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――長い歴史と経済危機を抱える国、イタリア。
地中海性気候帯に属し、気温が一年中安定していて過ごしやすい。
観光地としても人気が高く、毎年何千万人もの観光客が訪れる。
日本在住の高校生、阪奈李(ハンナ スモモ)もその観光客の一人である。
彼女は学校の修学旅行でイタリアの都市、ローマを訪れていた。
しかし、班ごとの自由行動中に彼女一人だけがはぐれてしまっていた。
彼女は学校の修学旅行でイタリアの都市、ローマを訪れていた。
しかし、班ごとの自由行動中に彼女一人だけがはぐれてしまっていた。
高い壁が立ち並ぶ街の路地、石畳の地面を李はうなだれながら歩いていた。
「うう……まるで迷路みたいだよ……。みんなどこいっちゃったんだろう」
不器用な性格の李は地図を読むのも得意ではないこともあるが、
街は様々な道が網の目のように入り組んでいて、自分がどの方向を歩いているのかもわからなかった。
ゆるやかなカーブの道、下り道や上り道、7つもの道路が交わる交差点を歩いていると、
行けば行くほど仲間とは遠ざかっていくように感じた。
街は様々な道が網の目のように入り組んでいて、自分がどの方向を歩いているのかもわからなかった。
ゆるやかなカーブの道、下り道や上り道、7つもの道路が交わる交差点を歩いていると、
行けば行くほど仲間とは遠ざかっていくように感じた。
「怖いなあ……」
見知らぬ土地で迷い、帰れないかもしれない。
そう思い、涙が出そうになったとき……李の足元を1匹のネズミが通りすぎていった。
そう思い、涙が出そうになったとき……李の足元を1匹のネズミが通りすぎていった。
「ケケッ!!」
「……?」
いや、それはネズミではなかった。同じほどの大きさだったが、それは二本足で走り去っていったのだ。
(今のは……小人?)
「おじょーちゃん、観光客か?」
「!?」
李に突然話しかけてきたのは、そばのオープンカフェのテーブルでエスプレッソコーヒーを飲んでいた男だった。
「は、はい……今は迷子になっちゃってますけど。道を聞こうにもお店が開いてないし……」
「今は昼休みだからな……昼メシ時には本屋だってブティックだって休むんだこの国は」
「そ、そんな……じゃあ私はどうしたらいいんですかあ……」
「あ~~泣くな泣くな! 昼メシ食ったらみんな助けてくれるよ。心配するな、この界隈じゃ悪さするヤツはいないし、どうにかなるって」
「へえ、治安いいんですね」
「治安……いいってことなのかなあ~~。警察はクズばっかだけどよ」
「?」
「ま、とにかくはぐれたときにはあまり動かない方がいいぜ。ここを下れば広い通りに出る。店が開いたら道を聞けばいいさ」
「そ、そうですか。どうもありがとうございました」
「ボン ヴィアッジョ(良き旅を)」
李は軽く会釈をしながら男のいうとおりに道を下っていった。
男は李が見えなくなったのを確認してから、携帯電話を取り出した。
男は李が見えなくなったのを確認してから、携帯電話を取り出した。
「……おう、俺だ。奇妙だが……スタンド使いの少女に会った。……いや、たぶん無関係だろうけどよ。一応伝えとくぜ」
男はチラリと腕時計を見た。時刻は0時45分をまわったところだった。
(治安は……もしかしたらよくねえかもな。特に「きょうに限っては」……)
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李が広い通りに出ると、昼休みが終わりだしたのか心なしか人が多くなっているように感じた。
まわりに人が増えて心細さは薄れつつも、仲間を探しにくくなるのではという不安も募りはじめてきた。
まわりに人が増えて心細さは薄れつつも、仲間を探しにくくなるのではという不安も募りはじめてきた。
「どうしようかなあ……なにか目立つような場所があればいいんだけど……」
周りをきょろきょろしていると、李は周囲の異変に気づきはじめた。
