第1話 黄金の邂逅
(もう四時半かよ・・・あぁ、どうしよう・・・)
俺は今、ネアポリスの街の裏路地を走り回っている。
ついさっきまで、俺はある友人と街で遊んでいた。
ついさっきまで、俺はある友人と街で遊んでいた。
彼は喧嘩っ早い・・・というか、何かにつけて自分を強く見せようと、よく他人に喧嘩を売る人だった。
彼が俺とつるんでいるのも、ある種自分を強く見せるためなんじゃあないかと、俺は薄々感じている。
というのも、俺は結構気が弱いタイプで、不良との喧嘩なんてまっぴら御免な性格なのだ。
彼が俺とつるんでいるのも、ある種自分を強く見せるためなんじゃあないかと、俺は薄々感じている。
というのも、俺は結構気が弱いタイプで、不良との喧嘩なんてまっぴら御免な性格なのだ。
そして今俺は、はぐれてしまった友人を捜すため、裏路地を走っている。
確か・・・
俺が友人から目をそらしている間、彼の「待てやゴラァ!」という声を聞いた。
そして俺が振り向いた時は、既に彼は裏路地の中へと走っていったのだ。
それ以来、彼の姿が見当たらない。
そして俺が振り向いた時は、既に彼は裏路地の中へと走っていったのだ。
それ以来、彼の姿が見当たらない。
恐らく、友人はひったくりにでも合ったのだろう。
強気な彼のことだから、相手がどんな奴であろうと追いかけてブチのめそうとするに違いない。
強気な彼のことだから、相手がどんな奴であろうと追いかけてブチのめそうとするに違いない。
たとえ相手が・・・
ギャングであろうとも・・・
ギャングであろうとも・・・
「あッ! ・・・!!」
数分が経ち、俺が友人の姿を見つけたとき、思わず叫び声をあげそうになった。
そこには友人が、一人のチンピラ風の男と対峙していたのだが・・・
友人はチンピラと喧嘩を“しているようには見えなかった”。
友人はチンピラと喧嘩を“しているようには見えなかった”。
というのも、その時俺の目には、「見えてはいけないような何か」が、チンピラの側に存在しているように見えたのだ。
その存在は、「人のようであって、明らかに人ではなかった」・・・
全身は白く輝き、隆々とした体つきは、さながら守護神のような雰囲気が漂っている。
そして、その存在には下半身が無かった。
上半身のみの存在が、二つの奇妙な機械と共に浮遊していた。
そして、その存在には下半身が無かった。
上半身のみの存在が、二つの奇妙な機械と共に浮遊していた。
「何なんだ・・・」
俺はそう呟くしかなかった。
友人は満身創痍であった。
息が荒く、口から血が垂れている。
息が荒く、口から血が垂れている。
「ロッソ・・・こっちに来ちゃあ駄目だ・・・すぐに逃げろ・・・ッ!」
友人は俺に気付くとそう宣告した。
だが俺は動けなかった。チンピラに取り憑いているあの存在が・・・あまりにも強大に見えた。
だが俺は動けなかった。チンピラに取り憑いているあの存在が・・・あまりにも強大に見えた。
「友達か? いい所に来たじゃあねぇか。
おめぇにとってのいいATMだと思うぜ、フフフッ!」
おめぇにとってのいいATMだと思うぜ、フフフッ!」
チンピラは友人にそう言った。
いつもだったら友人が激昂するような言葉だったが、今の友人にはもうそんな余裕は無い。
いつもだったら友人が激昂するような言葉だったが、今の友人にはもうそんな余裕は無い。
「逃げろロッソォ!」
友人にそう怒鳴られても、俺の足は一歩も動かなかった。
俺・・・「ロッソ・アマランティーノ」は、ここネアポリスで生まれ育った。
昔から引っ込み思案な子だったが、まあ友達がいないわけでもなく、平穏無事な生活を送ってきた。
ただ、俺は何故か霊感がかなりあるらしく、今まで何度も幽霊を見たことがあったし、会話してしまったこともある。
そういえば、俺の父さんも幽霊が見えるとか言ってたっけ。
霊感とは遺伝するものなのか・・・
霊感とは遺伝するものなのか・・・
ひいお爺ちゃんの霊、病院で死んだ人の霊、野良猫の霊、投身自殺した人の霊・・・
