アットウィキロゴ

Angelic Angel

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

Angelic Angel




美遊の叫びに反応するかのように、結花の翼が美遊の方に向かう。

だから、美遊の言葉を受けた結花は、倒れた姿勢のままその片翼を思い切り美遊に振り下ろそうとして。

思わず瞳を閉じた美遊、しかし翼は美遊に触れることはなかった。
それは彼女の直前で静止している。
まるで自分の行動に迷いを感じているかのように。

その結花の様子を見て美遊は確信する。
自分には、彼女の希望となりうる資格があると。

(力を貸して、イリヤ……――――…)

まだ間に合う。今なら、彼女のことを救うことができる。
そう確信した美遊は、静かに口を開く。

「居場所がないなら、一人ぼっちだというなら、私があなたの傍にいます。
 あなたがどんなになっても、私が受け入れます。
 あなたの罪も、その姿も、あなたの憎しみや想いも。だから」

かつて自分に手を差し伸ばしてくれた友人がしてくれたように。
かつて何も持たなかった自分に生きる意味を、大切なものを教えてくれたあの人のように。

私も、目の前にいるこの”人”を助けたい。

「自分には何もないなんて言わないで…!自分を捨てようなんて、しないで…!」



美遊との出会いは結花にとってはそう印象の深いものではなかった。
事故とはいえ人を殺してしまった自分が最初に出会った人物であったというだけ。

しかし、彼女はオルフェノクである自分を見ても強い反応を示すことはしなかった。
ただ、それがありのままの事実であるように受け入れていたような気がした。

誰に言われたわけでもない、彼女自身の意志で。

もしかしたらその後の戦いで一人の人間を殺してしまった時、私はそんな彼女の傍にいる資格がないと、そう思ったのかもしれない。
こんな人を殺す化け物になった自分が。


「私は、人間が怖いです…。私を虐げる人が、私を虐める人が」
「だったら、私があなたを守ります」
「もしかしたら、私は人の心を失ってオルフェノクになってしまう時がくるかもしれません」
「そうなったら、私があなたを止めます」
「私は、あなたの……」


「仲間に……、友達になってもいいんですか…?」

震えるような声で問いかけるその質問に。

「…いいに決まってます」

小さく優しく微笑んで、美遊は答えた。
自分を受け入れると。友達に、仲間になる、と。


「こんな、醜い私でも…?」
「醜くなんてありません、その真っ白な鳥みたいな姿も大きな羽も、とても綺麗です」
それに、私だけじゃない、イリヤも、セイバーさんも、乾さんだってあなたのことを受け入れてくれます。きっと」

狭い世界しか知らない自分にだって分かる。
どんなに世界に酷い人間が多いとしても、救われない残酷なことが多くても。
それでも彼女を受け入れてくれる居場所くらいは、確かにあるのだから。

結花の、クレインオルフェノクの姿が元の人間のものへと戻っていく。
先ほどまでならきっと激情に塗れた表情を浮かべていただろうその顔には、潤んだ瞳と小さな微笑みを湛えていた。

「結花さん……」

鎖から手を離し体を引いて。
起き上がろうとする結花に美遊はゆっくりと手を差し出した。




その時だった。
二人の耳に誰かが立ち上がり地を踏む音が聞こえたのは。

振り向いた二人の目に入ったのは、憤怒の表情に顔を歪ませたゲーチスの姿。

「おのれ…よくも私にあのような夢を…!あのような光景を…!
 化け物の分際で、よくもここまで…!」

ここにきてようやく立ち直ったその男の表情は、暗黒神殿による悪夢により思い出したくないものを思い出さされた影響か先までの余裕などないほどの怒りと殺意に満ちたものだった。

「起きなさいサザンドラ、ゾロアーク!早くこの二人を殺しなさい!」

地に蹲って呻いていた二匹に命令を出すと、辛そうな鳴き声を上げながら起き上がる。
命令を出すゲーチスの様子には、自分のポケモンに対する気遣いをしようとする様子は感じられない。


