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君の銀の庭

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君の銀の庭 ◆Z9iNYeY9a2



タタタタタタ

銃声が鳴り響く。

その合間に爆音と熱風が轟く。

一発ずつ、拙く放たれる銃声、爆発音はやがて周囲にうごめく何かを吹き飛ばす。

その先にいるのは、巨大な影。

「行くわよ!暁美さん、鹿目さん!」
「はいっ!」

桃色の衣装を纏った少女は、マスケット銃を構えた少女の後ろに続き。
さらに離れた場所からそんな彼女から伸びた黄色いリボンをその手にした、盾を構えた灰色の衣装の少女。

影は近付く少女に気付き巨大な腕を振り回し、大量の小さな影を飛ばす。


「今…!」

暁美と呼ばれた灰色の衣装の少女が盾をひっくり返すと同時、射出された影も振りかざされた腕も完全に静止する。

そんな空間で動くのは、時を止めた彼女本人と、その手にリボンを結びつけた少女達。

「これで決めるわ!」

飛び上がった黄色い少女の手から巻き取られたリボンは、巨大な砲台へと形を変える。
さらにその後ろからは手にした弓を構える桃色の少女。

灰色の少女の制御外へと離れ止まった彼女達を前にして、彼女はまた盾をひっくり返し。

動き出す時。
そして桃色の少女の放った矢が射出された影を撃ち抜き。

「ティロ・フィナーレ!!」

砲台から撃ちだされた弾丸は巨大な敵を捉え、大爆発と共にその体を粉砕した。



「やったあ!やったね、マミさん!ほむらちゃん!」
「か、鹿目さん…!く、苦しいです…」

消えていく結界を眺めつつ、思わず喜びの声を上げて抱きつくまどかに、メガネで三つ編みの少女、暁美ほむらは困惑する。
彼女なりのスキンシップなのだということが分かっていながらも、どうしても戸惑ってしまうのだ。

「なかなかあなたの魔法、形になってきたんじゃないかしら?」
「いえ、そんなこと…、二人に比べたらまだまだです…」
「もっと自分に自信を持ってもいいのよ?あなたの魔法はすごいものなんだから」

褒められるほむら。しかしそれに甘んじてはいけない。
もっと強くならなければいけない。
もう少しでやってくるであろう災厄、ワルプルギスの夜に立ち向かうためには、もっと強くならなければいけない。

「さて、もう魔女の反応はないし、今日はこの辺りでお茶にしましょう。この前いいお茶っ葉が手に入ったのよ」
「やったあ!」


そういってマミの誘いに乗るまどか。無論ほむらもその後に続く。

と、皆の最後尾。後ろにはもう誰もいないはずの空間。
ふとほむらが振り向いた先には、謎のモヤモヤとした黒い影があった。

いつもそうだ。
こうやって自分が楽しい、幸せだと感じた時にあれは現れる。
魔女の反応は無く、しかも自分にしか見えないらしい。以前二人に相談をしてみたが、疲れているのだろうという結論に達してしまった。

不気味でこそあったものの、それに触れることに強い恐怖がほむらの中にはあった。

「ほむらちゃん?どうかしたの?」
「もしかして、この前言っていた…?」
「う、ううん、何でもないんです。早く行きましょう」


そうしてほむらは、不気味に佇むその黒い影に背を向け、二人に続いて走っていった。



「…まさか佐倉杏子が最初に落ちるとはね」

放送を聞いて最初に思ったのはそんなことだった。

巴マミ、美樹さやか、自分、そして佐倉杏子。
この中でもし生き残ることに長けた者がいるとしたら佐倉杏子だと、ほむらは考えていた。

何だかんだで自身の絶望にも耐え、一人で長期間生き延びることができた彼女が、こうして巴マミや美樹さやかよりも早く脱落したというのは、それなりには意外であった。
もし彼女が落ちうることがあれば、あるいは美樹さやかの時のように情に絆されたか。

そういえば確か彼女は巴マミと共に行動しようとしていたと思う。
彼女はどうしたのだろうか。

「………」

一方でアリスもまた、死んだ名の中に刻まれた友の名に、改めて口を噤んでいた。
その心中はほむらには計り知れないが、それで悲しみに落ちるということはないだろう。


「そういえばさ」

と、ふと沈黙を破って口を開いたアリス。

「あの呉キリカっていう危険な魔法少女も死んだっていうけど」
「そうね、脅威は一つ消えたとも言えるけど、この放送を聞いた美国織莉子がどう動くか、それが問題ね」

呉キリカ。ほむら自身彼女の人となりを知っているわけではない。
戦ったのは一度だけ、それも魔女化した状態となれば織莉子以上にほむらにとっては不明瞭な存在だった。
まあ、死んだ今となっては関わりのない話ではあるが。

「それで、私達はどこへ向かってるのかしら?」
「目的地ね、とりあえずまどかの家に向かいたいところだけど、その前にどうしても気になるところがあるのよ」
「気になるところというと?」
「このNの城ってところね」





「ナナリーが…死んだだと…!」

放送に顔を歪めている一人の少女。
その表情は苦悶に満ちており、その放送、ナナリーの死に対する感情を伺わせる。
しかしそれは決して悲しみなどというものではない。

「くそ…、何てことだ…!これでは村上に対等な力を得ることができない…」

魔女の力を得ることで、このギアスの力の副作用を克服する。それがマオの目的だった。
ゼロから力を奪うには、やはり自分だけの力では困難を極める。ならばまず狙うはナナリーであり。
魔女の力により強化されたギアスをもって村上に対して、こちらを殺すには重くつくと見せることであいつの力に怯えることもない対等な協力関係を築きゼロからも力を奪う。

その手はずだったのに。

「魔女め…、ヤツは何をやっていたんだ…!ナナリーをむざむざと殺させるなんて…」

いくら叫ぼうとも、ナナリーが死んだという事実は変わらない。
しかしそれでも叫ばずにはいられない。

「僕には、誰よりもナナリーから救いを受ける権利があるはずなのに…」

想定外の事態に考えがまとまらない。
このまま追い付いてくるだろう村上からの死の恐怖に怯えながら行かなければならないのだとすると、それはあまりに屈辱。

やり場のない思いだけがマオの中に蓄積されていく。


そんな時だった。

マオの耳に届いたバイクの音。

抑えきれない苛立ちを残したまま、その方向を向いたマオに見えたのはバイクに搭乗した二人の少女。
本来であればそれに惹かれるものなどなかっただろう。しかし、そのサイドカーに乗っているのは。


「アリス…、やつか…」

元イレギュラーズである自分にとっても因縁ある相手であり、あのナナリーの友人。
能力の相性がいいとは言えないものの、今の自分にはギアスに並ぶ武器がある。
八つ当たりをするにはうってつけだった。


「少し遊んでもらうよ。このムシャクシャする思いを発散するためにさ」




森を走っていたはずの二人のバイク。
そこに。

「ポチャ?!」
「―――――?!」

ポッチャマの声が聞こえると同時に空を見上げたアリスとほむらの元に。
巨大な岩が降り注いだ。

「ほむら!」
「くっ」

カチリ

砂時計が回転すると同時に、宙に浮いた状態で重力に従うはずの岩が停止。
バイクの速度を上げ岩石群を抜けたところで岩が地面に墜落。
激しい音を轟かせながら岩が地面に突き刺さっていく。

