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5:「2年前のある日」の巻

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pusan

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だれでも歓迎! 編集
「ぐ、があぁっ……! あぐっ……ひぃぐ!」

路地裏。夏の日差しがビルにさえぎられたその空間は、一種の『影の空間』を生み出していた。
地にひざを突いた彼女の視界の端に、表通りを歩く人々の姿が見える。
彼らの横顔には今彼女が身を置いている『非日常』など欠片も見当たらない。
少女の目の前に佇む男は、その様子をにたにたといやらしい笑みを浮かべながら見つめる。

今、彼女はこの男と戦っていた。否、正確には『襲われていた』
友人との待ち合わせに寝坊して、近道をするために路地裏を通ろうとしたのが間違いだったのだろう。
その途中で、エモノを探してうろついていたこの男の『スタンド攻撃』を受けたのだ。

守らなくては、と彼女は思う。
このゲスな男から、彼らの『日常』を絶対に守らなくてはと思う。

「まだ、まだぁ……!」

彼女は左右に伸びた特徴的な黒髪を揺らし、男に立ちふさがる。
とはいえ、彼女の体には未だに鋭い激痛が残っている。
着慣れた服が彼女の肌をこするたび、普段は気にならないその感覚が
耐え難い激痛となって彼女の体に帰ってくるのだ。

「プふぅぅ~ッ! 健気だねェ~。ぼくの『ブレインストーム』の攻撃を
 10発以上受けて意識を保っていられるのは、きみが初めてだよォ~」

そんな様子を見て、小太りの男は愉快そうに笑う。
『イイ』な。若い女の子が激痛にもだえる姿。興奮する。彼はそう思った。
彼は真性の『ゲス』だった。

「ただ、残念なのはその髪型かなァ~~ッ? かわいいんだから、ストレートにすればもっと……そそるんだけどなァ」

彼が思ったことをそのまま口にしたその瞬間だった。
『彼が絶対的有利である』という現実が崩壊したのは。

「あ゛?」

それまでの苦悶の表情や、あえぎ声など、世界のかなたまで弾き飛ばしたようなドスの利いた声に、彼は自分の耳を疑った。
少女は、痛みにもだえた証である大粒の汗を額に流しつつも、その表情は最早苦悶に染まってなどいない。
彼女の顔に書いてあるのは、『このあたしの髪型がどうしたと? コラァ!』という怒りの声のみである。

「かっ、髪型は地雷だったかッ! にわかに信じがたいが…………
 あまりの怒りに『アドレナリン』が大量分泌されて、痛覚神経が麻痺したっていうのかッ!」

男は素早く状況を判断すると、すぐさま次なる『ブレインストーム』を向かわせた。
『ブレインストーム』は編隊を組んで彼女の二の腕に着地すると、
一斉に『エンドルフィン』――興奮を鎮める効果を持つ――を注射した。

「プふぅぅ~~ッ! 一瞬ビビったが、なんてことはない……。
 所詮怒りなんてのは人間の『脳』が生み出す現象の一つにしか過ぎない……。
 脳内物質を自由に操ることのできる『ブレインストーム』には意味のないことさ」
ドラァッ!!

余裕綽々で勝ち誇る男の頬に、次の瞬間水晶造りの拳が打ち込まれた。
男の体は空中で四回転、地面に着いてから五回転してやっとその動きを止める。
殴られた男はというと、意外と丈夫だったのか、まだ意識を持っていて、信じられなさそうな表情を浮かべていた。

「な。んで、えっ、『エンドルフィン』は……ッ! 確かに注入した……は……!」
「てっめぇぇ~~~~~~ッ!! どこ行きやがったァアアア!?
 あたしはまだこんなんじゃあ殴りたらねーぞッ! 出てきやがれぇッ!」

そう言って彼女は怒りを表現するように壁を殴りつける。
一撃でショック死するような激痛をもたらすほどの勢いで振りぬかれた腕は、
彼女のショック死という予想ではなく壁が粉々に粉砕するという事実をもたらした。