どれも見たときは驚いたが、恐怖はあまり感じなかった。
どれも見たときは驚いたが、恐怖はあまり感じなかった。
だが、今目の前に存在する「あれ」は明らかに違う。
幽霊のようでもあるが、その姿はあまりにも奇怪すぎる。
なんといっても、あの存在は纏っている「オーラ」が違った。
何もかもを寄せ付けない、圧倒的なオーラ・・・とてもこの世のものとは思えない存在であった。
幽霊のようでもあるが、その姿はあまりにも奇怪すぎる。
なんといっても、あの存在は纏っている「オーラ」が違った。
何もかもを寄せ付けない、圧倒的なオーラ・・・とてもこの世のものとは思えない存在であった。
「ヌオオオオオオォォォォ!!」
不意に友人がチンピラに飛びかかる。しかし「あの存在」が、チンピラへの攻撃を許さなかった。
「ぐぁッ!」
謎の存在は友人の首をつかんで持ち上げる。
友人はジタバタするが、謎の存在は杯を高く掲げるが如く、微動だにしなかった。
友人はジタバタするが、謎の存在は杯を高く掲げるが如く、微動だにしなかった。
友人には、あの存在が見えないだろうか?
「おいおい、まだやる気かァ? そろそろ観念したらどうだ?
いきなり財布を盗っちまったのは、そりゃあ謝るよ。だがよォ、年上への礼儀ってモンがあるんじゃあねぇのか?」
いきなり財布を盗っちまったのは、そりゃあ謝るよ。だがよォ、年上への礼儀ってモンがあるんじゃあねぇのか?」
チンピラが友人に言った。
「お前にゃあ“これ”が見えねえだろ? 突然殴られたり、こうやって首根っこ掴まれて空中に浮いたりして、訳わかんねぇよなァ?
こいつぁ『スタンド』っつーらしいぜェ。まぁ古い言い方をすりゃあ『超能力』ってとこかぁ」
こいつぁ『スタンド』っつーらしいぜェ。まぁ古い言い方をすりゃあ『超能力』ってとこかぁ」
(スタンド・・・?)
ドドドドドドドドドドドドドドド・・・
一方友人は、もはやチンピラの言葉を聴くこともできない状態だった。
謎の存在によって少しずつ首が絞められ、顔面は青くなり、白目をむき始めたのだ。
謎の存在によって少しずつ首が絞められ、顔面は青くなり、白目をむき始めたのだ。
そしてついに、友人の腕がダラリと垂れ、動かなくなった。
「ケッ」
ドサッ
ドサッ
謎の存在が、完全に気を失った友人を地面に投げ捨てると、チンピラは俺に向かって言った。
「おめぇの友達はよォ、ちと生意気が過ぎると思うぜェ。今度からキチンと注意しといてくれよな」
「ぁ・・・ぁ・・・」
チンピラが近づいてくる。
俺は恐怖していた。
チンピラが近づいてきたからではない。「あの存在」・・・スタンドが近づいてきたからであった。
俺は恐怖していた。
チンピラが近づいてきたからではない。「あの存在」・・・スタンドが近づいてきたからであった。
「俺は『ビアンコ』ってんだ。とりあえず、出来の悪い友達に変わって、俺に金払ってくんねぇか?」
「・・・・・・・・」
「どうした? もしかして、おめぇにも“これ”が見えんのか?
ほぅ、だったら凄いことだぜ、どうだ? 俺のスタンドは? 『エイフェックス・ツイン』って名付けたんだぜ」
ほぅ、だったら凄いことだぜ、どうだ? 俺のスタンドは? 『エイフェックス・ツイン』って名付けたんだぜ」
人のようであって、明らかに人ではないその存在・・・
「スタンド」と呼ばれるそれが、今まさに俺の目の前まで迫ってきている。
俺は恐怖と絶望に襲われていた。
「スタンド」と呼ばれるそれが、今まさに俺の目の前まで迫ってきている。
俺は恐怖と絶望に襲われていた。
「あんまりビビらなくても大丈夫だぜェ。今あるだけの金を素直に払ってくれれば、なんにもしねぇからよ」
俺は震えながら、尻のポケットにある財布に手を伸ばした。
「そうそう、その素直さが大事なんだぜ。『礼儀』っつーのはそういうもんだ。
ほら、また丁度いい所に友達2号が来たみたいだぜ」
ほら、また丁度いい所に友達2号が来たみたいだぜ」
(友達・・・2号・・・?)