「ポチャ!ポチャポチャ!!」
「どういうこと?あなたあれを知ってるの?」

ポッチャマにそう問いかけた瞬間だった。
森の木々を粉砕しながら、灰色の巨体がこちらへと迫ってきたのは。


「ポチャ!」

灰色の怪獣はその巨体を唸らせながら、頭頂部に生えたドリルを回転させ突きを繰り出す。

「アリス、こっち!」

サイドカーに乗ったアリスに声を掛け自分の後ろに移動させたほむら。
そのまま咄嗟にバイクを変形、サイドバッシャーバトルモードへと変形させ、その頭を押さえつける。
そのまま巨体を脚部で蹴り飛ばし、ミサイルを打ち込もうと構えたその時――――


「ポチャ!ポッチャマチャマ!」

砲口を向けたほむらの前にポッチャマが立ちふさがった。

「邪魔よ」
「チャマ!」

起き上がるサイドンに対してミサイルを発射しようとするほむらの前で、ポッチャマは譲らずに立ちふさがってスイッチを押させない。

「あの怪物は障害よ。おそらくけしかけてるやつは近くにいるわ。一刻も早くそいつのところにいかなければ危険なの。
 それとも何?あなたがあいつの相手をしてくれるとでも言うの?」

若干の苛立ちを交えつつポッチャマにそう問いかけたほむら。
あの巨体を相手にこの小さな生き物単体でどうにかできるものとは思えない以上、それで引き下がると思っていた。
が、しかし。

「チャ!」

ポッチャマは強く頷いた。
つまりはあれの相手が単独でできる、というのだ。

「強がりかしら?それとも勝算があって言ってるのかしら?」

そう問うほむらに対し、ポッチャマはその小さな羽をまるで親指を立てるような形にして突き出す。

「そう、それなら任せるわ。助けには入れないけど、構わないわね」
「チャマ!」

その鳴き声を最後に、ポッチャマはサイドバッシャーを飛び降り、サイドンに向かってかけ出した。
そしてサイドンも、そんなポッチャマへと注意を移して攻撃を始めていた。

「もしかしてあの怪獣もポッチャマやミュウツーの同族なんじゃ…?」
「なるほど、餅は餅屋というわけね」

サイドンを引き離しつつあるポッチャマを前に、アリスとほむらは周囲を探る。

「ソウルジェムが反応してる。おそらくはあれをけしかけてきた何者かね」
「こそこそしちゃって、イライラするわね。さっさと姿見せなさいよ!その臆病な面拝んであげるから!」

声を荒らげてその主に向かって挑発する言葉を投げるアリスの声が森に響き。


「ふん、言ってくれる。ボクの手の内を知っていながら臆病者なんてね」

それに答えるかのように頭上から声が二人の元に降り注ぐ。

見上げたアリスとほむらの視界に入ったのは、そう高くもない木の上に直立している一人の少女。

「マオ…!」
「久しぶり、と言ったところかな。アリス」

黒を基調とした特殊服のような衣類に身を包み腕に包帯を巻いた少女、マオ。

「全く、あれも使えないな。あんな小さな生き物に気を取られるなんて。
 正直君たちに用があるわけじゃないんだけどね。ちょっと機嫌が悪いんだ。少し付き合ってもらおうか」

そう言って銃口を向ける。

カチッ

それに対してほむらは時間を止め。
一発の銃弾を彼女に向かって静かに放つ。

彼女の直前で停止したそれは、時間が動き出すと同時にマオの顔へと命中―――

「ぐっ…!」

する直前、顔を逸らしたことでマオの頬を若干掠めるに留まっていた。

(避けた…?)
「なるほど、まさか本当に時間を止められるとはね…。驚いたよ」
「ほむら、あいつのギアスは心を読み取る。だからあいつの目を見てはダメよ」
「そういうことは先に言ってくれないかしら」

頬を掠めた銃弾の痛みに顔を歪めるマオ。
垂れる血を拭いながら元々苛立っていたというその様子がみるみるうちに不機嫌になっていっているのが分かった。

「フン、いいだろう。それじゃあせいぜい幸福の監獄に囚われるといい」

そう言ってマオは銃口をこちらに向けながら片目を覆った眼帯に手を掛け。

「――――ザ・リフレイン!!」

発砲と同時にそう叫ぶと、その瞳から光の紋様が現れ―――



「えっ」

驚きの声の主はマオ自身だった。

たった今発動させたザ・リフレイン。それがアリスとの相性が悪いことは分かっている。
それを目の前で発動させては、アリスがそれに囚われるより前に接近を許してしまうだろう。
だからこそ、移動するのにある程度の時間を要する、なおかつこちらからは視野に入りやすいこの場所から使ったというのに。

なぜ、今彼女は自分の背後を取っているのだ?

「言わなかった?あんたのギアスじゃ私には勝てないって」
(バカな…。アリスにしても今の動きは速すぎる…!)

背後から銃口を向けるアリスに、身動きが取れなくなったマオ。

これほどまでにアリスのギアスを強化しているのは何故か。
混乱する頭で必死に可能性を探る。

「無駄よ。如何にあんたが思考を読み取ろうと、私はその時には既に行動を終えているわ」
「―――アリス、何故ここまでギアスを………。――――!
 まさか、魔女の力を継承したのか?!」
「…なるほど、あんたがナナリーを狙っていたのはそれが狙いだったのね」

結局かつては聞くことができなかった疑問の一つを解決させたアリスは納得するようにそう呟き。


「―――――は、ふふふふふ、アハハハハハハハハハハハ!!!」

対照的にマオは、まるで歓喜の声を上げるかのように笑い始めた。

「ハハハハハハ!ボクはついているな!ナナリーが死んだ時にはもうダメだと思っていたのに、まさかその継承者が目の前に現れてくれるなんて!」
「喜ぶのは勝手だけど、あんたの幸運もここまでよ」

引き金に指をかけたアリス。
後は人差し指をわずかに動かすだけで、銃弾は目の前の彼女の頭を撃ちぬくだろう。

「それは、どうかな?」

と、そう言ったマオはアリスに振り向くことなく銃口を構えたまま、アリスを見ることなく前を見据えている。
そういえば後ろを取って以降ずっとその体勢であった。身動きが取れないにしては不自然。

ふとアリスはその銃口の先に視線を向けた。

「―――!」

そこには、サイドバッシャーから落ち地面に倒れこんだほむらの姿。

「まさか…、リフレインが…?!」
「君が銃口を引いて頭を吹き飛ばしても、その瞬間にこの引き金を引くことくらいはできるだろうね。どうするかい?」
「くっ…!」

挑発するかのように銃口を揺らしたマオの大きく動揺したアリスは、咄嗟にその銃口を掴み腕を締めあげ。

「――――引っ掛かった!見たね、ボクの左目を!」
「!!」

その瞬間、彼女の外気に晒された左目を視界に収めてしまった。

「君も、永遠の幸福の中に囚われるといい!」

その瞬間、マオの左目が更に輝きを放ち――――――――――――




つのドリルで木々が粉砕されていく中、ポッチャマは小さな体を活かして身軽に攻撃を避けながら逃走を続けていた。
岩が降り注ぎ、接近されすぎれば素早い連続の突きがポッチャマを襲う。その一撃一撃がどれもかなりの破壊力を持っている。
直撃を喰らえばひとたまりもないだろう。

「ポッチャーーー!」

それを避けつつ、ポッチャマは迫り来るサイドンに対して大量の泡の光線を吐き出す。
その身に着弾して弾けるそれを受け、サイドンは大きく体を仰け反らせる。

ほむらやアリスはポケモンに対しての知識を持っていなかったゆえに知らなかったこと。
サイドンのタイプは岩、地面タイプである。物理耐久には優れる代わりに特殊攻撃に対する守りは高くない。
そしてその複合タイプは水、草といったタイプの攻撃には相性が非常に悪い。

