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オリスタトナメ 外伝②

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jupiter

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だれでも歓迎! 編集
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あらすじ

生まれ故郷の日本に帰ってきた本編の主人公の加賀御守道。
そこで出会ったのは、かつてトーナメントで加賀が勝利した桐生麗だった!
加賀に負けて以来、ずっと空港で働きながら待っていたという桐生だったが、
加賀が交通費をスラれたことで、加賀の運転手になることを条件に再戦をとりつけた!
加賀と桐生は秋田県へ向かう! 果たして加賀の目的とは……?

一方、とある建物に『奇妙な力』で閉じ込められてしまった六郎と脚蛮醤。
彼らはいったいどうなってしまうのか?
そして、二人が手も足も出なかった男の正体は………!?

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―――翌日。

秋田県八幡平、折干スキー場のホテルの駐車場。


加賀「―――着いたわね。」

N・C「茶色ノ壁ニ6階建テノ建物……間違イネェナ」

桐生「………………」

加賀「どうしたの桐生助手、茹で上がったカエルのような腑抜けた顔して」

桐生「どうしたもこうしたもあるかよッ!! 道中寄り道ばっかりさせやがって!」

加賀「仕方ないじゃない、いろいろ観光するのも目的だったんだもの」

桐生「東京、埼玉、栃木、福島、宮城、岩手と通ったとこ全部で飲み食いしやがって……」

加賀「あなたもいい思い出ができたんじゃない? ゆうべは民宿のひとつ屋根の下で寝て……」

桐生「俺は車中泊だったろーが!」

加賀「そうだっけ」

桐生「しかもゼンブ俺に金払わせてだ!!」

N・C「ケッコウ金持ッテタナ、オマエ」

加賀「自分で言っておいて何だけど、リベンジのためとはいえここまでよくやるわ」

桐生「く……職場復帰できないほどコテンパンにしてやるからな……」

加賀「まあ夫婦漫才はこのへんにしときましょう」

桐生「…………もういいや。そもそも、なんでてめーはこんなヘンピなとこまで来たんだ?

   まだ雪も降ってないこの時期にスキー場なんて……」

加賀「これを御覧なさい。」

そう言って加賀はポケットから1封の封筒を取り出し、桐生に差し出した。

桐生「……なんだこれは?」

桐生は不審に思いながら封筒の中の1枚の便箋を取り出した。
そこに書かれていた文章は、かつて彼も目にした事のある文章とよく似ていたものだった。

桐生「これは! まさか、あのトーナメントのか?」

加賀「ええ、きっとそうね。その手紙には『以前、私達が戦ったあのとき』と同じように、今日の日時と、この場所が記載されていた」

桐生「なるほどな……」

加賀「前の戦いで、結果として私は勝ちあがった……。しかし、私は何も得られなかった。私の求めていたものはおろか、富や財産、お金でさえも……」

N・C「金バッカダナ」

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桐生「求めていたもの……?」

加賀「…………」

加賀が求めていたもの……それは、彼女が追う殺人鬼『切り裂きジャック』の情報だった。
その殺人鬼は加賀が警部に昇進した頃にロンドンを騒がせた大罪人であり、彼女の宿敵であった。
大規模な連続殺人を行ったにもかかわらず、ロンドン市警は殺人鬼の足取りを一切掴むことができなかった。

途方にくれていたとき、彼女の元に舞い込んできたのは先のトーナメントの招待状であった。
その主催団体は警察の情報網をもってしても実態を掴むことのできないものだった。
謎に包まれた団体……もしかしたら、殺人鬼となんらかのつながりがあるかもしれない。
そう思った加賀は主催団体との接触をはかるためにトーナメントへの参加を決意した。

しかし、勝ち進みはしたものの、大会のなかで主催団体と接触することは叶わなかった。
トーナメントで出会ったのはボクっ娘占い師、小金持ちDQN、巨乳女子高生。
もちろん、殺人鬼とは何も関係のない者たちだった。

