子供の頃、毎日仕事で忙しかった両親がめずらしく連れて行ってくれた場所はサーカスのテントだった。
父と母が両手をひき、巨大なテントの入り口からその暗い闇の中へと入っていく。
どんどん奥へ入っていき、入り口の光が遠ざかっていくにつれて現実の世界から離れていくような感覚は少し怖くもあったが、
父のごつごつとした手の力強さと母のやわらかい手のあたたかさが勇気を与えてくれた。
暗い空間に大勢の人が押し込められている中にいると、
まるで自分が大きな潜水艦で海の底の異世界へ連れて行かれるんじゃないかと恐ろしくなってくる。
入り口が閉められて光が消えると、ざわついていた人たちがいっせいに静まる。
一気に恐怖が高まってくる。泣き出しそうになったそのとき、目の前がまぶしい光で照らされた。
人の押し込められたこことは対照に、だれもいない広く明るい舞台。
そこへ奇抜な格好をした、顔を真っ白にした異世界の住人が現れる。
それからはこの異世界、夢の世界のとりこになってしまった。
異世界の住人は舞台の上を、空間を飛び回り、人並みはずれた技を披露していく。
そのたびに歓声と拍手が沸き上がり、観る者すべてが笑顔になる。
父と母が連れてきてくれたこの異世界はすばらしい場所だった。
いつか自分もこの異世界の住人になれたらと……このときからずっと、そう思っていた。
「……奥様、旦那様の右脚はもう動くことはありません」
病院の個室のベッドのそばで、若い医師が言った。
ベッドに横たわる男は目をつむったままじっと動かないが、時折ゆっくりと胸のあたりが上下に動いている。
彼の手を握っていた妻はその手を離し、立ち上がって医師の目を見た。
「先生、夫はサーカスのスターです。脚が動かないということは……命を落としたのと同じなんです」
男の妻は目に涙を浮かべていた。
サーカスのスターであるベッドの男はまだ20代後半といったところ、
彼が舞台の前線から離れることがどれだけつらいことか若い医師にもわかる。
「……残念ですが」
「そんな……」
「今は静かに眠っているように見えますが、右脚の神経がズタズタに千切れていて、修復が不可能なんです」
……眠ってなどいるものか。
男は医師が個室に入ってきたとき、すでに気がついていた。
目を瞑ってすべてを聞きながら、自分の右脚の感覚を探り、現実を思い知った。
千切れた一本綱から落ちた時、男の右脚に綱が絡まって落下の衝撃を一点で受けた。
それは文字通り脚を千切られるような激しい痛み。
二度と味わうことのないであろう痛みだったが、
それを思い出すことができないほど右脚からは何も感じとることはできなかった。
そこに脚はあるのに、感じない。
ただくっついているだけの、モノ。
どうせなら切ってしまえばいいのに。
若い医師は何か少し話した後、部屋を出て行った。
それから少し経って、男の妻も何も言わず部屋を出た。
というよりも、嗚咽をこらえて小走りで出て行った。
当の男はというと、不思議な気持ちを抱いていた。
道を断たれ絶望している自分と、それを冷静に客観視している自分がいる。
いまだ現実を受け入れがたい気分の自分になってみれば、
もう一方で絶望という気持ちはこのようなものなのか、と分析する自分になる。
だが、どちらの自分でも感じる心残りがひとつだけあった。
生まれたばかりの息子。アイダンと名づけた息子のこと。
一度も舞台に立った姿を見せることができなかった。
これから、舞台から離れた父親は息子にどのような姿を見せればよいのか。
どちらの自分でも、それを考えると気が沈んだ。
人は挫折を経験すると、人生の岐路に立たされる。
その後選んだ道はほとんどの場合、必ず「良い選択だった」と捉えられる。
凋落したサーカスのスター「ドナルド・ハーディン」もこのとき、人生の岐路に立たされていた。
だが、彼にとって「最も良い」道であるはずの「死に者狂いで努力し、舞台に返り咲く」という道はない。
どうあがいても、最善はない。
ひとりになった病室で、男はガラにもなくむせび泣く。
客観視する自分は、現れなかった。
――それから3年後。
ドナルド・"ドン"・ハーディンは河川敷の草むらに寝転がり、折りたたんだ新聞を読んでいた。
3歳になった彼の息子のアイダンは草むらを走り回ってトンボを追いかけている。
ドンはそれを見て微笑み、再び新聞に目を移す。
1面にはユーロ圏財政危機にまつわる記事やどこかのお偉いさんが孤児院に寄付をした記事、
サッカー選手のスキャンダルの記事などが載っていたが、ドンの関心を引いたのはそのどれでもない。
ドンが朝から何度も読み返したであろう、文化面のページだった。
『名門サーカス団、経営危機のため解散か』
それは、自分がかつて所属していたサーカス団だった。