「あ、え、な。ど、どうしてぇ!」

男はわけがわからないといった風に頭を振り、それから後ずさりする。
そのときに立てた地面を擦る音に、少女の首が向きを変えた。
男はその様子を見てぞっとした。

「そこか……? そこにいるのか、てめぇ、おいッ!」
「ひぃッ!」

そう言って、彼女は腕を振り上げながら男の下へ走っていく。
この間にも数十匹の『ブレインストーム』『エンドルフィン』を注入し続けているのだが、
いっこうに彼女の怒りが静まる様子はない。むしろ、さらに過激化している様子さえ見られる。

人間の限界を越えた、科学の常識から飛びぬけたイレギュラー。
たとえば火事場の馬鹿力に代表されるようなそれが、そこにはあった。
『彼女の髪型をけなすことだけは絶対にしてはならない』
かつてこの街を救った男が、最強と謳われた とある『スタンド』を打ち負かしたときのように、
彼女――上野譲華の髪型をけなすということは ありとあらゆる『優勢』を捨てることを意味するのだから。


5:「2年前のある日」の巻



靖成「で、これか」

小太り グッデェェェ――
ド オ オ ―― ン

譲華「えへへ……。あたしもよくは覚えてないんだけど」

那由多「まったく……。待ち合わせ時刻になっても来ないから探しに行ったら、
     血まみれの男の目の前でひざを突いたまま気絶してんだもん。びびったわよ」
寒月「ああ、確かに那由多はびびってたな。混乱のあまり半狂乱になって譲華を揺さぶってたし」ニヤリ
慧「あれはかわいかったな~!」ニヤリ


――数分前の那由多――

那由多「譲華!? ねえ譲華!! 起きて! 返事してよ!! どうしたの!? ねえ譲華ってばァァ――ッ!!」ユサユサ

慧「(どう見ても寝息たててるじゃねーかよ……)」


那由多「よ、余計なこといわない!」
譲華「那由多……」ニコッ

靖成「(弱ったぜ……話を切り出すタイミングがわからねえ)」

黒服「しかし……どうして『髪型をけなされただけ』でここまでの……。
    話を聞くに、相手は「脳内物質」を操作する能力らしい……。その能力を超越するほどの怒りとは……」
譲華「髪型をけなされた『だけ』?」ピキ

