように話を始めた。
「ルフィは海賊王になるため、オグリは七武海になるために闘う、って話だろ?
……今回は、義兄弟を助ける為に闘ったんだから、ぶつかり合う理由もない」
オグリの話を理解した上で、マーチは慰めのような言葉を掛けると、オグリはウマ耳を項垂れさせた。
「やっぱり、そうか。……マーチはスゴイな。タマには怒られた」
「そうか。――――タマモクロス、話は終わった」
岩陰から覗く尻尾に気付いたフジマサマーチが声を掛けると、
小さな歩幅でのしのしと向かって来たタマモクロスは、両目を見開いてオグリを怒鳴った。
「オグリ船長(キャップ)!!! 七武海も目前って時に、
そんなにメソメソしてたら他の船員に示しが付かんで!!!」
≫87 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 00:38:12
頂上戦争以来、心あらぬままのオグリキャップの腑抜けた姿勢を正すために、
敢えて心を鬼にしていたタマモクロスだったが、流石に船長を放ってはおけない。
「め、メソメソなんてしていない……」
「ウソこけ! 麦わらが行方不明になってから、ずっとメソメソしとるがな!」
「る、ルフィは必ず戻って来るんだ。だって、約束したんだから……」
アーロン海賊団の撃破、エニエスロビーの襲撃、マリンフォード頂上戦争への乱入。
世間を騒がせたモンキー・D・ルフィは頂上戦争の最中に行方知れずになったと報じられ、
いまや人々は新たなニュースの連続に心をかき乱され、彼の悪名は忘れられようとしていた。
「ルフィが海賊王になって、私が七武海になって故郷を守る。
だから、……だからきっと、もう一度出会うんだ」
島での宴を思い出す。小さな故郷を守るなんて、海賊王に比べたらちっぽけだろうか。
それでも初めて抱いた夢だ。人攫いに殺された姉を抱いて、泣いている少女がいた。
彼女だって今も何処かで、大きな夢を追っているに違いない。
「次に出会ったら、今度は私が勝つ」
「なんや、だいぶマシな面になったやないか」
タマモクロスが励ますようにオグリの肩を叩き、マーチは表情を崩して眺めている。
一年と半年後、新世界で二人は再び相まみえるのだが、それはまた別の話――――
終わりです。オグリとルフィの全身全霊のタイマンを書きたかったのだけど、
ルフィはエース救出が目的だから、きっと正面突破はしないんだろうな、って考えると、
ギアサード後の小人化で身を眩ませた、というちょっとスッキリしないオチにはなった。
≫116 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 10:13:45
ちょっと小ネタが浮かんだので筆休めがてらSS未満の概念投下
小ネタ:2年前の時点で先行登場するライスシャワー概念
時系列:空島編
ジャヤへの航路の途中、海賊船を発見する麦わらの一味。
身構えるものの人の姿が見えず、物音すら聞こえてこない。不審に思って見てみると、なんと甲板の上に大量の船員が倒れているではないか。
「大凶!どう見ても大凶です!近づかないのが吉です!!」「そうだぜさっさと離れよう!!」と青褪めて騒ぐフクキタルとウソップ。
が、ルフィが飛び移ってしまったので仕方なく謎の海賊船の様子を確認することに。
「こ……こいつら、皆死んでる……!」と戦慄するチョッパー。船にいた海賊達は全員死体だった。
「しかも全員急所を一突き……きっと即死だわ。他に損傷も見られないし……おそらく、相当な手練ね」と冷静なロビン。
更にロビンは言う。「それに、妙だわ……。少し見てきたんだけど、荷物が荒らされた形跡がない。宝もそのまま置いてあったわ。まるで――殺す為だけに船を襲ったみたい」
ますます青褪めるフクキタル、ウソップ。
「まだ少し温かい……こいつら、死んでからそんなに時間が経ってないぞ……」とチョッパー。「じゃあまだ近くにいるかもしれないわね。この船を襲った殺戮者が」というロビンの言葉に「今すぐここから離れるぞ〜〜〜!!!」と泣き叫ぶウソップ。
……しかし、周囲に他の船は見当たらない。甲板の上の死体は2桁を越える相当な数。死後の経過時間を推測するに、彼らを襲った船がいるなら本当に近くにいてもおかしくない筈なのだが……。
そんなメリー号から少し離れた海上にて。水面を駆ける小さな黒い影が――
≫117 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 10:14:26
そして空島編後、ジャヤにて。
港の木箱に腰掛け、絵本を読む小柄なウマムスメ族の少女の姿があった。最後のページを開いたところで、目を潤ませる少女。
「待たせたか?」
そこへやってきたのはモックタウンでベラミーへの粛清を終えたドフラミンゴ。少女は顔を上げ、「う、ううん」と首を横に振る。
「なんだ、泣いているのか?誰かに酷いことでもされたか?」「ち、違うの。絵本を読んでて……」
少女が手にしていた絵本のタイトルは「うそつきノーランド」。
「小さい頃、読んでもらったことがあるの。何度読んでも同じところで悲しくなっちゃって……。嘘をついたからって殺されちゃうなんて、あんまりだもん……」と耳を垂れさせる少女の頭を撫でるドフラミンゴ。
「フッフッフ……嘘つきに同情するとは優しいやつだ。……仕事は済んだな?」
「う、うん。ちゃんと終わらせてきたよ」
そう言って少女は指を3本立てて見せる。それを見たドフラミンゴは満足そうに笑った。
「やはりお前は優秀だ。おれの部下ならそうでなくては」
「上手にできたかはわからないけど……即死させてあげられなかった人もいたから……。もっと頑張らないと……」
「フッフッフッ……立派な向上心だ。お前のような部下を持てておれは幸せだよ」
そうしてドフラミンゴは少女の華奢な肩を抱き、ジャヤを去っていくのであった……。
そして2年後のドレスローザで再登場してやっと名前が判明するという流れ。
"ドフラミンゴの部下"であることを強調する感じ。尚ベラミーとはこの時点では面識ないです。
≫139 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 11:49:37
ライス「ローくん、お菓子をくれないとイタズラしちゃうよ……!なんて……」
ロー「いい歳して何言ってんだお前」
ライス「ローくん……普段ライスのこと歳上扱いしないのに、こういう時ばっかり実年齢の話持ち出すのどうかと思うな……」
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 83スレ目
≫79 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 20:12:54
トレセン諸島の件でウマムスメが思った以上に大食いだと知ったサンジ
恥じらいからか遠慮からか、あまり食が進んでいないライスに気を遣って「ライスちゃん、遠慮しないで好きなだけ食ってくれ。足りなかったらまた作り足すから」と優しく告げる
戦慄するロー
「後悔するぞ……黒足屋……」
「ウマムスメ族の食事量のことなら知ってる。その上で言ってんだ」
「サンジさん……!あ、ありがとう。それじゃあ、おかわりいただいてもいい……かな……?」
この時サンジはライスの食事量を見誤っていた
フクキタルがウマムスメ族の中では少食な方であるという情報。そしてフクキタルより小柄な身体
結果だけ言えば――サンジはトレセン諸島以来の地獄を見た
≫143 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 23:15:42
コラソン「なんだ、ライスもこういうの興味あるのか?女の子だなぁ」
ライス「う、うん……きっとライスなんかには似合わないけど……」
コラソン「そんなことないだろ!ライスは可愛いんだから、な!」
ライス「……!あ、ありがとう、お兄さま……!」
コラソン「……で、誰か気になってる奴とかいるのか?」
ライス「ふええっ!?……そ、それは……いくらお兄さまでも……」
コラソン「あー、悪い。今のは流石にデリカシーがなかったな」
コラソン「(まあローだろうな)」
ライス「(お兄さまのお嫁さんになりたい…なんて言ったらきっと困らせちゃうよね……)」
≫180 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 23:49:35
ライス父「いつまでも起きてる悪い子はジェルマにさらわれちゃうぞ〜」
幼ライス「ひえぇ……!」
ライス父「ウワーッステルスブラックだ!透明になれるからどこからでも入ってこれるぞー!」
幼ライス「うええぇぇぇぇん!!」(号泣)
ライラックポイント「あなた、ちょっといいかしら」
ライス父「」
≫132 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 23:01:10
ナミ、ロビン、フクキタルが女子会するとして何すると思う?
とりまフクキタルによるキャッキャウフフな占い話はあるとおもう。
姓名判断とか、誕生日占いとかそういうの。
≫134 二次元好きの匿名さん21/10/09(土) 23:05:57
>>132
それぞれ怖い話をするんだけど
金欠、オカルト、裏社会でイマイチ盛り上がらないで次にいく
≫185 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 00:13:01
>>134
ナミ「──で、今まで稼いだお金がパアになって……ってなによその目は」
フク「いや、だって、ねえ……ナミさんがいればまずそうならないと思いますし……それに万が一の場合は私、自力で稼げますから……」
ロビン「そうね。その場合私なら適当な富豪の屋敷に潜入してこう、内部から操って全部なかったことにするわね」
ナミ「……なによそれ、私が恥かいたみたいじゃない~! じゃあ次フクキタル!!」
フク「ええ!? 私ですかぁ!? ……では、僭越ながら──」
フク「──というワケでA太郎さんは憑き殺されてしまい……ってなんですかその表情は!?」
ナミ「……なんというかその……十分に怖いのでしょうけどフクキタルの語り口だとね……」
ロビン「そうね、雰囲気作りが未熟でだいぶ恐怖感が薄れてしまっているわ。次やる時はそういうところを見直したらいいんじゃないかしら?」
フク「まさかのダメ出し!? ならロビンさんがやってみてくださいよ!?」
ロビン「わかったわ。それならこんな話をしましょうか──」
ロビン「──そういう訳で少女は再び、一人孤独に海へと旅立ちました……ってあら、どうしたの二人共」
ナミ「いや、だって、ねぇ……?」
フク「なんというか、その……もしかしてそのお話って実話なんじゃあ、ないでしょうか?」
ロビン「そうね、実話よ。だいたい15年位前だったかしら。アレはだいぶ肝を冷やしたわ」
ナミ「怖い怖いそっちのほうが怖いわよ! 私も似たような境遇だけどそこまでのことされてないわ!」
フク「そうですよぅ! こういうのは架空のお話で肝を冷やすものです! そんな現実由来のお話をされても反応に困りますぅ!!」
ロビン「そういうものなのね、ごめんなさい」
ナミ、フク、ロビン「「「……寝ましょうか」」」
こんな流れかな、麦わら女子会in怪談
≫190 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 00:23:20
>>185
フク「むむむ・・・これではいけません、こんなままお二人との女子会を終わらせるわけには!
キエエエエエーーーー!!そ、そうですコイバナしましょう!これぞ女子会!
