――7月23日 PM6:00――
「おい、そっちの首尾はどうだ?」
カメユーデパート近くの路地裏――数人の男たちが、そこで体を寄せ合って話をしていた。
その表情のこわばり具合や、声色から、彼らの話している「首尾」がよくないことの首尾であることはすぐに分かる。
男のうちの一人が、路地裏を構成するビルの隙間から表通りの様子を確認して、それから奥の方へ戻り、
その表情のこわばり具合や、声色から、彼らの話している「首尾」がよくないことの首尾であることはすぐに分かる。
男のうちの一人が、路地裏を構成するビルの隙間から表通りの様子を確認して、それから奥の方へ戻り、
「『ヤツ』はちゃんとデパートの中に入ったみたいですぜェ」
と奥の方で威圧感を放ちつつ腕を組んでいる人物に声をかけた。
そいつは恐竜のように荒々しいデザインの制服をわずかに揺らすと、腕組をやめ、そして前を見据える。
そいつは恐竜のように荒々しいデザインの制服をわずかに揺らすと、腕組をやめ、そして前を見据える。
「……分かった。それじゃあ、始めるぞ」
4:「蹴りの達人 」の巻
慧「きゅうり~ツナ缶~今日の飯はツナサラダ! ……あと何にしよっかなぁ~」
スタスタ
ズラララアアアァァ
慧「さっすがカメユーデパート…………品揃えはそこらのデパートには劣らねぇよなぁ~」
「それだけに選ぶのが大変だケド」
「それだけに選ぶのが大変だケド」
スタスタ
スタスタ
スタスタ
慧「……………………」
慧「…………『ゴルゴ13』ってよォオ~~~~~」
ゴ ゴ ゴ
慧「おれは読んだことねーんだがよお~っ、どーして後ろに立っただけで攻撃すんだろ? とか
どーして後ろに立ってることが分かるんだろ? とかよぉ、不思議に思ったりすんだが……」
どーして後ろに立ってることが分かるんだろ? とかよぉ、不思議に思ったりすんだが……」
ド ド ド ド
慧「おい、おれの後ろでこそこそしてるテメェ。なんの用だ?」
ド ド ド
男 ヌッ
男「フン……さすがは愛川慧……尾行がバレるとは思っていたが、こんなに早くとはな……」
慧「スットロイことを言ってんじゃあね――ぜッ! ヘイ! 質問に答えなァ!」グイッ
慧「スットロイことを言ってんじゃあね――ぜッ! ヘイ! 質問に答えなァ!」グイッ
男「……ただまあ、『不意打ち』に気付かれなかったのは僥倖(ぎょうこう)ってとこか」
慧「は?」
慧「は?」
ド ガ シ ッ
慧「あ…………」
ドザァ!
男「フッ、いかに『蹴りの達人』といえど、所詮は女……後ろから鉄パイプで殴られれば気絶するのも当然というところかな」
男「おいッ! おまえ! こいつを縛り上げろッ!」
手下1「はいッ!」グッ
手下1「はいッ!」グッ
慧 ムクゥ
手下1 !
慧「セリャアッ!」ドバギッ!
手下1「ブゲェェエ―――!」
手下2「なんだとォォ――っ!?」
手下2「なんだとォォ――っ!?」
男「ばっ、馬鹿な! たしかに鉄パイプでぶん殴られたはず! 女はおろかだれだろーと意識を保つことなど……」
手下1 ピクピク
男「なッ! しかもあの蹴っ飛ばされた手下! 一撃で気絶させられているッ!
腹をけられただけなのに、喧嘩慣れした男が女に気絶させられるだろうかッ!?」
腹をけられただけなのに、喧嘩慣れした男が女に気絶させられるだろうかッ!?」
慧「いっいっいっいてえええ~~~~~~ッッッッ!! …………じゃね~かッ!
このドアホがッ! おれの脳細胞がこれで何匹死滅したと思ってやがるッ!」
このドアホがッ! おれの脳細胞がこれで何匹死滅したと思ってやがるッ!」
慧「し・か・も! さっきから人を女女とよォオ~~~~ッ! てめー、さてはおれの相手すんの初めてだろ?