俺の後ろから近づいてきたのは、見た目は俺と同い年くらいの少年であった。
「あいつもおめぇの友達だろ? あいつにも先の友人の責任とって貰うからな!」
全く見覚えのない少年であった。綺麗な金色の髪を前で3つにカールさせ、後ろでは長く伸ばして編んでいる。
(こっちに来ちゃ駄目だッ!)
そう叫びたかったが、目の前に迫る圧倒的な存在(スタンド)に恐怖していた俺は、声を出すことすらできなかった。
だが、後に俺は別の理由で声を失うことになる。
だが、後に俺は別の理由で声を失うことになる。
金髪の少年は、俺達の近くまで来ると、ビアンコにこう言い放った。
「立ち去れ、今すぐにッ!」
「・・・んだと?」
「立ち去れと言っているんだ。
こんな子を襲って金を巻き上げるなんて、恥ずかしくないのか?」
こんな子を襲って金を巻き上げるなんて、恥ずかしくないのか?」
「なんだてめぇ・・・随分とヒーロー気取りだな。さっきのガキより生意気だぜ」
ビアンコの言葉には殺意が篭もっていた。
しかし、俺の目の前にいる金髪の少年の目には、殺意を遙かに凌ぐ「意志」があるように見えた。
「ざけんじゃねぇぞ!!!」
しかし、俺の目の前にいる金髪の少年の目には、殺意を遙かに凌ぐ「意志」があるように見えた。
「ざけんじゃねぇぞ!!!」
ビアンコは急に大声を出し、傍らのスタンドを少年に差し向ける。
「『エイフェックス・ツイン』!!」
(駄目だ、終わったッ!)
スタンドの拳が少年に迫り、俺は思わず目をそらした。
だが・・・
だが・・・
「『ゴールド・エクスペリエンス』!!」
少年がそう叫んだのを聞き、俺はすぐに少年を見た。
この時、俺は再度驚愕し、声を失った。
この時、俺は再度驚愕し、声を失った。
もう一つの「スタンド」だ・・・!
もう一つ、黄金色に輝く守護神が、ビアンコのスタンドの拳を受け止めていた。
もう一つ、黄金色に輝く守護神が、ビアンコのスタンドの拳を受け止めていた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
「何だと!? 『スタンド』! てめぇも『スタンド使い』なのかッ!?」
驚いたのは、俺だけではなかったようだ。
「てめぇ、こいつのダチ公じゃねぇな! ナニモンだよおい!」
「これ以上やるとお前が血を流すことになる・・・今すぐ引け」
「答えろってんだよォォォ~~~~!!!
ヌアアアアァァァァ!!!」
ヌアアアアァァァァ!!!」
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!
パニックに陥ったようにも見えるビアンコが、少年に向かって嵐のような連打を浴びせる。
しかし、少年の黄金色のスタンドは、その凄まじい拳の一つ一つを難なく受け止めていた。
しかし、少年の黄金色のスタンドは、その凄まじい拳の一つ一つを難なく受け止めていた。
「無駄・・・無駄なんだ・・・何をやっても・・・」
怒りとも恐怖とも取れる、鬼のような形相で少年に襲いかかるビアンコとは対照的に、
少年は驚くほどの冷静さを保ちながら「スタンド」を操っている。
少年は驚くほどの冷静さを保ちながら「スタンド」を操っている。
あぁ・・・何なんだ・・・俺は夢でも見ているのか・・・?
数十分前までは、ごく普通の少年としてこの街に居たはずいたのに・・・
数十分前までは、ごく普通の少年としてこの街に居たはずいたのに・・・
友人がこの路地裏に駆け込んでから、運命の歯車が狂いだしたのだ。
いや、「狂いだした」というのは間違いかもしれない。
もしも運命の歯車が正常に動作していて、俺が今ここにいるのも“正しい運命”なのだとしたら・・・?