譲華 ド ド ド ド

黒服「いやあのこれはすみません言葉のあやというだけで」

譲華 ・ ・ ・

譲華「……はぁ、まあいいですけどォ」

黒服 ホッ

那由多「譲華、話してあげてもいいんじゃない?」
譲華「ええ~……それは……ちょっと……」

寒月「いいじゃあないか。黒やんが地雷を踏む心配もなくなるし」
慧「(黒やん……)」

譲華「う~~ん~~」

那由多「譲華はね、2年前に大荒れした時期があったのよ」
慧「ああ~~ッ! あったな!」
譲華「もう……やめてよ……」

――ロリ譲華「おとうさん! らいしゅう おゆうぎかいがあるんだ!」ニコニコ

――悟り譲華「お父さんー、これちょっと借りるねー」

――厨二譲華「るッせェなァ! クソジジイ!」ガルルッ

                       黒服「(11歳から14歳までの間に何があった……)」

――譲華はね、小学校から中学校あたりまで、お父さんが家のことをほったらかしにしがちでね。

.   そのせいでご両親の間で喧嘩が耐えなかったから、一時期やさぐれちゃったときがあったのよ――



――時は遡り……譲華 中学2年生 8月――


那由多「えと……譲華?」
譲華「……なに?」

那由多「その髪型……どうしたの?」

――その日は何もかもがおかしかったわ。あれほど髪型に誇りを持っていた譲華が、あの髪型を解いて

.   普通のストレートな長髪にしてきたんだもの。正直世界の終わりがついにきたか、って感じだったわ――


譲華「どうしたもこうしたも……ただのイメチェンだけど?」
寒月「……まあ、譲華が自分の意思でそうしたならわたしたちが干渉すべきことではないしな」

――あとで知ったことなんだけど、この日の前日、正式に譲華のお父さんとお母さんが離婚することになったらしいの。

.両親がどっちも大好きだった譲華にとっては、二人が離れ離れになってしまうってことが耐えがたい苦痛だったらしいわね――


慧「あの髪型、おれ好きだったんだけどなぁ~」
譲華「あ゛ぁ?」

慧「ヒッ!」
 「(こ、今度の地雷はそこかよ~~~!?)」

譲華「………………もうあの髪型のことは忘れてちょうだい。あれはもう人生の『汚点』よ、『汚点』

三人 

――このとき、わたしたちの中で疑惑が確信に変わったわ――


寒月「……おまえは認めないだろうが、譲華。わたしたち三人は今まで何度もおまえに助けられている。
    自分でどうしようもないことがあるんなら、一人で抱え込んでいないでわたしたちに打ち明けるだけでも、楽になれるはずだ」
慧「そうだぜ~っ、秘密なんて、水臭いぜ」

譲華「……大したことじゃないわよ。ただ、親と喧嘩しただけ。本当にそれだけよ」フン

那由多「……………………」

譲華「…………」ボー

那由多「(鉛筆ブーメランッ!)」シュッ

譲華「あでっ!?」

那由多 ・ ・ ・ ・ ・ ・

譲華「…………」ボー

那由多「(こりゃ重症だわ……)」

寒月「譲華、悪いが今のおまえは見るに耐えない。しばらくはゆっくり休んだほうがいいんじゃあないか?」

譲華「え? 寒月、何言ってんの?」

慧「おれも、寒月に同じ……だぜ~~~っ 今日は家で休んだほうがいいぜ、絶対」

那由多「悪い事は言わないわ。言う通りにした方があんたのためよ」

譲華「え? なに? このあたしがどうしたって?」

譲華「あたしが取り乱してる? はは、そんなことないわよ、あたしが! あの男たちのために!!」ガンッ

那由多「『あの男たち』? 譲華、『あの男たち』って何よ!?」

譲華「…………! もういいわ。じゃあね!」ダッ

寒月「あッ! 譲華! 待て……」

那由多 スッ

慧「な、何を! 那由多!」

那由多「いいわ、分かったの」

慧「何言ってやがる! もしかしててめぇ、譲華のことはほうっておくとか言うんじゃあねーだろうな!!?」ガシィ

那由多「………………」

慧「おい那由多! なんとか言いやがれ!!」ガクガクッ

寒月「慧、落ち着け」

那由多「これは、譲華と譲華のお父さんとの問題よ。わたしたちが出て行ってどうにかできる問題じゃあないわ」

慧「だったらおれたちは何もしなくていいっつーのかよッ!!?」

寒月「慧! いい加減にしろ!」

那由多「いいわけ……ないじゃない……ッ! いいわけ…………」

慧 

寒月「那由多だって辛いんだ……。親友の危機に、手を貸せないのが…………」


――side譲華――


譲華「……クソオヤジ……! あいつのせいで母さんは心労がたまって病気になった!」

ド ド ド ド

譲華「離婚するまで家庭を放っておいて何が父親だ! フザけやがって……!」

譲華「そして! もうひとり許せないやつがいる……」

――譲華の父親は警官だった! 街を守る警察官! その彼が家庭を放っておいてまで没頭する事件…………


.   この街には『通り魔』が出没していた。女性のみを狙う通り魔……譲華の父はそいつを捕まえようとしていたのだ――


――街を守るものとしては当然の決断! 『通り魔』を放置することは街を……ひいては「家族」を危険にさらすことを意味する――


――しかし、このとき譲華の心の中にはそういったことはなかった。寂しさや孤独がそのまま怒りに変わっていたのだ――


譲華「犯人の性別は男! 夜中に現れて女を殺すという……! 許せない……! こいつもオヤジと同罪だッ!!」

――怒りで我を忘れている譲華は、持ってきたナイフでこの男を殺そうと心に決めていた――


オオオオオオ ・ ・ ・

カツン          カツン

??「女……こんな夜中に出歩く女…………」

ド ド ド

譲華 バッ

??「女は国を滅ぼす……」ド ド ド

譲華「あ、あんたが通り魔……」サッ

?? ヒュッ

譲華「き、消えた――ッ!?」

??「女は滅びなくてはならない」ズオオオオ!