この愛川慧を相手する上で一番大事なこと…………それはなあああ~~~~~~~ッ!!」ヒュバッ
この愛川慧を相手する上で一番大事なこと…………それはなあああ~~~~~~~ッ!!」ヒュバッ
ダッ
男「うおおおおおおおお――――ッ!!」ゴオオー
ガッシィイイン!
ド ド ド ド
女「『女だと思わないこと』……でしょ? 知ってるわよ、ンなこと」
ド ド ド ド
慧 !!
慧 バッ
女「フフフ……とっさに飛びのいたその判断は正解よ……
あと一瞬そこにいれば、あたしがあんたの足をつかんで股から真っ二つに引き裂いてたわ」
あと一瞬そこにいれば、あたしがあんたの足をつかんで股から真っ二つに引き裂いてたわ」
慧「てめー……!」
ド ド ド ド ド
慧「誰だよ!」
女 ズッコォー!
女「ばっ、馬鹿! このあたしにこんなベタなノリさせんじゃあないわよッ! このタコ!」
女「あたしよ! あ・た・し! 中学時代あんたと並んで『杜王の二強』と呼び声高かった!」
慧「(そんな馬鹿みてーな呼び名あったのかよ……)」
女「あぁーもう! 由月よ、ゆ・づ・き! 一年前あんたに喧嘩を挑みまくった室井由月!! 忘れた?!」
慧「あ、ああぁ~~……そういえば中学時代そんなヤツがいたような、いなかったような……」
由月「テメーッ! ぜってぇー覚えてねーだろッ! あああああ~~~~ッ!! むかつく~~~~!!」
慧「っつーか、おまえそのファッションなんだよ……。恐竜みてーなその服装……一瞬特撮ショーかなんかかと思ったぜ」
由月 プッツン
由月「コロス! てめーはブチコロス!!」
ド ド ド ド ド
男「ねっ、姐さんを本気で怒らせるとは……! こいつ……よほどの馬鹿か、腕に自信があるかのどちらかだな……」ドドド
手下2「手下1ィィイ~~~~ッ!! おい、起きてくれよぉおおお~~~~!」
アウェイ
慧「(どーしておれだけこんな空気の中やらなきゃいけないの……)」
アウェイ
慧「(どーしておれだけこんな空気の中やらなきゃいけないの……)」
由月『余所見してんじゃあねーぜッ! KUUAAAAAHHH~~~~~~~ッ!!』
慧「げっ!? なんだこいつッ! この『身のこなし』はッ!!」バッ
慧「げっ!? なんだこいつッ! この『身のこなし』はッ!!」バッ
ドギィ
由月『URRRRYYYYYYY――――ッ!!』バッギイイ
慧「ぐっ……はあッ!」ドパアー
慧「ぐっ……はあッ!」ドパアー
ザアァッ
慧「(急に! あいつの体に『恐竜の骨』みてーなものが! まとわりついてきやがったッ! これが『スタンド』かッ!!)」
由月『1年前、あんたにやられてから片時も忘れたことはなかった……。
この日のために緻密な計算をして、完璧な計画を練ってきた……』ドドド
この日のために緻密な計算をして、完璧な計画を練ってきた……』ドドド
由月『邪魔は入らないぞッ! 今日こそあの日の雪辱を晴らしてやるッ!!』
慧「(1年前? そういえば、1年前って―――)」
ド ド ド ド
――1年前……慧 中学3年生 春――
由月「あんた、あたしの手下になりなさいよ」
慧「ああ!? うるせーぞ! このアマ!」
由月「な、なにをぅ!? あんた、あたしにそんな口 き、聞いてただで済むと思ってんのッ!?