街にあふれでてきた人は、皆同じ方向をみているようだった。
その方向を李も見てみると、建物を挟んだ向こう側の広場から黒い煙が立ちのぼっていた。
街にあふれでてきた人は、皆同じ方向をみているようだった。
その方向を李も見てみると、建物を挟んだ向こう側の広場から黒い煙が立ちのぼっていた。
(何が起きたのかわからないけど……あそこにいけばみんなと逢えるかもしれない。いってみよう)
李が向かった広場は、周囲をいくつかの建物が囲っており、近くには大きな河もあった。
李の見た黒い煙は広場に面した1つの建物から立ちのぼっているのだとわかった。
建物に炎がないのを見ると、火事ではないかもしくは火はすでに消されていたのかもしれない。
李の見た黒い煙は広場に面した1つの建物から立ちのぼっているのだとわかった。
建物に炎がないのを見ると、火事ではないかもしくは火はすでに消されていたのかもしれない。
しかし、それにもかかわらず野次馬たちは建物からだいぶ離れて様子をうかがっていた。
なかには建物の前に出るやいなや逃げるようにして立ち去る者もいる。
その理由は李がコゲた建物の前に出たときにわかった。
なかには建物の前に出るやいなや逃げるようにして立ち去る者もいる。
その理由は李がコゲた建物の前に出たときにわかった。
建物の前には3人の男がいた。
うち2人は黒人で、建物の扉の前に座り込んでいる男はゲルマン系によく見られるごつい顔の白人の男だった。
そのふてぶてしい態度を見るにおそらくこの白人の男がリーダーで、黒い煙の原因も彼らにあるのだろう。
1人の黒人が叫ぶ。
うち2人は黒人で、建物の扉の前に座り込んでいる男はゲルマン系によく見られるごつい顔の白人の男だった。
そのふてぶてしい態度を見るにおそらくこの白人の男がリーダーで、黒い煙の原因も彼らにあるのだろう。
1人の黒人が叫ぶ。
「いるんだろぉ!? この街をシキってる連中がァ!! 街を壊されたくなかったら出てこんかァ!」
「カタギに手ェ出してもいいんだぜェこっちは!!」
「カタギに手ェ出してもいいんだぜェこっちは!!」
2人の黒人は手にもったナタを見せつけながら、周囲の野次馬たちを睨み付けていた。
(……特撮モノのイベントかな?)
李はそう思ったが、まわりにはカメラもないし、イベントスタッフのジャンパーを着ている人も見られなかった。
どうやらこの陳腐なショーは現実のものとして行われているらしい。
彼らは「街をシキっている連中」を探しているようだが、それらしき者たちが現れる気配もない。
どうやらこの陳腐なショーは現実のものとして行われているらしい。
彼らは「街をシキっている連中」を探しているようだが、それらしき者たちが現れる気配もない。
「……チッ、どうやら血を見せねえと出てくれねえみてえだなあ~~~~!!」
そう言うと黒人の1人はズカズカと歩みをすすめだした。
その方向は李に向けられていた。
その方向は李に向けられていた。
李が周囲を見ると、いつのまにか野次馬たちは後ずさっていて自分一人だけが前に立っていた。
「えっ、えっ?」
「おっ? この国の人間じゃねえなあ。だが、かえって都合がイイか……」
黒人は李の前に立ち、ナタを振り上げた。
「う、嘘っ、冗談でしょ……」
「うおらぁああっ!!」
黒人がナタを李めがけて勢いよく振り下ろす――
「うわああああああああああああああああああっっ!!」
断末魔とともに宙に血が吹き出す。
李はその場にペタリと座り込み、目の前にナタと黒人の手首が落ちた。
突然の恐怖で動けなかった李が見たのは、ナタが振り下ろされると同時に目の前で光った……一筋の銀色の光だった。
李はその場にペタリと座り込み、目の前にナタと黒人の手首が落ちた。
突然の恐怖で動けなかった李が見たのは、ナタが振り下ろされると同時に目の前で光った……一筋の銀色の光だった。
座り込む李の隣に、1人の女の子が立っていた。
薄いキャミソールを1枚だけ着ている、肌の青白い女の子。
