【痘神・痘鬼(もがさのかみ)】

「いもがみ」*1とも称される。痘瘡(疱瘡、天然痘)に罹患させる疫鬼神。

【紅色と痘神の棚】

痘神は鮮紅色の物品を好むと考えられていた。そのため、人々が赤い品物や食物を捧げることで痘神は心をやらわげたり、他へ転地して去ると信じられていた。
このような痘神を転じさせる行為は「疱瘡神送り」などと呼ばれ、赤飯を盛り付けた木や葉でつくった簡素な台を集落の出入り口に設けて実施されて来た。この簡素な台を「痘神の棚」と呼んだりもする。これを作る技術を秘伝として言い伝えている一族も存在した*2という。

【郷土玩具と痘神】

郷土玩具「三春駒」には子供たちが痘瘡に罹っても軽くすみ、すこやかに育つように、という願いが込められている。各地の郷土玩具には痘瘡や麻疹など、子供の生命をおびやかしていた伝染病に対するマジナイの用途が数多く見られた。
痘瘡除けのために郷土玩具には赤く塗られたものが多く存在する。

【佐々羅三八】

「佐々羅三八宿」(ささらさんぱちやど)「三八郎宿」(さんはちろうやど)などと墨書した紙を出入り口に貼って置けば、痘神はそこへ侵入不可能となる。

最終更新:2022年06月02日 02:31

*1 痘瘡の古語である「いもがさ」が転じて「もがさ」となった。

*2 小宮山綏介「水野忠成遺事」(『皇典講究所講演』)には「小普請某家伝の痘神の棚を設くれば、痘患薄きよしにて、側衆より西城附老中酒井若狭守へ達せられ、作事方へ其製作を命ずるに、」という記載がみられるが、家名は伏せられている。