いや、「狂いだした」というのは間違いかもしれない。
もしも運命の歯車が正常に動作していて、俺が今ここにいるのも“正しい運命”なのだとしたら・・・?
今目の前で繰り広げられている、常識を超越した戦いを、素直に受け入れるしかないのだろうか・・・?
少年は一歩後ろに退き、ビアンコとの間合いを取った。
ビアンコは汗を噴きだし、息を荒げている。
ビアンコは汗を噴きだし、息を荒げている。
「はぁ、はぁ・・・ざけんなよ・・・『スタンド使い』だと?」
「無駄だ・・・これ以上無駄な体力を使わせないでくれ・・・」
「生意気すぎて反吐が出るぜ・・・俺は年上に対して礼儀のねぇ奴が一番嫌いなんだよ!!」
「まだやる気か? ならば暫く眠ってもらうぞ」
「フ・・・フフッ、あぁ、打ってこいよ・・・ほら来いや」
それまでのパニック状態が嘘のように、ビアンコは急に冷静さを取り戻した。
(・・・何故だ?)
少年はスタンドを出したまま、ビアンコをじっと睨んでいた。
そしていきなり前に踏み込んだかと思うと・・・
そしていきなり前に踏み込んだかと思うと・・・
ドガァッ!
「ぐふッ!」
ダメージを受け、後ろに吹き飛んだのは・・・
少年の方であった。
少年の方であった。
ドシャアァァッ
(!? 一体何故だ? 先に踏み込んだのは少年の方なのに!)
「ッハハハハ! ざまあねぇな!」
ビアンコは高笑いしている。
ダメージを受けた少年が地面に倒れたまま言った。
ダメージを受けた少年が地面に倒れたまま言った。
「“壁”・・・見えない壁があった。それがお前の能力か」
「ほー、随分勘が鋭いな。そうだ、これが俺の『エイフェックス・ツイン』の能力だ。
ほら、左右をよく見ろよ」
ほら、左右をよく見ろよ」
!
いつの間にか、俺の後ろの方に、あのビアンコのスタンドと一緒に浮いていた機械のようなものがあった。
少年から見ればビアンコとの間に左右二つ、離れて浮いている。
少年から見ればビアンコとの間に左右二つ、離れて浮いている。
「『衛星』だ。この二つの『衛星』は透明な『壁』を発生させて攻撃を跳ね返すッ!
てめぇはこのカウンターをモロに受けたんだぜ!」
てめぇはこのカウンターをモロに受けたんだぜ!」
「そしてッ!」
ビアンコが倒れている少年にズンズンと歩み寄る。
「ここでてめぇの敗北は決定した! クソ生意気なガキめ、頭をぶっ潰してやるぜ!」
駄目だ、今度こそ少年は・・・!!
「ヌアアァァァァァァァァ!!」
その時、俺にはビアンコの雄叫びに混じって、少年の声が聞こえたような気がした。
「カウンター? それならば・・・
この『ゴールド・エクスペリエンス』にも優秀なカウンターが存在する・・・」
この『ゴールド・エクスペリエンス』にも優秀なカウンターが存在する・・・」
ドガドガドガドガドガドガドガドガ
ズガァーーーン!!!
ズガァーーーン!!!
凄まじい轟音と共に、地面が粉砕される。
少年は・・・死んだ・・・のか?
辺りは静寂に包まれた。
思えば、俺はここに来たときから一歩も動いていない。
思えば、俺はここに来たときから一歩も動いていない。
砂埃がおさまると、そこにいたのは・・・
全身に打撃を受け、大の字になって倒れるビアンコと、無傷の少年の姿があった。
(・・・!? 一体何が?)
地面が瓦礫と化している中で、少年はゆっくり立ち上がって言った。
「『ゴールド・エクスペリエンス』によって地面を何匹かの虫に変えていた。
攻撃の反射効果を持つその虫を、お前は無茶苦茶に叩いたのだ。
あとの攻撃は防ぐことなどたやすい」
攻撃の反射効果を持つその虫を、お前は無茶苦茶に叩いたのだ。
あとの攻撃は防ぐことなどたやすい」
虫? 反射効果?
何が何なのか分からないでいる俺に向かって、少年は服の埃を払いながら話しかけてきた。
何が何なのか分からないでいる俺に向かって、少年は服の埃を払いながら話しかけてきた。
「今すぐここから逃げた方がいい。
あそこで倒れている子を病院に連れていってくれ。ここから近いはずだ」
あそこで倒れている子を病院に連れていってくれ。ここから近いはずだ」
「ぁ・・・」
何を喋ったら良いのか分からなかった。
その時、向こう側から一人の男が駆けてきた。
「あぁ居た居た、捜したっスよォ~。急にいなくなって・・・」
「いやぁ、すみません」
男は少年を捜していたらしい。
少年はうやうやしく返事をしている。
男は俺達が居た場所の有様を見て言った。
少年はうやうやしく返事をしている。
男は俺達が居た場所の有様を見て言った。
「・・・また・・・“一暴れ”したんスか・・・?」
「はい・・・そうです」
「お人好しなのはいいんスけどねぇ~、
あんまり堅気を巻き込むのはマズいと思いますよォ~」
あんまり堅気を巻き込むのはマズいと思いますよォ~」
「そうですよね・・・すみません」
間延びした喋り方の男と、金髪の謎の少年・・・
一体何者なんだ?
一体何者なんだ?
どちらも敬語で話しているが、どっちが上司なのだろうか?
「車の方は用意してありますから、すぐに出発できますんで」
「ありがとう、このまま行くことにしますよ。
その前に、あの子に言っておきたいことが・・・ッ!!」
その前に、あの子に言っておきたいことが・・・ッ!!」
「何ッ!」
「はぁ・・・はぁ・・・ざけんなよ・・・」
本当に一瞬の出来事だった。
倒れていたはずのビアンコが、急に俺を後ろから押さえつけ、動けなくしたのだ。
勿論スタンドも出している。
勿論スタンドも出している。
「てめぇら動くな!! 動いたらコイツの頭をカチ割るッ!!
どっちかが銀行にでも行って、今すぐ100万ユーロ持ってこいや!!」
どっちかが銀行にでも行って、今すぐ100万ユーロ持ってこいや!!」
全身をボコボコにされ、顔も醜く変形したビアンコは、もはや理性を失っていた。
「・・・ま~た、面倒くさい奴が居るもんスねぇ・・・」
男がリボルバー式の拳銃を取り出す。
少年もスタンドを出していた。
少年もスタンドを出していた。
「動くなっつってんだろがァーーーッ!!」
ビアンコのスタンドの拳が、俺の頭に押しつけられる。
その時の俺は恐怖を通り越して頭が真っ白であったが、少年と男の行動だけは、何故かはっきりと記憶に残った。
その時の俺は恐怖を通り越して頭が真っ白であったが、少年と男の行動だけは、何故かはっきりと記憶に残った。
「奴は見えない壁を作っています。そこを攻撃しないように」
「はい、了解っス」
ドォーーーン!!
男は天に向かってリボルバーを発砲した。
「威嚇のつもりかァ!! ざけんじゃねぇよ!! もうコイツを・・・」
ビアンコのこの言葉を聞いたときから、俺は頭を割られる覚悟をしていた。
だがいつまで経っても、スタンドの拳は飛んでこなかった。
そのかわりに飛んできたのは・・・
そのかわりに飛んできたのは・・・
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ビアンコの断末魔の如き悲鳴だった。
ビアンコはよろめき、俺から手を離した。
それと同時にスタンドも消え、俺は恐怖から解放されたのだった。
それと同時にスタンドも消え、俺は恐怖から解放されたのだった。
「よっしゃあ! ナイスだぜ『ピストルズ』!」
俺はビアンコから離れながら、男がピストルズと呼んだ方向を振り向いた。
「オレノオカゲダナ! カクドガバッチシダッタゼ!」
「チゲーダロ! オレガミギニチョウセツシタカラダ!」
ミニサイズの小人のようなものが、空中でなにやら言い争いをしている・・・
あれも「スタンド」の一種なのか!?
あれも「スタンド」の一種なのか!?