譲華「ひッ!?」

あぶねぇッ! 譲華ァァ―――ッ!!」

ド ガ ア ッ

ド ド ド ド

??「このスタンド……『クレイジー・ダイヤモンド』……!」

譲華「あ……ぁ……どうして……お……」ド ド ド

仗助 バアア――ン

譲華「お父さんッ!!」ガバァ

仗助「け、怪我ァ、してねーか? 譲華……。ごめんな……父さんがちゃんと守ってやれなくて……」
譲華「わ、わたしは怪我してないけど! お、お父さん! そのお腹!!」

ド ド ド

仗助「ンなのはわけねー……。このくらいは寝てれば治る……ぜ……グフ!」ビチャッ

譲華「お、お父さん! どうして! どうして私のことを……?」

仗助「母さんが、お前が家に帰ってねーって言っててな……『もしや』……と思ったんだ……」

譲華「そ、そうじゃない! あたし、お父さんに酷いことばっかり言ってたのに……」

仗助「あ? ……ああ~……。そんなことおれは気にしちゃいねーよ……。
    それよりも……おまえが無事で本当に……よかった……」

譲華 ジワァ

ド ド ド ド ド

??「フン! 仗助! 手負いのきさまなら難なく倒せるぞ!」ドドド

譲華「お父さん……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…………!!」スゥ・・・

ド ド ド ド

??「…………? なんだ、女と仗助の姿が消えかかって……」

仗助「譲華!?」

譲華「ごめんなさい、ごめんなさい……!」

ジジジジ・・・

??「ッ! もうあんな場所に移動して……この女ッ! 『瞬間移動』能力か!」

??「逃がすのは面倒だ……我が能力……『アメイジング・グレイス』によってッ! きさまらは始末する!」ゴゴゴ

仗助「なんだ……? 通り魔の野郎…… 急にあらぬ方向を向い…… !?」

ドドド

仗助・譲華 ジジジ

仗助「(おれらがあそこに……!? これは……譲華の能力!)」

??「『アメイジング・グレイス』! 『時の支流』を生み出し……そして加速しろッ!!」

??「これより『加速時間』10秒のうちに全ての片をつける!」ゴオオッ

仗助「(は、速ェ! ……が、あいてが勘違いしているこの状態がチャンス……だぜッ!)」ダッ

譲華「お、お父さん!?」

仗助「『あの映像』……の…………2m近くまで…………」

?? ボギャアッ!

??「何ッ!? わたしの『アメイジング・グレイス』の拳が……仗助の頭部をすり抜けたッ!?」

仗助「そして、すり抜けた拳は地面を壊した…………ってな……」 ドドド

仗助・譲華 ―z ジジッ

?? 

仗助 ・・・ズゥ  ド ド ド

??「しまった、拳を抜かなくては…………」

仗助「承太郎さんの『スタープラチナ』1秒か2秒しかを止められなかったぜ!
    てめ~の場合も10秒かそのくらいしか『速く』はなれないようだなァア~~~~~~~ッ!!」

??「あ、『アメイジング・グレイス』……仗助を『時の支流』に……」

仗助「スットロイッ! 『クレイジー・ダイヤモンド』ッ!」

CD『ドラァッ!ドギュウウウ――――ン!

