冒険! イクサー3の第1話

宇宙空間。
前作の主人公、戦士イクサー1(ワン)が、新たな敵である機械生命体ネオスゴールドと戦いを繰り広げている。

イクサー1「ここまでです。ネオスゴールド!」
ネオス「ホホホホ! 我が母の仇、美しき戦士、イクサー1! お前の死に顔は、さらに美しかろう。ホホホホ!」
イクサー1「ビッグゴールドが宇宙に放った端末を、私はすべて破壊してきた。お前とて、逃がしはしません!」
ネオス「イクサー1。お前とこうして戦える時を、私は待っていたぞ! 死ね、イクサー1!」

両者が激突する。
イクサー1の拳が、ネオスゴールドの腹にめりこむ。

ネオス「うぅっ……!」
イクサー1「滅びよ、ネオスゴールド! その邪悪なる力と共に!」

ネオスゴールドの体にエネルギーが送り込まれる。
だが、ネオスゴールドの長い尾がイクサー1の体を捕え、強烈な電撃を送り込む。

イクサー1「うぅっ! 渚、私に力を……!」

大爆発──!! ネオスゴールドの姿が掻き消える。
イクサー1もまた、小惑星の破片の漂う宇宙空間に、力なく漂っている。

イクサー1「終った…… これで、ビッグゴールドの悪の根は……」
ネオスの声「ホホホホ! 見事だ、イクサー1。我が母ビッグゴールドを倒した力、見せてもらった」
イクサー1「どこだ!? どこにいる!?」
ネオスの声「残念なことだが、私にはもうお前と同様、戦う力は残されていない。イクサー1、パワーを回復した私たちの戦場はどこかな?」
イクサー1「何!? ……まさか!?」
ネオスの声「フフフ。そう、地球さ。お前の愛した地球を、次の戦場にしようではないか。ハハハハハ!」
イクサー1「地球が……!? 渚の、地球が!?」



イクサー3 登場!
地球は私にまっかせなさい!




太陽系。
土星付近を宇宙戦艦が航行している。
彼方から飛来した4つの光が、艦体を貫き、戦艦が大爆発する。


地球防衛軍、月面基地。

渚「きゃあっ!」

ファーストフードのアルバイトとして務める渚が、寝室で飛び起きる。
その声に驚き、同僚の静 可愛(しずか かわい)も目を覚ます。

可愛「どうしたのよ、渚?」
渚「ごめん。何だか、たくさんの人の悲鳴が、それに変な笑い声が、聞こえたような気がしたの……」
可愛「また? あんた、この頃、変だよ」

警報が鳴り響く。

渚「やっぱり、何か起こったんだわ」
可愛「あれは、軍人さん用のサイレンでしょう? きっとまた演習よ。私らアルバイトには──」

渚がベッドを立ち、歩き出す。

可愛「ちょっと、渚!? 渚ぁ!」


渚は、軍の司令室を覗きこんでいる。

可愛「やばいよ、ここは」
渚「何が起こったのか、確かめたいのよ」
声「こんなところで何をしている!?」

軍のアルバイトの少年、露 野人(ろ やじん)

野人「アルバイトだな? ここは立入禁止だ!」
可愛「な、何よ!? あんただってアルバイトじゃない!」
野人「俺は特別なの」
渚「あ、あの……」
野人「な、何だよ」
渚「何かあったんですか? 私、心配で……」
野人「そ、そういうことには答えられないんだ。軍の秘密さ」
可愛「あ~ら、お偉いこと」
渚「私、わかるんです。きっと、たくさんの人が宇宙で……」
野人「わかるって、エドグレートのことかい!?」
可愛「エドグレート? 何それ?」
野人「土星付近で演習していた戦艦だよ。今朝になって、連絡が途絶えたんだ」
渚「えっ、連絡が!?」
野人「あっ、いけねぇ! 君があんまりマジなんで、つい喋っちまった。実は、船のマーカーが完全に消えてしまったらしいんだ。君の言った通り、エドグレートはたぶん……」


地球上の、地球防衛軍基地。

「バカな!? エドグレートは我が軍の誇る最新鋭の戦艦だぞ!?」
「それについては、間もなくムーンベースより報告があるはずだが」
「大変です。強力なエネルギー波が、月との交信を遮断しています!」
「何!?」

ネオスの声「ハハハハハ! 愚かなる地球の者どもよ」
防衛軍「何だ、この声は!?」

司令室のスクリーンに、ネオスゴールドの姿が映し出される。

ネオス「我が名はネオスゴールド。これより我を、全能の神として崇めよ。愚かにも我に逆らう者には、天罰が下ろうぞ!」
防衛軍「そんなことが、できるものか!?」
ネオス「良かろう。ハハハハハ!」