あたしを誰だと思ってんのよ!」
あたしを誰だと思ってんのよ!」
慧「知るかァ! てめー蹴り殺すぞ!」
由月 ボーゼン
慧「フン! これだけでビビったのか? 腰抜けが! もう二度と話しかけるんじゃあねーぜッ」クルッ
由月 ・ ・ ・ ワナワナ
由月「フザけんなよ……! このあたしをこけにしやがって…………!」
――この時期、慧は両親を事故でなくしており…………
. 近くに親戚のいない彼女は、都会に住む親戚からの仕送りで一人暮らしをしていて……
. 精神的にも非常に荒れているころだった。
. このころの彼女は売られた喧嘩は全て買い、そして相手を徹底的にイタメつける性分だった――
――その迫力に、確かに由月は恐怖した……。そして、その事実は彼女のプライドを傷つける事となり、
. 以降由月は慧を目の敵にするようになった………………――
慧「あー、思い出したわ。あのときの卑怯なやつじゃねーかよぉぉ~~。髪が短くなったから気がつかなかったぜ」
由月『やっと思い出したか? あ、でも『卑怯』ってことまで思い出しちまったのか』
由月『やっと思い出したか? あ、でも『卑怯』ってことまで思い出しちまったのか』
手下2「うおおおおお――ッ!」ブンッ
慧「よっ、と」ヒョイッ
手下2「んな馬鹿なッ!」ドザァ
慧「だが、倒したやつも含めて3人しか手下を連れてこないとは……、1年前より卑怯度が下がったんじゃあないか?
てめーの卑怯さ加減に嫌気がさして、みんな離れていっちまったのか?」ニヤ
てめーの卑怯さ加減に嫌気がさして、みんな離れていっちまったのか?」ニヤ
由月『てってめぇぇ~~~~っ!! 人が気にしていることを……!!』
由月『KUAAAAAAAAAAWWWWWWWWWWWWRRRRRRRRRRRRRYYYYYYYYYYYYYYY―――――ッ!!』ギャオオオオ――
慧「…………っ!」ビリビリ
由月『GYAAAAAAAAAAAHHH――ッ!! 『喧嘩屋』を始末したと聞けば、手下なんざいくらでも集まるぞォーッ!』バッ!
慧「ケッ! 来るかッ! いいぜ! 相手してやる……」
慧 グジャアアア!!
。○
慧 !!
。○
慧 !!
慧 バッ!
ドゴオオオオン!
由月『GUURYYYYYY…………。どォしたよォoooohh……愛川……随分と弱気な反応じゃねェかああ~?』ドドド
慧「てめー……そのスタンド能力……人間のパワーじゃあねーな……『獣じみた』とかいうレベルじゃあねー……」
.. . .. . . . . .. . . . . . . . . . . . ... . . .
慧「明らかにこの地球上のあらゆる生物のパワーを超越してやがるッ!!」
.. . .. . . . . .. . . . . . . . . . . . ... . . .
慧「明らかにこの地球上のあらゆる生物のパワーを超越してやがるッ!!」
ド ド ド ド
由月『フン……! あたしのスタンド能力は『恐竜』となることッ!
地球史上もっとも強靭な肉体ッ! 卑怯なまでのパワーッ!!』
地球史上もっとも強靭な肉体ッ! 卑怯なまでのパワーッ!!』
ド ド ド ド . . . . .
由月『たかが人間のあんたに乗り越えることができるかァああ~~~~!?』バアッ
由月『たかが人間のあんたに乗り越えることができるかァああ~~~~!?』バアッ
慧「チッ……まるで人間やめてるみてーな言い様だな! てめー調子こいてると大統領に殺されるぞッ!」ダッ
由月『うるせえええわあああああァァァ―――ッ! AGAAAAAAAAAAAAAAAHHHH――――ッッ!!』グワァバッ!
慧「なにィッ!? 『恐竜の頭』の部分がッ噛み付いてきやがったッ!」サッ
由月『おせえェアァッ!!』グヮブッ!
慧「ぐっ!」ブシュウ!
由月『FSHLLLLLLLLLLLL…………』ドドド
慧「(くそがっ! だんだん人間離れしてやがるぜ……だが、どこかに対策があるはず……)」
由月『GUAAAAHHH……!』ブルブル
慧「(? 震えてる……? 確かに冷房利いてるけど、ブルブル震えるほど寒くは……)」
慧 !!
慧「(まっ、前に譲華たちから聞いた事がある! 恐竜のような「爬虫類」は変温動物といって、
あたりの気温によって身体能力が大きく左右されると!)」
あたりの気温によって身体能力が大きく左右されると!)」
慧 ダッ
由月『ガァ!?』グルゥ
慧「っへ! てめーみてーなのとまともにやりあってられっか!」
由月『逃げるのかアアアア―――ッ!!?』ドダーッ
ダダダダー
由月『フン! KUAA! てめーのノロマなスピードじゃあこのあたしを引き離すどころか! 逃げることすらままならねーぜッ!!』
ドドドド
由月『とらえたアア―――ッ! くらえェいッ! 恐竜の「カギ爪」をッ!』ゴオッ
由月『URYYYYAAAAHHHHH―――――――――ッッ!!』ザンッ!