メキ メキ メキ

??「ぐおおおおおおおおおおおッ!!? 俺の手がッ! 治った地面に押しつぶされて―――ッ!!」

仗助「おれの娘に怖い思いをさせたツケ…………払ってもらうぜ」

??「『アメイジング・グレエエエエエエエエエエエイス』!!!」

CD『ドラララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ  ドゴドゴゴゴ
  ララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ  ドゴ ドゴ ドゴ
  ララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ  ドゴ  ドゴ
  ララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ  ドゴドゴ ドゴ
  ララララララララララララララララララララララララララララララララアアアアアァァ――――ッ!!!』 ドガバッギャア―ッ

??「ぐうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――!!!」

?? ドッヒャアア~~

??「ガフ! おれを吹っ飛ばしたのは間違いだったなァ仗助!
   そのまま地面にたたき付けておけばトドメをさせたのに……なあああ~~~~~ッ! おしいおしい!」シュバッ

仗助「…………」

仗助「チッ……通り魔のヤローは……逃がしちまったか……。ま、譲華を守れたってだけでも……よしとするか」ガクゥ

譲華「お父さん!!」ダッ

仗助「譲華……。わりーが救急車呼んでくれねーか?」

譲華「分かった! ううう……!」グスッ

仗助「泣くなよぉお~~っ! おめーは笑ってる方がかわいいからよ…………」

仗助「あと…………」

譲華 

仗助「おめーは……髪結んだほうがかわいいぜ」

譲華「…………ッ!」

仗助「じゃあよ~~……おれは……ちょっと休むからよ……。その前にポケットの中に入ってるナイフ、出せ」

譲華「…………」スッ

仗助 グシャッ!

仗助「こんなもん持ち出させて……。ごめんなぁ、オメーがこんなに思い詰めるまで……ほったらかしてて……よ」

――そのあとは、譲華も立ち直れたわ。でも、お母さんは相変わらず病気だし、立ち直ったとは言え

.   お父さんに怪我をさせてしまった罪悪感から、しばらく譲華は不安定だったけど……

.   わたしたちがなんとかフォローして、今に至る…………ってわけよ――



那由多「――譲華の中にあったお父さんへの怒りと失望は、あの瞬間からお父さんへの、
     そしてお父さんが褒めてくれた自分の髪型への誇りになったのよ。
     だから髪型をけなすヤツは誰だろうと許しはしないし、容赦しない」

黒服 ぐすっ

黒服「申し訳ありません……ぐすっ……。そんなことがあったなんて知らず……。ぐすっ
    辛いことを思い出させてしまって本当に申し訳ありません……ぐすっ 何かお詫びを……」グスッ

譲華「……ああ~~……んなの別にいいって……。確かに怒りはするけど別に心が傷つくってわけじゃあないのよ……。
    なんていうの? 『思い出を汚されたから怒る』とかじゃなくて……理由なんてないのよ。本能で怒ってるっていうか?
    それよりこういう反応されるのが一番困るんだって……。だから那由多もやめろって言ったのよ…………」

黒服「いや! 何かお詫びがしたい!」

譲華「だからそういうのはさ~~~」チラッ

寒月 ニヤリ

ド ド ド ド

譲華「(なるほど……寒月……そういうこと……)」

譲華「そうだなああ~~~~……じゃあ……」

――その日、黒服がクソ高いパフェを人数分奢らされ、

.   なおかつ近くのテーマパークのチケットまで買わされたのは言うまでもない――



靖成「と、こんなところでいいか? 茶番劇はよ」

黒服「わたしにとっては茶番劇じゃ済みませんでしたよ……」シクシク

靖成「……それじゃあ、腹も膨れたところで本題に入ろうか」※ちゃっかり奢ってもらった

ド ド ド ド

寒月「…………黒やんは?」
靖成「こいつも俺の「関係者」だ。問題はねぇ」

靖成「今日おまえらを呼んだのは、この街に来ている『矢』について話したかったからだ」

那由多「『矢』のルーツは知ってるわよ? 12年前、あんたの街に現れたスタンド『ディープ・フォレスト』が使っていた矢を、
     『SPW財団』が回収したけど、何者かに盗まれて、この街にやってきた、ってやつよね」

靖成「ああ。そのとおりだ。『矢』のルーツはな。おれが話したいのは、『矢』の持つ「能力」だ」

慧「『能力』ゥ? 「スタンド」でもねぇただの「もの」『能力』なんてねえだろう?」

靖成「世の中、「スタンド」だけじゃあ説明できねぇこともあるんだぜ。
    世の中には「幽霊」っていうモンも存在するし、「宇宙人」とか「魔法少女」とかだってあったりするんだ」
那由多「最後でいきなりチャチになった気がす……」
靖成「触れるな!