ポッチャマのバブル光線はサイドンには驚異的な攻撃となるのだ。

しかし。

「ポチャ?!」

本来であれば今の一撃で体力を大きく削られるだろうはずの攻撃だったにも関わらず、サイドンはそこから更に岩雪崩を繰り出してきた。
慌てて降り注ぐ岩石群を避けるポッチャマ。

もしも、相手にしているのがただのサイドンであれば今の一撃だけでも勝敗が決まっていただろう。
しかし今ポッチャマの前にいるのはただのサイドンではない。ロケット団のボスであり、カントー地方において最後のジムリーダーとしても立ちふさがる男のポケモン。
その実力は、相性こそあれサトシのリザードンをして苦戦させるほどのもの。

加えて今のサイドンは、マオによってある道具を持たされていた。
その身に備えた、小さく輝きを放つ石。それはまだその身を進化させる余地のあるポケモンに持たせることでその耐久力を向上させる道具。
その石の名を進化の輝石ということを、ポッチャマは知らない。

「ポチャァ!」

羽を掠めた岩がポッチャマの体のバランスを崩させ、逃げる足を遅らせる。

そこでサイドンは巨大な咆哮と共に己のエネルギーを地面に向けて解き放つ。

それは大地を揺らす衝撃と化し、ポッチャマの蹲った地面を揺らし。

身動きのできなくなったその体へと、サイドンはその頭部のドリルを、狙いを定め突きつけた。


「チャマッ―――――――――?!」




二人が夜神邸を出発して以降一時間強が経過していた。
しかしその間も、二人の間に会話などない。

あくまで利害からなる繋がりの中に信頼関係など不要、どころか信頼したところで裏切りの危険性を持った相手と友好的にしたいとはスザクにも思えなかったし。
月にとっても、素顔すら見せないような相手に話すようなことはなかった。

他の者が見れば恐ろしく空気の悪い二人だったが、この二人にはそれが特に心苦しいものとも思ってはいないようだった。


そして、そんな時に届いたのはあのアカギの声だった。




ニア。
夜神月にとっては新世界を築く上では邪魔となる存在であり。
ここに来るまでの時点では自分を負かした憎い相手であり。
何としても始末しておきたかった人間の一人だった。

Lが死んだ時、見る者がリュークしかいなくなったあいつの墓前で笑い尽くしたように。
本来であればあいつの死も笑って喜ぶところのはずなのだろうに。

何故だろうか。そんな気にはなれなかった。
目の前にこの男がいるから、というわけではない。きっと自分一人でいたとしてもこの気持ちは変わらなかっただろう。




一方でスザクもまた、その心中が穏やかではなかった。

ユーフェミアとロロ・ヴィ・ブリタニアの名が呼ばれることは、今更思うところはない。既に知っていることなのだから。
しかし。

(―――ナナリー…)

既にこの場でも亡く、そしてかつて己の手でその生命を終わらせた友の妹、スザク自身にとっても大切な存在であった少女。

彼女の名が呼ばれた時自分がどんな顔をしていたのかは分からない。
しかし、ゼロの仮面を被っていてよかったと心から思えるような表情をしていたような気はした。

「それで、K…、どこへ向かうんだ?」

それまでずっと口を開くことがなかった月がそう問いかけてくれた時は、スザクも心境的には助かったと思った。

「とりあえずはまず他者との接触をして情報を集めつつ、危険人物との接触を避け北へと向かおうと思う」
「北、というとこのアヴァロンや蓬莱島とかいう施設か?」
「ああ、私にとっては何かと馴染みのある場所だ。あるいは何かが見つけられるかもしれない」
「そうか」

月はその返答に対して肯定も否定もすることなく、ただその指示に付き従うだけだった。


やがて市街地を抜け、森の中に入った時だった。


木々をなぎ倒すような音が響き、周囲に爆発音のようなものを打ち鳴らしている。
さらに猛獣の鳴き声のようなものと、落石にでも遭遇したかのような爆砕音。

スザクの行動は早かった。

「ここで待っていろ。もし付いてくるなら止めはしないが、命を守ることはできない」
「…分かったよ」

静かにそう告げると、スザクはその明らかに激しい運動には適していないだろう格好をしていながら恐ろしい速さで走り去っていった。




「ポチャ…?」
「何が戦っているのかと思ったが、君だったか」

サイドンのつのドリルを受けそうになり、そのまま倒れてしまうことを覚悟していたポッチャマ。
だったが、突然の浮遊感と共に体が浮き上がり、気がつけばその射程範囲から逃れていた。

見上げたポッチャマの目に入ったのは、ロケット団やギンガ団のような悪の組織の連中の胡散臭さをはるかに超える外見をした、とてつもない不審者。
そして、そんな彼に会うのはこれで2度目だった。
最初に会ったのは確か12時間ほど前。ここに来てすぐだった頃に呼び出されたと思う。
その時はあまりの怪しさとヒカリが不在であったことの不安感で大声をあげそうになったことでボールに戻されてしまったが。


「ユフィのところに預けたはずだったのにな…。どうしてこんなところに」
「ポチャ!」

暴れるポッチャマの目の前で、体勢を立て直して起き上がるサイドン。
ポッチャマ視点だと先と比べて動きは鈍っているようだが、その戦意は衰えてはいない。

そして、その敵意は自分にも向けられつつあることをスザクは感じ取っていた。

と、ポッチャマは自分を抱えていたスザクの手を振りほどいて、目の前にいる巨体の前に立つ。

「ポチャ!」
「君だけで大丈夫なのか?」
「ポッチャマ!」

ポッチャマは目の前の怪獣に勝とうという意志はあるが殺そうというつもりはない様子だった。

「なるほど、なら何かできることはあるかい?」
「ポチャポチャ!」



「グガャアアアアアアアアア!!!!」

そうして吠えるサイドンに対し、ポッチャマは駆け出し、スザクはその後を追って走りだした。



キャンプファイヤーのまわりでフォークダンスを踊っているアッシュフォード学園の生徒達。

学園祭の締めを括る、最後のイベントだ。
特に興味があるわけでもなかった私は、屋上で一人佇もうと思い。

そこで彼女を見つけた。


「アリスさん…でしたっけ?先週転入してきた」
「あら、よくわかったわね」

目の前にいたのは、車椅子に乗った一人の少女。
誰だったか、よく覚えている。転校した初日に虐められているところを助けた子だった。

同じ(とは言っても気持ちの問題なだけの自分と身体的な障害ゆえの彼女では大きく違うが)踊れない者同士の他愛もない会話。

踊れない事実に過去を思い出し、涙を流す彼女に励ましというわけでもない、まあ何となく思ったとおりのことを言ってみたりして。
タイヤキの話とかをしたような気がする。

そんな、取り留めのない会話。
何かあったというわけでもないのに、この時間は何故か心に刻みついていた。






「お、おぼえてらっしゃい!」
「はいはい」

別の日。
虐められていたナナリーを助けた私は、放課後に屋上で二人で話していた。

この時ナナリーにお茶に誘われたのだが、任務とかち合いになってしまったせいで断ることしかできなかった。

その時何気なくナナリーに対して言った、「親友」という言葉が、心の中にしばらく沈殿していた。

「親友、か」

私はあくまでもこの学校には潜入捜査として入っていただけにすぎないというのに。
まるでこれでは一端の女子学生のような姿だった。

それでも、ナナリーの傍にいる時が一番落ち着いていられた。楽しくいられた。



バチッ

頭にノイズが走る。
何か大切なことを忘れている、忘れさせられていると告げるように。

一瞬頭を押さえうずくまる。しかしそのノイズの原因が浮かばない。

ただ。
ナナリーと共に過ごしている、ただそれだけの時間のはずだったのに、何か非常に罪悪感を感じている自分がいるような。
そんな気がしていた。


「ハハハハハハハ!!魔女の力も形無しだね!」

笑うマオの目の前にいるのは、地面に倒れ伏したアリス。
マオから受けた外傷など何もないはずなのに、その体は全く動かず。

そんな彼女へと、マオはゆっくり歩み寄る。

「なるほどね、君の同行者もなかなか面白い少女のようだ。そしてその願うものも非常によく似通っている。
 二人仲良くその記憶の檻ににとらわれているといいさ。その間に――――」