解散の危機の原因は、サーカスの人気の低迷、ユーロ危機の影響による贅沢の忌避、新興団体の隆盛などと記事は挙げていた。
ドンは舞台での自身の事故の後、サーカス団を離れた。
事故が原因でやめさせられたわけではなかった。
団員は皆ドンを愛していたし、信頼していた。
団長は裏方の仕事をすすめ、将来は演出の仕事をさせたいことを告げたが、ドンはそれに応じることはできなかった。
一生残る障害のために足手まといになることはわかりきっていたし、何よりドン自身がそれまで団員に愛されていた自分のままでいられる自信がなかった。
ドンはそれから今までの3年間を思い返した。
と、言っても何も変わり映えのない毎日だった。
この3年間が、サーカス団にいたときの1週間にも匹敵しないような自堕落な日々だったと言えるだろう。
変化、といえるような出来事といえば2つあった。
1つは、事故をきっかけに手に入れたスタンド能力。
「タイト・ロープ」という、ある意味自虐的な名をつけたこの能力は、ロープを操ることができるというもの。
他にやることもなかったのでこのスタンド能力を訓練し(曲芸ほど熱心ではなかったが)、ある程度扱えるようになったおかげで
日常生活はある程度楽になったし、軽いバイトのようなこともできた。
そしてもう1つは、そのスタンドを操る者たちが集まった「トーナメント」というイベント。
どこで名を聞きつけたかは知らないが、得体の知れない団体から招待状が届いたのだ。
ハリのない生活が続いていたし、力試しのつもりで参加した。
トーナメントでは優勝こそ逃したもののそこそこ勝ち進んだ。
だが賞金も何もなく、得られるものはなかった。
ドンは記事の写真に目を移す。
いつも明るく、常にドンの味方だった団長の顔は険しかった。
(もし、トーナメントで優勝して、多額の賞金が得られていたら……)
「………………」
(いや、よそう……すべては過ぎたことだ)
ドンは新聞を閉じて立ち上がる。
事故の後は立つことさえ苦労したものだが、今では軽いものだ。
「アイダン! 家へ帰ろう。もうお昼の時間だ……アイダン?」
ドンが周囲を見渡してもアイダンの姿はない。
河へは近づかないように言ってあるし、河に落ちたということは考えられない。
河川敷沿いの道のほうを向くと、アイダンはドンから遠く離れた場所にいた。
トンボを追いかけたまま離れてしまったのだ。
「待ちなさい、アイダン! パパから離れるんじゃない!」
だが、その声は息子の耳に入らない。
トンボは道沿いに立つ小さな廃工場の敷地へ入っていき、アイダンもそれを追って中へ入った。
「ああくそ、目を離したばっかりに……」
ドンは河川敷から道の上へのぼり、廃工場へ早歩きで向かった。
このような時、「タイト・ロープ」の能力が役に立たないことが嫌でたまらない。
廃工場の入り口へたどり着くと、そこは外から見るよりもいっそう寂しげな場所だった。
完全に操業を停止した工場は鉄骨やクレーンなどはほとんど錆び付いており、トタンで覆われた壁もボロボロになっていた。
工場のとなりには作った製品を保管していたであろう大きな倉庫がある。
「…………なんだ、あれは?」
ドンが目をみはったのは、倉庫の前に停められた2台の黒塗りの車。
およそこの場所には似つかわしくない高級車が停まっていた。
そして次にドンが見たのは、倉庫の方向から飛んでくるトンボだった。
だが、アイダンの姿は見つからない。
(このトンボが、さっきアイダンが追ってたトンボだったとしたら……)
「ア、アイダンっっ!!」
ドンは松葉杖を必死に動かして倉庫へと向かっていった。
モヤモヤと、いいようのない嫌な予感が心の中で膨らんでいく。
ドンはただ、ちょっと目を離しただけだった。
だがそれすらのことでも、一生後悔してしまうような、そんなことが起きるのではないかとドンは恐れていた。
ドンは開いていた倉庫の扉からこっそりと中の様子をうかがった。
倉庫の中は壁際にモノが乱雑に置かれており、積み上げられた段ボール箱、束ねられたワイヤーなどがあった。
そしてそれに囲まれるように、4人の男たちが2人ずつ向かい合って立っていた。
双方の足元にはジュラルミンケースが置いてあった。
ドンから見て奥には、50代~60代の男とそれより少し若い男が、
手前には顔は見えないが屈強な筋肉を黒のスーツで隠した長身の男が2人立っていた。
この様子はドンが予想していた通りの、触れてはいけない社会の闇の部分であることは間違いなかった。
奥の二人はともかく、手前の男たちがただの一般人でないことは容易にわかる。
ドンは、これが偶然出会ってしまったのならひっそりと立ち去っているところだが、そうもいかなかった。
ここへきたはずのアイダンをまだ見つけていなかったからだ。
ここで声をあげてアイダンを呼び、探すことはできない。