三つ首の黒竜はそれでも主の命令に答えようとするかのように、こちらへ向けて突撃をかける。
その全身には先に放った波動に近いものを纏った状態での突進。

咄嗟に美遊は結花の手を引きながら回避する。
地面に追突したその一撃は、土埃を上げながら巨大なクレーターを作る。


「…!速い…」
『美遊様、ここは撤退を!セイバーさん達と合流して戦うべきです』
「ダメ…、今の私じゃ逃げきれない…」

もし転身を解除したとしても現状の体力と魔力では追い付かれるのに時間はかからないだろう。
手っ取り早い手段としてはペガサスを呼び出し、手綱を解放して逃げることだろうが、しかしそれを同時にこなし制御することもできそうにないほどに魔力残量が心もとない。

ゾロアークの辻斬が迫るのを、結花がクレインオルフェノクへと変身し翼で牽制することで攻撃が届くのを防ぐ。
激情態から通常形態へと戻った結花には先程までの巨大な翼を顕現させることはできず、更に飛行するにも片翼の負傷が響いている。

「ははははは!!そうだ逃げなさい!もっとその体を細切れにされて死ねばいい!」

サザンドラの牙を避けたところで離れた場所からのゲーチスの銃弾が放たれる。
身を屈めた美遊の顔を掠め、一本の赤い線をその頬に作る。
負傷のうちにも入らぬかすり傷、しかしたったそれだけの衝撃で意識が飛びそうになる。

ふらつく美遊を結花が支え、気がつけば支えられる立場が入れ替わっていた二人。
美遊を抱えた結花は、その翼を広げて地を蹴る。

クレインオルフェノクの飛行速度は最大で時速480km。もし全力で逃げられたならサザンドラでは追いつくことができないだろう。
だが。

「っ、痛っ……」

片翼が折れた状態ではそんな速度を発揮することは叶わない。
一瞬浮いた体は、一度翼を羽ばたかせると同時にバランスを崩して地面へときりもみ回転しながら墜落。
ゾロアークの火炎放射がその体を炙る。

「きゃあああああああああ!!」

身を焼かれる熱に絶叫する結花。
起き上がった美遊は、熱に呻く結花をかばいつつ眼帯を外してゾロアークを見据える。
石化の魔眼にて視認されたゾロアークはその体を強張らせ、まるで全身を固められたかのように動きを止める。

だが、魔眼の使用もそれが限度。
頭に走った痛みが美遊の意識を刈り取りかける。
眼帯を戻しつつ、飛来したサザンドラが至近距離で放出しかけた炎をその首に鎖を巻きつけることで軌道を逸らす。

「結花さん、大丈夫ですか!?」
「はぁ…、はぁ…、私は、大丈夫です…。それより美遊ちゃんが…」

巻きつけた鎖をもってのサザンドラとの綱引き状態。
もしこれに負ければ、あの波動の砲撃かあるいは突撃かが放たれる。
それでも避ける自信がないわけではないが、後ろには結花がいる。

起き上がった結花の元に銃声が響く。
傷ついた少女二人も満足に仕留められない二匹に対して業を煮やしたゲーチスがその手の拳銃で直接狙いにかかったのだろう。
銃弾は結花の肩を捉える。
オルフェノクの体に対して一発の銃弾程度では決して致命傷には成り得ないが、しかし衝撃は結花の体を揺さぶる。

「チ、小娘と化け物風情が…、目障りですね本当に!!」

怒りに満ちたゲーチスは、その手の拳銃をベレッタから、ロロの死体から奪ったデザートイーグルと取り替える。
かすっただけでも体の皮膚を大きく抉り取る威力の銃弾。それを身をもって知っている美遊の心に焦りが生まれる。

結花の体を思い切り引き倒すと共に自身もその斜線上から身を逸らす。
先ほどの音量を超える銃声が響き、誰もいなくなった空間を銃弾が通り過ぎると共に、発砲したゲーチスの腕が大きく後ろへと飛ぶ。
想像以上の衝撃に銃を地面へと取り落とし、肩を抑えながらも銃を拾い上げようと後ろに下がる。

目の前には鎖を離せないと見るや、その身を引きながらもその3つ首の頭の2つで噛み砕きにかかっているサザンドラ。

(…どうしたらいい?ここは……)