靖成「まあ結局それが本当なのか分からないままになっちまったが……とにかく幽霊は確実に実在するし。
    とりあえず横槍は入れずに黙って俺の話を聞いてほしい」
譲華「分かりました!」

靖成「始まりは、12年前だ。おまえらも知ってるよな? 平塚雷鳥のことは」
譲華「お父さんの上司ですよね、知ってますよ! 何回か会ってるし」
那由多「譲華の家にいたときに何回か会ったわ。みんな知ってるわよ」

靖成「その雷鳥も、スタンド使いだ。まあこれはうすうす分かってたことだろうが……」

靖成「重要なのはその『雷鳥の能力』だ」

ド ド ド

靖成「雷鳥のスタンド能力、『ティアーズ・オブ・マグダレーナ』は、
    「一分先」までの人間の未来の運命を予知し、その運命を『固定』することだ」

慧「「未来を固定」だぁ? そんなフザけた能力……」

靖成「まああいつは軽くバケモンだ、深く考えちゃあいけねぇ。しかし、過去に一人だけ、その『予知』が通用しなかったヤツがいる」

ゴゴゴ

靖成「いや、一体って言ったほうが良いか」

靖成「『ディープ・フォレスト』。コイツとの因縁は話すと長いが、簡潔に説明すると、
   コイツは『矢』の力を使って自立化したスタンドだ。
   雷鳥は、こいつの未来だけは『予知』できなかったと語っている」

靖成「『ディープ・フォレスト』は、この街に来ているのと同一の『矢』を持っていてな。
    『ディープ・フォレスト』が言うには、『矢』『運命』を司るらしい。
    運命によって動かされる『矢』のスタンドである自分は、『運命自身』だから『予知』されることもない、らしい」

寒月 ・ ・ ・

靖成「『矢』は、『運命』によって動かされる。
    『矢』に選ばれたものはスタンドを手に入れるべき『運命』にあったもので、
    そのスタンド使いは『矢』の所持者が望むように動くように『運命付けられる』そうだ」

慧「そっ! それって!!」
寒月「冗談…………ではないよな」

靖成「ああ、安心してくれてかまわねぇぜ。おまえらに関しては問題ないだろう」

譲華「どうして?」

靖成「おれの古い友人に……『佐野亜希』っつぅーやつがいるんだがよ。こいつも『矢』に射抜かれたんだが、
    結局『ディープ・フォレスト』の騒動があった1、2ヶ月の間じゅう、一度も敵のプラスになるような行動はとらなかった」

靖成「『運命』は平等なんだぜ。誰をひいきしてるってわけじゃあねえ。
    ただ、手短なところにいるからたまたま優遇されてるだけなんだ。強い意思には敵わない」

譲華「つまり……?」

靖成「亜希のヤツは、『自分を射抜いた男の正体を探りたい!』という強い意思を持っていた。
    だから、『運命』は亜希と『ディープ・フォレスト』が引き合うように作用しただけに留まったし、
    ましておまえらの場合は直前に『スタンドがほしい』なんて言ってたんだろう?
    この場合は、『矢』がおまえらを選んだというより、おまえらが『矢』を引き寄せた、って言ったほうがいいだろうな」

ド ド ド ド

譲華「へえ~~…………。そりゃあ良かったけど、別に大したことじゃあなくない?」

寒月「……っ、ふぅうううう~~~~…………」ガクゥ
那由多「寒月?」

寒月「いや、ありがとう。川端。マジに助かったよ」
譲華「えっ? えっ?」

慧「実はよ、おれら、『矢』に射抜かれたほかのスタンド使いみたいにおまえらと戦うことになるのかな~~……って、
  すげー不安でさあ~~~…………。今の靖成のことばで、めちゃくちゃ安心したのさ」

寒月「それに、今のは単にわたしたちを安心させるためだけの言葉じゃあないぞ」
譲華 ? ??