アイダンはもしかしたら倉庫へは入っておらず、工場のほうへ行ったかもしれない。
そう思いドンが倉庫から出ようとしたとき、背後から不意に声をかけられた。
「ここで何をしているのかね?」
「…………!!」
ドンは驚いて、積み上げられた鉄パイプに松葉杖を当ててしまい、鉄パイプはガラガラと音をたてて床に転がった。
その音をきいた4人はこちらに気づき、屈強な男2人がもう2人をかばうようにしながらこちらを見た。
ドンの後ろに立っていた男は2人の屈強な男たちに目配せし、ここから出るように促すと、男たちは倉庫から出て行った。
ドンは振り返って背後に立つ男の姿を見た。
声のした高さから想像した通りその男はドンと同じくらいの長身だった。
そしてシルクハットをかぶり高そうなコートを纏った、いかにも英国紳士というような出で立ちをしている。
だがその穏やかな表情とは裏腹に、こちらを威圧するドス黒いオーラのようなものをドンは男から感じ取った。
さっき倉庫から出て行った4人のうち、屈強な男2人はこの男の部下だったのだとすぐに理解した。
「ま、待て! 俺はここへ入った息子を探しに来ただけだ、息子さえ見つかればここで見たことは誰にも言わない!」
「息子……さっきここへ来た男の子のことかね? それなら、あそこにいる」
と、コートの男が指差した先には、たたんだダンボールの上で横になったアイダンの姿があった。
目を瞑って、眠ったように動かない。
「ア、アイダン! アイダンに何かしたのか!?」
「わめかれても困るのでね……すこしだけ『動かなく』なってもらった。ああ心配するな、30分ほどで何もなかったかのように起き上がるよ」
「??」
「まだあのくらいの子どもなら、ここで何を見ても理解はできないだろう。わざわざ口止めすることもない」
「とにかく、息子は無事なんだな? なら、俺は息子を連れて早々にここから立ち去らせてもらうからな」
「そうはいかない」
「…………!」
ドンは思わず後ずさった。
ゆっくりと、コートの男から距離をとる。
男から発せられるドス黒いオーラがいっそう増し、それが「殺気」であることにドンが気づいたからだ。
「子どもだけだったら良かったが……残念だが『君は』見てしまった。見てはいけないものをね」
「…………くっ」
「君がどう思おうが関係ない。ここでおきたことを片鱗でも知ってしまった以上、君を生きてここから出すわけにはいかないのだ」
コートの男から距離をとり、改めてその顔を見たドンは違和感を抱いた。
ドンがこれまで触れた事のない闇の世界。その中に住んでいるであろうその男の顔に何故か見覚えがあったのだ。
遠い過去ではなく、つい最近会ったかのような、いや数時間前に見たような……
「……! いや、そんなはずはない……」
「?」
「だが、あんたの顔を俺はついさっき、別の場所で見たんだ……きょうの新聞……1面でな」
「…………」
「『サー・ヘクター・ギボンズ』……孤児院に多額の寄付をした男と同じ顔なんだあんたは」
コートの男はため息をつき、ばつの悪そうな顔をした。
「……はあ、やはり露出が過ぎたな。あんなに大きく取り上げられるとは思いもしなかったが」
「だが、そんなはずはないよな。やってることはまるで真逆だ。ただの偶然か……」
「君の言うとおりだ。私こそがヘクター・ギボンズである」
「…………驚いたなこりゃ」
「尚更、君をここから生きて出すわけにはいかなくなったな」
「……何故世間であれだけの活躍ができる男がこんなことをしているんだ?」
「発想が違うのだよ。闇の世界のヒエラルキーをのし上がっていくためには、表の世界の地位も重要なんだ。政界や産業界の要人とのコネクションのためにはね。
『こんなこと』……というのは否定できないが。幹部とはいえ末席であるためにこんなトラブルの多い仕事をしなくてはならないのだから」
「そうかい……俺なら、そのトラブルのリスクを最小限にしてやれるぜ? 黙ってりゃいいんだろ?」
「何度も言うように……そういうわけにはいかないのだよ」
「なら、俺も当然の抵抗をさせてもらうがな」
そういうとドンはポケットから携帯電話を取り出した。
「警察にでも連絡するつもりか?」
「いいや? ピザでも頼もうかと思ってな」
「やめておいたほうがいい。警察を巻き込めば君だけでなく、君の家族まで悲惨な目にあうことになる」
「何故だ?」
「今回の取引の相手が、ロンドン警視庁の警視副総監だからだ」
「……そりゃあ大変なとこに出くわしたわけだ」
倉庫の外で車のエンジンがかかる音がして、そのまま車は走り去っていった。
だが、エンジンの音がしたのは1台ぶんだけ。2台あった黒塗りの車のうち1台はまだ残っているということだった。
おそらくは……このギボンズ卿と部下の男2人の乗ってきたものだろうとドンは思った。