李はこの女の子を知っていた。かつて謎のトーナメントに出場したときに出会った……波溜流渦(ナミダメ ルカ)だ。
薄いキャミソールを1枚だけ着ている、肌の青白い女の子。
李はこの女の子を知っていた。かつて謎のトーナメントに出場したときに出会った……波溜流渦(ナミダメ ルカ)だ。
「……僕の大切な人に手を出すな」
ルカの手に提げられた銀色の糸には血が滴っていた。
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「ルカさん!? なんでここに?」
「僕はいつでもキミのそばにいるよ。僕はキミの天使だからね……」
「え?」
「い、痛ェよぉ……」
「こ、このメスガキっ!!」
「こ、このメスガキっ!!」
もうひとりの黒人がルカに向かって駆け寄った。
……が、ルカに近づく前に彼の片足がスッパリと切り落とされた。
……が、ルカに近づく前に彼の片足がスッパリと切り落とされた。
「うぎゃあああああああああああああっっ!!」
転んだ黒人の男の脚の切り口から大量の血が吹き出した。
それを見ていた野次馬たちは悲鳴をあげて広場から離れていった。
それを見ていた野次馬たちは悲鳴をあげて広場から離れていった。
「うわ、うわあっ……ルカさん……」
「怖がる必要はないよ、キミは僕が守ってあげる」
「やっと現れたか……この街を牛耳る連中の刺客が……」
今までの様子を顔色ひとつ変えず見ていた白人の男は、ゆっくりと立ち上がった。
「テメェらは邪魔だ、死にたくなかったらそこからどいてろ」
白人の男は負傷した仲間に一瞥もくれず言い放った。
黒人たちは呻き声をあげながら広場から這って離れていった。
黒人たちは呻き声をあげながら広場から這って離れていった。
「あ、あのっ、ルカさんは日本人です、この国とは関係ありません!」
「ああ゛? だがソイツ、カタギのモンじゃねえだろ。そしてソイツが守るテメェもただの人間じゃねえってことだ」
「ええええええええっ!?」
「大丈夫、ヤツをキミに近づけはさせない」
ルカは自身のスタンド、『ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ』の「糸」を自らの手の中に発現させた。
「……僕が天国へ導いてあげる」
そしてその糸を白人の男へ向けて放った。
触れただけでも肌が切れるほどの細さと強靭さを兼ね備えた糸は、白人の喉元へ向かっていった。
触れただけでも肌が切れるほどの細さと強靭さを兼ね備えた糸は、白人の喉元へ向かっていった。
ボッ!
「……え?」
ルカの糸は白人の男の前で燃えて灰になった。
「今飛ばしたのは……金属繊維か何かか? コレであいつらの手首や足を切ったのか……」
「な、なんで僕の糸が燃えたんだ? ちょっとやそっとじゃ燃えたりはしないはずなのに……」
「そおおおりゃああ『ちょっとやそっと』の熱じゃねえからなんだなあああああああ」
「ル、ルカさんっ! あの足元……!」
李が指差したのは、白人の男の足元。
男が立ち上がったコゲた建物の扉付近から数歩歩いた場所の足元まで黒い焦げ目がついていた。
男が立ち上がったコゲた建物の扉付近から数歩歩いた場所の足元まで黒い焦げ目がついていた。
白人の男はさらに歩みを進め、ルカに近づく。
足元の石畳はさらに黒く焦げていき、男の足跡はオレンジ色に燃えていた。
足元の石畳はさらに黒く焦げていき、男の足跡はオレンジ色に燃えていた。
「……『T-REX』」
男が呟くと、その体には溶岩石を思わせる黒くゴツゴツした装甲が纏われた。
装甲は頭まで覆われ、背中からは灰色の煙が吹き出していた。
装甲は頭まで覆われ、背中からは灰色の煙が吹き出していた。
「ス、スタンド能力!」
「コレが俺の能力だ……この街を牛耳っているヤツらを引っ張り出すにはたくさん、たくさん殺す必要がありそうだなああああ。人柱になってもらうぜえええええ、子ジカちゃんに子ブタちゃあ゛ああん……」
「相性がいいとはいえないかな……それでも李は僕が守る……!」