現状で最も考慮すべきはゲーチスの存在。
だが、彼をどうにかするためにはサザンドラの存在が厄介。
こちらに対する攻め手、そしてゲーチス自身の指示以外においてはやる気の欠けたようにも思えるゾロアークとは異なり、そちらだけはゲーチスを守ろうとする強い意志が感じられる。

ゲーチスが冷静さを欠いている今、それだけが大きな障害。

「結花さん、ここから逃げてください。私が彼を引き付けますから、その間に」
「………」


「…美遊ちゃん、私、怖かったんです。
 私みたいな化け物がいたら、みんなが不幸になるかもしれない。みんなを傷付けてしまうだけかもしれない」
「結花さん…?」
「それでも、私は居場所が欲しかったんです。私が私らしくいられる場所が、私として生きていける場所が」

白い影は、静かに美遊に向けて語り続ける。

「だから、美遊ちゃん、こんな私を受け入れてくれたあなたのことを、私も守りたい。もう、逃げたくないんです…!
 だから、こんな翼しかない私でも守れるなら、あなたのこと、守らせてください…!」

オルフェノクでありながら人間を守るために、多くの同胞、オルフェノクを手にかける罪を背負いながら戦い続けた彼のように。
裏切り者として幾度と無く命を狙われることになっても、自分を曲げることなく理想のために戦い続けたあの時の彼のように。

彼らのように理想は守れなくても、今自分の傍にいるこの少女を助けることくらいはできる。

この血に濡れて折れた翼でも。


ゲーチスは魔眼の影響で動けぬゾロアークをボールに戻してこちらへと向き直り、抑えていたサザンドラ側も牙を受け続けた鎖が限界を迎えつつある。

『結花様』

そんなサザンドラを抑える鎖となったサファイアが、美遊の手元から結花へと呼びかける。


『一つ問わせてください。
 決して無茶を聞いているわけではありません。ですから正直にお答えください。
 今の結花様は、――翔べますか?』
「………」

今この翼で飛ぶことができるのか。
武器として、光の翼として振り回すことには全く問題ないのに、空を飛ぼうとすれば負傷した場所から激痛が走りバランスを崩す。
こんな状態で、おそらくは美遊を抱えて空を飛べるか。

「………飛べます、きっと」

痛みなら耐えればいい。
今までずっと虐げられてきた心の痛みに比べれば、友達一人を守るための痛みなど。
美遊を守れぬ痛みに比べれば、決して耐えられぬものではない。

『分かりました。では美遊様、鎖が壊されると同時にお願いします』



やがてサザンドラの左右の頭の噛み付きによって砕けた鎖が勢い良く美遊の元へと弾け飛ぶ。
その勢いに任せて美遊の元へと、その牙で体に食らいつかんと突進をかけるサザンドラ。
同時に、背後のゲーチスも二人へと向けて持ち替えたベレッタの銃弾を放ち。

その瞬間だった。

バサリ、と結花の腰部から生えた巨大な羽が美遊を抱えて地を叩き。
一陣の光となって宙へと舞い上がった。

サザンドラの特攻もゲーチスの銃弾も空振りし、陽の傾いた空を見上げた一人と一匹。

宙を舞う小さな純白の羽毛の向こうに見えた、真っ白で巨大な翼。



(『美遊様の現状の魔力ではおそらく騎英の手綱一度の解放が限度でしょう。ペガサスを呼び出す魔力までは保証できない状態です』)
(『その先の判断はお二方へと委ねます。ですから私の言える案は一つだけ』)

(『美遊様、結花様に手綱をお使い下さい』)



空に見えた結花の姿は、先に怒りの中で見せた激情態のそれ。
しかしその下半身は鳥類の持つ足に近付き、獰猛な猛禽類のごとき爪を備えた脚部へと変化。
さらにはその腰に生えた翼も、クレインオルフェノクの身長を超えるほどに巨大化していた。

その両手には、美遊の手に握られた光の手綱が握られている。

ライダーのサーヴァント、メデューサの、幻獣をも乗りこなす騎乗スキル、そして手綱によって結花へと送り込まれた魔力。
それは結花自身のオルフェノクの姿を、更なる高みに達した姿へと進化させていた。

クレインオルフェノク・激情飛翔態。


(まだ、行ける)

その体に満ちていく力を感じながら、しかしそれを決して忌むことなく。

(私は、飛べる。今の私なら―――)

その姿に強い自信と誇りを持って。

(この子と一緒なら、きっとどこまでも―――!!)