「理解してもらえたかな? 君にとっての最善は、このまま私に殺されることだけなのだ」
「最善……『最善』だと? 俺にとっての最善はすでにもうずっと前に断たれてるんだ。俺は勝手に抵抗させてもらうぜ……」
「……思い上がらないほうがいいぞ、君は未知なる世界を体感するのだから。なに、痛みはない。死の恐怖も感じさせない……」
その直後、叫んだのは同時だった。
「『タイト・ロープ』ッッ!!」
「『フリーズ・フレイム』!!」
ギボンズは自身のスタンドを発現し、ドンに駆け寄って拳を振り下ろす。
だが、その直前にドンはロープのスタンド『タイト・ロープ』を真上に放り投げた。
ロープは倉庫の天井の梁に巻きつき、ドンの体を引きあげる。
フリーズ・フレイムの拳は空を切った。
そして、その後二人が口を開いたのも同時だった。
「こりゃあ驚いた」
「これは驚いたな」
そのままギボンズが話し続ける。
「まさか、スタンド使いとは思わなかった。『スタンド使い同士はひかれあう』……というのはやはり本当のようだ」
「同感だなァ……だが、英国栄誉のナイトさまにスタンド、『天は二物を与えず』というのはウソだったようだな」
「それはお互い様ではないかね?」
ドンとギボンズは上と下から、相手を睨みつけた。
ドンは梁の上によじ登り、ギボンズの姿を改めて見下ろした。
(裏の顔があるとはいえ社会的地位のある男を殴るのにビビって、『攻撃』ではなく『回避』を選んだが……結果的には正解だったようだな。
見たところあれは近距離パワータイプのスタンド……接近戦に持ち込んでたらヤラれていた)
ギボンズはドンの下に立ったまま上を見据えている。
ドンから見て、ギボンズがすぐに何か仕掛けてくる様子はない。
(さて、俺はどうするべきかな。あいつの言うとおりに殺されるのはカンベンだ。
一番望ましいのは、アイダンを連れてここから逃げることだ。だがそれだと、逃げた後この男が俺をほうっておくことはしないだろう。
ということは……あいつの部下含め3人を黙らせる……それも俺が直接、か。はは、どこにも最善の道はないということか)
(……人殺しの覚悟をしなくてはならないのか。道を断たれた人間というものは、どこまでも堕ちてゆくものだな)
ドンは自嘲ぎみに笑い両手からロープを発現させていく。
ロープは足元のギボンズを避けて倉庫の両端にある、モノが雑多に積み上げられた場所に向かっていく。
二手に分かれたロープのどちらにもギボンズは向かわなかった。
いや、向かえなかった。
ドンが倉庫に入ってきたときにロープを持っていなかったことをギボンズは見ていた。
すなわち、今ドンが操っているロープはドンのスタンドそのもの。
向かったところで解除されれば意味がなかった。
ギボンズにできることは、なんとかしてロープをつかみ、ドンを引き摺り下ろすことだけだった。
そのためには、ドンの攻撃を受け止めなくてはならない。
左右からドンのロープが迫ってくる。
「……ッ!」
ロープの端についていたのは、金属製の円盤。
おそらくはこの工場で作られた製品の部品だろう。
車のホイールほどの大きさの円盤の穴にロープを通し、鎖鎌のように扱いギボンズに攻撃を仕掛けた。
「防げ、『フリーズ・フレイム』ッ!!」
左右からの攻撃を青色の太い腕が防いだ。
ギボンズは迫り来る円盤を掴むこともできたが、あえてそれはせず両腕で防ぐにとどまった。
ドンが攻撃に用いた円盤は弾かれることなく両腕にくっついたままだった。
ドンの知らない、フリーズ・フレイムの能力の『凍結』によるものである。
円盤そのものの『時間を凍結』させる能力には物体を凍らせる効果もあるが、ギボンズはその付随する効果を利用した。
凍りついた金属がフリーズ・フレイムの腕にそのままはりついたのだ。
狙いは、円盤についたロープを離れさせないため。
「いまだッ!!」
「く……『タイト・ロープ』解除!!」
ドンはギボンズの目論見に勘付き、タイト・ロープを掴まれる前にスタンドを解除してヴィジョンを消した。
だが、それすらもギボンズの想定の範囲内だった。
「離れてくれるのならそれはそれでいい。動かずして『武器』を手に入れることができたからね」
フリーズ・フレイムは能力を解除して両腕の円盤を剥がした。
そして続けざまにその円盤をフリスビーを投げるようにして鉄骨の梁の上に座るドンに向けて投擲した。
Aクラスのパワーを誇るフリーズ・フレイムの投擲はドッグ・ランでするような生易しいものではなく、手裏剣のように高速で、一直線でドンに向かっていく。
(さあ、この攻撃を君は受けることはできない。相当なスタンドのパワーと精密性を持たぬ限りね。残されているのはかわすこと。
普通ならたやすいことだが、君の場合はどうなのかな? 円盤をかわして失ったバランスを支えるだけの力が君の脚にはあるのか?