あの魔女が何を思ってアリスに対して己の力を託したのか。それは分からない。
しかしナナリーが死んだのは先の放送時点でのもの、それ以前に魔女の力を託したわけではないだろう。
ネモが同化して、そう時間は経っていないはず。奪うのなら、おそらくはナナリーよりも容易いだろう。

今はまだ魔道器が耐えている様子だが、それも時間の問題。

「君には色々と因縁もあるしね、魔道器を奪った後は苦しむ暇も与えずに殺してあげるよ!」

ガサッ

「―――!誰だ?!」

と、突如背後から感じ取った気配。
魔道器を前に油断していたこともあり、思わず声を上げて振り向くマオ。


「なるほどな、お前か。あの巨大な怪獣をけしかけてきたのは」
「ポチャ…ポチャ?!」

振り向いた先にいたのは、二人の男と先ほどサイドンが追っていった水色の小さなペンギン。
様子を見るに、どうやらあのポケモンは敗れたらしい。

こんな小さな相手に負けるなんて、つくづく使えないやつだ、などと思いながらその相手を見据え。

うち一人の格好に思わず注意を奪われた。

「君、その格好は何のつもりなのかな?」
「何のことだ?」
「…、ああ、君は確かアッシュフォード学園にいたゼロか」

よく見ればゼロの格好だけはしているがゼロではない。
あの時は遠目だった上にゼロが二人いるという事実を知らなかったことで気付けなかったが、こうして近くで見ると一目瞭然だった。

「そんな格好までして、どういうつもりなのかな、枢木スザク」
「―――!!貴様、何者だ!」

後ろにいた男、月からしても驚くほどにゼロ――スザクが取り乱しているのが見て取れる。

まあ、お面で隠しているとはいえ前面のレンズを割っていたことが彼の不幸だろう。

ゼロでないのならば、マオとしても興味はない。しかし今の自分は上機嫌だ。
少し遊んでやる余裕くらいはある。

「ボクはマオ、ギアスユーザーであり、君たちに”幸福”を与えるものさ」

と、マオは髪をかきあげる仕草をしながら二人の目を見て。
構えるスザクの前で静かに、――――ギアスを発動した。


「おいで、エイミィ!」
「ニャー」

まどかの元に近寄ってきたのは、黒い子猫だった。
まどかによく懐いているようで、自分に対しても警戒心を見せていない。

そこで私は、まどかが魔法少女になったきっかけを知る。
車に轢かれたその子猫を生かしたいという願いを対価に魔法少女になったのだと。

「ワルプルギスの夜も近づいているみたいだし、いつ会えなくなるか分からないからね。
 できるだけこの子の傍にいてあげたいって、そう思うんだ」
「鹿目さん…」

そう言ってエイミィを抱きしめるまどか。しかしその目にはワルプルギスの夜がくることに対する恐れは感じられなかった。
むしろ、それを倒せないことで周りの人々が傷つくことを何よりも恐れているかのよう。

「もし私に何かあったら、この子のことお願いしたんだ」
「何かあったらって、不吉なこと言わないでください!」
「あはは、そうだよね。ごめん、ほむらちゃん。
 ちゃんとワルプルギスも倒して、ほむらちゃん達のところに帰ってくるから、安心してて」

そんなやり取りをしつつ、分かれ道に辿り着いた私達は別れ際に何の変哲もない挨拶で道を分かれ。

「それじゃほむらちゃん、また明日」
「また明日」


そして次の日。

「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

そこにあった光景は過ぎ去った日のもの。しかし暁美ほむらにとっては地続きの時間。
そして、その間にあった何かを飛ばした時間。

「鹿目さん、私も魔法少女になったんだよ!二人でがんばろう!」
「…ふぇ?!」

そんな不自然な状況に気付くこともなく平穏な日々を過ごしている。

しかし時折。
後ろを振り返る度に、あの黒い影はじっとこちらを見ているかのように佇み続けていた。


ザ・リフレインを発動したマオ。
その効力に飲まれた後ろの男、夜神月は蹲って動かなくなり。

ペンギンには効き目がなかった様子だ。まあ仕方ないだろう。
人間とは脳の構造が違う生き物の思考までは制御できないのだろう。

しかし。

この状況で最も肝心なはずの枢木スザクは。
己の目に該当するだろう場所に、手にした黒い剣をかざしていた。


「―――は?」

行動の意味がマオには理解できなかったし。
そもそもそれでザ・リフレインを防いでいるという事実もまた理解できなかった。

「マオ、と言ったな。その名前には聞き覚えがある。同じ名を持った者にかつて心の奥を読まれたことがあったからな。
 そして目をわざと晒すようにしながらこちらを見たが、こっちはそういう仕草をしながら目で見ることで相手にギアスをかける存在を知っている」

スザクにしてみれば、上げた全てはほとんど後付のこじつけにすぎない。
しかし、それだけの情況証拠でも。
目の前にいる存在がギアス能力者であるというなら己の経験則と直感からこの身に植え付けられた生存の呪縛を発動させるほどの危険信号を感じ取るには充分だった、ということだろう。

「ちっ、対した勘だよ枢木スザク!」
「その名前で俺を呼ぶな!」

ゼロではない、封印したはずの名前で呼ばれたことに激情するスザク。
しかしマオは彼には用はない。
今必要なのはあくまでもアリスの中の魔道器。つい邪魔になりそうだったことで遊んでしまったが、深入りする理由もない。

銃口を向けるのは目の前の男ではない。
この男の身体能力、かかっている呪縛を掻い潜って動きを止めるのは容易というにはあまりに程遠い。
だから、狙いを定めるのは今彼の足元にいる小さな生き物。

「ポチャ?!」
「―――?!」

咄嗟にスザクは剣をポッチャマの前に翳し、銃弾を弾き飛ばす。
そして、その一瞬の隙にマオはアリスへと駆け寄る。

その胸のブラウスを開くと、そこから姿を現しているのは白く巨大なキノコのような形をした物体。
それは、魔道器ネモの本来の姿。そして魔女の力の一端。リフレインを受けたアリスの元から、同化が解除されようとしているのだ。

どうやら枢木スザクと遊んだことでタイミングとしてはちょうどいい感じになったようだった。

「お前さえ手に入れられれば、ボクは魔道器と同化し、本物の魔女になることができる――!」

そうすれば、村上侠児だろうと枢木スザクだろうと恐るるに足りない。
この場にいる全員を殺し、生き延びることが可能になる。
これまで多くの人間に幸せを与えてきたのだ、それだけの資格が自分にはある。

「さあ、魔道器よ!このボクのものとなれ!」


「ほむらちゃん、もしかして私ほむらちゃんの傍にいて迷惑、かな?」
「え、う、ううん。そんなわけないじゃない。どうしてそんなこと…?」
「だってさ、最近ほむらちゃんずっと何か思い詰めたような顔してるから…」

赤い夕焼けに染まった空。
私は家へと向かう通学路を、まどかと二人で歩いていた。

最近は魔女の出没数こそそこそこあるものの、巴さんを含んだ3人でのコンビネーションによってそんなに苦戦することもなく倒せるようになった気がしていた。
最初こそ魔法の使い方もイマイチだったが、戦っていくうちにどういうタイミングで使うのがいいのかというのも読めるようになってきたし。
そして鹿目さん達の動きに合わせて時間を止めることでのサポートもそれなりにこなせるようになってきた。