「信じられん」
「全軍に通達! 第1戦闘態勢!」
「軍のコンピューターネットを、何者かが作動させています!」「軌道上のビーム衛星が発射態勢に入りました!」
「何だと!? どこからコントロールしている!?」
「わかりません。すべてのシステムが、我々のコントロールから離れていきます!」
「そんな、バカな!? ──破壊しろ! ビーム衛星を破壊するんだ!」

地上から無数のミサイルが発射される。
しかし、戦艦エドグレートを破壊した4つの光が飛来し、ミサイルは残らず破壊される。
ビーム衛星からの攻撃が始まり、地上が次々に火の海と化してゆく。

「南米基地、連絡途絶えました」「極東基地、応答なし」
「こちら、ヨーロッパ基地。こちら、ヨーロッパ基地! 虫の大群に襲われている。敵は正体不明の生命体。我が軍は、これより──」
「何ということだ!? 防衛軍がこんなにたやすく……」

ネオス「ハハハハハ! 思い知ったか、我が全能の力を。だが安心するがいい。お前たち地球人は、イクサー1を引き寄せるための、大事な囮だ。それまでは生かしておいてやろう。ハハハハハ!」


月面基地。
渚は軍の格納庫へと、食事を配達している。

野人「あっ、こっちこっち!」
渚「野人くん」
野人「なんだ、君か。デリバリーでバイト?」

格納庫では、宇宙戦艦が建造されている。

野人「凄いだろう! 建造中の新鋭戦艦、クィーン・フジさ!」
渚「野人くん、ここで働いてるんだ。はい、ハンバーガー」
野人「おぅ、サンキュー。おぉい、ロブ!」

同僚の、ロブ温和。

ロブ「おっ。野人、デートか?」
野人「そ、そんなんじゃねぇよ! メシだよ、メシ!」

野人とロブが食事にありつく。

野人「こいつが宇宙に飛ぶときが、楽しみなのさ! そんときは、君も乗っけてやるよ」
ロブ「お前のミスで、落っこちなきゃいいけどな」

指揮官のキャンディ・バーツが呼びかける。

キャンディ「ロブ! 第3デッキのサブコントロールが同調しないのよ。早く見て!」
野人「彼女が呼んでるぜ、ロブ」
ロブ「バカ、こんなところで言うなよ!」
キャンディ「2人とも、いつまで食べてるの? こんな調子じゃ、飛び立つ前にクィーン・フジが錆びついちゃうわよ」
ロブ「オーライ、キャプテン」

警報音が鳴り響く。

キャンディ「これは、Aクラスの警報よ」
野人「エドグレートをやった奴かも…… 君は早く戻った方がいい。急がないと、避難先がわからなくなっちゃうぜ」
渚「う、うん」


通路の隔壁を、何者かが突き破ろうとしていいる。防衛軍兵士たちが迎え撃つ。

「来るぞ!」

壁が破られ、怪物たちが現れる。
兵士たちはまったく相手にならず、死体の山がどんどん築かれてゆく。


地球上。
壊滅した防衛軍基地の跡地に、ネオスゴールド配下の四天王、ゴーレム、インセクト、ビグロ、ファイバーの4人が降り立つ。

ゴーレム「ハハハハ! 口ほどにもない。これがイクサー1の守った地球か?」
インセクト「こんな星、私1人で奪ってみせるよ」
ビグロ「フフフフ。待とうではないか。イクサー1が来るのを」
ファイバー「この防衛軍跡に、ネオス様の城を」
ゴーレム「良かろう」

防衛軍跡に、奇怪な姿のネオスの居城が築き上げられる。

ネオス「ご苦労であったな、皆の者」
ゴーレム「はっ! 後は、月の防衛軍基地のみでございます」
ファイバー「すでに月には、我が分身たちを送り込んであります 月面基地も間もなく」
ネオス「ふむ。イクサー1との戦いで失われた力を回復するまで、あとしばらくはかかる。それはイクサー1とて同じであろう。来たるべき戦いのときまで、地球を任せるぞ」
ゴーレム「地球へ行け、ファイバー! ここはもう良い」
ファイバー「では、遊んで来るとしよう」


