MEMORIA-黒き騎士の記憶

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MEMORIA-黒き騎士の記憶 ◆bbcIbvVI2g



「…死んだか、遠坂凛」

それは衛宮邸へと向かう最中、放送が終わったときの話。
呼ばれた者の一人はかつてのアーチャーのマスター、遠坂凛であった。
セイバーの記憶の中にはそこまで重要な人物ではない。せいぜい士郎に聖杯戦争の何たるかの教授をしてもらった程度だ。
だが、彼女の妹である間桐桜にとっては重要な存在であったはずだ。そしてサーヴァントを失った士郎の数少ない味方でもあった。
そんな彼女もこんなにも早く死んだという。

「私の買いかぶりすぎだったようだな」

それでも遠坂凛について思ったことはこれだけである。
もし出会うことがあったとしても斬っていただけだろう。
今重要なのはマスターである間桐桜のことだけ。
セイバーの死者に対する反応は終わった。




そうして、目的とは違うものの誰とも出会うこともなく目的地である衛宮邸へと到着した、のだが――

「…、…??」

衛宮邸は和風建築の建物であった。
第四次聖杯戦争の折、衛宮切嗣が拠点とし、聖杯戦争後はそこが彼と士郎の家となった場所。
セイバーにはとても馴染み深い場所であり、間違えるはずがない。
そしてここはエリアF-7、ここにはそれがあるはずだ。
しかし目の前にある建物は、どう見てもごく一般的な家屋だ。
そこの表札がここが件の衛宮邸であることを証明している。

「………」

釈然としないがここまで来た以上このまま立ち去るのも何だ。
未知の家の扉を、セイバーは開いた。

キッチンの棚の中にあったスナック菓子を齧りながら屋内を回る。
どうやら前にここに誰か来たような痕跡があるが気にすることはないだろう。
キッチンにあった椅子は七。一つは士郎のものだとしてあとは大河、桜、凛のものと仮定しても多い。
そして一階を見回ったが、魔術師としての道具、結界といえるものなどは全く見当たらなかった。
そうなると二階だろうか。
階段を上り、二階へと足を踏み入れる。

私室と思わしき部屋が四つあった。
一つ一つに足を踏み入れ、中を確かめる。
内二つは士郎、イリヤスフィールの部屋であることが分かった。
正直想像とはかなり違っており、名前の書かれた私物がなければセイバーとて士郎の部屋とは分からなかっただろう。
もう二つの、二人用の部屋については誰のものなのかはセイバーにも分からなかった。
しかしその片方にはアインツベルンのメイド服があったため、ここが使用人の部屋であることは予測できた。
問題はもう一つの部屋だ。
ここに住んでいた人物が分かれば疑問も解けるのだろうが。
そうしているうちにふと目についたある物。セイバーはそれを取り出した。



スナック菓子の袋はとうに空になっている。他に何かないかと探しにキッチンへと降りた。
元々それを確かめるのは食事の片手間でも大丈夫と考えていたが、いざそれを見ると手は止まっていた。

「やはりな。そういうことか」

彼女が見ていた物。それはアルバムであった。
一般家庭にならばおいてある物とはいえ、まさかこの会場にある家に置いてあるとは思わなかった。(アインツベルンの家を一般家庭と呼べるのかは分からないが)
そこに写っていたのは、ごく一般的な家庭の姿。
ホムンクルスの定めなどとは無関係な様子で育ち、遊ぶイリヤスフィールの姿。
母親の顔をしている、過去の聖杯戦争で器の役割を全うしたはずのアイリスフィール。
そして――

「…そうか、お前は安息を見つけたのだな。衛宮切嗣」

写っている枚数こそ少ないものの、魔術師の顔ではなく自分が今まで見たこともないような父親の顔をしたかつてのマスターの姿。
いや、あえていえばクルミ探しに興じていたあの時の顔に近いだろうか。どちらにしても自分には見せた事のない顔だった。

それが何を意味するのか、セイバーは把握した。
つまりはこの家は平行世界の物なのだろう。おそらく切嗣とアイリスフィールが聖杯戦争に参加しなかったか、途中で全てを捨てて逃げたか。

