「ヌエ」は本来はトラツグミという夜間に鳴く鳥類の名称である。この妖獣の鳴く声がその鳴き声に酷似していた為に、この名称が与えられたという。
【ヌエの体】
ヌエは、頭は猿、胴は狸、尾は蛇、脚は虎であると語られている。加えて声はヌエ(トラツグミ)のようであるとされる。つまり一つの完全な生物ではなく、様々な生物の特徴が部分部分で寄り集まっているだけに過ぎない。しかしそれは裏返せば具体的な弱点や身体を保有しない、攻撃を加えることを出来ない存在であったことも意味している。
事実、ヌエといえば前述したようなキメラ形態で語られることが多い反面、『平家物語』で実際に京都の夜空に出現したヌエは討伐されるまでは「黒雲」という正体不明の姿でのみ描写されている。
【紹魂の呪(しょうこんのじゅ)】
ヌエに対して効力があるとされていた法術。「紹魂の呪法」とも呼ばれる。
『徒然草・二百十段』には「ある真言書の中に、喚子鳥(よぶこどり)鳴く時、招魂の法をば行ふ次第あり。これは鵺(ぬえ)なり。」とある。これは「魂よばいの法」を示しているが、兼好が何という書に拠ったのかは謎となっている。また、このヨブコドリはカッコウであり、ヌエではないと考えられてもいる。
【鵺】
ヌエを示す文字に「夜」という字が使われているのは、その魔性を示している。朝を示す「旦鳥」という文字が「ニワトリ」を示すことからもその邪と正の対比は理解出来る。
最終更新:2021年04月17日 13:28