その翼を、羽ばたかせた。



「―――――――騎英の手綱(ベルレフォーン)!!!!」

真名解放と共に、クレインオルフェノクの体を光が包み、純白の流星となって下降する。

速度だけならば天馬をも凌駕するほどのもの、しかし一介の人間の進化体、新人類の身では神代を生きた神獣には遠く及ぶものではない。
だけど、これでいい。

(大丈夫、あなたは人を殺さない)

それが人の命を奪うための翼ではない、と美遊は信じているから。
その、美遊の想いが結花へと伝わったからこそ、彼女は全力で翔ぶことができる。


咄嗟に斜線上に割り込んだサザンドラが主を守らんと龍の波動を放射し迎撃する。
しかし高速での突撃をかける二人を止めるには至らず、龍の顎を形取った波動を突き破ってサザンドラへと衝突、その体を吹き飛ばす。

「ひっ…!」

最後の砦を破られたゲーチスは迫り来る閃光の中に己の死を直感。
怯えるような声を発して背を向け走り出す。
しかし人の足で逃げ切れるものではない。
そして天馬のそれとは威力が下がっているとはいっても、高速で迫る巨体に追突されれば、人体なら無事では済まないだろう。

迫る死に怯えながらも地面に転がり込むゲーチス。

だがその閃光はゲーチスに命中することなく、直前で軌道を変えて大きく上昇。
大きく視界の外へと過ぎ去っていく。

何が起きたのか確かめんと前を庇うように出した手を退けたゲーチスに向けて、逸れた軌道上から光の刃が振り下ろされた。
肩から腹部にかけて赤い線が奔る。

「ぎゃああああああああ!!」

痛みに呻くゲーチス。その目の前には夢幻召喚を解き魔法少女の姿を取った美遊がサファイアの先端で煌めく刃を翳していた。

(浅い…、次で…)

確実にこの生命を終わらせる。
再度、その刃を冷酷に、痛みにうめき続けるゲーチスを貫かんと振り上げ。


「ガアアアアアアアアアア!!!」

その背後から、鳴き声を上げながら美遊へと突撃をかけた者がいた。
クレインオルフェノクの突撃に吹き飛ばされ既に戦闘可能な状態ではないほどのダメージを追いつつも、自身の主を守らんと最後の気力を振り絞って美遊にぶつかりかかったサザンドラ。
ただの体当たりでしかないとはいえ、想定外の衝撃に美遊の体は吹き飛ばされ。

そのままその両側の頭で抱えるようにゲーチスの体を持ち上げてサザンドラは飛び上がる。


『美遊様!このままでは!』

サファイアの叫びに起き上がろうと地面に手を付いて。
しかし体を起こすことはできずそのまま地面へとへたり込んだ。

「………、…ごめんサファイア、もう、無理……」

サザンドラ自体もダメージを受けて傷ついた体での飛行。決して追いつけない速さではない。
普段であったならば。
だが、美遊もまた先の突撃が止めとなったのか、それまでどうにか耐え抜いてきた疲労、ダメージから肉体が、脳が限界を告げるかのように動かなくなっていた。

「美遊ちゃん!」

空から舞い降りながら起き上がることもできない美遊の元へと駆け寄る結花。

「しっかりして、美遊ちゃん!」
『落ち着いてください結花様。美遊様の命には別状はありません。
 これまでの戦いのダメージから体が休息を求めているだけです。しばらくすれば回復するでしょう』
「そう…、よかった…」
『…美遊様、どうしてあそこで騎英の手綱の軌道を逸らしたのですか?
 あの一撃であれば、ゲーチスを仕留めることも可能だったはずです』
「……結花、さんに、人を殺させたくないって、そう思ったから……。
 私が、背負えば、いいって……思ったから…」

薄れる意識の中で、美遊は途切れ途切れに言葉を紡ぐ。

その言葉にサファイアは、かつて戦いを拒んだイリヤのために一人最強の黒化英霊に挑んだ時の美遊のことを思い出す。

『全く…、美遊様はあの時と何も変わりませんね』
「……ダメ、だったかな?」
『いえ、こうして今美遊様も結花様も生きておられます。…ロロ様のことは残念でしたが。
 しかし今はそれだけで十分でしょう』