「あのアカギとかいう男は第二魔法を使えるということか」

まあセイバーとしてはだからどうしたという話なのだが。
とりあえずあのイリヤスフィールはおそらくこちらの存在なのだろうという推測は立った。
あのイリヤスフィールがあの時のような激しい感情の起伏を表した声をあげたりはしないはずだ。
それにしても――

「……」

この顔を見ていると、自分がどれだけ衛宮切嗣という男に疎まれていたのかが分かるようだ。

切嗣がマスターであった日々は英霊の中でも特別な存在である自分には未だに記憶に新しい。
聖杯が何なのかということはあの泥に飲まれこの姿を与えられた時に知った。
だからあの時の切嗣の判断に今更とやかく思ったりしない。
ただ、もしあの時の切嗣のサーヴァントが理想を追うアルトリアではなく、全ての絶望を知った今の自分であったなら。
かつてのマスターの中の絶望を理解できたのだろうか?

「………」

これ以上は今の自分には何の関係もない話だ。そう頭を切り替え、もっと建設的なことを考えることにする。
あのイリヤスフィールがこのアルバムに載った彼女であったとしても、アインツベルンそのものが無いわけではないだろう。
それによく分からない魔術も使っていた。魔術の世界とは関わりをなくしたようでも本質は変わっていないはずだ。
一方で、アイリスフィールが己の娘を一般人として生きさせるのに聖杯の器の役割を残すとは思えない。
どうにかしてそれを封印したか、あるいは喪失させたか。どちらにしても何かしらの名残はあるはずだ。
それを探してページをめくっているうちに、気になる存在が現れた。
イリヤスフィールと同じ顔をしながらアーチャーを連想する肌の色をした少女。
友人というには似すぎており、家族というにはその存在が現れたのが唐突すぎる。
名簿を調べる。すると、そこにはアインツベルンの名を持つ者がイリヤスフィールの他にもう一人いた。
クロエ・フォン・アインツベルン。まさか黒いからクロエなどという単調な発想ではないだろうが。
シロウのこともある。イリヤスフィールのことは後回しにしてまずはこのクロエという少女を探すとしよう。

そんなことを考えているうちにアルバムを読み終わったセイバー。
それを元あった場所へと戻し、今後の動き方を考える。
ここは衛宮邸。そうとしか書かれていない。
つまり、ここを本来(というのもおかしいが)の衛宮邸と勘違いした桜がやってくるかもしれない。
あるいはあのクロエと思しき少女が立ち寄ることもあるかもしれない。
しかしもし来なかったときは時間の無駄となるだろう。
ふと時計を見ると、どうもこの場でかなりの時間を使ってしまったようだ。
ここは早めに出発するべきだと判断する。
目的の人物に関しては周囲をうろついていれば案外見つかることもあるかもしれない。

出るならばどこへ向かうとしようか。
間桐邸に行っている可能性は低いだろう。ここは行かなくてもいいと考える。
柳洞寺。ここも正直気がかりだ。だが距離がある。立ち寄る暇があれば寄るくらいでもいいだろう。
そしてもう一つ気になる施設があった。
アヴァロン。すでに失われた己の聖剣の鞘の名を冠した施設。だがやはり遠く、柳洞寺とは別方向となっている。
ともあれどちらを選んでも北に向かうことには変わりない。それに北に行けばシロウとイリヤスフィールにしばらくは会うこともないだろう。

そうして方針を決めたセイバーは今の主を探すために、別世界の主とその家族の住んでいただろう家を出発した。
その中で感じた過去への思いを、もう思い出すことがないように心の奥に閉じ込めて。

【F-4/衛宮邸付近/一日目 午前】

【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、黒化、魔力消費(微小)
[装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1(確認済み)
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:人の居そうな場所に向かう。まずは北上する
2:間桐桜を探して、安全を確保する
3:エクスカリバーを探す
4:間桐桜を除く参加者全員の殲滅
5:クロエ・フォン・アインツベルンを探す
6:もし士郎たちに合った時は、イリヤスフィールが聖杯の器かどうかをはっきり確かめる(積極的には探さない
[備考]
※間桐桜とのラインは途切れています
※プリズマ☆イリヤの世界の存在を知りました
 クロエ・フォン・アインツベルンという存在が聖杯の器に関わっていると推測しています


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