ウルトラマンギンガSの第15話

ウルトラマンギンガたちとビクトルギエルの戦いの跡──
避難している人々。幼い少女、その母親、男性。

少女「ギンガは? ウルトラマンは?」
男性「やられちまったよ…… あの巨人が2人がかりでも、まるで相手にならないなんて、もうどうにもならねぇ……」
母親「よしてください! 子供相手に何言ってるんですか!?」
少女「ウルトラマンは、どこに行ったの?」


ウルトラマンギンガから分離したヒカルが、傷だらけの姿で、瓦礫の中から這い出す。

ヒカル「まだ負けちゃいない…… もうひと勝負だ」

だがヒカルの持つギンガスパークは、反応を示さない。

ヒカル「反応がない!? ギンガ、頼むよ…… 何でだよ!?」

ギンガスパークを通じ、ウルトラマンギンガがヒカルに語りかける。

ギンガ「このままでは勝てない── 敵はあまりにも強い」
ヒカル「だからってこのまま、あきらめるわけにはいかないんだよ!」
ギンガ「君の体力が尽きる。私とライブできるのは、あと1回が限度だ──」
ヒカル「じゃあ…… どうすりゃいいんだよ!?」



命という名の冒険



UPG車両マラミュートのゴウキのもとに、友也がふらついた足で帰って来る。

ゴウキ「アリサは?」

友也は首を横に振る。そこへアリサが、マナに肩を支えられながら帰り着く。

ゴウキ「大丈夫か!?」
アリサ「平気…… こっちの腕、ちょっと折れただけ」
ゴウキ「ちょっとって何だ!? 診せろ!」

ゴウキがアリサの応急手当てにかかる。

マナ「この人の命、なくなるのか?」
ゴウキ「まだ死なねぇよ。そんなのはな、何十年も先の話だよ」
アリサ「人間の体にもね、自己修復機能ってあるのよ」
マナ「そうですか」
アリサ「でも、あなたがいなかったら危なかった…… 死んでたかも。ありがとう」
友也「彼女はまだ、生きるとか死ぬとか、わからないんだと思います」
マナ「『生きる』── その意味が、あなたにはわかるのですか?」
友也「それは、残念ながら僕にも…… ただ、命って、たとえば変化だって言えるのかも、とは思います」
マナ「私は、変化も成長もしない── つまり、私には命はない」

地面に転がっている焼け焦げた木の枝を、友也が拾って見せる。

友也「この燃えた木が地面に埋まると、長い時間をかけて化石になります。その化石がまた長い時間をかけて、石油になったりもする。石油はエネルギーになったり」

ペットボトルを見せる。

友也「これになったりします」
マナ「私も変化する──ということですか?」


地底世界では、傷だらけのショウが、ビクトリアン一同の手当てを受けている。

キサラ「ビクトリーとして戦えるのは、おそらくあと一度です」


友也「確かに君は機械です。けれど、もし自分でこうなりたいと変化を望むなら、魂はあると言えるんじゃないかと」
マナ「魂──」
友也「僕はこう思っています。自分の経験を次の世代に受け渡す。すべての命には、そういうコマンドがインプットされていて、それを『魂』って呼ぶのかもって」
マナ「命にインプットされたコマンド──」
友也「だから僕らは、たくさん経験して、たくさん学ばなきゃいけない。この命を使って、もっと遠くへ、その先へと動き続ける。すべての命は、そんな冒険の途中なんです」
マナ「生きるということは、冒険──」
友也「そう。そして僕らは答を捜し続ける。なぜ生まれたのか? ここにいる意味って何なのか? そして……」
マナ「──なぜ戦うのか」



ギンガたちの戦いの回想。

『今こそ一つになるとき!』
『ウルトランス! キングジョー! ランチャー!』
『ギンガに力を! ギンガストリウム!』『ウルトラマンジャックの力よ! ウルトラショット!!』

ギンガとビクトリーが次々の攻撃を繰り出すが、ビクトルギエルにはまったく通用しない。

ショウ「ダメだ…… 全く歯が立たない」
ヒカル「どうすりゃいい!?」

『ウルトランス! EXレッドキング! ナックル!』

EXレッドキングの豪腕によるビクトリーの攻撃も、やはり通用しない。

タロウ「ヒカル、考えるんだ! 必ず道はある!」
ヒカル「考えてるよ、さっきから必死に! ……ショウ、お前はいったん退け」
ショウ「何言ってる!? 1人で戦う気か!?」
ヒカル「そうじゃない。敵はビクトリウムを取り込んでる。ってことは、エネルギーは無限大だ。なのに俺たちは……」
ショウ「……2人がかりでも、3分」
ヒカル「けど、カラータイマーが鳴る前にライブを解除して、もう一度ウルトライブすれば!」
ショウ「今より、少しは長く戦える」
タロウ「何を言ってるんだ、ヒカル!? 3分というのは、ライブする人間の限界でもあるんだ!」
ヒカル「言ったろ? 『限界を超えるのが人間なんだ』って! ゴウキ先輩も言ってた! 『人間を舐めるな』って! ショウ、まずは俺に任せろ!」
ショウ「……ガレット!」
ヒカル「いつから隊員になった?」