ロープを使い梁から降りたとしても、その場合は私のスタンドで叩き潰すだけだがね)
「『タイト・ロープ』ッ!!」
「受け止める気かね!? 無謀なことを!」
ドンは迫ってくる円盤に向け『タイト・ロープ』のロープの先を放った。
だが、ロープの先は渦巻いた『輪』をつくっていた。
そして、円盤が近づくにつれ輪は数多く作られて重なっていき、さながら『バネ』のようになって円盤を待ち構えた。
円盤のパワーは『タイト・ロープ』のバネによって緩衝され、勢いと回転を失っていく。
最後にはブレたフリスビーのようになった円盤がロープに捕まえられた。
「へっ、ありがとよ。返してくれて」
「……なかなか面白い能力だ。それだけに惜しいよ、ここで会ってさえいなければ君を消すことなどなかったのに」
「同感だ、アンタみたいなお偉いさんとは……もっと別の形で会いたかったな」
「フフ……」
ギボンズはおもむろにドンに対し背を向けた。
そしてそのまま倉庫の隅に積み上げられたモノのほうへ向かっている。
ドンは、それをただ見ていることしかできない。
ロープで直接攻撃することは、掴まれればおしまいだから実行できない。
ロープ以外のものを使った攻撃をしても防がれて、先ほどのように返り討ちにあいかねない。
ギボンズの攻撃をかわし続けてきたドンだったが、攻撃をする方法はいまだ見つからなかった。
立ち位置こそ優位にあるとはいえ、戦況は圧倒的に不利だった。
それをギボンズ自身も理解していての行動であるのは間違いなかった。
ギボンズがフリーズ・フレイムにつかませたのは『長梯子』。
最大まで伸ばせばドンのいる梁まで届くほどの長さはある。
そしてギボンズはなんの躊躇もなく、それをドンのそばに立てかけた。
(ば……ばかな、何を考えてる? まさか俺がこの梯子を蹴り飛ばすだけの力がないとでも思っているのか?)
ギボンズは梯子に足をかけて、ずんずんと上っていく。
ドンにとっては近づかれたらたまらない。
すぐさま左足で梯子を力強く蹴った。
しかし、ただ立てかけられているだけのはずの梯子は文字通りビクともしなかった。
ステンレス製とは思えない頑丈さと重みを、蹴った足から感じ取った。
「君にはまだ言っていなかったが」
ギボンズが梯子を上りながら話し出す。
「私のスタンド能力は『時間の凍結』。時間停止されたこの梯子は、他の何モノの外力にも干渉されることはない。
たとえこの倉庫が崩落したとしても、この梯子だけはピサの斜塔のように不安定に傾いたまま立ち続けるだろう」
ギボンズはあと少しでドンに手が届く位置まで来ていた。
ドンはギボンズに掴まれたなら、そこで勝負が決まる。
(『時間停止』か……まるで俺自身のことのようだ。あの事故以来、何もかも止まったままだ。何も俺を前には進めなかった……何も。あのトーナメントでさえも…………)
「『タイト・ロープ』!!」
ドンは梯子を上るギボンズに向けてロープを放った。
ギボンズにとってはもはや苦しまぎれの行動であることは目に見えていた。
「もはや無駄だよ。フリーズ・フレイム、そのロープを掴め!!」
迫り来るロープにギボンズのスタンドが手を伸ばす。
……だが、手が届く前にタイト・ロープは『ほどけ』、いくつもの『糸』に分かれた。
「なッ!?」
「……いいや、たったひとつだけあったな。たった、わずかなことだがな。
『タイト・ロープ』第二形態。ロープのさらに奥、繊維のレベルまで支配した能力……!」
ほどけたロープの糸くずは、突き出されたフリーズ・フレイムの腕にからみつき、ガッチリと固めて動きを封じた。
そしてそのまま体を梯子の外へ引き、ギボンズを梯子から引きずりだした。
「おおおおおおおおおおッッ!!」
「なに、落ちても死にはしねえよ。俺が保障する」
梯子から身を投げ出されたギボンズだったが、梯子が『凍結』されてビクともしなかったおかげで、片足だけひっかけることはできた。
自らの体の重みですぐに外れてしまうだろうが、わずかな抵抗をするだけの時間はあった。
「落ちるのは私だけではない! 貴様もだッ!!」
フリーズ・フレイムは糸の巻きついていないもう一方の手でロープの上部を掴み、一気に引っ張った。
それによってドンの体も引っ張られ、梁の上から引き摺り下ろされてしまう。
「な、何ィっ!?」
それと同時に梯子からギボンズの足が外れ、床に向けて落下した。
ギボンズは硬いコンクリートの床に体を叩きつけられる。
ドンはもう一方のロープを梁に巻き付けさせていたおかげで落下の勢いを止めることはできたが、
その衝撃でロープは梁から外れ、床に降ろされる結果となった。
「ぐ……く……」
ギボンズは背中を強かに打ち、しばらく息が詰まる。
彼がこれほどのダメージを受けたのはいつ以来だっただろうか。
先のトーナメントでも彼が深刻なダメージを受けたことはなかった。
だが彼の胸中にあったのは、自身の慢心への怒りではなく、片足が不自由になってもなお牙を持ち続けていた目の前の男への敬意だった。
(やはり強いな……夢を実現した男というものは。道を失ってもなお、闘志の炎がいまだ消えずにいる。