あ、私は全然ダメダメなですが、お二人ならきっと・・・」
ナミ「・・・」
ロビン「・・・」
フク「あ、あれぇ?」
ナミ「そうね・・・私達の話はフクちゃんには刺激強すぎるかもだし」
フク「そ、そうですよね!?」
ロビン「言いだしっぺってことで、まずはフクちゃんお願いね」
フク「あわわわわ・・・そ、そうですね・・・たいした話しじゃないですが・・・」
ナミ「(え?わざわざ孤島に二人っきりで残って流星郡見るとか、そんなの・・・)」
ロビン「(完全に相手の退路を塞いでる・・・この娘こんな搦め手できるタイプだったかしら)」
フク「まぁ、その後は色々あって離れ離れになってしまったので、子供時代の淡い思い出にすぎないんですが」
ロビン「その子絶対、今もそのこと覚えては悶々としてるでしょうね」
ナミ「ちょっとかわいそう・・・男って中々上書きできないから・・・」
フク「そ、そうですよね、いきなり孤島に引き止めて帰る手段すらない状況じゃ怒りもしますよね・・・
ショボン・・・やっぱり失敗だったですねぇ」
ナミ、ロビン「(そういうことじゃないのよ・・・)」
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 84スレ目
≫74 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 11:55:06
ハロウィンイベントでミホライに脳を灼かれたのでコラソン軍幹部ミホノブルボン概念
【過去編】
コラソン死後、ライスがコラソンを殺したのはローだと吹き込まれ本格的に訓練漬けになり始めた頃
ファミリーと交戦した海賊が実は人攫いに手を染めており、そこで捕らえられていたのがミホノブルボンであった
ブルボンを発見したライスはかつて人攫いに売り飛ばされそうになった自身の姿を重ね、またコラソンに救ってもらったことを思い出し、ブルボンをファミリーに入れてもらえるようドフラミンゴに頼み込む
最近実力を伸ばしてきたライスを見ていればウマムスメ族の戦力としての有用性は期待できる。また、両親を殺されて誘拐されてきたブルボンの無機質さも中々悪くないと感じたドフラミンゴは面倒はてめェで見ろよとこれを了承
行くところのないブルボンは流されるままファミリーへ。ライスの献身により、一見分かりづらいものの感情の豊かさを取り戻していく
この過程でライスとは唯一無二の親友同士に
10年前のドレスローザ事変に参戦。ライスのみ別の任務を割り当てられて不在だったのに違和感を抱く
そしてライスがドフラミンゴから多くの真実を伏せられていることに気づく
ドフラミンゴに問い詰めるも「あいつは今幸せな夢を見てるんだ。もし真実を全て知った時……優しい優しいライスシャワーは一体どうなるんだろうな?」と言われ、ライスが傷つくことを恐れ結果的にドフラミンゴの"嘘"に加担する羽目に
最高幹部に就任したライスの部下となり、ライスに余計な情報が回らないよう手回しをする役割をさせられる
コラさんの事件の真実は知らないが、ドフラミンゴの態度から「先代コラソンを殺したのはローである」ことすら偽りではないかと疑っている
≫75 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 11:55:19
【ドレスローザ編】
コラソン軍幹部として登場
シュガー気絶後、幹部としてルフィ達の前に立ちはだかるもローが本気でライスを救おうとしていることを知り、ドフラミンゴに反旗を翻すことを決意
ブルボン「私にはもう、ライスさんの友達でいる資格なんてないかもしれない……。けど……お願いします……!私の大切な人を……助けて……」ポロポロ
ロー「お前に言われるまでもない!おれはその為にここに来たんだ……!」
その後、ルフィが再び覇気を使えるようになるまでの時間稼ぎに参戦。ライスと共にドフラミンゴに立ち向かう
事件後、ドフラミンゴに従ってしまいライスに真実を伏せていたことを謝罪
ライス「……ブルボンさんは優しいね」
ブルボン「優しい……?私が……?」
ライス「うん。ライスの為に何も言わないでいたんだよね。……ブルボンさん。ずっと黙ってて苦しかったよね……友達なのに、気づかなくってごめんね……」
ブルボン「ライスさん……」
ライス「でもね、ブルボンさんさえよかったら……ライス、これからもブルボンさんのお友達でいたいよ……!」
ブルボン「……!!」
そして「私の居場所はライスさんの隣です。"お友達"ですから」とドレスローザ編後も参戦できるミホノブルボン概念ができあがるってわけ
多分便宜上ハートの海賊団所属になる
壊してしまうのでポーラータング号の設備は一切触れないし触らない
「ドフラミンゴからも工場には絶対に近づくなと念を押されていました」
【余談】
実は北の海出身。身につけている服は海の戦士ソラに登場するジェルマ66に憧れて似せて作ったもの
バチバチのジェルマ派読者である
ライスさんもジェルマ派になりましょう(布教)
「ステータス、高揚を確認。サンジさんサイン頂いてもよろしいですか?」
ブルボン持ってないんだけど、調べたら勝負服のデザインは幼少期に見たアニメの影響って書いてあったからそのままジェルマにするより「ジェルマの影響を受けた」の方が元ネタ再現っぽくなるんじゃないかなと
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 85スレ目
≫177 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 23:04:46
“偉大なる航路”の前半部に位置する“アタルヨ島”は、
あらゆる海から来訪するカモメ達が集い、その島は堆積したカモメの糞で出来ている。
バーソロミュー・くまに吹っ飛ばされたマチカネフクキタルは、
この小島に到着し、――――島にいる占い師の小間使いをさせられていた。
「フクキタル、何をぼやぼやしとるのじゃあ!」
「は、はい! ただいまお持ちしますー!」
朝早くから老婆の恫喝が響き渡る。フクキタルは慌てて朝食を運ぶ。
“アタルヨ島”の唯一の住人である“アタルヨ・ソーヤ”は、
フクキタルの運んだ饅頭を齧ると、顰め面を作って怒鳴りつけた。
「よくもまあアマーイ饅頭なんて持って来たね!
アダシを糖尿にさせる気かい? 煎餅だよ煎餅!」
「で、ですけど、昨日は顎が弱いのに煎餅を食べさす気かって……」
「つべこべ言うんじゃないよ、人の言うことはしっかりお聞き!」
ヒョウ柄のローブに金箔飾りの樫杖、頭にデカい水晶玉を乗せた老婆は、
つっけんどんにフクキタルを一喝すると、結局は饅頭を食べ始めた。
島に到着してから一週間。最初こそ老婆に恩義を感じていたフクキタルだが、
気分次第で変わる指示や頭ごなしの説教には、辟易し始めた頃だった。
「今日は来客があるんだよ。お前はカモメの卵でも取って来な」
それだけ言い捨てた老婆は家を出て行き、海岸沿いの屋敷へと向かっていく。
“3D2Y”、老婆の読んでいた新聞に掲載されたルフィの刺青を見たフクキタルは、
その意味を察するも、心中は穏やかではない。――――自分は弱い。
だが、それを解っていて、強くなる方法は解らない。ウマ娘武術? 占い?
自分の強みが何の役にも立たず、蹴散らされる未来しか見えて来ないのだ。
鬱屈した感情を抱えたまま、フクキタルはトボトボと海岸へと歩んでいった。
≫178 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 23:05:32
「ソーヤさん、おれもそろそろ事業を拡大したくてね。
……どうだろう、次の投機先でも占っちゃあくれないか?」
「ドフェフェフェ、アンタからは血の匂いがするよ……。
何人も殺している。葉巻、……カポネ・ベッジ、シマを取られた……?」
頭に置いた水晶玉を磨きながら、老婆は訥々と眼前の男へと呟いていく。
ゴクリ、と男が生唾を飲んだ。その様子を屋敷の窓からフクキタルは覗き込む。
窓がガラリと開き、フクキタルは慌てて首を引っ込める。
その頭上に新聞紙が差し出され、ピチャリ、と紙上にカモメの糞が落ちた。
「アダシが占うのは手相や血液型じゃあない。――――運命だ。
不規則な事象にこそ運命が現れる。このクソの形を見るに……そうだね……」
「“貝”だ。アンダはほら貝の養殖をしな。見知らぬ商人から貝を買うんだよ」
「ば、バカを言うな! 島だらけの海で貝を売るなんて、冗談じゃない!」
不信感を露わにした男がローテーブルの天板を叩くが、老婆は不敵な笑みを浮かべたままだ。
「宝石でも人でも、売ろうとしたところでジャマが入るよ。
貝なら、ベッジにシマを奪われたアンダでも、目を付けられやしない」
「バカバカしい! 所詮は当たるも八卦当たらぬも八卦、信じた遠出がバカを見た!」
ソファから腰を浮かせた男が憤然として立ち去る中、その背に老婆が声を掛けた。
「アンダの子供はまだ五歳かそこらか? ……どの道、ギャングなんて長続きしない。
足を洗って真っ当な商売をするなら、今が見切りの時だよ」
しわがれた声を受け、男の足がピタリと止まるも、またすぐに歩み去っていった。
男が消えたのを確認し、フクキタルが窓を乗り越えて老婆の下へと飛び込んだ。
≫179 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 23:06:09
「おばあさん! あんなこと言って、大丈夫なんですか!?」
「フクキタル、カモメの卵は集めてきたか?」
「そ、そうじゃあなくて、あの……ギャングなんて、危ないんじゃあ……」
「誰にでも運命があるのだから、占い師は人を区別したりはせんのじゃあ」
ドヒャヒャ、としわがれた笑い声を上げる老婆に対し、
同じ占い師としてフクキタルは何処か感心するように視線を上向かせた。
だが、本当に彼女へ感服するのは、一ヶ月が経ってのことだった。
「お、おばあさん! こ、これ、この新聞!」
「そうかえそうかえ。口ではああいうが、未練があったと見えるねぇ」
“西のギャング、空島の貝の養殖に着手か”、小さな新聞記事に書かれている。
昨今、空島の住民が青海へと移動し、空島の産物である“貝”を持ち込み、
その機能性に惹かれた者達が“貝”の養殖に着手しつつある、という記事だ。
「空島の“貝”だったら、とっても便利でみんな欲しがります!
スゴイ、おばあさん! この未来がキッチリ見えてたんですね!?」
「ドフェフェフェ、何言ってんだい? 未来なんて見えちゃいないよ」
高笑いする老婆が立ち上がり、フクキタルを自身の部屋へと招待する。
机に山積みとなった大量の新聞。横一列になった電伝虫。そして窓から飛び込むカモメ達。
いずれも新聞の入ったカバンを下げ、老婆は硬貨と引き換えに次々に新聞を掴んでいく。
「“東の海”じゃあ海軍の体制一新、“南の海”では小麦の値上がり……。
どれどれ、また占いを欲しがる依頼人がぎょうさん来るねぇ……」
フクキタルは山積みになった新聞から、一冊のノートを取り出した。
多種多様な有名人、有力者の顔写真が並ぶ中、あの男について記されたページがあった。
≫180 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 23:06:52
「えっ、この人……? 確か、この前に来た……」
「ああ、ベッジの配下にシマを取られて、すっかり委縮してるって聞いてね。
息子もまだ幼い。神にも縋りたい頃だと思って、調べておいたんだよ」
「う、占いって言ってたんじゃあ」
「ドヒャヒャ、そんなわけがあるかね! ありゃあ演出だよ!」
大笑いする老婆の姿にフクキタルは愕然とし、わなわなと唇を震わせる。
その証拠に、ノートには、空島について詳細にまとめられたページが載っていた。
「い、インチキじゃないですか!」
「そうかい? ギャングが足を洗って、新しい商売に着手したんだ。
インチキかどうかは、これから儲かるかどうかで決まるんじゃあないかい?」
むぐ、とフクキタルは押し黙る。占い師としてオカルトめいたインチキは許せないが、
彼が新たな商売に成功するのであれば、立派な助言が出来たことになる。
「じゃ、じゃあわざわざ占いなんて形にしなくても……」
「人はね。ロマンを求めるんだよ。連中はアダシの助言が聞きたいんじゃあない。
見えない神秘に、自分の不安や弱さを払ってほしいんだ。アンダみたいにね」
核心を突くような老婆の言葉に、フクキタルはドキリと心臓を高鳴らせた。
自分が求めていた占いに合致し、まるで自身の心境を当てられたように感じたからだ。
「お、おバアさん! 私が占い師だって気付いて」
「縁起物ばっかり集めて、水晶玉持ってたら誰だってわかるよ」
シニカルな指摘さえもフクキタルの耳には入らない。
当たりが強くて胡散臭い老婆だが、集めた情報によって人を見定め、
最適な未来を示す手腕は、自分が求めていた結果に、望むべき強さに繋がるものだった。
≫181 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 23:07:28
「おバアさん、――――いえ、お師匠様!
私にも是非、占いの手伝いをさせてください!」
「イヤだねぇ。アンダに教えて、何の得になるのかって」
難色を示した老婆の前に、湯のみが置かれ、温かいお茶が注がれる。
フクキタルは満面の笑みを浮かべ、だし巻き卵を並べ始めた。
「そろそろ、お師匠様の小腹が空いて、ノドが乾く頃かと思いまして」
「解って来たじゃあないか。占いってのは、運命を見るんじゃあない。
人を見るんだよ。……アンダ、資質はともかく、そういうの好きそうだね」
老婆はだし巻き卵にフォークを突き立て、ガブリと噛んだ。
「いいよ。アダシの手伝い、させてやる。
だけどね、……ちっとは料理の腕も磨きな!」
そして、改めて占い師見習いとなったフクキタルは、老婆の師事を受けて占いを始めた。
水晶玉に浮かぶ漠然としたイメージを読み解く方法は、一度止めるようにと指示された。
五十紙以上もある新聞を読み解き、来客のお茶くみや接待、老婆の世話と、やることは雑用ばかり。
だが、老婆の下に現れるのは海軍将校、賞金首、各国の王族までお忍びで来訪していた。
いずれも老婆の占いに耳を傾け、過去の話に花を咲かせ、満足気に帰っていく。
フクキタルも知る賞金首が現れた時は、拉致でもされないか心配になっていたが、
老婆は鷹揚に笑いながら、フクキタルの淹れたお茶をグビグビと飲み干していく。
「力が全てだと思ってるヤツは、アダシのことなんて気にしないよ。
どうしようもない壁にぶつかるから、アダシを頼るんだからね」
やがてフクキタルも水晶玉を手にし、来訪者達への占いを試みることにした。
最初は眉唾だった来客達も、占いの結果が解れば見る目が変わり、リピーターも増えて行った。
≫182 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 23:08:03
アタルヨ島で過ごして一年以上が経過し、ある日フクキタルが老婆に呼び出された。
「アダシにもウマ娘の知り合いがいてね。アンダのことを話したら、
興味があるっていうから、――――ここでアンダとはお別れだよ」
「で、でも、私まだ教えて欲しいことが沢山あります!」
抗弁するフクキタルに老婆は背を向け、頭に乗せた水晶玉を外した。
「最近、アダシじゃなくてアンダに占ってほしい客ばっかりなんだよ。
これじゃあ商売上がったりだ。これ以上、アンダに教えることはないよ」
「イヤです! 私まだ、ルフィさん達の力になれない――――」
「だからこそ、アダシの下を離れるんだよ。教えることは全部教えた。
見る方法なら十分にね。そうだろ、マルゼンスキー?」
扉が開いた。赤栗毛の巻き髪を靡かせたウマ娘が室内へと入って来る。
「おひさ、ソーヤさん! 貴方がマチカネフクキタル、ルフィちゃんのお友達ね?」
「る、ルフィさんを知ってるんですか!?」
「モチのロンよ。あの子は今、レイリーちゃんと修行の真っ最中なの」
“冥王”の名前が出たことに驚いたフクキタルだが、彼の知り合いと解れば、
ルフィと既知であること、そして修行中であるという言葉にも納得が出来た。
「目と耳は鍛えた。手足はアンダに任せるよ」
「任せて! 残り一年、バッチグーに仕上げて見せるから!」
行きましょう、と身を翻すマルゼンスキーを他所に、フクキタルは老婆を見る。
鍛え上げられた人物観察眼を使うまでもなく、大義そうにしている老婆が、
自分を邪険にするわけでなく、何処か寂しそうにしていると感じられた。
≫183 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 23:09:30
「お師匠様! 占いのいろはを教えて頂き、色々な人に出会わせて頂き、
――――ずっとお世話してくれて、本当にありがとうございました!」
「……何も世話なんかしちゃあいないよ。一年以上、アンダと過ごして解ったよ」
老婆はフクキタルに背を向け、新聞だらけの自室へと戻ろうとする。
樫の扉を開き、その身を滑らせる前に振り替えると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「アンダの資質は本物さ。
本物の占いでアダシの技を使いこなせるんなら、アンダに見えない未来はないよ」
その後、フクキタルはマルゼンスキーと共にトレセン諸島へ向かい、
レーステクニックを磨きながら、鍛え上げた観察眼によって競争相手の資質を見抜き、
レースへの勝利だけではなく、卓越した予想術を磨き上げるまでとなる。
その変化に驚きを隠せないフクキタルに対し、マルゼンスキーは朗らかに笑った。
「それはね。ソーヤさんの下で“見聞”を深めたからじゃないかしら?」
物知り顔で告げるマルゼンスキーが、いよいよとばかりに自ら修行の相手を務める。
その時初めて、フクキタルは“覇気”と呼ばれる技術について知るのだった。
終わりです。台詞が格好良かったので、>>66はそのまま引用させてもらいました。
見知った島より見知らぬ島で悪戦苦闘する姿が書きたかったので、舞台はガチの孤島です。
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 86スレ目
≫21 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 23:49:38
サンジ「!?ルフィに打撃が通じた!?」
ゾロ「まさか能力者か!?」
バクシン「いいえ! 私は能力者ではありません! どうやらそちらの方は打撃の効かない能力者さんのようですが、
私の技は打撃にあって打撃にあらず! そう、いうなれば衝撃(バクシン)!」
ウソップ「ば、バクシン!? 衝撃貝みてーなもんか」
バクシン「そう、バクシン!!!
バクシンすれば脚力も体術もレース勘も鍛えられる!
きたえたバクシン力でさらにバクシンすればますます鍛えられる!
バクシンによって生み出される驚異的な衝撃(バクシン)の前では、
いかに打撃が効かない方でもなすすべはありません!
こんな素晴らしいバクシン力がバクシンすれば手に入るのです!
さぁ! あなた方もご一緒に、レッツバクシン!」
ウソップ「いや、何の勧誘だよ」
チョッパー「えーっと…バクシンがバクシンで、バクシンして…こ、こんがらがってきたぞ」目グルグル
ちょっとギャグテイストにして、割とぼかす感じであると嬉しいという妄想。
≫26 二次元好きの匿名さん21/10/10(日) 23:59:05
バクシン「毎日快眠なのも食欲旺盛なのも一度も風邪をひいたことないのも全部バクシン力のおかげです!」
チョッパー「俺バクシン習ってみようかな?」
ゾロ「やめとけ健康なのは多分うちの船長と同じ理由だ、バクシンとやらと関係ねえ」
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 87スレ目
≫173 二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 00:23:58
カワカミプリンセスに惚れられてデレデレ顔のサンジだけど
「貴方様こそ私の探してた王子様ですわ」
と言われた瞬間
「マドモアゼル、私めは一介のコックでございます。王子などとても務まりません」
とお断りするシーンがあった気がする
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 88スレ目
≫41 二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 13:26:11
何とは言わないけどありそうなタイトル
ルフィ「おいフク、暇だからなんか面白い声で鳴け」
キッド「耐えられなかった」
ロー「だからおれはロリコンじゃねェ」
タキオン「できたよモルモット君!チケット中佐が性知識を得るスイッチだ!」
フクキタル「皆さんの運勢を占って回ります!」
カレンチャン「そろそろ本気でお兄ちゃんを落とす」
ライス「ローくんがお兄さま生存ifの長編小説書いてた……」
≫50 二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 15:48:37
>>41
ウオッカ「バルトロメオに飯を作ってやることになった」
テイオー「エースガコッソリカクシテタホンミチャウモンニ!」
青キジ「チケゾーちゃんの距離が近い」
ルフィ・ロー・キッド「「「うちのウマムスメが一番」」」
フクキタル・ライス・カレン「「「うちの船長が一番」」」
タキオン「できたよモルモット君!押す度にタイシン中佐のバストサイズが1cm増えるスイッチだ!」
コラソン「なぁライス。もう27歳なんだしそろそろ一緒に寝るのはやめねェか?」
赤犬「…………」タイシン「(気まずい……)」
≫98 二次元好きの匿名さん21/10/12(火) 18:56:57
「……最近はどうなんじゃあ…鍛錬はしちょるのか…?」
「してる…ます…でも…アイツらなんかより、全然…」
「フン…ワシからすりゃ目クソ鼻クソよ…ヘコんじゃり、イジけとる暇がありゃ、もっと気張らんかい」
「分かってる…!!分かってるんだよそんな事!!
アンタに言われなくたってーー!?」
思わず歯を剥くように噛み付いたタイシンの頭に、ズシリとサカズキの掌が乗せられる。
小柄なタイシンの頭など、簡単に握り潰せるような力強さのソレが、荒々しく左右に振られる。
「…このワシに噛み付く度胸があるなら、目クソ鼻クソの中じゃ上等じゃい。
ウジウジしちょらんで胸ェ張らんかいジャリっ娘」
「あ…」
「…い、痛い…です、よーーウマムスメの毛は、繊細なんだか…ですから」
「言われんでも分っちょるわ。ほれ、ブラシ貸さんかい」
荒々しさの中のほんの一欠片の心遣いを感じて、綻びそうになる口元を必死に覆い隠すタイシンであった。
≫186 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 10:43:33
「戦局が変わりそうで…サブちゃん」藤虎が隕石落とし使用
「えっ、帰るんですか?!待ってくださいよー!」
サブちゃんがブレブレのエネルギーを地面に流し込んで走って帰ってく
「「?」」
首を傾げるフクキタルとバルトロメオ
すると時間差でサブちゃんの立っていた場所を中心に広範囲に地割れが発生する
それをフクキタルがバルトロメオを抱えて逃げる
って流れかな
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 89スレ目
≫12 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 12:30:34
何スレか前でエピソードオブライスシャワー書いてたものです
続編投下の目処が立ったので予告編です
【予告編】
「……名前ですか?あの子の名前は――」
♪ささやかな祈り
「触んな!」
「きゃっ……!」
「コラソンにエコヒイキされてるからって調子に乗るなよ!」
「いやああぁぁぁぁっ!!お兄さま!お兄さまぁ!!」
「こんなのちっとも痛くねェ……!」
「ライスの方がおねえさんだから、ライスがローくんのことを守るの!」
「うるせェ!!チビのくせに歳上ぶるなよ!!」
「お前はおれの"青いバラだ。――愛してるぜ」
「お前は、ダメなんかじゃねェよ……」
「ライスシャワー!!コラソンはどこへ行った!?」
【エピソード オブ ライスシャワー】
【第二章 白い町の少年】
【近日投下予定】
麦わらの一味 占い師 マチカネフクキタル 90スレ目
≫49 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 17:49:40
ルドルフ「この技‥‥‥この型を”煉獄”と名付ける」
ルドルフ「ウマ娘が最速の看板を掲げているかぎり、
奴隷にしたがる天竜人は跡を絶たないだろう。
その無礼者どもの罪は――煉獄の炎‥‥貴君らの拳足で浄化させろ」
ルドルフ「煉獄はウマ娘武術の秘技とする。人前では絶対に使うな。
気づかれれば、お前らが煉獄の炎に焼かれる。
煉獄の炎から逃れる事はできない」
≫57 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 17:58:10
ではちょっと長めですがスレお借りしますね…
………………
…………
……
「……ええ、はい。身元不明のウマムスメ族の子供です。おれの独断で保護しました。……勝手なマネをしてすみません」
「任務成功の際には海軍での保護をお願いします。あの子はまだ染まりきっていない。それに、あの様子ならこれからも……」
「……分かりました。ありがとうございます」
「……名前ですか?あの子の名前は――」
……
…………
………………
≫58 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 17:58:36
【エピソード オブ ライスシャワー】
【第二章 白い町の少年】
≫59 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 17:59:14
1.
――何もかもぶち壊したい。
それが少年トラファルガー・ローの願いであり、呪いであった。
何もかも失った。長くは生きられない。家族を、友を、故郷の人々を見捨てた世界を憎んだ。
だから海賊になる為にこのスパイダーマイルズまでやってきたというのに。
遥か上のゴミ処理場を見上げる。
先程まであそこにいたローは、"コラソン"と呼ばれる大柄な男によって投げ落とされた。
鉄屑の山に頭から突っ込み、切った額や唇から血が溢れ出る。
対話だけはまともにした"トレーボル"、"ディアマンテ"とは違い、あの男はローを見るなり頭を掴んで窓に放ったのだ。
――殺してやる……!
確かな殺意を持って、遥か上を睨みつけた。
「だ……大丈夫!?」
直後。聞こえてきたのは凡そこのゴミ処理場には相応しくないような鈴を転がすような声。
反射的に振り向く。鉄くずの山に、一人の少女が立っていた。
歳はローとあまり変わらないくらいだろうか。外側にハネる黒髪に、あまり日に焼けていない肌。
何より目を引いたのは彼女の頭から生える動物めいた細長い耳と、身体の後ろで時折揺れる尻尾だ。ヒトに近い見た目をしていながら、それらの特徴が彼女がヒトならざる種族であることを示していた。
≫61 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 17:59:42
「あ……!た、大変!血が出てる……!」
少女は慌てたようにローに駆け寄ってきた。鉄くずに足を取られ、よろけながら。どこか危なっかしく。
ずい、と少女が近づいてきて、ローは思わず後退った。顔が少し熱い気がするのは出血のせいだろうか。
「ちょっと待ってて……」
少女はポケットからハンカチを取り出してローの傷口に宛てがった。上品な白いレースのハンカチがみるみる汚れていくのも構わず、少女は溢れる血を拭き取っていく。
少女の様子をぼーっと見つめていたローは、ややあってハッと我に返った。
「さ、触んな!」
「きゃっ……!」
突き飛ばされた少女は鉄くずの上に尻もちをついた。
眉尻を下げた気の弱そうな瞳がローを見上げる。チクリと刺す罪悪感から逃げるように目を逸らす。
――それが、トラファルガー・ローと少女……ライスシャワーの出会いであった。
≫62 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:00:09
2.