(子ブタって私のことなのかなあ……)
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『T-REX』のスタンド使い、ラッセル・ケマダはかつて『ディザスター』という名の犯罪組織に属していた。
その残虐性、戦闘力を買われてアフリカ、中東地区の幹部を務めていたが、遊び半分で参加した謎のトーナメントにおいてまさかの敗北を喫した。
敗北自体はラッセルの自尊心を傷つけたが、彼にとって痛かったのは、その敗北により組織から追いやられたことだった。
組織の任務での失敗ならまだしも、遊び半分の個人的な戦いで敗北したことが原因で幹部の座から降ろされるなんてことは彼にとって納得できるものではなかった。
そのうえ、それまで自分が就いていた地位には気に食わぬ部下「ミスター・ギボンズ」が就いたと聞いたとき、彼は怒りのあまり酒場を一軒消し炭にした。
組織の任務での失敗ならまだしも、遊び半分の個人的な戦いで敗北したことが原因で幹部の座から降ろされるなんてことは彼にとって納得できるものではなかった。
そのうえ、それまで自分が就いていた地位には気に食わぬ部下「ミスター・ギボンズ」が就いたと聞いたとき、彼は怒りのあまり酒場を一軒消し炭にした。
(ラム肉ちゃんも許せねえが……『組織』はもっと許せねえ。こうなったら食ってやる。『ディザスター』をギボンズもろとも滅ぼしてやる!)
「GIIIIIAAAAAAAッッッ!!」
ボジュゥ ボジュゥ ボジュゥ
背中の噴火口から赤黒い火山弾が放出される。
火山弾は広場の外へ四方八方に飛んでいき、人々の悲鳴や建物が破壊される音、爆発する音が聞こえてくる。
火山弾は広場の外へ四方八方に飛んでいき、人々の悲鳴や建物が破壊される音、爆発する音が聞こえてくる。
「なんで……なんでこんなひどいことするの……? やめて……!」
「何を言っても聞かないよ。ヤツはそういう人間なんだ」
ルカは李の前に立ち、スタンドを発現させた。
「テメェ……スタンド使いだったか子ジカちゃん、ということはソッチの子ブタちゃんもそうなのかああ?」
T-REXを纏ったラッセルがルカめがけ駆け出した。
「骨の髄まで消し炭にしてやるぜえええッッ!!」
向かってくるラッセルに対し、ルカは全く動かなかった。
「……僕の『蜘蛛』は糸繰り上手。イノシシを捕らえる蜘蛛の巣だって一瞬でつくっちゃうんだ」
「…………ッ!!」
ラッセルの前にキラリと光るいくつもの銀色の筋が見えた。
それは広場の街灯と街灯の間に張り巡らされた『ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ』の糸で作られた罠だった。
それは広場の街灯と街灯の間に張り巡らされた『ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ』の糸で作られた罠だった。
「僕の糸はとってもよく切れるんだよ。あっという間にキミを9つの部位に分けてしまう。今夜の晩餐はイノシシのフルコースかな?」
「ククク……俺の得意料理はケバブだぜええ。テメエを脳天からケツ穴まで針でブッ刺して炙り焼きにしてやるぜえええええッッ!!」
ジュウウウウウウウウウッッ!!
「な……!?」
ルカの仕掛けた糸の罠は、『T-REX』の鎧に触れたとたん、火に包まれて溶けてしまった。
「まだ俺の能力を理解していないようだなああああああ! 俺のスーツは超高温なんだぜえええ!? 溶岩が鎧の上を流れてるみてえによおおおおおおお!!」
「……ッ、ガードして! 『ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ』!!」
「ぐるあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!!」
ラッセルの豪快なパンチをルカはかろうじてスタンドでガードした。だが……
ジュウウウウウウウウウ!!!
「ウァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」
受け止めたT-REXの拳からとてつもない熱が放出され、ルカの腕を焼いていた。
「次はノドを掴んで焼いてやるぜえええええッッ!!」
ラッセルはもう一方の拳を振りかぶって、ルカの懐めがけて放った。
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「そうはさせない! 『リアーナ』!!」
ルカをかばって李がラッセルの攻撃をガードした。
放たれた拳を両手で受け止めている。
放たれた拳を両手で受け止めている。
「うっ……く……」
「? ……なんだ子ブタちゃん、何故焼かれねェんだ?」
「『リアーナ』ッ!」
バシッ!
「……ぬうっ!?」
李のスタンド『リアーナ』はラッセルの体を蹴り上げてルカから離れさせた。
「……たっ、焼かれ……煉獄に……!」
「ルカさん! ひどい火傷……!」
「ゴメンね……キミは大丈夫なの?」
「うん、火傷が発生しないようにしていたから……」
「! でもっ……それでも熱さや痛みは……!」
「大丈夫だよ……」
「面白れェなあ……子ブタちゃああ゛ん!」
「『リアーナ』ッ!!」
ラッセルがつかみかかろうと放った両手を、李はリアーナの両手で防いだ。
「く……くっ……!」
「おおん? やっぱり焼かれねえなああああ、コレがテメェの能力か? どうしたもんかなあああ、ブタは火を通さなきゃ食えねえしよお?」
グググググググ……
(ダメだ……! 力では押し負けちゃう……!)
「だが子ブタちゃあん、パワーではずいぶん俺よりも劣るみてえだぜ? 熱への耐性だけじゃあ俺に勝つのは難しいんじゃねえのかあああ?」
(『溶岩』、『火山弾』、『パワー』……なんでこいつが白昼堂々あんなことをしていたのかわかった……。
たとえ警察がいくら来たとしても、スタンド使いが何人かいたとしても、それらすべてを相手にして蹂躙できるだけの力があるからだったんだ……)
「さああああて、どうしてやろっかなあああああああ~~~~」
(……待って、こいつの目的って何だった? 騒ぎを起こして……誰かをおびきよせるつもりだった。そうだ、『この街をシキってる連中』って言ってたんだ! ということは……)
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「決めた。とりあえず子ブタちゃん、テメェはあとにするぜぇ」
ブンッ!
「きゃあっ!」
ラッセルはつかんでいた手を振り払って李をルカから引き離した。
そして、そのままラッセルは震えるルカの前に立った。
そして、そのままラッセルは震えるルカの前に立った。
「料理するのが簡単な子ジカちゃんから殺すことにするぜ」
「ううっ……怖い……地獄……罰、罰がッ……僕に……」
「逃げて、ルカさん!!」
「あ゛ぁ゛っっ……ブッ殺す!!!」
グオオオオオオオオオオオオ!!
「…………?」
一瞬、死を受け入れたルカだったが、自身が煉獄の炎に包まれていないことに気づき、おそるおそる目を開けた。
目の前には大きな影と、小さな影が立っていた。
大きな影の向こうにはこちらを見つめる李の姿があった。
ラッセルの攻撃を止めたのは、自身のスタンドでも、李でもない。
ラッセルのスタンドによく似た、赤色のボディスーツの少女だった。
「『ブッ殺す』……って言ったわね、今?」
「ああん?」
「私達ギャングの世界にはそんな言葉はないのよ。そんな弱虫の使う言葉は……」
「何モンだ、テメェ……?」
「『パッショーネ』」
「!!」
「暗殺チーム所属、『アルスーラ・アーリッサ』よ。スタンド名は『ファイヤー・アンド・ザ・サッド』」
「やっとお出ましか……『パッショーネ』!!」
元『ディザスター』幹部、ラッセル・ケマダがにローマにやってきた理由は、
自分を捨てた組織を潰すために、ディザスターと同等かそれ以上の力を持つと思われる、イタリアの『パッショーネ』を乗っ取るためだった。
自分を捨てた組織を潰すために、ディザスターと同等かそれ以上の力を持つと思われる、イタリアの『パッショーネ』を乗っ取るためだった。
to be continued