本人は気づいていないのだろうがな……今は燻ってはいても、いずれまた燃え上がる可能性があるということを)
一方のドンはギボンズに追いうちをかけることはせず、周囲を見回していた。
ドンにとって敵はギボンズだけでなく、その側近2人も含まれていた。
まずはアイダンの無事を確認し、人質にとられていた心配はなくなった。
そして側近2人の姿を見つけようとしたが、倉庫の中にはなかった。
おそらくは、外から誰か入ってくるのを防ぐために見張りをしているのだとドンは思った。
ギボンズの強さを信用しているのだろうし、そもそもドンが見つかったときはスタンド使いだとバレていなかったので、
相手をするのはギボンズひとりで十分だと思うのは当然だった。
とにかく、今の状況はドンにとって不幸中の幸いといえた。
「余所見をしている余裕があるのかね? ドナルド・ハーディン」
ギボンズがゆっくりと起き上がり、コートの埃をはらう。
「……? なんであんた、俺の名前を知っているんだ?」
「おっと、口がすべってしまったね。そんな些細なことはいいじゃないか。どうせここから逃げることなどできないんだ」
「逃げるつもりなんかないさ。どうやったらあんたの息の根を止めることができるかって考えててね」
「無理はしないほうがいい、人を殺した経験などないだろう? ……私に任せてもらえば、すぐに楽にしてやれるのだが」
「それだけはカンベンさせてもらう……ぜッ!」
そう言うと同時にドンはロープを真上に放り投げて、再び梁に巻きつかせた。
そして、ロープに体を引っ張らせて上ろうとしたが……
「同じ手は通用しないよ」
「クェエエエエエエエエエエエエッッ!!」
ロープが張ったと同時に、フリーズ・フレイムは梁に立て掛けていた梯子を手に取り振り回した。
相当な長さの梯子を振り回すのは容易ではないはずだが、フリーズ・フレイムは野球のバットを振り回すかのようにゆうに軽く扱った。
「!!」
すでに半分ほど上りかけていたドンの体に梯子がぶつかる。
その衝撃でロープを梁に巻きつかせていた力がゆるみ、ドンは落下してしまう。
さほど高くないところからの落下といえど、ドンは足で着地することはできない。
無様にも床に這うようにして倒れ、梁に巻きつけていたロープがドンの体の上に落ちた。
「これでおしまいだ、ドナルド・ハーディンッ!!」
梯子を捨て、フリーズ・フレイムが襲い掛かる。
這いつくばったドンへ拳を振り下ろした……。
「!!」
だがその瞬間、ドンの体は後方へ勢いよく引っ張られ、フリーズ・フレイムの拳はドンの目前の床を砕いた。
驚いたのはドンもギボンズも同じだったが、攻撃を避けられて驚いたのはギボンズだけだった。
ドンが驚いたのは、ありえない自分の動きに対してだった。
(今……動いたぞ? ……動かないはずの『右脚』が)
攻撃を避けたのはドンの意思ではなかった。
這いつくばった状態では、仮に右脚が動くとしても容易ではない。
とにかく何故引っ張られたのかはわからないにせよ、今自分の右脚がぴんと伸びたのは確かだった。
ドンは自分の右脚を見た。
「…………ロープ」
右脚には、ドンの『タイト・ロープ』が巻きついていた。
今攻撃を避けることができたのは、蛇のように扱うことのできるロープが、無意識に反射でドンの脚を引っ張ったのだ。
スタンドの防衛本能が活きた。
つまり、ドンの右脚は自らの力で動いたわけではなかった。
ドンは一つ、ため息をついた。
そこには安堵と失望の両方があった。
(巻きついたロープが、右脚を動かしただけなのか……)
「…………!」
人は、窮地に立たされ、それを乗り越えたとき成長する。
ドンにとって窮地とは、かつて日常において常にあるものだった。
大舞台での、一本綱渡り。慣れたことなど一度もなかった。
常に窮地であり、それゆえに集中力を高めることができたのだ。
そして……リスクを見誤ると失敗する。
だが、失敗からは何も得られないと言えるのだろうか。
「失敗は成功のもと」という言葉があるように、失敗から得られることは少なくないはずだ。
そして、その成長の機会は前触れなく訪れるものなのだ。
「……『巻きついたロープが、右脚を動かした』」
ドンはぼそりと呟いた。自分の頭の中にふと浮かんだ言葉をもう一度確かめるかのように。
「そう、たったそれだけ。奇跡でもなんでもなかったのだよ」
ギボンズが再びドンに歩み寄る。一度の攻撃を避けられただけで状況が劇的に変わるわけではない。
ただ、次は外さないようにすれば良いだけである。
「次こそしっかりと息の根を止めてやるッ!!」
「タイト・ロープ!!」
フリーズ・フレイムの拳がドンの頭めがけて振り下ろされた。
だがドンはタイト・ロープの束を頭の上でつくり、振り下ろされた拳の衝撃を吸収させた。
そして、そのままもう一本のロープでドンの体を梁の上へ引っ張り上げた。
(しまった、ロープは2本あったのを失念していた。……だが、また梁に上ったところでどうするつもりだというんだ?