ショウがウルトライブを解除して地面に降り立ち、ギンガが単身、ビクトルギエルに挑む。

『ゾフィーの力よ! Z光線!!』『ウルトラマンエースの力よ! メタリウム光線!!』

ショウ「ヒカル、タッチだ!」

ヒカルがウルトライブを解除。ショウがウルトラマンビクトリーにウルトライブする。

『ウルトライブ! ウルトラマンビクトリー!』『ウルトランス! エレキング! テイル!』

ビクトルギエルの腹の砲門にエネルギーが漲ってゆく。

陣野「ビクトリウムキャノンを使うつもりか!?」

『ウルトランス! ハイパーゼットン! シザース!』

発射前にビクトリーが砲門に攻撃を加えるが、反撃を食らって大きく後ずさりする。

ショウ「ビクトリムシュート!!」

ビクトリーのビクトリムシュートと、ビクトルギエルのビクトリウムキャノンの光線が激突。

ヒカル「ショウ、よけろ!」

光線がビクトリーのもとへ押し戻される。危うくビクトリーが避け、光線は背後の山肌に炸裂。
ビクトリウムキャノンの開発を強行した国際防衛機構・神山長官が、陣野隊長とともに呆然としている。

神山「私の最終兵器が…… 人類最後の希望が!」
陣野「兵器に希望など託すのが間違いです。まだ、わかりませんか? 私は、私の隊員のところに戻ります」

ショウ「ヒカル、タッチだ!」

『ウルトライブ! ウルトラマンギンガ!』『今こそ一つになるとき! ウルトラマンタロウ! ギンガに力を! ギンガストリウム!』

ヒカルが一気にギンガストリウムとなり、渾身の力でギンガスパークランスをビクトルギエルに突き立てる。

ショウ「やった……!」
エクセラー「やられたぁ! ……なんつって!」

至近距離からの強力な攻撃が、ギンガを直撃。

ヒカル「うわああぁぁ──っっ!!」

大きな火柱があがり、衝撃でUPGの面々も吹っ飛ばされる。
ひときわ激しく地面に叩きつけられるアリサ。彼女を襲う岩礫を、とっさにマナが防ぐ。
ショウも友也も、衝撃に吹き飛ばされる──



エクセラー「この星を、これほど豊かな星にしているパワーはどこです? ビクトリウムを超える、最強の地球パワー。それがあるのはわかっているんですよ~。究極のパワーを我が手に!」

ビクトルギエルが火柱を上げつつ、大地を闊歩する。

ゴウキ「あいつは、何をしている?」
友也「まだ、何かを捜しているように見えます」
アリサ「何かって、何よ?」
マナ「最強の体を手に入れること── それがチブル星人の目的」
ゴウキ「あれ以上の最強って何だよ!?」

ヒカルが、ボロボロに傷ついた様子で帰って来る。

陣野「ヒカル!?」
ヒカル「はぁ、はぁ……」

そこへサクヤたちが現れる。

サクヤ「キサラ様が呼んでらっしゃいます」
ヒカル「えっ?」

サクヤがマナを見やる。

サクヤ「あなたにも来てほしいそうです」


地底世界のビクトリアン神殿に、サクヤたちに連れられ、ヒカルたちUPGの面々とマナが現れる。

サクヤ「キサラ様……」
ヒカル「敵が何を捜しているのか、わかりますか?」
キサラ「命にあふれた地球には、太陽系で最も強いエネルギーが満ちています。私たちはそれを『ビクトリウム・コア』と呼んでいますが、恐らくそれが狙われているのでしょう」
陣野「ビクトリウム・コア……?」
キサラ「それを奪われたら、地球は滅びます。私たち同士で争っている場合ではないと言ったのは、それが理由です」
ゴウキ「どこにあるんですか? 俺が、ちょっくらひとっ走りして……」
キサラ「あなたたちには無理です。だからマナさん、あなたを呼んだのです。ビクトリウム・コアは地底6400キロの場所にあり、人間が近づくことはできません。ですが、宇宙人の技術で作られたあなたの体なら、高温・高圧力も耐えられるでしょう」
マナ「──」
キサラ「あなたが今、ここにいることには意味があるのです」
マナ「コアまで行って、何をすればいい?」
キサラ「コアが、あなたのなすべきことを、あなたの心に直接語りかけてきます」

キサラが自分の水晶のペンダントを、マナに渡す。

キサラ「あなたがあなたであるために、これを」

キサラが腕を掲げると、光に包まれ、マナが姿を消す。
あっという間に地表を突き抜け、地底6400キロの世界にマナが降り立つ。
燃え盛る地球の最中心部、5000度以上の超高熱がマナを襲う。