桐生「誰が小金持ちDQNだ」

加賀「しまった、モノローグを声に出してしまったわ」

桐生「しかし、優勝しても何もなかったとはな……。賞金でも出ると思って、勝ち上がったらおニューのマシンの資金にしようとか考えたのに」

加賀「優勝しても何ももらえない……その可能性もあるわね」

桐生「え? 他に何かあるのかよ」

加賀「あるいは……『まだ終わっていない』とか」

桐生「…………!!」

加賀「おっぱいちゃんとの戦いのあとにまだ続きがあって、それがもし今日なのだとしたら?」

桐生「そしたらこのホテルには……」

加賀「相当な強者がいる……ということかもね。ま、どちらの可能性にしても、私は今日の話を断るわけにはいかないのよ。どうしても情報を得たいからね。

   主催団体に足元を見られてるような気がして腹が立つけど」

桐生「…………」

加賀「じゃあ、行ってくるわね。ニール・コドリング、扉を開けたらすぐに戦闘体勢に入ってよ」

N・C「ワカッタゼ」

桐生「待て、俺も行くぜ」

加賀「……駄目よ。あなたには招待状が届いていないでしょう。あなたといっしょに戦って失格になるなんてゴメンだわ」

桐生「そうじゃない、言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ。ここでおまえに万が一があっては困るからな、俺が立ち合わせてもらう」

加賀「………………」

桐生「心配するな、俺は決して戦いに介入しない。石像とでも思ってくれればいい」

加賀「………」

『……ためにずっと待っていたんだ』

桐生に背を向けた加賀のほうから、かすれた声が聞こえた。

桐生「…………?」

<言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ>
<言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ>
<言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ>
<言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ>

桐生「な……な、な、な、な!?」

加賀はポケットの中から小型のICレコーダーを取り出した。
ICレコーダーからは先ほどの桐生の声がリピート再生されている。

加賀「プクククク……うすら寒いセリフ吐きやがったわ」

加賀は腹を抱えてプルプル震えて笑いをこらえていた。

桐生「な、なんてモン持ってんだテメエ!!」

加賀「警察官の七ツ道具のひとつ、ICレコーダー……!! 私はずっとあなたとの会話を録音していたのよ。

   かつてはネゴシエーターをしていたこともあってね。相手の弱みを握ることは交渉の基本よ」

桐生「それは交渉じゃねえ、イジメだ!!」

<言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ>
<言っただろ? 俺はおまえに勝つためにずっと待っていたんだ>

桐生「や、やめろお」


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加賀「ハァー……ついてきたいのなら勝手になさい。ダビデ像のポーズでもして、くれぐれも私の邪魔はしないで頂戴ね」

桐生「く……早速自分の言動を後悔し始めてきたぜ……」

加賀「前フリが長すぎたわ、さっさと入りましょう」


加賀はホテルの入り口のガラス戸を押し、中へ入った。続いて桐生もホテルの中へ入り、ガラス戸は閉ざされた。


エントランスに設置された監視カメラが二人の姿を捉えた。
ホテルの監守室に並べられたモニターのひとつに、その様子が映し出されていた。

薄暗い室内に二人の男の声だけが響く。

<……『あの女』、戻ってきたぞ>

<よし、『俺たちをここに閉じ込めた』恨み、晴らさせてもらおうぜ>

<……! もうひとり、誰か連れてきたみたいだぞ?>

<……俺とお前と同じく、ここに閉じ込めるつもりなのか!?>

<いや待て、ヤツの仲間という可能性もある……油断するな>

<そうだとしても問題ない、『作戦どおり』いこう>

<ああ、『今度こそ』あいつを捕まえてやる!>

<おう!>

男は音をたてないよう、ひっそりと部屋を出て行った。

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――ホテル内、エントランスホール。
天井の照明は点いておらず、非常口の緑色のライトだけがぼんやりとホールを照らしていた。