だというのに、何故か私の中からは変なざわつきが止まらなかった。

「その、ワルプルギスの夜が近づいているっていうから、やっぱり不安…で…」
「それ嘘でしょ」
「う、嘘じゃないです!」
「だってほむらちゃん、嘘つくときいつも眉間にシワ寄ってるもん」
「え?!」
「あ、やっぱり嘘だったんだ」
「え、あ…か、鹿目さん!」

乗せられてしまったことへの恥ずかしさと隠し事がバレてしまったという気持ちで思わず引っ掛けた鹿目さんへと抗議の声を上げる。
顔に熱が集まっているようにも感じる。きっと今の自分の顔は真っ赤だろう。

追いかける自分に対し、鹿目さんは笑いながら小走りで逃げるように離れ。
それを笑いながら追いかける。顔はまだ熱を持っている。



そして、またあいつが現れた。

「………」

最近ではそれはまるで人を模っているかのような形にも見えるようになってきた。
一見すれば魔女の使い魔のようにも見えるが、しかし依然として魔力の反応は感じられない。

「ほむらちゃん…?」
「………」

そう、それが私のざわつきの理由だった。
きっと、あれをどうにかしなければこの不安は収まることはないのかもしれない。

これまでずっと先延ばしにしてきたが、今こそがその時だろう、と。
それに触れようとした瞬間、何かが体の動きを止めさせた。

これに触れてもいいのか、と。触れさえしなければ、このまままどかと過ごす日々の中で生きることができるのだ、と。
それを、捨てるのか。何かが心の中でそう告げていた。

「鹿目さん…」
「どうしたの、ほむらちゃん?」
「鹿目さんは、私がどうなっても私を暁美ほむらとして、見ていてくれますか?」

その質問は、何故口から出たのか自分でも分からなかった。
それでも、心のなかで何かがこれだけは聞いておきたいと、そう思ったのだ。

全てを知ったら、きっと今までの私ではいられなくなるだろう。そんな直感があったから。

「ほむらちゃん…」
「………」
「もちろんだよ。ほむらちゃんは、どんなに変わってもほむらちゃんのままだって、私信じてるから」
「鹿目さん、…ありがとう」

その一言だけで、決意することができた。

私は、静かにその影に手を触れた―――――――



――――――――何…?どうして…?なんで、こんな…?

――――――伝えなきゃ……みんなキュゥべえに騙されてる!

――――――――約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる。何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる!

――――――私の戦場はここじゃない

――――――――同じ時間を何度も巡り、たった一つの出口を探る。あなたを、絶望の運命から救い出す道を

―――あなたの…あなたの為なら、私は永遠の迷路に閉じ込められても、構わない


そこにあったのは、ある存在への、私自身の戦いにかける想いだった。
多くの救えなかった彼女がいた。助けられなかった彼女がいた。
そして、そんな彼女を救うために、出口の無い迷路に足を踏み入れた私がいた。

一人ひとり、その全てがかけがえのない存在で。
なのに道を進めば進むほどその屍は増えていく荊棘の道。
それでも、引き返せる道など既になく。
彼女――――鹿目まどかの最期を見ていくだけ、自分の中にある想いは募っていき、それとは対照的にまどかとは離れていく。

それでも。


――――――鹿目まどかを救う。それだけが今の自分に残された希望。



「ほむらちゃん!」

突如流れ込んできた膨大な情報に思わず頭を抑える。
そんな私に駆け寄ってくるまどかは、こんなにも優しく、暖かく。

だけど、違う。

「……大丈夫よ、まどか」
「ほむらちゃん…?」

そう、違うのだ。
これは過去の幻影でしかない。
この温もりも、まどかの優しさも、全て打ち捨ててきたもの。
そんな微温湯に浸かり続けることは、これまで救えなかったまどかに対する冒涜でしかない。

「思い出したの、全部。
 私が何を願って魔法少女になったのか、誰を救うために戦ってきたのか。その全てを」

眼鏡を外す。
三つ編みの長髪を解く。

あの頃の暁美ほむらはもういない。

「私のいるべき場所は、ここじゃない。そしてあなたの隣にいるべきなのも、今の私なんかじゃない」

あの頃のまどかの隣にいるには、今の自分は屍を築きすぎた。


「そっか。気付いちゃったんだね、ほむらちゃん」
「まどか…?」

なのに、まどかは悲しそうな表情を浮かべてこちらを見ていた。
引き止めるでもなく、説得しようとするでもなく。
前に進もうとする私を、まるで見送るかのような表情で見ていた。

「当然だよね、私のことをお願いしたのは、他でもない”私”なんだから」

今ここにいるまどかは、魔法少女の真実も知らない、最も幸せだった頃のまどかのはず。
だというのに、その中にかつて自分が殺したはずのあの彼女の意識も混じっている。
どうやら全てを思い出したことで、まどか自身に何かしらの変化が起こっているのだろう。

「そうね、確かにあなたは私の記憶が生み出した虚像なのかもしれない」

心に最も焼き付いたまどかの記憶、それが集まり形作ったのがこの鹿目まどかなのだろう。

「もう行くわ。私にはやらなきゃいけないことがあるから」

だけどそれでも。

「でも、あなたが例え虚像だとしても、あの頃のあなたとこうしてまた話ができてよかった。
 それだけで、私は幸せだったわ」

その言葉だけは、嘘偽りのない私の本心だった。

「ほむらちゃん…、さようなら」

無理やりっぽく笑顔を作り、そう別れの言葉を告げてくる”まどか”。

「無理かもしれないけど、私のこと、少しでも覚えていてくれたら、嬉しいな」

「大丈夫よ。私は絶対忘れない。今まで救えなかったまどかのこと、その一人ひとりを、絶対に」

そう、約束のようにまどかに対して告げ。
そしてここで言うべき言葉、それは別れの挨拶ではない。

「それと、さようなら……では、ないわね」

そうして、まるでずっとそこにあったかのように手元に現れた拳銃を、手の甲に突きつける。
そこにあるのは、己の魂の宝石。

そのまま、引き金を構え、引く直前、振り返った私は。

「―――また、会いましょう。必ず」

そう、過去のまどかに再会を誓って、己のソウルジェムを撃ちぬいた。

―――――――――――――――――――

同化を解除されかけ、そのまま露出しようとしたネモを掴もうとしたマオの手。
しかしそれがネモに触れることはなかった。

一発の銃声が鳴ると同時。
強い衝撃を感じたマオの腕が大きく吹き飛ばされたのだから。

腕を大きく反らし体勢を崩しつつも、マオは何が起きたのかを確かめるために衝撃のあった場所、手の平に視線を移す。
掌の真ん中に、銃弾で撃ちぬかれたような穴が開いていた。

流れ出る血と、貫通した手の中の肉や骨を認識した瞬間、遅れてその手に激しい痛みを感じ。

「―――ッ!!!!」

手を抑えながらも、衝撃を感じた、おそらくは銃弾の飛んできた方であろう場所を見ようとした。
その瞬間だった。

目のすぐ上辺り、眉毛の辺りを銃弾が掠っていき。
肉の抉れた部位から流れ出た血が、マオの目を赤く染め上げた。

「ガ―――!だ、誰だ!」

動揺しながらも、残った右目で状況を把握しようとしたマオ。
そして一つの事実に気付く。

(―――――!さっきの黒髪の女は何処に行った!?)

リフレインを受けた、アリスの同行者、その姿がどこにも見えない。
村上でもあるまいしあれを受けた以上、動けるはずなどないというのに。

その事実を認識した瞬間、今度は頭部に衝撃が走った。
まるで何者かに蹴り飛ばされたかのような、その痛みと衝撃を受けてマオは地面に倒れ伏す。

振り返ろうとしたマオの体、その背に感じた何かを突きつけるような音と感覚。
それが何なのかを理解した頃には、一発の銃声と共に体を突き抜けるような感触がマオを襲っていた。



その背に一発の銃弾を撃ち込んだほむらは、咄嗟にアリスの傍に駆け寄る。

「…あんたがアリスに力を与えてる存在ね」
『………』

きのこのような物体は何も喋らなかったが肯定するかのように身動ぎする。
単体で力を発揮できる存在ではないようで、じわじわと力を弱らせているようだった。


「なら、早くアリスの中に戻りなさい。そのままだとその子出られなくなるわよ」
『…いや、ギアスの効果が予想外に強い。アリスに対してはかなり念入りにギアスを使用したようだ。
 アリスの思考がループに入っている。今戻ったところで再度同化することは難しい』


緊急事態だと判断したのか、まるで脳に直接語りかけるようにそう受け答える白い人形。

「対処法は?」
『アリス自身の脳に直接刺激を与えるしかない。それも物理的なものではない、脳の働きに刺激を与えるような何かが必要だ』
「なら私がどうにかするわ。あなたは自分の思うようにやってみなさい」

その言葉を受け、白い人形はゆっくりとアリスの中へと還っていく。

自分が見せられたあの光景から考えるに、アリスが何を見せられているのかはある程度は察することができる。

ただあの人形が言うように衝撃を与えることができれば、目覚めるかどうかは本人次第だろう。

「そっちの変な格好をした男!あんたもそっちの男をどうにかしてあげなさい。
 その男はこっちよりは起こすのは容易いはずよ!」

後ろでポッチャマを連れた男にもそう指示を出しておく。
すると、慌てるポッチャマの横で男を抱え上げているらしい音が後ろから聞こえてきた。

それでいい。この作業には若干の集中力を要する。
だから、今ここで気を散らされては成功率が下がる。何しろ初めてのことだから。
他者に対して魔法を使うことなど。

だが、あの人形がいうようにアリスの思考が本当にループを始めているのであれば。
あの記憶の迷路から抜けだした今の自分であれば、あるいは。

「―――――――――」

アリスの頭に手を翳し。
その先に意識を集中させる。
魔力が少しずつそこに集中していくのを感じる。

当てるのは頭ではない。その頭蓋の奥、骨の鎧に包まれた、人間の記憶、体の働き、全てを司る器官。
アリスの血管の一部に魔力を送り、詳細な場所を探り取り。



そして。

一気に手に集中させた魔力を流し込んだ―――――――


アッシュフォード学園の廊下をゆっくりと、ナナリーの車椅子を押しながら歩くアリス。
放課後、今日は特に予定もない。久々にナナリーと一緒の時間を過ごせるだろう。

そう思って歩いていた。

その時だった。
体がブレるような感覚が頭から全身に走って。

その瞬間、目の前が真っ暗になった。


そこに写っていたのは。
右側に車椅子に座りこちらへ微笑みを投げかけるナナリー。
そして左側に、黒い泥に包まれ動かないナナリー。

それを見て、アリスは全てを思い出した。
自分の手の中で死んでいった親友。
彼女のことを託して自分に力を与えた魔道器の存在。
そして、あの時彼女のために誓った想い。

きっと、右を選べばこの記憶のループの中で永遠に近い時を過ごすことになるのだろう。
そして左を選べばナナリーのいない現実を生きていくことになる。その先には、微かな希望に全てを託した戦いしかない。

だが、アリスには迷いはなかった。

「そうね、私の幸せはナナリーの幸せ。私だけが幸福の迷路に留まるなんて、何より私が許さないわ」

そう、ここにナナリーの笑顔は無い。あるのは自分の見た過去の幻影だけ。
私の望むのは、本当のナナリーの笑顔。

だから過去に振り向いている暇はない。

「助かったわ、ネモ」

答えなど期待していない、そんな言葉に。

――――礼などいらん。お前は責任を果たせ

そう答えられた気がした。

フ、と微笑を浮かべて。
アリスは、左のナナリーを抱き上げた。


(クソ…!もう少しだったというのに…、何故だ!)

手と背から感じる激しい痛みに耐えながら、地面を這うようにマオは逃げていた。
暁美ほむらは自分のことを死んだと思ったこと、そして彼女とスザクは共にリフレインにかかった者へと掛かりっきりになったおかげで逃げることができたのだ。

もう少しで、魔道器を奪い魔女へとなって生きることができたのに。
眼中になかったはずの、アリスの同行者にこのような辛酸を舐めさせられるとは思わなかった。

腕はC.C.細胞による侵食が進み、ほとんど使い物にならない状態だ。

「まだ、死ぬわけには…。ボクには幸福を受ける権利があるはずなんだ…!」

地面を這いながら、バッグから抑制剤を取り出そうとする。
これからどうするか、など今はそこまで考えが及ばない。
まずはC.C.細胞の侵食をどうにかしなければ。





「あら、どこへ行こうというのかしら?」

そんな声を聞き届けると同時に、這っていた手が何かに触れた。と、同時に手に持っていたはずのバッグが消失する。
顔を上げたマオの目に入ったのは、紫と黒を基調とした学生服のような衣装に身を包んだ、盾を構えた少女。
睨むような視線でこちらを見下ろす彼女は。

「――暁美、ほむら…!アリスを看ていたんじゃないのか…」
「あの子はもう大丈夫よ。そのギアスとやらを破るきっかけを得られるように刺激を与えれば、後は勝手に目覚めるでしょうね」

まるで、アリスが幸福を選ばないことが分かっているかのようなその発言。
だが、しかしマオには今の言葉でそれ以上に気になったことがあった。

「…アリスですら、魔女の力を持った彼女ですら、一人じゃ打ち破れなかったボクのギアスを…何故お前は破ることができた…?!何故ボクのギアスに、打ち勝った…!?」
「さぁ、どうしてかしらね」

真っ赤に染まりロクに開く事もできない左目を、激痛をこらえながら無理やりこじ開ける。
逸らすこともなく、その目を見返すほむらからは、その疑問の答えを読み取ることはできなかった。分からないというのは本当らしい。

「君は、その愛しい友との日々を求めているはずだ!なのに何故、その幸福を捨てることができる!?」

アリスにしろ、目の前の少女にしろ。
彼女達の求めたものはもう過去にしか無いはずだ。
未来に希望などないはずなのに。
何故、その幸福を迷わず捨てられるというのか。

「簡単な話よ。私の望むものは、かつて見た私の幸福なんかじゃない。今を、未来を生きる鹿目まどかの幸せよ。
 過去に善がって自分だけ幸せに生きるなんて、そんな幸福は求めていない」

銃口を向けるほむら。
そこには情けも容赦も、一辺たりと感じることはできない。

「だけど、そうね。一時の夢とするなら、悪くはなかったわ。おかげで私は、迷わず自分の道を歩んでいける。それだけはお礼を言わせてもらうわ」
「―――――!」

開いた目で、ほむらの思考を読み取ったマオ。
そこに映ったのは、彼女の願い、どこまでも傲慢で、果てしなく、そして限りなく純粋な想いだった。


「――――ハ」

もう自分は逃げられない、とマオは悟る。
ここで死ぬのだろう。
よりにもよってこんなとんでもない女に、とんでもないものを与えてしまった自分を恨むしかない。

だから、

「―――――――――ハハハハハハハハハハ!!」


「ならば予言してやる!お前の願いは、決してお前自身に幸せをもたらさない!
 その先にあるのは、お前の破滅しかないだろう!
 その屍の山の上で、自分のエゴに押しつぶされていけばいいさ!」

それは、予言というにはあまりにも粗末な雑言。
せめてこの女に対して、一矢でも報いて死んでやろうと思った、マオの精一杯の抵抗だった。

「せいぜいあがけばいいさ!ボクはその姿を笑ってみていてやるよ!
 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ―――――――――――――!」

パンッ


額に銃痕を作ったマオは、その笑った表情のままバタリと体を完全に落とし。
そのまま、二度と動かぬ骸となった。

発砲したことで熱を持った銃を下ろし。
死体を顧みることもなく、静かにアリス達の元へと歩き去った。

「そんなこと、とっくの昔に覚悟しているわ」

そう一言、誰に言うともなく呟いて。



【マオ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー 死亡確認】




「う、ん…。ナナリー…?」
「残念ね。私よ」

目を開いたアリスの目の前に入ったのは、特徴的なほどの黒い長髪をした少女。

「…手間をかけさせたわね」
「いいのよ、私だって同じことになったわけだし」
「貸一つ、ってところかしら」
「貸しなんていいわ。私達は友達なんでしょ?」

そう言ってほむらは手を差し出し。
立ち上がったアリスは、それと同時に目をパチクリさせ。
少し驚いたような表情を浮かべていた。

「…何よ?」
「いや、あんたからそんな言葉聞けるなんて思わなかったから」
「嫌なのかしら?言ったのはそっちからなのに」
「ううん」

「それじゃ改めて、ありがと。それとこれからもよろしく」
「こちらこそ」

出会って12時間ほど経ったが、こうして目の前の存在を友好的な者として見たのは今がようやくだったように思った。



「目は覚めたか?」
「……ああ」
「気分はどうだ?」
「不思議な気分だよ。すごくいい夢を見ていた気がするのに、だからこそ変な胸くその悪さを感じてる」
「そうか」

一方月のほうも、リフレインの効果は消え、その意識は元に戻っている。
精神的な疲労はあるのか、顔色はそうよくはなさそうではあったが。

「ポチャ!」
「大丈夫だったのねポッチャマ。よかった」
「さて、お互い落ち着いたようだし色々話したいことはあるけど、一つだけ質問するわ。
 その格好は何のつもりかしら?」

不審感と警戒心を表しながらゼロ―――スザクに銃を向けるほむら。
目の前にいる男がゼロではないということは、実物を見た二人が判断するには難くなかったものの、それでも不審者であることには変わりないだろう。
しかも、割れたマスクの下にひょっとこのお面をかぶるという、周囲の目を憚らない、しかし顔は見せないその謎の徹底ぶり。

「あら、そっちにいるのは夜神月…?」
「…数時間ぶり、と言ったところか」

その男はアリスとほむらは数時間前に出会った存在。
しかし、だからといって警戒を解く理由にはなっていないのだが。

(どうしたものか…)

スザクはこの状況をどう説明したものか、と思考を巡らせ。
ふと、ある事実に気付く。

「ん…?君のその服装は…、アッシュフォードの…?」

それは、アリスの服装。
アッシュフォード学園の中等部の女子の制服だ。
かつて親しかった者が身につけていた服装だからよく知っている。

「それがどうかしたの?」

アリスとしても、その発言だけで警戒を解く理由とするには弱い。
しかし、スザクにしてみればその服装は大きな意味を持っている。
つまり、目の前の少女はナナリーと何かしらの関わりがあるかもしれないのだから。

と、その時だった。


パチパチパチパチ

手を叩くような音が鳴り響く。
皆が一斉にそっちに目を向けると、そこにいたのはスーツを纏った、おそらくは30代くらいであろう男。
一見ただの人間にも見えるが、皆の直感が、彼の危険性に近いものを感じさせていた。

「素晴らしい。過去を振り返ることなく、そして幸福の檻に囚われることもなく、ただひたすらに未来を求めるその意志。
 そして、人間でありながら持っている動物的な勘と身体能力。
 人間としておくには惜しい逸材達ばかりです」
「誰?」
「申し遅れました。私は村上峡児と申します。
 スマートブレイン社社長にして、そうですね。言葉よりこちらの方が分かりやすいですか?」

と、村上はその顔に灰色の紋様を浮かび上がらせた。

「――――オルフェノク…?!」
「じゃあ、あんたは乾巧の言っていた…」
「ほう、彼と会っておいででしたか。まあ、何と言われたかは想像はつきますが。
 しかし安心してください。私は戦いにきたのではありません」
「どういうことだ?」
「あなた達とイザコザを起こそうという気はないのですよ。――――今のところは、ね。
 まあ私としても振りかかる火の粉くらいは払わなければなりませんが」

そう告げる村上。
それでも皆の警戒は容易く解けはしない。
むしろ、そのあり方になおのこと不気味さを引き立てられている。

そんな中、ほむらは一人前に出る。

「ほむら…?」
「つまり、私達と情報交換がしたい、と。そういうのね」
「ええ、今のところはそう受け取ってもらっても構いません。
 こちらとしても、たった今事故により同行者を失ったばかりですので」
「いいわ、付き合ってあげる。その代わり、そっちの持っている情報も可能な限り開示すること。
 情報は等価交換よ。いいわね?」
「ええ、いいでしょう。それでは、場所を移しましょうか」


そう言って先を歩く村上。

「ほむら、大丈夫なの?」
「いざとなったら逃げるわよ。それに、あんたも顔色少し悪いんじゃない?」
「む」

「そこのゼロもどきさんも。少なくとも敵意はないんでしょ?」
「ああ、顔と名前はわけあって明かせないが、敵対するつもりはない」
「なら構わないわ。行きましょう」

そう言って、ほむらは村上の後に続いて、サイドバッシャーを押して歩き始めた。

「…あそこまで積極的な子だったかな、ほむらって?」

ちょっとだけ疑問に思いつつ、その後ろにアリスとポッチャマが続き。
遅れてスザクと月も歩き始めた。


【C-4/森林/一日目 日中】

【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(小)、ネモと一体化
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、ポッチャマ@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:共通支給品一式、 C.C.細胞抑制剤中和剤(2回分)@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。
1:ナナリーの騎士としてあり続ける
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:ほむらが若干気になっている
5:村上やゼロ(仮)達と情報交換をする
最終目的:『儀式』からの脱出、その後可能であるならアカギから願いを叶えるという力を奪ってナナリーを生き返らせる
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※アリスのギアスにかかった制限はネモと同化したことである程度緩和されています。
  魔導器『コードギアス』が呼び出せるかどうかは現状不明です。

【夜神月@DEATH NOTE(漫画)】
[状態]:疲労(大)、精神不安定
[装備]:スーツ、
[道具]:基本支給品一式、レッドカード@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:????
1:?????
情報:ゲーチスの世界情報、暁美ほむらの世界情報、暁美ほむらの考察、アリスの世界情報、乾巧の世界情報(暁美ほむら経由)
※死亡後からの参戦
※ジャイロアタッカーをどこに停めているかはお任せします

【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:細マッチョのゼロ、「生きろ」ギアス継続中、疲労(中)、両足に軽い凍傷
[装備]:バスタードソード、ゼロの仮面と衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ(仮面は前面割れ中)、ひょっとこのお面@デスノート(映画)
[道具]:基本支給品一式(水はペットボトル3本)、ランダム支給品0~1、エクスカリバー(黒)@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:アカギを捜し出し、『儀式』を止めさせる
1:月を伴い移動する。ただし頭脳は買うが人格まで信用はしない
2:Lを探し、 政庁で纏めた情報を知らせる
3:「生きろ」ギアスのことがあるのでなるべく集団での行動は避けたい
4:許されるなら、ユフィの世界のスザクに彼女の最期を伝えたい
5:誤解を招きそうだから、とりあえず名前を聞かれた際はKと名乗っておく
6:まずは村上や少女達(ほむら、アリス)と情報交換をする
7:あの少女の制服は、アッシュフォードの……
[備考]
※TURN25『Re;』でルルーシュを殺害したよりも後からの参戦
※学園にいたメンバーの事は顔しかわかっていません。