「『壁』なんてモンは越えりゃいいだけの話だ。
10メートル位まで上がりゃ、壁を越えて弾丸が飛んでくぜ」
10メートル位まで上がりゃ、壁を越えて弾丸が飛んでくぜ」
もしかして・・・
あの小人のようなスタンドが、弾丸の動きを操作したのか?
あの小人のようなスタンドが、弾丸の動きを操作したのか?
そんなことを思っていると、少年が足を撃たれて苦しむビアンコの所へ歩み寄っていった。
「グフゥ・・・あぁ、もう何もしませんッ!! 本当に反省してますッ!
頼むから命だけはァーーー!!」
頼むから命だけはァーーー!!」
ビアンコは急に泣いて命乞いを始めた。
・・・正気に戻ったのだろうか?
・・・正気に戻ったのだろうか?
「おいおい、ざけんじゃねぇぞォ~。
てめぇみたいに急に謝る奴が一番怪しいんだ」
てめぇみたいに急に謝る奴が一番怪しいんだ」
男はあくまでもビアンコを疑っている。
「うぅッ、俺は・・・『スタンド』が使えるようになったばっかりに・・・
こんな下らない事ばかりするようになった・・・」
こんな下らない事ばかりするようになった・・・」
「! 急に、スタンドが使えるようになったのか?」
少年が何かに気付いたようにビアンコに尋ねた。
「あぁそうだよ・・・ある時街の人混みの中で、突然脇腹を服ごと切られてな・・・
その時からハッキリと、このスタンドが使えることに気付いたんだ」
その時からハッキリと、このスタンドが使えることに気付いたんだ」
「・・・やはり・・・これも“教団”の仕業ですかね・・・ミスタ」
「・・・かもしれないスね」
ミスタと呼ばれたリボルバーの男、そして少年は何やら深刻そうな表情である。
あの二人にどんな事情があるのか分からないが、俺には関係ないことだ。
あの二人にどんな事情があるのか分からないが、俺には関係ないことだ。
ただ一つ言えることは、俺と友人はあの二人に命を救われたのだということ。
せめてお礼だけは言っておこうと、俺は少年に近づいた。
せめてお礼だけは言っておこうと、俺は少年に近づいた。
「あの・・・助けて頂いて・・・」
「いや、お礼はいらないよ。ほら、あの子も目を覚ましたみたいだ。
路地裏は危険だから、これからは無闇に入らないように」
路地裏は危険だから、これからは無闇に入らないように」
少年が言ったとおり、倒れていた友人は意識を取り戻したようだ。
だが、このまま何も言わずにいる訳にはいかなかった。
「せめて・・・お名前だけでも・・・
あっ、俺はロッソっていいます」
あっ、俺はロッソっていいます」
「名前? 僕は・・・『ジョルノ・ジョバァーナ』・・・」
ジョルノ・ジョバァーナ・・・
少年がそう名乗ったとき、俺は少年が持っていた偉大なる「意志」を感じた気がしたのだ。
ビアンコを睨んだときのあの目も然り・・・
このジョルノという少年は、俺と同じくらいの年齢でありながら「背負っているもの」の重さが違う。
カリスマ性とでも言えようか。
このジョルノという少年は、俺と同じくらいの年齢でありながら「背負っているもの」の重さが違う。
カリスマ性とでも言えようか。
一体彼は・・・
「僕達はもう行かなくちゃあならない。
最近イタリアの街はますます荒れてきているから、くれぐれも気をつけてね」
最近イタリアの街はますます荒れてきているから、くれぐれも気をつけてね」
「・・・はい」
辺りはすっかり暗くなり、街灯が頼りなさげに灯っている。
「それでは、アッディーオ(さようなら)・・・」
ジョルノは、俺に向かって別れの挨拶をすると、この場を立ち去ろうとした。
だが彼はすぐに立ち止まり、俺に振り返るとこう言った。
だが彼はすぐに立ち止まり、俺に振り返るとこう言った。
「いや・・・アリーヴェデルチ(また会いましょう)かな・・・」
第1話 完
第1話で使用させていただいたスタンド
(原作より)
「ゴールド・エクスペリエンス」
「セックス・ピストルズ」
「ゴールド・エクスペリエンス」
「セックス・ピストルズ」
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