閉じかけた瞳の向こうで、小さく笑みを浮かべる美遊。
そんな美遊を、結花は抱き上げてその頭を膝の上に乗せる。

「美遊ちゃん、私、あなたと一緒にいても、生きていてもいいんですよね?」
「…もちろん、です。だって私達――――」

友達だから、と。
消え入りそうなほど小さな、しかし結花の耳にははっきりと届く声で告げて、美遊は意識を落とした。

瞳から流れた一滴の雫は悲しみではなく嬉しさ故の涙だろう。
美遊の頬にこぼれ落ちたそれを優しく拭い。

『それでは、西で戦っているセイバー様や真理様達と合流した後L様達の元へと戻りましょう。
 もし戦いが終わっていればそろそろ追いついてこられる頃かも――――結花様?!』

その、拭った顔にハラリ、と灰色の粉が降りかかった。
それは、結花の顔から落ちている。

結花がその頬に触れると、顔のみならず触れた手からも灰がこぼれ始めていた。

それが何を意味するものなのかはこの殺し合いの参加者皆が知っていることだ。
同じ光景を、ここに連れてこられてから最初に死んだ者で見ているのだから。

「………いいんです、これで」

だというのに結花は、笑いかけながら言った。
すぐそこに迫った死に対し、恐怖や諦めを感じさせる様子もない、そんな微笑みを浮かべて。

その脇付近、一見分かりにくい上に腕から流れた血にも濡れた場所からそれとは別の血を流しながら。



草加雅人は目を開き、状況を把握するように周囲を見回す。

体を壁にもたれかからせるような形で倒れこんだ状態。
胸には切り傷。大きくはあるが深くはない。致命傷といえるほどではないだろう。
そして少し離れた場所にはカイザギアが転がっている。
おそらくはこの傷をつけられたあの一撃、長田結花の放った光の翼に斬られた際に変身が解除されたのだろう。
その傍にはミッションメモリーが刺したままの状態のカイザブレイガン。
変身解除と共にブレード生成も停止したのだろう、ガンモードのまま。しかしブレードが形成されていただろう場所付近の地面には真っ赤な液体が付着していた。

(…長田結花は……、死んだか?
 …まあいい、もし生きてたとしても、もう長くはないだろう)

あの時、意識を失う直前、カイザスラッシュと光の翼が互いの体へとぶつかり合う寸前。
確かにあの刃を彼女の体に突き立てたという感触をこの手に感じた。
幾度もオルフェノクを狩ってきた際に感じたものと同じ感覚。即死には至らなかったとしても致命傷ではあったはずだ。

(はは……、いい気味だ。オルフェノク)

胸の傷の痛みに顔を歪めつつも、因縁の敵の一人をその手で仕留めた事実に笑いながら立ち上がる。
そうだ、オルフェノクは皆死ねばいい。
北崎も、村上も、木場も、乾も、あの男も。
俺から大切なものを、命を、仲間を、真理さえも奪った化け物は、皆。

(真理……)

その真理がオルフェノクになってしまったと認識している草加。
オルフェノクが全て死ねばいいのであれば、真理もまた死ぬべきなのか?
その矛盾に気付いていないわけではない。

だが、どちらにしても今はまずこの怪我の治療が先だ。ここが病院で助かった。

ゆっくりと起き上がった草加は、カイザギアを拾い上げて病院の中に歩みを進め始めた。

自分の中の、戦う理由と守るべきものの矛盾に対する答えに目を背けるようにして。



自分の体に限界が近いことは既に分かっていた。

だけど生きようと思う意志がなかった体に無理を言わせることは、そんなに難しいことでもなかった。
海堂を殺された憎悪をぶつける時も、美遊を必死で守ろうとした時も。

一方で、美遊を背に乗せて自分の限界に近い飛翔をした時は、もっと生きていたいと、もっと彼女と一緒にいたいという想いがあったのも事実。

膝の上で静かに寝息をたてる美遊の頭を撫でる結花。
その手からは、撫でる度にポロポロと崩壊していく体が灰となって地面に積もっていく。

「セイバーさんや、乾さん、皆さんに、よろしく伝えてください」
『結花様…っ』
「最後に友達ができた。それだけで、私にはもったいないくらいに幸せなことだったんだって思いますから」