【村上峡児@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(小)、人間態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、拡声器@現実、不明ランダム支給品0~2(確認済み)、不明ランダム支給品0~3(オーキド)(確認済み)
[思考・状況]
基本:オルフェノクという種の繁栄。その為にオルフェノクにする人間を選別する
 1:目の前の彼らと情報を交換する
 2:ミュウツーに興味。
 3:選別を終えたら、使徒再生を行いオルフェノクになる機会を与える
 4:出来れば元の世界にポケモンをいくらか持ち込み、研究させたい
 5:魔王ゼロはいずれ殺す。
[備考]
※参戦時期は巧がラッキークローバーに入った直後
※マオのギアス、魔女因子、ポケモンに興味を持っています
※スザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまでマオ目線)

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(少) 、疲労(小)
[服装]:見滝原中学の制服
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(15発)@現実、(盾内に収納)、ニューナンブM60@DEATH NOTE(盾内に収納)、サイドバッシャー(サイドカー半壊、魔力で補強)@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ドライアイス(残り50%)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:■■■■■■■■■■■■■■■
2:■■■■■■■■■■■■■■■
3:■■■■■■■■■■■■■■■
4:■■■■■■■■■■■■■■■
5:■■■■■■■■■■■■■■■
6:■■■■■■■■■■■■■■■
最終目的:“■■■■■■■■■■■■■■■。
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡■■■■■■■■■■■■■■■と会話する前
※『時■■■■■■■■■■■■■■■度までに制限されています
※ソウルジェ■■■■■■■■■■■■■■■アスにも反応します
※サイドバッシ■■■■■■■■■■■■■■■強されましたが、物理的には壊れています

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




それは、ほむらがマオに止めを刺し、アリスと合流するまでのほんの十数分の間の話。

マオの支給品を回収したほむらは、その中身をチェックしていた。
中に入っていたのは、赤と白のボール。そして何の変哲もないリボン、そしてよく分からない球だった。

『その赤と白のボールはモンスターボールだね。さっき君たちに襲いかかったポケモンがいただろう?彼らを持ち運び制御するための道具なのさ』
『じゃあ、これがあればさっきの怪獣も言うことを聞かせられるということなのかしら』

少し歩くと、そこにはあの時ポッチャマが請け負ったあの怪獣、サイドンが目を回していた。
首の辺りに土がついているのを見るに、ポッチャマを連れてきたあの男に蹴り飛ばされ意識を失ったのだろうと判断する。

ともあれ、現状ではどうすることもできないだろうが仕舞っておけるなら連れて行っておいても損はないだろう。
ボールへとサイドンを戻す。

『それにしても、お手柄だよ。ちょうどこのポケモンは君に回収してもらおうと思ってたからね』
『この子、そんなに大事なのかしら?』
『そうだね、まあこちらとしては下手に失うことは避けたい戦力ではあったからね』

元々ほむらがこの方向へ来たのはこいつのそういう指示があったからだった。
無論強制力こそなかったものの、何かしら重要なものがあるというならほむらとしてもぜひとも拝んでみたい、とそう思っていたのだ。

まあ、来てみればそう重要そうなものでもなかったが。

『しかしすまないね。とりあえずのお礼として彼の持っていた支給品、全部君にあげようって思ったんだけど、ロクなものが入ってなかったみたいだ。
 荷物になるなら捨てていくかい?』
『別に構わないわ』

この程度、別に荷物になる、というほどでもない。
特に、このリボン。これは捨てていいものではない。

まあともあれ、武器が若干心もとない現状、何が役に立つかは分からない。


『うーん、でもそれだけじゃあまりにも悪いし。そうだ、何か今聞きたいことはないかい?
 答えられる範囲だったら、何でも教えてあげるよ』
『随分と熱心ね、ただ一匹のポケモンとやらを回収しただけだっていうのに』
『僕達にとってそれだけの価値があるものだっていうことさ』
『何でも、と言ったわね?』
『当然、答えられないことはあるよ。そしてその答えは、教えられない、で終わりだ。
 それも踏まえた上で、一つだけ何か質問するといい』
『そう、それじゃあ……』

10秒ほど考えるように黙りこんで、決意を決めたように、暁美ほむらはインキュベーターに問いかけた。

『美国織莉子。やつの居場所を教えなさい』


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(25%) 、疲労(中)
[服装]:見滝原中学の制服
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(14発)@現実、(盾内に収納)、ニューナンブM60@DEATH NOTE(盾内に収納)、サイドバッシャー(サイドカー半壊、魔力で補強)@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ドライアイス(残り50%)、
     モンスターボール(サカキのサイドンwith進化の輝石・戦闘不能)@ポケットモンスター(ゲーム)、まどかのリボン@魔法少女まどか☆マギカ、はっきんだま@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:全てを欺き、情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
2:協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
3:ポッチャマを警戒(?)。ミュウツーは保留。ただし利用できるなら利用する
4:サカキ、バーサーカー(仮)は警戒。
5:あるならグリーフシードを探しておきたい
6:放送後インキュベーターの接触を待つ。
7:村上、ゼロ(仮)と情報交換をする。しかしいつでも逃げられるようにしておく
8:美国織莉子を―――――――――
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ソウルジェムはギアスユーザーのギアスにも反応します
※サイドバッシャーの破損部は魔力によって補強されましたが、物理的には壊れています
※アリスは”友達”として信用できる存在と認識しました



(やれやれ、助かったよ)

キュウべえとしては思い通りに動いてくれるなら、例えある程度何かしらの思惑があっても構わないと思っていた。

もしほむらがNの城方向に向かってくれなかったどうしようと考えていたのは割と本気だった。

まあ、アリスとほむらの二人がかりでまさかマオのギアスに取り込まれてしまうというのは少し想定していなかった事態だったが。

(嘘は言っていないよ、ほむら。あのポケモンが戦力として重要な存在であることは確かだからね)

ポケモン城にいるクローンのサイドンの話だが、と思考の中で続けて。

あとは、ほむらのソウルジェムも気になっていた。
マオのギアスに取り込まれた際、若干濁ってしまうのではないか、と危惧したが、一度濃厚な濁りがドクリとソウルジェムに表出したように見えたもののそう大きな消耗にはなっていなかったようだ。
その一度表出したという濁りも、それっきり影も形もなく消滅した。特に気にする問題でもないだろう。


(さて、まず一つの仕事をほむらには終えてもらったわけだけど、次は何処へ向かってもらうかも調べておかないとね)

質問したということは、おそらく美国織莉子の元へ向かう可能性もあるわけだから頼むとすればその後だろうか、と。
静かに思いつつ、キュウべえ―――黒猫はほむらの後ろに続いていった。








インキュベーターは気づかなかった。
ほむらのソウルジェム。その、一度表出した濃厚な濁り。
もしそれをよく見ていれば、何かしら気付くことがあったかもしれない。
だが、そのまま特に気にすることもなくやり過ごしてしまったから。


もしもほむらが見ていれば、ある事実に気付いただろう。
その色が、リフレインの中で見たあの黒い影のような色をしていたことに。
しかし、ほむらは見ていなかったし、インキュベーターは見過ごしてしまった。

だから、誰も気づいていない。
ほむらのソウルジェムで胎動したその濁りが。
絶望とはまた違う、いや、もっとおぞましい色をしていたということに。


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