【三吉鬼(さんきちおに)】

秋田県の太平山に住む。ときどき人里におりて来て、酒屋で酒を飲んでいったという。代金を払わずに帰ってしまうが、翌朝になると酒代の何十倍もの量の薪木が店先に届けられていたりしたと語られている。

酒が非常に好物で、酒樽を供えて土木仕事の願いなどを伝えると、その大力を駆使して願いを聞き届けてくれたりもしたという。

三吉(さんきち)と三吉(みよし)

三吉は、太平山三吉神社に祀られている三吉権現(みよしごんげん)*1が本体であると考えられている。人々からは「サンキチさま」と通称されており、三吉鬼の名前の由来ともなっている。三吉権現は山の精霊であると見られるが、太平山は役優婆塞によって創建されたと伝えられており、奈良県葛城の散吉神社と関係があるとされる*2

太平城の藤原鶴寿丸三吉という武将が、永井と大江の軍勢に攻められた結果、太平山に落ち延びて亡くなったのを祀ったものが三吉権現であるとも語られるが、これは後代に付会された伝説のようである。

最終更新:2021年06月02日 18:38

*1 「三吉霊神」とも称される

*2 福士幸次郎『原日本考』、白鳥書房、1942年