もっと美遊と、彼女達が生きる世界を、自分を受け入れてくれるような場所を生きてみたかった。
だけど、いい。これは罰なのだ。
木場に知られぬままに人を殺した化け物でありながら人として生きようとした自分に対する刑。

だけど、最後の最後で自分にとって大切なものを、居場所をもらうことができた。
だから、ほんの少しだけ無理をきかせてくれた。それでよかった。

目の前で眠る小さく強い少女。
全く似ていないのに、何故かあの時まだ黒かったセイバーさんに一人立ち向かって命を落とした少年を幻姿した強い背をもった子。

あなたは、私の分も生きてください。


海堂さん。
こんな情けない私ですけど、もしかしたら地獄に落ちるかもしれないですけど。
もし天国にいけたなら、今までと同じように私と一緒にいてくれますか?


そして、木場さん。
もし私の見た絶望とあなたの知った絶望が同じものだったのなら。
どうか、絶望に負けないでください。

だって、人間がどんなに怖くて恐ろしい存在だったとしても。
世界がどれだけ私達のことを拒むものだとしても。

必ず、希望は、光はあるんだから。
乾さんや、美遊ちゃんのような、強い希望があれば。

(いつか、そんな真っ黒な世界も、きっと白く――――)



『………』

眠り続ける美遊の傍で、静かに佇み続けるサファイア。
そこで響くのは、美遊の小さな寝息のみ。

傍に座っていた長田結花の姿はどこにもなく。
ただ、美遊の近くで空へと舞っていく純白の羽と、一盛りの灰の山だけが残っていた。

無風の中でも周囲にふわり、と撒かれていく羽は、やがて美遊の元から去っていくように飛んで行く。
ふと、そんな美遊の手が動き、小さく握りしめられたその手のひらの上に、空を舞っていったものより一回りだけ大きな羽だけを残して。

【長田結花@仮面ライダー555 死亡】


【D-5/一日目 夕方】

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、魔力消耗(大)、全身に火傷(回復中)、意識無し
[装備]:カレイドステッキサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、クラスカード(ライダー)@Fate/ kaleid liner プリズマ☆イリヤ(使用制限中)
[思考・状況]
基本:イリヤや皆と共に絶対に帰る
1:………
2:セイバーや真理達と合流する。
3:白い魔法少女(織莉子)のあり方は認められない
4:『オルフェノク』には気をつける(現状の対象は木場勇治、村上峡児)
5:まどかの世界の魔法少女を調べる
[備考]
※参戦時期はツヴァイ!の特別編以降
※カレイドステッキサファイアはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません



【D-5/病院/一日目 夕方】

【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、負傷(中)、胸に切り傷、真理の死及びオルフェノク転生の事実に対する精神不安定
[装備]:カイザギア@仮面ライダー555、オートバシン@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品、
[思考・状況]
基本:儀式からの脱出とオルフェノクの抹殺
1:怪我の治療をする。
2:オルフェノクは優先的に殲滅する。
3:真理を、俺は―――――
4:ポケモン、オルフェノク、魔女に詳しい人物から詳しく情報を聞き出す。
5:Lとの約束のため病院か遊園地へ
6:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい
[備考]
※参戦時期は北崎が敵と知った直後~木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました
※灰色の怪人(オルフェノクのような何か)となったNが真理を殺す、という幻を見せられました。
 それにより真理はオルフェノクとなったと誤解しています。


病院の影、美遊達のいた場所からは反対側に位置する場所。

ゲーチスを抱えて飛び去ったサザンドラは緑の芝生の上に着地した。
しかしその身に受けたダメージゆえか、バランスを崩してゲーチスを取り落として落下、そのまま起き上がれぬまま地面へと転がり込む。

「…っ、痛……、サザンドラ!」

そんなサザンドラに対して、怒りをぶつけるかのように容赦ない蹴りを叩き込むゲーチス。

「何故、もっと早くこなかった!お前がちゃんとしていれば、私はこんな傷など!!」

その身の限界を越えてまでのゲーチスを連れての撤退はあくまでも自分の主を助けようとしてのもの。
しかしそんな想いも、サザンドラ自身の負傷も気に留めることなく罵声を浴びせ続ける。