寒月「わたしたちの場合は、強い意思があったから『運命』の歯車にならずに済んだ……。
    だが、スタンドなんて知らない、ただの一般人が射抜かれてみろ。
    川端の話にあったような「好奇心の強いヤツ」でもない限り、『運命』『矢』の所持者の都合のいいようにはたらくだろう」

寒月「わたしたちは、いつどこで襲われてもおかしくない。……つまり、そういうことだ…………」
譲華「ええっ!? た、たしかに……この数日間で、全員がスタンド使いと戦ってるし……」
   「まるでわたしたちのスタンドを『紹介』するみたいに……」

寒月「おっと譲華、命が惜しければそのことについては触れちゃあいけないぞ」
譲華「えっ!?
慧「世の中には「触れちゃあいけないこと」ってのがあるのさ」

譲華 ? ??

靖成「それだけじゃあねーぜ。『矢』によって目覚めたってんなら!
    そのうち必ず、『矢の所持者』と接触したやつが現れるはずだ。そいつを捕まえて事情を聞けば、敵に一気に近づける!」

一同 ゴクリ

ド ド ド ド


――side???――


??『……おはよう、目覚めたかい? 気分はどうかな?』

男「……!? な、なんだァてめぇ! おまえナニモンだ!?」

ド ド ド

??『わたしかい? わたしは…………「お人好し」さ。
   きみみたいに「日常」にスリルを感じていない、という子供たちに『能力』と「スリル」を提供しているのさ』

ゴゴゴ

男「スリル…………だァァ~~ッ? 『能力』ってどーいうことだ、コラァ!」

??『感じてみなよ……。分かるだろう? きみはもう『普通』じゃあなくなったんだ。『特別』になったんだよ……』

ド ド ド

男 ズズズ・・・

男「こ……れは……」

?? ニヤァ

??『そう……それが『スタンド』という「才能」だ。きみは特別になったんだよ…………』

男 ニヤ

男「特別…………その『矢』でか?」

?? ・ ・ ・

男「クックックッ……馬ぁ鹿が! 感じるぞ……『スタンド』とかいうもののエネルギーを!
  きさま程度など簡単に捻り潰せるほどに強大な『スタンドパワー』を!!」ドドド

男「きさまごときちっぽけなスタンドなど! 簡単に捻り潰せるぞォ!」

オオオオオオオ

??『…………!』

男「おれのスタンドッ! 『シェイク・ユア・ブーティ』ィ――ッ!!」ゴオウッ

??『(速い…………ッ)』サッ

男「遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅い遅いィィィ―――!!
  最速こそがッ!! 最も強いのだあああああ――――ッ!!」

SYB『ウッシャア!』ゴオッ

オオオオオオオ

SYB クンッ

ドバギャア!

男「何ッ!? 『シェイク・ユア・ブーティ』の拳筋が勝手に曲がった……ッ!?」

?? ド ド ド ド

??『愚かな…………『シェイク・ユア・ブーティ』……だったか? きさま程度のスタンドが……。
   愚かなことを仕出かしたな……。このわたしに対して……。『ちょいと素早い』程度の田舎イモスタンドごときが……』

?? オオ  オ  オ ・ ・ ・

男「ヒィッ」ビクッ

??『きさまには我がスタンドの『真の能力』を使うまでもない……』

男「(かっ……勝てない! このスタンドに俺は! 絶望的なまでに勝ちが見えない!!
   たとえるならば! なめくじが塩に飛び込むようなもの!! 圧倒的に『相性が悪い』!!)」