慧 グルゥ!
由月『ナニぃ!? こいつ……急に方向を転換してッ』
慧「『恐竜のパワー』が……どうしたってぇ~おい? ここは『人間』のためのデパートだぜッ!
小回りのきかねー不自由なパワーじゃあ……却って不利になるだけだぜッ!」
小回りのきかねー不自由なパワーじゃあ……却って不利になるだけだぜッ!」
由月『く、ぐうおおおおおおおッ!? 勢いを殺しきれんッ!』
ドガアア―――ッ
由月『KUUUUU……こしゃくなまねをォ! だが……おかげで邪魔な障害物は吹っ飛んだ……。
てめーはもう終わりだあああああああああ―――――――ッッ!!』ゴオオオオオ
てめーはもう終わりだあああああああああ―――――――ッッ!!』ゴオオオオオ
ドヒュウウ―――
慧「はたして、それはどうかな?」チラッ
由月 !
慧「てめーは既にッ! 誘い込まれてたんだよォッ! この『氷菓売り場』にッ!」ドドドド
慧「『ドライアイス』だッ! 勝ったッ!」バアッ
由月『GUOOOOOOOOOOOOHHHH~~~~~~~~~ッ!!』ピキパキパキ・・・
由月 ピタァ
ド ド ド ド
慧 ?
由月 ニタァ・・・
由月「……なぁぁぁ~~~~んてねええ~~~~~っ…………。
そんなこったろーと思って、能力は事前に解除してあるのよ……。あたしをダレだと思ってんの?
そんな『卑怯』のうちにも入らないよーな戦法なんざ、お見通しなのよッ!」
そんなこったろーと思って、能力は事前に解除してあるのよ……。あたしをダレだと思ってんの?
そんな『卑怯』のうちにも入らないよーな戦法なんざ、お見通しなのよッ!」
慧 !
由月「そして! 卑怯にも隠し持っていた『鉄パイプ』をてめえ~~によける暇はねえわッ!」
慧「まずい……」サッ
由月「まずは腕一本――――ッ!」
ガ ァ ン !
ド ド ド ド
鉄パイプ グニャア
由月 ・ ・ ・ ?
慧「ってェェェ―――! がッ!」
慧 ズズズ・・・
由月「(こいつッ! 腕がブレてッ!? しまった折れた鉄パイプに気をとられ……)」
慧「ちとカルシウム不足の鉄パイプだったようだなッ!!」
由月「不足どころか鉄分100%だっての―――ッ……ってうおおおおッ!? 『レックス・ハリソン』……」グォ
慧「セリャア!」バギィア
由月『ゴフゥ!』
慧「もォ一発――!」
慧 ドァガッ!
慧「ミゾオチに一発……けっ! これで少しはひるんだか……」
由月『ムゥン、貧弱貧弱ぅウ!』バッ!
慧「なにッ!?」
由月『隙ありィア!』ドゴオ!
慧「かっ、ぐはあ―ッ!」ドパア
由月『あたしのパワーは今! 『太古の生命』を味方につけてるんだぜェェエ~~~~ッ!?
てめーごときの貧弱ゥなパワー! ききっこねーんだよ、このスッタコ!』
てめーごときの貧弱ゥなパワー! ききっこねーんだよ、このスッタコ!』
ド ド ド
慧「(まッ、まずいぜ……! 今のでアバラが何本かヤラれた……!)」
慧「(ここは一回逃げて体勢をととのえねーとッ!!)」ダッ
由月『てめぇえええええ~~~~~~~~ッ!! 逃がさねーぜッ!!』ダッ
――由月が、慧をここまで執拗に狙い続けるのは、『昨年春』の出来事だけが理由ではない――
――彼女にここまでの「執念」を与えるきっかけとなったのは、『昨年夏』の出来事――
――2021年 5月――
譲華「あ、慧ぁ~っ!」
――譲華、那由多、寒月、慧の4人は、高校で出会った仲間ではない。
. 彼女たちは小学校からの付き合いで、幼馴染だった――
――しかし慧は、両親を失った悲しみで、4月から約一ヶ月ほど、喧嘩に明け暮れるようになった。
. もちろん、そんな状態で友人に会えるわけもなく、3人から距離を置くようになっていた――
――そこで、3人で行ったら慧に圧迫感を感じさせるかもしれないということで、
. 毎日一人ずつ、慧の家にいって説得することにしたのだ……。何回も交代していき、譲華が家に来たとき――
慧「……んだよ」ギロッ
譲華「あんた! 確かに親が亡くなったのは辛いだろうけど! 今のままじゃあんた、絶対に駄目になっちゃうわよ!」
慧「フン! そんなことはおれの勝手だろーが! てめーに指図されることじゃあねえ!」
譲華「だとしてもよ! 友達が傷ついていくのを黙って見てるなんて、そんなのは友達じゃあない!
一年前、あたしがそうなったときに、助けてくれたのはあんたたちでしょ!?」
一年前、あたしがそうなったときに、助けてくれたのはあんたたちでしょ!?」
慧「…………!」グッ
慧「ふ、フン! おまえは離婚した親には会えるからなぁぁ~~ッ! おれの気持ちなんて分かるまい!」
――これは言ってから「してやった」と慧は思った。譲華は一年前に両親が離婚している。
. そのことを引き合いに出したこの言葉は、きっと譲華に悲しみと怒りを与える。そう確信してあえて吐いた言葉だからだ――
慧「(ワリーな譲華……。今おまえたちと一緒にいたらおまえらにまで迷惑かかっちまうからよ……)」
. .. . . ..
――慧はあまりにも喧嘩しすぎた。
. 外出すれば確実に敵からの闇討ちを受けるほどに、彼女の敵は増えていた。
. もちろん、友人にそんな危険な目のとばっちりを受けさせるわけにはいかない。
. だからあえて譲華の「怒りのツボ」とも言える場所を攻撃したのだが――
――次の瞬間、譲華は意外にも――
譲華「じゃああんた、あたしんちに来なさい!」
慧 !?
. . . .. . . .
――慧を突き放すのではなく! 逆に引き込んだ!――
譲華「なくなったご両親のことを忘れろなんていわないわ! でも、いつまでも後ろ向いてちゃ何も始まらない!
あたしで足りるかどうか分からないけど……あんたが踏み出せるようになるまで、あたしが助けてあげるから!」
あたしで足りるかどうか分からないけど……あんたが踏み出せるようになるまで、あたしが助けてあげるから!」
慧「――――!!」
――それから……慧は譲華たちの前に姿をあらわすようになり(もっとも譲華とは同じ家に住んでいるから当然だが)
. 喧嘩をすることも少なくなった。おかしなことだが、慧の敵が現れることもまったくなかった――
――慧は油断していた――
――2021年 夏――
――その日、慧は譲華と二人で家路に就いていた。
. このころになると慧は喧嘩に明け暮れていた日々の事などすっかり忘れていて、
. 両親を失った悲しみも癒えていたので、そろそろ一人暮らしに戻ろうかというころだった――
ガンッ
譲華「う……ぐっ」
――後ろからの一撃! 譲華は気絶させられた――
慧「―――ッ!? 誰だ!」
男1「…………動くなよ、この女がどうなってもいいのか?」
慧「ぐ……!」
男1「やっちまえ――ッ」
――闇討ちだった。
. これまで彼らが慧を攻撃していなかったのは、この期を待っていたからだったのだ。
. 彼女が油断しているところを、友人を人質にとって攻撃する…………この卑怯な手口――
――結果はあっけないものだった。最後に立っていたのは、譲華と慧。
. 戦いのさなか意識を取り戻した譲華が、参戦したことにより、状況は一変……した――
――ここまで聞くと、やさぐれていた慧が真っ当になった理由や、彼女が一人暮らしである理由が分かったと思う。
. しかし、なぜ由月が慧に執着するのか、その理由がない。全てはこの後の出来事――
――二日後――
由月「なんですって!? 北中のやつらが愛川に潰された!? あいつ……
最近友達とヨロシクやってるから空気読んでほうっておいてやったのに……」
最近友達とヨロシクやってるから空気読んでほうっておいてやったのに……」
手下1「ぐあああ――っ!」
バダム!
慧「てめええええ~~~~~っ!!」
由月「愛川!?」
慧「てめーの手下から聞いたぞ! 二日前の闇討ち! てめーの差し金だったとなァ!」
――二日前の事件の際、慧は倒した手下から、「全ては室井の差し金である……」という嘘の情報を掴まされていた――
――勘違いしてはいけないのが、由月は卑怯の限りを尽くすが決して悪党ではない……ということだ。
. 彼女は多人数で人を囲ってボコボコにしたりはするが、無関係の人間まで巻き込んだりすることは好まない――
由月「ちょっと待って! あたしそんなの知らないわ! 勘違い! 勘違いよ……」
慧「うるせええええ――ッ! おれだけでなく譲華まで! てめーはぜってえゆるさねえ!!」
――自分の言い分も聞いてもらえず、一方的に殴られた怒り……くだらないようだがこれが由月が慧に執着する理由だ――
慧「(くっ、くそ! あまりにも身体能力に違いがありすぎる……! このままだとマジに殺されるぞ……!)」
由月『URRRRYYYYYYYYYYYY――――ッ!!』ガバッ
慧「ハッ!? (まずい、反応が遅れた……間にあわねぇ……――――ッ!!)」
ガィン!
ド ド ド ド
由月 !
由月 バッ
ド ド ド ド ド ド
慧「…………?」
? バアアア―――ン!
慧「こッ、こいつッ!!」
慧「新手かッ!? てめぇこんなわけのわかんねェヤツまで……」
由月『いや、こいつはあたしの手下じゃねぇ。しらねえヤツだ』
?『……ワタシハ、アナタノすたんどデスヨ、慧サマ……』ドドド
慧「(……!? こいつッ! 『おれの』……)」
由月『フン! なんだかよく分からんがただのでくの坊だってんならッ! この『恐竜のパワー』の敵じゃあねえ!』
由月『白と青のストライプ……まるで青いシマウマだなあああ――ッ!! 草食動物風情がよ―――ッ!!』ゴオッ
慧「うッ!?」
?『…………』スオオオオ
?『セリャア!』シュッ
由月『……ッ!?』ドパア!
由月『…………なんだ? いま、何をした?』
ド ド ド
慧「……! (速いッ……! 今のは……『蹴り』!)」
由月『ええ!? てめえ今! 何をしたって言ってるんだぜ―――ッ!!』
慧「(勝てる! 勝てるぞ! このスタンド!)」
慧「行けッ! ぶん殴れェ!」
?『セリャア!』バギイ!
由月『うぐっ』
・ ・ ・
由月『なんだ? 今度はたいした事ねーぞ? さっきの『蹴り』のような体の芯にくる痛みがなかったぞ?
そのうえ……たいしたスピードでもなかったッ! このあたしでもガードできるほどにッ!』
そのうえ……たいしたスピードでもなかったッ! このあたしでもガードできるほどにッ!』
ド ド ド ド
慧「ど、どーした!? もう一回殴ってみろ!」
?『セリャアッ!』
由月『無駄無駄無駄無駄ッ! KULLLLEEEEEEERRRRAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHH――――ッ!』シュビャア!
由月『無駄無駄無駄無駄ッ! KULLLLEEEEEEERRRRAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHH――――ッ!』シュビャア!
バシュッ! ドッパア!
慧「ぐ、ぐあああ――!」ズバッ
?『FUCK! ヤッパ、敵ノぱわー……アナドレマセンゼ、慧サマ……。『ぱんち』ジャア、歯ガ立ソウモアリマセン』ヤレヤレ
慧「んなこと言ってる場合か―――ッ!! さっきのはマグレだったってのかッ!? 夢見させてるんじゃあねーぞッ!」
慧「んなこと言ってる場合か―――ッ!! さっきのはマグレだったってのかッ!? 夢見させてるんじゃあねーぞッ!」
?『勘違イシナイデクダサイ、慧サマ……。ワタシハ殴リアウノハチョイト苦手ナダケデ……』
慧「殴りあうのが苦手じゃあ話にならねーだろー…… ハッ!」
慧「殴りあうのが苦手じゃあ話にならねーだろー…… ハッ!」
?『理解シマシタカ? 慧サマ……。ワタシハアナタノ『精神』…………』ド ド ド
慧「この『蹴りの達人』愛川慧の精神…………そういうことかよ……」
慧「この『蹴りの達人』愛川慧の精神…………そういうことかよ……」
由月『URYYYYYYYYYYYY―――ッ!!』ゴオッ
慧「食らえッ!」
?『セリャア!』バアッ
?『セリャア!』バアッ
由月『フッ!』バッ
ドゴォ!
由月『ググ……。いくら効くといったって、ガードすればたいしたダメージじゃあない……』
慧「足はもう一本あるんだよッ!」
?『セリャア!』
?『セリャア!』
由月『ゴォエ!?』ミッシ
由月 ガクッ…
由月「な、あ!? こ、これは!? ……足に……力がッ入らない!!」
慧「顎(チン)を揺さぶられたんだ……。いくら恐竜でもそう簡単には立ち上がれねーぜ」
慧「…………」タン タン タンタン
由月「……足踏みなんかして、何のつもりよ?」ググ
慧「なあ、おめー『ショーン・マイケルズ』ってプロレスラー知ってるか?」
由月「……誰よ、そいつ」
タン タン タンタン
慧「2009年に引退したプロレスラーさ」
由月「(なんで10年以上昔のプロレスラーのことなんて知ってんのよ……)」
由月「(なんで10年以上昔のプロレスラーのことなんて知ってんのよ……)」
タンタンタンタンタン
慧「やつの決め技に、『スウィート・チン・ミュージック』って技があるんだ。
起き上がった瞬間を狙って、飛び蹴りを決める技だぜ」
起き上がった瞬間を狙って、飛び蹴りを決める技だぜ」
タンタンタンタン
?『Tune up the band!』
由月「ほお……。その技をあたしへのトドメに使おうってわけね……
でも、それは叶わない望みねぇ~っ……」
でも、それは叶わない望みねぇ~っ……」
ド ド ド ド
由月『なぜならてめーにあたしを沈めることはできねーからだッ!!
さっきは不覚を食ったがッ! このあたしが面と向かっててめーの蹴りを捌けない道理はねえッ!』ググッ!
さっきは不覚を食ったがッ! このあたしが面と向かっててめーの蹴りを捌けない道理はねえッ!』ググッ!
慧「……どうかなッ」シュッ
?『セリャアアアアアアアアアアアアッ!』
由月『(やはり! あたしのスピードでガードできない速さじゃあねえッ! 腕を上げれば――)』クラッ
由月『(ば、馬鹿な!? さっきの蹴りのダメージがッ……)』
バッギイ!
ド ド ド ド
由月「ぐ……かぁは!」ドサッ
慧「…………今回もおれの勝ちだな」
・ ・ ・ ・ ・ ・
慧「おい、手下ども」
男「ヒッ!」
慧「てめーら……なぜ、最近になっていきなりこいつが1年前の続きを始めたか分かるか?」
男「お……おれたちにもよくは……。しかし、姐さんは「『矢』に射抜かれて『力』を手に入れた」……と言っていました」
慧「やはり『矢』か…………」
由月「……うぐ……」
慧「ん? 目が覚めたか? ったく、地の身体能力も上がってるんじゃねーか? 立ち直り速すぎだぜ」
由月「てめ……グ……てめええああああああああ――っ!!」
由月『URYYYYYY―――ッ!!』
慧「『スウィート・チン・ミュージック』ッ!」
ガシッ
慧「あきらめな、由月。いくらパワーが強いっつったって、てめーは手負いだ。おれの拘束を逃れるのはむずかしいぜ」
由月「てめーッ! すかしたこと言ってんじゃあねーぞッ!」
由月「だいたい! てめーはスカッとしてやがるがあたしはまだ去年の夏の事、根に持ってるんだからね!
あたしの事情も聞かずにブン殴りやがって……!」
あたしの事情も聞かずにブン殴りやがって……!」
慧「あ?」
由月「いい!? あたしは卑怯なことは大好き!! すごい好き!!
でもね、無関係の人間をボコにして楽しむような趣味はしてないのよ! それをあたしのことを勘違いして……!」
でもね、無関係の人間をボコにして楽しむような趣味はしてないのよ! それをあたしのことを勘違いして……!」
由月「あの一件で手下どもも逃げていったわ! あたしの影響力もなくなった!