「痛い…、痛い…痛い!よくも…、よくも小童の分際で……、何故私の邪魔をするのはいつもあのような子供ばかり…」

傷の痛みに叫びながらも、同時にゲーチスの脳裏に浮かんでいく光景。
長年に渡って練り続けてきた自分の野望が、ただ一つのイレギュラー、無名の子供でありながら伝説のドラゴンポケモンにNに並ぶ英雄として認められたあの子供に止められた時の無念。

それは気が狂いそうなほどの悔しさをゲーチスの中に残していた。
もしこの場に連れて来られなければ、気をどうにかしかねないほどのものだ。

その感情を、ゲーチスはあのアカギがおそらく連れているであろう、更に強大な力をもったポケモンを狙うことで、より大きな欲望、野望を持つことで押さえつけていた。
それでも心から溢れ出てしまう感情も、美樹さやかやオルフェノク達といった化け物を陥れることで発散することができていたため心の均衡も保つことができていたのだ。

だが、あの時美遊から放たれた暗黒神殿はゲーチスが感情の上に覆い隠していたそんな鍍金を引き剥がしてしまった。
そして、目の前に迫った死、実質的な敗北。

屈辱の上に恐怖を上塗りされたゲーチスの心を覆い隠すほどの野望や欲望は残ってはいなかった。

「はぁ…はぁ…、ちぃ」

舌打ちしつつもサザンドラをモンスターボールに戻す。
精神の均衡は戻らなくとも、冷静さはじょじょに取り戻されていく。
サザンドラは重要な戦力、八つ当たりで失うわけにはいかない。

問題は逃がしてしまったあのあの二人だ。
少なくともロロと海堂を殺したことはあの二人を通して広がっていくだろう。
こうなれば隠れて人を殺していくことは難しい。

(多少の無理をしてでも、一人ずつ積極的に始末していくべきですか…)

斬られた肩の痛みをこらえるように立ち上がったゲーチス。
幸いここは病院、この傷の処置くらいはできるだろう。

その後は戦力であるポケモンの回復が優先だろう。
主の身を守ることもできない役立たずだが、それでも今の自分にとっては貴重な戦力だ。

(…そういえばもう少しで放送ですね……、行動はそれからでも……―――ん?)

と、その時だった。
時間を確認するように取り出したデバイスが小さく点滅していた。

ふと目を凝らしてそこに写った文字を読んだ。

From アクロマ、と。
黒いデジタル文字はそう記していた。


【D-5/病院付近/一日目 夕方】
【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:疲労(大)、肩に切り傷、精神不安定、強い怒りと憎悪
[装備]:普段着、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ、ゾロアーク(ダメージ(大)、片腕欠損、ゲーチスに怒り)@ポケットモンスター(ゲーム)、サザンドラ(ダメージ(大)、戦闘不能)@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:基本支給品一式、病院で集めた道具(薬系少な目) 、不明支給品0~1(未確認)
羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入 印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4@現実、きんのたま@ポケットモンスター(ゲーム)
デザートイーグル@現実、流体サクラダイト@コードギアス 反逆のルルーシュ(残り1個)、デザートイーグルの弾、やけどなおし2個@ポケットモンスター
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う
1:アクロマ…?
2:潜んで行動するのが無理ならば積極的に参加者の口減らしを行っていく。
3:ポケモンを回復する手段を探しておきたい。
4:ゾロアークの力をもってできるだけ他者への誤解を振りまき動きやすい状況を作り出す
※本編終了後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※「まどか☆マギカ」の世界の情報を、美樹さやかの知っている範囲でさらに詳しく聞きだしました。
(ただし、魔法少女の魂がソウルジェムにされていることなど、さやかが話したくないと思ったことは聞かされていません)
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)


135:Guilty Girl 投下順に読む 第三回定時放送
時系列順に読む
125:Nobody to watch over me 美遊・エーデルフェルト 138:Saver of Revenger
ゲーチス 139:INVASION OF VENOM
草加雅人
長田結花 GAME OVER


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー