セッション間シーン 8.6 シャロット+マスターシーン
「やっぱりシャロは教授の娘だね」
ぽつりとつぶやいたセラウスをシャロットは振り返る。困ったような寂しいような、複雑な気持ちを物語りきれない顔は、真っ直ぐに見ると言葉を探したげに唇が小さく動いていた。
「シャロは、いつもパパの子だよ?」
そう言って笑ってみせる。
気恥ずかしそうに笑おうとして、セラウスは目が潤んでいた。
気恥ずかしそうに笑おうとして、セラウスは目が潤んでいた。
村には何日か滞在することになった。思ったより、残されていたアイテムが多かったのだ。
持ちきれない分を、学校にもっていく手配をしなければならなかった。
持ちきれない分を、学校にもっていく手配をしなければならなかった。
しかし、一度帰った学校は、とんでもない事件の話で揺れていた。
『ショアベルツの英雄アガサ、隣国の将軍を暗殺』
『七番目の枝、筆頭パーティーが何者かに襲われ意識不明』
「ショアベルツにとって、我が校は利益を生む投資先であり、有能な人材を生む養成所であり、国防の要でもあります。その我が校に…数ヶ月前は泥棒が入り、数日前は放火事件。信用問題にも関わる事態であると皆さんが認識していた中…このような事件が起こってしまいました」
学長ミネルヴァが穏やかな声を、悲しみに滲ませていた。
「襲撃のあった七番目の枝は、本校在籍者も多数いるギルドです。市街地の中でも、最も手堅い力が集まっていたはず…失礼ながら、エズラ学長代理の縁あるものもいたはず」
「それがなにか?」
体格の良いサモナーのカレッジマスターに、メイジカレッジのエズラが、円卓の向かいから睨む。
「私の縁者であるから襲われたとでも?」
「それは…」
「落ち着きましょう、エズラ。そのような卑怯な事件でないことは、皆さん、わかってらっしゃいます」
殺しにかかるようなエズラの視線に、ミネルヴァが割って入る。
「私たちがすべきことは3つ。ひとつは、揺るぎなくショアベルツを支える柱であるべく、普段と変わらない姿勢を貫くこと。ふたつめは、今回の事件の実態を掴むべく、襲撃された人々の意識を取り戻す方法を、全知識を用いてみつけること」
ミネルヴァが一度息をついて、円卓につく一番若いヒューリンに視線を向ける。
「セラウス、急な呼び戻しですが、持ち帰ってくれたカヴェフ大書の中から、一件に有用と思われるものを探してください」
「わかりました」
「どんなアイテムであろうと、失われたものでも、必要とあれば私とエズラが再創に全力で取り込みます」
学長の言葉は、はっきりしていた。そして、一度だけエズラに視線を向けると、視線をその向かいのサモナーのカレッジマスターをみた。
「みっつめは…一連の裏を探ること。我々はシーフではありませんが、シーフには見えないものが見えることがあります」
「見えぬものを見、聞こえぬものを聞く。我々サモナーの仕事でしょう」
「そして、我々ニンジャの役目でもゴザル」
姿を見せない、空席のニンジャの教官が、言葉を挟む。
やるべきことが決した以上、そこに人がいる必要はなかった。
やるべきことが決した以上、そこに人がいる必要はなかった。
「ルビー・ジェルシェのこと、あまり顔に出していては、足元の石に躓きますよ」
最後まで円卓から動かなかったエズラを、立ち上がったミネルヴァが諭す。
最後まで円卓から動かなかったエズラを、立ち上がったミネルヴァが諭す。
「彼女の傷が一番深かったのも、彼女が最後まで戦った証。私なら、生死を問わず誇らしい孫娘だと自慢したいところです」
「命をかけてまで、私の孫であってほしいなどと思うほど、私は冷酷ではないわ。ミネルヴァ」
好戦的な普段のピリピリした雰囲気とは全く違うエズラの言葉は、どこか抗議の色が混じっていた。しかし、それは弱さを見せるような響きではなかった。
「無論、私はこれっぽっちもエズラのことを冷酷には思っていませんよ?」
微笑みをうかべたミネルヴァが、エズラのことをいたずらっぽく首をかしげながらみつめる。
「性根は優しいおばあ様でなければ、冒険者になることを許すことはなかったでしょう。私に子や孫がいたとして、果たしてそれが許せたかどうか…」
照れて何も言えないエズラの性根をミネルヴァは理解しているつもりだった。
少なくとも、そうした人間性があることを彼女は知っていた。
「可愛い孫が心配なのはわかりますけれど、学長としては、強くて頼りになるエズラを期待したい時なのです。おそらく…」
そこで口ごもった彼女を、エズラが不思議そうに見上げた。
「おそらく、20年前以上に苦しい山が、くると思うので」
珍しく、困ったような策師の顔がそこにあった。
ごめんなさい。。シャロットのほのぼのが、ばーさんたちの話になってしまったorz