男「うおおおおお――ッ!! 逃げ……」ズッテェーン

男「なああああにいいい―――!!? なっ、何もないところで転んだだとおおお」

??『転んだ? 転んだのとはちょいと違うな……。足に痛みを感じないかい?
   無理に足を捻ったときみたいな、そういう痛みを感じるだろう……? なあ、『シェイク・ユア・ブーティ』くん……』

男 ・ ・ ・

男「うっ……ひ……ひいやあああああ~~~~~~~~」

?? フン

??『ああ……ごめんよ……。そうビビるなよ……。ちょいと驚かしただけじゃあないか……。
   きみが何もしないなら、わたしもきみに対してはこれ以上何もしないさ…………』

男「…………。……?」

??『この素晴らしい街に免じて……ね……。この街は素晴らしいよ。親切な人がたくさんだ。
   昨日もカフェでお茶してる女学生に道を尋ねたら、嫌な顔一つせずに親切に道を教えてくれたんだ…………』

男「……この街の地理に……くわしく……ねーの……いや、ないんです……か?」
??『きさまあああ―――ッ!! だれが質問していいと言ったッ!
   いまはわたしが話しているだろうがッ! 人の話を聞かずに質問していいときさまの親は教えているのかッ!!』

男 ガクガク

??『……フフ。その女の子たちにも『お礼』として『能力』を与えてあげたのさ……。
   彼女たち、わたしからの『プレゼント』、気に入ってくれると嬉しいがね……』

?? フフフ

??『フハハ、ハハハハハハハ! 本当にこの街は素晴らしい街だッ! わたしの”悲願”を達成するにふさわしいぞ!』

ド ド ド ド

⇒TO BE CONTINUED...




登場キャラ


上野譲華 『クリスタル・エンパイア』
虹村那由多 『リトル・ミス・サンシャイン』
淡島寒月 『ダウンワード・スパイラル』
愛川慧 『スウィート・チン・ミュージック』
川端靖成 『ヒートウェイヴ』
黒服 『?』
スタンド能力を把握しあったついでに、『矢の所持者』を打倒しようと決意を新たにする。

男 『シェイク・ユア・ブーティ』
( 考案者:ID:iM2xnn6k0 絵:ID:1JRmNFMo )
杜王区のどこかに住む不良で、『シェイク・ユア・ブーティ』のスタンド使い。
『謎のスタンド』の能力に完全屈服し、立ち向かうことはできない。

小太りの男 『ブレインストーム』
( 考案者:ID:JTt+8SCp0 絵:ID:Z7Y5AaCO0 )
杜王区に住む小太りの男で、『ブレインストーム』のスタンド使い。
譲華をあと一歩で再起不能に出来るというところまで追い詰めたが、
地雷に触れてしまい爆発。逆に再起不能にされてしまった。

通り魔 『アメイジング・グレイス』[回想]
( 考案者:ID:2OEt5ZE0  絵:ID:nnswOhco )
2年前、杜王区をにぎわせた『通り魔』にして『アメイジング・グレイス』のスタンド使い。
見事仗助と『クレイジー・ダイヤモンド』から逃げ切る事が出来たが、
今は色々あって再起不能、SPW財団に捕まえられているらしい。複線とかそういうのじゃありません。ごめんなさい。

東方仗助 『クレイジー・ダイヤモンド』[回想]
( 作:荒木神 )
杜王区を20年前から守り続けてきた英雄。現在は警察官をしており、『クレイジー・ダイヤモンド』のスタンド使い。
2年前はあのあと、街のスタンド使いに傷を癒してもらったらしい。
現在の居場所は分からないが、国外にいるらしい。


金髪の男? 『?』
最近杜王区にやってきたらしい男と、そのスタンド。
この男のスタンドが、『謎のスタンド』である可能性が高いと言うだけで、
厳密には確実に『謎のスタンド』の本体が金髪の男であるという確証はない。
原因不明だが、とにかく物体を自由に操れる能力をもつらしい。

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