男に『矢』で射抜かれて能力を手に入れて、これからあたしの軍勢を復興しようって思ってたのに……また……!」
男に『矢』で射抜かれて能力を手に入れて、これからあたしの軍勢を復興しようって思ってたのに……また……!」
慧「……ちょっと待て」
由月「何よォ」
慧「今何ていった?」
由月「何って……あたしの軍勢を……」
慧「その前!」
由月「男に『矢』で射抜かれて~~……」
慧「『矢』! 確かに今男に『矢』で射抜かれてって言ったな!?」
由月「ああ……言ったけど」
慧「そいつの特徴、分かるか!? 名前とか、すんでるところとか!」
由月「…………ん~~…………。後ろから一突きだったからちょっと……。
あ! でも、チラッと何か光る物を身に着けてたのは分かったわ!」
慧「光る物? 光り物ってことか?」
慧「光る物? 光り物ってことか?」
由月「そうじゃあなくって! ライトみたいにチカチカ光ってたのよ」
慧「光ってた……?」
《慧「(この スゲーな……。ピカピカ光ってるぜ)」》
ド ド ド ド
慧「(何だったっけ……!? 何が……! 何が光ってるんだ……!?)」
由月「っていうか! あんた1年前の勘違いの件! あれは全部あんたが悪いのよ! あたしはなんにもしてないもん!」
由月「あ、謝ったら……全部水に流して手下にしてやらないことも…………」ボソ
慧「あー、スマン。それはマジでゴメン。でも手下は別にいーや。じゃな」シュタッ
由月「…………………………」
由月「あのやろ~~~! いつかギャフンといわせてやる!!」
――1日後――
慧「……ってことがあったんだぜ」
譲華「……はぁ、寒月といい、あんたといい……スタンド使いの持つ『引力』を甘く見てたわ」
那由多「これからはもっとお互いの身に気を配らないとね……」
那由多「これからはもっとお互いの身に気を配らないとね……」
寒月「……にしても、だ。いくらわたしたちのスタンドが覚醒したって言っても、急にこんな大量のスタンド使いに
出くわすなんて、いくらなんでもおかしすぎやしないか? 慧の話にもあった由月を射抜いた人物…………」
譲華「十中八九、そいつが『スタンド使い』を増やしている張本人!」
出くわすなんて、いくらなんでもおかしすぎやしないか? 慧の話にもあった由月を射抜いた人物…………」
譲華「十中八九、そいつが『スタンド使い』を増やしている張本人!」
那由多「で、『光っているもの』を身に着けているのが本体の特徴……」
寒月「それだけ印象に残ってるってことは、随分珍妙な位置にそれがあるってことだよな」
寒月「それだけ印象に残ってるってことは、随分珍妙な位置にそれがあるってことだよな」
譲華「まあ、とりあえずこのことは靖成さんに伝えて置くわ。あの人なら何か掴んでくれるかもだし…………」
ド ド ド ド
⇒TO BE CONTINUED...
登場キャラ
| 愛川慧 『スウィート・チン・ミュージック』 |
| ( 考案者:ID:uT5akwUb0 絵:ID:pvF5NNfwO 絵:ID:SKIolI5A0 ) |
| ぶどうヶ丘高校高校1年生の少女で、『スウィート・チン・ミュージック』のスタンド使い。 スタンドはあれっきり自分で喋ることはほとんどなくなったとか。 覚醒したてだったからスタンドが使い方を教えるような意味で饒舌になったと靖成は推測しているが、原因は不明。 ミステリーである。また、由月からは攻撃されるようなことも今のところはないという。 |
| 室井由月 『レックス・ハリソン』 |
| ( 考案者:ID:B8RRg4E0 絵:ID:otRVo3w0 ) |
| ぶどうヶ丘高校1年生の少女で、『レックス・ハリソン』のスタンド使い。慧を目の敵にしているが、 いわゆる素直になれないというやつである。実は慧と同じクラスだったりしたが、身を潜めていたので気づかれなかった。 卑怯なことが大好きだが、悪いことは嫌いという難儀な性格をしているため、手下たちも苦労していたようだ。 現在、慧をギャフンと言わせるためにどんな卑怯な手を使おうか目下のところ模索中である。 |
| 上野譲華 『クリスタル・エンパイア』 虹村那由多 『リトル・ミス・サンシャイン』 淡島寒月 『ダウンワード・スパイラル』 |
| とくになし。 |
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