ドンキホーテ海賊団にやってきたライスシャワーが一番驚いたのは、"お兄さま"と慕うコラソンの変貌っぷりであった。
理由を明かすことはできないが、口をきけないふりをする必要があるとは聞いていた。コラソンに救われたライスシャワーは彼を信じ、秘密を守ることを約束した。
しかしファミリーに戻ったコラソンは口をきかないだけでなく、ライスシャワーとそう歳の変わらないような子供たちに"意地悪"をした。
転んだコラソンを笑った子供たちを腕で払ったり、突き飛ばしたり、長い脚で蹴飛ばしたり。
あの、ライスシャワーを優しく抱き締めてくれたコラソンが別の人間になってしまったかのような錯覚さえした。
怯えたような表情を浮かべ見上げてくるライスシャワーを見て説明不足に気づいたコラソンは、夜中に"能力"を使いながら事情を話した。
本来ならあんな子供が海賊になんていていい筈がない。だからわざと意地悪をして追い出そうとしているのだと。……最も、今残っている子供達はとても出ていきそうにないのだが。
「お兄さまはあの子達のことを考えてああいうことをしてたの……?」
「まあ、そんな大層なことでもないが……」
「よ、よかった……。お兄さまが突然怖い人になっちゃったのかと思って、びっくりしたの……」
「……本当に悪かった。怖がらせてごめんな、ライス」
説明さえすればライスシャワーは一応納得してくれた。
しかし、そもそも暴力をあまり好まない子なのでコラソンが他の子供に暴力を振るうところを見るのが辛いようだ。これも任務の内なので仕方がないとはいえ、子供達に暴力を振るう度にライスシャワーの悲しげな顔を見るのは心が痛んだ。
そうして、ライスシャワーがファミリーにやってきて半年ほど経った頃。スパイダーマイルズに新たにやってきたのがトラファルガー・ローだった。
子供を窓から放って鉄くずの山に落としたのはライスシャワーにとっては相当堪えたらしい。直接口に出すことはついぞ無かったが、「そこまでしなくても……」と視線が如実に語っていた。
≫63 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:00:37
そして、ローがやってきて三日ほど過ぎたある日のことだった。
コラソンは何故か朝から姿が見えないライスシャワーを探していた。
この半年でライスシャワーはファミリーに馴染んだ……とは言い難いが、子供達とはそれなりに交流できているようで、コラソンから離れて行動することも少なくなかった。
ファミリーでの立場上、コラソンが四六時中つきっきりでいられるわけではないのでそれはいいのだが、朝からいなくなるのは今までになかったことだ。心配で寝室を飛び出し、途中すっ転びながらも小さな姿を探した。
やがて……見つけた。
息を潜めて様子を窺う。ライスシャワーは件のローと一緒にいた。
「……なんの用だよ」
「あ、あの……ええっと……」
「なんだよ!お前が呼び止めたんだろ!」
ローに怒鳴られ、ライスシャワーはビクリと震えた。目は既に潤んでいて、いつ泣き出してもおかしくない。
ライスシャワーはえっと、あの、と何度か繰り返してから、意を決したように口を開いた。
「こっ……ここから、出ていってください!」
「はぁ!?」
まさかの言葉に隠れて聞いていたコラソンもつい声を上げそうになってしまった。
ローは鋭い目つきでライスシャワーを睨みつけて激昂した。
「なんでお前になんかにそんなこと言われないといけないんだよ!」
「だ、だって、ここは危ないから……」
「だからなんだ!おれはそんなの怖くねェ!」
「うう……で、でも……でもぉ……!」
「さてはコラソンの差金だな?ふざけやがって!」
ローはライスシャワーに人差し指を突きつけた。
≫64 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:01:23
「大体お前みたいな甘ったれがよくておれが追い出される意味が分からねェ。コラソンにエコヒイキされてるからって調子に乗るなよ!」
「ら、ライスは……そんなつもりじゃ……」
コラソンは小さく息を吐いた。
ライスシャワーの考えていることはなんとなく分かる。ローが痛めつけられるさまを見るのが辛くて、優しいコラソンがローに暴力を振るう姿を見るのが辛くて、手伝いのつもりでローを追い出そうとしたのだろう。
もっとも、優しすぎるライスシャワーに他人を傷つけるなどできない。ここに来て半年。刃物も銃もまともに扱えなかったし、耳や尻尾のことを子供達にからかわれてもじっと耐えていた。
結果、取った行動が言葉での説得だ。
残念ながらこんなところにわざわざやってくるような子供に穏やかな説得を試みたところで納得させられるはずがない。そんな子供ばかりであればコラソンももう少し楽ができている。
ライスシャワーが涙声になり始めたので、コラソンは偶然を装って姿を現した。それに気づいたローはコラソンを鋭く睨む。
「コラソン……!!」
「お、お兄さま……?」
コラソンはひょいとライスシャワーを抱き上げる。ローは何かされるのではないかと身構えた。腕の中のライスシャワーは怯えた顔をしている。
コラソンはローを一瞥すると、そのまま踵を返した。
今この状況で、ライスシャワーの目の前でこの少年を傷つけるのは流石に気が進まなかった。
一人取り残されたローは何もされなかったのが意外で、去りゆく背中をぽかんと見つめていた。
けれど、その大きな背中を見つめる目にはやがて強い憎悪が籠もっていった。
≫65 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:02:36
3.
ローがドンキホーテ海賊団にやってきて一週間が経過した。
夜、寝床に入る前にライスシャワーがコラソンの服の端を二度引いた。それは口のきくことができない男を演じるコラソンへの、"おはなししたい"の秘密の合図。
念の為寝室周辺に誰もいないことを確認してから、コラソンはライスシャワーをベッドに入れてやり、能力を発動した。
「……ローの話か?」
なんとなく予想はついていたのでそう問いかけると、ライスシャワーは小さく頷いた。
それは今日の夕食の時。ローが"珀鉛病"と呼ばれる病に侵されていること、"フレバンス"という町からやってきたことをライスシャワーは知った。
フレバンスという町の名前には聞き覚えがあった。今よりも幼い頃、母が話してくれたことがある。
「まず、ライスは珀鉛病とフレバンスのことはどのくらい知ってるんだ?」
「昔、お母さまから聞いたの。建物も、地面も、草や木やお花も雪みたいに真っ白なところがあるって。まるで絵本の世界みたいで、とっても綺麗な町……それがフレバンスだって」
「……珀鉛病は?」
ライスシャワーは首を横に振った。彼女が知っているのは、あくまで表層的な部分だけ。
コラソンは少し迷ったが、意を決して口を開いた。
「ライス……。これからする話は、お前にとって少しキツい内容になるかもしれないが……」
それから、コラソンはライスシャワーにフレバンスの真実と悲劇を伝えた。
フレバンスの幻想的な風景の源となった"珀鉛"の存在。世界政府によって隠された有毒性。
それによる"珀鉛病"の発症。感染症ではないのにも関わらず隔離され、見捨てられた国民達。
――そして、最後には病ではなく"人"の手によってフレバンスが滅んだことを。
全てを話し終える頃にはライスシャワーの表情は悲しみに溢れ、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。コラソンはサイドテーブルからティッシュを数枚取って、顔を拭いてやった。
≫66 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:03:40
「ぐすっ……じゃあ、ローくんは……ひっぐ……ローくんの、お父さまやお母さまは……」
「……ああ」
「どうして……!うつらない病気って、言ってたのに……!」
「ライス……」
そのまま泣き出してしまったライスシャワーを、コラソンはいつもしているように抱きしめた。震える背中を優しく擦る。
あんまりだと思ったのはコラソンも同じだ。
たった十歳の子供がそんな悲劇に見舞われて、自暴自棄になってこんなところまできてしまうなんて。
「もう何も信じていない」などと、迷いなく言えるようになってしまうなんて。
泣き疲れて眠ってしまったライスシャワーを腕に抱いて、夜は更けていった。
――翌日、事件は起こった。
今日の"襲撃"には不参加で、スパイダーマイルズでの留守番組だったライスシャワーは同じように拠点に残ったコラソンと共に過ごしていた。
鉄くずの山の中で、粗大ごみに腰掛けて新聞を読むコラソンの膝に座る。新聞の内容は難しくてよく分からない。けれど大好きな"お兄さま"であるコラソンと一緒に過ごせるだけでライスシャワーは幸せだった。
そうして暫くしてから、ライスシャワーはコラソンを見上げた。
「あ……あの、お兄さま。喉、渇いてない……?」
コラソンの視線が紙面からライスシャワーに向けられる。今は口をきけない演技をする必要があるので、夜のような"おしゃべり"はできない。
「ライス、お飲み物持ってくるね」
コラソンに頭を撫でられたライスシャワーは膝から降りると、建物の方へと向かった。
足場の悪い鉄くずの山ではトレーにカップを乗せて歩くのは難しい。だから、空き瓶にお茶を注いでポシェットに入れて運ぶ。火傷するとよくないのでいつも水出しにしている。
キッチンで二つの瓶を琥珀色のお茶で満たして、コルク栓で蓋をしたら完成だ。
ライスシャワーは再び鉄くずの山へと降りていった。沢山のごみを踏みしめて、大好きなお兄さまの元へと向かう。
その途中。ライスシャワーは鉄くずの山々の間を駆け抜ける影を見た。
特徴的な毛皮の帽子。ひと目見ただけで分かる。ローだ。
≫67 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:04:11
――コラソンお前調子に乗るなよ
――おれは必ずお前に復讐するからな……!!
昨晩の言葉が、背筋が冷たくなるような憎悪の籠もった目が脳裏を過る。いやに動悸が激しくなって冷汗が噴き出す。……両親がいなくなった嵐の夜の悪夢が、フラッシュバックする。
ローの姿が見えなくなってすぐ、ライスシャワーはコラソンの元へと全力で走った。
「――お兄さま!!」
ライスシャワーは息を呑んだ。
コラソンは鉄くずの上で蹲っていた。あばらの辺りを抑えた手の、指の間から真っ赤な血が流れ出ている。
「いやああぁぁぁぁっ!!」
ライスシャワーは甲高い悲鳴を上げてコラソンに駆け寄った。
「お兄さま!お兄さまぁ!!」
すっかりパニックに陥ったライスシャワーは泣きながら狼狽えることしかできない。
傷が深いのかどうかも分からない。ただ分かるのは血が沢山出ていること。もしかしたらコラソンが死んでしまうのではないかという不安で頭の中を埋め尽くされる。
「どうしよう、どうしよう……!だ、誰かっ……!」
「待て、ライス……!!」
誰か人を呼びに行こうとしたライスシャワーを、コラソンは腕を掴んで引き止めた。
そのまま彼女を引き寄せると、会話を聞かれないようナギナギの能力を使う。
≫68 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:04:34
「で、でも、お兄さま!血がいっぱい……!」
「このくらいは平気だ。別にどうってことはねェ」
言ってコラソンは、口の端から溢れた血を袖で拭った。
ライスシャワーは止め処なく涙を流しながら、コラソンを見上げる。
「ひょっとして……ローくんが、やったの……?」
「…………」
コラソンは答えなかった。
咄嗟に否定の言葉が出なかったのは肯定しているのと変わらない。
「ライス、聞いてくれ」
コラソンは泣いているライスシャワーと目線を合わせながら語りかけた。
「こんなのちっとも痛くねェ……!痛いのはあいつの……ローの方だ……!」
「ローくんが……?」
コラソンは頷く。
「故郷を滅ぼされて……家族も友達も亡くして……自分ももう死ぬからなんてよ……あんまりじゃねェか……!!」
ライスシャワーは目を見開いた。
見上げたコラソンは泣いていた。ライスシャワーに負けないくらい、双眸から涙を溢れさせて。
……昨晩の話を思い出す。御伽の国のようだと思っていたフレバンスの真実。そして悲劇。ローはその地獄を身を持って経験してきた。
≫69 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:05:09
「それにな……。おれは今まで、あいつを追い出す為に散々意地悪をしてきたろ?これでおあいこだ」
「お兄さま……」
「だから、ライス。どうかローのことを憎んだりしないでくれ」
に゛っこりと浮かべられた、いつもの優しい笑み。
ライスシャワーはしゃくりあげ、鼻を啜り、頷いた。
「……この事は秘密にしてくれ。誰にも言っちゃダメだぞ」
「ぐすっ……。うん。ライス、秘密守れる、よ……」
「ありがとう、ライス」
コラソンは傷を押さえていない方の手でライスシャワーの頭を撫でた。
――そして、その日の夜。ローの正式なファミリー入りが決定した。
≫70 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:05:46
コラソンの暖かくて大きな身体に包まれながら、ライスシャワーは考えていた。
家族を失う辛さはライスシャワーも知っている。フレバンスの真実を知った時、ローが体験したであろう地獄を想像した時、どうしようもなく悲しくなった。
一方でローがコラソンを傷つけたと知った時、どうして、なんでと責めるような気持ちも生まれていた。
こんな思いをしたのは初めてで、なんだかモヤモヤして眠れない。
……それでも。
(……ライスは……。お父さまとお母さまがいなくなって……お兄さまと会うまで……ずっと苦しかった……)
思い出すだけで嫌な気持ちになる言葉をたくさんぶつけられた。何もかもお前が悪いのだと激昂された。耳や尻尾を引っ張られたり、棒で叩かれたこともあった。
救いの手を差し伸べてくれたのは"お兄さま"――コラソンだけだった。
(ローくんも苦しかったんだよね……)
……いや、違うと思い直す。
ローは今だって苦しんでいる。治る見込みのない病魔が少しずつ、確実にその身体を蝕みつつある。
近い内に必ず訪れる"死"を、ずっと感じながら……。
(……お兄さま)
(ライス、まだまだ全然だめだめだけど……お兄さまみたいに上手にできないかもしれないけど…………)
(……ライス、ローくんの為に何かしてあげたい……!)
ライスシャワーはひとり、小さな決意を固めた。
≫71 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:06:52
4.
ローが正式にドンキホーテ海賊団の一員となって数日。
ローの近くにはいつもうっとおしい足音があった。どこに行くにもついてきて、振り向けばそこに奴がいる。
「……おい」
「……!な、何?」
「何?じゃねェよ!いつまでついてくる気だ!?」
振り向いて怒鳴ると、背後の小さな影……ライスシャワーはビクリとその身を竦ませた。
スパイダーマイルズにやってきた初日、コラソンに突き落とされたローの身を案じた少女。
頭からは細長い耳が、臀部からはふさふさの尻尾が生えている。どうも彼女はウマムスメ族と呼ばれる種族らしい。言われてみれば耳も尻尾も馬のそれと同じだ。
普通の人間と比べて力が強い種族らしいが、ローは今の所、彼女の強い部分なんて少しも見たことがない。それどころかあのコラソンなんかを"お兄さま"なんて呼んで甘えてばかりの鈍臭い泣き虫だ。
今だってローに怒鳴られたくらいでびくびくしている。こんな甘ったれが、コラソンに気に入られているというだけでここにいることを許されているなんて。そう思うと無性に腹が立った。
「あ……あのっ!」
ところが、今日は珍しく引き下がらなかった。
いつもは八の字に下がった眉をキリリと引き締め、目を逸らすことなくローを見つめ返す。想定外の態度にローは少したじろいだ。
「ライスね、決めたの」
「な……何がだよ……」
「ライスの方がおねえさんだから、ライスがローくんのこと守るって!」
「………………はあァ!!?」
そうして放たれた言葉に、ローは思わず声を上げた。
≫72 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:07:27
「だ……だから、ライスはローくんについてくついてく!」
ふざけてるのかと思いきや目の前の少女の表情は真剣そのもの。困惑せずにはいられないが、それを悟られないように言い返した。
「な……何言ってんだ!大体、おねえさんって……お前いくつだよ!」
「十一歳だよ」
「ひとつしか変わらねェじゃねーか!何がおねえさんだ!」
「で、でも、ライスの方がおねえさんだもん……!」
「チビのくせに歳上ぶるなよ!」
「お耳をピーンってしたら、ライスの方がおっきいよ!」
「うるせェ!!」
何がおねえさんだ。何が守るだ。コラソンがいないと何もできない甘ったれのくせに。
けれど、ついてくるなと怒鳴っても、睨みつけても、ライスシャワーはローについていくのをやめなかった。
ドンキホーテ海賊団に所属する子供達は、幹部達からそれぞれ様々な戦闘技術の手解きを受ける。
ディアマンテからは剣術を。ラオGからは体術を。
そして今はグラディウスから砲術の訓練を受けている最中だ。人間に見立てた紙を的に、子供の手には大きい拳銃を握って狙う。
「ロー。肘は伸ばしきらずに少し曲げろと教えた筈だ」
グラディウスの足が背中を小突く。
言われた通りに姿勢を直し、発砲。パァンと乾いた音と共に、紙のターゲットに穴が開く。中心を大きく逸れて。人体で言うなら脇腹の辺りか。真ん中を狙ったつもりだったのにと内心舌打ちをする。
≫73 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:07:58
「ひゃあっ!?」
その真横で発砲音と一緒に間抜けな声が上がった。
声の主はライスシャワーだ。銃口から白煙を燻らせる拳銃を手にひっくり返っていた。
どうやら銃声と衝撃に驚いたらしい。紙のターゲットは無傷。背後でグラディウスが盛大な溜息をついたのが聞こえる。
ローよりも半年早くこのファミリーに所属していたらしいのに、彼女は銃を持つことにすら怯えていた。
「……ライスシャワー。お前はもう何もするな。怪我をされても面倒だ」
「ご、ごめんなさい……」
呆れたようにグラディウスが言うと、ライスシャワーは今にも泣きそうな顔で下がっていった。
彼女はコラソンの"お気に入り"だ。一応はファミリーの一員であるのだから訓練には参加させるが、何かあったらコラソンから睨まれることになる。だから"面倒"なのだ。
ほら見ろ、とローは声には出さずに呟いた。
何が守るだ。武器一つまともに持てないくせに。一応ベビー5やバッファローのような能力者ではあるらしいが、この調子だと能力をまともに使いこなせているのかも怪しいものだ。
耳をしょげさせて座り込むライスシャワーを、ベビー5とバッファローがクスクスと笑う。
「やーい、怒られた」
「怒られただすやーん」
その光景を見ていると、なんだか少し苛立った。無抵抗で嘲笑を受けるライスシャワーに対してか、彼女を笑うベビー5とバッファローに対してか。……それとも両方か。
いつまでボーっとしているつもりだとグラディウスに背中を蹴られ、ローはやっと我に返った。
≫74 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:10:12
ある程度訓練を受ければ、当然"海賊"としての仕事に参加することになる。
ドンキホーテ海賊団が主に行っているのは闇取引だ。"悪魔の実"を始め表では出回らないような品々を取り扱う。
商品となる品物の収集、支払いを渋る客からの取り立て、時には海賊らしく略奪。
そしてその名が知れてくれば勿論、他の海賊との抗争は避けられない。子供であろうが関係なく、硝煙と血の匂いの漂う戦場へと駆り出された。
大人達に混ざり、怒号と銃弾が飛び交う中海賊達と交戦する。
当たり前だが訓練と実戦は違う。
特にローは能力者の多いドンキホーテ海賊団の中では非能力者。それだけで戦いは不利になる。
刀を握ったローは自分よりもずっと大柄な海賊に果敢に向かっていった。子供の小さな身体はリーチが短い。刀で斬りつけるのであればそれだけ相手の懐に飛び込む必要が出てくる。
刀を振り上げたところで、大きな腕があっさりとローを取り押さえた。がむしゃらに振り回した刃はかすり傷にしかならず、首を圧迫する手から逃れることができない。呼吸すらままならず、息苦しさに藻掻くばかり。
「やああぁぁぁーーーーっ!!」
視界がぼやける中、聞こえてきたのは少女の高い声。瞬間、ローの首は圧迫感から開放された。
後方にいた筈のライスシャワーが、ローを押さえつけていた海賊に突進したのだ。子供とはいえウマムスメ族渾身の力。そこに能力が上乗せされ、彼女よりもずっと大きな海賊の身体が転がる。
「――ローくん!」
酸素を取り込んで咳き込むローの元へ、ライスシャワーは駆け寄る。
しかし、そのすぐ背後には即座に体制を立て直した海賊が迫っていた。
危ない――と声を出そうとした時にはもう、ローの周囲の景色は変わっていた。
ローとライスシャワーは、一瞬にして先程の海賊から優に十数メートルは離れた地点に移動していた。
一体何が起こったのか分からなかった。ただ一つ分かるのは、これがライスシャワーの持つ"能力"だということだ。
……それから結局、ドフラミンゴを始めとした大人達の助けが入ってロー達は事なきを得た。
まだまだ力が足りないと改めて実感させられた。さっきだって、ライスシャワーが咄嗟に助けに入っていなければどうなっていたことか。
船まで戻る途中。ローはライスシャワーを横目で見た。
≫75 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:10:44
なんだかやけに疲れた様子だ。息を切らしていて、顔色もあまり優れない。足元もなんだか覚束なくて危なっかしい。
「……おい、チビ」
「…………はぁ……はぁ……」
「おいってば!」
「え……?ご、ごめんね、ローくん。何かな……?」
歩くので精一杯なのか。か細い声がいつも以上に弱々しい。
「どうしたんだよ。なんか変だぞ。顔色悪ィし。もしかして能力使った影響か?」
「う、うん……。いつもより早く走れるようになるけど、使うと疲れちゃうの」
「……なんだそれ」
たった二回使っただけで疲労困憊状態になってしまうなんてあまりにも不便すぎる。
「そんなんでよくおれのこと助けようと思ったな」
「だって……約束したから。ライスがローくんのこと、守るって……」
「…………バカじゃねェのか」
≫76 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:11:14
吐き捨てるようにそう言った。
武器もまともに持てないくせに。戦うのが怖いくせに。泣き虫の甘ったれのくせに。
――それなのにあんな、ロー本人が突っぱねた口約束を律儀に守ったというのか。
「あっ……!」
「……!」
何かに躓いたのか。先程からふらついていたライスシャワーの身体が大きく傾いた。
咄嗟に伸ばしたローの手は虚しく空を切った。ライスシャワーが倒れるよりも早く、コラソンが彼女を抱き上げたのだ。
「お、お兄さま……ごめんなさい……」
申し訳無さそうにするライスシャワーの頭をコラソンの大きな手が撫でる。
……ローは何も掴めなかった自分の手を見下ろして、ぎゅっと強く握り締めた。
≫77 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:11:46
5.
どうしようもない悪夢が目の前に広がっていた。
逃げ惑う人々。飛び交う悲鳴。何かが焼ける音とにおい。
あんなにも美しかったフレバンスは嘘のように地獄と化した。
――最後まで病に侵された人々の治療を諦めなかった両親は殺された。
――慈悲を信じたシスターは殺された。
――絶対に生きると希望を抱いた学友達は殺された。
――病に苦しんでいた妹は、病院に火を放たれて殺された。
故郷は世界に見捨てられ、世界に滅ぼされたのだ。
涙が枯れるほど泣いた。喉が枯れるほど叫んだ。この地獄には慈悲も、希望もなかった――
――……くん…………!
……声が聞こえる。この悪夢にはなかった筈の声が。
――……ロー……くん……!!
涙と鼻水に塗れた顔を上げ、空を見た。
そして――
≫78 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:12:21
「――ローくん!!」
「……ッ!!」
殆ど反射的にローが跳ね起きると、「きゃっ」と小さな悲鳴が上がった。
咄嗟に周囲を見回す。目の前にはテーブルと本の山。広げたノートに書かれた文字は途中からミミズがのたくったような意味のない線になっていた。
どうやら、勉強中に寝落ちたらしい。最近は少しばかり根を詰めていたからその影響か。
「……で、お前は何してんだ」
何故か書斎にいたライスシャワーを横目で見ると、彼女は気まずそうに俯いた。
ここはドフラミンゴに見込まれたローに特別に宛てがわれた勉強用の書斎だ。普段はドフラミンゴかローくらいしか立ち入らない。
ライスシャワーはいつもみたいにえっと、えっと、と繰り返した。
「その……ローくん、最近いっぱいお勉強がんばってるから疲れてるんじゃないかって思って……。休憩できるようにお茶を淹れてきたの。そしたら、うなされてたから……」
見てみると、椅子の上にトレーと湯気の立つカップが置かれていた。
要するにいつものお節介焼きだ。
よりによってこいつにうなされているところを見られるなんてと、悔しいような恥ずかしいような気持ちになる。
「もういいから出てけよ」
そっけなく吐き捨てる。
今はそれよりもあの悪夢が鮮明に焼き付いて離れない。机の上に置いた拳を、白くなるくらいキツく握りしめる。
……その拳が暖かなものに包まれた。
「な……っ!?」
ライスシャワーの小さな両手が、震えるローの拳を包み込んでいた。
≫80 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:13:00
「な、何してんだよ……!」
「……昔ね。怖い夢を見たとき、お母さまがこんな風に手を握ってくれたの。そしたらホッとして……怖い気持ちがなくなったから……」
ライスシャワーの表情は穏やかで、とても優しいものだった。
手を跳ね除けてやろうと思った。なのに、できないでいた。久しく感じていなかった温もりをどうしても手放せなかった。
ややあって、ライスシャワーの手の上にもう片方のローの手が置かれた。
「ローくん……?」
「…………うう……」
まるで縋るように手を握り返す。
「う゛う゛う゛ぅぅぅぅ………」
泣き声は押し殺せても、両頬を伝い止め処なく溢れる涙は止まらない。
ライスシャワーは何も言わなかった。ただ、手を握ったままローの傍にい続けた。
……どれくらいそうしていただろうか。少し落ち着いたところで、ローは握り返していたライスシャワーの手をそっと離した。袖でぐしぐしと乱暴に涙を拭い、鼻を啜る。
「……おい。アイス奢ってやるから誰にも言うなよ」
「え……?」
きょとんとするライスシャワーに、だから、とローは続けた。
「おれが泣いてたの、誰にも言うなよ」
ライスシャワーは目をパチクリさせていたが、やっとローの言わんとしていることを理解したらしい。
彼女は小さく笑って言った。
≫81 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:13:43
「ローくん。ライスね、そんなのいらないよ」
「はぁ!?じゃ、じゃあ……」
じゃあ何を要求する気なんだ。そう言おうとしたローを遮るようにライスシャワーは微笑んだ。
「アイスなんかなくても、ローくんが話してほしくないことは言わないよ。ライス、秘密は守るよ」
「……!!」
ローは目を見張った。
忘れかけていた様々なものが一気にこみ上げてきて、少しでも油断をすればこぼれてしまいそうだった。
俯いて帽子の鍔を引っ張って下げて、ローはぶっきらぼうに言った。
「……おい」
「なぁに?」
「…………ありがとう、ライス」
「……!!ローくん、今ライスの名前……!」
なんだか一気に顔が熱くなって、ローは誤魔化すように大声を出した。
「あーうるせェ!もういいからさっさと出てけ!勉強の邪魔だ!」
「うん……!お勉強、がんばってね!ライス、応援してるから……!」
「言われるまでもねェよ!!」
そう叫んだローの表情がいつもより穏やかなものになっていたのは、当の本人も気づいていなかった。
「………………」
書斎の外。入口付近の壁にもたれかかったドフラミンゴは、眉をひそめて彼らの会話を聞いていた。
≫82 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:14:17
6.
海賊になると怪我を負う機会も増える。
何も他の海賊や海軍と交戦した時ばかりではない。ラオGやディアマンテとの訓練で、ローや他の子供達はいつも徹底的にボコボコにされていた。ドフラミンゴに目をかけられているローは特に念入りにだ。
ジョーラによる手当(包帯のちょうちょ結びが気に入らない)が終わると、ローは何気なくライスシャワーの方を見た。
ローと比べると圧倒的に甘めの指導を受ける彼女だが、最近は以前よりも訓練に対し積極的になってきたように見える。鈍臭いのは相変わらずだが。
どうやら足に怪我を負ったようで、ひとり包帯を巻いていた。
……もた……もた……。
……もた……もた……。
……もた……もた……。
「いや包帯巻くのヘタクソかっ!!」
「ひゃっ!?」
あまりにももたついた手つきと一ミリも合っていない巻き方に思わず叫んだ。
ライスシャワーは驚いて包帯を取り落としてしまう。転がった包帯は白いラインを引きながらどこまでも転がっていく。慌てて回収しようとしたところで、包帯を踏んづけて転んだ。奇跡のようなドジっぷりだった。
「あはは!ライス、コラさんみたーい!」
ベビー5が噴き出した。ローは内心同意した。
壁にぶつかって止まった包帯の束を回収し、巻きながらライスシャワーの元へ。どうやら顔からいったらしく、鼻の辺りを押さえていた。
「ライス、お前ほんと鈍臭ェな」
「うう……ご、ごめんね、ローくん……」
「いいから座れよ」
床に座らせてからめちゃくちゃな巻き方をされた包帯を一旦解いていく。それから慣れた手付きで螺旋状に巻き直していった。
ライスシャワーは感嘆の息を洩らし、その様子をじっと見つめていた。
≫83 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:14:52
「ほらよ」
「ローくん、すごい!」
「おれは医者の息子だ。このくらいできて当たり前なんだよ」
「でも、すごいよ!ライス、こんなに綺麗に包帯巻けないもん……!」
ローは少し照れくさそうに頬をかいた。素直な称賛の言葉というのは中々悪い気がしない。
すると綺麗に巻き直された包帯を見つめていたライスシャワーは顔を上げ、言い放った。
「ローくん、ライスに手当のやり方を教えて!」
「はぁっ!?なんでおれがそんなことしなきゃならねェんだよ!」
「おねがい!ライス、一人でも手当できるようになりたいの……!」
うるさい。面倒だ。おれにだってやることがあるんだよ。
浮かんだ拒否の言葉を吐き出そうとするも、つぶらな瞳にじっと見つめられて詰まった。
……ローは最近気づいたことがある。このライスシャワーという少女、気が弱くて大人しいと思っていたが意外としつこくて粘り強い。
ベビー5はひと睨みすればしくしく泣きながら引き下がるというのに、ライスシャワーは睨まれようが怒鳴られようが小突かれようがローについていくのをやめなかったのだ。
つまり。ここで突っぱねてまたしつこく付き纏われるよりは一応は引き受けてやった方がまだマシだろう。
「し……仕方ねェな。暇な時だけだぞ」
「……!ありがとう、ローくん!」
そう、それだけだ。あの目に見つめられて断るのは気が引けるとか、そういうのはない。決して。
≫84 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:15:27
それから、ローは時間を見つけてはライスシャワーに応急処置の方法を指南した。
「出血してる時はまず止血が先だ。こんな風に傷口を押さえて……」
「う、うん」
「だから、キツく締めすぎだって。血流が悪くなるだろ」
「ご、ごめんなさいっ」
「それだと関節が曲がらなくなる。だからこうやって交差させるんだ」
「えっと……こ、こう?」
自分から申し出ただけあって、ライスシャワーの態度は至って真剣だった。多少のぎこちなさは慣れないが故のもので、回数を重ねていけば改善されていった。
それにこれはローとライスシャワー。二人だけの応急処置講座だ。コラソンだってここにはついてこない。
素直で、物分かりがよくて、真面目で。そんな彼女につきっきりでものを教えるというのは、存外いい気分だった。
それから数週間ほど経った。
ライスシャワーは基本的な応急処置をものにしたらしい。ベビー5が包帯を巻かれた脚を見せてきた。
「ねえ見て、これライスがやってくれたの。随分上手になったよね」
「当然だろ。おれが教えたんだ」
手当のやり方を教える前の粗末さを思い出しながら、ローは得意げになって言う。
するとベビー5はニヤニヤとローを見つめた。
「ふーん」
「な、なんだよ……」
「意外。ローってライスのこと嫌いなんだと思ってた」
「べ、別に嫌いなんて言ってねェだろ」
≫85 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:16:04
確かに、最初は正直彼女に対して良い感情は抱いていなかった。
"コラソンのお気に入り"という立場に胡座をかいた、コラソンがいないと何もできない甘ったれだと思っていた。
けれど。彼女はローの危機を救ってくれた。悪夢に苦しむローの手を握ってくれた。それに、思っていたよりもずっと頑張り屋で……。
「――じゃあ好きなんだ!」
「ハァ!?」
ベビー5から飛び出した突拍子もない言葉に、ローは思わず声を上げた。
「ローはライスのことが好きー!」
「おいっ!別に好きでもねェよ!勝手なこと言うなっ!!」
きゃあきゃあと笑いながらはしゃぐベビー5を黙らせようと追いかける。
そのすぐ後のことだった。
何かが倒れたような大きな音が聞こえてきた。それとほぼ同時にライスシャワーの叫び声。
それだけでもう何が起こったのか想像がつく。覗いてみるとそこにあったのは案の定、このドンキホーテ海賊団では日常茶飯事となっている光景だ。ソファに座ったコラソンが何故かソファごとひっくり返り、それにライスシャワーが駆け寄っている。
陰に隠れながら、ベビー5とたまたま通りがかったバッファローが堪えるように笑った。
「お兄さま!だ、大丈夫……?」
ひっくり返ったまま、コラソンは大丈夫だとでも言うようにライスシャワーの頭を撫でる。
しかしライスシャワーはその手を取って、小さく悲鳴を上げた。
「た、大変!怪我してる!」
どこかに引っ掛けたのだろうか。コラソンの手の甲に切り傷ができており、血を滲ませていた。
どう見ても軽傷だ。騒ぐ程の怪我ではない。しかし大好きなお兄さまの怪我となれば、重かろうが軽かろうがライスシャワーにとっては一大事だ。
≫86 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:16:39
「ちょっと待ってて。ライスが手当、するね……!」
言うが早いが、ライスシャワーはどこかに駆けていってすぐに救急箱を持って戻ってきた。
その間にソファを起こして座り直したコラソンは、救急箱を抱えて見上げてくるライスシャワーを数秒見つめ、やがて手を差し出した。
ライスシャワーはガーゼを取り出し、丁寧に止血をして、手の動きを阻害しないように綺麗に包帯を巻いていく。……ローに教えてもらった通りに。
手当の終わった手の甲をコラソンはじっと見つめた。サングラスをかけているので表情は読めないが、どこか感心している風にも見えなくもない。
「手当のやり方、教えてもらったの。これからはお兄さまが怪我したら、ライスが手当するね」
そう言ってすぐ、ライスシャワーはハッとして、何故か一人で慌て始めた。
「……あっ!ち、違うの!別にお兄さまに怪我をしてほしいわけじゃなくて、えっと、その……!」
あの言い方ではまるで自分がコラソンの怪我を望んでいるように思われてしまうと思ったのか。
オロオロするライスシャワーを、コラソンは包帯の巻かれた手で優しく撫でるのだった。
(………あいつの為かよ!!)
一連の流れを見ていたローは、何故かどうしようもなく苛立ちがこみ上げていた。
別にライスシャワーが教わった技術や知識をどう使おうと、何に使おうと、それは彼女の自由だ。しかしよりによってコラソンの為に……と思うと腹が立って仕方がない。
腹が立つと言えばさっきからニヤニヤとローを見つめるベビー5とバッファローもそうだ。
「ローがフラれたー!」
「フラれただすやん!」
「うるせェっ!フラれてねェっ!!別に好きじゃねェって言ってんだろ!!」
ローは怒りに任せて叫びながら、一目散に逃げていった二人を追いかけた。
≫87 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:17:17
7.
ライスシャワーがドンキホーテ海賊団にやってきて、もう随分経った。
最近ではもうすっかりコラソン無しでもあちこち動き回れるようになって、ロー達とも仲良くやれているようだ。成長が嬉しいような、少し寂しいような、複雑な気持ちだ。
もしかしたらこれが親の気持ちというやつなのだろうか。おれまだ二十代なのになぁ。ルドルフ中将もこんな気持ちだったのかなぁ。
今夜もコラソンの寝室にやってきて、ベッドの上にちょこんと腰掛けるライスシャワーがいつか「お兄さま。たばこくさいから近寄らないで」なんて言い出したらどうしよう。そんなことをぼんやり考える。
「……ライス。今日は寝る前に見せたいものがあるんだが、いいか?」
「見せたい……もの?」
ナギナギの能力は既に発動済みだ。
コラソンは頷き、シンプルな小箱を取り出した。覗き込むライスシャワーの前で蓋を開ける。
ライスシャワーは目を見開き、息を呑んだ。
箱の中身は鮮やかな青色をしたバラの髪飾りだった。
「綺麗……!」
まるで絵本の中に出てきたかのような青いバラに、ライスシャワーは目を輝かせた。
「今日立ち寄った街で見つけてな。ライスにきっと似合うと思ったんだ」
「ら、ライスに……?」
コラソンの言葉に、ライスシャワーはどこか困ったように眉尻を下げた。
「こんなにすてきなもの……ほんとにライスなんかに似合うかな……」
「似合うさ。ほら」
そう言うとコラソンは髪飾りをライスシャワーの髪につけてやった。手鏡を渡し、どうだ?と笑いかける。
≫88 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:17:48
「見ろ。こんなによく似合ってる」
「……こんなにすてきな髪飾り、ライスなんかがもらってもいいの?」
「当たり前じゃねェか。ライスにつけてほしかったんだ」
するとライスシャワーはやっと口元を緩ませた。白い頬がほんのりとバラ色に染まる。
コラソンはそれが嬉しかった。この顔が見たかったのだ。ライスシャワーの隣に座り、語りかける。
「……ライス。お前は本当に優しい子だ。今まで散々酷いことを言われてきただろうに、そいつらを恨むどころか心配してた」
最初に出会った夜を思い出す。
酷い目に遭っても他人を責めず、自分を責めた。誰かを不幸にしない為に、自分が孤独になることを選んだ。
「ファミリーに来てからもそうだ。大変なこと、危険なこと。たくさんあっただろうに……お前は決して優しさを失わなかった」
つらくても苦しくても、自分以外の誰かの為になることを願うことができる。そんな優しい女の子。
ドンキホーテファミリーという過酷な状況に身を置いて尚、奇跡のような優しさがくすむことはなかった。
「なぁ、ライス。お前はおれを"お兄さま"だって言ってくれたが……それなら、お前はおれの"青いバラ"だ」
「青い、バラ……?ライスが……?」
――青年に声をかけられ続けた青いバラは、やがて元気を取り戻し、立派な花を咲かせました。
――美しく咲いた青いバラは、青年のおうちの窓辺に飾られました。
「ああ。お前がそうやって笑っていてくれるだけで、おれは幸せな気持ちになれるんだ。まさしく、"しあわせの青いバラ"じゃねェか」
――「ごらん、なんて素敵なバラだろう!」道行く人々は青いバラを見るたびに笑顔になりました。
≫89 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:18:25
「ライス、が……」
ライスシャワーの目がみるみる潤んでいき、目尻に涙が浮かんだ。
「――――ッ!!ら、ライス……ちゃんと咲けるかな……?絵本の青いバラみたいに……」
「ああ、勿論だ」
少しの迷いもない言葉に、ライスシャワーはとうとう耐えきれずに涙をこぼした。
「ぐすっ……!ありがとう……ありがとう、お兄さま……!」
「ああ――ライス」
コラソンはライスシャワーの背中をさすり、そっと抱きしめて――に゛っこりと笑った。
ライスシャワーはそれを見て、釣られて笑顔になった。
「――愛してるぜ」
「うん……うん……!ライスも、お兄さまが大好き……!!」
――こうして青いバラは、世界で一番大好きな青年の隣で、いつまでもいつまでも咲き誇り、人々に幸せを与え続けたのです。
≫90 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:18:59
翌日。
ライスシャワーが見覚えのないアクセサリーをつけているのを、ベビー5が目ざとく気づいた。
「わぁ、綺麗な髪飾り!ライス、それどうしたの?昨日はつけてなかったよね?」
「う、うん。お兄さまがくれたの」
「えーっ、いいなぁライスばっかり」
そう言ってベビー5は頬を膨らませる。
そして何を思ったのか、ローの顔を覗き込んで言った。
「ねえ!ローはどう思う?」
いきなり話を振られ、ローは目を瞬かせた。
ほとんど反射的に青いバラの髪飾りをつけたライスシャワーに視線を向ける。薄紫のつぶらな瞳がローをじっと見つめ返した。
愛らしい顔立ちだとは思う。幼いながらも整った目鼻立ちをしている。最初に会った時だって思わず目を奪われた。
小さな唇から洩れ出る鈴を転がすような声や、感情によってひょこひょこ動く耳や尻尾も中々可愛らしくて――
≫91 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:19:33
(――いや、何考えてんだおれは!?)
妙な考えに取り憑かれてしまった頭をぶんぶんと振って、言い放った。
「全っ然、似合ってねェ!」
そもそもそれがコラソンの贈り物なのが気に入らない。
今度はライスシャワーが目をパチクリさせた。いつもは気弱な瞳が珍しくみるみる釣り上がっていく。
「ろ……ローくんの意地悪!お兄さまは似合ってるって言ってくれたもん……!」
ライスシャワーは頬を膨れさせると、ぷりぷり怒ってどこかへ行ってしまった。おそらく行き先は"お兄さま"のところだろうが。
ベビー5がまたしつこく「やーい、フラれた〜」とニヤニヤしてきたので、無言でギロリと睨みつけた。
ベビー5は泣いた。
≫92 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:20:18
8.
ラオGの体術。ディアマンテの剣術。グラディウスの砲術。厳しい指導で身につけた技術もさまになってきて、ローは戦いにも少しずつ慣れてきた。
ライスシャワーは相変わらず戦うのは苦手なようだが、ウマムスメ族の素早い走りで敵を撹乱したり、能力を使って咄嗟のサポートを行ったりしている。
今日だってそうだ。咄嗟に斬られそうになったローを抱え、射程外へと高速移動。ウマムスメ族としての力は順調に育ってきているようで、ローくらいの子供であれば片腕で抱えられるらしい。……少し複雑だった。
「きゃあッ!」
聞こえてきたのはベビー5の悲鳴だ。ローとライスシャワーがはなれたところで脚を刃物に変えながら海賊に向かっていったようだが、腕力で弾き飛ばされて尻もちをついていた。
そこを見逃すほど敵は甘くない。鈍く光る大ぶりの曲刀がベビー5を狙う。
「ごめんね、ローくんっ」
言うが早いがライスシャワーはローを抱えたまま能力を使用した。一瞬でベビー5のところまでたどり着き、空いた方の腕で彼女を抱えて離れた場所へ。
移動を終えた瞬間。ローとベビー5の身体は宙へと投げ出された。砂利の上をゴロゴロと転がる。何事かと思えばライスシャワーが地面の上に倒れていて、何かに足をとられて転んだのだろうか。
「ちょっと、ライス!痛いじゃない!」
「助かっただけマシだと思え!!」
ライスシャワーの代わりとばかりにローが叫んだ。
「ご、ごめんね……」
肩で息をしながら、ライスシャワーがよろよろと立ち上がる。ローとベビー5を助けるのに連続で能力を使ったせいだろうか。かなり疲れている様子だ。
「おい、ライス……」
「ライス、大丈夫だから……頑張れるから……」
ぐっ、と拳を握り締めるライスシャワー。その目に以前のような気の弱さはない。
≫93 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:20:51
「……ライス。できるのよね?」
「うん」
「じゃあ、このまま続行でいきましょ。ライスの能力であいつに奇襲を仕掛けるの。私のこと、抱えてね」
「分かった。ライス、頑張るね」
「おい、何勝手に……」
「だって二人も抱えたらライスに負担がかかっちゃうでしょ。それにローより私の方が軽いもん」
ベビー5の言葉は正しい。ライスシャワーの能力が使う度に体力を消耗する特性を持つ以上、彼女への負担は少ないに越したことはない。それに、身体をあらゆる武器に変化させることのできるブキブキならライスシャワーの高速移動と合わせて奇襲に使いやすい筈だ。
ローはただ、押し黙るしかなかった。
ライスシャワーがベビー5を抱えて戦場へと戻っていく。
結果を言うならば――ライスシャワーの能力で背後から近づいたベビー5は奇襲に成功し、無事勝利を収めた。
複数対一人とはいえ子供達だけで海賊を倒せるようになったとなれば、ファミリーの大人達はどこか満足げであった。
仕留めたのはベビー5だったが、作戦の要となったのはライスシャワーだ。どこか彼女を見くびっていたグラディウスなんかは少しは彼女を見直すだろう。そう思ってライスシャワーを振り返った。
「…………」
ライスシャワーの身体がぐらりと傾いて、倒れた。
また転んだのかと思ったが、どこか様子がおかしい。起き上がろうとしていない。
「ヒュー……ヒュー……」
「ライス!!」
妙な呼吸音が聞こえてきて、ローは慌ててライスシャワーに駆け寄った。
顔は血の気が引いて真っ白で、呼吸が激しい。過呼吸を引き起こしていると、ローは気づいた。
思えば――ライスシャワーが能力をあんなに何度も使ったところは今まで見たことがない。元々数回使うだけで疲労状態に陥っていた。短いスパンで何度も使ったせいで思った以上に身体に負担がかかっていたのだ。
≫94 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:21:32
「ライス、落ち向け!ゆっくり息を吐くんだ、短い間隔でゆっくり……」
うつ伏せに倒れたライスシャワーの手を痛いほど握り締める。大丈夫、大丈夫だからと、半ば自分に言い聞かせるように洩らす。
ゆっくり、落ち着いて、ゆっくり……。そう語りかけて数分。ライスシャワーの呼吸は徐々に落ち着いていき、正常なそれへと戻っていった。ローは安堵の息を吐く。
直後。ローと倒れたライスシャワーを大きな影が覆った。
振り返ると、そこにいたのはコラソンだった。ローが何か言うよりも早く倒れたライスシャワーを大切そうに抱え上げ、船へと戻っていく。
まるで横取りされたような気になって、ローは小さく悪態をついた。
船に戻ってから、ローは子供達の寝室にやってきていた。案の定、ライスシャワーはそこのベッドの一つに寝かされていた。
傍にコラソンの姿がないのは確認済みだ。船に戻ってすぐ、ドフラミンゴに呼び出されていたのを見た。
周囲を見回し誰もいないのを確認し、ライスシャワーが寝かされたベッドまで向かう。
顔色は先程よりは随分マシになっていた。ローが近づいたことに気づいたのか。長い耳がピクリと動き、薄っすらと目が開けられる。
「……ロー……くん……?」
「……大丈夫かよ」
ぶっきらぼうな聞き方になってしまって、自分で自分が嫌になる。
ローがそんな様子なのも気にせずに、ライスシャワーは弱々しくも笑顔を浮かべた。
「うん……。ちょっと疲れちゃって……迷惑かけてごめんなさい……」
「別に迷惑なんて言ってないだろ」
ちょっとどころの話じゃない。能力の連続使用による身体への負担は相当なものだった筈だ。
あの時無理にでも止めておけばと後悔の念が芽生える。
≫95 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:22:06
「やっぱり……ライス、まだまだだめな子だ……」
「……ダメじゃねェよ」
「えっ……?」
「……お前は、ダメなんかじゃねェよ……」
だって、ローは間近で見ていた。
転んで泥だらけになっても立ち上がった彼女の姿を。いつものような気弱さではなく、強い光を灯した彼女の目を。
ただ、それらを直接口にするのはなんだか気恥ずかしくて、うまく言葉が出てこない。そこはかとなく気まずい沈黙に包まれる。
ややあって、ローはライスシャワーの毛布の中に手を差し入れた。探り出した小さな手を握る。
「ローくん……?」
「……こうするとホッとするんだろ」
「……!」
ライスシャワーは目を丸くしてローを見上げた。驚いた顔はやがて綻んで、毛布の中で手を握り返した。
「ありがとう……ローくん」
「……ん」
(お兄さま……。ローくんは時々意地悪なところもあるけど……でも、とっても優しい子だよ……)
≫96 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:22:43
9.
ローがドンキホーテ海賊団にやってきて2年ほど経った。
珀鉛病の治療の手立ては見つからない。ドフラミンゴが言っていたような悪魔の実は、未だ流れてこなかった。
皮膚の白い部分は既に首や顔といった部分にも及んでいて、それは病魔がローの身体を確実に蝕んでいることを如実に示していた。
補給に立ち寄った港町にて。ローは白くなってきた手を見つめながら呟いた。
「あと一年持つかな……。おれの計算より死期早ェかも」
「そんな……!」
その言葉にライスシャワーは目を潤ませる。ローはどこかばつが悪そうにしながらも、そっけなく言った。
「どうせ死ぬのは一緒だ」
「で、でもっ、ライスはローくんが死んじゃったらやだよ……!」
「……そんなこと言ったって仕方ねェだろ」
悲しげな視線から逃げるようにそっぽを向いた。死ぬ覚悟はとっくにしていた筈なのに、彼女を見ていると死ぬのが怖くなってきそうだった。
一方で、ベビー5とバッファローはローの死期にはそこまで関心はないらしい。良くも悪くもドライだ。
「それより本名あるなら教えろだすやん!!"二年前のこと"若にチクるぞ!!」
バッファローの言葉に、ローはちらりとライスシャワーへ視線向けた。
二年前。ローはコラソンを殺そうとして襲いかかり、背後からナイフで刺した。結果は失敗に終わってしまったが。その現場をバッファローに目撃されてしまったのだ。
当時はバッファローをアイスで買収し、何故かコラソン自身がローに刺されたことをドフラミンゴに申告しなかった為にローは粛清されずに済んだ。
……コラソンを心から慕うこの少女に、コラソンを殺そうとしたことを知られるのはなんとなく嫌だった。
ややあって、ローは口を開いた。
「トラファルガー・"D"・ワーテル・ロー。――本当は人に教えちゃいけねェ名前なんだ……!! 」
≫97 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:23:16
ライスシャワーは目をパチクリとさせた。
"D"は隠し名、"ワーテル"は忌み名であることを説明したが、ベビー5とバッファローは一瞬にして興味を無くしていた。自分から聞いておいて。ローは二人をギロリと睨んだ。ベビー5は泣いた。
その直後。
「わっ!!」
「お、お兄さま!?」
一体どこから現れたのか。コラソンがローを掴み、そのままどこかへ連れ去ってしまった。
何やらコラソンがいつもより神妙な表情をしていたのが、ライスシャワーには気がかりだった。
ベビー5とバッファローが二人を追いかけようとしていたので、ライスシャワーもそれについていった。
暫く歩いたところでコラソンとローの姿を見つけた。ローの口がぱくぱくと動いているのに、ライスシャワーのウマムスメ族の聴力を持ってしても何も聞こえてこない。
コラソンが"能力"を使用していると、ライスシャワーはすぐに気づいた。
(でも、どうして?お兄さま、能力のことは秘密にしたいって言ってたのに……)
とはいえコラソンの意図が分からない以上、下手に動くことはできない。様子を伺っていると、ローが勢いよく駆け出した。コラソンがそれを追いかけて蹴飛ばそうとする。しかしローは蹴りを難なく回避し、逆に勢いを利用してコラソンをゴミ箱へと投げ込んだ。タバコの火が引火したのだろう。ゴミがコラソンごと勢いよく燃え上がる。
「おっ……お兄さまーっ!?」
ライスシャワーが半泣きで悲鳴を上げると、ローは「やべ」と小さく呟いた。
コラソンの足を生やしたゴミ箱はまだ燃え上がっている。半泣きで助けに入ろうとしたライスシャワーだったが、ベビー5に服を引っ張られた。
「ほら、ライスも行くわよ」
「で、でも……!」
「もう、ライスってばいっつもコラさんばっかり。ほんと付き合い悪いんだから。いいから、ほら!」
「あううう……!」
そのまま有無を言わさず連れて行かれ、ライスシャワーはコラソンと合流することなく出港の時間を迎えることとなったのだった。
≫98 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:23:48
10.