さらに、今奴を引き上げたロープは右脚に巻かれている。梁の上に乗ることだって簡単ではないはずだが……)
「……!!」
その直後、ギボンズが見たのは信じられぬ光景だった。
ドンの右脚に巻きついたロープは、ドンの体を引っ張り上げるというより、放り投げたのだ。
ドンの体は半回転し、梁の上に足先が向けられる。
そのまま着地することなど、できるはずがなかった。
だが、足がつく直前、巻きついていたロープが『ほぐれ』、糸の束と化した。
糸の束はドンの右脚に縦横無尽に巻きついていく。
ただし、がむしゃらに巻きつかせていたのではなかった。ふとももやふくらはぎに沿うように縦に、膝や足首には節を覆うように幾重にも巻きついていた。
まるで……いや、確かにそれは脚の筋肉の形をしていた。
足が梁の上につくと、ドンの両脚はしっかりと踏みこたえ、体勢を崩さずに立った。
ギボンズが見た一連の動きはまるで芸術のように美しかった。
『かつて自分が幼い頃に魅入った』異世界の住人の動きそのものだった。
ドンは梁の上で自らの右脚を上げたりのばしたり、ひねったりしてみる。
すべてテーピングのように巻いた『タイト・ロープ』の能力によって動かしていた。
事故の前ほど自由にとはいかなかったが、触れる感覚は脚じゅうに巻きつかせたタイト・ロープから伝わるし、
筋肉の代わりにして動かすのも思ったよりも難しくなかった。
「……ソーシンにゃあ後で改めて礼をしなくっちゃあな」
ギボンズは梁の上のドンを見上げて微笑んだ。
「……ははっ、スター復活か。嬉しくもあるが悲しいな、再び立ち上がった男を私が殺さねばならないなんて」
「フフフ……そうはいかねえよ」
「そうかな? 私にとっては状況はたいして変わらんよ。君の右脚が動き、君が扱えるロープが1本だけになった。それだけだ」
「ああいや、もう戦うのはやめにしようと思ってな」
ドンは『タイト・ロープ』を眠っている息子に向かわせ、手元に引き上げた。
そして息子を両手で抱えて、ロープを足元の梁から壁の明かり窓に向かって二重に張った。
明かり窓といっても大きさはドンが通れるだけの高さ、大きさはあり、窓は開いていた。
「…………!!」
「俺は……ほんのついさっき将来の夢を見つけちまった。もう一度舞台に立って、俺の姿をアイダンに見せてやることだ。
俺はここから逃げさせてもらうぜ。コレは俺の夢への第一歩だ。もし、足を踏み外すようなことがあれば俺を殺してくれてかまわない」
「……私を殺すんじゃあなかったのか? それに今逃げたところで、私が見逃すとでも思うのか?」
「ああ、思うさ」
「何?」
「俺はこれからサーカスのスターになり、有名になる。そうすりゃおまえらが易々と俺を始末することなんかできなくなるだろう?」
「…………」
「見届けてくれよ、サー・ヘクター・ギボンズ。こんな間近でサーカス観られるなんてこと金持ちや貴族にだってできねえぜ?」
ドンは左足を一歩、『か細い縄』の上に乗せた。
二重にしたとはいえサーカスの一本綱よりも細い道、3年以上のブランク、右脚のハンデ等、不安要素は多すぎた。
だがドンは不思議と失敗する気がしなかった。
自信ではなく、確信として。
腕の中で眠る息子が勇気を与えてくれた。
『タイト・ロープ』で動かしている右足を縄に踏みしめた。
バランスはいまだ保たれている。
床に立つギボンズは、ただ黙ってドンの姿を見上げていた。
ギボンズは初めから目の前の男が誰なのか気づいていた。
かつて幼い頃の自分があこがれた世界の最前線に立っていた男。
その栄光と凋落までも知っていた。
その男が今、夢を実現するために困難に立ち向かおうとしている。
組織の幹部として阻止せねばならない立場なのはわかっていた。
だがギボンズもまた一人の男として、その姿を見届けなければならなかったのだ。
ドンが足を踏み入れるたびに縄は揺れる。
しかし、表情は一切崩れない。
ギボンズの部下が倉庫に入ってきて、状況を見て拳銃をドンに向けた。
だが、ギボンズが手でそれを制し、やめさせた。