ホテルとはいってもそれほど広くはなく、入り口の左手にフロントがあり、その向かい側にはスキー客用のロッカー室がある。
フロントの前を通り過ぎれば、テーブルとソファーが並ぶ小さなラウンジスペースがあり、その奥にはエレベーターホールとレストランへと入る扉があった。

加賀「夏季休業中だから当然なんだろうけど、やっぱり客や従業員はいないみたいね」

桐生「それはそうだが、おまえの対戦相手の姿も見えないな」

加賀「ここに着いたときには1台も車は停まってなかったし、まだ来ていないか……」

桐生「どこかに潜んで待ち伏せているかもな。おまえのスタンド能力を使えば、この暗闇の中にまぎれてスタンドに偵察させることもできるんじゃねえか?」

加賀は人差し指を口にあて、静かにするよう桐生に促す。

加賀「……余計なことは言わないで頂戴。どこで聞き耳を立てているかわからないからね」

二人は立ち止まったまま、周囲の音に注意を向ける。

ゴウ――――ン……

桐生「……何だ、この音は?」

加賀「これは……エレベーターね。エレベーターの扉が開く音……」

と、エレベーターホールのあるほうを向いたとき、その方向から何かが猛スピードで迫ってきた!

加賀「ッ!!」

間一髪で避け、飛んできたものは加賀と桐生の後方へそのまま向かっていき、壁にぶつかったとたん、小さな爆発を起こした。
今は跡形もなく砕け散ってしまったが、飛んできたものは人の腕の長さ、太さほどの棒状のものだった。

桐生「今ハッキリと見えた……あればロケット弾だ」

桐生は自らの反射神経と動体視力には相当の自信を持っている。
それがどれほどのものかを加賀も彼との戦いを通して知っている。

加賀「対戦相手はそんな兵器を持ち込んでいたというの……?」

桐生「……ここをどこの国だと思ってやがる、そんなものが簡単に手に入るわけないだろ。

   それに、エレベーターホールはむこうの突き当りを曲がったところ……そこからじゃロケット弾は一度曲がってこなければならない」

加賀「じゃあやはり、スタンド攻撃……!」

そして再び、ロケット花火を打ち出すときのような、バーナーが噴き出すときのような音が響き、ロケット弾がこちらに向かって撃ちだされた。

加賀「……また避けなきゃ」

桐生「それじゃあダメだッ!」

待ち構えようとする加賀に対し、桐生は逆にロケット弾に向けて駆け出した!

桐生「『コスモ・スピード』!!」

ロケット弾が接近すると同時に桐生は自身のスタンドを繰り出し、ロケット弾を弾いて軌道を変えた。
ロケット弾は天井に向かったが、天井に当たる前に爆発した。

加賀「…………!」

桐生「このロケット弾がスタンド攻撃なら、爆発のタイミングも本体の意志で決められるだろう。今、天井に着く前に爆発したのが証拠だ!」

加賀「ふ……一手、あなたに先んじられたわね」

桐生「フン」

加賀「けれど、あなたは私の戦いに手を出さないんじゃなかったの? やっぱりアレかしら、一夜を共にした私に情が湧いたとか……」

桐生「違うッ! いつまでふざけてるんだおまえは!」

加賀「ふざけてないわ、からかってるのよ」

桐生「~~~~~~ッ。……さっきの攻撃は、おまえだけじゃなく俺に対しての攻撃でもあった!

   さらに姿を見せずに一方的に攻撃をしかけるその卑劣さに腹が立ったんだよ」

加賀「そう思うのは勝手だけれど、これは私の戦いよ?」

桐生「気にするな、俺はこのホテルというステージに紛れ込んだ野ウサギだとでも思えばいい。

   野ウサギが駆け回り、何をしようがそれはホテルで起こりうる事象のひとつにすぎないのさ」

加賀「自分を野ウサギに例えるなんて……可愛さアピールのつもりなのかしら、気持ち悪いわ」

桐生「思ったことをすぐ声に出すな」


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バシュウ!