「コラソンとローはどこだ!?」
「一度乗ったのは確認したがいない!!」
ドンキホーテ海賊団は現在、海上にて海軍と交戦中だった。どちらのものとも分からない砲撃音と大人達の怒声が飛び交う。
そして――甲板にコラソンとローの姿はない。
苛立つディアマンテにギロリと睨みつけられ、ライスシャワーは小さく悲鳴を上げ身を竦ませた。
「ライスシャワー!!コラソンはどこへ行った!?」
「わ、わ、わかりませんっ……!ご、ごめっ、ごめんなさい……!」
目に涙を浮かべ、震える声でなんとかそう返す。ディアマンテは舌打ちした。
港に戻ってから、ライスシャワーはずっとベビー5やバッファローと一緒にいた。その間コラソンと顔を合わせていない。ローは港に戻るまでは一緒だったが、いつの間にか姿を消していたのだ。
「若……!コラソンのハンモックに」
二人を探していたらしいセニョールが一枚の紙をドフラミンゴに手渡した。
そこには――こう記されていた。
《ローの ビョーキを なおしてくる》
TO BE
CONTINUED
≫99 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 18:24:13
今回のテーマ:日常系短編集
次回はメインがあの辺なのであっさりめのボリュームになるはず
【キャラクター解説とか】
○少年ロー
今回のメイン(多分)。思春期
ライスにはコラソンを刺したことは知られていないと思ってる
ライスに対しては素直になれないが、その優しさが救いになり、同時に遠からず死ぬと分かっている身としては苦しくもあった、というイメージ
書き手の人がローライス恋愛概念寄りなのでそっち寄りの描写になってるんですが、読んだ人が受け取った物が全てなので親愛解釈でもさして問題はない
しかしねぇ…ローライスで重要なのは恋愛か親愛かではなくてどちらであっても互いが互いを大切に想っていることなのだから…
○小ライス
身長は耳を含まない場合ローより小さい。「みんなを不幸にしちゃう…!」と嘆く前章よりも、「誰かの為にがんばりたい」と願う方向でちょっぴり強くなりました。コラさんセラピーの賜物
とはいえまだ身体が出来上がってないのとスタミナがついていないせいでカリカリの能力のデメリットに振り回される形に
能力持ちとはいえ本人が戦い自体を恐れている為戦闘能力はファミリー内最底辺。幹部からの印象もあまりよくなかったり。セニョール辺りは密かに不憫に思ってるかもしれない
ベビー5とは同性同士なので仲良くやりつつも、やっぱり舐められてる感じ
○コラさん
冒頭で外部に連絡を取ってたのはこの人
ルドルフ中将とは面識があり、彼女のダジャレを面白いと思って聞いていたという裏設定があります
ライスはそもそも追い出す必要がないのでライスにだけは演技でも意地悪をしなかった。夜中に内緒のおはなしとかしてた
ライスの大好きな絵本に出てくる青バラの髪飾りを贈ったり、お前はおれの青いバラだと口説き文句から愛してるぜで締めたり。ライスの男性観壊れちゃう……
ラストはローを誘拐まがいのやり方で連れ出したり荷物まとめたりしてる内にライスと合流できず、出港が迫る中探してる時間もなくてやむを得ず置いて出た形に。ライスが単独行動平気になったのが仇になってしまったのだった
○ドフィ
ドフィは次章に向けて力を溜めている…… ▼
次章【運命の島】(予定)
≫114 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 19:44:46
ウォーターセブンの激闘から二日後、
海軍本部より馳せ参じたガープ中将がアイスバーグ宅に殴り込みを掛け、
彼に同行したコビーとの再会となったルフィとゾロ。
その輪に入れてもらえずに拗ねるヘルメッポもいた。
「仕方ないよヘルメッポさん。過去は受け入れなきゃ」
「そうそう。それに、誰か忘れてるんじゃないかな?」
ルフィがコビーから視線を離し、声の主を探していると、
海兵達の一人が制帽を脱ぎ、――――瞬く間に消えた。
「“皐月掌”!」 「“ゴムゴムの拳銃(ピストル)”!」
互いの拳がぶつかり合い、ルフィは襲撃者をハッキリと視認した。
悪戯っぽい両目に闘志を燃やし、少女のポニーテールが鮮やかに揺れる。
それも束の間、飛び込んだ少女は至近距離に近づいたルフィに拳を突き出し、
ルフィがそれを避けようと身を捩った瞬間、その姿が消えた。
「こっちだもんねぇー! “優駿脚”!」
ジャブの勢いのまま捨身となって旋回した少女が後ろ回し蹴りを放ち、
体重の乗った蹴り足に押し潰され、吹っ飛んだルフィが地に伏した。
「へへーん、まだまだ僕には勝てないね。ルフィ!」
「テイオー! お前もじいちゃんと一緒に来てたのか!?」
勝気そうな表情を浮かべたテイオーに対し、
倒れたルフィは驚愕しながらも赤く腫れた拳を振っている。
≫115 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 19:45:06
「ルフィ、アンタ海軍に何人友達がいるのよ!?」
「そ、それに、またゴムのルフィを蹴り飛ばしたぞ!」
事態が呑み込めないナミとチョッパーに対し、
サンジは一人、納得がいかないように眉を顰めていた。
「ルフィ、その娘もまさか……」
「ああ、テイオーはエースと一緒に――――」
「“愛ある拳”ってやつか!?
そんなカワイ子ちゃんに、なんて羨ましいヤツだ……」
嫉妬の炎をメラメラと燃やすサンジに対し、ナミは冷ややかな視線を送った。
一方、フクキタルは別の意味で驚愕を隠せなかった。彼女の放つ二つの技だった。
「フクキタル、同じウマ娘でしょ? アンタ知ってるの?」
「いいえ、諸島では聞いたことないですけれど、あれは“皐月掌”と“優駿脚”!」
フクキタルの扱う“菊花掌”と同じく、“皐月掌”と“優駿脚”がウマ娘武術であり、
習得そのものに高い適正が必要とは、ナミも何かの雑談で耳にしたことはあった。
この三つ全てを習得できるウマ娘は現在でも数名しかおらず、
一つだけでも使えるのがスゴい話なのだと、朧気には覚えていたが。
「あの、諸島では見かけなかった貴方が、何故その二つを使えるんですか?」
「僕は会長に教えてもらったから、諸島にいなくても使えるんだよー」
胸を張って自慢げに語るテイオーの答えは判然としないものの、
実際に二つの技でルフィを倒した以上、事実として受け止めるしかなかった。
そもそも、じゃれ合い程度でルフィを倒す気はなかったのか、
テイオーも立ち上がったルフィと会話を交わしている。
≫116 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 19:46:02
「僕と一緒に海軍行って、ガープさんに鍛え直された方が良かったんじゃない?」
「うるせー、おれは海賊王になるって決めてるんだ」
「ふーん。それより、ガープさんも言ってたけど、
僕だってエースと同い年なんだから、もっと姉貴分を敬ってもいいんだよ?」
「テイオーはチビだから姉貴分じゃなくて、おれと同格だろ」
「あー、また言った! 僕だってちょっとは大きくなってるもんねー!」
「コビーに比べたらテイオーなんか、ちっとも変わってないじゃねぇか!」
物差しに使われたコビーは半笑いを浮かべて事態を見守っており、
流し目でテイオーに睨まれると、弱ったように頭をかいた。
「ルフィにもああいう友達がいたんだな」
「なんだかちょっと新鮮よね。あれでも人の子みたいで」
小さな言い争いに興じるルフィは、仲間の為にエニエスロビーに乗り込んだ無法者というより、
年相応の少年らしさを見せていて、それがサンジとナミにとっては物珍しかった。
「ウソップと話してる時みたいだな……」
チョッパーの寂しげな呟きを、二人は聞かなかったことにした。
ガープ達が破壊したアイスバーグ邸を修繕している間に、
ナミとフクキタルはプールへと行き、他の者は海軍の動向を監視することにした。
「コビー、ヘルメッポ。あっちで話そうぜ」
「僕も僕も!」
「テイオーは来るなよ。男同士の話だぞ」
「テイオーさん、ルフィさんは後でお連れしますから」
コビーの取り成しもあって渋々引っ込んだテイオーを後に、
三人はアイスバーグ邸から離れ、テイオーも何処かへと消えていった。
≫117 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 19:46:22
「姉ちゃん姉ちゃん、泳がないのぉ!?」
「気持ちいいですよー、ナミさんも泳ぎましょうよー!」
「ちょっと黙ってチムニー、フクキタル! 今、盗聴中なんだから!」
プールで遊ぶチムニーとフクキタルの呼び掛けを斬り捨て、ナミは電伝虫に耳を預けていた。
ルフィとコビーの他愛のない会話の中には海軍の機密情報も含まれており、
それらをノートに書き留めていると、大きな水飛沫がナミへと掛かった。
「すっごーい、大きなプールだー!」
「あっ、貴方はさっきの!?」
塀を乗り越えたテイオーがプールに飛び込み、突如の乱入者にフクキタルは驚愕していた。
見事な泳ぎを見せるテイオーは勝気な笑みを浮かべ、フクキタルへと振り返った。
「ルフィのところの海賊にだったら、泳ぎだって負けないもんねぇー!」
「むむむ、ルフィさんはロビンさんを取り返したばかりで、
本調子じゃなかっただけです!」
「それなら、僕に勝てたら認めてあげよーかなー」
「だったら尚のこと、負けられませんからね!」
悠々とプールを泳ぐテイオーを追って、対抗心を燃やしたフクキタルが水を蹴る。
水中の激戦を繰り広げる二人をチムニーが応援し、ココロも楽しげに観戦している。
盗聴の邪魔をさせまいと止めようとするナミだったが、コビーがベガパンクに触れると、
その会話の内容に誘われ、二人を無視して盗聴に専念することに決めた。
「ハァ……ハァ……。今日のところは引き分けにしといてあげるよ……」
「わ、私だって……。大吉の私にここまで競り合うとは……」
引き分けとなった二人はサンジの運んだジュースを飲みながら、互いの健闘を称え合った。
≫118 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 19:47:04
「ぼく達、もっともっと強くなりますから!
必ずまた、新世界で会いましょう!」
涙を振り切ったコビーがルフィに宣言し、海軍船へと走り去っていく。
ヘルメッポも後へと続き、それを離れたところでフクキタルとテイオーが眺めていた。
「ルフィさんのところへ行かないんですか?」
「僕はいいんだ。ルフィと話した夢なら、あの時と変わってないから」
テイオーもまた身を翻し、港まで競争をする二人を追って駆けようとする。
その前にフクキタルへと振り返り、小悪魔めいた笑みをフクキタルに見せた。
「僕以外のウマ娘を仲間にするなんて、ちょっと妬いちゃうな。
もっと強くならないと、僕がみーんな捕まえちゃうからね!」
「ルフィさんは海賊王となる方です!
テイオーさんにだって、絶対に逃げ切ってみせますからね!」
負けじとフクキタルが声を張り上げると、その叫びを追い風にし、
テイオーは二人の背へと駆け抜けると、瞬く間に追い付いてしまった。
「おーい、競争するなら僕も混ぜてよー!」
「てめぇー、ウマ娘の脚力は反則だろ!」
「テイオーさん! 今日こそ貴方に勝って見せますからね!」
不平を漏らすヘルメッポに対し、追いつかれまいと急ぎ足になるコビー。
小さくなっていく三人の影を見送るルフィは、常時通りの朗らかな笑みを見せた。
「コビー、テイオー。――――おれは負けねぇぞ」
終わりです。ルフィ→テイオーは対抗心、テイオー→ルフィは姉貴分気取りじゃないかな、と
≫185 二次元好きの匿名さん21/10/13(水) 22:42:12
拙者光のローライス侍
ワノ国でローと一緒にホーキンスに捕まったライスだったが、ドレスローザの一件を乗り越えたことやローが一緒であることから気持ちを強く持ち、「拷問……慣れてないの?ドフラミンゴさんの方が上手だったよ」「そんな脅しは意味ないよ。もしローくんを殺すなら、ライスは何も話さない」と淡々と告げてほしいで候