イクサー1はクトゥルフのもとで、傷を癒している。
側近のシスターグレイが寄り添っている。

グレイ「お目ざめですか、イクサー1?」
イクサー1「……地球の様子は?」

スクリーンに、地球の惨状が表示される。

イクサー1「おのれ、ネオスゴールド!」
グレイ「地球人たちには、すでに抵抗する力すら残ってはいません」
イクサー1「シスターグレイ。私は、行かなければなりません」
グレイ「あなたは地球へ行く力すら、残ってはいないのですよ」
イクサー1「わかっています。しかし、渚の尊い命によって守られた地球を、このままにしておくわけにはいかないのです!」
グレイ「……わかりました。では私の娘、あなたの妹を地球へ送りましょう」
イクサー1「イクサー3(スリー)を!?」
グレイ「クトゥルフの長となられたあなたが、いつまでも戦場に赴かれることのないよう、この子を育ててきました」

目の前にカプセルの中に、幼い人影がある。

イクサー1「しかし、この子はまだ……」
グレイ「確かにイクサー3は、未熟ではあります。しかし、いずれは初陣を迎えなければならぬ定めの子。地球での戦いは、良い経験になりましょう」
イクサー1「……そう、私も最初は未熟でした」

カプセルが地球を目がけ、射出される。

イクサー1「地球を頼みます…… イクサー3!」


渚と可愛は、倉庫の片隅に身を潜めている。
照明が点滅し、消える。

渚「電気が……」
可愛「渚、怖いよぉ! やっぱり港に行こう。きっと、脱出用の船があるはずだから」
渚「で、でも」

暗闇の中、懐中電灯の光が、渚たちを照らす。

渚たち「きゃあっ!」
野人「こんなところにいたのか」
渚「野人くん!?」
可愛「もう、脅かさないでよ!」
野人「捜しに来てやったんだぜ」
可愛「渚、早く港に行こうよ」
渚「う、うん」
野人「駄目なんだ…… 駄目なんだ。もう、宇宙港は」

宇宙港もまた、怪物たちの襲撃によって壊滅していた。

可愛「そんな…… なんで私たちが、こんな目に遭うのよ!?」
野人「そうだ、クィーン・フジ!」
渚「えっ?」
野人「ほら、建造中の船があったろ? あれならまだ、無事かもしれない」
渚「さぁ、可愛、行こ」


基地内の通路を、渚たち3人が走る。

野人「この先のエレベーターなら、地下ドックまで行けるはずだ!」

壁面を突き破り、怪物が現れる。

野人「こんなとこまで!?」

野人が銃撃で何とか怪物を倒し、渚たちはエレベーターに辿り着く。

野人「畜生、上に行ったままか。くそっ、早く降りて来い!」

さらに何体もの怪物が現れ、一同に向かって来る。

渚「きゃあっ!」
可愛「早くぅ!」
野人「とっておきの奴をくれてやる!」

ようやくエレベーターが到着する。
野人が小型手榴弾を取り出し、怪物たち目がけて投げつける。

野人「早く中へ!」

一同がエレベーター内に駆け込むと同時に、手榴弾が爆発する。
怪物たちが、爆炎の中に掻き消える。

野人「ざまぁ見ろ!」

だが生き残った怪物の1体が、鉤爪で野人の体を裂く。

野人「うわっ!」
渚「野人くん!?」

エレベーター内に転がり込んだ野人が、必死に怪物を銃撃。
扉が閉じ、一同は地下に運ばれてゆく。


渚と可愛、2人に両肩を支えられた野人が、クィーン・フジの格納庫に到着する。

野人「良かった、クィーン・フジは無事だ。へへっ、両手に花だな…… うぅっ!」
渚「野人くん!?」
キャンディ「誰!?」
ロブ「野人!?」
野人「艦長、この子たちを……」
キャンディ「他の人たちは?」
渚「他の人たちも、港も、エイリアンに……」
キャンディ「……残ったのは、このクィーン・フジだけね」
可愛「早く逃げましょうよ! ──あ、あぁっっ!?」

虚空から怪物の手が飛び出して可愛の脚を掴み、可愛は宙吊りとなる。

渚「可愛!?」
可愛「いやあぁぁっ!!」
ファイバーの声「フフフフ……」
キャンディ「誰!?」
ファイバーの声「逃しはしないよ。お前たちは私の、最後のおもちゃだもの。ハハハハ!」

さらに、何体もの怪物たちが出現する。

渚「お願い、可愛を返して!」
ファイバーの声「それは無理ね。お前たちは死ぬまで私を楽しませるおもちゃ。フフフフ! 1人1人、ゆっくりと引き裂いてあげるわ。まずはこの子の、かわいい顔を……」
渚「やめてぇぇ──っっ!!」

