【船幽霊(ふなゆうれい)】

海に出る亡霊たち。遭難した漁師や船員がこれになる。船の姿になって、風や潮と逆走しながら船にせまって来たり、「ヒシャクをくれ」と声を響かせながら船を取り囲んだり、追い掛けて来たりもする。

ヒシャクと水

ヒシャクを渡してしまうと、それで船にまたたく間に大量の海水を入れて沈めてしまう。これを回避する為に、底の無いヒシャクを投げて渡すと良い。

幽霊と水

船幽霊たちがヒシャクを求めるのは、船に水を入れる為であると語られるが、一方で自身が真水を飲みたい事を訴えているとも伝えられている。海水を飲んで死んでしまった水死者たちの亡霊は基本的に真水に飢えて苦しみ続けていると考えられており、ヒシャクに真水をくんで与えてやった事に由来しているようである。

七日七晩

海で死んだ者の霊は七日七晩(七日間)沈んでしまい、七日間が過ぎるまで浮かび上がることは出来ないとも語られる*1。それを七回繰り返す事でやっと普通の霊(タマシイ)として海面に浮かび出ることが出来るとも言う。

火や灰

船幽霊たちは、火や灰に弱いとも語られている。薪や苫に火をつけたものを投げつけたり、煮炊きなどに用いた灰を海に向かって撒く事で、姿を消したという話は『甲子夜話』をはじめ、広く見られる。

【沖幽霊(おきゆうれい)】

九州北部の海で呼ばれる。沖で見知らぬ船の姿になって前方から迫って来てはフッと消えてしまったりする。

【モーレエ】

海の上に出る青い火の玉。大晦日の晩には決まって出るとも語られる。(鹿児島県)

【杓子くれ(しゃくしくれ)】

盆の季節になると海に出るという船幽霊たちのこと。盆に船を出すと海でこれに遭遇すると言われていた。(岩手県)

最終更新:2021年05月19日 14:59

*1 桜田勝徳『海の宗教』淡交社、1970年