再び、ロケット弾が発射される噴射音がエレベーターホールの方向から聞こえた。

加賀「……『ニール・コドリング』!!」

桐生「……! おい、おまえのスタンドでロケット弾をはじけるのか?」

加賀「その必要はないわ」

加賀は、『ニール・コドリング』……インクのスタンドをロケット弾に対して防御させるのではなく、天井に向かってインクをばら撒いた。
『ニール・コドリング』の混じった黒いインクはフロント上部の天井を染めあげる。

桐生「何を…………!!」

桐生は加賀の不可解な行動を見て、自ら再びロケット弾をはじこうと構えたが、ロケット弾は桐生のほうでも加賀のほうでもない、あらぬ方向に飛んでいって爆発した。

加賀「やはり……か」

桐生「ん?」


ゴウ――――ン……

加賀「……エレベーターが行ってしまったようね」

桐生「くそ、追うぞ!」

加賀「待って、敵の能力を分析するのが先だわ。むこうから退いてくれたのなら好都合よ」

桐生「分析……って、ロケット弾の能力だってことは明白。おそらくは遠隔操作タイプだろ?」

加賀「そうかしら? こっちへ向かってきたところをみると操作はできるようだけど、通り過ぎたり、弾かれたあとで爆発したりと操作が雑なのよね」

桐生「……じゃ、自動操縦とか」

加賀「それならなおさら、ロケット弾が通り過ぎるはずはないでしょう」

桐生「…………」

加賀「別にタイプ分析をしたいんじゃないのよ。今確実なのは、ロケット弾を操作できるということ。ただし、その精度は悪い。

   おそらくはロケット弾自体に『目』があるわけじゃないのよ。そして自動操縦でもない」

桐生「じゃあ何が……」

加賀「答えはあれ、よ」

加賀は先ほどインクをばら撒いた天井の隅を指差した。
『ニール・コドリング』が隙間なく塗りつぶした天井に、半球状のものが取り付けられていた。

桐生「監視カメラ?」

加賀「そう、アレを見ながら操作をしていたとすれば、私たちのほうへ向かってきていたことも、操作が雑だったことにも説明がつく。

   インクで目隠しした瞬間に進むべき方向を見失ったのがその証拠よ」

桐生「…………そうか。だがこのスタンド、俺にはかなり相性がいいな。俺のスタンド能力にとってすれば……な」

そう言うと桐生はエレベーターホールへ向かって歩き出した。

加賀「ちょっと、どこへ行くつもりなの」

桐生「俺はエレベーターを見に行く。ヤツが何階に行ったか確認しなきゃな。そしてそのまま追うぜ。

   言っておくが、おまえの指図は受けないからな。俺はただの野ウサギなんだからよ」

加賀「ちょっ……バカなんじゃないの」

加賀の制止にもかかわらず桐生はエレベーターホールへ向かった。
加賀は桐生を追う事はせず、フロントへ視線を向ける。

加賀「今の話、理解していなかったのかしら。監視カメラで見ているということは、敵がどこにいるかハッキリわかっているじゃない」

おそらくはホテル中いたるところに監視カメラは設置されている。
その監視カメラの映像はどこで見ることができるか……
招待状が届いたとき、あらかじめこのホテルを調べていた加賀には目星がついていた。
加賀はフロントから身を乗り出し、「STAFF ONLY」と書かれた扉を開けた。

加賀「フロントの奥……監守室になら!」

考えられる居場所はひとつしかない……ただ、違和感をのこしてはいたが。

加賀は万年筆からスタンドを出し、監守室の扉を開けた。
すぐに攻撃を仕掛けようと敵の姿を探すが……
監守室にはだれもいなかった。

加賀「なん……だと……!」

無機質な蛍光灯の白い明かりに照らされた監守室の中で立ち尽くし、しばらく動くことができなくなった。



to be continued

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