サクヤ「マナさんは、大丈夫でしょうか?」
キサラ「相当なダメージは、受けているでしょう……」
ショウ「それをわかってて、行かせたんですか!?」

光とともに、マナが姿を現す。

サクヤ「マナさん!?」
マナ「私がここにいる意味が、すべて理解できた。これは返しておく」
キサラ「ありがとう」

マナはペンダントをキサラに返し、友也を見やる。

マナ「命とは── 確かに興味深い冒険だ」


瞬時にして、一同が雫が丘に帰還する。

ゴウキ「この星を守る方法、わかったのか?」

問いかけるゴウキを、マナはいきなり蹴り飛ばす。

アリサ「ゴウキ!?」
ヒカル「何するんだ!?」

さらにマナは、ヒカルやショウも蹴り飛ばす。

カムシン「貴様ぁ! やはり宇宙人の手先か!?」
ヒカル「どうしちまったんだよ!? 地球の真ん中で何を見たんだ!?」
マナ「地球を守る方法── それは、チブル星人エクセラーに降伏すること。我がマスターの邪魔をするな!」
アリサ「待って!」
ヒカル「マナ……!?」

火柱が上がり、マナが姿を消す。


ビクトルギエル内部のエクセラーのもとに、マナが現れる。

エクセラー「スクラップが、今さら何の用です?」
マナ「マスターがお捜しの物を献上しに」

マナが手を掲げると、宙に地球内部の映像が映し出される。

エクセラー「おぉ、これが地球パワーの源!?」
マナ「ビクトリウム・コア── これでグランドマスターの肉体を、完全復活させられます」

大地が激しく揺れ、四方八方から光が立ち昇り、ビクトルギエルへと吸い込まれてゆく。

ショウ「この星の命は、奪われていく……」

ヒカル「あと1回が限界だって、そう言われてるけど……」
ショウ「その1回が、最後の1回だとしても──」
ヒカル「──やるっきゃない!」
陣野「ヒカル、ショウくん。もしや、ギンガとビクトリーのことか?」
ヒカル「……はい。今度負けたら、次のチャンスはもうないかもしれません」

ヒカルは笑顔で言い切る。何かを言おうとする友也を、ヒカルが制する。

ヒカル「でも、マナをあのまま放っておけません」
アリサ「もしかして…… ヒカルがギンガ?」
ヒカル「……」
ゴウキ「肝心なときにいねぇ奴だと思ってたが、逆かよ…… 最前線で戦ってたのか、お前!? バカ野郎…… なんで黙ってたぁ!?」
陣野「ゴウキ!」
ヒカル「すみません…… 勝手なことばっかして」
陣野「今また勝手なことをすると、そう言うのか?」
ヒカル「はい。俺、地球もマナも放っておけない。でももし、また俺たちが負けたら……」
友也「礼堂くんは自分でできることをしてください」
ゴウキ「おぅ、そうさ! あとのことは──」
アリサ「私たちが引き受ける!」
ヒカル「……」
アリサ「でも…… 帰って来て」

涙ぐむアリサに、ヒカルは深々と頭を下げる。

カムシン「あの機械は敵だ。助ける必要がどこにある? ショウ、キサラ様に何と申し開きをするつもりだ?」
ショウ「『キサラ様が信じたあの機械を、俺も信じる』と」

ヒカルとショウが頷き合い、駆け去る。

ゴウキ「よし! 俺たちも、俺たちがすべきことをやろうぜ!」
アリサ「市民の避難と救助!」
陣野「アリサ、ゴウキ、急ぐんだ! 誰1人、犠牲を出させるな!」
アリサたち「ガレット!」


ヒカルたちはビクトリギエルの体にワイヤーフックを放ち、内部への侵入を試みる。
アリサとゴウキは、市民の避難誘導にあたる。

アリサたち「急いでください!」「地下なら安全ですから!」「早く、急いで!」「早く来て!」


ビクトリギエル内部に、侵入警報が鳴り響く。

エクセラー「いったい、誰が入り込んで来たんですか?」

ヒカルとショウが内部に乗り込んでくる。ヒカルとマナの目が合う。

ヒカル「どうしてかな? 君の目には、敵意を感じない」
マナ「機械に感情はないから──」
ヒカル「今の君には、感情も心もあるんだろう!? ここに来たのだって、何か目的があるはずだ」
エクセラー「聞きたいですねぇ~。なぜ、ここに来たんです?」

マナが、エクセラーのほうへ向き直る。

マナ「お前を倒すためだ」
エクセラー「アイ・シー! バット・バイバイ・ヒーローズ!」

エクセラーが攻撃を放つ。とっさにマナが、ヒカルとショウの盾となる。
爆発で3人が機外に吹っ飛ぶ。マナはかろうじて壁面にしがみつくが、ヒカルとショウは宙に放り出される。

ヒカル「マナぁ──っ!」
ショウ「あと1回!」
ヒカル「最後の1回っ! ギンガぁ──っ!!」

ヒカルとショウのウルトライブしたウルトラマンギンガ、ビクトリーが空中から飛び立つ。

冒頭の少女が、歓喜の声を上げる。

少女「わぁぁっ、すごぉい! ウルトラマンだぁ!」
母親「来てくれたね!」
少女「うん!」

ウルトラマンギンガとビクトリーが、ビクトルギエルに最後の戦いを挑む──!


※この続きは『ウルトラマンギンガSの最終回』をご覧ください。

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最終更新:2017年07月05日 06:06