明かり窓に近づき、明るい日の光が目に差し込んだ。
それまで薄暗かっただけに、その光はやけに眩しく感じた。
縄を渡りきったドンの姿をギボンズは最後まで見届けた。
「――今度は私が会いに行くよ、ドン」
アイダンが目を覚ましたのは、父が自分をおぶさって河原の道を走っている時だった。
おんぶしてもらうのは初めてのことだったが、それよりも父が自分の脚で走っていることに驚いた。
「パパ、はしれるの……?」
「……ん? ああ、走れるだけじゃないぞ。バク宙や月面宙返りだってできる」
「ぼく、ゆめをみたんだ」
「ほう、どんな夢だい?」
「パパがつなわたりしているの」
「……なんだ、倉庫にいたとき、もう起きてたのか?」
「そうこ? ううん、ちがうよ」
「ん?」
「……まえ、テレビでみた『さーかす』で」
「…………」
「パパ、かっこよかったんだよ」
「…………『かっこよかった』じゃない。これからもたくさん見せてやるぞ、パパのかっこいいところを」
「パパ、ないてるの?」
「……泣いてねえよ」
だが、ドンは思い出した。
かつて自分が所属していたサーカス団は経営危機のため解散を迎えようとしていたことを。
自分が戻ったとしても公演ができるかどうかもわからないし、
別の働き口のツテもなかった。
(前途多難だが……やるしかねえよな。『万事を尽くして天命を待つ』とも言うしな……)
走行する高級車の車内。
部下が運転し、後部座席にギボンズが座っていた。
「サー・ヘクター・ギボンズ、どういうつもりですか?」
「お言葉ですが、あの現場を見た者を見逃すというのは……」
ギボンズはふてぶてしく笑って言った。
「あの男は強いぞ。始末するのはいろいろな意味で、骨が折れる」
「もちろん、すぐに足取りを追うんですよね?」
「……いつ私がそうしろと言った?」
「さっき、『会いに行く』とおっしゃいませんでしたか?」
「……ああ、それは君たちには関係のないことだ」
「は?」
「とにかく、今回の件についてはもっと簡単な解決方法がある。
……そろそろ、あの男のうまみもなくなってきたころだからな」
「……?」
「口封じするのは、何もドンじゃなくてもいいということだ。あの男より彼のほうが、私にとってはずっと価値のある存在だ……」
それから1週間後。
新聞の1面のトップニュースに取り上げられたのは、
ロンドン警視庁の警視副総監が自宅にて死亡していたという事件だった。
同庁の調査によれば自宅からは怪しい痕跡などは見つかっておらず、副総監は『自殺』したものとみられているようだ。
現在も自殺の原因をつきとめるべく捜査が続けられている。
そして同じ1面の隅っこのちいさな記事の見出しには、
『ギボンズ卿、老舗サーカス団へ支援金』『サーカス振興で文化促進』とあった。
掲載された写真には、帰ってきたサーカスのスターと資金を支援した英国紳士が笑顔で固い握手を交わしている様子が写っていた。
――驚いたよ、あんたがこんなことしてくれるなんてな。
――なに、ただの気まぐれさ。また道を踏み外したとき会いに来るよ、君を始末するためにね。
――はは、それじゃあ一生、お目通り叶わないかもな。
――そうかね、それは残念だ。
――ありがとうよ、サー・ヘクター・ギボンズ。
――こちらこそ、久しぶりにいいものを見させてもらった。
――さらばだ、友よ。
【タイト・ロープ vs フリーズ・フレイム】
STAGE:廃工場の倉庫
勝者……なし(決着つかず)
出演トーナメントキャラ
No.449 | |
【スタンド名】 | タイト・ロープ |
【本体】 | ドナルド・“ドン”・ハーディン |
【能力】 | 張力を調整できる縄を操作する |
No.4861 | |
【スタンド名】 | フリーズ・フレイム |
【本体】 | サー・ヘクター・ギボンズ |
【能力】 | 殴ったものの時間を「凍結」させる |
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