渚が怪物目がけ、果敢に体当たりして、可愛を救う。

ファイバーの声「面白いわね。気が変わったわ」

怪物の1体が渚を捕え、鉤爪を顔へ近づけてゆく。

野人「やめろぉ!」

そのとき── どこからか閃いたビームが、渚を襲おうとしていた怪物を仕留める。

声「クスクス」
渚「だ、誰!?」

クィーン・フジの上にすっくと立つ、少女戦士・イクサー3。

イクサー3「はぁ~い! 私、イクサー3!」

一同の前に、イクサー3が降り立つ。

渚「イクサー……3?」
ファイバーの声「イクサー3だと!? イクサー1なら知っているが」
イクサー3「あら、お姉様を知っているの? そんなところに隠れてないで、出ておいでよ」

イクサー3が指先から、空中目がけてビームを放つ。
虚空に姿を消していたファイバーが、姿を現す。

ファイバー「イクサー1の妹だと!? 貴様、死ねぇぇ!!」
イクサー3「わぁい! みんな、遊んでくれるの? よっしゃあ!」

怪物たちが一斉に襲いかかる。
イクサー3が陽気な笑顔で、まるでゲームのように次々に怪物たちを倒してゆく。

渚「イクサー……」
イクサー3「ほぉら! よいしょっ!」
渚「イクサー…… 私、知ってる!」
イクサー3「みんなぁ! もっと遊ぼうよぉ! ねぇ~っ!」

あっという間に怪物たちが、死体の山となる。

野人「なんてガキだ!」
渚「危ない!」

ファイバーの放った無数の糸が、イクサー3を縛り上げる。

イクサー3「あれ?」
ファイバー「フフフフ! 我が力、見るがいい!」
イクサー3「今度は、おばちゃんが相手ね?」
ファイバー「死ねぇぇ!!」

動きを封じられたイクサー3が、振り回され、壁面に叩きつけられる。

ファイバー「フン、口ほどにもない」

砕けた壁面から、イクサー3が飛び出す。

イクサー3「おばちゃん、強ぉい! 嬉しいよ! もっと遊ぼ~!」

イクサー3が格納庫の鉄骨をへし折り、次々にファイバー目がけて投げつける。

イクサー3「えぇい!」「それ、それっ!」
ファイバー「何だと!?」
野人「どういう性格だ、あいつ!?」
ロブ「格納庫を壊しやがって! 敵か味方か、わからんな」
キャンディ「ロブ、今の内に発進準備を!」

ファイバー「ふざけたまねを!」
イクサー3「あれあれ?」
ファイバー「今度の人形は、一味違うぞ!!」

ファイバーの姿が、十数体もに分身する。

ファイバー「フフフフ。本物を見分けられるか? イクサー3!」
イクサー3「わぁ、おばちゃんがいっぱ~い!」

無数のファイバーが同時に、無数のビームを放つ。
イクサー3はそのビームをひとつ残らず、かわしてゆく。

ファイバー「お前を血祭りに上げた後、イクサー1も同じ運命を辿るのだ!」
イクサー3「お姉様の遊び相手には、ちょっと役不足だよ、おばちゃん。たぁ──っっ!!」

イクサー3が両手にビーム剣を構え、ファイバー目がけて一気に突撃する。

ファイバー「何というスピード!?」

イクサー3の2本の剣が、ファイバーの胴を貫く。

ファイバー「ああぁぁ──っっ!?」
野人「やった!」
ファイバー「おのれ…… ネオス様ぁぁ!!」

ファイバーが光となり、姿を消す。

渚「イクサー……3……」


地球上に築かれた要塞に、深手を負ったファイバーが帰還する。

ファイバー「ネオス様……」
ゴーレム「何というザマだ、ファイバー」
ファイバー「申し訳ありません…… イクサー1の妹と称する、イクサー3めに……」
ネオス「イクサー3だと!?」
ファイバー「その力はイクサー1と同じ、或いはそれ以上かと!」
インセクト「見苦しいぞ、ファイバー」
ビグロ「イクサー1のような戦士が、もう1人いるなど」
ファイバー「お許しを……」
ネオス「詫びは聞き入れた、ファイバー」
ファイバー「ネオス様……!? ああぁあ──っっ!?」

ネオスの粛清により、ファイバーは光に包まれ、消滅する。

ゴーレム「愚か者め。自らの失態を言い繕うに、イクサー3などと狂言を吐きおって」
ネオス「ハハハハハ! 面白いではないか、イクサー3とは。イクサー1が来るまで、良い暇潰しができそうだ。ハハハハハ!!」


イクサー3「べ~っ! お前なんかに負けるもんか!」


(続く)

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最終更新:2017年11月06日 06:17